IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

<>
  • 特許-X線位相イメージング装置 図1
  • 特許-X線位相イメージング装置 図2
  • 特許-X線位相イメージング装置 図3
  • 特許-X線位相イメージング装置 図4
  • 特許-X線位相イメージング装置 図5
  • 特許-X線位相イメージング装置 図6
  • 特許-X線位相イメージング装置 図7
  • 特許-X線位相イメージング装置 図8
  • 特許-X線位相イメージング装置 図9
  • 特許-X線位相イメージング装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】X線位相イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/041 20180101AFI20220830BHJP
【FI】
G01N23/041
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020552539
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2019030165
(87)【国際公開番号】W WO2020079919
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2018194895
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】土岐 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 健士
(72)【発明者】
【氏名】白井 太郎
(72)【発明者】
【氏名】森本 直樹
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-029777(JP,A)
【文献】国際公開第2007/125833(WO,A1)
【文献】特開2018-155502(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108469443(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体にX線を照射するX線源と、
前記X線源から照射されたX線を検出する検出器と、
前記X線源と前記検出器との間に配置され、前記X線源から照射されるX線を線光源にしてX線の可干渉性を高めるマルチスリットである第1格子と、前記第1格子からのX線が照射され自己像を形成す位相格子である第2格子とを含む複数の格子と、
前記検出器によって検出された信号に基づいて位相コントラスト画像を生成する画像処理部と、を備え、
前記位相コントラスト画像の鮮明度を高めるために、前記X線源の焦点サイズを小さくするように変更した場合に、前記X線源は、焦点サイズを小さくすることに起因して、X線が照射されることにより拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンが検出される場合に、拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンが、前記検出器によって検出されないように、前記第1格子と前記X線源との相対的な配置が調整されるか、または前記X線源の焦点サイズが増加するように前記X線源の焦点サイズが調整される、X線位相イメージング装置。
【請求項2】
前記X線源は、前記検出器によって解像されることにより、拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンの縞模様が検出されないように、前記第1格子と前記X線源との相対的な配置または前記X線源の焦点サイズが調整される、請求項1に記載のX線位相イメージング装置。
【請求項3】
前記X線源は、X線の光軸方向において、拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンが前記検出器によって検出されない位置に、前記第1格子から離間して配置される、請求項1または2に記載のX線位相イメージング装置。
【請求項4】
前記X線源は、拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンの1周期が、前記検出器の画素サイズよりも小さくなるような拡大率となる位置に配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載のX線位相イメージング装置。
【請求項5】
前記X線源は、以下の式(1)~(3)を定義した場合、以下の式(4)を満たすような位置に配置される、請求項4に記載のX線位相イメージング装置。
【数1】
ここで、
m:拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンの拡大率;
R:前記X線源と前記検出器との間の距離;
:前記X線源と前記第1格子との間の距離;
:拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンの周期;
:前記第1格子の格子周期;
n:拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンに含まれる画素数;
:前記検出器の画素サイズ;
である。
【請求項6】
前記X線源の焦点サイズの大きさに起因して生じる、拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンのぼけ量が、拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンが前記検出器によって検出されなくなる前記ぼけ量となるように、前記X線源の焦点サイズが設定される、請求項1または2に記載のX線位相イメージング装置。
【請求項7】
被写体にX線を照射するX線源と、
前記X線源から照射されたX線を検出する検出器と、
前記X線源と前記検出器との間に配置され、前記X線源から照射されるX線の可干渉性を高める第1格子と、前記第1格子からのX線が照射される第2格子とを含む複数の格子と、
前記検出器によって検出された信号に基づいて位相コントラスト画像を生成する画像処理部と、を備え、
前記X線源は、焦点サイズを小さくすることに起因して、X線が照射されることにより拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンが検出される場合に、拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンが、前記検出器によって検出されないように、前記第1格子と前記X線源との相対的な配置または前記X線源の焦点サイズが調整され、
前記X線源の焦点サイズの大きさに起因して生じる、拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンのぼけ量が、拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンが前記検出器によって検出されなくなる前記ぼけ量となるように、前記X線源の焦点サイズが設定され、
前記X線源は、前記ぼけ量が、拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンの1周期の3.0倍以上の範囲となるように、前記X線源の焦点サイズが設定される、X線位相イメージング装置。
【請求項8】
前記X線源は、拡大されて投影された前記第1格子の格子パターンの1周期が、前記検出器の画素サイズよりも大きくなる場合に、以下の式(5)により定義される前記ぼけ量の大きさが、以下の式(6)を満たすように、前記X線源の焦点サイズが設定される、請求項7に記載のX線位相イメージング装置。
【数2】
ここで、
b:前記ぼけ量;
s:前記X線源の焦点サイズ;
である。
【請求項9】
前記第2格子と、前記検出器との間に配置された第3格子をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のX線位相イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線位相イメージング装置に関し、X線の可干渉性を高める格子を備えるX線位相イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線の可干渉性を高める格子を備えるX線位相イメージング装置が知られている。このようなX線位相イメージング装置は、たとえば、特開2012-16370号公報に開示されている。
【0003】
特開2012-16370号公報のX線位相イメージング装置は、X線源と、X線源の照射方向に配置された検出器と、X線源とX線画像検出器との間において、X線源の近傍に設けられたマルチスリットと、マルチスリットと検出器との間に配置された格子とを含む複数の格子と、を備えている。マルチスリットは、X線源から照射されるX線の可干渉性を高めるために設けられている。特開2012-16370号公報のX線撮像装置は、複数の格子のいずれかを格子ピッチの方向に移動させながら、X線源から照射されたX線を複数の格子を用いて干渉させることにより、検出器において検出されるX線の強度変化を表す強度変調信号を取得する。
【0004】
特開2012-16370号公報のX線撮像装置は、複数の格子の間に被写体を置かない場合の強度変調信号と、被写体を置いた場合の強度変調信号と、の位相差に基づいて、被写体内部を画像化した位相コントラスト画像を生成するように構成されている。特開2012-16370号公報に記載のような従来のX線撮像装置は、X線の吸収量ではなく、X線の位相差を利用して、被写体内を画像化することによって、X線を吸収しにくい軽元素物体や生体軟部組織を画像化することが可能である。なお、位相コントラスト画像とは、吸収像と、位相微分像と、暗視野像とを含んでいる。吸収像とは、X線が被写体を通過した際に生じるX線の減衰に基づいて画像化した像である。また、位相微分像とは、X線が被写体を通過した際に発生するX線の位相のずれをもとに画像化した像である。また、暗視野像とは、物体の小角散乱に基づくVisibilityの変化によって得られる、Visibility像のことである。また、暗視野像は、小角散乱像とも呼ばれる。「Visibility」とは、鮮明度のことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-16370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、被写体の詳細な構造を確認するために、被写体を拡大して撮像することが望まれる場合がある。この場合、鮮明度を高めることなく被写体を拡大して撮像すると、得られる画像の画質が劣化するという不都合がある。そこで、鮮明度を高めて撮像することにより、拡大した画像を撮像する場合でも、画質の低下を抑制することができる。鮮明度を高めるためには、X線源の焦点サイズを小さくすることが考えられる。しかしながら、特開2012-16370号公報では、X線源の可干渉性を高めるために、X線源にマルチスリットが設けられている。X線源にマルチスリットが備えられた構成においてX線源の焦点サイズを小さくすると、マルチスリットの格子パターンが解像され、画像上に縞模様として検出される。そのため、マルチスリットの格子パターンの縞模様によって、得られる画像の画質が劣化するという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、X線源の焦点サイズを小さくすることにより鮮明度を高めて撮像する場合でも、得られる画像の画質が劣化することを抑制することが可能なX線位相イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるX線位相イメージング装置は、被写体にX線を照射するX線源と、X線源から照射されたX線を検出する検出器と、X線源と検出器との間に配置され、X線源から照射されるX線を線光源にしてX線の可干渉性を高めるマルチスリットである第1格子と、第1格子からのX線が照射され自己像を形成す位相格子である第2格子とを含む複数の格子と、検出器によって検出された信号に基づいて位相コントラスト画像を生成する画像処理部と、を備え、位相コントラスト画像の鮮明度を高めるために、X線源の焦点サイズを小さくするように変更した場合に、X線源は、焦点サイズを小さくすることに起因して、X線が照射されることにより拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出される場合に、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが、検出器によって検出されないように、第1格子とX線源との相対的な配置が調整されるか、またはX線源の焦点サイズが増加するようにX線源の焦点サイズが調整される。
【0009】
この発明の第1の局面におけるX線位相イメージング装置では、上記のように、位相コントラスト画像の鮮明度を高めるために、X線源の焦点サイズを小さくするように変更した場合に、X線源は、焦点サイズを小さくすることに起因して、X線が照射されることにより拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出される場合に、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが、検出器によって検出されないように、第1格子とX線源との相対的な配置が調整されるか、またはX線源の焦点サイズが増加するようにX線源の焦点サイズが調整される。これにより、X線源の焦点サイズを小さくすることにより鮮明度を高めて撮像した場合でも、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出器によって検出されることを抑制することができる。その結果、X線源の焦点サイズを小さくすることにより鮮明度を高めて撮像する場合でも、得られる画像の画質が劣化することを抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面におけるX線位相イメージング装置において、好ましくは、X線源は、検出器によって解像されることにより、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの縞模様が検出されないように、第1格子とX線源との相対的な配置またはX線源の焦点サイズが調整される。このように構成すれば、第1格子とX線源との相対的な配置またはX線源の焦点サイズを調整することにより、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの縞模様が検出器によって解像されることを抑制することができる。その結果、たとえば、肉眼で認識できない鮮明度において、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの縞模様が検出器によって検出されることを抑制することが可能となるので、拡大されて投影された第1格子の格子パターンに起因して画像の画質が劣化することを、より抑制することができる。
【0011】
上記第1の局面におけるX線位相イメージング装置において、好ましくは、X線源は、X線の光軸方向において、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出器によって検出されない位置に、第1格子から離間して配置される。このように構成すれば、焦点サイズを小さくすることに起因して、X線が照射されることにより拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出される場合でも、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの拡大率を小さくすることができる。その結果、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが解像されなくなるため、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出器によって検出されることを抑制することが可能となり、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出されることに起因して画像の画質が劣化することを抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面におけるX線位相イメージング装置において、好ましくは、X線源は、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの1周期が、検出器の画素サイズよりも小さくなるような拡大率となる位置に配置される。このように構成すれば、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの1周期の大きさを、検出器の画素サイズよりも小さくすることが可能となるので、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出器によって検出されることをより抑制することができる。その結果、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出されることに起因して画像の画質が劣化することをより抑制することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、X線源は、以下の式(1)~(3)を定義した場合、以下の式(4)を満たすような位置に配置される。
【数1】
ここで、mは、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの拡大率である。また、Rは、X線源と検出器との間の距離である。また、rは、X線源と第1格子との間の距離である。また、pは、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの周期である。また、pは、第1格子の格子周期である。また、nは、拡大されて投影された第1格子の格子パターンに含まれる画素数である。また、pは、検出器の画素サイズである。
このように構成すれば、上記式(4)を満たす位置にX線源を配置することにより、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの1周期の大きさを、検出器の画素サイズよりも容易に小さくすることができる。その結果、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出されることに起因して画像の画質が劣化することを、より容易に抑制することができる。
【0014】
上記第1の局面におけるX線位相イメージング装置において、好ましくは、X線源の焦点サイズの大きさに起因して生じる、拡大されて投影された第1格子の格子パターンのぼけ量が、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出器によって検出されなくなるぼけ量となるように、X線源の焦点サイズが設定される。このように構成すれば、焦点サイズを小さくすることに起因して、X線が照射されることにより拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出される場合でも、拡大されて投影された第1格子の格子パターンをぼけさせることができる。その結果、拡大されて投影された第1格子の格子パターンを検出器で検出できなくなるまでぼけさせることが可能となるので、拡大されて投影された第1格子の格子パターンに起因して、画像の画質が劣化することを抑制することができる。
【0015】
ここで、本願発明者らが鋭意検討した結果、ぼけ量が、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの1周期の3.0倍以上となった場合に、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出器によって検出されないという知見を得た。この発明の第2の局面によるX線位相イメージング装置は、この知見に基づいて、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出器によって検出されなくなるぼけ量となるように、X線源の焦点サイズが設定される。すなわち、この発明による第2の局面によるX線位相イメージング装置は、被写体にX線を照射するX線源と、X線源から照射されたX線を検出する検出器と、X線源と検出器との間に配置され、X線源から照射されるX線の可干渉性を高める第1格子と、第1格子からのX線が照射される第2格子とを含む複数の格子と、検出器によって検出された信号に基づいて位相コントラスト画像を生成する画像処理部と、を備え、X線源は、焦点サイズを小さくすることに起因して、X線が照射されることにより拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出される場合に、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが、検出器によって検出されないように、第1格子とX線源との相対的な配置またはX線源の焦点サイズが調整され、X線源の焦点サイズの大きさに起因して生じる、拡大されて投影された第1格子の格子パターンのぼけ量が、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが前記検出器によって検出されなくなるぼけ量となるように、X線源の焦点サイズが設定され、X線源は、ぼけ量が、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの1周期の3.0倍以上、の範囲となるように、X線源の焦点サイズが設定される。このように構成すれば、拡大されて投影された第1格子の格子パターンを、検出器によって検出されなくなるまで容易にぼけさせることができる。その結果、拡大されて投影された第1格子の格子パターンに起因して、画像の画質が劣化することを容易に抑制することができる。
【0016】
上記拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出器によって検出されなくなるぼけ量となるように、X線源の焦点サイズが設定される構成において、好ましくは、X線源は、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの1周期が、検出器の画素サイズよりも大きくなる場合に、以下の式(5)により定義されるぼけ量の大きさが、以下の式(6)を満たすように、X線源の焦点サイズが設定される。
【数2】
ここで、bは、上記ぼけ量である。また、sは、X線源の焦点サイズである。
このように構成すれば、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの1周期の大きさを、検出器の画素サイズよりも小さくすることが困難な場合でも、拡大されて投影された第1格子の格子パターンが検出器によって検出されることを容易に抑制することができる。その結果、X線源の焦点サイズsを、上記式(6)を満たす焦点サイズに調整することにより、拡大されて投影された第1格子の格子パターンに起因して画像の画質が劣化することを容易に抑制することができる。
【0017】
上記第1の局面におけるX線位相イメージング装置において、好ましくは、第2格子と、検出器との間に配置された第3格子をさらに含む。このように構成すれば、検出器の画素サイズの大きさが、第2格子の自己像の1周期の大きさよりも大きい場合でも、モアレ縞を検出することにより、位相コントラスト画像を生成することができる。その結果、検出器の画素サイズに依存することなく位相コントラスト画像を生成することが可能となるので、検出器の選択の自由度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、X線源の焦点サイズを小さくすることにより鮮明度を高めて撮像する場合でも、得られる画像の画質が劣化することを抑制することが可能なX線位相イメージング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態によるX線位相イメージング装置をX方向から見た模式図である。
図2】第1実施形態によるX線位相イメージング装置が備える格子移動機構の斜視図である。
図3】第1比較例による検出器によって検出される拡大されて投影された第1格子の格子パターンを説明するための模式図である。
図4】第1比較例によるX線位相イメージング装置によって取得される吸収像の模式図(A)、位相微分像の模式図(B)および暗視野像の模式図(C)である。
図5】第1実施形態による検出器によって検出される拡大されて投影された第1格子の格子パターンを説明するための模式図である。
図6】第1実施形態によるX線位相イメージング装置によって取得される吸収像の模式図(A)、位相微分像の模式図(B)および暗視野像の模式図(C)である。
図7】第2実施形態による検出器によって検出される拡大されて投影された第1格子の格子パターンのぼけ量を説明するための模式図である。
図8】第2比較例による検出器によって検出される拡大されて投影された第1格子の格子パターンのぼけ量を説明するための模式図である。
図9】X線源の焦点サイズを変更した場合の、拡大されて投影された第1格子の格子パターンの変化と、フーリエ変換画像の変化とを説明するための模式図である。
図10】変形例によるX線位相イメージング装置をX方向から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1図6を参照して、第1実施形態によるX線位相イメージング装置100の構成について説明する。
【0022】
(X線位相イメージング装置の構成)
まず、図1を参照して、本発明の本実施形態によるX線位相イメージング装置100の構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、X線位相イメージング装置100は、タルボ(Talbot)効果を利用して、被写体Qの内部を画像化する装置である。X線位相イメージング装置100は、複数の格子のうち、いずれか1つを、格子の周期方向(Y方向)に並進移動させながら被写体Qを撮像するように構成されている。
【0024】
図1に示すように、X線位相イメージング装置100は、X線源1と、検出器2と、第1格子3と第2格子4とを含む複数の格子と、画像処理部5と、制御部6と、記憶部7と、格子移動機構8と、を備えている。なお、本明細書において、X線源1から第1格子3に向かう方向をZ2方向、その逆向きの方向をZ1方向とする。また、Z方向と直交する紙面内の左右方向をX方向とし、図1の紙面の奥に向かう方向をX2方向、図1の紙面の手前側に向かう方向をX1方向とする。また、Z方向と直交する面内の上下方向をY方向とし、上方向をY1方向、下方向をY2方向とする。
【0025】
X線源1は、高電圧が印加されることにより、X線を発生させるとともに、発生されたX線を被写体Qに向けて照射するように構成されている。なお、X線源1は、焦点サイズsが調整されることにより、得られる画像の鮮明度が調整される。焦点サイズsを小さくした場合、得られる画像の鮮明度を高めることができる。
【0026】
第1格子3は、Y方向に所定の周期(ピッチ)p0で配列される複数のスリット3aおよび、X線吸収部3bを有している。各スリット3aおよびX線吸収部3bはそれぞれ、X方向に沿って直線状に延びるように形成されている。また、各スリット3aおよびX線吸収部3bはそれぞれ、互いに平行に延びるように形成されている。第1格子3は、いわゆる吸収格子である。第1格子3には、X線源1からX線が照射される。第1格子3は、各スリット3aを通過したX線を、各スリット3aの位置に対応する線光源とするように構成されている。
【0027】
第2格子4は、第1格子3と、検出器2との間に配置されており、第1格子3を通過したX線が照射される。第2格子4は、タルボ効果により、第2格子4の自己像(図示せず)を形成するために設けられている。可干渉性を有するX線が、スリットが形成された格子を通過すると、格子から所定の距離(タルボ距離)離れた位置に、格子の像(自己像)が形成される。これをタルボ効果という。
【0028】
第2格子4は、Y方向に所定の周期(ピッチ)pで配列される複数のスリット4aおよび、X線位相変化部4bを有している。各スリット4aおよびX線位相変化部4bはそれぞれ、X方向に沿って直線状に延びるように形成されている。また、各スリット4aおよびX線位相変化部4bはそれぞれ、互いに平行に延びるように形成されている。第2格子4は、いわゆる位相格子である。第1格子3、第2格子4はそれぞれ異なる役割を持つ格子であるが、スリット3aおよびスリット4aはそれぞれX線を透過させる。また、X線吸収部3bはX線を遮蔽する役割を担っており、X線位相変化部4bはスリット4aとの屈折率の違いによってX線の位相を変化させる。
【0029】
検出器2は、X線を検出するとともに、検出されたX線を電気信号に変換し、変換された電気信号を画像信号として読み取るように構成されている。検出器2は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)である。検出器2は、複数の変換素子(図示せず)と複数の変換素子上に配置された画素電極(図示せず)とにより構成されている。複数の変換素子および画素電極は、所定の周期(画素サイズp)で、X方向およびY方向にアレイ状に配列されている。また、検出器2は、取得した画像信号を、画像処理部5に出力するように構成されている。
【0030】
画像処理部5は、検出器2から出力された画像信号に基づいて、位相コントラスト画像15(図4参照)を生成するように構成されている。第1実施形態では、画像処理部5は、たとえば、位相コントラスト画像15として、吸収像15a(図4参照)、位相微分像15b(図4参照)および暗視野像15c(図4参照)を生成する。画像処理部5は、たとえば、GPU(Graphics Processing Unit)または画像処理用に構成されたFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサを含む。
【0031】
制御部6は、格子移動機構8を制御して、第2格子4を移動させるように構成されている。制御部6は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。
【0032】
記憶部7は、画像処理部5が生成した位相コントラスト画像15などを保存するように構成されている。記憶部7は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)や不揮発性のメモリなどを含む。
【0033】
格子移動機構8は、制御部6の制御の下、第2格子4を移動可能に構成されている。また、格子移動機構8は、第2格子4を保持している。
【0034】
(格子移動機構)
図2に示すように、格子移動機構8は、X方向、Y方向、Z方向、Z方向の軸線周りの回転方向Rz、X方向の軸線周りの回転方向Rx、および、Y方向の軸線周りの回転方向Ryに第1格子3を移動可能に構成されている。具体的には、格子移動機構8は、X方向直動機構80と、Y方向直動機構81と、Z方向直動機構82と、直動機構接続部83と、ステージ支持部駆動部84と、ステージ支持部85と、ステージ駆動部86と、ステージ87とを含む。X方向直動機構80は、X方向に移動可能に構成されている。X方向直動機構80は、たとえば、モータなどを含む。Y方向直動機構81は、Y方向に移動可能に構成されている。Y方向直動機構81は、たとえば、モータなどを含む。Z方向直動機構82は、Z方向に移動可能に構成されている。Z方向直動機構82は、たとえば、モータなどを含む。
【0035】
格子移動機構8は、X方向直動機構80の動作により、第1格子3をX方向に移動させるように構成されている。また、格子移動機構8は、Y方向直動機構81の動作により、第1格子3をY方向に移動させるように構成されている。また、格子移動機構8は、Z方向直動機構82の動作により、第1格子3をZ方向に移動させるように構成されている。
【0036】
ステージ支持部85は、ステージ87を下方(Y1方向)から支持している。ステージ駆動部86は、ステージ87をX方向に往復移動させるように構成されている。ステージ87は、底部がステージ支持部85に向けて凸曲面状に形成されており、X方向に往復移動されることにより、Z方向の軸線周り(Rz方向)に回動するように構成されている。また、ステージ支持部駆動部84は、ステージ支持部85をZ方向に往復移動させるように構成されている。また、ステージ支持部85は底部が直動機構接続部83に向けて凸曲面状に形成されており、Z方向に往復移動されることにより、X方向の軸線周り(Rx方向)に回動するように構成されている。また、直動機構接続部83は、Y方向の軸線周り(Ry方向)に回動可能にX方向直動機構80に設けられている。したがって、格子移動機構8は、格子をY方向の中心軸線周りに回動させることができる。
【0037】
ここで、被写体Qを拡大して撮像する場合、鮮明度を高めることなく拡大して撮像すると、得られる位相コントラスト画像15が不鮮明となる場合がある。そこで、得られる位相コントラスト画像15の鮮明度を高めることが考えられる。X線源1の焦点サイズsを小さくすることにより、得られる位相コントラスト画像15の鮮明度を高めることができる。しかしながら、X線源1の焦点サイズsを小さくした場合、第1格子3が解像されることにより、検出器2において、第1格子3の格子パターン9(図1参照)が拡大されて投影される。拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の周期p図1参照)の大きさによっては、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出器2によって検出される場合がある。以下、図3を参照して、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出器2によって検出される場合について説明する。
【0038】
(第1比較例)
図3は、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出器2によって検出される場合の比較例によるX線位相イメージング装置200をX方向から見た模式図である。図3に示すように、X線位相イメージング装置200は、X線源11と、検出器12と、第1格子13と、制御部(図示せず)と、記憶部(図示せず)と、格子移動機構(図示せず)とを備える。なお、図3に示すX線源11と、検出器12と、第1格子13とは、それぞれ、図1に示すX線位相イメージング装置100が備えるX線源1と、検出器2と、第1格子3と、同様の構成である。
【0039】
図3に示す例は、X線源1と、第1格子13との間の距離が、距離Rとなる位置に第1格子13を配置している。また、図3に示す例は、X線源11と検出器14との間の距離が、距離Rとなる位置に検出器14を配置している。
【0040】
図3では、第1格子13は、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン19の1周期pの大きさが、検出器12の画素サイズpの大きさよりも大きくなる例を示している。拡大されて投影された第1格子13の格子パターン19の1周期pの大きさが、検出器12の画素サイズpよりも大きくなる場合、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン19が解像され、生成される位相コントラスト画像15において、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が縞模様SP(図4参照)として検出される。
【0041】
図4(A)は、第1比較例によるX線位相イメージング装置200によって得られる吸収像15aの模式図である。図4(B)は、第1比較例によるX線位相イメージング装置200によって得られる位相微分像15bの模式図である。図4(C)は、第1比較例によるX線位相イメージング装置200によって得られる暗視野像15cの模式図である。図4(A)~図4(C)に示す各位相コントラスト画像15において、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因する縞模様SPが検出される。そのため、位相コントラスト画像15の画質が劣化している。
【0042】
そこで、第1実施形態では、X線源1は、焦点サイズsを小さくすることに起因して、X線が照射されることにより拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出される場合に、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が、検出器2によって検出されないように、第1格子3とX線源1との相対的な配置が調整される。具体的には、X線源1は、検出器2によって解像されることにより、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPが検出されないように、第1格子3とX線源1との相対的な配置が調整される。
【0043】
図5に示すように、第1実施形態では、X線源1は、X線の光軸方向(Z方向)において、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出器2によって検出されない位置に、第1格子3から離間して配置される。具体気には、X線源1は、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pが、検出器2の画素サイズpよりも小さくなるような拡大率mとなる位置に配置される。より具体的には、X線源1は、以下の式(1)~(3)を定義した場合、以下の式(4)を満たすような位置に配置される。なお、図5には、比較のために、第1比較例によるX線位相イメージング装置200におけるX線源11を破線で図示している。
【数3】
なお、mは、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の拡大率である。また、Rは、X線源1と検出器2との間の距離である。また、rは、X線源1と第1格子3との間の距離である。また、pは、拡大されて投影された第1格子3の周期である。また、pは、第1格子3の周期である。また、nは、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に含まれる画素数である。また、pは、検出器2の画素サイズである。
【0044】
図5に示すように、上記式(4)を満たす位置にX線源1を配置した場合、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pが、検出器2の画素サイズpよりも小さくなる。そのため、検出器2によって拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出されなくなる。なお、X線源1と第1格子3との間の距離rを遠ざけると、検出器2に到達するX線の線量が低下する。そのため、X線の線量不足に起因する位相コントラスト画像15の画質の劣化を抑制するために、撮像時間を長くしなければならない。しかしながら、撮像時間を長くすると、被ばく量が増加するため、好ましくない。
【0045】
そこで、第1実施形態では、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因する位相コントラスト画像15の画質の劣化を抑制しつつ、被ばく量を増加させないために、上記式(4)におけるnが1に近づくような相対位置にX線源1と第1格子3とを配置する。好ましくは、n=1となる相対位置にX線源1と第1格子3とを配置する。また、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因する位相コントラスト画像15の画質の劣化をより抑制したい場合には、nが0.8~0.9となる位置に相対位置にX線源1と第1格子3とを配置してもよい。すなわち、nの値が、以下の式(7)を満たすような相対位置に、相対位置にX線源1と第1格子3とを配置すればよい。
【数4】
【0046】
図6(A)は、第1実施形態によるX線位相イメージング装置100によって得られる吸収像15aの模式図である。図6(B)は、第1実施形態によるX線位相イメージング装置100によって得られる位相微分像15bの模式図である。図6(C)は、第1実施形態によるX線位相イメージング装置100によって得られる暗視野像15cの模式図である。図6(A)~図6(C)に示す各位相コントラスト画像15では、図4(A)~図4(C)に示す各位相コントラスト画像15と異なり、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因する縞模様SPが検出されていない。したがって、上記式(4)を満たす位置にX線源1を配置することにより、鮮明度を高めた場合でも、位相コントラスト画像15の画質が劣化することを抑制することができる。
【0047】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0048】
第1実施形態では、上記のように、X線位相イメージング装置100は、被写体QにX線を照射するX線源1と、X線源1から照射されたX線を検出する検出器2と、X線源1と検出器2との間に配置され、X線源1から照射されるX線の可干渉性を高める第1格子3と、第1格子3からのX線が照射される第2格子4とを含む複数の格子と、検出器2によって検出された信号に基づいて位相コントラスト画像15を生成する画像処理部5と、を備え、X線源1は、焦点サイズsを小さくすることに起因して、X線が照射されることにより拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出される場合に、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が、検出器2によって検出されないように、第1格子3とX線源1との相対的な配置が調整される。これにより、X線源1の焦点サイズsを小さくすることにより鮮明度を高めて撮像した場合でも、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出器2によって検出されることを抑制することができる。その結果、X線源1の焦点サイズsを小さくすることにより鮮明度を高めて撮像する場合でも、得られる位相コントラスト画像15の画質が劣化することを抑制することができる。
【0049】
また、第1実施形態では、上記のように、X線源1は、検出器2によって解像されることにより、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPが検出されないように、第1格子3とX線源1との相対的な配置が調整される。これにより、第1格子3とX線源1との相対的な配置を調整することにより、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPが検出器2によって解像されることを抑制することができる。その結果、たとえば、肉眼で認識できない鮮明度において、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPが検出器2によって検出されることを抑制することが可能となるので、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因して位相コントラスト画像15の画質が劣化することを、より抑制することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、上記のように、X線源1は、X線の光軸方向(Z方向)において、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出器2によって検出されない位置に、第1格子3から離間して配置される。これにより、焦点サイズsを小さくすることに起因して、X線が照射されることにより拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出される場合でも、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の拡大率mを小さくすることができる。その結果、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が解像されなくなるため、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出器2によって検出されることを抑制することが可能となり、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出されることに起因して画像の画質が劣化することを抑制することができる。
【0051】
また、第1実施形態では、上記のように、X線源1は、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pが、検出器2の画素サイズpよりも小さくなるような拡大率mとなる位置に配置される。これにより、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの大きさを、検出器2の画素サイズpよりも小さくすることが可能となるので、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出器2によって検出されることをより抑制することができる。その結果、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出されることに起因して位相コントラスト画像15の画質が劣化することをより抑制することができる。
【0052】
また、第1実施形態では、上記のように、X線源1は、上記式(1)~(3)を定義した場合、上記式(4)を満たすような位置に配置される。これにより、上記式(4)を満たす位置にX線源1を配置することにより、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの大きさを、検出器2の画素サイズpよりも容易に小さくすることができる。その結果、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出されることに起因して位相コントラスト画像15の画質が劣化することを、より容易に抑制することができる。
【0053】
[第2実施形態]
次に、図1および図7図9を参照して、第2実施形態によるX線位相イメージング装置300(図1参照)の構成について説明する。拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出器2において検出されなくなるようにX線源1と第1格子3との間の距離rを調整する第1実施形態と異なり、第2実施形態によるX線位相イメージング装置300では、X線が照射されることにより拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が、検出器2によって検出されないように、X線源1の焦点サイズsが調整される。なお、上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
【0054】
図1に示すように、X線位相イメージング装置300は、X線源1と、検出器2と、第1格子3と、第2格子4と、画像処理部5と、制御部6と、記憶部7と、格子移動機構8とを備える。X線位相イメージング装置300は、X線源1と第1格子3との間の距離rおよびX線源1の焦点サイズsが異なる点を除いて、第1実施形態によるX線位相イメージング装置100と同様の構成である。
【0055】
第2実施形態では、X線が照射されることにより拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が、検出器2によって検出されないように、X線源1の焦点サイズsが調整される。具体的には、X線源1の焦点サイズsの大きさに起因して生じる、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出器2によって検出されなくなるぼけ量bとなるように、X線源1の焦点サイズsが設定される。
【0056】
ここで、図7を参照して、ぼけ量bについて説明する。図7に示すように、X線源1のY1方向側から照射されるX線XR1と、X線源1のY2方向側から照射されるX線XR2とでは、第1格子3の同一箇所に向けて照射された場合でも、検出器2において到達するY方向の位置が異なる。検出器2において到達する位置が異なるため、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の輪郭がぼける。拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の輪郭がぼける量が、ぼけ量bである。ぼけ量bが小さい場合、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPの輪郭が鮮明となり、縞模様SPが鮮明に検出される。一方、ぼけ量bが大きい場合、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の輪郭が不鮮明となり、縞模様SPが鮮明に検出されなくなり、ぼけ量bが所定の大きさ以上になると、縞模様SPとして検出されなくなる。
【0057】
拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bは、以下に示す式(5)により取得される。
【数5】
【0058】
鮮明度を高めて撮像することにより、位相コントラスト画像15を取得する場合、X線源1の焦点サイズsを小さくすることが考えらえる。以下、図8を参照して、X線源の焦点サイズを小さくした場合のぼけ量bについて説明する。
【0059】
(第2比較例)
図8に示すX線位相イメージング装置400は、X線源21と、検出器22と、第1格子33と、を備えている。X線源21は、焦点サイズscが、上記第1実施形態によるX線源1の焦点サイズsよりも小さい点を除いて、X線源1と同様の構成である。また、検出器22、および第1格子33は、それぞれ、上記第1実施形態による検出器2および第1格子3と同様の構成である。
【0060】
図8に示す例では、X線源21の焦点サイズscが、X線源1の焦点サイズsよりも小さい場合を示している。図8に示す構成においても、X線源21の焦点サイズscとぼけ量bcとの関係は、上記式(5)と同様である。したがって、X線源21の焦点サイズscが小さくなると、拡大されて投影された第1格子13の格子パターン9のぼけ量bcが小さくなる。拡大されて投影された第1格子13の格子パターン9のぼけ量bcが小さくなると、拡大されて投影された第1格子13の格子パターン9の縞模様SP(図示せず)が鮮明となるため、位相コントラスト画像15において、拡大されて投影された第1格子13の格子パターン9の縞模様SPが検出される。
【0061】
ここで、本発明の発明者らは、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの3.0倍以上の範囲となる場合に、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出器2によって検出されなくなるという知見を得た。
【0062】
上記知見に基づいて、第2実施形態では、X線源1は、ぼけ量bが、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの3.0倍以上の範囲となるように、X線源1の焦点サイズsが設定される。具体的には、X線源1は、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pが、検出器2の画素サイズpよりも大きくなる場合に、上記式(5)により定義されるぼけ量bの大きさが、以下の式(6)を満たすように、X線源1の焦点サイズsが設定される。
【数6】
【0063】
なお、X線源1および複数の格子の配置によっては、ぼけ量bが拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの3.0倍となるようにX線源1の焦点サイズsを調整したとしても、第1格子3の格子パターン9が検出される場合がある。そのような場合は、第1格子3の格子パターン9が検出されないようなぼけ量bの大きさとなるように、X線源1の焦点サイズsを調整すればよい。たとえば、ぼけ量bの大きさが、ぼけ量bが拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの6.5倍となるように、X線源1の焦点サイズsを調整すればよい。また、ぼけ量bの上限については、特に制限はないが、得られる位相コントラスト画像15の画質の劣化が許容できる範囲において、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出されないようにX線源1の焦点サイズsを調整すればよい。
【0064】
第1実施形態では、X線源1と第1格子3との間の距離rを大きくすることにより、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9を検出器2において検出されなくする構成であった。しかしながら、たとえば、鮮明度を高めるために、X線源1の焦点サイズsを小さく設定する際に、X線源1と第1格子3とを、上記式(4)を満たす位置にX線源1を配置できない場合がある。その場合でも、上記式(6)を満たす焦点サイズsに設定することにより、位相コントラスト画像15の鮮明度を高めつつ、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因して位相コントラスト画像15の画質の劣化を抑制することができる。
【0065】
なお、図7に示すX線源1は、第1実施形態におけるX線源1の焦点サイズs(図1参照)および第2比較例におけるX線源21の焦点サイズsc(図8参照)よりも焦点サイズsを大きく図示している。これは、第1実施形態におけるX線源1の焦点サイズsおよび第2比較例におけるX線源21の焦点サイズscが、鮮明度を高めるために焦点サイズsおよび焦点サイズscを小さくしているからである。なお、第2実施形態におけるX線源1の焦点サイズsは、一般的なX線撮像を行う際のX線源の焦点サイズよりも小さく設定される。すなわち、第2実施形態におけるX線源1の焦点サイズsは、鮮明度を高めるために、通常のX線撮影を行う際の焦点サイズよりも小さく設定され、かつ、ぼけ量bを上記式(6)の範囲とするために、上記第1実施形態におけるX線源1の焦点サイズsよりも大きく設定される。
【0066】
(実験例)
次に、図9を参照して、上記知見を得た実験について説明する。
【0067】
図9は、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bの範囲を取得するために、X線源1の焦点サイズsを変更して撮像したX線画像17およびX線画像17をフーリエ変換(FT)することにより得られたフーリエ変換画像18である。なお、フーリエ変換画像18には、0次ピーク30と、1次ピーク31とが写っている。フーリエ変換画像18における0次ピーク30と1次ピーク31とのうち、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPに起因するピークが1次ピーク31である。
【0068】
図9に示す実験例では、X線画像17における拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPの有無を、フーリエ変換画像18における1次ピーク31が検出されたか否かによって判定している。すなわち、肉眼において拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPが確認できない場合でも、フーリエ変換画像18において1次ピーク31が編出された場合には、X線画像17において拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPが検出されとみなす。
【0069】
なお、図9に示す例では、X線源1と検出器2との間の距離Rが、1120mmとなる位置にX線源1および検出器2を配置して実験を行った。また、図9に示す例では、X線源1と、第1格子3との間の距離rが、100mmとなる位置に、X線源1および第1格子3を配置して実験を行った。また、図9に示す例では、格子周期pが、9μmである第1格子3を用いて実験を行った。また、図9に示す例では、画素サイズp2が75μmである検出器2を用いて実験を行った。以上の条件により、図9に示す例では、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の周期pが100.8μmとなり、上記式(4)におけるnが、1.34となる条件において実験を行った。
【0070】
図9(A)に示す例は、X線源1の焦点サイズsを10μmに設定して撮像されたX線画像17aの模式図である。X線源1の焦点サイズsが10μmに設定されているため、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが、102μmとなった。すなわち、X線画像17aは、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの1.01倍となるように、X線源1の焦点サイズsを調整した例である。X線画像17aでは、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPが確認できた。
【0071】
X線画像17aをフーリエ変換して得られたフーリエ変換画像18aでは、0次ピーク30と、1次ピーク31とが確認できた。したがって、X線源1の焦点サイズsを10μmに設定した場合には、X線画像17aにおいて、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPを確認することができたとともに、フーリエ変換画像18aにおいても、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因する1次ピーク31が確認できた。
【0072】
図9(B)に示す例は、X線源1の焦点サイズsを12μmに設定したため、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが、122μmとなったX線画像17bの模式図である。すなわち、X線画像17bは、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの1.21倍となるように、X線源1の焦点サイズsを調整した例である。X線画像17bにおいても、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPが確認できた。
【0073】
X線画像17bをフーリエ変換して得られたフーリエ変換画像18bでは、0次ピーク30と、1次ピーク31とが確認できた。したがって、X線源1の焦点サイズsを12μmに設定した場合には、X線画像17bにおいて、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPを確認することができたとともに、フーリエ変換画像18bにおいても、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因する1次ピーク31が確認できた。
【0074】
図9(C)に示す例は、X線源1の焦点サイズsを14μmに設定したため、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが、143μmとなったX線画像17cの模式図である。すなわち、X線画像17cは、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの1.42倍となるように、X線源1の焦点サイズsを調整した場合の例である。X線画像17cにおいても、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPが確認できた。
【0075】
X線画像17cをフーリエ変換して得られたフーリエ変換画像18cでは、0次ピーク30と、1次ピーク31とが確認できた。したがって、X線源1の焦点サイズsを14μmに設定した場合には、X線画像17cにおいて、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPを確認することができたとともに、フーリエ変換画像18Cにおいても、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因する1次ピーク31が確認できた。
【0076】
図9(D)に示す例は、X線源1の焦点サイズsを16μmに設定したため、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが、163μmとなったX線画像17dの模式図である。すなわち、X線画像17dは、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの1.62倍となるように、X線源1の焦点サイズsを調整した場合の例である。X線画像17dにおいては、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPは確認できなかった。
【0077】
X線画像17dをフーリエ変換して得られたフーリエ変換画像18dでは、0次ピーク30と、1次ピーク31とが確認できた。X線源1の焦点サイズsを16μmに設定した場合には、X線画像17dにおいて、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPを確認することがでなかった。しかし、フーリエ変換画像18bにおいては、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因する1次ピーク31が確認できた。
【0078】
図9(E)に示す例は、X線源1の焦点サイズsが30μmに設定されているため、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが、306μmとなっているX線画像17e。したがって、X線画像17eは、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの3.04倍となるように、X線源1の焦点サイズsを調整した場合の例である。
【0079】
X線画像17eをフーリエ変換して得られたフーリエ変換画像18eでは、0次ピーク30は確認できたが、1次ピーク31は確認できなかった。X線源1の焦点サイズsを30μmに設定した場合には、X線画像17eにおいて、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の縞模様SPを確認することができなかったとともに、フーリエ変換画像18eにおいても、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因する1次ピーク31が確認できなかった。
【0080】
図9(A)~図9(E)に示すように、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが大きくなるにつれて、X線画像17における縞模様SPが不鮮明となった。ぼけ量bが、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの1.6倍以上になった場合に、肉眼で確認することができなくなった。また、フーリエ変換画像18においては、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが大きくなるにつれて、1次ピーク31の強度(信号強度)が小さくなった。ぼけ量bが、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの3倍以上になった場合に、1次ピーク31が検出されなくなった。なお、図9に示す例では、便宜上、1次ピーク31の強度(信号強度)を、1次ピーク31の大きさおよび図示する線の太さで表現している。これらにより、ぼけ量bの範囲が上記式(6)に示す範囲となる場合に、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出されなくなるという実験結果を得た。
【0081】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0082】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0083】
第2実施形態では、上記のように、被写体QにX線を照射するX線源1と、X線源1から照射されたX線を検出する検出器2と、X線源1と検出器2との間に配置され、X線源1から照射されるX線の可干渉性を高める第1格子3と、第1格子3からのX線が照射される第2格子4とを含む複数の格子と、検出器2によって検出された信号に基づいて位相コントラスト画像15を生成する画像処理部5と、を備え、X線源1は、焦点サイズsを小さくすることに起因して、X線が照射されることにより拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出される場合に、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が、検出器2によって検出されないように、X線源1の焦点サイズsが調整される。これにより、上記第1実施形態によるX線位相イメージング装置100と同様に、X線源1の焦点サイズsを小さくすることにより鮮明度を高めて撮像する場合でも、得られる位相コントラスト画像15の画質が劣化することを抑制することができる。
【0084】
また、第2実施形態では、上記のように、X線源1の焦点サイズsの大きさに起因して生じる、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9のぼけ量bが、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出器2によって検出されなくなるぼけ量bとなるように、X線源1の焦点サイズsが設定される。こにより、焦点サイズsを小さくすることに起因して、X線が照射されることにより拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出される場合でも、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9をぼけさせることができる。その結果、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9を検出器2で検出できなくなるまでぼけさせることが可能となるので、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因して、位相コントラスト画像15の画質が劣化することを抑制することができる。
【0085】
また、第2実施形態では、上記のように、X線源1は、ぼけ量bが、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの3.0倍以上の範囲となるように、X線源1の焦点サイズsが設定される。これにより、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9を、検出器2によって検出されなくなるまで容易にぼけさせることができる。その結果、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因して、位相コントラスト画像15の画質が劣化することを容易に抑制することができる。
【0086】
また、第2実施形態では、上記のように、X線源1は、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pが、検出器2の画素サイズpよりも大きくなる場合に、上記式(5)により定義されるぼけ量bの大きさが、上記式(6)を満たすように、X線源1の焦点サイズsが設定される。これにより、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9の1周期pの大きさを、検出器2の画素サイズpよりも小さくすることが困難な場合でも、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9が検出器2によって検出されることを容易に抑制することができる。その結果、X線源1の焦点サイズsを、上記式(6)を満たす焦点サイズsに調整することにより、拡大されて投影された第1格子3の格子パターン9に起因して位相コントラスト画像15の画質が劣化することを容易に抑制することができる。
【0087】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態および実験例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実験例の説明ではなく、請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0088】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、複数の格子として、第1格子3および第2格子4を含む構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図10に示すX線位相イメージング装置500のように、第2格子4と検出器2との間に、第3格子25を設ける構成でもよい。第3格子25は、Y方向に所定の周期(ピッチ)pで配列される複数のスリット25aおよびX線吸収部25bを有している。各スリット25aおよびX線吸収部25bはそれぞれ、X方向に沿って直線状に延びるように形成されている。また、各スリット25aおよびX線吸収部25bはそれぞれ、互いに平行に延びるように形成されている。また、第3格子25は、第2格子4と検出器2との間に配置されており、第2格子4を通過したX線が照射される。また、第3格子25は、第2格子4からタルボ距離離れた位置に配置される。第3格子25は、第2格子4の自己像と干渉して、検出器2の検出表面上にモアレ縞(図示せず)を形成する。これにより、検出器2の画素サイズpの大きさが、第2格子4の自己像の1周期の大きさよりも大きい場合でも、モアレ縞を検出することにより、位相コントラスト画像15(吸収像15a、位相微分像15bおよび暗視野像15c)を生成することができる。その結果、検出器2の画素サイズpに依存することなく位相コントラスト画像15(吸収像15a、位相微分像15bおよび暗視野像15c)を生成することが可能となるので、検出器2の選択の自由度を向上させることができる。
【0089】
また、上記第1および第2実施形態では、格子移動機構8が第2格子4を移動させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、格子移動機構8によって、第1格子3をY方向に移動させて撮像するように構成されていてもよい。また、複数の格子として、第3格子25(図10参照)を備える場合、格子移動機構8によって、第3格子25をY方向に移動させて撮像するように構成されていてもよい。
【0090】
また、上記第1および第2実施形態では、第2格子4が位相格子である構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第2格子4は、吸収格子であってもよい。
【0091】
また、上記第1および第2実施形態では、格子移動機構8によって第2格子4を移動させながら撮像する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第2格子4をX線の光軸方向周りにわずかに回転させることにより生じるモアレ縞を利用したモアレ1枚撮り手法においても、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 X線源
2 検出器
3 第1格子
4 第2格子
6 画像処理部
9 拡大されて投影された第1格子の格子パターン
15 位相コントラスト画像
25 第3格子
100、300、500 X線位相イメージング装置
b ぼけ量
m 第1格子の拡大率
n 拡大されて投影された第1格子の格子パターンに含まれる画素数
第1格子の格子周期
拡大されて投影された第1格子の格子パターンの格子周期
検出器の画素サイズ
Q 被写体
R X線源と検出器との間の距離
X線源と第1格子との間の距離
s X線源の焦点サイズ
SP 拡大されて投影された第1格子の格子パターンの縞模様
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10