(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/06 20060101AFI20220830BHJP
B60C 3/04 20060101ALI20220830BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20220830BHJP
B60C 15/00 20060101ALI20220830BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20220830BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B60C15/06 B
B60C3/04 B
B60C9/18 K
B60C9/18 G
B60C9/18 N
B60C15/00 B
B60C9/22 C
B60C9/22 D
B60C11/00 F
(21)【出願番号】P 2021112570
(22)【出願日】2021-07-07
【審査請求日】2022-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幸田 由莉子
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/042256(WO,A1)
【文献】特開2020-066243(JP,A)
【文献】特開2020-066244(JP,A)
【文献】特開平06-234310(JP,A)
【文献】特開2014-189178(JP,A)
【文献】特表2001-512390(JP,A)
【文献】特開2008-074250(JP,A)
【文献】特開2005-280456(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208214(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/095099(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/053071(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
65%以下の偏平比の呼びを有し、
路面と接地するトレッドと、
前記トレッドの端に連なり、径方向において前記トレッドの内側に位置する一対のサイドウォールと、
径方向において前記サイドウォールの内側に位置する一対のビードと、
前記トレッド及び前記一対のサイドウォールの内側に位置するカーカスと、
径方向において前記トレッドと前記カーカスとの間に位置し、螺旋状に巻かれたバンドコードを含むバンドと
、
並列した多数のベルトコードを含むベルトと
を備え、
前記トレッドに少なくとも3本の周方向溝を刻むことで少なくとも4本の陸部が構成され、前記少なくとも3本の周方向溝のうち軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、軸方向において前記ショルダー周方向溝の外側に位置する陸部がショルダー陸部であり、
前記ビードが、コアと、径方向において前記コアの外側に位置する第一エイペックスと、径方向において前記第一エイペックスの外側に位置する第二エイペックスとを備え、
前記カーカスがカーカスプライを備え、前記カーカスプライが一方のビードと他方のビードとの間を架け渡すプライ本体と、前記プライ本体に連なり前記ビードの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部とを備え、
前記バンドが、赤道面を挟んで相対する両端を有するフルバンドと、径方向において前記フルバンドの端の外側に位置する一対のエッジバンドとを備え、
前記ベルトが複数のベルトプライを備え、複数の前記ベルトプライのうち、径方向において内側に位置するベルトプライが第一ベルトプライであり、前記第一ベルトプライの径方向外側に位置するベルトプライが第二ベルトプライであり、前記第二ベルトプライの径方向外側に位置するベルトプライが第三ベルトプライであり、
前記第二ベルトプライが最も広い幅を有し、
軸方向において、前記フルバンドの端が前記ショルダー周方向溝の外側に位置し、
軸方向において、前記エッジバンドの内端が前記フルバンドの端の内側に位置し、
軸方向において、前記エッジバンドの外端位置が前記フルバンドの端位置と一致する、又は、前記エッジバンドの外端が前記フルバンドの端の外側に位置し、
前記エッジバンドの外端が軸方向において前記第三ベルトプライの端の内側に位置し、
前記第一エイペックスが前記第二エイペックスよりも硬質であり、
径方向において、前記第一エイペックスの頂の位置が前記折り返し部の端の位置と一致する、又は、前記第一エイペックスの頂が前記折り返し部の端よりも内側に位置する、
重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記第二エイペックスとの境界をなす前記第一エイペックスの頂面が径方向外向きに湾曲した輪郭を有する、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記第一エイペックスの高さの、前記折り返し部の高さに対する比が、0.45以上である、
請求項1
又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記第一エイペックスの硬さの、前記第二エイペックスの硬さに対する比が1.4以上2.0以下である、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記ショルダー周方向溝から前記フルバンドの端までの軸方向距離の、前記ショルダー陸部の軸方向幅に対する比率が10%以上50%以下である、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
前記フルバンドの端から前記エッジバンドの内端までの軸方向距離が10mm以上である、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重用タイヤにおいては、偏摩耗の発生を防止するためにタイヤの径成長を抑える技術の適用が検討されている。例えば、下記の特許文献1に開示されたタイヤでは、径成長を抑えるために、実質的に周方向に延びるバンドコードを含むバンドが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤが膨張するとき、例えば、サイド部は径方向に伸びる。偏摩耗の発生防止のためにバンドを採用すると、バンドがサイド部の伸びを抑制する。抑制の程度によっては、サイド部に特異な歪が生じることが懸念される。
【0005】
重荷重用タイヤのビード部には大きな荷重が作用する。偏平比の呼びが65%以下である低偏平な重荷重用タイヤにおいては、高偏平タイヤに比べて、サイド部が短い。低偏平タイヤのサイド部は、ビード部に生じた歪みの影響を受けやすい。
【0006】
偏摩耗の発生防止にバンドの採用は有効である。低偏平タイヤにバンドを採用すると、そのサイド部に歪が生じやすい。歪に起因する損傷がサイド部に発生すること、言い換えれば、タイヤの耐久性が低下することが懸念される。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とを達成できる、重荷重用タイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る重荷重用タイヤは、65%以下の偏平比の呼びを有する。このタイヤは、路面と接地するトレッドと、前記トレッドの端に連なり、径方向において前記トレッドの内側に位置する一対のサイドウォールと、径方向において前記サイドウォールの内側に位置する一対のビードと、前記トレッド及び前記一対のサイドウォールの内側に位置するカーカスと、径方向において前記トレッドと前記カーカスとの間に位置し、螺旋状に巻かれたバンドコードを含むバンドとを備える。前記トレッドに少なくとも3本の周方向溝を刻むことで少なくとも4本の陸部が構成され、前記少なくとも3本の周方向溝のうち軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、軸方向において前記ショルダー周方向溝の外側に位置する陸部がショルダー陸部である。前記ビードは、コアと、径方向において前記コアの外側に位置する第一エイペックスと、径方向において前記第一エイペックスの外側に位置する第二エイペックスとを備える。前記カーカスはカーカスプライを備え、前記カーカスプライは一方のビードと他方のビードとの間を架け渡すプライ本体と、前記プライ本体に連なり前記ビードの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部とを備える。前記バンドは、赤道面を挟んで相対する両端を有するフルバンドと、径方向において前記フルバンドの端の外側に位置する一対のエッジバンドとを備える。前記第一エイペックスは前記第二エイペックスよりも硬質である。径方向において、前記第一エイペックスの頂の位置は前記折り返し部の端の位置と一致する。又は、径方向において、前記第一エイペックスの頂は前記折り返し部の端よりも内側に位置する。
【0009】
好ましくは、この重荷重用タイヤでは、前記第二エイペックスとの境界をなす前記第一エイペックスの頂面は径方向外向きに湾曲した輪郭を有する。
【0010】
好ましくは、この重荷重用タイヤでは、軸方向において、前記フルバンドの端は前記ショルダー周方向溝の外側に位置する。
【0011】
好ましくは、この重荷重用タイヤでは、前記第一エイペックスの高さの、前記折り返し部の高さに対する比は、0.45以上である。
【0012】
好ましくは、この重荷重用タイヤでは、前記第一エイペックスの硬さの、前記第二エイペックスの硬さに対する比は1.4以上2.0以下である。
【0013】
好ましくは、この重荷重用タイヤでは、前記ショルダー周方向溝から前記フルバンドの端までの軸方向距離の、前記ショルダー陸部の軸方向幅に対する比率は10%以上50%以下である。
【0014】
好ましくは、この重荷重用タイヤでは、前記フルバンドの端から前記エッジバンドの内端までの軸方向距離は10mm以上である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とを達成できる、重荷重用タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤの一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、補強層の構成を説明する概略図である。
【
図3】
図3は、
図1のタイヤのトレッド部を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図1のタイヤのビード部を示す拡大断面図である。
【
図5】
図5は、比較例1のタイヤのビード部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0018】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み込み、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。
【0019】
本開示においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、左右のビード間の距離を、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致させて、測定される。
【0020】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本開示におけるリムは、特に言及がない限り、正規リムを意味する。
【0021】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0022】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0023】
本開示において、「偏平比の呼び」は、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」に含まれる「偏平比の呼び」である。
【0024】
本開示において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイド部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイド部を備える。
リムは、シートとフランジとを備える。タイヤがリムに組まれると、ビード部の内周面がシートに載せられ、ビード部の外側面がフランジに接触する。
【0025】
本開示において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の硬さは、JIS K6253の規定に準じて、23℃の温度条件下でタイプAデュロメータを用いて測定される。
【0026】
本開示において、並列したコードを含む、タイヤの要素5cm幅あたりに含まれるコードの本数が、この要素に含まれるコードの密度(単位は、エンズ/5cmである。)として表される。コードの密度は、特に言及がない限り、コードの長さ方向に対して垂直な面で切断することにより得られる要素の断面において得られる。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤ2(以下、単に「タイヤ2」とも称する。)の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2の偏平比の呼びは65%以下である。言い換えれば、このタイヤ2は、65%以下の偏平比の呼びを有する。このタイヤ2は、低偏平タイヤである。
【0028】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、タイヤ2の断面(以下、子午線断面とも称される。)の一部を示す。
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0029】
図1において、タイヤ2はリムRに組まれている。リムRは正規リムである。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が調整される。リムRに組まれたタイヤ2は、タイヤ-リム組立体とも称される。タイヤ-リム組立体は、リムRと、このリムRに組まれたタイヤ2とを備える。
【0030】
図1において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、リムRのリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0031】
図1において、符号PWで示される位置はタイヤ2の軸方向外端である。模様や文字等の装飾が外面にある場合、外端PWは、装飾がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。
【0032】
図1において、符号WAで示される長さはタイヤ2の最大幅、すなわち断面幅(JATMA等参照)である。タイヤ2の断面幅WAは、一方の外端PWから他方の外端PWまでの軸方向距離である。外端PWは、このタイヤ2が最大幅を示す位置(以下、最大幅位置)である。
【0033】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のチェーファー8、一対のビード10、カーカス12、一対のクッション層14、インナーライナー16、インスレーション18、一対のスチールフィラー20、一対の層間ストリップ22、一対のエッジストリップ24及び補強層26を備える。
【0034】
トレッド4は、その外面において路面と接地する。トレッド4の外面はトレッド面28である。
図1において符号PCは、トレッド面28と赤道面との交点である。この交点PCはタイヤ2の赤道である。
【0035】
図1において、符号PEはトレッド面28の端である。符号WTで示される長さは、トレッド4の幅である。このトレッド4の幅WTは、一方のトレッド面28の端PEから他方のトレッド面28の端PEまでの軸方向距離である。外観上、トレッド面28の端PEが識別不能な場合には、正規状態のタイヤ2のキャンバー角を0°とした状態で正規荷重を縦荷重としてタイヤ2に負荷して、平面からなる路面にタイヤ2を接触させて得られる接地面の、軸方向外端に対応するトレッド面28上の位置がトレッド面28の端PEとして用いられる。
【0036】
トレッド4は架橋ゴムからなる。図示されないが、トレッド4は、キャップ層及びベース層を含む。キャップ層は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなり、トレッド面28を構成する。ベース層は、低発熱性の架橋ゴムからなり、キャップ層の内側に位置する。
【0037】
このタイヤ2では、少なくとも3本の周方向溝30がトレッド4に刻まれる。
図1に示されたタイヤ2のトレッド4には、4本の周方向溝30が刻まれる。これら周方向溝30は、軸方向に並列され、周方向に連続して延びる。
【0038】
トレッド4に刻まれた4本の周方向溝30のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝30がショルダー周方向溝30sである。軸方向において、このショルダー周方向溝30sの内側に位置する周方向溝30がミドル周方向溝30mである。このタイヤ2では、4本の周方向溝30は、一対のミドル周方向溝30mと一対のショルダー周方向溝30sとで構成される。
【0039】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、ミドル周方向溝30mの溝幅はトレッド4の幅WTの2%以上10%以下が好ましい。ミドル周方向溝30mの溝深さは、10mm以上25mm以下が好ましい。ショルダー周方向溝30sの溝幅は、トレッド4の幅WTの1%以上7%以下が好ましい。ショルダー周方向溝30sの溝深さDSは、10mm以上25mm以下が好ましい。
【0040】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、径方向においてトレッド4の内側に位置する。サイドウォール6は架橋ゴムからなる。サイドウォール6はカーカス12を保護する。
【0041】
それぞれのチェーファー8は、径方向において、サイドウォール6の内側に位置する。チェーファー8は、リムRと接触する。チェーファー8は、耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0042】
それぞれのビード10は、軸方向において、チェーファー8の内側に位置する。ビード10は、径方向において、サイドウォール6の内側に位置する。ビード10は、コア32と、エイペックス34とを備える。
【0043】
コア32は、周方向に延びる。コア32は、巻き回されたスチール製のワイヤを含む。コア32は略六角形の断面形状を有する。エイペックス34は架橋ゴムからなる。エイペックス34は、コア32の径方向外側において、外向きに先細りである。
【0044】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のチェーファー8の内側に位置する。カーカス12は一方のビード10と他方のビード10との間を架け渡す。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ36を備える。このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ36からなる。
【0045】
カーカスプライ36は、それぞれのビード10の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。カーカスプライ36は、一方のビード10と他方のビード10との間を架け渡すプライ本体36aと、このプライ本体36aに連なりそれぞれのビード10の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部36bとを備える。
【0046】
図示されないが、カーカスプライ36は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは、トッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。カーカスコードが赤道面に対してなす角度は70°以上90°以下である。カーカス12はラジアル構造を有する。スチールコードがカーカスコードとして用いられる。
【0047】
図1において、両矢印Fで示される長さは折り返し部36bの高さである。折り返し部36bの高さFは、ビードベースラインから折り返し部36bの端36fまでの径方向距離である。両矢印Wで示される長さは、最大幅高さである。最大幅高さWは、ビードベースラインから最大幅位置PWまでの径方向距離である。
【0048】
このタイヤ2では、ビード部の剛性確保の観点から、折り返し部36bの高さFの、最大幅高さWに対する比(F/W)は0.30以上が好ましい。折り返し部36bの端への歪の集中が抑えられる観点から、比(F/W)は、0.45以下が好ましい。
【0049】
それぞれのクッション層14は、補強層26の端26eにおいて、この補強層26とカーカス12との間に位置する。クッション層14は、軟質な架橋ゴムからなる。
【0050】
インナーライナー16はカーカス12の内側に位置する。インナーライナー16は、タイヤ2の内面を構成する。インナーライナー16は、気体透過係数が低い架橋ゴムからなる。インナーライナー16は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0051】
インスレーション18は、カーカス12とインナーライナー16との間に位置する。インスレーション18は、カーカス12と接合し、インナーライナー16と接合する。言い換えれば、インナーライナー16は、インスレーション18を介してカーカス12に接合される。インスレーション18は、接着性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0052】
それぞれのスチールフィラー20は、ビード10の部分に位置する。スチールフィラー20は、カーカスプライ36に沿って、コア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。
【0053】
このタイヤ2では、スチールフィラー20の一方の端(以下、内端20ue)は径方向において折り返し部36bの端36fの内側に位置する。スチールフィラー20の他方の端(以下、外端20se)は、径方向において、スチールフィラー20の内端20ueよりも内側に位置する。
【0054】
図示されないが、スチールフィラー20は並列した多数のフィラーコードを含む。スチールフィラー20においてフィラーコードはトッピングゴムで覆われる。スチールコードがフィラーコードとして用いられる。
【0055】
それぞれの層間ストリップ22は、エイペックス34とチェーファー8との間に位置する。層間ストリップ22は、折り返し部36bの端36f、そしてスチールフィラー20の外端20seを覆う。層間ストリップ22は架橋ゴムからなる。
【0056】
それぞれのエッジストリップ24は、エイペックス34と層間ストリップ22との間に位置する。エッジストリップ24と層間ストリップ22との間に折り返し部36bの端36fが挟まれる。エッジストリップ24は架橋ゴムからなる。このタイヤ2のエッジストリップ24の材質は層間ストリップ22の材質と同じである。
【0057】
補強層26は径方向においてトレッド4の内側に位置する。補強層26は、カーカス12とトレッド4との間に位置する。補強層26は、ベルト38とバンド40とを備える。
【0058】
ベルト38は、径方向に並ぶ複数のベルトプライ42を備える。各ベルトプライ42は、両端が赤道面を挟んで相対するように配置される。このタイヤ2のベルト38は、4枚のベルトプライ42を備える。4枚のベルトプライ42のうち、径方向において内側に位置するベルトプライ42が第一ベルトプライ42Aである。第一ベルトプライ42Aの外側に位置するベルトプライ42が第二ベルトプライ42Bである。第二ベルトプライ42Bの外側に位置するベルトプライ42が第三ベルトプライ42Cである。第三ベルトプライ42Cの外側に位置するベルトプライ42が第四ベルトプライ42Dである。このベルト38が2枚のベルトプライ42で構成されてもよく、3枚のベルトプライ42で構成されてもよい。
【0059】
図1において、符号W1で示される長さは第一ベルトプライ42Aの軸方向幅である。符号W2で示される長さは、第二ベルトプライ42Bの軸方向幅である。符号W3で示される長さは、第三ベルトプライ42Cの軸方向幅である。符号W4で示される長さは、第四ベルトプライ42Dの軸方向幅である。各ベルトプライ42の軸方向幅は、ベルトプライ42の一方の端42eから他方の端42eまでの軸方向距離である。
【0060】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ42Bが最も広い軸方向幅W2を有し、第四ベルトプライ42Dが最も狭い軸方向幅W4を有する。第一ベルトプライ42Aは第三ベルトプライ42Cの軸方向幅W3と同等の軸方向幅W1を有する。第一ベルトプライ42Aの軸方向幅W1が第三ベルトプライ42Cの軸方向幅W3よりも広くてもよい。
【0061】
このタイヤ2では、トレッド部の剛性確保の観点から、トレッド4の幅WTに対する第一ベルトプライ42Aの軸方向幅W1の比(W1/WT)は0.80以上が好ましく、0.90以下が好ましい。トレッド4の幅WTに対する第二ベルトプライ42Bの軸方向幅W2の比(W2/WT)は0.85以上が好ましく、0.95以下が好ましい。トレッド4の幅WTに対する第三ベルトプライ42Cの軸方向幅W3の比(W3/WT)は0.80以上が好ましく、0.90以下が好ましい。トレッド4の幅WTに対する第四ベルトプライ42Dの軸方向幅W4の比(W4/WT)は0.55以上が好ましく、0.65以下が好ましい。
【0062】
このタイヤ2のベルト38の端38eは、ベルト38を構成する複数のベルトプライ42のうち、最も広い軸方向幅を有するベルトプライ42の端42eで表される。前述したように、このタイヤ2では、第二ベルトプライ42Bが最も広い軸方向幅を有する。このタイヤ2のベルト38の端38eは第二ベルトプライ42Bの端42Beで表される。
【0063】
図1に示されるように、最も狭い軸方向幅W4を有する第四ベルトプライ42Dの端42Deが、軸方向において、ショルダー周方向溝30sの外側に位置する。このタイヤ2では、ベルト38を構成する全てのベルトプライ42の端42eが、軸方向において、ショルダー周方向溝30sの外側に位置する。
【0064】
バンド40は、フルバンド44と、一対のエッジバンド46とを備える。
図1に示されるように、フルバンド44は、赤道面を挟んで相対する両端44eを有する。一対のエッジバンド46は、赤道面を挟んで軸方向に離間して配置される。一対のエッジバンド46の間に第四ベルトプライ42Dが位置する。
【0065】
このタイヤ2では、それぞれのエッジバンド46は、トレッド4とフルバンド44との間に位置する。エッジバンド46は、径方向において、フルバンド44の端44eの外側に位置する。軸方向において、エッジバンド46の内端46ueはフルバンド44の端44eの内側に位置する。エッジバンド46の外端46seは、軸方向において、フルバンド44の端44eの外側に位置する。このエッジバンド46の外端46seは、軸方向において、フルバンド44の端44eとベルト38の端38e(詳細には、第三ベルトプライ42Cの端42Ce)との間に位置する。このエッジバンド46は、径方向においてフルバンド44の端44eと重複する。このタイヤ2では、エッジバンド46の外端46se位置が軸方向においてフルバンド44の端44e位置と一致していてもよい。
【0066】
前述したように、エッジバンド46の外端46seは、軸方向において、フルバンド44の端44eの外側に位置する。このタイヤ2では、エッジバンド46の外端46seがバンド40の端40eである。
図1に示されるように、バンド40の端40eは、軸方向において、ベルト38の端38eの内側に位置する。このタイヤ2では、ベルト38の端38eは補強層26の端26eである。
【0067】
図2は、補強層26の構成を示す。
図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。
図2の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。
図2の紙面の表側が径方向外側である。
図2の紙面の裏側が径方向内側である。
【0068】
図2に示されるように、ベルト38を構成する各ベルトプライ42は並列した多数のベルトコード48を含む。
図2では、説明の便宜のため、ベルトコード48は実線で表されるが、ベルトコード48はトッピングゴム50で覆われる。このタイヤ2のベルトコード48はスチールコードである。このタイヤ2では、各ベルトプライ42におけるベルトコード48の密度は、15エンズ/5cm以上30エンズ/5cm以下である。
【0069】
各ベルトプライ42においてベルトコード48は、周方向に対して傾斜する。第一ベルトプライ42Aに含まれるベルトコード48の傾斜の向き(以下、第一ベルトコード48Aの傾斜方向)は、第二ベルトプライ42Bに含まれるベルトコード48の傾斜の向き(以下、第二ベルトコード48Bの傾斜方向)と同じである。第二ベルトコード48Bの傾斜方向は、第三ベルトプライ42Cに含まれるベルトコード48の傾斜の向き(以下、第三ベルトコード48Cの傾斜方向)と逆である。第三ベルトコード48Cの傾斜方向は、第四ベルトプライ42Dに含まれるベルトコード48の傾斜の向き(以下、第四ベルトコード48Dの傾斜方向)と同じである。なお、第一ベルトコード48Aの傾斜方向が第二ベルトコード48Bの傾斜方向と逆であってもよく、第四ベルトコード48Dの傾斜方向が第三ベルトコード48Cの傾斜方向と逆であってもよい。このタイヤ2では、形状変化が抑えられた接地面が得られる観点から、第二ベルトコードの傾斜方向が第三ベルトコードの傾斜方向と逆であるのが好ましい。
【0070】
図2において、角度θ1は、第一ベルトコード48Aが赤道面に対してなす角度(以下、第一傾斜角度θ1)である。角度θ2は、第二ベルトコード48Bが赤道面に対してなす角度(以下、第二傾斜角度θ2)である。角度θ3は、第三ベルトコード48Cが赤道面に対してなす角度(以下、第三傾斜角度θ3)である。角度θ4は、第四ベルトコード48Dが赤道面に対してなす角度(以下、第四傾斜角度θ4)である。
【0071】
このタイヤ2では、第一傾斜角度θ1、第二傾斜角度θ2、第三傾斜角度θ3及び第四傾斜角度θ4は、10°以上が好ましく、60°以下が好ましい。タイヤ2の動きが効果的に拘束され、接地面の形状安定性が確保される観点から、第一傾斜角度θ1は40°以上が好ましく、60°以下が好ましい。第二傾斜角度θ2は、10°以上が好ましく、20°以下が好ましい。第三傾斜角度θ3は、10°以上が好ましく、20°以下が好ましい。第四傾斜角度θ4は10°以上が好ましく、60°以下が好ましい。
【0072】
図2に示されるように、バンド40を構成する、フルバンド44及び一対のエッジバンド46は、螺旋状に巻かれたバンドコード52を含む。
図2では、説明の便宜のため、バンドコード52は実線で表されるが、このバンドコード52はトッピングゴム54で覆われる。
【0073】
このタイヤ2では、バンドコード52はスチールコード又は有機繊維からなるコード(以下、有機繊維コード)である。バンドコード52として有機繊維コードが用いられる場合、この有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、及びアラミド繊維が例示される。このタイヤ2では、フルバンド44のバンドコード52と、エッジバンド46のバンドコード52とに同じコードが用いられてもよく、異なるコードが用いられてもよい。タイヤ2の仕様に応じて、フルバンド44及びエッジバンド46に用いられるバンドコード52が決められる。
【0074】
前述したように、フルバンド44は螺旋状に巻かれたバンドコード52を含む。フルバンド44はジョイントレス構造を有する。フルバンド44において、バンドコード52が周方向に対してなす角度は、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下である。フルバンド44のバンドコード52は実質的に周方向に延びる。
【0075】
フルバンド44におけるバンドコード52の密度は、20エンズ/5cm以上35エンズ/5cm以下である。フルバンド44におけるバンドコード52の密度は、子午線断面に含まれるフルバンド44の断面において、フルバンド44の5cm幅あたりに含まれるバンドコード52の断面数により表される。
【0076】
前述したように、エッジバンド46は螺旋状に巻かれたバンドコード52を含む。エッジバンド46はジョイントレス構造を有する。エッジバンド46において、バンドコード52が周方向に対してなす角度は、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下である。エッジバンド46のバンドコード52は実質的に周方向に延びる。
【0077】
エッジバンド46におけるバンドコード52の密度は、20エンズ/5cm以上35エンズ/5cm以下である。エッジバンド46におけるバンドコード52の密度は、子午線断面に含まれるエッジバンド46の断面において、エッジバンド46の5cm幅あたりに含まれるバンドコード52の断面数により表される。
【0078】
図3は、
図1に示された、タイヤ2の断面の一部を示す。この
図3は、このタイヤ2のトレッド部を示す。
図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0079】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ42Bの端42Beと、第三ベルトプライ42Cの端42Ceとはそれぞれ、ゴム層56で覆われる。ゴム層56で覆われた第二ベルトプライ42Bの端42Beと第三ベルトプライ42Cの端42Ceとの間には、さらに1枚のゴム層56が配置される。このタイヤ2では、第二ベルトプライ42Bの端42Beと第三ベルトプライ42Cの端42Ceとの間に、計3枚のゴム層56からなるエッジ部材58が構成される。エッジ部材58は架橋ゴムからなる。エッジ部材58は、第二ベルトプライ42Bの端42Beと第三ベルトプライ42Cの端42Ceとの間隔維持に貢献する。このタイヤ2では、走行による、第二ベルトプライ42Bの端42Beと第三ベルトプライ42Cの端42Ceとの位置関係の変化が抑えられる。エッジ部材58は、補強層26の一部である。このタイヤ2の補強層26は、ベルト38及びバンド40に加え、一対のエッジ部材58を備える。
【0080】
前述したように、トレッド4には少なくとも3本の周方向溝30が刻まれる。これにより、トレッド4には少なくとも4本の陸部60が構成される。例えば、
図3に示されるように、このタイヤ2では、4本の周方向溝30をトレッド4に刻むことで5本の陸部60が構成される。本開示においては、陸部60の外面と周方向溝30との境界が陸部60の端である。陸部60の端は周方向溝30の溝幅の基準点としての溝口でもある。
【0081】
トレッド4に構成された5本の陸部60のうち、軸方向において外側に位置する陸部60がショルダー陸部60sである。ショルダー陸部60sは軸方向においてショルダー周方向溝30sの外側に位置し、トレッド面28の端PEを含む。
図3において、符号WSで示される長さはショルダー陸部60sの軸方向幅である。軸方向幅WSは、ショルダー陸部60sの内端から外端(言い換えれば、トレッド面28の端PE)までの軸方向距離である。
【0082】
軸方向において、ショルダー陸部60sの内側に位置する陸部60がミドル陸部60mである。ミドル陸部60mとショルダー陸部60sとの間がショルダー周方向溝30sである。
図3において、符号WMで示される長さはミドル陸部60mの軸方向幅である。軸方向幅WMは、ミドル陸部60mの内端から外端までの軸方向距離である。
【0083】
軸方向において、ミドル陸部60mの内側に位置する陸部60がセンター陸部60cである。センター陸部60cとミドル陸部60mとの間がミドル周方向溝30mである。このタイヤ2では、センター陸部60cは赤道面上に位置する。
図3において、符号WCで示される長さはセンター陸部60cの軸方向幅である。軸方向幅WCは、センター陸部60cの一方の端から、図示されない他方の端までの軸方向距離である。
【0084】
このタイヤ2では、5本の陸部60は、センター陸部60cと、一対のミドル陸部60mと、一対のショルダー陸部60sとで構成される。
【0085】
このタイヤ2では、センター陸部60cの軸方向幅WCはトレッド4の幅WTの10%以上18%以下である。ミドル陸部60mの軸方向幅WMはトレッド4の幅WTの10%以上18%以下である。ショルダー陸部60sの軸方向幅WSはトレッド4の幅WTの15%以上25%以下である。
【0086】
前述したように、フルバンド44は赤道面を挟んで相対する両端44eを有する。フルバンド44は、赤道面からそれぞれの端44eに向かって軸方向に延びる。
【0087】
このタイヤ2では、フルバンド44がトレッド部の動きを効果的に拘束する。タイヤ2の形状、例えば、カーカス12の輪郭(以下、ケースラインとも称される。)の変化が抑制されるので、接地形状が変化しにくい。
【0088】
このタイヤ2ではさらに、エッジバンド46が、径方向において、フルバンド44の端44eの外側に位置する。エッジバンド46はフルバンド44の端44eを拘束する。フルバンド44に含まれるバンドコード52の張力変動が抑制されるので、この張力変動によるバンドコード52の破断が生じにくい。このタイヤ2のフルバンド44は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。なお、エッジバンド46はフルバンド44に比して狭い。このため、エッジバンド46のバンドコード52にフルバンド44のような張力変動は生じにくい。エッジバンド46のバンドコード52に破断は生じにくい。
【0089】
このタイヤ2では、フルバンド44及びエッジバンド46が、走行によるタイヤ2の形状変化を抑制する。このバンド40は耐偏摩耗性の向上に貢献する。
【0090】
タイヤのビード部には大きな荷重が作用する。前述したように、このタイヤ2は低偏平タイヤである。このタイヤ2のサイド部は、偏平比の呼びが65%を超える高偏平タイヤのサイド部に比べて短い。このタイヤ2のサイド部は、ビード部に生じた歪みの影響を受けやすい。しかも、タイヤ2が膨張する際のサイド部の伸びを、バンド40が抑制する。このタイヤ2のサイド部は、特異な歪が生じやすい状況にある。このタイヤ2では、耐偏摩耗性の向上のためにバンド40を採用したものの、歪に起因する損傷がサイド部に発生することが懸念される。
【0091】
図4は、
図1に示された、タイヤ2の断面の一部を示す。この
図4は、このタイヤ2のビード部を示す。
図4において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図4の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0092】
前述したように、ビード10は、コア32と、エイペックス34とを備える。このタイヤ2のエイペックス34は、第一エイペックス62と第二エイペックス64とを備える。
【0093】
第一エイペックス62は、径方向において、コア32の外側に位置する。このタイヤ2では、第一エイペックス62はコア32全体を覆う。第二エイペックス64は、径方向において、第一エイペックス62の外側に位置する。第二エイペックス64は径方向外向きに先細りである。
【0094】
第一エイペックス62及び第二エイペックス64は互いに硬さが異なる架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、第一エイペックス62は第二エイペックス64よりも硬質である。第一エイペックス62は硬く、第二エイペックス64は第一エイペックス62よりも柔らかい。具体的には、第一エイペックス62の硬さH1は83以上98以下である。第二エイペックス64の硬さH2は45以上65以下である。
【0095】
図4において、符号PTで示される位置は第二エイペックス64との境界をなす第一エイペックス62の頂面上の位置である。このタイヤ2では、この位置PTが第一エイペックス62の頂である。頂PTは、第一エイペックス62の径方向外端でもある。このタイヤ2の頂PTは、径方向において、スチールフィラー20の内端20ueと外端20seとの間に位置する。
【0096】
図4において、両矢印Aで示される長さは、第一エイペックス62の高さである。第一エイペックス62の高さAは、ビードベースラインから第一エイペックス62の頂PTまでの径方向距離である。
【0097】
図4に示されるように、第一エイペックス62の頂PTは径方向において折り返し部36bの端36fよりも内側に位置する。この第一エイペックス62の頂PTの位置が、径方向において、折り返し部36bの端36fの位置と一致していてもよい。このタイヤ2では、径方向において、第一エイペックス62の頂PTの位置は折り返し部36bの端36fの位置と一致する、又は、第一エイペックス62の頂PTは折り返し部36bの端36fよりも内側に位置する。言い換えれば、第一エイペックス62の高さAの、折り返し部36bの高さFに対する比(A/F)は1.00以下である。
【0098】
このタイヤ2では、折り返し部36bの端36fから最大幅位置PWまでのゾーンに硬質な第一エイペックス62は含まれない。高偏平タイヤのサイド部に比べて短いサイド部を有するこのタイヤ2において、このゾーンはサイド部に生じる歪の低減に効果的に貢献する。このタイヤ2のサイド部では、このゾーンに硬質な第一エイペックス62を有するタイヤのサイド部に比べて、歪に起因する損傷の発生リスクが低減される。
【0099】
このタイヤ2では、バンド40が設けられているにも関わらず、必要な耐久性が確保される。前述したように、バンド40はこのタイヤ2の耐偏摩耗性の向上に貢献する。このタイヤ2では、耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とが達成される。
【0100】
前述したように、第一エイペックス62の高さAの、折り返し部の高さFに対する比(A/F)は1.00以下である。サイド部における歪に起因する損傷の発生リスクの低減の観点から、この比(A/F)は0.90以下が好ましく、0.80以下がより好ましく、0.70以下がさらに好ましい。
【0101】
このタイヤ2では、比(A/F)は0.45以上が好ましい。これにより、ビード部の剛性が確保される。この観点から、この比(A/F)は0.55以上がより好ましく、0.60以上がさらに好ましい。
【0102】
図4において、符号PUで示される位置は第二エイペックス64との境界をなす第一エイペックス62の頂面の内端である。符号PSで示される位置は、この第一エイペックス62の頂面の外端である。
【0103】
従来タイヤでは、硬質な第一エイペックスと軟質な第二エイペックスとの境界は、第一エイペックスの径方向外端である頂と第二エイペックスの径方向内端である底とを架け渡すように構成される。第一エイペックスの頂は、径方向において、第二エイペックスの底よりも外側に位置するので、第一エイペックスは略三角形の断面形状を有する。
【0104】
これに対して、このタイヤ2では、
図4に示されるように、第一エイペックス62の頂PTは、径方向において、頂面の内端PU及び外端PSの外側に位置する。第一エイペックス62の頂面は全体として、径方向外向きに湾曲した輪郭を有する。この第一エイペックス62は丸い断面形状を有する。このタイヤ2の第一エイペックス62は、略三角形の断面形状を有する従来の第一エイペックスに比べて、ほぼ一様な厚さでコア32の径方向外側部分を覆う。このタイヤ2のプライ本体36aと第一エイペックス62との接触長さは、従来の第一エイペックスとの接触長さに比べて短い。
【0105】
このタイヤ2では、第一エイペックス62は、その高さAが折り返し部36bの高さFよりも低いにも関わらず、コア32の動きを効果的に抑制する。このタイヤ2では、コア32が動くことにより生じる損傷の発生が防止される。リムRに対するビード部の動きも抑制されるので、ビード部の変形が抑制される。このタイヤ2では、ビード部に生じる歪が低減される。ビード部に生じる歪の低減は、サイド部に生じる歪の低減に貢献する。このタイヤ2では、サイド部における、歪に起因する損傷の発生リスクが低減される。この観点から、第二エイペックス64との境界をなす第一エイペックス62の頂面は径方向外向きに湾曲した輪郭を有するのが好ましい。
【0106】
このタイヤ2では、第一エイペックス62の硬さH1の、第二エイペックス64の硬さH2に対する比(H1/H2)は1.4以上2.0以下であるのが好ましい。
【0107】
比(H1/H2)が1.4以上に設定されることにより、第一エイペックス62がコア32の動きを効果的に抑制する。この観点から、この比(H1/H2)は1.5以上がより好ましい。比(H1/H2)が2.0以下に設定されることにより、第一エイペックス62と第二エイペックス64との剛性差が適切に維持される。第一エイペックス62と第二エイペックス64との境界における損傷の発生が防止される。この観点から。この比(H1/H2)は1.9以下がより好ましい。
【0108】
このタイヤ2では、トレッド4の幅WTの、断面幅WAに対する比(WT/WA)は0.60以上0.90以下が好ましい。この比(WT/WA)が0.60以上に設定されることにより、タイヤ2の内部容積が適切に維持される。タイヤ2の径成長をバンド40が効果的に抑制する。タイヤ2の接地形状が変化しにくいので、このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が得られる。この観点から、この比(WT/WA)は、0.75以上がより好ましい。この比(WT/WA)が0.90以下に設定されることにより、バンド40の拘束力が適切に維持される。サイド部に歪が集中することにより生じる損傷の発生が防止されるので、このタイヤ2は良好な耐久性を有する。この観点から、この比(WT/WA)は0.85以下がより好ましい。
【0109】
図1において、符号WBで示される長さはバンド40の幅である。このバンド40の幅WBは、一方のバンド40の端40eから他方のバンド40の端40eまでの軸方向距離である。
【0110】
このタイヤ2では、バンド40の幅WBの、トレッド4の幅WTに対する比(WB/WT)は0.60以上0.90以下が好ましい。この比(WB/WT)が0.60以上に設定されることにより、タイヤ2の径成長をバンド40が効果的に抑制する。タイヤ2の接地形状が変化しにくいので、このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が得られる。この観点から、この比(WB/WT)は、0.75以上がより好ましい。この比(WB/WT)が0.90以下に設定されることにより、バンド40の拘束力が適切に維持される。バンド40の拘束を起因とする歪の増大が防止されるので、サイド部における損傷の発生リスクが低減される。このタイヤ2は良好な耐久性を有する。この観点から、この比(WB/WT)は0.85以下がより好ましい。
【0111】
前述したように、フルバンド44は赤道面を挟んで相対する両端44eを有する。フルバンド44は、赤道面からそれぞれの端44eに向かって軸方向に延びる。そして、フルバンド44の端44eは、軸方向において、ショルダー周方向溝30sの外側に位置する。径方向において、ショルダー周方向溝30sの内側にフルバンド44が位置する。
【0112】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝30s付近の変形を、フルバンド44が効果的に抑制する。タイヤ2の形状変化が抑制されるので、接地形状が変化しにくい。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、フルバンド44の端44eは、軸方向において、ショルダー周方向溝30sの外側に位置するのが好ましい。
【0113】
図3において、符号SFで示される長さはショルダー周方向溝30s、言い換えれば、ショルダー陸部60sの内端からフルバンド44の端44eまでの軸方向距離である。
【0114】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝30sからフルバンド44の端44eまでの軸方向距離SFの、ショルダー陸部60sの軸方向幅WSに対する比率(SF/WS)は50%以下が好ましい。これにより、走行状態においてアクティブに動くトレッド4の端に対してフルバンド44の端44eが適切な距離をあけて配置される。バンドコード52における張力変動が抑えられるので、このタイヤ2では、バンドコード52の破断の発生が抑えられる。このタイヤ2のフルバンド44は形状変化の抑制に貢献する。この観点から、この比率(SF/WS)は35%以下がより好ましく、25%以下がさらに好ましい。
【0115】
比率(SF/WS)が10%以上に設定されることにより、フルバンド44の端44eがショルダー周方向溝30s、具体的には、ショルダー周方向溝30sの底から適切な距離をあけて配置される。このタイヤ2では、ショルダー周方向溝30sの底を起点とする損傷の発生が抑えられる。フルバンド44の幅が確保されるので、このフルバンド44がタイヤ2の形状変化の抑制に貢献する。この観点から、この比率(SF/WS)は15%以上がより好ましい。
【0116】
図3において、符号Weで示される長さはフルバンド44の端44eからエッジバンド46の内端46ueまでの軸方向距離である。
【0117】
このタイヤ2では、フルバンド44の端44eからエッジバンド46の内端46ueまでの軸方向距離Weは10mm以上が好ましい。これにより、エッジバンド46がフルバンド44の端44eを効果的に拘束する。フルバンド44に含まれるバンドコード52の張力変動が抑えられるので、この張力変動によるバンドコード52の破断の発生が抑えられる。このタイヤ2のフルバンド44は、形状変化の抑制機能をより安定に発揮できる。この観点から、この軸方向距離Weは20mm以上が好ましい。
【0118】
このタイヤ2では、エッジバンド46の内端46ue位置は、ショルダー周方向溝30sの底を起点とする損傷の発生への関与が考慮され、適宜決められる。このため、この軸方向距離Weの好ましい上限は設定されない。ショルダー周方向溝30sの底を起点とする損傷の発生が効果的に抑えられる観点から、エッジバンド46の内端46ueは、軸方向において、ショルダー周方向溝30sの底よりも外側又は内側に位置するのが好ましい。軸方向において、エッジバンド46の内端46ueがショルダー周方向溝30sの底よりも外側に位置する場合には、ショルダー周方向溝30sよりもさらに外側に位置するのが好ましい。軸方向において、エッジバンド46の内端46ueがショルダー周方向溝30sの底よりも内側に位置する場合には、ショルダー周方向溝30sよりもさらに内側に位置するのが好ましい。
【0119】
このタイヤ2では、軸方向において、フルバンド44の端44eはベルト38の端38eの内側に位置する。ベルト38はフルバンド44よりも広い。このベルト38は、フルバンド44の端44eを拘束する。このベルト38は、フルバンド44に含まれるバンドコード52の張力変動の抑制に貢献する。張力変動によるバンドコード52の破断の発生が抑えられるので、フルバンド44は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、軸方向において、フルバンド44の端44eはベルト38の端38eの内側に位置するのが好ましい。
【0120】
タイヤ2のフルバンド44には、径方向において内側から外側に向かって広がるように力が作用する。この力によって、フルバンド44のバンドコード52には張力が発生する。このタイヤ2では、フルバンド44の径方向内側に、第二ベルトプライ42Bが位置する。
【0121】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ42Bがフルバンド44に作用する力を抑制するので、このフルバンド44に含まれるバンドコード52の張力が適切に維持される。この第二ベルトプライ42Bは、バンドコード52の張力変動の抑制に貢献する。第二ベルトプライ42Bはフルバンド44よりも広いので、バンドコード52の張力変動が効果的に抑制される。このタイヤ2では、フルバンド44のバンドコード52に破断は生じにくい。フルバンド44は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、ベルト38を構成する複数のベルトプライ42のうち、少なくとも一枚のベルトプライ42が径方向においてフルバンド44の内側に位置するのが好ましい。このフルバンド44の内側に位置する少なくとも一枚のベルトプライ42は、フルバンド44の幅よりも広い幅を有するのがより好ましい。
【0122】
このタイヤ2では、径方向においてフルバンド44の内側に第一ベルトプライ42A及び第二ベルトプライ42Bが位置する。この第一ベルトプライ42A及び第二ベルトプライ42Bは、バンドコード52の張力変動の抑制に貢献する。第一ベルトプライ42A及び第二ベルトプライ42Bはフルバンド44よりも広いので、バンドコード52の張力変動がより効果的に抑制される。このタイヤ2では、フルバンド44のバンドコード52に破断は生じにくい。フルバンド44は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、ベルト38を構成する複数のベルトプライ42のうち、少なくとも二枚のベルトプライ42が径方向においてフルバンド44の内側に位置するのがより好ましい。このフルバンド44の内側に位置する少なくとも二枚のベルトプライ42は、フルバンド44の幅よりも広い幅を有するのがさらに好ましい。
【0123】
このタイヤ2では、径方向においてフルバンド44の内側に第二ベルトプライ42Bが位置し、このフルバンド44の外側に第三ベルトプライ42Cが位置する。このタイヤ2では、フルバンド44は第二ベルトプライ42Bと第三ベルトプライ42Cとの間に挟まれる。前述したように、第二ベルトプライ42Bはフルバンド44よりも広い。第三ベルトプライ42Cも、フルバンド44よりも広い。このタイヤ2のベルト38を構成する複数のベルトプライ42は、フルバンド44の幅よりも広い幅を有する2枚のベルトプライ42を含み、この広い幅を有する2枚のベルトプライ42でフルバンド44は挟まれる。このタイヤ2では、フルバンド44に含まれるバンドコード52の張力変動がより効果的に抑制されるので、このフルバンド44のバンドコード52に破断は生じにくい。このタイヤ2のフルバンド44は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、このタイヤ2では、ベルト38を構成する複数のベルトプライ42は、フルバンド44の幅よりも広い幅を有する2枚のベルトプライ42を含み、この広い幅を有する2枚のベルトプライ42でフルバンド44が挟まれるのが好ましい。
【0124】
このタイヤ2では、第一ベルトプライ42A、第二ベルトプライ42B及び第三ベルトプライ42Cはフルバンド44の幅よりも広い幅を有する。径方向において、第一ベルトプライ42A及び第二ベルトプライ42Bはフルバンド44の内側に位置し、第三ベルトプライ42Cはフルバンド44の外側に位置する。一対のエッジバンド46はそれぞれ、径方向において第三ベルトプライ42Cの外側に位置する。前述したように、エッジバンド46は、径方向において、フルバンド44の端44eの外側に位置する。エッジバンド46は、径方向において、第三ベルトプライ42Cを介して、フルバンド44の端44eと重複する。
【0125】
このタイヤ2では、フルバンド44が形状変化の抑制機能を安定に発揮でき、耐偏摩耗性の向上が達成される。この観点から、このタイヤ2では、ベルト38を構成する複数のベルトプライ42が、径方向において、内側に位置する第一ベルトプライ42Aと、この第一ベルトプライ42Aの外側に位置する第二ベルトプライ42Bと、この第二ベルトプライ42Bの外側に位置する第三ベルトプライ42Cとを備え、第一ベルトプライ42A、第二ベルトプライ42B及び第三ベルトプライ42Cがフルバンド44の幅よりも広い幅を有し、径方向において、第一ベルトプライ42A及び第二ベルトプライ42Bがフルバンド44の内側に位置し、第三ベルトプライ42Cがフルバンド44の外側に位置し、径方向において、フルバンド44の外側に位置するエッジバンド46が、第三ベルトプライ42Cを介してフルバンド44の端44eと重複するのが好ましい。
【0126】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とを達成できる、重荷重用タイヤが得られる。本発明は、65%以下の偏平比の呼びを有する、低偏平な重荷重用タイヤにおいて、顕著な効果を奏する。
【実施例】
【0127】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0128】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=355/50R22.5)を得た。
【0129】
実施例1の補強層は、
図3に示された構成を有する。フルバンドの端が軸方向においてショルダー周方向溝の外側に位置することが、下記の表1の「フルバンド端」の欄に「OUT」で表されている。バンドがエッジバンドを有することが、表1の「エッジバンド」の欄に「Y」で表されている。ビードには、
図4に示された構成を有するビードが採用された。このビードの第一エイペックスは丸い断面形状を有する。第一エイペックスの高さAの、折り返し部の高さFに対する比(A/F)は0.70であった。第一エイペックスの硬さH1の、第二エイペックスの硬さH2に対する比(H1/H2)は1.6であった。第二エイペックスの硬さH2は59であった。
この実施例1では、トレッドの幅WTの断面幅WAに対する比(WT/WA)は0.85であった。バンドの幅
WBのトレッドの幅WTに対する比(WB/WT)は0.80であった。フルバンドの端からエッジバンドの内端までの軸方向距離Weは25mmであった。ショルダー周方向溝からフルバンドの端までの軸方向距離SFの、ショルダー陸部の軸方向幅WSに対する比率(SF/WS)は15%であった。
【0130】
[比較例1]
図5に示された構成を有するビードBを採用し、エッジバンドを設けず、フルバンドの端を軸方向においてショルダー周方向溝の内側に配置した他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。フルバンドの端が軸方向においてショルダー周方向溝の内側に位置することが、下記の表1の「フルバンド端」の欄に「IN」で表されている。バンドにエッジバンドが設けられなかったことが、表1の「エッジバンド」の欄に「N」で表されている。
この比較例1のビードBは、コアCとエイペックスPとを備える。エイペックスPは第一エイペックスHと第二エイペックスSとを備える。第一エイペックスHと第二エイペックスSとの境界は、第一エイペックスHの頂PTと第二エイペックスの底PBとを架け渡す。第一エイペックスHは略三角形の断面形状を有する。第一エイペックスHの高さAの、折り返し部の高さFに対する比(A/F)は1.20であった。第一エイペックスの硬さの、第二エイペックスの硬さに対する比は1.6であり、第二エイペックスの硬さは59であった。
この比較例1では、トレッドの幅WTの断面幅WAに対する比(WT/WA)は0.85であった。バンドの幅
WBのトレッドの幅WTに対する比(WB/WT)は0.46であった。バンドの幅
WBはフルバンドの幅で表された。
【0131】
[比較例2]
フルバンドの端を軸方向においてショルダー周方向溝の外側に配置させた他は比較例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。この比較例2では、比(WB/WT)は0.74であった。
【0132】
[比較例3]
エッジバンドを設けて実施例1の補強層の構成と同じように補強層を構成した他は比較例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。
【0133】
[実施例2及び比較例4]
第一エイペックスの高さAを変えて比(A/F)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2及び比較例4のタイヤを得た。
【0134】
[プロファイル変化]
タイヤをリム(11.75×22.5)に組み込み空気を充填し、タイヤの内圧を正規内圧に調整した。このタイヤをドラム試験機において80km/hの速度で1000km走行させ、ショルダー周方向溝の内側におけるケースラインのプロファイルを得た。このケースラインのプロファイルを走行前のケースラインのプロファイルと対比させて、走行前後のプロファイルの変化を確認した。その結果が、下記の格付けにしたがった指数で下記の表1に表されている。数値が大きいほど、プロファイルの変化が抑えられていることを表す。この走行試験では、正規荷重がタイヤに付与された。
変化量 指数
0.0mm~0.5mm 100
0.6mm~1.0mm 95
1.1mm~1.5mm 90
1.6mm~2.0mm 85
2.1mm~2.5mm 80
【0135】
[サイド部表面歪]
タイヤの膨張時にサイド部の表面に生じる歪を計測した。タイヤをリム(11.75×22.5)に組み込み、空気を充填し、タイヤの内圧を正規内圧の5%に調整した。これにより、タイヤの状態が基準状態に調整された。基準状態のタイヤに空気をさらに充填し、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、タイヤを膨張させた。これにより、タイヤの状態が正規状態に調整された。基準状態から正規状態にタイヤの状態を調整する過程においてサイド部表面に発生する径方向の歪のピーク値を計測した。その結果が、実施例1を100にした指数で下記の表1に表されている。数値が大きいほど、サイド部表面に生じる歪が小さいことを表す。
【0136】
【0137】
表1に示されるように、実施例では、プロファイル変化が抑えられ、サイド部に生じる歪が低減されており、耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とが達成されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0138】
以上説明された、耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とを達成するための技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0139】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・チェーファー
10・・・ビード
12・・・カーカス
26・・・補強層
28・・・トレッド面
30、30s、30m・・・周方向溝
38・・・ベルト
40・・・バンド
42、42A、42B、42C、42D・・・ベルトプライ
44・・・フルバンド
46・・・エッジバンド
48、48A、48B、48C、48D・・・ベルトコード
52・・・バンドコード
60、60s、60m、60c・・・陸部
62・・・第一エイペックス
64・・・第二エイペックス
【要約】
【課題】耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とを達成できる、重荷重用タイヤ2の提供。
【解決手段】このタイヤ2は、65%以下の偏平比の呼びを有する。このタイヤ2は、トレッド4、一対のビード10、カーカス12及びバンド40を備える。ビード10は、コア32、第一エイペックス62及び第二エイペックス64を備える。カーカス12はカーカスプライ36を備え、カーカスプライ36は、プライ本体36aと、一対の折り返し部36bとを備える。バンド40は、フルバンド44と、径方向においてフルバンド44の端44eの外側に位置する一対のエッジバンド46とを備える。第一エイペックス62は第二エイペックス64よりも硬質である。径方向において、第一エイペックス62の頂PTの位置は折り返し部36bの端36fの位置と一致する、又は、第一エイペックス62の頂PTは折り返し部36bの端36fよりも内側に位置する。
【選択図】
図1