(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】多結晶シリコンの包装方法、多結晶シリコンの二重包装方法及び単結晶シリコン用原料製造方法
(51)【国際特許分類】
B65B 51/10 20060101AFI20220830BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B65B51/10 101
B65D77/04 F
(21)【出願番号】P 2020514442
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2019016660
(87)【国際公開番号】W WO2019203316
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2018079562
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】野田 聖奈
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-122153(JP,A)
【文献】特開2013-166557(JP,A)
【文献】特開昭51-061392(JP,A)
【文献】特開平06-227519(JP,A)
【文献】特開2010-036981(JP,A)
【文献】特開平01-124528(JP,A)
【文献】特開平09-104406(JP,A)
【文献】実開昭51-106670(JP,U)
【文献】特許第5779291(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 51/00-51/32
B65D 67/00-79/02
B65D 81/18-81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコン用原料となる多結晶シリコンの包装方法であって、
包装袋に多結晶シリコンを充填した後、前記多結晶シリコンが充填されてなる充填部よりも前記包装袋の開口部側でありかつ前記包装袋を溶着してシールするための溶着シール予定部より前記充填部側の部位を、前記充填部に気体が流れ込まない様に挟持棒で挟持し、該挟持棒により挟持した状態で前記溶着シール予定部をシール棒により挟んで溶着し
て溶着シール部とし、溶着後に前記溶着シール部の温度が常温まで低下した後に前記挟持棒を取り外す方法であり、
前記
挟持棒を取り外した後にサーマルデソープションガスクロマトグラフ質量分析装置により表面の炭素不純物濃度を測定したときに、4.3ppbw以下となることを特徴とする多結晶シリコンの包装方法。
【請求項2】
単結晶シリコン用原料となる多結晶シリコンの包装方法であって、
包装袋に多結晶シリコンを充填した後、前記多結晶シリコンが充填されてなる充填部よりも前記包装袋の開口部側でありかつ前記包装袋を溶着してシールするための溶着シール予定部より前記充填部側の部位を、前記充填部に気体が流れ込まない様に挟持棒で挟持するとともに、該挟持棒またはその周辺が冷却された状態とし、該挟持棒により挟持した状態で前記溶着シール予定部をシール棒により挟んで溶着し、溶着後に前記挟持棒を取り外す方法であり、
前記
挟持棒を取り外した後にサーマルデソープションガスクロマトグラフ質量分析装置により表面の炭素不純物濃度を測定したときに、4.3ppbw以下となることを特徴とする多結晶シリコンの包装方法。
【請求項3】
前記溶着シール予定部を前記シール棒により溶着する際に、前記シール棒により溶着された溶着部と気体の流通が可能な未溶着部とを前記包装袋の開口部の幅方向に連続するように形成し、前記溶着部と前記挟持棒により挟持されている部分との間の気体を前記未溶着部により構成される小開口部から前記包装袋外に排出した後、前記未溶着部を溶着することを特徴とする請求項1又は2に記載の多結晶シリコンの包装方法。
【請求項4】
前記溶着シール予定部が前記シール棒により溶着された後、前記挟持棒により挟持されていた部位と前記充填部との間で前記包装袋を折り曲げることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の多結晶シリコンの包装方法。
【請求項5】
前記挟持棒は、前記シール棒を取り外した後に取り外されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の多結晶シリコンの包装方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の多結晶シリコンの包装方法により前記多結晶シリコンが前記包装袋に包装された第1包装体を、前記包装袋とは異なる第2包装袋に収容した後、
前記第1包装体を収容してなる収容部よりも前記第2包装袋の開口部側でありかつ前記第2包装袋を溶着してシールするための溶着シール予定部より前記収容部側の部位を、前記収容部に気体が流れ込まない様に挟持棒で挟持し、該挟持棒により挟持した状態で前記溶着シール予定部をシール棒により挟んで溶着し、溶着した後に前記挟持棒を取り外すことを特徴とする多結晶シリコンの二重包装方法。
【請求項7】
前記挟持棒は、前記シール棒を取り外した後に取り外されることを特徴とする請求項6に記載の多結晶シリコンの二重包装方法。
【請求項8】
多結晶シリコンを加工または破砕して塊状多結晶シリコンを形成し、該塊状多結晶シリコンを請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多結晶シリコンの包装方法、又は請求項6又は7に記載の多結晶シリコンの二重包装方法により包装し、包装された前記塊状多結晶シリコンを包装袋から取り出して、単結晶シリコンを製造する原料とすることを特徴とする単結晶シリコン用原料製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶シリコン等を製造する際に溶融原料として用いる塊状多結晶シリコン等を包装する多結晶シリコンの包装方法、多結晶シリコンの二重包装方法及び単結晶シリコン用原料製造方法に関する。本願は、2018年4月18日に出願された特願2018-79562号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン半導体原料や太陽電池原料等に使用される多結晶シリコンは、例えば、シーメンス法と呼ばれる気相法によってロッド状に製造され、その後、原料として使用しやすいように切断や破砕されることにより、所定の大きさの塊状の多結晶シリコン(以下、塊状多結晶シリコンという)に形成される。この塊状多結晶シリコンは、洗浄や乾燥などの処理がなされ、所定量ずつ包装され、さらに輸送のためケースに梱包されて出荷される。
【0003】
近年、半導体デバイスの性能向上とともに多結晶シリコンの品質要求が厳しさを増している。例えば、バルク金属不純物や表面金属不純物、表面炭素不純物などが汚染の原因として挙げられる。この中でも、表面炭素不純物については、汚染原因の把握や特定が困難なこともあり、その低減については、まだ十分なレベルにまでは至っていない。
【0004】
例えば、特許文献1には多結晶シリコン収容治具からの揮発成分に関して、多結晶シリコン塊表面の有機不純物濃度の問題点、その低減化の方法が開示されている。また、非特許文献1には、各種樹脂材料におけるアウトガス発生についての情報が開示されている。このように、温度の影響により樹脂材料などを構成する材料から発生するアウトガス(揮発成分)は、周囲の物質に付着すると表面有機不純物、特に表面炭素不純物による汚染を引き起こす原因ともなる。
【0005】
このような塊状多結晶シリコンは、例えば、特許文献2に示されるように、金属汚染を避けるためにポリエチレンフィルムからなる包装材(プラスチックバッグ)により包装される。この特許文献2では、一定重量のポリシリコンが充填された後、プラスチックバッグは溶接ジョーを用いて一定の接点圧力でパルス封止がなされる。この封止操作における封止温度は封止ワイヤーの電気抵抗測定を検出して調整される。塊状多結晶シリコンは、その汚染レベルを低減することが強く求められている。包装材の封止においては、不十分な封止は汚染の原因ともなりうるため確実に密閉する必要があり、また、充填後に汚染の原因となるような接着剤などは使用されず、一般的には溶着による封止が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-57119公報
【文献】特開2014-108829号公報
【文献】特開昭51-61392号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】有機汚染物質/アウトガスの発生メカニズムとトラブル対策事例集(2008年1月31日 第1版第1刷 発行 p.28及び29 技術情報協会)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2の構成による包装方法では、溶接シーム形態での包装袋の損傷が課題として挙げられており、その対策として前述のような方法が開示されている。しかしながら、このような従来の包装袋の封止操作に関しては、封止に伴うアウトガスの影響の考慮は十分にされてこなかった。
【0009】
一方、特許文献3には、袋詰体のヒートシールに際して、袋詰体内の残留空気の脱気による袋詰体内物の長期保存を目的として、包装体内の脱気と予備シールを段階的に行い、充填口をシールし、充填口の冷却を行うことが開示されている。このような方法を、塊状多結晶シリコンを充填した包装袋に適用することも考えられるが、充填物へのアウトガスの付着を抑制する効果はあるものの、最終的にはシール後のアウトガスの考察はなく、十分な対策がとれない。このような包装袋の溶着による封止時のアウトガスは、封止条件(例えば、温度や時間)によってもその程度は変わり、発生量も少なくなると考えられるが、微量汚染であっても、使用先で製造される半導体等の特性に影響を及ぼす可能性があるため、多結晶シリコンでは無視できない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、塊状多結晶シリコン等の多結晶シリコンの包装方法に関し、上述した有機不純物、特に炭素不純物による表面汚染を低減する多結晶シリコンの包装方法、多結晶シリコンの二重包装方法及び単結晶シリコン用原料製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の多結晶シリコンの包装方法は、単結晶シリコン用原料となる多結晶シリコンの包装方法であって、包装袋に多結晶シリコンを充填した後、前記多結晶シリコンが充填されてなる充填部よりも前記包装袋の開口部側でありかつ前記包装袋を溶着してシールするための溶着シール予定部より前記充填部側の部位を、前記充填部に気体が流れ込まない様に挟持棒で挟持し、該挟持棒により挟持した状態で前記溶着シール予定部をシール棒により挟んで溶着して溶着シール部とし、溶着後に前記溶着シール部の温度が常温まで低下した後に前記挟持棒を取り外す方法であり、前記挟持棒を取り外した後にサーマルデソープションガスクロマトグラフ質量分析装置により表面の炭素不純物濃度を測定したときに、4.3ppbw以下となる。
【0012】
本発明では、溶着シール予定部が溶着される際に、該溶着シール予定部の充填部に気体が流れ込まない様に挟持棒で包装袋を挟持した状態で、溶着シール予定部がシール棒により溶着される。この際、包装袋の溶着時に発生するガスは、溶着シール部から開口部および充填部に向かって発生するが、溶着シール予定部より充填部側の部位が挟持棒により挟持されているため、溶着時に発生するガスは、充填部には流れ込まない。また、溶着シール部と挟持部との間隔を極力短くすることで、溶着シール部と挟持部との間のガスの発生領域を小さく制限できるとともに充填部から遠ざけることができ、挟持棒を取り外した後も多結晶シリコンの充填部に流れ込む不純物量を抑制でき、炭素不純物による多結晶シリコンの表面汚染を抑制できる。
【0013】
なお、上記挟持棒を取り外すのは、溶着シール部の温度が常温(例えば、25℃程度)まで低下した後であり、溶着シール部の温度が下がると発生ガス成分は包装袋内面に吸着しやすくなるため、充填物への付着の影響がより抑制される。
【0014】
多結晶シリコンの包装方法の好ましい態様としては、前記溶着シール予定部を前記シール棒により溶着する際に、前記シール棒により溶着された溶着部と気体の流通
が可能な未溶着部とを前記包装袋の開口部の幅方向に連続するように形成し、前記溶着部と前記挟持棒により挟持されている部分との間の気体を前記未溶着部により構成される小開口部から前記包装袋外に排出した後、前記未溶着部を溶着するとよい。
【0015】
なお、小開口部からの気体の排出方法としては、包装袋の外部から小開口部を通して気体を吸引する方法や、溶着部と挟持部との間を押圧することによりにより気体を小開口部から押し出して排出する方法を例示できる。
【0016】
上記態様では、最初に溶着シール予定部に溶着部と未溶着部とを連続して形成するので、溶着時に溶着部と挟持部との間に発生したガスを、未溶着部により構成される小開口部から包装袋外部に排出できる。また、未溶着部を溶着する際に発生するガスが残る可能性があるが、未溶着部の幅を溶着部全体の幅よりも小さくすることで、そのガス発生量が少なくなるので、炭素不純物による多結晶シリコンの表面汚染をさらに抑制できる。この場合も、溶着シール部の温度が低下した後に挟持棒を取り外すのがよい。
【0017】
本発明の多結晶シリコンの包装方法は、単結晶シリコン用原料となる多結晶シリコンの包装方法であって、包装袋に多結晶シリコンを充填した後、前記多結晶シリコンが充填されてなる充填部よりも前記包装袋の開口部側でありかつ前記包装袋を溶着してシールするための溶着シール予定部より前記充填部側の部位を、前記充填部に気体が流れ込まない様に挟持棒で挟持するとともに、該挟持棒またはその周辺が冷却された状態とし、該挟持棒により挟持した状態で前記溶着シール予定部をシール棒により挟んで溶着し、溶着後に前記挟持棒を取り外す方法であり、前記挟持棒を取り外した後にサーマルデソープションガスクロマトグラフ質量分析装置により表面の炭素不純物濃度を測定したときに、4.3ppbw以下となる。
【0018】
上記態様では、前記挟持棒またはその周辺を冷却した状態で包装袋を挟持することで、挟持部またはその周辺の温度が低下することから、溶着シール部と挟持部との間の部分も温度が上がりにくく、発生するガスの量も抑制される。また、溶着シール部と挟持部との間が冷却されることで、溶着時に発生したガス成分の包装袋内面への吸着を促進でき、該ガス成分の充填物への付着をさらに抑制できる。
【0019】
多結晶シリコンの包装方法の好ましい態様としては、前記溶着シール予定部が前記シール棒により溶着された後、前記挟持棒により挟持されていた部位と前記充填部との間で前記包装袋を折り曲げるとよい。
【0020】
上記態様では、包装袋内面において溶着時に発生したガス成分が付着した領域が、多結晶シリコンに接触することを抑制でき、炭素不純物による多結晶シリコンの表面汚染を確実に抑制できる。また、この折り曲げは複数回行うとよい。
【0021】
多結晶シリコンの包装方法の好ましい態様としては、前記挟持棒は、前記シール棒を取り外した後に取り外されるとよい。
【0022】
本発明の多結晶シリコンの二重包装方法は、上記多結晶シリコンの包装方法により前記多結晶シリコンが前記包装袋に包装された第1包装体を、前記包装袋とは異なる第2包装袋に収容した後、前記第1包装体を収容してなる収容部よりも前記第2包装袋の開口部側でありかつ前記第2包装袋を溶着してシールするための溶着シール予定部より前記収容部側の部位を、前記収容部に気体が流れ込まない様に挟持棒で挟持し、該挟持棒により挟持した状態で前記溶着シール予定部をシール棒により挟んで溶着し、溶着した後に前記挟持棒を取り外す。
【0023】
本発明では、多結晶シリコンが2つの包装袋により二重包装されるので、例えば、内側の包装袋が搬送される際に破れた場合であっても、外側の包装袋と内側の包装袋との間に多結晶シリコンを溜め置くことができ、これらが外部の雰囲気に曝されて汚染されることを抑制できる。
【0024】
また、第2包装袋の封止時に第1包装体の包装方法と同じ方法を採用しているので、第2包装袋の溶着時に発生するガス成分の第2包装袋内の第1包装体が収容されている部分への流れ込みを抑制し、それによって第1包装体外表面への発生ガス成分の付着が抑制でき、使用側での開封時に第1包装体に接触することによる有機不純物の汚染を抑制できる。これにより、単結晶シリコンの製造における汚染も抑制できる。また、第2包装袋の溶着シールによる第1包装体外表面へのガス成分の付着が抑制されているので、第1包装体の破損により多結晶シリコンが第1包装体外表面に付着した場合でも、汚染の影響を小さくできる。
【0025】
本発明の単結晶シリコン用原料製造方法は、多結晶シリコンを加工または破砕して塊状多結晶シリコンを形成し、該塊状多結晶シリコンを上記多結晶シリコンの包装方法又は上記多結晶シリコンの二重包装方法により包装し、包装された前記塊状多結晶シリコンを包装体から開封して、単結晶シリコンを製造する原料とする。
【0026】
本発明では、単結晶シリコンを製造する原料として用いられる塊状多結晶シリコンの炭素不純物による表面汚染を低減でき、この塊状多結晶シリコンを用いて製造される単結晶シリコンの炭素不純物による汚染(炭素不純物濃度)を低減できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、包装袋の溶着時に発生するガスによる多結晶シリコン表面の炭素不純物汚染を抑制でき、この多結晶シリコンを用いて製造される単結晶シリコンの炭素不純物濃度を低減できる。さらに、多結晶シリコンの二重包装方法により包装袋を扱う使用側においても、包装袋開封時の接触による有機不純物の汚染を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る多結晶シリコン用包装袋の斜視図である。
【
図2A】上記実施形態における多結晶シリコンをシリコン用包装袋に収容する際の手順を説明する図である。
【
図2B】上記実施形態における多結晶シリコンをシリコン用包装袋に収容する際の手順を説明する図である。
【
図2C】上記実施形態における多結晶シリコンをシリコン用包装袋に収容する際の手順を説明する図である。
【
図3】上記実施形態における多結晶シリコンが充填されたシリコン用包装袋の封止領域における溶着シール予定部及び挟持予定部を示す図である。
【
図4】上記実施形態におけるシリコン用包装袋の封止領域における挟持予定部及び溶着シール予定部に挟持棒及びシール棒が配置された例を示す平面図である。
【
図5A】上記実施形態における多結晶シリコンが充填されたシリコン用包装袋をシールする手順を示す図である。
【
図5B】上記実施形態における多結晶シリコンが充填されたシリコン用包装袋をシールする手順を示す図である。
【
図5C】上記実施形態における多結晶シリコンが充填されたシリコン用包装袋をシールする手順を示す図である。
【
図5D】上記実施形態における多結晶シリコンが充填されたシリコン用包装袋をシールする手順を示す図である。
【
図6】上記実施形態における多結晶シリコンが充填されたシリコン用包装袋の封止領域の一部がシールされた状態を示す斜視図である。
【
図7】上記実施形態における多結晶シリコンが充填されて封止された第1包装体が第2包装体内に収容された例を示す斜視図である。
【
図8】上記実施形態の変形例に係る多結晶シリコンが充填されたシリコン用包装袋の溶着シール予定部の一部がシールされた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る多結晶シリコンの包装方法、多結晶シリコンの二重包装方法及び単結晶シリコン用原料製造方法について図面を用いて説明する。
【0030】
図1は、本実施形態のシリコン用包装袋1を示す斜視図である。
本実施形態では、シリコン用包装袋1は、例えばポリエチレンなどの合成樹脂等の透明フィルムから構成され、
図1に示すように、4つの側面部2,2,3,3と底面部4とを備えた横断面略長方形状の形状を有しており、4つの側面部2,2,3,3のうち対向する一対の側面部3,3には、該包装袋1を小さく折り畳むことができるようにするため、幅方向の中央位置に内側に向かって屈曲可能な折り目が設けられている。未使用時においては、シリコン用包装袋1はこの折り目に沿って畳まれてコンパクトなものであり、使用時に広げることによって袋状になる。
【0031】
このシリコン用包装袋1においては、底面部4はフィルムの一端において、一対の側面部3,3が折り目に沿って畳まれた状態で、他方の一対の側面部2,2の端部の内側面同士が重ね合わせられ、これらをシール装置により封止することによって、底シール部7が形成される。
【0032】
また、本実施形態においては、単結晶シリコンの原料となる塊状多結晶シリコンWを主な包装対象としている。この塊状多結晶シリコンWは、シーメンス法と呼ばれる気相法によってロッド状に製造され、その後、原料として使用しやすいように加工(例えば切断)や破砕されることにより製造される。
【0033】
[塊状多結晶シリコンの包装方法]
次に、塊状多結晶シリコンWの包装方法の具体的手順について説明する。上記の構成の包装袋1を内側袋1a(包装袋)として、
図2Aに示すように、まず該内側袋1aの内部に塊状多結晶シリコンWを所定量充填する。次に、
図2Bに示すように、内側袋1aの上端の開口部において、折り目のついていない一対の側面部2a,2aの内側面同士を重ね合わせて重ね合わせ部8aを形成する。その後、重ね合わせ部8aの上端部を水平方向(内側袋1aの幅方向)に沿って熱シールすることで、内側袋1aは封止される。そして、
図2Cに示すように、帯状の折り畳み部9aを形成する。これにより、塊状多結晶シリコンWの内側袋1aへの充填手順が終了する。
【0034】
以下、
図2Bにおける内側袋1aの重ね合わせ部8a(封止領域H1)の一部を封止する(熱シールする)工程について、詳しく説明する。
【0035】
図3は、塊状多結晶シリコンWが充填された内側袋1aの封止領域H1における溶着シール予定部H11、挟持予定部H12及び余長部H13を示す図であり、
図4は、溶着シール予定部H11にシール棒30、挟持予定部H12に挟持棒20が配置された例を示す図である。
【0036】
塊状多結晶シリコンWが充填された内側袋1aは、塊状多結晶シリコンWが充填される充填部J1と、内側袋1aの開口部側に位置する封止領域H1(重ね合わせ部8a)とを有する。これらのうち、封止領域H1の開口部側の部位が
図4に示す挟持棒20及びシール棒30のそれぞれにより挟持される。なお、以下では、シール棒30により挟持されて溶着される予定部位を溶着シール予定部H11といい、挟持棒20により挟持される予定部位を挟持予定部H12という。
【0037】
すなわち、
図4に示すように、封止領域H1において、内側袋1aの開口部付近に内側袋1aの幅方向に沿って溶着シール予定部H11が配置され、溶着シール予定部H1より充填部J1側に内側袋1aの幅方向に沿って挟持予定部H12が配置され、溶着シール予定部H1(シール棒30により溶着された後は溶着シール部S1)と充填部J1との間に余長部H13が形成される。そして、挟持棒20が挟持予定部H12を挟持し、シール棒30が溶着シール予定部H12を挟持する。これらシール棒30及び挟持棒20は、内側袋1aの幅方向に沿って相互に平行に配置されるが、内側袋1aの幅の全体を挟持できる形態であれば、必ずしも内側袋1aの幅方向に平行に配置されなくてもよく、内側袋1aの幅方向に対して斜めに配置される場合も含む。また、シール棒30と挟持棒20とは、相互に平行な配置でなくてもよい。シール棒30及び挟持棒20の幅や長さも内側袋1aの材質や幅寸法等に応じて適宜設定される。
【0038】
本実施形態では、溶着シール予定部H11と挟持予定部H12とは、一定の間隔を開けて配置されるが、この間隔は狭い方が望ましい。溶着シール予定部H11が溶着される際に発生するガス成分は、上記各予定部H11,H12間の内側袋1aの内面に付着することから、上記間隔を狭く(距離を短かく)することで、ガス成分が付着した領域を小さく制限できるとともに塊状多結晶シリコンWから遠ざけることができ、充填された塊状多結晶シリコンWの汚染を抑制することができる。
【0039】
挟持予定部H12と充填部J1との間に設けられる余長部H13は、溶着シール予定部H11が溶着された後に折り曲げられる部位である。溶着後に余長部H13が折り曲げられることにより、溶着時に溶着シール部S1と挟持部H121との間に発生したガス成分が内側袋1a内面に付着した領域を余長部H13の折り曲げ部分に保持することができ、その領域が塊状多結晶シリコンWに接触することを防止する。
【0040】
溶着装置40は、例えば、インパルスシーラー等により構成され、充填部J1に気体が流れ込まないように挟持予定部H12を挟持する挟持棒20と、溶着シール予定部H11を挟んだ状態で加熱して溶着するシール棒30と、を備えている。これらのうち、シール棒30の一方は、固定された受け部であり、他方は、上記受け部に対向して配置され、該受け部に向けて可動する加圧部により構成されている。なお、受け部及び加圧部の一方若しくは両方には、溶着シール予定部H11を加熱するヒーター(図示省略)が設けられている。
【0041】
このような溶着装置40による溶着(熱シール)加工は、例えば、
図5に示す工程順により実行される。なお、
図5では、重ね合わせ部8aの一部(溶着シール予定部H11及び挟持予定部H12近傍)を拡大して示している。
【0042】
まず、
図5Aに示すように、塊状多結晶シリコンWが充填された内側袋1aの挟持予定部H12を気体の流通ができないように、予め冷却された挟持棒20で両側から押圧して挟持する。この際、挟持棒20は、予め冷却されていることから、挟持部(挟持棒20によって挟持されている部分)H121やその周辺の温度が低下する。
【0043】
この冷却された挟持棒20により挟持予定部H12を挟持した状態で、
図5Bに示すように、溶着シール予定部H11をシール棒30により挟持する。そして、シール棒30の一方に取り付けられたヒーター(図示略)に瞬間的に大電流が流れ、該ヒーターが発熱すると、その熱伝導によって、
図5Cに示すように、溶着シール予定部H11が熱溶着されて溶着シール部S1となる。この溶着シール予定部H11が溶着される際には、溶着に伴うガスが発生するが、溶着シール予定部H11の下側(開口部とは反対側)の挟持部H121が挟持棒20により挟持されているため、開口部側とは反対側の溶着シール部S1から発生するガスは、充填部J1(開口部とは反対側)には流れ込まない。
【0044】
この工程では、挟持棒20が予め冷却されていることから、挟持部H121やその周辺の温度が低下しており、このた、シール棒30により溶着シール予定部H11が溶着される際に生じる熱が挟持部H121まで広がることが抑制される。また、溶着シール予定部H11を溶着する際に発生したガスが挟持棒20により冷却されることから、溶着シール部S1と挟持部H121との間の部分も温度が上がりにくく、発生するガスの量も抑制される。さらに、溶着シール部S1と挟持部H121との間が冷却されることで、発生したガス成分が溶着シール部S1と挟持部121との間で内側袋1aに吸着されやすくなることから、溶着時に発生したガス成分が塊状多結晶シリコンWにより吸着されにくくなる。よって、充填されている塊状多結晶シリコンWへの汚染が抑制される。
【0045】
なお、上記実施形態では予め冷却された挟持棒20により溶着シールすることとしているが、挟持棒20やその周辺に冷風を吹き付けた状態で溶着シールする構成としてもよい。具体的には、挟持棒20または挟持棒20の周辺(挟持部H121と溶着予定部H12間)に冷風を吹き付けながら、溶着シール予定部H11にシール棒30を挟持して溶着シールを行う。これにより、予め冷却された挟持棒20を使用して溶着シールを行う場合と同様の効果が得られ、溶着シール予定部H11を溶着する際に発生したガスが冷風により冷却されることから、溶着部S1と挟持部H121との間の部分も温度が上がりにくく、発生するガスの量も抑制され、塊状多結晶シリコンWへの汚染が抑制される。
【0046】
この溶着シール予定部H11が溶着され、溶着シール部S1が形成されると、
図5Dに示すように、シール棒30を溶着シール部S1から取り外す。そして、溶着シール部S1の温度が常温(例えば、25℃)まで低下した後、挟持棒20が挟持部H121から取り外されて、
図6に示す状態となる。この際、溶着時に発生したガス成分の大部分が内側袋1a内面に吸着されているので、挟持棒20を外しても、充填部J1がガス成分により汚染されることが抑制される。挟持棒20を外した後、挟持棒20により挟持されていた部位より充填部J1側の余長部H13を複数回折り曲げることにより、挟持棒20により挟持されていた部位と溶着シール部S1の間を包み込むように折り畳む。溶着シール部S1を包み込むように余長部H13を折り曲げるには、2回以上折り曲げるとよいが、その折り曲げ回数は必ずしも限定されない。
【0047】
これにより、内側袋1aは、
図2Cに示すように余長部H13が折り畳まれて、内部に塊状多結晶シリコンWが充填された状態となる。余長部H13が折り曲げられているため、内側袋1aの内面におけるガス成分が付着した領域と充填部J1との間に折り曲げられた余長部H13が介在し、充填部J1内の塊状多結晶シリコンWへのガス成分の接触がさらに抑制される。
【0048】
そして、内側袋1aの内部に塊状多結晶シリコンWが充填され封止された内側袋包装体10a(第1包装体)を外側袋1b(第2包装袋)に収容する。
なお、外側袋1bも内側袋1aと同様に、前述した包装袋1と同一形状とされているが、その外径寸法は内側袋1aの外径寸法よりも僅かに大きなものとされている。
内側袋包装体10aを外側袋1bに収容する際には、断面形状である略正方形の辺を揃えるようにして収容する。
【0049】
このようにして内側袋包装体10aを内部に収容した外側袋1bは、内側袋1aと同様に、外側袋1b上端の開口部において折り目のついていない一対の側面部2b、2bの内側面同士を重ね合わせて重ね合わせ部8bを形成し、重ね合わせ部8bの上端部近傍が上記内側袋1aと同じ方法により、熱シールされることにより封止され、内側袋包装体10aを包装する。外側袋1bにおいて内側袋包装体10aを収容した部位を収容部J2という。ただし、以下の包装方法の説明において、前述した内側袋1aへの包装方法と同様の手順となるので、必要に応じて
図2~
図5を参照するとともに、共通部分には、内側袋1aの包装方法で説明したときと同じ符号を用いて説明する。
図2~
図5における充填部J1は、収容部J2と読み替えられる。
【0050】
すなわち、内側袋包装体10a(第1包装体)を収容した外側袋1bについても、内側袋包装体10aを収容してなる収容部J2に対して、外側袋1bの開口部側に位置する溶着シール予定部H11より内側袋包装体10aの収容部J2側に位置する挟持予定部H12を気体の流通ができないように挟持棒20で挟持し、該挟持棒20により挟持した状態の挟持部H121に沿って溶着シール予定部H11をシール棒30により挟んで溶着し、溶着シール部S1の温度が常温まで低下した後にシール棒30及び挟持棒20を取り外すことにより、熱シールを行う。このような手順により
図7に示す塊状多結晶シリコンWを内部に収容した二重構造のシリコン包装体10が形成される。そして、外側袋1bの余長部H13において挟持棒20により挟持されていた部位より収容部J2側の部位を折り曲げ、挟持棒20により挟持されていた部位と溶着シール部S1の間を包み込むように余長部H13を折り畳むことにより、帯状の折り畳部(図示省略)を形成して、略直方体状の包装体10となる。
【0051】
また、外側袋1bを内側袋1aと同じように冷却した挟持棒20により挟持した状態で封止することで、外側袋1bの溶着シール予定部H11を溶着する際に発生したガスが挟持棒20により冷却され、挟持部H121周辺の温度も低下するので、溶着シール部S1と挟持部H121との間の部分も温度が上がりにくく、発生するガスの量も抑制される。また、溶着シール部S1と挟持部H121との間が冷却されることで、発生したガス成分が吸着されやすくなることから、溶着時に発生したガス成分の外側袋1b内面への吸着を溶着シール部S1と挟持部H121との限られた範囲内で促進でき、該ガス成分の内側袋包装体10a外面への付着を抑制できる。また、挟持棒20は、溶着シール部S1の温度が常温に低下するまで挟持部H121を挟持している、すなわち溶着シール部S1の温度が常温に低下した後、挟持棒20が取り外されるので、溶着時に発生するガス成分が外側袋1bの内部へ流れ込むことを抑制できる。さらに、挟持棒20が取り外された後、外側袋1bの余長部H13において挟持棒20により挟持されていた部位より収容部J2側の部位を折り曲げ、挟持棒20により挟持されていた部位と溶着シール部S1の間を包み込むように余頂部H13を折り畳むことにより、外側袋1bの内面におけるガス成分が付着した領域が、内側袋包装体10aの外面に接触することを抑制でき、内側袋包装体10aへのガス成分の付着が抑制される。このため、包装体10内の内側袋1aが運搬中等で破損した場合でも、塊状多結晶シリコンWが内側袋1a外面や外側袋1b内面に付着したガス成分により汚染されることを抑制できる。
【0052】
そして、このような包装体10は、単結晶シリコンを製造する製造工場等に搬送され、包装された塊状多結晶シリコンWが包装体10から開封されて、単結晶シリコンを製造する原料となる。
【0053】
本実施形態では、上述したように、外側袋1bの封止時に内側袋1aと同じ包装方法を採用しているので、外側袋1bの溶着時に発生するガス成分が、外側袋1b内の内側袋包装体10aが収容されている部分に流れ込むことを抑制し、それによって内側袋包装体10aの外表面へのガス成分の付着が抑制でき、使用側での開封時に内側袋包装体10aに接触することによる接触汚染を抑制できる。これにより、単結晶シリコンの製造における汚染も抑制できる。また、内側袋包装体10aの内側袋1aに破損が生じた場合でも、内側袋包装体10aの外表面への溶着時のガス成分の付着が抑制されているので、包装された塊状多結晶シリコンWが内側袋包装体10aの外表面に付着しても、汚染の影響を受けにくくすることができる。
【0054】
なお、開封時には、溶着シール部S1及び挟持棒20により挟持されていた部位を除去するように、挟持棒20により挟持されていた部位よりも、外側袋1bにおいては収容部J2(内側袋1aにおいては充填部J1((以下、単に「収容部J2(充填部J1)」あるいは「充填部J1(収容部J2)」と記載する))側、の位置で外側袋1b及び内側袋1aを切断するとよい。このため、例えば、内側袋1a及び外側袋1bの外面において、挟持部121より収容部J2(充填部J1)側となる位置で切断好適位置を示す表示などを付してもよい。
【0055】
本実施形態では、溶着シール予定部H11が溶着される際に、該溶着シール予定部H11の充填部J1(収容部J2)側に位置する挟持予定部H12を気体の流通ができない様に挟持棒20で挟持した状態で、溶着シール予定部H11がシール棒30により溶着される。この際、包装袋1の溶着時に発生するガスは、溶着シール部S1の両側で発生するが、充填部J1(収容部J2)側に位置する挟持部H121が挟持棒20により挟持されているため、開口部とは反対側の溶着シール部S1から発生するガスは、充填部J1(収容部J2)(開口部とは反対側)には流れ込まない。また、溶着シール部S1の温度が常温になった後に挟持棒20を取り外すので、塊状多結晶シリコンWの充填部J1(収容部J2)に流れ込む不純物量を抑制でき、上記ガスによる塊状多結晶シリコンWの表面炭素不純物による汚染を抑制できる。
【0056】
また、冷却された挟持棒20により挟持予定部H12を挟持することで、挟持部H121の温度が低下するので、溶着シール予定部H11が溶着される際に生じる熱が挟持部H121まで広がることが抑制される。また、溶着シール予定部H11を溶着する際に発生したガスが挟持棒20により冷却されることから、挟持部H121周辺の温度も低下するので、溶着シール部S1と挟持部H121との間の部分も温度が上がりにくく、発生するガスの量も抑制される。また、溶着シール部S1と挟持部H121との間が冷却されることで、発生したガス成分が吸着されやすくなることから、溶着時に発生したガス成分の内側袋1a内面への吸着を溶着シール部S1と挟持部H121との間の限られた範囲内で促進でき、該ガス成分の塊状多結晶シリコンWへの付着を抑制できる。
【0057】
さらに、挟持棒20により挟持されていた部位より充填部J1(収容部J2)側で余長部H13を折り曲げることにより、内側袋1a内面の溶着時に発生したガス成分が付着した領域が、塊状多結晶シリコンWに接触することを抑制でき、炭素不純物による塊状多結晶シリコンWの表面汚染を確実に抑制できる。
【0058】
また、塊状多結晶シリコンが2つの包装袋1(内側袋1a及び外側袋1b)により二重包装されるので、例えば、内側袋1aが搬送される際に破れた場合であっても、外側袋1bと内側袋1aとの間に塊状多結晶シリコンWを溜め置くことができ、これらが外部の雰囲気に曝されて汚染されることを抑制できる。
【0059】
以上説明したような塊状多結晶シリコンWの包装方法を用いることにより、単結晶シリコンを製造する原料として用いられる塊状多結晶シリコンW表面の炭素不純物による汚染を低減でき、この塊状多結晶シリコンWを用いて製造される単結晶シリコンの炭素不純物による汚染(炭素不純物濃度)を低減できる。
【0060】
本発明における塊状多結晶シリコンWの使用に当たっては、溶着シール部S1より充填部J1(収容部J2)側の内側袋1a(又は外側袋1b)の内面に溶着シールに伴うガス成分が付着しているため、内側袋1a(又は外側袋1b)の開封時に溶着シール部S1より充填部J1(収容部J2)側へ一定の長さを隔てて(少なくとも挟持棒20により挟持されていた部分までを含んで除去するように)余長部H13を切断後、内側袋1a(又は外側袋1b)内より塊状多結晶シリコンW(又は内側袋包装体10a)を取り出すことで、取出し時のガス成分付着を回避できる。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態では、
図4及び
図6に示すように、シール棒30を溶着シール予定部H11の幅方向の全領域を覆うように配置し、一度に溶着シール予定部H11を溶着して溶着シール部S1を形成することとしたが、これに限らず、溶着シール予定部H11の一部を溶着し、包装袋1の幅方向の一部に未溶着部を形成して、溶着時に発生するガスを未溶着部から排出した後に、溶着シール予定部H11の残り(未溶着部)を溶着することにより溶着シール部S1を形成することとしてもよい。
【0063】
図8は、上記実施形態の変形例に係る塊状多結晶シリコンWが充填されたシリコン用包装袋1aの溶着シール予定部H11の一部が熱シールされた例を示す図である。内側袋1aを例として説明するが、二重包装する場合の外側袋1bにおいても同様である。
【0064】
本変形例では、挟持予定部H12を挟持棒20により挟持した状態で、溶着シール予定部H11をシール棒30により溶着する際に、シール棒30により溶着された溶着部S21と気体の流通が可能な未溶着部とを挟持部H121に沿って連続して形成し、溶着部S21と挟持予定部H12との間の気体を未溶着部により構成される小開口部81から内側袋1aの開口部側に排出した後、溶着シール予定部H11の未溶着部(小開口部81)を溶着する。
【0065】
この小開口部81からの気体は、内側袋1aの外部から吸引することや、溶着部S21と挟持部H121との間を押圧することにより押し出すことにより包装袋1a外に排出される。なお、上記気体は、溶着シール予定部H11の一部を溶着する際に生じるガスである。
【0066】
本変形例では、シール棒30により溶着された溶着部S21と未溶着部とを挟持部H121に沿って連続して形成するので、溶着シール予定部H11の一部を溶着する際に溶着部S21と挟持部H121との間に発生したガスを、未溶着部により構成される小開口部81から外部に排出できる。また、未溶着部の幅は、溶着部S1の全体の幅よりも小さいことから、未溶着部を溶着する際に発生するガスは、未溶着部を形成せずに包装袋1の幅の全体を溶着する上記実施形態の溶着方法と比べてその量が少ないので、塊状多結晶シリコンWの表面炭素不純物による汚染をさらに抑制できる。
【0067】
なお、本変形例では、未溶着部により構成される小開口部81は、
図8の右側端部に設けることとしたが、これに限らず、
図8の左側であっても、溶着シール部の何れか一部であればよい。また、小開口部81を複数設けることとしてもよい。なお、これらの場合も溶着シール部の温度が低下した後に挟持棒を取り外すのが望ましい。
【0068】
また、上記変形例の各方法は、内側袋包装体10aを収容する外側袋1bを溶着する場合にも適用できる。この場合、外側袋1bの溶着時に発生するガスによる内側袋包装体10aの外面の汚染をさらに抑制できる。
【0069】
上記実施形態では、挟持棒20は、予め冷却されていることとしたが、これに限らない。例えば、挟持予定部H12を挟持した後に冷却されることとしてもよい。なお、挟持棒20を予め冷却する場合、あるいは挟持した後に挟持棒20を冷却する場合には、挟持棒20を冷却しない場合と比べて、溶着シール予定部の温度が低くなりやすいため、溶着シール部S1の溶着強度が低下しない程度に溶着シール予定部H11の幅寸法を設定するとよい。また、溶着装置40が挟持棒20とシール棒30との間に冷却棒を別途設け、該冷却棒により挟持予定部H12と溶着シール予定部H11との間を冷却することとしてもよい。挟持棒20は冷却されていなくてもよい。この場合、上記実施形態と同様に、溶着シール部S1の温度が常温に低下してから挟持棒20を取り外すようにすればよい。
【0070】
上記実施形態では溶着装置40は、インパルスシーラーにより構成されることとしたが、熱板シーラー、ハンドシーラー、高周波シーラー、超音波シーラーなどによる溶着を行う場合でも本発明の方法は可能である。
【0071】
また、上記実施形態では溶着装置40としてシール棒30と挟持棒20を含むような装置構成としているが、溶着装置はシール棒と挟持棒を別の装置構成としたもので封止を行う構成でもよい。
【0072】
また、シリコン用包装袋1は、ポリエチレンの場合、低密度ポリエチレンの袋とすることができ、それ以外の袋、例えば、ポリプロピレンなどの他の材質の袋などを使用することもできる。溶着装置での溶着温度等の条件は包装袋の材質、溶着幅、溶着強度等に応じて適宜設定される。
【実施例】
【0073】
包装袋として厚さが約0.3mmで幅が約140mmのポリエチレン製袋を使用し、塊状多結晶シリコンを充填し、インパルスシーラー(椿本興業株式会社製MTB-25)を用いて溶着シールした。塊状多結晶シリコンは、最大辺長が20mm~50mmのものをガラス製シャーレに3個乗せて包装袋に収容した。この塊状多結晶シリコンの表面に有機物由来の汚染物が付着している可能性を排除するために、前処理として、洗浄処理を行ったシャーレごと電気炉内に入れ、約500℃で約120分加熱処理した。これにより、塊状多結晶シリコン表面に有機物由来の不純物が付着している場合、その多くが揮発して除去される。
【0074】
前処理を行った塊状多結晶シリコンを包装袋内面に接触させないようにシャーレごと包装袋に収容した。シャーレごと収容するのは、包装袋との接触部位より包装袋からの炭素不純物の付着を排除するためである。
【0075】
塊状多結晶シリコンを包装袋に収容した後、包装袋の挟持予定部を挟持棒で挟持した状態でインパルスシーラーのシール棒を約160℃の温度に設定し、開口部を溶着した。挟持棒は約10mmの幅の平坦面を有するプラスチック製板材を用い、その平坦面で包装袋を気体の流通ができないように挟持した。挟持棒で挟持した部分と溶着部との間隔は20mmとした。
【0076】
溶着後、シール棒を取り外し、その後30秒経過してから、挟持棒を取り外した。その後、挟持棒で挟持されていた部位と塊状多結晶シリコンが収容されている部位との間で溶着部と挟持棒で挟持されていた部位との間を包み込むように包装袋の余長部を2回折り曲げた(実施例1)。包装袋の余長部を折り曲げないものも同様の方法で作製した(実施例2)。
【0077】
また、溶着の際に、包装袋の全幅にわたって溶着せずに、シール棒の位置に対して溶着予定部の位置をずらし、包装袋の幅の端部の3mmの長さ分を溶着しない状態で残りの部分を溶着し、その後、溶着した部分と挟持部との間の部分を押圧することにより、その間の気体を未溶着部の小開口部から排出した後に、未溶着部を溶着した。その後、実施例1及び実施例2と同様に、余長部を折り曲げたもの(実施例3)と折り曲げないもの(実施例4)とを作製した。なお、実施例3および実施例4では、未溶着部を形成する段階から未溶着部を溶着するまでは挟持予定部を挟持した状態で上記溶着を行った。その他の溶着シール時の挟持棒や溶着シール棒の取扱い手順、方法は実施例1および実施例2と同様に行った。
【0078】
また、包装袋を挟持する挟持棒について、使用前に約5℃の雰囲気に保管しておき、その挟持棒で包装袋を挟持して溶着した。溶着時の挟持部及びその周辺の温度は5℃~10℃であった。その後、実施例1及び実施例2と同様に、余長部を折り曲げたもの(実施例5)と折り曲げないもの(実施例6)とを作製した。なお、実施例5および実施例6においても溶着シール時の挟持棒や溶着シール棒の取扱い手順、方法は上記実施例と同様に行った。
【0079】
比較例として、溶着時に包装袋を挟持棒で挟持しなかったもの(比較例1)を作製し、参考例として、開口部を溶着しないで、気体の流通ができないようにクリップで閉じたもの(参考例1)も作製した。
【0080】
なお、本実施例および比較例では、溶着シール時の加熱は2.1秒、加熱後の冷却(温度降下)は5秒とし、その後シール棒を溶着部から取り外すように行った。
【0081】
以上のようにして塊状多結晶シリコンを収容してなる包装体を室温(約25℃)で約5時間保管した。なお、以上の包装及び保管は、クリーンルーム(米国連邦規格Fed-Std209Eのクラス1000)内で行った。
【0082】
このようにして得られた各実施例及び比較例の包装体を開封し、充填されていた塊状多結晶シリコンを取り出し、その表面の不純物濃度をサーマルデソープションガスクロマトグラフ質量分析装置(TD-GC/MS)により測定した。その結果を表1に示す。
【0083】
測定された炭素不純物の主な成分は、1-Butanol、Toluene、1,3,5,7-Cyclooctatetraene、1-Hexanol,2-ethyl-、Alkane、その他成分(その他成分はAlkaneが酸化したものと思われる)であった。
【0084】
【0085】
表1からわかるように、実施例の包装方法で包装された塊状多結晶シリコンは、挟持棒を使用しなかった比較例1と比べて表面の炭素不純物汚染が少なく、炭素不純物濃度は4.3ppbw以下であり、溶着しなかった参考例1と同等のレベルであった。また、挟持棒を使用した状態で溶着を行った場合と比べて、未溶着部を形成して溶着時に発生する不純物を含む気体を排出することで不純物濃度を低減する効果も確認された。また、冷却された挟持棒による溶着部周辺の温度を抑制することで不純物濃度を低減することも確認された。なお、本実施例で使用した塊状多結晶シリコン表面には4ppbwレベルの炭素不純物が確認されているが、これらは塊状多結晶シリコンの前処理でも揮発しない成分、あるいは、揮発成分の再付着の一部であることが推察される。この結果により、本実施形態の包装方法は、塊状多結晶シリコンの表面汚染を低減できることがわかる。
【0086】
また、実施例の中でも、溶着後に余長部を折り曲げた状態とした実施例1は、余長部を折り曲げなかった実施例2に比べて、塊状多結晶シリコン表面の炭素不純物濃度が低減した。同様に、余長部を折り曲げた実施例3及び実施例5は、余長部を折り曲げなかった実施例4及び実施例6に比べてそれぞれ表面の炭素不純物が低減した。
【0087】
実施例の結果より、本発明の包装方法では開口部の溶着シール時に発生する包装袋の成分と考えられる炭素不純物(有機不純物)の低減が見られることより、二重包装を行うような包装方法の場合、外側袋の包装時についても収容された内側袋外表面への炭素不純物付着の低減が期待できる。これにより、塊状多結晶シリコン使用段階での包装袋の取扱い時において炭素不純物の影響を抑制することが可能と考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
単結晶シリコン等を製造する際に溶融原料として用いる塊状多結晶シリコン等を、有機不純物、特に炭素不純物による表面汚染を低減した状態で包装できる。
【符号の説明】
【0089】
1 シリコン用包装袋(包装袋)
1a 内側袋(包装袋)
1b 外側袋(包装袋)
2 2a 2b 3 3a 3b 側面部
4 底面部
7 底シール部
8a 8b 重ね合わせ部
9a 折り畳み部
10 包装体
10a 内側袋包装体
20 挟持棒
30 シール棒
40 溶着装置
81 小開口部(未溶着部)
H1 封止領域
H11 溶着シール予定部
H12 挟持予定部
H121 挟持部
H13 余長部
J1 充填部
J2 収容部
S1 溶着シール部
S21 溶着部
W 塊状多結晶シリコン