(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】粒子分散体、ゴム組成物、及び、空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20220830BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20220830BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20220830BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20220830BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20220830BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220830BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220830BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L75/04
C08G18/00 B
C08G18/10
C08L101/02
C08K3/04
C08K3/013
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2021521539
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2020039167
(87)【国際公開番号】W WO2021075571
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019189476
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】影山 裕一
(72)【発明者】
【氏名】木村 和資
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/034033(WO,A1)
【文献】特開平05-178946(JP,A)
【文献】特開2015-221855(JP,A)
【文献】特開2012-211316(JP,A)
【文献】特表2004-511580(JP,A)
【文献】特開平10-330720(JP,A)
【文献】特開2020-132731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 18/00-18/87
C08F 6/00-246/00、301/00
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aに、重合体で形成された粒子が分散した、粒子分散体であり、
前記粒子を形成する前記重合体が、ジエン系重合体以外の重合体Cであり、
前記重合体Cがポリウレタン系重合体であり、且つ、
前記粒子は、炭素数3~30の炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dにより表面修飾され、
前記炭素数3~30の炭化水素基又は前記ジエン系重合体Dは、それぞれ独立に、ウレア結合、ウレタン結合又はアミド結合を介して、前記粒子を形成する前記重合体Cに結合する、粒子分散体。
【請求項2】
前記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aが、未変性の、イソプレン単独重合体、ブタジエン単独重合体、アクリロニトリル-ブタジエン重合体、スチレン-ブタジエン重合体、スチレン-イソプレン重合体、及びスチレン-イソプレン-ブタジエン重合体からなる群より選択される少なくとも1種の未変性ジエン系重合体を含有し、
前記未変性ジエン系重合体の含有量が、前記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体A全量に対して、50質量%以上である、請求項1に記載の粒子分散体。
【請求項3】
前記表面修飾された前記粒子の平均粒子径が、0.01~200μmである、請求項1又は2に記載の粒子分散体。
【請求項4】
前記表面修飾された前記粒子の含有量が、前記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体A100質量部に対して、1~300質量部である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粒子分散体。
【請求項5】
前記炭化水素基が、炭素原子及び水素原子のみから形成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の粒子分散体。
【請求項6】
前記炭化水素基が、1価の炭化水素基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粒子分散体。
【請求項7】
前記炭化水素基が、不飽和結合を有してもよい脂肪族炭化水素基である、請求項1~6のいずれか1項に記載の粒子分散体。
【請求項8】
前記炭化水素基が、アルキル基又はアルケニル基である、請求項1~7のいずれか1項に記載の粒子分散体。
【請求項9】
前記炭化水素基が、前記ウレア結合又は前記ウレタン結合を介して、前記粒子を形成する前記重合体Cに結合する、請求項1~8のいずれか1項に記載の粒子分散体。
【請求項10】
前記ジエン系重合体Dが、前記アミド結合を介して、前記粒子を形成する前記重合体Cに結合する、請求項1~9のいずれか1項に記載の粒子分散体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の粒子分散体を製造する、粒子分散体の製造方法であって、
ジエン系重合体以外の重合体Eであってイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基を有
し、ポリウレタン系重合体である重合体Eを、界面活性剤の存在下で、数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aに分散させて、前記重合体Eのミセルを含有するミセル分散体を得る、ミセル形成工程と、
前記ミセル分散体において前記重合体Eがイソシアネート基を有する場合、前記ミセル分散体に、炭素数3~30の炭化水素基とヒドロキシ基、アミノ基若しくはイミノ基とを有する化合物F、及び/若しくは、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはイミノ基を有するジエン系重合体Gを加えて、前記ミセルが有するイソシアネート基と、前記化合物F及び/若しくは前記ジエン系重合体Gとを反応させて、前記ミセルの表面をウレタン結合又はウレア結合を介して前記炭化水素基及び/若しくは前記ジエン系重合体Dで修飾する、又は、
前記ミセル分散体において前記重合体Eがアミノ基又はイミノ基を有する場合、前記ミセル分散体に、炭素数3~30の炭化水素基とカルボキシ基若しくは酸無水物基とを有する化合物H、及び/若しくは、カルボキシ基若しくは酸無水物基を有するジエン系重合体Iを加えて、前記ミセルが有するアミノ基又はイミノ基と、前記化合物H及び/若しくは前記ジエン系重合体Iとを反応させて、前記ミセルの表面をアミド結合を介して前記炭化水素基及び/若しくは前記ジエン系重合体Dで修飾する、表面修飾工程とを備える、粒子分散体の製造方法。
【請求項12】
ジエン系ゴムXと、請求項1~10のいずれか1項に記載の粒子分散体とを含有する、ゴム組成物。
【請求項13】
前記粒子分散体の含有量が、前記ジエン系ゴムX100質量部に対して、1~150質量部である、請求項12に記載のゴム組成物。
【請求項14】
さらに、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種の充填剤を含有し、前記充填剤の含有量が、前記ジエン系ゴムX100質量部に対して、1~200質量部である、請求項12又は13に記載のゴム組成物。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて製造された、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子分散体、ゴム組成物、及び、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、氷上性能や耐摩耗性の向上を目的として微粒子を含有するタイヤ用ゴム組成物が提案されている(例えば特許文献1)。
特許文献1には、ジエン系ゴム(A)100質量部と、
カーボンブラックおよび/または白色充填剤(B)30~100質量部と、
前記ジエン系ゴム(A)と相溶し、前記ジエン系ゴム(A)と異なる架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)0.3~30質量部と、
平均粒子径が1~200μmの三次元架橋した微粒子(D)0.3~12質量部と、を含有し、
前記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)が、液状ジエン系ポリマーである、タイヤ用ゴム組成物(請求項1)や、
前記微粒子(D)が、予め前記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)中において、前記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と相溶しないオリゴマーまたはポリマー(d1)を三次元架橋させた微粒子であること(請求項2)等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にして粒子を調製しこれを含有するゴム組成物を評価したところ、上記ゴム組成物を例えばタイヤにしたときの低燃費性能及び引張物性をさらに向上させることが望ましいことが明らかになった。また、ゴム組成物の加工性についてもさらに向上させることが望ましいことが明らかになった。その上で、氷上性能を向上させることが好ましいことが明らかとなった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、ゴム組成物に用いたときに優れた加工性、低燃費性能、引張物性及び氷上性能を示す粒子分散体、その製造方法、上記粒子分散体を含有するゴム組成物、並びに、上記ゴム組成物を用いて製造された空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、粒子分散体において、炭素数3~30の炭化水素基により表面修飾され、ジエン系重合体以外の重合体で形成された粒子が、数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体に分散し、上記炭化水素基がウレア結合又はウレタン結合を介して上記ジエン系重合体以外の重合体に結合することによって、ゴム組成物に用いたときに優れた加工性等の効果が得られることを見出した。
また、上記粒子分散体を製造する、粒子分散体の製造方法であって、
ジエン系重合体以外の重合体であってイソシアネート基を有する重合体を、界面活性剤の存在下で、数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体に分散させて、上記重合体のミセルを含有するミセル分散体を得る、ミセル形成工程と、
上記ミセル分散体に炭素数3~30の炭化水素基とヒドロキシ基、アミノ基又はイミノ基とを有する化合物を加えて、上記ミセルが有するイソシアネート基と、上記化合物とを反応させて、上記ミセルの表面を上記炭化水素基で修飾する、表面修飾工程とを備える、粒子分散体の製造方法等を見出した。
【0007】
さらに、本発明者らは、数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aに、重合体で形成された粒子が分散した、粒子分散体であり、
上記粒子を形成する上記重合体が、ジエン系重合体以外の重合体Cであり、且つ、
上記粒子は、炭素数3~30の炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dにより表面修飾され、
上記炭素数3~30の炭化水素基又は上記ジエン系重合体Dは、それぞれ独立に、ウレア結合、ウレタン結合又はアミド結合を介して、上記粒子を形成する上記重合体Cに結合する、粒子分散体によれば、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0008】
[1] 数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aに、重合体で形成された粒子が分散した、粒子分散体であり、
上記粒子を形成する上記重合体が、ジエン系重合体以外の重合体Cであり、且つ、
上記粒子は、炭素数3~30の炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dにより表面修飾され、
上記炭素数3~30の炭化水素基又は上記ジエン系重合体Dは、それぞれ独立に、ウレア結合、ウレタン結合又はアミド結合を介して、上記粒子を形成する上記重合体Cに結合する、粒子分散体。
[2] 上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aが、未変性の、イソプレン単独重合体、ブタジエン単独重合体、アクリロニトリル-ブタジエン重合体、スチレン-ブタジエン重合体、スチレン-イソプレン重合体、及びスチレン-イソプレン-ブタジエン重合体からなる群より選択される少なくとも1種の未変性ジエン系重合体を含有し、
上記未変性ジエン系重合体の含有量が、上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体A全量に対して、50質量%以上である、[1]に記載の粒子分散体。
[3] 上記表面修飾された上記粒子の平均粒子径が、0.01~200μmである、[1]又は[2]に記載の粒子分散体。
[4] 上記表面修飾された上記粒子の含有量が、上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体A100質量部に対して、1~300質量部である、[1]~[3]のいずれかに記載の粒子分散体。
[5] 上記炭化水素基が、炭素原子及び水素原子のみから形成される、[1]~[4]のいずれかに記載の粒子分散体。
[6] 上記炭化水素基が、1価の炭化水素基である、[1]~[5]のいずれかに記載の粒子分散体。
[7] 上記炭化水素基が、不飽和結合を有してもよい脂肪族炭化水素基である、[1]~[6]のいずれかに記載の粒子分散体。
[8] 上記炭化水素基が、アルキル基又はアルケニル基である、[1]~[7]のいずれかに記載の粒子分散体。
[9] 上記炭化水素基が、上記ウレア結合又は上記ウレタン結合を介して、上記粒子を形成する上記重合体Cに結合する、[1]~[8]のいずれかに記載の粒子分散体。
[10] 上記ジエン系重合体Dが、上記アミド結合を介して、上記粒子を形成する上記重合体Cに結合する、[1]~[9]のいずれかに記載の粒子分散体。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の粒子分散体を製造する、粒子分散体の製造方法であって、
ジエン系重合体以外の重合体Eであってイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基を有する重合体Eを、界面活性剤の存在下で、数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aに分散させて、上記重合体Eのミセルを含有するミセル分散体を得る、ミセル形成工程と、
上記ミセル分散体において上記重合体Eがイソシアネート基を有する場合、上記ミセル分散体に、炭素数3~30の炭化水素基とヒドロキシ基、アミノ基若しくはイミノ基とを有する化合物F、及び/若しくは、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはイミノ基を有するジエン系重合体Gを加えて、上記ミセルが有するイソシアネート基と、上記化合物F及び/若しくは上記ジエン系重合体Gとを反応させて、上記ミセルの表面をウレタン結合又はウレア結合を介して上記炭化水素基及び/若しくは上記ジエン系重合体Dで修飾する、又は、
上記ミセル分散体において上記重合体Eがアミノ基又はイミノ基を有する場合、上記ミセル分散体に、炭素数3~30の炭化水素基とカルボキシ基若しくは酸無水物基とを有する化合物H、及び/若しくは、カルボキシ基若しくは酸無水物基を有するジエン系重合体Iを加えて、上記ミセルが有するアミノ基又はイミノ基と、上記化合物H及び/若しくは上記ジエン系重合体Iとを反応させて、上記ミセルの表面をアミド結合を介して上記炭化水素基及び/若しくは上記ジエン系重合体Dで修飾する、表面修飾工程とを備える、粒子分散体の製造方法。
[12] ジエン系ゴムXと、[1]~[10]のいずれかに記載の粒子分散体とを含有する、ゴム組成物。
[13] 上記粒子分散体の含有量が、上記ジエン系ゴムX100質量部に対して、1~150質量部である、[12]に記載のゴム組成物。
[14] さらに、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種の充填剤を含有し、上記充填剤の含有量が、上記ジエン系ゴムX100質量部に対して、1~200質量部である、[12]又は[13]に記載のゴム組成物。
[15] [12]~[14]のいずれかに記載のゴム組成物を用いて製造された、空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0009】
以下に示すように、本発明によれば、ゴム組成物に用いたときに優れた加工性、低燃費性能、引張特性及び氷上性能を示す粒子分散体、その製造方法、上記粒子分散体を含有するゴム組成物、並びに、上記ゴム組成物を用いて製造された空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例の部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の粒子分散体、その製造方法、上記粒子分散体を含有するゴム組成物及び上記ゴム組成物を用いて製造された空気入りタイヤについて説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
本発明において、加工性、低燃費性能、引張物性及び氷上性能のうち少なくとも1つがより優れることを「本発明の効果がより優れる」とも言う。
【0012】
[粒子分散体]
本発明の粒子分散体は、
数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aに、重合体で形成された粒子が分散した、粒子分散体であり、
上記粒子を形成する上記重合体が、ジエン系重合体以外の重合体Cであり、且つ、
上記粒子は、炭素数3~30の炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dにより表面修飾され、
上記炭素数3~30の炭化水素基又は上記ジエン系重合体Dは、それぞれ独立に、ウレア結合、ウレタン結合又はアミド結合を介して、上記粒子を形成する上記重合体Cに結合する、粒子分散体である。
【0013】
本発明の粒子分散体はこのような構成をとるため、上述した効果が得られるものと考えらえる。その理由は明らかではないが、粒子の表面が炭素数3~30の炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dにより修飾されていることによって、上記粒子が、本発明の粒子分散体に含有される数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体A及び/又は本発明のゴム組成物に含有されるジエン系ゴムXに分散しやすく、このため、本発明の粒子分散体をゴム組成物に用いたときに、加工性、低燃費性能、引張特性及び氷上性能が向上するものと推測される。
【0014】
<数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体A>
本発明の粒子分散体は、数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aを含む。
なお、本明細書において、上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体を「ジエン系重合体A」と称する場合がある。
本発明の粒子分散体に含まれる、数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aは、23℃の条件下で、液状であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記ジエン系重合体Aの粘度は、38℃の条件下で、例えば、1,000Pa・s以下とすることができる。なお、上記ジエン系重合体Aの粘度については、ジエン系重合体Aとして使用されたジエン系重合体が市販品である場合、そのカタログ公証値を参照できる。
本発明の粒子分散体において、上記ジエン系重合体Aは、後述する粒子を上記ジエン系重合体中Aに分散させることができる。本発明の粒子分散体において、上記ジエン系重合体Aは分散媒として機能することができる。
【0015】
(ジエン系重合体Aの種類)
本発明の粒子分散体に含まれる上記ジエン系重合体Aはその数平均分子量が1,000~100,000であれば特に制限されない。
上記ジエン系重合体Aを構成し得るジエン系モノマーは、共役ジエン系モノマーを含むモノマーであればよい。
上記ジエン系重合体Aの具体例としては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリルニトリルブタジエン共重合体、スチレンブタジエン共重合体、スチレンイソプレン共重合体、スチレンイソプレンブタジエンゴム共重合体等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ポリブタジエン、ポリイソプレン、又はスチレンブタジエン共重合体が好ましく、ポリイソプレン又はスチレンブタジエン共重合体がより好ましく、スチレンブタジエン共重合体が更に好ましい。
【0016】
<ジエン系重合体Aの数平均分子量>
本発明の粒子分散体において、上記ジエン系重合体Aの数平均分子量は1,000~100,000である。
上記ジエン系重合体Aの数平均分子量(Mn)は、本発明の効果がより優れる理由から、5,000~50,000であることが好ましい。
なお、上記Mnは、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0017】
(変性の有無)
上記ジエン系重合体Aは、数平均分子量が1,000~100,000のジエン系重合体であれば、未変性であっても、変性されていてもよい。上記ジエン系重合体Aが変性されている場合、変性による基(変性基)は特に制限されない。
上記ジエン系重合体Aは、本発明の効果がより優れる理由から、未変性であることが好ましい。
【0018】
上記ジエン系重合体A(の種類)は、本発明の効果がより優れる理由から、未変性の、イソプレン単独重合体、ブタジエン単独重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、及びスチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の未変性ジエン系重合体を含有することが好ましく、未変性の、イソプレン単独重合体、ブタジエン単独重合体、又はスチレンブタジエン共重合体がより好ましく、未変性の、イソプレン単独重合体又はスチレンブタジエン共重合体が更に好ましく、未変性のスチレンブタジエン共重合体がより更に好ましい。
【0019】
上記ジエン系重合体Aが上記未変性ジエン系重合体を含有する場合、上記未変性ジエン系重合体の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上記ジエン系重合体A全量に対して、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。
【0020】
<粒子>
本発明の粒子分散体において、上記ジエン系重合体Aに、重合体で形成された粒子が分散し、
上記粒子を形成する上記重合体が、ジエン系重合体以外の重合体Cであり、且つ、
上記粒子は、炭素数3~30の炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dにより表面修飾され、
上記炭素数3~30の炭化水素基又は上記ジエン系重合体Dは、それぞれ独立に、ウレア結合、ウレタン結合又はアミド結合を介して、上記粒子を形成する上記重合体Cに結合する。
つまり、本発明の粒子分散体は、上記ジエン系重合体Aに、上記のように表面修飾された上記粒子(以下これを「表面修飾された粒子」とも称する)が分散する。上記の表面修飾された上記粒子において、上記炭素数3~30の炭化水素基又は上記ジエン系重合体Dは、それぞれ独立に、ウレア結合、ウレタン結合又はアミド結合を介して、上記粒子を形成する上記重合体Cに結合する。
本発明の粒子分散体において、上記の表面修飾された粒子は、上記のように、炭素数3~30の炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dにより表面修飾されている。
また、上記の表面修飾された粒子が有する粒子は、ジエン系重合体以外の重合体Cで形成された粒子である。
上記の表面修飾された粒子において、上記炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dは、それぞれ独立に、ウレア結合、ウレタン結合又はアミド結合を介して、上記の表面修飾された粒子が有する粒子を形成する上記の「ジエン系重合体以外の重合体C」に結合する。
なお、上記の表面修飾された粒子が有する粒子を形成する「ジエン系重合体以外の重合体C」における「ジエン系重合体」を「ジエン系重合体B」と称する場合がある。
上記「ジエン系重合体B以外の重合体C」は、重合体全般から、ジエン系モノマーにより構成される繰り返し単位を有するジエン系重合体全般(ジエン系重合体B)が除かれた重合体を指す。上記ジエン系モノマーは共役ジエン系モノマーであれば特に制限されない。
【0021】
粒子は通常、粒状であることを指す。
上記の表面修飾された粒子において、上記の表面修飾された粒子が有する粒子を、「粒状部分」又は単に「粒子」と称する場合がある。
本発発明の粒子分散体において、上記の表面修飾された粒子は分散質として機能する。
【0022】
<ジエン系重合体以外の重合体C>
上記の表面修飾された粒子において、粒子(又は粒状部分)は、重合体で形成され、上記粒子を形成する上記重合体は、ジエン系重合体B以外の重合体Cで形成される。
上記粒子は、ジエン系重合体B以外の重合体Cで構成されていればよい。
上記ジエン系重合体B以外の重合体C(上記ジエン系重合体B以外の重合体の骨格)は特に制限されないが、例えば、ジエン系重合体以外の熱可塑性樹脂、ジエン系重合体以外の熱硬化性樹脂等が挙げられる。具体例としては、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、脂肪族系、飽和炭化水素系、アクリル系、植物由来系もしくはシロキサン系のオリゴマーまたはポリマー等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ポリウレタン系重合体、ポリカーボネート系重合体が好ましく、ポリウレタン系重合体がより好ましい。
【0023】
上記粒子(粒状部分)を形成しうる上記ポリウレタン系重合体は、ウレタン結合又はウレア結合を有する繰り返し単位で構成される重合体であればよい。
上記ポリウレタン系重合体は、本発明の効果がより優れる理由から、ポリカーボネート系のポリウレタン及び/又はヒマシ油系のポリウレタンが好ましく、ポリカーボネート系ポリオールに由来するポリウレタン及び/又はヒマシ油ポリオールに由来するポリウレタンがより好ましい。
また、上記ポリウレタン系重合体は、ウレタンポリマー(又はウレタンプレポリマー。以下同様)であってもよい。上記ウレタンポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート系のウレタンポリマー(具体的には例えばポリカーボネート系ポリオールを原料としたウレタンポリマー)、ヒマシ油系のウレタンポリマー(具体的には例えばヒマシ油ポリオールを原料としたウレタンポリマー)挙げられる。
ポリウレタン系重合体(又はウレタンポリマー)を構成し得る原料については後述する。
【0024】
<<炭素数3~30の炭化水素基及び/又はジエン系重合体D>>
本発明において、上記粒子は炭素数3~30の炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dにより表面修飾されている。
上記粒子は、本発明の効果(特に、破断時伸び及び/又は氷上性能)がより優れるという観点からは、ジエン系重合体Dにより表面修飾されていることが好ましい。
【0025】
上記粒子は、その表面に上記炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dを1つ又は複数有することができる(上記粒子の表面に上記炭化水素基及びジエン系重合体Dが存在する場合、上記炭化水素基及びジエン系重合体Dの合計は複数となる)。上記粒子は、その表面に上記炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dを複数有することが好ましい。
【0026】
<炭素数3~30の炭化水素基>
上記粒子を表面修飾しうる炭素数3~30の炭化水素基は、後述するとおり、ウレア結合、ウレタン結合又はアミド結合を介して、上記粒子を形成する上記重合体Cに結合する。
【0027】
<炭素数>
本発明において、上記炭化水素基の炭素数は3~30である。
上記炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、5~20個が好ましく、8~18個がより好ましい。
【0028】
<炭化水素基>
上記炭化水素基は、炭素数が3~30であれば特に制限されない。上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状又は環状の概念を含む。)、芳香族炭化水素基、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0029】
上記炭化水素基は、本発明の効果がより優れる理由から、炭素原子及び水素原子のみから形成されることが好ましい。
【0030】
上記炭化水素基は、本発明の効果がより優れる理由から、1価の炭化水素基であることが好ましい。
【0031】
上記炭化水素基は、飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基のいずれであってもよい。上記炭化水素基は、本発明の効果がより優れる理由から、不飽和結合を有してもよい脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
上記不飽和結合は特に制限されないが、例えば、二重結合が挙げられる。
【0032】
上記炭化水素基は、本発明の効果がより優れる理由から、アルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。
【0033】
上記炭化水素基としては、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、エイコシル基のような飽和脂肪族炭化水素基;
アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、オレイル基のような不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0034】
<ジエン系重合体D>
上記粒子を表面修飾しうるジエン系重合体Dは、ジエン系モノマーとして共役ジエン系モノマーを含むモノマーから形成されるポリマーであり、後述するとおり、ウレア結合、ウレタン結合又はアミド結合を介して、上記粒子を形成する上記重合体Cに結合する。このため、ジエン系重合体Dは上記ウレア結合等との結合点を有する。
なお、ジエン系重合体Dは、上記の炭素数3~30の炭化水素基を含まない。
【0035】
上記ジエン系重合体Dの具体例としては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリルニトリルブタジエン共重合体、スチレンブタジエン共重合体、スチレンイソプレン共重合体、スチレンイソプレンブタジエンゴム共重合体等が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ポリブタジエン、ポリイソプレン、又はスチレンブタジエン共重合体が好ましく、ポリイソプレンがより好ましい。
【0036】
(変性基の有無)
上記ジエン系重合体Dは、これと結合する、ウレア結合、ウレタン結合、アミド結合以外に、更に、変性基(ウレア結合、ウレタン結合及びアミド結合を除く)を有してもよい。
上記変性基としては、例えば、カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。なかでも、カルボキシ基、酸無水物基が好ましい。
上記変性基は、本発明の粒子分散体を製造する際、粒子(ミセル)にジエン系重合体Dを導入するために使用される、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはイミノ基を有するジエン系重合体G、又は、カルボキシ基若しくは酸無水物基を有するジエン系重合体Iに由来するものであってもよい。上記変性基は、カルボキシ基又は酸無水物基を有するジエン系重合体Iに由来する、カルボキシ基又は酸無水物基が好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0037】
<ウレア結合、ウレタン結合、アミド結合>
上記の表面修飾された粒子において、上記粒子(粒状部分)は上記炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dによってその表面が修飾されている。上記のとおり、粒子(粒状部分は上記ジエン系重合体B以外の重合体Cで構成されていればよい。
また、上記の表面修飾された粒子において、上記炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dは、それぞれ独立に、ウレア結合、ウレタン結合又はアミド結合を介して、上記ジエン系重合体B以外の重合体Cに結合する。
つまり、上記の表面修飾された粒子において、上記炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dは、それぞれ独立に、ウレア結合、ウレタン結合又はアミド結合を介して、上記粒子を形成する、上記ジエン系重合体B以外の重合体Cと、結合して、上記炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dは、上記粒子を表面修飾する。
なお、上記の表面修飾された粒子が有する粒子(粒状部分)がポリウレタン系重合体で形成され、つまり、粒子(粒状部分)がウレタン結合又はウレア結合をもともと有する場合、粒子の粒子(粒状部分)がもともと有するウレタン結合又はウレア結合は、上記炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dが上記ジエン系重合体B以外の重合体Cと結合する際に形成され、両者を介するウレア結合、ウレタン結合、アミド結合とは異なる。
【0038】
上記の表面修飾された粒子が有する粒子が、炭素数3~30の炭化水素基により表面修飾されている場合、上記炭化水素基は、本発明の効果がより優れる理由から、ウレア結合又はウレタン結合を介して、上記粒子を形成する上記重合体Cに結合することが好ましい。
【0039】
上記の表面修飾された粒子が有する粒子が、炭素数3~30の炭化水素基により表面修飾されている場合、上記炭化水素基は、本発明の効果がより優れる理由から、上記ウレア結合、上記ウレタン結合又は上記アミド結合の一端と直接結合し、上記ウレア結合、上記ウレタン結合又は上記アミド結合の他端が上記ジエン系重合体B以外の重合体Cに結合することが好ましい。
【0040】
上記の表面修飾された粒子が有する粒子が、ジエン系重合体Dにより表面修飾されている場合、上記ジエン系重合体Dは、本発明の効果がより優れる理由から、アミド結合を介して、上記粒子を形成する上記重合体Cに結合することが好ましい。
【0041】
なお、本発明において、上記ウレア結合、上記ウレタン結合又は上記アミド結合は、上記粒子(粒状部分)の表面上又はその内部のいずれにあってもよい。
【0042】
<表面修飾>
上記粒子は、炭素数3~30の炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dにより表面修飾されている。
「表面修飾」とは、上記炭化水素基及び/又はジエン系重合体Dが、上記粒子(粒状部分)の表面(又は上記ジエン系重合体B以外の重合体C)を修飾することを意味する。
上記炭素数3~30の炭化水素基又は上記ジエン系重合体Dは、それぞれ独立に、ウレア結合、ウレタン結合又はアミド結合を介して、上記粒子を形成する上記重合体Cに結合する。
【0043】
(表面修飾された粒子の平均粒子径)
上記表面修飾された粒子(又は表面修飾された粒子が有する粒子)の平均粒子径は、本発明の効果がより優れる理由から、0.01~200μmであることが好ましく、0.1~100μmがより好ましい。
なお、平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置により測定したものとする。
上記表面修飾された粒子(又は表面修飾された粒子が有する粒子)の平均粒子径から、上記表面修飾された粒子(又は表面修飾された粒子が有する粒子)は微粒子であるということができる。
【0044】
(表面修飾された粒子の含有量)
上記表面修飾された粒子の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上記ジエン系重合体A100質量部に対して、1~300質量部であることが好ましく、20~200質量部がより好ましい。
【0045】
本発明の粒子分散体は、上記粒子(表面修飾された粒子)が上記ジエン系重合体Aに分散する混合物である。
本発明の粒子分散体は、23℃の条件下において、具体的には例えば、液状、クリーム状又はペースト状であればよい。
本発明の粒子分散体の粘度は、23℃の条件下において、20,000Pa・s以下であることが好ましく、100~10,000Pa・sがより好ましい。上記粘度は、23℃の条件下において、E型粘度計でスピンドルCPE-52を用いて測定できる。
【0046】
[粒子分散体の製造方法]
上述した本発明の粒子分散体の製造方法は特に制限されないが、得られる粒子分散体をゴム組成物に用いたときに加工性、低燃費性能、引張物性又は氷上性能がより優れる理由から、下記(1)のミセル形成工程と(2)の表面修飾工程とを備える製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも言う)が好ましい。
【0047】
(1)ミセル形成工程
ジエン系重合体以外の重合体Eであってイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基を有する重合体Eを、界面活性剤の存在下で、数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aに分散させて、上記重合体Eのミセルを含有するミセル分散体を得る、ミセル形成工程
【0048】
(2)表面修飾工程
上記ミセル分散体において上記重合体Eがイソシアネート基を有する場合、上記ミセル分散体に、炭素数3~30の炭化水素基とヒドロキシ基、アミノ基若しくはイミノ基とを有する化合物F、及び/若しくは、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはイミノ基を有するジエン系重合体Gを加えて、上記ミセルが有するイソシアネート基と、上記化合物F及び/若しくは上記ジエン系重合体Gとを反応させて、上記ミセルの表面をウレタン結合又はウレア結合を介して上記炭化水素基及び/若しくは上記ジエン系重合体Dで修飾する、又は、
上記ミセル分散体において上記重合体Eがアミノ基又はイミノ基を有する場合、上記ミセル分散体に、炭素数3~30の炭化水素基とカルボキシ基若しくは酸無水物基とを有する化合物H、及び/若しくは、カルボキシ基若しくは酸無水物基を有するジエン系重合体Iを加えて、上記ミセルが有するアミノ基又はイミノ基と、上記化合物H及び/若しくは上記ジエン系重合体Iとを反応させて、上記ミセルの表面をアミド結合を介して上記炭化水素基及び/若しくは上記ジエン系重合体Dで修飾する、表面修飾工程
【0049】
以下、各工程について説明する。
【0050】
〔ミセル形成工程〕
ミセル形成工程は、ジエン系重合体以外の重合体Eであってイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基を有する重合体Eを、界面活性剤の存在下で、数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aに分散させて、上記(ジエン系重合体以外の重合体であってイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基を有する)重合体Eのミセルを含有するミセル分散体を得る工程である。
【0051】
<ジエン系重合体以外の重合体Eであってイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基を有する重合体E>
上記ミセル形成工程に使用される、ジエン系重合体以外の重合体Eであってイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基を有する重合体E(以下、「特定重合体」とも言う)は、ジエン系重合体以外の重合体であってイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基を有する重合体であれば特に制限されない。上記ミセル形成工程に使用される、ジエン系重合体以外の重合体Eの骨格の具体例及び好適な態様は上述した本発明の粒子分散体に含有される表面修飾された粒子が有する粒子(粒状部分)を形成する「ジエン系重合体B以外の重合体C」と同じである。つまり、上記ミセル形成工程に使用される、ジエン系重合体以外の重合体E(特定重合体)は、上述した本発明の粒子分散体に含有される粒子(の粒状部分)を形成する「ジエン系重合体B以外の重合体C」と同じ骨格を有し、かつイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基を有する重合体となる。
特定重合体は、本発明の効果がより優れる理由から、1分子当たり、複数のイソシアネート基を有することが好ましく、2個のイソシアネート基を有することがより好ましい。上記の場合、アミノ基及びイミノ基を有さず、イソシアネート基のみであってもよい。
また、特定重合体は、本発明の効果がより優れる理由から、アミノ基及び/又はイミノ基を有する態様も好ましい。上記の場合、特定重合体は、更に、イソシアネート基を有してもよい。
また、特定重合体は、本発明の効果がより優れる理由から、末端にイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基を有することが好ましい。
【0052】
(特定ウレタンポリマー)
上記特定重合体は、本発明の効果がより優れる理由から、イソシアネート基を有するウレタンポリマー(以下、「特定ウレタンポリマー」とも言う)であることが好ましい。
特定ウレタンポリマーは、本発明の効果がより優れる理由から、2個のイソシアネート基を有することが好ましい。また、ウレタンポリマーは、本発明の効果がより優れる理由から、末端にイソシアネート基を有することが好ましい。
【0053】
特定ウレタンポリマーは、本発明の効果がより優れる理由から、ポリイソシアネートと1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)とを重合したものであることが好ましい。
【0054】
特定ウレタンポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネートは、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
特定ウレタンポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI;例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族ポリイソシアネート(脂環式ポリイソシアネートを含む);
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;
これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0055】
ポリイソシアネートは、本発明の効果がより優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDIがより好ましい。
【0056】
特定ウレタンポリマーの製造の際に使用される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)は特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、水酸(OH)基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
活性水素化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸(OH)基を有するポリオール化合物等が好適に挙げられ、中でも、ポリオール化合物であることが好ましい。
なお、特定ウレタンポリマーの製造の際に使用される、活性水素含有基を有する化合物は、本発明の効果がより優れる理由から、1分子中に1個の活性水素含有基を有する化合物を使用しないことが好ましい。
【0057】
ポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。例えば、ポリカーボネートポリオール;ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;アクリルポリオール、ポリブタジエンジオール、水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素-炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;低分子多価アルコール類;ヒマシ油系ポリオール;これらの混合ポリオールが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ポリカーボネートポリオール、ヒマシ油系ポリオールが好ましい。
【0058】
ポリカーボネートポリオールは、主鎖がカーボネート結合(-O-CO-O-)を有する繰り返し単位で構成され、ヒドロキシ基を複数有するポリマーである。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとジメチルカーボネートとの脱メタノール縮合反応、ポリオールとジフェニルカーボネートの脱フェノール縮合反応、または、ポリオールとエチレンカーボネートの脱エチレングリコール縮合反応などの反応を経て生成されるものが挙げられる。これらの反応で使用されるポリオールとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の飽和もしくは不飽和の各種グリコール類、1,4-シクロヘキサンジグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール等が挙げられる。
【0059】
ヒマシ油系ポリオールは、ヒマシ油由来であり、ヒドロキシ基を複数有する化合物である。ヒマシ油系ポリオールとしては、例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0060】
特定ウレタンポリマーは、本発明の効果がより優れる理由から、ポリカーボネートジオールと芳香族ポリイソシアネートとを重合させてなるもの、ヒマシ油系ポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを重合させてなるものであることが好ましい。
【0061】
特定ウレタンポリマーの製造方法は特に制限されない。例えば、活性水素化合物が有する活性水素含有基(例えばヒドロキシ基)1モルに対し、1.5~2.5モルのイソシアネート基が反応するようにポリイソシアネートを使用し、これらを混合して反応させることによって製造することができる。以下、活性水素化合物が有する活性水素含有基1モルに対するポリイソシアネートが有するイソシアネート基のモル数を「NCO/OH」とも言う。
【0062】
本発明において、特定重合体(ジエン系重合体以外の重合体Eであってイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基を有する重合体E)は、上記のような特定ウレタンポリマーに対して、鎖延長剤を適用して、上記特定ウレタンポリマーを鎖延長させたものであってもよい。鎖延長剤としては、例えばジメチルチオトルエンジアミンのようなジアミン系の鎖延長剤;イミノ基を2個有する鎖延長剤が挙げられる。
上記のように鎖延長されたあとのウレタンポリマーは、特定ウレタンポリマーに由来するイソシアネート基、及び/又は、上記鎖延長剤に由来するアミノ基若しくはイミノ基を有することができる。上記のような鎖延長されたあとのウレタンポリマーを特定重合体(重合体E)として使用することができる。
【0063】
上記特定重合体の使用量は、本発明の効果がより優れる理由から、後述する数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体A100質量部に対して、20~200質量部が好ましい。
【0064】
<界面活性剤>
上記ミセル形成工程において界面活性剤を使用することによって、後述する数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aに上記特定重合体を分散させやすくできる。つまり、上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体A中に上記特定重合体(重合体E)のミセルを形成しやすくできる。
【0065】
上記ミセル形成工程において使用される界面活性剤は特に限定されない。
上記界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを例示することができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩を例示することができる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン系脂肪酸エステル型、ソルビタン系脂肪酸エステル型、ソルビトール系脂肪酸エステル型が挙げられる。
【0066】
上記界面活性剤は、本発明の効果がより優れる理由から、非イオン性界面活性剤が好ましく、ソルビタン系界面活性剤が好ましく、ソルビタン系脂肪酸エステル型界面活性剤がより好ましい。
上記ソルビタン系脂肪酸エステル型界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート(花王社製レオドールTW-O320V)等が挙げられる。
【0067】
上記界面活性剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上記特定重合体100質量部に対して、1~10質量部が好ましい。
【0068】
<数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体A>
上記ミセル形成工程において使用される、数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aは、本発明の粒子分散体に含まれるジエン系重合体Aと同様である。
上記ミセル形成工程において、上記特定重合体を上記界面活性剤の存在下で上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aに分散させる際、例えば、上記界面活性剤と上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aとの混合物に上記特定重合体を加えて混合してもよく、上記特定重合体と上記界面活性剤と上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aとを同時に混合してもよい。
【0069】
(有機溶媒)
上記ミセル形成工程において、上記特定重合体、上記界面活性剤及び上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aに対して、さらに、有機溶媒を使用することができる。上記ミセル形成工程においてさらに有機溶媒を使用する場合、得られる粒子分散体中の表面修飾された粒子(又は表面修飾された粒子が有する粒子)の平均粒子径の上昇を抑制しつつ、得られる粒子分散体中の表面修飾された粒子の含有量を多くすることができるので、好ましい。
【0070】
上記有機溶媒としては、具体的には、例えば、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン(n-ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン等)、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,3-トリメチルブタン、n-オクタン、イソオクタンなどの直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素化合物;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素;キシレン、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;α-ピネン、β-ピネン、リモネンなどのテルペン系有機溶剤等が挙げられる。
なかでも、上記有機溶媒は、得られる粒子分散体中の表面修飾された粒子(又は表面修飾された粒子が有する粒子)の平均粒子径の上昇を抑制しつつ、得られる粒子分散体中の表面修飾された粒子の含有量を多くすることができるという観点から、直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素化合物を含むことが好ましく、ヘキサンを含むことがより好ましい。
【0071】
(有機溶媒の使用量)
上記有機溶媒の使用量は、上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体A100質量部に対して、50~300質量部が好ましい。
【0072】
上記ミセル形成工程において、上記特定重合体を、上記界面活性剤の存在下で、上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aに分散させて、上記特定重合体(重合体E)のミセルを含有するミセル分散体を得る方法は特に制限されない。例えば、高速ディゾルバー式撹拌機のような撹拌機を用いて、回転数(回転速度)が例えば1000~2000rpmの条件下で上記特定重合体と上記界面活性剤を含む上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aと、必要に応じて使用することができる上記有機溶媒とを混合すればよい。また、上記特定重合体と上記界面活性剤と上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体Aと必要に応じて使用することができる上記有機溶媒とを同時に混合してもよい。
上記混合によって、上記数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体A中に上記特定重合体を粒状に分散させることができる。
ミセル形成工程で得られるミセル分散体は、上記特定重合体(重合体E)のミセルが、数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体A中に分散している状態であればよい。
【0073】
また、上記特定重合体(重合体E)のミセルは上記特定重合体に由来するイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基を有する。上記特定重合体に由来するイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基を「イソシアネート基等」ということがある。
上記ミセルにおける上記イソシアネート基、アミノ基又はイミノ基の位置は特に制限さないが、上記特定重合体に由来するイソシアネート基、アミノ基又はイミノ基は、例えば、分子運動によって上記特定重合体(重合体E)のミセルの表面に存在できると考えられる。
【0074】
<表面修飾工程>
表面修飾工程は、
上記ミセル分散体において上記重合体Eがイソシアネート基を有する場合、上記ミセル分散体に、炭素数3~30の炭化水素基とヒドロキシ基、アミノ基若しくはイミノ基とを有する化合物F、及び/若しくは、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはイミノ基を有するジエン系重合体Gを加えて、上記ミセルが有するイソシアネート基と、上記化合物F及び/若しくは上記ジエン系重合体Gとを反応させて、上記ミセルの表面をウレタン結合又はウレア結合を介して上記炭化水素基及び/若しくは上記ジエン系重合体Dで修飾する、又は、
上記ミセル分散体において上記重合体Eがアミノ基又はイミノ基を有する場合、上記ミセル分散体に、炭素数3~30の炭化水素基とカルボキシ基若しくは酸無水物基とを有する化合物H、及び/若しくは、カルボキシ基若しくは酸無水物基を有するジエン系重合体Iを加えて、上記ミセルが有するアミノ基又はイミノ基と、上記化合物H及び/若しくは上記ジエン系重合体Iとを反応させて、上記ミセルの表面をアミド結合を介して上記炭化水素基及び/若しくは上記ジエン系重合体Dで修飾する、工程である。
【0075】
上記表面修飾工程において、上記反応の条件は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、20~60℃、0.5~10時間であることが好ましい。上記反応は撹拌しながら行うことが好ましい。上記撹拌は、例えば、高速ディゾルバー式撹拌機のような撹拌機を用いて行うことができる。上記撹拌の回転数(回転速度)は1000~2000rpmの条件下であることが好ましい。
【0076】
上記表面処理工程後、本発明の粒子分散体を得ることができる。
なお、ミセルが有するイソシアネート基等の一部が反応せずにイソシアネート基等として残存していてもよい。
上記表面修飾工程後、製造された粒子分散体は、未反応の、化合物F、ジエン系重合体G、化合物H、又は、ジエン系重合体I等を更に含む場合があってもよい。
【0077】
上記表面修飾工程は、必要に応じて、上記反応後に乾燥工程を含んでもよい。
上記表面修飾工程において、上記反応後、必要に応じて、さらに乾燥工程を行ってもよい。上記ミセル形成工程において上記有機溶媒を使用した場合、上記乾燥工程を行えば、得られた粒子分散体から上記有機溶媒を除去でき、上記粒子分散体中の上記粒子の含有量の割合を高くすることができ、本発明の効果により優れる。
【0078】
上記乾燥工程における乾燥方法は特に制限されない。例えば、減圧蒸留が挙げられる。
【0079】
(ミセル分散体において上記重合体Eがイソシアネート基を有する場合)
ミセル形成工程で得られたミセル分散体において上記重合体Eがイソシアネート基を有する場合の表面修飾工程は、上記ミセル分散体に炭素数3~30の炭化水素基とヒドロキシ基、アミノ基(-NH2)若しくはイミノ基(-NH-)とを有する化合物F、及び/又は、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはイミノ基を有するジエン系重合体Gを加えて、上記ミセルが有するイソシアネート基と、上記化合物F及び/又は上記ジエン系重合体Gとを反応させて、上記ミセルの表面をウレタン結合又はウレア結合を介して上記炭化水素基及び/又は上記ジエン系重合体Dで修飾する工程である。なお、上記化合物F及びジエン系重合体Gがそれぞれ独立に有するヒドロキシ基、アミノ基若しくはイミノ基を以下「ヒドロキシ基等」と称する場合がある。
なお、上記表面修飾工程において、上記特定重合体(重合体E)のミセルが、本発明の粒子分散体に含まれる表面修飾された粒子が有する粒子(粒状部分)となり、上記化合物Fに由来する上記炭素数3~30の炭化水素基、及び/又は、上記ジエン系重合体Gに由来するジエン系重合体Dが上記粒子(粒状部分)を表面修飾する。
上記イソシアネート基と上記ヒドロキシ基とが反応することによってウレタン結合が形成され、上記イソシアネート基と上記アミノ基又はイミノ基とが反応することによってウレア結合が形成される。
上記のようなウレタン結合又はウレア結合を形成することによって、上記ミセルの表面を上記炭化水素基及び/又は上記ジエン系重合体Dで修飾することができる。
【0080】
ミセル形成工程で得られたミセル分散体において上記重合体Eがイソシアネート基を有する場合の表面修飾工程は、上記ミセル分散体に対して、上記化合物Fを使用することが好ましい態様として挙げられる。
上記表面修飾工程において使用することができる、炭素数3~30の炭化水素基とヒドロキシ基、アミノ基(-NH2)又はイミノ基(-NH-R:Rは炭化水素基を表す。)とを有する化合物F(ヒドロキシ基等含有化合物)について、上記化合物Fが有する炭素数3~30の炭化水素基は、本発明の粒子分散体に含まれる表面修飾された粒子が有する粒子の表面を修飾する炭素数3~30の炭化水素基と同様である。なお、イミノ基(*-NH-R:Rは炭化水素基を表す。)において、上記式の*には上記炭素数3~30の炭化水素基が結合することができ、一方、上記イミノ基が有するRとしての炭化水素基は特に制限されない。例えば、本発明の粒子分散体に含まれる粒子の表面を修飾する炭素数3~30の炭化水素基と同様であってもよい。
【0081】
上記化合物Fにおいて、ヒドロキシ基等は一分子当たり1個であることが好ましい。
上記化合物Fにおいて、ヒドロキシ基等は、ヒドロキシ基、アミノ基(-NH2)が好ましく、アミノ基(-NH2)がより好ましい。
上記化合物Fにおいて、炭素数3~30の炭化水素基とヒドロキシ基等とは直接結合することができる。
上記化合物Fにおいて、ヒドロキシ基等は、上記炭素数3~30の炭化水素基の末端に結合することが好ましい。
【0082】
上記化合物Fについて、上記炭素数3~30の炭化水素基とヒドロキシ基とを有する化合物としては、例えば、ヒドロキシプロパン、ヒドロキシブタン、ヒドロキシペンタン、ヒドロキシヘキサン、ヒドロキシオクタン、ヒドロキシデカン、ヒドロキシヘプタデカン、ヒドロキシオクタデカン、ヒドロキシエイコサンのようなヒドロキシ基を有する飽和脂肪族炭化水素基;
ヒドロキシプロペン、ヒドロキシブテン、ヒドロキシペンテン、ヒドロキシヘプテン、ヒドロキシオクテン、オレイルアルコールのようなヒドロキシ基を有する不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0083】
上記化合物Fについて、上記炭素数3~30の炭化水素基とアミノ基とを有する化合物としては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、エイコシルアミンのようなアミノ基を有する飽和脂肪族炭化水素基;
アミノプロペン、アミノブテン、アミノペンテン、アミノヘプテン、アミノオクテン、オレイルアミンのようなアミノ基を有する不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0084】
また、上記化合物Fについて、上記炭素数3~30の炭化水素基とアミノ基とを有する化合物としては、例えば、ココナッツアミン、カプリルアミン、オレイルアミンが挙げられる。
なお、上記炭素数3~30の炭化水素基とヒドロキシ基等とを有する化合物Fは、上記化合物の混合物であってもよい。
【0085】
上記表面修飾工程において、化合物F及び/又はジエン系重合体Gが有するヒドロキシ基、アミノ基若しくはイミノ基又はこれらの合計に対する、上記特定重合体が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH等)は、本発明の効果がより優れる理由から、1.0~1.5が好ましい。
【0086】
(ミセル分散体において上記重合体Eがアミノ基又はイミノ基を有する場合)
ミセル形成工程で得られたミセル分散体において上記重合体Eがアミノ基又はイミノ基を有する場合の表面修飾工程は、炭素数3~30の炭化水素基とカルボキシ基若しくは酸無水物基とを有する化合物H、及び/又は、カルボキシ基若しくは酸無水物基を有するジエン系重合体Iを加えて、上記ミセルが有するアミノ基又はイミノ基と、上記化合物H及び/又は上記ジエン系重合体Iとを反応させて、上記ミセルの表面をアミド結合を介して上記炭化水素基及び/又は上記ジエン系重合体Dで修飾する、工程である。なお、上記化合物H及びジエン系重合体Iがそれぞれ独立に有するカルボキシ基又は酸無水物基を以下「酸無水物基等」と称する場合がある。
なお、上記表面修飾工程において、上記特定重合体(重合体E)のミセルが、本発明の粒子分散体に含まれる表面修飾された粒子が有する粒子(粒状部分)となり、上記化合物Hに由来する上記炭素数3~30の炭化水素基、及び/又は、上記ジエン系重合体Iに由来するジエン系重合体Dが上記粒子(粒状部分)を表面修飾する。
上記アミノ基又はイミノ基と上記カルボキシ基又は酸無水物基とが反応することによってアミド結合を形成することができる。上記アミノ基又はイミノ基と上記酸無水物基とが反応する場合、上記酸無水物基は、上記アミノ基又はイミノ基により形成されるアミド基と、カルボキシ基とになることができる。
上記のようなアミド結合を形成することによって、上記ミセルの表面を上記炭化水素基及び/又は上記ジエン系重合体Dで修飾することができる。
【0087】
ミセル形成工程で得られたミセル分散体において上記重合体Eがアミノ基又はイミノ基を有する場合の表面修飾工程は、上記ミセル分散体に対して、上記ジエン系重合体Iを使用することが好ましい態様として挙げられる。
【0088】
ジエン系重合体Iは、カルボキシ基又は酸無水物基を有するジエン系重合体である。
ジエン系重合体Iは、カルボキシ基及び酸無水物基を有してもよい。
ジエン系重合体Iの骨格は、ジエン系モノマーとして共役ジエン系モノマーを含むモノマーから形成されるポリマーである。
【0089】
上記ジエン系重合体Iの骨格の具体例としては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリルニトリルブタジエン共重合体、スチレンブタジエン共重合体、スチレンイソプレン共重合体、スチレンイソプレンブタジエンゴム共重合体等が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ポリブタジエン、ポリイソプレン、又はスチレンブタジエン共重合体が好ましく、ポリイソプレンがより好ましい。
【0090】
ジエン系重合体Iが有するカルボキシ基又は酸無水物基の数(カルボキシ基及び酸無水物基を有する場合はこれらの合計)は、ジエン系重合体Iの1分子当たり、1~10個であることが好ましく、2~5個がより好ましい。
ジエン系重合体Iにおけるカルボキシ基又は酸無水物基の位置は特に制限されない。
【0091】
(ジエン系重合体Iの数平均分子量)
上記ジエン系重合体Iの数平均分子量は、本発明の効果がより優れる理由から、1,000~100,000であることが好ましく、10,000~50,000がより好ましい。
なお、上記Mnは、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0092】
上記表面修飾工程において、化合物H及び/又はジエン系重合体Iが有するカルボキシ基、酸無水物基又はこれらの合計に対する、上記特定重合体が有するアミノ基若しくはイミノ基又はこれらの合計のモル比(アミノ基/酸無水物基等)は、本発明の効果がより優れる理由から、1.0以上が好ましい。
【0093】
上記表面修飾工程において、ジエン系重合体Iを使用する場合、ジエン系重合体Iの使用量は、本発明の効果がより優れる理由から、ミセル形成工程で得られるミセル分散体が有する、数平均分子量が1,000~100,000であるジエン系重合体A100質量部に対して、10~30質量部が好ましい。
【0094】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、ジエン系ゴムXと、上述した本発明の粒子分散体とを含有する、ゴム組成物である。
【0095】
〔ジエン系ゴムX〕
本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムXは特に制限されず、その具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)及びこれらの各ゴムの誘導体などが挙げられる。
なお、本発明のゴム組成物に含有される上記ジエン系ゴムを「ジエン系ゴムX」と称する場合がある。
上記ジエン系ゴムXは、本発明の効果がより優れる理由から、これらのゴムの少なくとも1種を上記ジエン系ゴムX全量に対して30質量%以上含むことが好ましい。
【0096】
上記ジエン系ゴムXの重量分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100,000~10,000,000であることが好ましく、200,000~1,500,000であることがより好ましく、300,000~3,000,000であることがさらに好ましい。
また、上記ジエン系ゴムXの数平均分子量(Mn)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50,000~5,000,000であることが好ましく、100,000~750,000であることがより好ましく、150,000~1,500,000であることがさらに好ましい。なお、本発明の組成物において、上記ジエン系ゴムXの数平均分子量(Mn)を100,000超とすることができる。
【0097】
上記ジエン系ゴムXに含まれる少なくとも1種のジエン系ゴムのMw及び/又はMnが上記範囲に含まれることが好ましく、上記ジエン系ゴムXに含まれるすべてのジエン系ゴムのMw及び/又はMnが上記範囲に含まれることがより好ましい。
なお、Mw及びMnは、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0098】
なお、本発明のゴム組成物に含有される上記ジエン系ゴムXは、本発明の粒子分散体を含まない。また、上記ジエン系ゴムXは、本発明の粒子分散体に含まれるジエン系重合体Aを含まない。
【0099】
〔粒子分散体〕
上述のとおり、本発明の組成物は、上述した本発明の粒子分散体を含有する。
本発明の粒子分散体については上述のとおりである。
【0100】
本発明の組成物において、本発明の粒子分散体の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴムX100質量部に対して、1~150質量部であることが好ましく、2~100質量部であることがより好ましく、3~80質量部であることがさらに好ましい。
【0101】
〔任意成分〕
本発明の組成物は、必要に応じて、上述した成分以外の成分(任意成分)を含有することができる。
そのような成分としては、例えば、充填剤(例えば、カーボンブラック、白色充填剤(好ましくは、シリカ))、シランカップリング剤、テルペン樹脂(好ましくは、芳香族変性テルペン樹脂)、マイクロカプセル(例えば熱膨張性マイクロカプセル)、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、オイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0102】
<充填剤>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、さらに、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種の充填剤を含有することが好ましく、カーボンブラック及び白色充填剤の両方を含有することがより好ましい。
【0103】
(カーボンブラック)
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50~200m2/gであることが好ましく、70~150m2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0104】
(白色充填剤)
上記白色充填剤は特に制限されないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、シリカであることが好ましい。
【0105】
上記シリカは特に制限されないが、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、湿式シリカであることが好ましい。
【0106】
上記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100~400m2/gであることが好ましく、150~300m2/gであることがより好ましく、160~250m2/gであることがさらに好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0107】
(含有量)
本発明の組成物が充填剤を更に含有する場合、充填剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴムX100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、10~150質量部であることがより好ましく、30~100質量部であることがさらに好ましい。
【0108】
本発明の組成物が充填剤を更に含有する場合、上述した本発明の粒子分散体と充填剤の合計の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴムX100質量部に対して、5~250質量部であることが好ましく、20~200質量部であることがより好ましく、50~150質量部であることがさらに好ましい。
【0109】
本発明の組成物がカーボンブラックを更に含有する場合、カーボンブラックの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴムX100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、5~50質量部であることがより好ましい。
【0110】
本発明の組成物が白色充填剤(特に、シリカ)を更に含有する場合、白色充填剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴムX100質量部に対して、1~150質量部であることが好ましく、10~120質量部であることがより好ましく、50~90質量部であることがさらに好ましい。
【0111】
(熱膨張性マイクロカプセル)
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、さらに、熱膨張性マイクロカプセルを含有することが好ましい。
熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂で形成された殻材中に、熱膨張性物質を内包した構成からなるものが好適態様の1つとして挙げられる。熱膨張性マイクロカプセルの殻材は例えばニトリル系重合体により形成することができる。
またマイクロカプセルの殻材中に内包する熱膨張性物質は、熱によって気化または膨張する特性をもち、例えば、イソアルカン、ノルマルアルカン等の炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種類が例示される。イソアルカンとしては、イソブタン、イソペンタン、2-メチルペンタン、2-メチルヘキサン、2,2,4-トリメチルペンタン等を挙げることができ、ノルマルアルカンとしては、n-ブタン、n-プロパン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等を挙げることができる。これらの炭化水素は、それぞれ単独で使用しても複数を組み合わせて使用してもよい。熱膨張性物質の好ましい形態としては、常温で液体の炭化水素に、常温で気体の炭化水素を溶解させたものがよい。このような炭化水素の混合物を使用することにより、未加硫タイヤの加硫成形温度域(150℃~190℃)において、低温領域から高温領域にかけて十分な膨張力を得ることができる。
熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えばスェーデン国エクスパンセル社製の商品名「EXPANCEL 091DU-80」または「EXPANCEL 092DU-120」等、或いは松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアー F-85D」または「マツモトマイクロスフェアー F-100D」等を使用することができる。
【0112】
熱膨張性マイクロカプセルの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴムX100質量部に対し、1~20質量部が好ましく、3~15質量部がさらに好ましい。
【0113】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混合する方法などが挙げられる。本発明の組成物が硫黄または加硫促進剤を更に含有する場合は、硫黄及び加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100~160℃)で混合し、冷却してから、硫黄または加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0114】
本発明の組成物は、例えば、空気入りタイヤに使用することができる。
本発明の組成物は、スタッドレスタイヤに使用することが好適に挙げられる。
また、本発明の組成物を空気入りタイヤ又はスタッドレスタイヤのトレッド部に用いることが好適に挙げられる。
【0115】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造された空気入りタイヤである。なかでも、本発明の組成物を用いて製造されたタイヤトレッド部を備える空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例の部分断面概略図を示すが、本発明の空気入りタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0116】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されていることが好ましい。
【0117】
本発明の空気入りタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、空気入りタイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0118】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
〔粒子分散体の製造〕
下記のとおり、特定粒子分散体1~5及び比較粒子分散体1~2を製造した。
【0120】
<実施例A-1:特定粒子分散体1>
以下のとおり、特定粒子分散体1を製造した。
【0121】
(ミセル形成工程)
<特定重合体の調製>
ポリカーボネートジオール(旭化成社製T6001、数平均分子量が1000)80.0gと、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製ミリオネートMT、数平均分子量が250)40.9gとを、80℃で5時間反応させ、末端イソシアネートポリカーボネートウレタンプレポリマー(末端にイソシアネート基を有するポリカーボネート系のウレタンプレポリマー。ウレタン結合を有する。)を得た。
上記のとおり調製された末端イソシアネートポリカーボネートウレタンプレポリマーに、ジメチルチオトルエンジアミン(クミアイ化学社製ハートキュア30。下記構造。鎖延長剤。以下同様)14.0gを加え、2分間撹拌し、末端にイソシアネート基を2つ有するポリウレタン(末端イソシアネートポリウレタン)(特定重合体)を調製した。なお、上記末端イソシアネートポリウレタンは、上記ウレタン結合のほか、特定重合体のイソシアネート基とジメチルチオトルエンジアミンのアミノ基との反応によるウレア結合を有する。
【化1】
【0122】
次いでこれに、液状ブタジエン単独重合体(クラレ社製LBR-307。数平均分子量8000。未変性。)443.7gにソルビタン酸系界面活性剤(花王社製TW-O320V)4.0gを投入し、高速ディゾルバー式撹拌機により、回転数2000rpmで10分間撹拌した。これにより、液状ブタジエン単独重合体中に、末端イソシアネートポリウレタンで形成されるミセルを含有するミセル分散体を得た。末端イソシアネートポリウレタンのイソシアネート基は上記ミセルの表面に存在できる。
【0123】
(表面修飾工程)
次いで、上記ミセル分散体に、カプリルアミン(花王社製ファーミン08D。上記カプリルアミンは、C8 98%、C10 2%の混合物としての市販品である。主要成分であるC8のアミンは下記構造である。)4.2gを投入し、その後、室温(23℃)の条件下で1時間撹拌(回転数2000rpm)を続け、上記ミセルが有する(つまり末端イソシアネートポリウレタンが有する)イソシアネート基とカプリルアミンが有するアミノ基とを反応させて、ウレア結合を形成し、カプリルアミンが有するn-オクチル基等が、上記ウレア結合を介して末端イソシアネートポリウレタンの主鎖であるポリウレタン(粒状部分の表面)に導入された。
【化2】
【0124】
これにより、液状ブタジエン単独重合体100質量部に対して表面修飾された粒子が31質量部となる粒子分散体(特定粒子分散体1)を得た。
特定粒子分散体1は、数平均分子量8000の液状ブタジエン単独重合体中に、n-オクチル基等により表面修飾され、(粒状部分が)ポリウレタンで形成された粒子(表面修飾された粒子)が分散し、n-オクチル基等がウレア結合を介してポリウレタン(粒状部分の表面)に結合している。
特定粒子分散体1をレーザー回折式粒子径分布測定装置で測定したところ、表面修飾された粒子の平均粒子径が50μmの粒子が生成していることが確認された。
特定粒子分散体1は、23℃の条件下において流動性を有した(液状であった)。特定粒子分散体1の粘度は、23℃の条件下において517Pa・sであった。
【0125】
<実施例A-2:特定粒子分散体2>
上記液状ブタジエン単独重合体の代わりに液状イソプレン単独重合体(クラレ社製LIR-30。数平均分子量28000。未変性。)443.7gを使用し、上記カプリルアミンの代わりにココナッツアミン(花王社製ファーミンCS。モノアルキルモノアミンの混合物。上記アルキル基の炭素数は8~18個。上記ココナッツアミンは、C8 7%,C10 7%,C12 51%,C14 19%,C16 8%,C18(飽和) 2%,C18(不飽和) 6%の混合物としての市販品である。)6.4gを使用した以外は、特定粒子分散体1と同様の手順に従って粒子分散体(特定粒子分散体2)を得た。
表面修飾工程において、末端イソシアネートポリウレタンが有するイソシアネート基とココナッツアミンが有するアミノ基とを反応させて、ウレア結合を形成し、ココナッツアミンが有する上記炭素数のアルキル基が上記ウレア結合を介してポリウレタン(粒状部分の表面)に導入された。
【0126】
得られた特定粒子分散体2は、液状イソプレン単独重合体100質量部に対して表面修飾された粒子が32質量部となる粒子分散体であった。
特定粒子分散体2は、数平均分子量28000の液状イソプレン単独重合体中に、上記炭素数8~18個の炭化水素基(アルキル基等)により表面修飾され、(粒状部分が)ポリウレタンで形成される粒子(表面修飾された粒子)が分散し、上記アルキル基がウレア結合を介してポリウレタン(粒状部分の表面)に結合している。
特定粒子分散体2をレーザー回折式粒子径分布測定装置で測定したところ、平均粒子径が10μmの表面修飾された粒子(微粒子)が生成していることが確認された。
特定粒子分散体2は、23℃の条件下において流動性を有した(液状であった)。特定粒子分散体2の粘度は、23℃の条件下において832Pa・sであった。
【0127】
<実施例A-3:特定粒子分散体3>
上記液状ブタジエン単独重合体の代わりに液状スチレン・ブタジエン重合体(トタル社製RICON184。数平均分子量8600。未変性)443.7gを使用し、上記カプリルアミンの代わりにオレイルアミン(花王社製ファーミンO-V。上記オレイルアミンは、C14 1%,C16 6%,C18(飽和) 6%,C18(不飽和) 87%の混合物としての市販品である。主要成分であるC18(不飽和)のアミンは下記構造である。)8.7gを使用した以外は、特定粒子分散体1と同様の手順に従って粒子分散体(特定粒子分散体3)を得た。
【化3】
【0128】
表面修飾工程において、上記末端イソシアネートポリウレタンが有するイソシアネート基とオレイルアミンが有するアミノ基とを反応させて、ウレア結合を形成し、上記オレイルアミンが有するオレイル基等が上記ウレア結合を介してポリウレタン(粒状部分の表面)に導入された。
【0129】
得られた特定粒子分散体3は、液状スチレン・ブタジエン重合体100質量部に対して表面修飾された粒子が32質量部となる粒子分散体であった。
特定粒子分散体3は、数平均分子量8600の液状スチレン・ブタジエン重合体中に、オレイル基等により表面修飾され、(粒状部分が)ポリウレタンで形成された粒子(表面修飾された粒子)が分散し、上記オレイル基等がウレア結合を介してポリウレタン(粒子の表面)に結合している。
特定粒子分散体3をレーザー回折式粒子径分布測定装置で測定したところ、平均粒子径が20μmの表面修飾された粒子が生成していることが確認された。
特定粒子分散体3は、23℃の条件下において流動性を有した(液状であった)。特定粒子分散体3の粘度は、23℃の条件下において650Pa・sであった。
【0130】
<実施例A-4:特定粒子分散体4>
上記ジメチルチオトルエンジアミンの使用量を10.5gに代え、上記液状ブタジエン単独重合体の使用量を139.8gに代え、上記液状ブタジエン単独重合体とともに有機溶媒としてヘキサン216.0gを使用し、上記カプリルアミンの使用量を8.4gに代え、表面修飾工程の後に、減圧蒸留によって揮発成分(ヘキサン)を除いた以外は、特定粒子分散体1と同様の手順に従って粒子分散体(特定粒子分散体4)を得た。
表面修飾工程において、上記特定重合体が有するイソシアネート基とカプリルアミンが有するアミノ基とを反応させて、ウレア結合を形成し、カプリルアミンが有するn-オクチル基等が上記ウレア結合を介してポリウレタン(粒状部分の表面)に導入された。
【0131】
得られた特定粒子分散体4は、液状ブタジエン単独重合体100質量部に対して表面修飾された粒子が100質量部となる粒子分散体であった。
特定粒子分散体4は、数平均分子量8000の液状ブタジエン単独重合体中に、n-オクチル基等により表面修飾され、(粒状部分が)ポリウレタンで形成された粒子(表面修飾された粒子)が分散し、n-オクチル基等がウレア結合を介してポリウレタン(粒状部分の表面)に結合している。
特定粒子分散体4をレーザー回折式粒子径分布測定装置で測定したところ、平均粒子径が20μmの表面修飾された粒子が生成していることが確認された。
特定粒子分散体4は、23℃の条件下においてペースト状であった。特定粒子分散体4の粘度は、23℃の条件下において7630Pa・sであった。
【0132】
<実施例A-5:特定粒子分散体5>
ヒマシ油ポリオール(伊藤製油社製H-57、水酸基価が92.9)100.0gと、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製ミリオネートMT、数平均分子量が250)62.1gとを、80℃で5時間反応させ、末端イソシアネートヒマシ油ウレタンプレポリマー(末端にイソシアネート基を有するヒマシ油系のウレタンプレポリマー。ウレタン結合を有する。)を得た。
上記のとおり調製された末端イソシアネートヒマシ油ウレタンプレポリマーに、ジメチルチオトルエンジアミン(クミアイ化学社製ハートキュア30。鎖延長剤)28.4gを加え、30秒間撹拌し、一部末端にアミノ基を有するポリウレタンを調製した。なお、上記ポリウレタンは、上記ウレタン結合のほか、イソシアネート基とジメチルチオトルエンジアミンのアミノ基との反応によるウレア結合を有する。
【0133】
次いでこれに、液状イソプレン単独重合体(クラレ社製LIR-30。数平均分子量28000。未変性。)599.6gにソルビタン酸系界面活性剤(花王社製TW-O320V)3.0gを投入し、高速ディゾルバー式撹拌機により、回転数2000rpmで1分間撹拌した。これにより、液状イソプレン単独重合体中に、ポリウレタンで形成されるミセルを含有するミセル分散体を得た。ポリウレタンのアミノ基は上記ミセルの表面に存在できる。
【0134】
(表面修飾工程)
次いで、上記ミセル分散体に、無水マレイン酸変性ポリイソプレン(側鎖に無水マレイン酸基を有するイソプレン重合体)(クラレ社製LIR-403、数平均分子量34000、1分子当たりの官能基数3個)(酸無水物基を有するジエン系重合体)80.0gを投入し、その後、室温(23℃)の条件下で1時間撹拌(回転数2000rpm)を続け、上記ミセルが有する(つまりポリウレタンが有する)アミノ基と無水マレイン酸変性ポリイソプレンが有する無水マレイン酸部分とを反応させて、アミド結合を形成し、無水マレイン酸変性ポリイソプレンが有するポリイソプレン部分等が、上記アミド結合を介してポリウレタンの主鎖であるポリウレタン(粒状部分の表面)に導入された。
【0135】
これにより、液状イソプレン単独重合体100質量部に対して表面修飾された粒子が32質量部となる粒子分散体(特定粒子分散体5)を得た。
特定粒子分散体5は、数平均分子量28000の液状イソプレン単独重合体中に、ポリイソプレン等により表面修飾され、(粒状部分が)ポリウレタンで形成された粒子(表面修飾された粒子)が分散し、ポリイソプレン等がアミド結合を介してポリウレタン(粒状部分の表面)に結合している。
特定粒子分散体5をレーザー回折式粒子径分布測定装置で測定したところ、平均粒子径が30μmの表面修飾された粒子が生成していることが確認された。
特定粒子分散体5は、23℃の条件下においてペースト状であった。特定粒子分散体5の粘度は、23℃の条件下において1206Pa・sであった。
【0136】
<比較例B-1:比較粒子分散体1>
カプリルアミンを投入しなかった点以外は、粒子分散体1と同様の手順に従って粒子分散体(比較粒子分散体1)を得た。
得られた比較粒子分散体1は、液状ブタジエン単独重合体100質量部に対して粒子が30質量部となる粒子分散体であった。
比較粒子分散体1は、数平均分子量8000の液状ブタジエン単独重合体中に、炭化水素基により表面修飾されていない、(末端イソシアネートの)ポリウレタンで形成された粒子が分散している。
粒子分散体1と同様に平均粒子径を測定したところ、比較粒子分散体1が有する粒子の平均粒子径は500μmであった。
【0137】
<比較例B-2:比較粒子分散体2>
(ミセル形成工程)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製YDF-170)80.0gに、m-キシレンジアミン(三菱化学社製メタキシレンジアミン)9.6gを加え、60℃で、20分間撹拌し、末端にエポキシ基を2つ有する重合体を調製した。
次いでこれに、液状ブタジエン単独重合体(クラレ社製LBR-307。数平均分子量8000。未変性)353.7gにソルビタン酸系界面活性剤(花王社製TW-O320V)4.0gを投入し、高速ディゾルバー式撹拌機により、回転数2000rpmで10分間撹拌した。これにより、末端にエポキシ基を有する重合体で形成されるミセルを含有する分散体を得た。
【0138】
(表面修飾工程)
次いで、上記分散体に、カプリルアミン(花王社製ファーミン08D)24.3gを投入し、60℃で、1時間撹拌を続け、上記ミセルが表面に有する(つまり末端にエポキシ基を有する重合体が有する)エポキシ基とカプリルアミンが有するアミノ基とを反応させて、下記結合を形成し、カプリルアミンが有するn-オクチル基等が末端にエポキシ基を有するエポキシ樹脂の主鎖である重合体(粒状部分の表面)に導入された。
【0139】
(エポキシ基とカプリルアミンが有するアミノ基との反応により形成される結合)
上記ミセルが表面に有するエポキシ基とカプリルアミンとを反応させると、以下に示す構造が得られる。
R1-NH-CH2-CH(OH)-*
上記式中、R1は、カプリルアミンに由来する炭化水素基を表し、*は末端にエポキシ基を有する重合体に由来する重合体に結合する。
カプリルアミンに由来する炭化水素基(R1)は、-NH-CH2-CH(OH)-の結合を介して、粒子(粒状部分)に結合する。
【0140】
これにより、液状ブタジエン単独重合体100質量部に対して表面修飾された粒子が32質量部となる粒子分散体(比較粒子分散体2)を得た。
比較粒子分散体2は、数平均分子量8000の液状ブタジエン単独重合体中に、n-オクチル基により表面修飾され、(粒状部分が)エポキシ樹脂で形成された粒子(表面修飾された粒子)が分散し、n-オクチル基等が-NH-CH2-CH(OH)-を介して粒状部分の表面に結合している。
比較粒子分散体2をレーザー回折式粒子径分布測定装置で測定したところ、平均粒子径が50μmの表面修飾された粒子が生成していることが確認された。
【0141】
上記のとおり、末端にエポキシ基を有する重合体にカプリルアミンを反応させて、上記カプリルアミンに由来する炭化水素基をミセル(粒状部分)の表面に導入する場合、上記カプリルアミンに由来する炭化水素基は、上記結合に示すとおり、-NH-CH2-CH(OH)-を介して、粒状部分(ビスフェノールF型エポキシ樹脂とm-キシレンジアミンとの反応により得られる骨格の重合体)に結合する。
このように、比較粒子分散体2は、上記カプリルアミンに由来する炭化水素基が、ウレタン結合又はウレア結合ではなく、-NH-CH2-CH(OH)-を介して上記粒状部分に結合するから、比較粒子分散体2は、本発明の粒子分散体に該当しない。
【0142】
〔ゴム組成物の調製〕
下記表1に示す成分を、同表に示す割合(質量部)で配合した。具体的には、まず硫黄及び加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、150℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。次に、得られたマスターバッチに硫黄及び加硫促進剤を同表に示す割合で加えこれらをオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
【0143】
〔評価〕
得られた各ゴム組成物について、以下の評価を行った。
【0144】
<加工性>
JIS K6300-1:2013に準拠して、ムーニー粘度計にてL型ロータ(38.1mm径、5.5mm厚)を使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃、2rpmの条件でムーニー粘度を測定した。
結果を表1に示す。結果は、標準例1を100とする指数で示した。値が小さいほど粘度が小さく加工性に優れることを意味する。
【0145】
<低燃費性能>
得られたゴム組成物をランボーン摩耗用金型(直径63.5mm、厚さ5mmの円板状)中で加硫して(170℃、15分間)、加硫ゴムシートを作製した。
得られた加硫ゴムシートについて、JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、tanδ(60℃)を測定した。
結果を表1に示す。結果は、標準例1を100とする指数で示した。値が小さいほど低燃費性能に優れることを意味する。
【0146】
<引張物性>
上記のように作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6251:2017に準拠し、JIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、温度23℃、引張り速度500mm/分の条件で、切断時引張強さ(Tb)及び切断時伸び(Eb)を測定した。
結果を表1に示す。結果は、標準例1を100とする指数で示した。切断時引張強さ(Tb)及び切断時伸び(Eb)の指数の値が大きいほど引張物性に優れることを意味する。
【0147】
<氷上性能>
上記のように得られた加硫ゴムシートを偏平円柱状の台ゴムに貼り付け、インサイドドラム型氷上摩擦試験機にて氷上摩擦係数を測定した。測定温度は-1.5℃とし、荷重5.5g/cm3、ドラム回転速度25km/時とした。
結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が大きいほど氷上摩擦力が大きく、氷上性能に優れることを意味する。実用上、指数は107以上であることが好ましい。
【0148】
【0149】
上記表1に示される各成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製NIPOL1502
・シリカ:ローディア社製Zeosil 1165MP
・カーボンブラック:東海カーボン社製シースト6
・特定粒子分散体1~5:上述のとおり製造した特定粒子分散体1~5
・比較粒子分散体1~2:上述のとおり製造した比較粒子分散体1~2
・シランカップリング剤:ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、Evonik社製Si69
・亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸YR
・老化防止剤:フレキシス社製サントフレックス6PPD
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
・加硫促進剤1:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ-G
・加硫促進剤2:住友化学社製ソクシノールD-G
・オイル1:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
【0150】
表1に示した結果から分かるように、特定粒子分散体を含有する実施例1~5の組成物は、特定粒子分散体を含有しない標準例1と比較して、優れた加工性、低燃費性能、引張物性及び氷上性能を示した。
実施例1と実施例4との対比から、実施例4は、粒子分散体中の粒子の含有量が少ない実施例1よりも、優れた低燃費性能及び引張物性を示した。
【0151】
一方、特定粒子分散体の代わりに、炭化水素基等により表面修飾されていない、ポリウレタンで形成される粒子がブタジエン単独重合体に分散している粒子分散体を含有する比較例1は、標準例1と比較して、加工性、低燃費性能、引張物性及び氷上性能が不十分であった。
また、炭素数3~30の炭化水素基が、ウレア結合、ウレタン結合、アミド結合以外の連結基を介して、ジエン系重合体以外の重合体に結合する比較粒子分散体2を含有する比較例2は、標準例1と比較して、引張物性及び氷上性能が不十分であった。
【符号の説明】
【0152】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション