IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機ビルテクノサービス株式会社の特許一覧

特許7131663エレベーターのコンペンロープ引き上げ装置及びエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法
<>
  • 特許-エレベーターのコンペンロープ引き上げ装置及びエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法 図1
  • 特許-エレベーターのコンペンロープ引き上げ装置及びエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法 図2
  • 特許-エレベーターのコンペンロープ引き上げ装置及びエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法 図3
  • 特許-エレベーターのコンペンロープ引き上げ装置及びエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法 図4
  • 特許-エレベーターのコンペンロープ引き上げ装置及びエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法 図5
  • 特許-エレベーターのコンペンロープ引き上げ装置及びエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法 図6
  • 特許-エレベーターのコンペンロープ引き上げ装置及びエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法 図7
  • 特許-エレベーターのコンペンロープ引き上げ装置及びエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法 図8
  • 特許-エレベーターのコンペンロープ引き上げ装置及びエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】エレベーターのコンペンロープ引き上げ装置及びエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/06 20060101AFI20220830BHJP
   B66B 5/00 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
B66B7/06 F
B66B5/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021111712
(22)【出願日】2021-07-05
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 圭三
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-239564(JP,A)
【文献】特開2017-1778(JP,A)
【文献】特開平8-81155(JP,A)
【文献】特開2017-165578(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1980055(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/06
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの昇降路内においてつり合いおもりから吊り下げられるコンペンロープを引き上げるためのエレベーターのコンペンロープ引き上げ装置において、
前記コンペンロープの端部にはコンペンシャックルロッドが接続され、前記コンペンシャックルロッドを前記つり合いおもりの取り付け部の貫通孔に下側から挿通して調整ナットを前記取り付け部の上側から締結することにより、前記コンペンロープが前記つり合いおもりに吊り下げられ、
前記コンペンロープ引き上げ装置は、
一端に前記コンペンシャックルロッドの先端に螺合させるナット部が設けられ、他端に引っ掛け部が設けられた接続工具と、
前記引っ掛け部に接続されるホイストと、
前記つり合いおもりの矩形枠から前記ホイストを前記接続工具よりも上方に吊るすロープと、
を備えるエレベーターのコンペンロープ引き上げ装置。
【請求項2】
前記ナット部は、高ナットであり、
前記接続工具の前記一端は、前記高ナットと螺合するためのネジ山が形成されている
請求項1に記載のエレベーターのコンペンロープ引き上げ装置。
【請求項3】
前記コンペンシャックルロッドに螺合した前記高ナットを固定するための固定ナットを備える
請求項2に記載のエレベーターのコンペンロープ引き上げ装置。
【請求項4】
前記接続工具の前記ネジ山には、前記高ナットの適正位置の目安を示す目印が記されている
請求項2又は請求項3に記載のエレベーターのコンペンロープ引き上げ装置。
【請求項5】
前記ロープは、前記矩形枠の左右の縦はりのそれぞれから前記ホイストを固定するように取り付けられる
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のエレベーターのコンペンロープ引き上げ装置。
【請求項6】
前記引っ掛け部は、円形の孔である
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のエレベーターのコンペンロープ引き上げ装置。
【請求項7】
エレベーターの昇降路内においてつり合いおもりから吊り下げられるコンペンロープを引き上げるためのエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法において、
前記コンペンロープの端部にはコンペンシャックルロッドが接続され、前記コンペンシャックルロッドを前記つり合いおもりの取り付け部の貫通孔に下側から挿通して調整ナットを前記取り付け部の上側から締結することにより、前記コンペンロープが前記つり合いおもりに吊り下げられ、
前記コンペンロープ引き上げ方法は、
一端にナット部が設けられ、他端に引っ掛け部が設けられた接続工具の前記ナット部を、前記コンペンシャックルロッドの先端に螺合させる工程と、
ホイストを前記つり合いおもりの矩形枠から吊り下げる工程と、
前記ホイストのフックを前記引っ掛け部に引っ掛ける工程と、
前記ホイストを操作して前記接続工具を引き上げる工程と、
前記調整ナットを締め込む工程と、
を備えるエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターのコンペンロープの切り詰め作業時に利用して好適なエレベーターのコンペンロープ引き上げ装置、及びエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コンペンシーブ下のクリアランスの調整作業を行う装置を開示する。この装置は、カウンターウェイトの縦枠に対して水平な姿勢で着脱可能に取り付けられる上下二段のロープ固定ブラケットを備えている。上下二段のロープ固定ブラケットには、それぞれ2本のコンペンロープの端末が止着されている。上下二段のロープ固定ブラケットの間には、ネジ式の簡易揚重機構が設けられている。簡易揚重機構を操作することにより、ロープ固定ブラケット毎にコンペンロープを引き上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-7120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の簡易揚重機構はネジ式であるため、コンペンロープを揚重する際にナットを締め込むことが求められる。コンペンロープにテンションが付加された状態でのナットの締め込み作業は、作業員にとって重作業となるおそれがある。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、コンペンロープを引き上げる作業において作業員の負担を軽減することのできるエレベーターのコンペンロープ引き上げ装置及びエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、エレベーターの昇降路内においてつり合いおもりから吊り下げられるコンペンロープを引き上げるためのエレベーターのコンペンロープ引き上げ装置に適用される。コンペンロープの端部にはコンペンシャックルロッドが接続され、コンペンシャックルロッドをつり合いおもりの取り付け部の貫通孔に下側から挿通して調整ナットを取り付け部の上側から締結することにより、コンペンロープがつり合いおもりに吊り下げられる。コンペンロープ引き上げ装置は、一端にコンペンシャックルロッドの先端に螺合させるナット部が設けられ、他端に引っ掛け部が設けられた接続工具と、引っ掛け部に接続されるホイストと、つり合いおもりの矩形枠からホイストを接続工具よりも上方に吊るすロープと、を備える。
【0007】
また、本開示は、エレベーターの昇降路内においてつり合いおもりから吊り下げられるコンペンロープを引き上げるためのエレベーターのコンペンロープ引き上げ方法に適用される。コンペンロープの端部にはコンペンシャックルロッドが接続され、コンペンシャックルロッドをつり合いおもりの取り付け部の貫通孔に下側から挿通して調整ナットを取り付け部の上側から締結することにより、コンペンロープがつり合いおもりに吊り下げられる。コンペンロープ引き上げ方法は、一端にナット部が設けられ、他端に引っ掛け部が設けられた接続工具のナット部を、コンペンシャックルロッドの先端に螺合させる工程と、ホイストをつり合いおもりの矩形枠から吊り下げる工程と、ホイストのフックを引っ掛け部に引っ掛ける工程と、ホイストを操作して接続工具を引き上げる工程と、調整ナットを締め込む工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示のエレベーターのコンペンロープ引き上げ装置によれば、コンペンシャックルロッドの先端に螺合させた接続工具にホイストが接続される。そして、ホイストは矩形枠からロープによって吊るされる。このような構成によれば、ホイストを操作して接続工具を引き上げることにより、コンペンシャックルロッド及びコンペンロープを容易に引き上げることができる。これにより、調整ナットを締め込む際の作業員の負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態におけるエレベーター装置の例を示す図である。
図2図1のA-A方向からエレベーター装置を見た図である。
図3図2のB部を拡大した部分拡大図である。
図4】実施の形態のコンペンロープ引き上げ装置を取り付けた状態を示す図である。
図5】接続工具の構成を説明するための図である。
図6】接続工具の取り付け工程を説明するための図であり、図2のB部を拡大した部分拡大図である。
図7】接続工具の取り付け工程を説明するための図であり、図2のB部を拡大した部分拡大図である。
図8】コンペンロープの引き上げ工程を説明するための図であり、図2のB部を拡大した部分拡大図である。
図9】コンペンロープの引き上げ工程を説明するための図であり、図2のB部を拡大した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
実施の形態.
1.実施の形態のエレベーター装置の構成
図1は、実施の形態におけるエレベーター装置の例を示す図である。図2は、図1のA-A方向からエレベーター装置を見た図である。エレベーター装置は、かご1及びつり合いおもり2を備える。かご1は、複数のパネル部材を互いに接続して内部空間を形成している。かご1は、昇降路3を上下に移動する。つり合いおもり2は、昇降路3におけるかご1の背面側を上下に移動する。かご1及びつり合いおもり2は、主ロープ4によって昇降路3に吊り下げられる。
【0012】
主ロープ4は、巻上機5の駆動綱車6に巻き掛けられる。駆動綱車6が回転すると、駆動綱車6が回転した方向に応じた方向に主ロープ4が移動する。主ロープ4が移動する方向に応じてかご1は上昇或いは下降する。かご1の移動は、ガイドレール9によって案内される。
【0013】
ガイドレール9は、鉛直方向に一直線状に設けられる。ガイドレール9は、昇降路3のピット3aから昇降路3の頂部に亘って配置される。ピット3aは、昇降路3のうち最下階の乗場10より下方に形成された空間である。かご1は、2本のガイドレール9の間に配置される。
【0014】
つり合いおもり2は、矩形枠20と、矩形枠20の枠内に配置されたおもり片24と、を備える。つり合いおもり2は、かご1の背面側の昇降路3において、かご1が移動する方向とは反対の方向に移動する。つり合いおもり2の移動は、ガイドレール14によって案内される。
【0015】
ガイドレール14は、鉛直方向に一直線状に設けられる。ガイドレール14は、昇降路3のピット3aから昇降路3の頂部に亘って配置される。つり合いおもり2は、2本のガイドレール14の間に配置される。
【0016】
つり合いおもり2は、例えばガイドシュー22を備える。4つのガイドシュー22は、ガイドレール14と摺動自在に係合するように、矩形枠20の上端側の両端及び下端側の両端にそれぞれ固定される。
【0017】
このようにして、かご1及びつり合いおもり2は、主ロープ4によって昇降路3内で互いに相反する方向に昇降するつるべ状に吊持されている。すなわち、主ロープ4は、昇降路3内においてかご1とつり合いおもり2とを1:1ローピング方式で吊り下げている。なお、かご1及びつり合いおもり2は、複数本の主ロープ4によって吊持されていてもよい。本実施の形態のエレベーター装置では、3本の主ロープ4が使用されている。
【0018】
コンペンロープ30は、巻上機5から見たかご1側の重量とつり合いおもり2側の重量との不均衡を補正するためのロープである。コンペンロープ30は、一方の端部がかご1の下部に連結される。コンペンロープ30は、かご1から吊り下げられる。昇降路3のピット3aに、コンペンシーブ32が回転可能に設けられる。コンペンロープ30は、コンペンシーブ32に巻き掛けられる。
【0019】
コンペンロープ30は、もう一方の端部がつり合いおもり2の取り付け部26にコンペンシャックルロッド34を介して接続されている。つまり、コンペンロープ30は、つり合いおもり2から吊り下げられる。取り付け部26は、矩形枠20の左右の縦はり20aの間を掛け渡すように取り付けられた部品である。コンペンシャックルロッド34の一端側には、コンペンロープ30の一端部が固定されて接続されている。
【0020】
図3は、図2のB部を拡大した部分拡大図である。図3における取り付け部26は、コンペンシャックルロッド34の中心軸を含む平面で切断した断面を示している。取り付け部26には、コンペンシャックルロッド34を通すための貫通孔26aが設けられている。貫通孔26aにはコンペンシャックルロッド34の他端側が下側から挿通され、調整ナット36及び固定ナット38が取り付け部26の上側から締結されている。調整ナット36は、コンペンロープ30の吊り下げ長、つまりコンペンシーブ32とピット3aの床面とのクリアランスを調整するためのものである。コンペンシーブ32とピット3aの床面とのクリアランスは、調整ナット36を締め込むと大きくなり、緩めると小さくなる。固定ナット38は、調整ナット36の廻り止めのためのナットである。
【0021】
2.実施の形態のコンペンロープ引き上げ装置の構成
エレベーターの主ロープ4及びコンペンロープ30は、経時的に伸びが発生する。主ロープ4及びコンペンロープ30に伸びが発生すると、コンペンシーブ32の位置が下がることとなる。コンペンシーブ32の下部とピット3aの床面とのクリアランスを確保するため、コンペンシャックルロッド34の調整ナット36を締め込む作業が定期的に行われる。
【0022】
ここで、コンペンシャックルロッド34は、コンペンロープ30とコンペンシーブ32の重量を受けている。このため、調整ナット36を締め込む作業は、労力を要する上、コンペンシャックルロッド34のネジ山が痛む可能性もある。
【0023】
本実施の形態のコンペンロープ引き上げ装置は、このような締め上げ作業時に、コンペンロープ30を引き上げる装置である。図4は、本実施の形態のコンペンロープ引き上げ装置を取り付けた状態を示す図である。コンペンロープ引き上げ装置は、接続工具40と、ホイスト50と、ロープ54と、U字環56と、を備える。
【0024】
接続工具40は、コンペンシャックルロッド34の先端に接続される工具である。図5は、接続工具の構成を説明するための図である。接続工具40は、本体部42と、高ナット44と、固定ナット46と、を備える。本体部42の先端側には、コンペンシャックルロッド34と呼び径及びピッチが共通のネジ部42aが形成されている。本体部42の末端側には、引っ掛け部42bが形成されている。引っ掛け部42bは、円形の外形の中央に円形の孔が形成されている。ナット部としての高ナット44は、一端側をネジ部42aに螺合させ、他端側をコンペンシャックルロッド34に螺合させることで、本体部42とコンペンシャックルロッド34とを接続する。高ナット44の寸法は、例えばM16×50mmである。ネジ部42aには、高ナット44の適正位置の目安を示す目印42cが記されている。典型的には、目印42cは、ラインマーキングである。固定ナット46は、高ナット44の廻り止めのためのナットである。
【0025】
接続工具40の引っ掛け部42bは、U字環52を介してホイスト50のフックに接続される。ホイスト50は、対象物を引き上げるための工具である。典型的には、ホイスト50は、チェーンブロックである。ホイスト50の駆動方式に限定はない。例えば、ホイスト50は電動式でもよいし手動式でもよい。
【0026】
ホイスト50は、2本のロープ54によって接続工具40よりも上方の位置に吊り下げられる。ロープ54は、例えば金属のループ状のワイヤーロープである。或いは、ロープ54は、両端にそれぞれループが形成されたワイヤーロープでもよい。矩形枠20の左右の縦はり20aには、おもり片24の上部を抑えるための保持部材を取り付けるための孔20bが高さ方向に沿って複数設けられている。典型的には、2本ロープ54の一端は、それぞれ矩形枠20の左右の孔20bにU字環56を介して接続される。2本ロープ54の他端は、それぞれホイスト50の本体フックに引っ掛けられる。これにより、ホイスト50は、矩形枠20の左右中央且つ接続工具40よりも上方に位置するように吊り下げられる。このような接続状態でホイスト50によって接続工具40を引き上げると、コンペンシャックルロッド34が引き上げられる。これにより、調整ナット36に軸方向の荷重が付加されないので、調整ナット36を締め込む作業を容易に行うことができる。
【0027】
3.コンペンロープ引き上げ装置を用いた引き上げ作業手順
次に、実施の形態のコンペンロープ引き上げ装置を用いたコンペンロープ30の引き上げ方法の手順について詳細に説明する。以下、3本のコンペンロープ30のうちの中央のコンペンロープ30の引き上げ作業について図示するが、左側及び右側のコンペンロープ30についても同様である。
【0028】
準備工程:ロックダウンの取り外し工程
エレベーター装置にコンペンシーブ32の跳ね上がりを抑えるためのロックダウンと呼ばれる安全装置が搭載されている場合、作業員は、事前準備として、当該ロックダウンを取り外しておく。
【0029】
第一工程:ホイスト50の取り付け工程
作業の第一工程では、作業員は、U字環56を用いて、2本ロープ54のループの一端をそれぞれ矩形枠20の左右の孔20bに固定する。この際、作業員は、ロープ54に吊り下げられるホイスト50を後工程で取り付けられる接続工具40よりも上方に配置可能な孔20bを選択する。作業員は、2本のロープ54のループの他端をホイスト50の本体フックに引っ掛ける。これにより、ホイスト50は、2本のロープ54によって接続工具40よりも上方の位置に吊り下げられる。
【0030】
第二工程:接続工具40の取り付け工程
作業の第二工程では、作業員は、接続工具40をコンペンシャックルロッド34の先端に固定する。図6及び図7は、接続工具の取り付け工程を説明するための図であり、図2のB部を拡大した部分拡大図である。作業員は、コンペンシャックルロッド34に取り付けられている図示しない割りピンを取り外す。次に、作業員は、図6に示すように、本体部42のネジ部42aに固定ナット46及び高ナット44を順に螺合させてネジ部42aの先端部を外部に露出させる。そして、作業員は、接続工具40のネジ部42aの先端をコンペンシャックルロッド34の先端に密着させる。
【0031】
次に、図7に示すように、作業員は、目印42cが露出するまで高ナット44を取り外し方向に回転させる。そして、作業員は、固定ナット46によって高ナット44を固定する。
【0032】
第三工程:コンペンロープ30の引き上げ工程
作業の第三工程では、作業員は、コンペンシャックルロッド34及びコンペンロープ30を引き上げる。図8及び図9は、コンペンロープの引き上げ工程を説明するための図であり、図2のB部を拡大した部分拡大図である。作業員は、コンペンロープ30を引き上げた際にコンペンシャックルロッド34が回転しないように、図示しない廻り止め装置をコンペンシャックルロッド34に取り付ける。廻り止め装置の種類に限定はない。次に、作業員は、接続工具40の引っ掛け部42bにU字環52を取り付ける。次に作業員は、ホイスト50のフック50aをU字環52に引っ掛ける。
【0033】
次に、図8に示すように、作業員は、ホイスト50を操作してフック50aを吊り上げる。これにより、コンペンシャックルロッド34及びコンペンロープ30が引き上げられる。ここでの引き上げ量は、コンペンシーブ32とピット3aの床面とのクリアランスが規定値となるための引き上げ量である。次に、図9に示すように、作業員は、固定ナット38を緩めて調整ナット36を締め込んだ後、固定ナット38を再び締め込む。次に、作業員は、ホイスト50のフック50aをU字環52から取り外す。そして、作業員は、第二工程の逆の手順で接続工具40を取り外す。
【0034】
作業員は、このような第二工程及び第三工程の作業を、複数本のコンペンロープ30の全てに対して行う。そして、作業員は、固定ナット38の増し締めを行った後、コンペンシャックルロッド34に割ピンを取り付ける。次に、作業員は、複数本のコンペンロープ30のテンションにばらつきがないかを確認する。最後に、作業員は、ロックダウンを取り付けて、引き上げ作業が完了される。
【0035】
4.コンペンロープ引き上げ装置の作用及び効果
以上のようなコンペンロープ引き上げ装置及び引き上げ方法によれば、以下の作用及び効果が得られる。
【0036】
コンペンロープが引き上げられた状態で調整ナット36が締め込まれるので、作業員の労力の軽減及びコンペンシャックルロッド34のネジ山の保護が図れる。
【0037】
接続工具40のネジ部42aには、高ナット44の適正位置の目安を示す目印42cが記されているため、作業性が向上する。また、接続工具40には固定ナット46が取り付けられているため、高ナット44がネジ部42aから意図せずに外れることを防止できる。
【0038】
引っ掛け部42bは、円形の外形の中央に円形の孔が形成されているため、引っ掛け部42bに対するU字環52の角度を自在に変化させることができる。これにより、ホイスト50の直下からずれた位置にあるコンペンシャックルロッド34であっても、問題なく引き上げることができる。
【0039】
ホイスト50は、矩形枠20の左右の縦はり20aのそれぞれからロープ54によって、固定されるので、左右方向へのホイスト50のブレを抑えることができる。
【0040】
ロープ54の矩形枠20への固定は、おもり片24の固定に用いられる孔20bが利用されるので、ロープ54を容易に且つ強固に取り付けることが可能となる。
【0041】
5.コンペンロープ引き上げ装置の変形例
実施の形態のコンペンロープ引き上げ装置は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0042】
高ナット44は、本体部42の先端部に溶接等で固定されていてもよい。この場合、作業員は、接続工具40自体を回転させて高ナット44をコンペンシャックルロッド34の先端に螺合させればよい。このような構成によれば、接続工具40は、ネジ部42aのネジ山の構成及び固定ナット46が要となる。
【0043】
ロープ54の取り付け位置は、矩形枠20の縦はり20bに限定されない。すなわち、ロープ54は、ホイスト50の吊り下げが可能な位置であれば、例えば矩形枠20の上はり等でもよい。
【0044】
コンペンロープ引き上げ装置は、複数の接続工具40を同時に使用して、複数のコンペンロープ30を同時に引き上げることとしてもよい。この場合、ホイスト50のフック50aに複数の接続工具40を、U字環52を介して引っ掛ければよい。
【符号の説明】
【0045】
1 かご、 2 つり合いおもり、 3 昇降路、 3a ピット、 4 主ロープ、 5 巻上機、 6 駆動綱車、 9 ガイドレール、 10 乗場、 14 ガイドレール、 20 矩形枠、 20b 孔、 22 ガイドシュー、 24 おもり片、 26 取り付け部、 26a 貫通孔、 30 コンペンロープ、 32 コンペンシーブ、 34 コンペンシャックルロッド、 36 調整ナット、 38 固定ナット、 40 接続工具、 42 本体部、 42a ネジ部、 42b 引っ掛け部、 42c 目印、 44 高ナット、 46 固定ナット、 50 ホイスト、 50a フック、 52 U字環、 54 ロープ、 56 U字環
【要約】
【課題】コンペンロープを引き上げる作業において作業員の負担を軽減することのできるエレベーターのコンペンロープ引き上げ装置を提供する。
【解決手段】コンペンロープの端部にはコンペンシャックルロッドが接続され、コンペンシャックルロッドをつり合いおもりの取り付け部の貫通孔に下側から挿通して調整ナットを取り付け部の上側から締結することにより、コンペンロープがつり合いおもりに吊り下げられている。コンペンロープ引き上げ装置は、一端にコンペンシャックルロッドの先端に螺合させるナット部が設けられ、他端に引っ掛け部が設けられた接続工具と、引っ掛け部に接続されるホイストと、つり合いおもりの矩形枠からホイストを接続工具よりも上方に吊るすロープと、を備える。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9