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特許7131733ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維織物及びガラス繊維強化樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維織物及びガラス繊維強化樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 13/02 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
C03C13/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022528666
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2022005085
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2021026997
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 貴庸
(72)【発明者】
【氏名】栗田 忠史
(72)【発明者】
【氏名】野中 貴史
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特許第6468409(JP,B1)
【文献】特開2004-107112(JP,A)
【文献】特開平11-292567(JP,A)
【文献】国際公開第2020/121761(WO,A1)
【文献】特表2013-542904(JP,A)
【文献】特開2006-326537(JP,A)
【文献】特表2010-508226(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101012105(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101269915(CN,A)
【文献】特開平9-268025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 13/00 -13/06
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、59.00~65.00質量%の範囲のSiOと、16.00~26.00質量%の範囲のBと、7.00~14.00質量%の範囲のAlと、0~5.00質量%の範囲のCaOと、0~4.00質量%の範囲のMgOと、0~6.00質量%の範囲のSrOと、0.10~5.00質量%の範囲のTiOと、合計で0~2.00質量%の範囲のF及びClとを含み、Pの含有率が0.20質量%未満であり、NaO、KO及びLiOの合計含有率が1.00質量%未満であり、
前記CaO、MgO及びSrOの合計含有率(質量%)に対するTiOの含有率(質量%)の割合(TiO/(CaO+MgO+SrO))が0.66~4.00の範囲にあり、
前記SiOの含有率(質量%)SI及び前記Alの含有率(質量%)Aが次式(1)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
1.00 ≦ 1000×A/SI ≦ 4.65 ・・・(1)
【請求項2】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SiOの含有率(質量%)SI、前記Bの含有率(質量%)B、前記Alの含有率(質量%)A、前記CaOの含有率(質量%)C、前記MgOの含有率(質量%)M、前記SrOの含有率(質量%)SR、前記TiOの含有率(質量%)T、及び、前記FとClとの合計含有率(質量%)Fが次式(2)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
204.00 ≦ SI×B×T/[{C+(40.1/87.6)×SR-(40.1/24.3)×M-F}1/2×A] ≦ 422.40 ・・・(2)
【請求項3】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SiOの含有率(質量%)SI、前記Bの含有率(質量%)B、前記Alの含有率(質量%)A、前記CaOの含有率(質量%)C、前記MgOの含有率(質量%)M、前記SrOの含有率(質量%)SR、前記TiOの含有率(質量%)T、及び、前記FとClとの合計含有率(質量%)Fが次式(3)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
244.00 ≦ SI×B×T/[{C+(40.1/87.6)×SR-(40.1/24.3)×M-F}1/2×A] ≦ 410.00 ・・・(3)
【請求項4】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SiOの含有率(質量%)SI、前記Bの含有率(質量%)B、前記Alの含有率(質量%)A、前記CaOの含有率(質量%)C、前記MgOの含有率(質量%)M、前記SrOの含有率(質量%)SR、前記TiOの含有率(質量%)T、及び、前記FとClとの合計含有率(質量%)Fが次式(4)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
308.50 ≦ SI×B×T/[{C+(40.1/87.6)×SR-(40.1/24.3)×M-F}1/2×A] ≦ 400.50 ・・・(4)
【請求項5】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記SiOの含有率(質量%)SI、前記Bの含有率(質量%)B、前記Alの含有率(質量%)A、前記CaOの含有率(質量%)C、前記MgOの含有率(質量%)M、前記SrOの含有率(質量%)SR、前記TiOの含有率(質量%)T、及び、前記FとClとの合計含有率(質量%)Fが次式(5)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
339.60 ≦ SI×B×T/[{C+(40.1/87.6)×SR-(40.1/24.3)×M-F}1/2×A] ≦ 377.80 ・・・(5)
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項記載のガラス繊維用ガラス組成物からなるガラス繊維。
【請求項7】
請求項6記載のガラス繊維を含むことを特徴とする、ガラス繊維織物。
【請求項8】
請求項6記載のガラス繊維を含むことを特徴とする、ガラス繊維強化樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維織物、及び、ガラス繊維強化樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維は、所望の組成を有するガラス繊維用ガラス組成物となるように調合されたガラス原料をガラス溶融炉で溶融して溶融ガラス(ガラス繊維用ガラス組成物の溶融物)とし、該溶融ガラスを数個から数千個のノズルチップを形成したノズルプレートを有する容器(ブッシング)から吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却し、固化して繊維状とする(以下、この操作を「紡糸」と言うことがある)ことにより製造されている。前記ブッシングは、例えば、白金等の貴金属により形成されている。
【0003】
従来、ガラス繊維は、樹脂成形品の強度を向上させるために種々の用途で広く用いられており、該樹脂成形品は、サーバー、スマートフォンやノートパソコン等の電子機器の筐体又は部品に用いられている。
【0004】
一般に、ガラスは交流電流に対してエネルギーを熱として吸収するので、前記樹脂成形品を前記電子機器の筐体又は部品に用いると、該樹脂成形品が発熱するという問題がある。
【0005】
ここで、ガラスに吸収される誘電損失エネルギーはガラスの成分及び構造により定まる誘電率及び誘電正接に比例し、下記式(A)で表される。
W=kfv×ε1/2×tanδ ・・・(A)
【0006】
ここで、Wは誘電損失エネルギー、kは定数、fは周波数、vは電位傾度、εは誘電率、tanδは誘電正接を表す。前記式(A)から、誘電率及び誘電正接が大きい程、また周波数が高い程、誘電損失が大きくなり、前記樹脂成形品の発熱が大きくなることがわかる。
【0007】
近年、前記電子機器に用いられる交流電流の周波数(前記式(A)のf)が高くなっていることを受けて、誘電損失エネルギーを低減するために、前記電子機器の筐体又は部品に用いられるガラス繊維に、より低い誘電率及びより低い誘電正接を備えることが求められている。特に、1/2乗される誘電率よりも、前記式(A)に与える影響が大きいことから、低い誘電正接を備えることが求められている。
【0008】
かかる事情に鑑み、本出願人は、低誘電率及び低誘電正接を備え、かつ、分相の発生が抑制され、さらに、高温での粘性が低減された、ガラス繊維用ガラス組成物として、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、52.0~59.5質量%の範囲のSiOと、17.5~25.5質量%の範囲のBと、9.0~14.0質量%の範囲のAlと、0.5~6.0質量%の範囲のSrOと、1.0~5.0質量%の範囲のMgOと、1.0~5.0質量%の範囲のCaOと、合計で0.1~2.5質量%の範囲のF及びClとを含む、ガラス繊維用ガラス組成物を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6468409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、特に10GHz程度の高周波数領域で、より低い誘電率及びより低い誘電正接を備えるガラス繊維を得ることができるガラス繊維用ガラス組成物が求められており、かかる課題を達成するために、ガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するAl及びアルカリ土類金属酸化物(CaO、MgO及びSrO)の含有率を低減させ、その分SiO及びBの含有率を高めることが考えられる。
【0011】
しかしながら、前記ガラス繊維用ガラス組成物において、Al及びアルカリ土類金属酸化物の含有率を代償として、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するSiO及びBの含有率を高めると、1000ポイズ温度と液相温度との差で表される作業温度範囲が狭まり、ガラス繊維製造性が低下する、又は、ガラス繊維の耐水性が悪化し、ガラスの加水分解によりガラス繊維表面に析出した異物により誘電特性が悪化したり、ガラス繊維の強度が大幅に低下したりするという不都合がある。
【0012】
本発明は、かかる不都合を解消して、優れた耐水性と、高周波数領域における優れた誘電特性(低い誘電率及び低い誘電正接)とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体十分な作業温度範囲を備えることができる、ガラス繊維用ガラス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、59.00~65.00質量%の範囲のSiOと、16.00~26.00質量%の範囲のBと、7.00~14.00質量%の範囲のAlと、0~5.00質量%の範囲のCaOと、0~4.00質量%の範囲のMgOと、0~6.00質量%の範囲のSrOと、0.10~5.00質量%の範囲のTiOと、合計で0~2.00質量%の範囲のF及びClとを含み、Pの含有率が0.20質量%未満であり、NaO、KO及びLiOの合計含有率が1.00質量%未満であり、前記CaO、MgO及びSrOの合計含有率(質量%)に対するTiOの含有率(質量%)の割合(TiO/(CaO+MgO+SrO))が0.66~4.00の範囲にあり、前記SiOの含有率(質量%)SI及び前記Alの含有率(質量%)Aが次式(1)を満たすことを特徴とする。
1.00 ≦ 1000×A/SI ≦ 4.65 ・・・(1)
【0014】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、SiOと、Bと、Alと、CaOと、MgOと、SrOと、TiOと、F及びClと、Pと、NaO、KO及びLiOとを上述の範囲で含み、CaO、MgO及びSrOの合計含有率(質量%)に対するTiOの含有率(質量%)の割合(TiO/(CaO+MgO+SrO))が0.66~4.00の範囲にあり、前記SiOの含有率(質量%)SI及び前記Alの含有率(質量%)Aが前記式(1)を満たすことにより、優れた耐水性と、高周波数領域における優れた誘電特性(低い誘電率及び低い誘電正接)とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体十分な作業温度範囲を備えることができる。
【0015】
なお、ここで、本発明のガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維が、低い誘電率を備えるとは、誘電率が、測定周波数10GHzにおいて4.2以下であることを意味し、低い誘電正接を備えるとは、誘電正接が、測定周波数10GHzにおいて0.0011以下であることを意味する。
【0016】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維が、優れた耐水性を示すとは、次の耐水性の評価方法により評価したときに、質量減少率が2.0%以下であり、水中においてもガラス繊維の成分がほぼ溶出しないことを意味する。
【0017】
耐水性の評価方法では、まず、溶融固化後のガラス組成が所定のガラス繊維用ガラス組成となるようにガラス原料を混合して得られたガラスバッチを、80mm径の白金ルツボに入れ、1550℃で4時間、1650℃で2時間溶融し、ルツボから取り出して得られる、均質なガラスカレットを容器底部に1つの円形ノズルチップを有する小型の筒型白金製ブッシング内に入れ、所定の温度に加熱して溶融したのち、ノズルチップから吐出した溶融ガラスを所定の速度でステンレス製コレットに巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却固化して、真円状の円形断面を備える、繊維径13μmのガラス繊維を得る。次に、得られたガラス繊維約1g(試験用ガラス繊維)をコレットから採取し、120℃で1時間乾燥させ、質量(操作前質量)を測定する。次いで、試験用ガラス繊維を100mlの蒸留水中に、80℃にて24時間静置した後、該試験用ガラス繊維をおよそ150μmの目穴の開いた金網に取り、蒸留水で洗浄したのち、120℃で1時間乾燥させ、質量(操作後質量)を測定する。そして、前記操作前質量及び操作後質量より、質量減少率(100×(1-(操作後質量/操作前質量)))を算出する。
【0018】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物が、十分な作業温度範囲を備えるとは、作業温度範囲が20℃以上であることを意味する。なお、作業温度範囲の上限は、特に限定されないが、例えば、500℃以下、好ましくは、450℃以下、より好ましくは400℃以下である。
【0019】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SiOの含有率(質量%)SI、前記Bの含有率(質量%)B、前記Alの含有率(質量%)A、前記CaOの含有率(質量%)C、前記MgOの含有率(質量%)M、前記SrOの含有率(質量%)SR、前記TiOの含有率(質量%)T、及び、前記FとClとの合計含有率(質量%)Fが好ましくは次式(2)を満たし、より好ましくは次式(3)を満たし、さらに好ましくは次式(4)を満たし、特に好ましくは次式(4)を満たす。
204.00 ≦ Si×B×T/[{C+(40.1/87.6)×SR-(40.1/24.3)×M-F}1/2×A] ≦ 422.40 ・・・(2)
244.00 ≦ Si×B×T/[{C+(40.1/87.6)×SR-(40.1/24.3)×M-F}1/2×A] ≦ 410.00 ・・・(3)
308.50 ≦ Si×B×T/[{C+(40.1/87.6)×SR-(40.1/24.3)×M-F}1/2×A] ≦ 400.50 ・・・(4)
339.60 ≦ Si×B×T/[{C+(40.1/87.6)×SR-(40.1/24.3)×M-F}1/2×A] ≦ 377.80 ・・・(5)
【0020】
また、本発明は、前記いずれかのガラス繊維用ガラス組成物からなることを特徴とする、ガラス繊維、該ガラス繊維を含むことを特徴とする、ガラス繊維織物、又は、該ガラス繊維を含むことを特徴とする、ガラス繊維強化樹脂組成物にもある。
【0021】
本発明のガラス繊維は、例えば、前述の本発明のガラス繊維用ガラス組成物を溶融し、得られた溶融物を1~8000個のノズルチップ又は孔を形成したノズルプレートを有するブッシングから吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却し、固化して繊維状に形成することで得ることができる。したがって、本発明のガラス繊維は、前述の本発明のガラス繊維用ガラス組成物と同一のガラス組成を備える。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0023】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、59.00~65.00質量%の範囲のSiOと、16.00~26.00質量%の範囲のBと、7.00~14.00質量%の範囲のAlと、0~5.00質量%の範囲のCaOと、0~4.00質量%の範囲のMgOと、0~6.00質量%の範囲のSrOと、0.10~5.00質量%の範囲のTiOと、合計で0~2.00質量%の範囲のF及びClとを含み、Pの含有率が0.20質量%未満であり、NaO、KO及びLiOの合計含有率が1.00質量%未満であり、前記CaO、MgO及びSrOの合計含有率(質量%)に対するTiOの含有率(質量%)の割合(TiO/(CaO+MgO+SrO))が0.66~4.00の範囲にあり、前記SiOの含有率(質量%)SI及び前記Alの含有率(質量%)Aが次式(1)を満たす。
1.00 ≦ 1000×A/SI ≦ 4.65 ・・・(1)
【0024】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、SiOと、Bと、Alと、CaOと、MgOと、SrOと、TiOと、F及びClと、Pと、NaO、KO及びLiOとを上述の範囲で含み、CaO、MgO及びSrOの合計含有率(質量%)に対するTiOの含有率(質量%)の割合(TiO/(CaO+MgO+SrO))が0.66~4.00の範囲にあり、前記SiOの含有率(質量%)SI及び前記Alの含有率(質量%)Aが前記式(1)を満たすことにより、優れた耐水性と、高周波数領域における優れた誘電特性(低い誘電率及び低い誘電正接)とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体十分な作業温度範囲を備えることができる。
【0025】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiOの含有率が59.00質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の機械的強度が大きく低下し、該ガラス繊維が有する、ガラス繊維強化樹脂組成物における補強材としての機能が損なわれる。また、該ガラス繊維が酸性環境下におかれた際に劣化し易くなる。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiOの含有率が65.00質量%超であると、高温での粘性が高くなるため、ガラス原材料を溶融させる温度が高くなり、製造コストの観点から、工業的なガラス繊維製造に適さなくなる。
【0026】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiOの含有率が、好ましくは、59.20~64.50質量%の範囲であり、より好ましくは、59.30~64.00質量%の範囲であり、さらに好ましくは、59.40~63.50質量%の範囲であり、特に好ましくは、59.50~63.00質量%の範囲であり、殊に好ましくは、59.60~62.80質量%の範囲であり、最も好ましくは、60.10~62.60質量%の範囲である。
【0027】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Bの含有率が16.00質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接を十分に低減することができない。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Bの含有率が26.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維に分相が発生し、ガラス繊維の化学的耐久性が低下するおそれがある。
【0028】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Bの含有率が、好ましくは、18.00~24.90質量%の範囲であり、より好ましくは、19.00~24.50質量%の範囲であり、さらに好ましくは、19.60~24.00質量%の範囲であり、特に好ましくは、20.10~23.50質量%の範囲であり、最も好ましくは、20.50~23.00質量%の範囲である。
【0029】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Alの含有率が7.00質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維に分相が発生し、ガラス繊維の化学的耐久性が低下するおそれがある。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Alの含有率が14.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接を十分に低減することができない。
【0030】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Alの含有率が、好ましくは、7.20~13.50質量%の範囲であり、より好ましくは、7.40~13.00質量%の範囲であり、さらに好ましくは、7.60~12.50質量%の範囲であり、特に好ましくは、7.80~12.00質量%の範囲であり、殊に好ましくは、8.00~11.80質量%の範囲であり、最も好ましくは、8.20~9.90質量%の範囲である。
【0031】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、CaOの含有率が5.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接を十分に低減することができない。
【0032】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、CaOの含有率が、好ましくは、0.60~4.80質量%の範囲であり、より好ましくは、1.10~4.60質量%の範囲であり、さらに好ましくは、1.60~4.40質量%の範囲であり、特に好ましくは、1.80~4.20質量%の範囲であり、殊に好ましくは、2.00~4.00質量%の範囲であり、最も好ましくは、2.10~3.60質量%の範囲である。
【0033】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、MgOの含有率が4.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物の溶融物に脈理が発生し、紡糸中のガラス繊維切断が生じ易くなるおそれがあり、また、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の耐水性が悪化するおそれがある。
【0034】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、MgOの含有率が、好ましくは、3.00質量%未満の範囲であり、より好ましくは、2.00質量%未満の範囲であり、さらに好ましくは、1.50質量%未満の範囲であり、特に好ましくは、1.00質量%未満の範囲であり、殊に好ましくは、0.95質量%未満の範囲であり、最も好ましくは0.50質量%未満の範囲である。
【0035】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SrOの含有率が6.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電特性が悪化し、目標の誘電特性を満たすことができない。
【0036】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SrOの含有率が、好ましくは、4.00質量%未満の範囲であり、より好ましくは、3.00質量%未満の範囲であり、さらに好ましくは、2.00質量%未満の範囲であり、特に好ましくは、1.00質量%未満の範囲であり、殊に好ましくは0.50質量%未満の範囲であり、最も好ましくは0.45質量%未満の範囲である。
【0037】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、TiOの含有率が0.10質量%未満であると、高温での粘性が高くなるため、ガラス原材料を溶融させる温度が高くなり、製造コストの観点から、工業的なガラス繊維製造に適さなくなる。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、TiOの含有率が5.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接を十分に低減することができず、また、ガラス繊維用ガラス組成物の液相温度が大幅に増加するため、安定したガラス繊維の製造を行うことができなくなる。
【0038】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、TiOの含有率が、好ましくは、0.60~4.90質量%の範囲であり、より好ましくは、1.60~4.70質量%の範囲であり、さらに好ましくは、2.10~4.60質量%の範囲であり、特に好ましくは、2.50~4.50質量%の範囲であり、最も好ましくは、2.80~4.40質量%の範囲である。
【0039】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、F及びClの含有率が合計で2.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の化学的耐久性が低下する。
【0040】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、F及びClの含有率が、合計で、好ましくは、0.10~1.80質量%の範囲であり、より好ましくは、0.30~1.60質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.50~1.50質量%の範囲である。
【0041】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Pの含有率が0.20質量%超であり、かつ、SiOの含有率が前述の範囲であると、Pを含有することが、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電特性の向上に寄与せず、一方、該ガラス繊維の分相の発生が抑えられなくなり、該ガラス繊維の化学的耐久性が悪化する。
【0042】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Pの含有率が、好ましくは、0.10質量%未満の範囲であり、より好ましくは、0.05質量%未満の範囲である。
【0043】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、NaO、KO及びLiOの合計の含有率が1.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電特性が大きく悪化し、目標の誘電特性を満たすことができない。
【0044】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、NaO、KO及びLiOの合計の含有率が、好ましくは、0.80質量%未満の範囲であり、より好ましくは、0.50質量%未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.20質量%未満の範囲であり、特に好ましくは、0.10質量%未満の範囲であり、最も好ましくは0.05質量%未満の範囲である。
【0045】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記CaO、MgO及びSrOの合計含有率(質量%)に対するTiOの含有率(質量%)の割合(TiO/(CaO+MgO+SrO))が0.66未満であると、アルカリ土類金属の酸化物を含むことに起因する誘電正接の悪化を十分に抑えることができないため、ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接を十分に低減できず、また、該ガラス繊維の耐水性が悪化するおそれがある。4.00超であると、ガラス中の脈理の発生が抑えられず、また、液相温度が大きく増加し安定したガラス繊維の製造を行うことができない。
【0046】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記CaO、MgO及びSrOの合計含有率(質量%)に対するTiOの含有率(質量%)の割合(TiO/(CaO+MgO+SrO))が、好ましくは、0.67~2.15の範囲であり、より好ましくは、0.85~2.00の範囲であり、さらに好ましくは、0.90~1.80の範囲であり、特に好ましくは、0.95~1.70の範囲であり、最も好ましくは、0.98~1.60の範囲である。
【0047】
ここで、前記CaO、MgO及びSrOの合計含有率(質量%)に対するTiOの含有率(質量%)の割合は、中間酸化物であるTiOを含むことによる、ガラス繊維用ガラス組成物の液相温度の上昇に伴うガラス繊維製造安定性の悪化及び誘電正接の低減と、網目修飾酸化物であるアルカリ土類金属の酸化物を含むことによる、ガラス繊維用ガラス組成物の液相温度の低下に伴うガラス繊維製造安定性の向上及び誘電正接・耐水性の悪化との均衡を表現しているものと推定される。
【0048】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記式(1)の値が1.00未満であると、ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の耐水性の悪化、並びに、ガラス繊維用ガラス組成物の高温での粘性が高くなることに伴うガラス繊維製造コスト増加及びガラス繊維製造過程における毛羽発生数増加によるガラス繊維製造性の悪化を抑えられない。一方、前記式(1)の値が、4.65超であると、ガラス繊維用ガラス組成物の液相温度の増加に伴うガラス繊維製造安定性の悪化、及び、ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電特性の悪化が抑えられない。
【0049】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記式(1)の値が、好ましくは、1.50~4.50の範囲であり、より好ましくは、1.80~4.20の範囲であり、さらに好ましくは、2.00~4.00の範囲であり、特に好ましくは、2.05~3.80の範囲であり、殊に好ましくは、2.10~3.60の範囲であり、最も好ましくは、2.11~3.35の範囲である。
【0050】
ここで、前記式(1)において、Alの含有率Aが高い程、ガラス繊維用ガラス組成物の高温での粘性が低減され、ガラス繊維製造コストの低減につながる傾向がある。しかし、この値が高くなりすぎると、ムライト系結晶の発生が促進され、ガラス繊維用ガラス組成物の液相温度の上昇に伴うガラス繊維製造安定性の悪化、及び、ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電特性の悪化が抑えられなくなる傾向がある。一方、この値が低い程、ガラス繊維用ガラス組成物の液相温度の低下に伴うガラス繊維製造安定性の向上、及び、ガラス繊維用ガラス組成物の誘電特性の向上が得られる傾向がある。しかし、この値が低すぎると、ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の耐水性が悪化し、また、該ガラス繊維の強度の低下に伴って、ガラス繊維製造の障害となる毛羽が発生し易くなる傾向がある。また、SiOの含有率SIが高い程、ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電特性が向上するが、ガラス繊維用ガラス組成物の高温での粘性が上昇し、ガラス繊維製造コストが増加する傾向がある。一方、この値が低い程、ガラス繊維用ガラス組成物の高温での粘性が低減され、ガラス繊維製造コストの低減につながるが、ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電特性が悪化する傾向がある。したがって、前記式(1)は、ガラス繊維用ガラス組成物の総合的なガラス繊維製造性と、ガラス繊維用ガラス組成物から得られる誘電特性との均衡を表現しているものと推定される。なお、前記毛羽が発生し易くなる傾向は、ガラス繊維をガラス繊維製品(例えば、ガラス繊維織物、チョップドストランド、ロービング)に加工する際にも障害となる。
【0051】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SiOの含有率(質量%)SI、前記Bの含有率(質量%)B、前記Alの含有率(質量%)A、前記CaOの含有率(質量%)C、前記MgOの含有率(質量%)M、前記SrOの含有率(質量%)SR、前記TiOの含有率(質量%)T、及び、前記FとClとの合計含有率(質量%)Fが好ましくは次式(2)を満たし、より好ましくは次式(3)を満たし、さらに好ましくは次式(4)を満たし、特に好ましくは次式(5)を満たす。
204.00 ≦ SI×B×T/[{C+(40.1/87.6)×SR-(40.1/24.3)×M-F}1/2×A] ≦ 422.40 ・・・(2)
244.00 ≦ SI×B×T/[{C+(40.1/87.6)×SR-(40.1/24.3)×M-F}1/2×A] ≦ 410.00 ・・・(3)
308.50 ≦ SI×B×T/[{C+(40.1/87.6)×SR-(40.1/24.3)×M-F}1/2×A] ≦ 400.50 ・・・(4)
339.60 ≦ SI×B×T/[{C+(40.1/87.6)×SR-(40.1/24.3)×M-F}1/2×A] ≦ 377.80 ・・・(5)
【0052】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SI、B、A、C、M、SR、T、及び、Fが式(2)を満たすことにより、優れた耐水性と、高周波数領域における優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体十分な作業温度範囲を備えることができる。
【0053】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SI、B、A、C、M、SR、T、及び、Fが式(3)を満たすことにより、優れた耐水性と、高周波数領域におけるより優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体十分な作業温度範囲を備えることができる。ここで、前記ガラス繊維がより優れた誘電特性を備えるとは、測定周波数10GHzにおける誘電率が4.1以下であり、誘電正接が0.0010以下であることを意味する。
【0054】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SI、B、A、C、M、SR、T、及び、Fが式(4)を満たすことにより、優れた耐水性と、高周波数領域におけるより優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体120℃以上の優れた作業温度範囲を備えることができる。
【0055】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記SI、B、A、C、M、SR、T、及び、Fが式(5)を満たすことにより、優れた耐水性と、高周波数領域における極めて優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体200℃以上のより優れた作業温度範囲を備えることができる。ここで、前記ガラス繊維が極めて優れた誘電特性を備えるとは、測定周波数10GHzにおける誘電率が4.0以下であり、誘電正接が0.0010未満であることを意味する。
【0056】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、CaO及びSrOの合計含有率(質量%)に対するMgOの含有率(質量%)の割合(MgO/(CaO+SrO))が、例えば、0.60未満の範囲であることにより、MgOが促進するガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の分相の発生を抑制しながら、ガラス繊維用ガラス組成物の高温での粘性を低下させ、また、ガラス繊維用ガラス組成物の液相温度を低下させることで、ガラス繊維用ガラス組成物の総合的なガラス繊維製造性の向上に寄与することができる。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、CaO及びSrOの合計含有率(質量%)に対するMgOの含有率(質量%)の割合(MgO/(CaO+SrO))が、好ましくは、0.40未満の範囲であり、より好ましくは、0.30未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.20未満の範囲であり、特に好ましくは、0.10未満の範囲であり、最も好ましくは、0.05未満の範囲である。
【0057】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、Alの含有率(質量%)に対するTiOの含有率(質量%)の割合(TiO/Al)が、例えば、0.24~0.72の範囲であることにより、TiOが促進する結晶発生に伴う、ガラス繊維用ガラス組成物の液相温度の上昇を抑制しながら、TiOを含有することによる誘電正接の低減効果と、Alを含有することによる耐水性の向上効果を両立させることができる。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、Alの含有率(質量%)に対するTiOの含有率(質量%)の割合(TiO/Al)が、好ましくは、0.28~0.56の範囲であり、より好ましくは、0.29~0.50の範囲であり、さらに好ましくは、0.30~0.45の範囲であり、最も好ましくは、0.35~0.44の範囲である。
【0058】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記B、A、C、M、SR、T、F及び前記Pの含有率(質量%)Pが次式(6)を満たすことにより、優れた耐水性と、高周波数領域における優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体十分な作業温度範囲を備えることができる。
1.08 ≦ {2×(0.72×C+M+0.39×SR)-1.06×F}×(B/1.2+A/1.7+P/1.3+T/4.7)/(1.37×B/1.2+1.77×A/1.7+1.63×P/1.3+1.96×T/4.7) ≦ 2.34 ・・・(6)
【0059】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記B、A、C、M、SR、T、F及びPが、好ましくは、次式(7)を満たし、さらに好ましくは、次式(8)を満たし、特に好ましくは次式(9)を満たす。
1.47 ≦ {2×(0.72×C+M+0.39×SR)-1.06×F}×(B/1.2+A/1.7+P/1.3+T/4.7)/(1.37×B/1.2+1.77×A/1.7+1.63×P/1.3+1.96×T/4.7) ≦ 2.33 ・・・(7)
1.47 ≦ {2×(0.72×C+M+0.39×SR)-1.06×F}×(B/1.2+A/1.7+P/1.3+T/4.7)/(1.37×B/1.2+1.77×A/1.7+1.63×P/1.3+1.96×T/4.7) ≦ 2.32 ・・・(8)
2.14 ≦ {2×(0.72×C+M+0.39×SR)-1.06×F}×(B/1.2+A/1.7+P/1.3+T/4.7)/(1.37×B/1.2+1.77×A/1.7+1.63×P/1.3+1.96×T/4.7) ≦ 2.32 ・・・(9)
【0060】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記B、A、C、M、SR、T、F及びPが前記式(7)を満たすことにより、優れた耐水性と、高周波数領域におけるより優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体十分な作業温度範囲を備えることができる。
【0061】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記B、A、C、M、SR、T、F及びPが前記式(8)を満たすことにより、優れた耐水性と、高周波数領域におけるより優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体120℃以上の優れた作業温度範囲を備えることができる。
【0062】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記B、A、C、M、SR、T、F及びPが前記式(9)を満たすことにより、優れた耐水性と、高周波数領域における極めて優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体200℃以上のより優れた作業温度範囲を備えることができる。
【0063】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0~3.00質量%の範囲でZnOを含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がZnOを含む場合、ZnOの含有率が3.00質量%超であると、失透物が発生し易くなり、安定したガラス繊維製造ができなくなる。
【0064】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がZnOを含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するZnOの含有率は、好ましくは、2.50質量%以下であり、より好ましくは、1.50質量%以下であり、さらに好ましくは0.50質量%以下である。
【0065】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0~3.00質量%の範囲でMnOを含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がMnOを含む場合、MnOの含有率が3.00質量%超であると、誘電特性が悪化し、所望の誘電特性を得ることができない。
【0066】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がMnOを含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するMnOの含有率は、好ましくは2.50質量%以下であり、より好ましくは1.50質量%以下であり、さらに好ましくは0.50質量%以下である。
【0067】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0質量%以上1.00質量%以下の範囲でFeを含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がFeを含む場合、ガラス繊維中に含まれる気泡を抑制するという観点からは、Feの含有率を0.10質量%以上0.60質量%以下の範囲とすることが有効である。
【0068】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0質量%以上1.00質量%以下の範囲でSnOを含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がSnOを含む場合、ガラス繊維中に含まれる気泡を抑制するという観点からは、SnOの含有率を0.10質量%以上0.60質量%以下の範囲とすることが有効である。
【0069】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、ZrOの含有率が、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0.50質量%未満であれば、ZrOを含んでもよい。ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、ZrOの含有率が0.50質量%以上であると、失透物が発生し易くなり、安定したガラス繊維製造ができなくなる。
【0070】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がZrOを含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、ZrOの含有率は、好ましくは0.45質量%未満の範囲であり、より好ましくは、0.40質量%未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.20質量%未満の範囲であり、特に好ましくは、0.10質量%未満の範囲であり、最も好ましくは、0.05質量%未満の範囲である。
【0071】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、Crの含有率が、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0.05質量%未満であれば、Crを含んでもよい。ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Crの含有率が0.05質量%以上であると、失透物が発生し易くなり、安定したガラス繊維製造ができなくなる。
【0072】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、原材料に起因する不純物として、Ba、Co、Ni、Cu、Mo、W、Ce、Y、La、Bi、Gd、Pr、Sc、又は、Ybの酸化物を合計で、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、1.00質量%未満含んでもよい。特に本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物が、不純物として、BaO、CeO、Y、La、Bi、Gd、Pr、Sc、又はYbを含む場合、その含有率はそれぞれ独立に、好ましくは、0.40質量%未満であり、より好ましくは、0.20質量%未満であり、さらに好ましくは、0.10質量%未満であり、特に好ましくは、0.05質量%未満であり、最も好ましくは、0.01質量%未満である。
【0073】
なお、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前述した各成分の含有率は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて測定を行うことができ、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて測定を行うことができる。
【0074】
測定方法としては、初めにガラスバッチ(ガラス原料を混合して調合したもの)、又は、ガラス繊維(ガラス繊維表面に有機物が付着している場合、又は、ガラス繊維が有機物(樹脂)中に主に強化材として含まれている場合には、例えば、300~650℃のマッフル炉で0.5~24時間程度加熱する等して、有機物を除去してから用いる)を白金ルツボに入れ、電気炉中で、ガラスバッチにおいては1550℃で4時間、1650℃で2時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、ガラス繊維においては1550℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化してガラス粉末とする。軽元素であるLiについては得られたガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素は前記ガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。波長分散型蛍光X線分析装置を用いた定量分析は、具体的には、ファンダメンタルパラメーター法によって測定した結果をもとに検量線用試料を作製し、検量線法により分析することができる。なお、検量線用試料における各成分の含有量は、ICP発光分光分析装置によって定量分析することができる。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有率を求めることができる。
【0075】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融固化後において前述の組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融した後、冷却して固化することにより得ることができる。
【0076】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物から、本実施形態のガラス繊維を形成する際には、まず、前述のように調合したガラス原料をガラス溶融炉に供給し、前記1000ポイズ温度以上の温度域、具体的には1400℃~1700℃の範囲の温度で溶融する。そして、前記温度に溶融された溶融ガラスを、所定の温度に制御された、1~8000個のノズルチップ又は孔から吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却し、固化することによりガラス繊維が形成される。
【0077】
ここで、1個のノズルチップ又は孔から吐出され、冷却・固化されたガラス単繊維(ガラスフィラメント)は、通常、真円形の断面形状を有し、3.0~35.0μmの直径を有する。低い誘電特性を求められる用途には、前記ガラスフィラメントは、3.0~6.0μmの直径を有することが好ましく、3.0~4.5μmの範囲の直径を有することがより好ましい。一方、前記ノズルチップが、非円形形状を有し、溶融ガラスを急冷する突起部や切欠部を有する場合には、温度条件を制御することで、非円形(例えば、楕円形、長円形)の断面形状を有するガラスフィラメントが得られる。ガラスフィラメントが楕円形又は長円形の断面形状を有する場合、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)は、例えば、2.0~10.0の範囲にあり、断面積を真円に換算したときの繊維径(換算繊維径)が3.0~35.0μmの範囲にある。
【0078】
本実施形態のガラス繊維は、通常、前記ガラスフィラメントが、10~8000本集束されたガラス繊維束(ガラスストランド)の形状をとり、1~10000tex(g/km)の範囲の重量を備える。なお、複数のノズルチップ又は孔から吐出されたガラスフィラメントは、1本のガラス繊維束に集束されることも、複数本のガラス繊維束に集束されることもある。
【0079】
本実施形態のガラス繊維は、前記ガラスストランドにさらに種々の加工をして得られる、ヤーン、織物、編物、不織布(チョップドストランドマットや多軸不織布を含む)、チョップドストランド、ロービング、パウダー等の種々の形態を取り得る。
【0080】
本実施形態のガラス繊維は、ガラスフィラメントの集束性の向上、ガラス繊維と樹脂との接着性の向上、ガラス繊維と樹脂又は無機材料中との混合物中におけるガラス繊維の均一分散性の向上等を目的として、その表面を有機物で被覆されてもよい。このような有機物としては、デンプン、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、変性ポリプロピレン(特にカルボン酸変性ポリプロピレン)、(ポリ)カルボン酸(特にマレイン酸)と不飽和単量体との共重合体等を挙げることができる。また、本実施形態のガラス繊維は、これらの樹脂に加えて、シランカップリング剤、潤滑剤、界面活性剤等を含む樹脂組成物で被覆されていてもよい。また、本実施形態のガラス繊維は、上記の樹脂を含まず、シランカップリング剤、界面活性剤等を含む処理剤組成物で被覆されていてもよい。このような樹脂組成物又は処理剤組成物は、樹脂組成物又は処理剤組成物に被覆されていない状態の本実施形態のガラス繊維の質量を基準として、0.03~2.0質量%の割合で、ガラス繊維を被覆する。なお、有機物によるガラス繊維の被覆は、例えば、ガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて樹脂溶液又は樹脂組成物溶液をガラス繊維に付与し、その後、樹脂溶液又は樹脂組成物溶液の付与されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。また、織物の形態をとる本実施形態のガラス繊維を、処理剤組成物溶液中に浸漬し、その後処理剤組成物の付与されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。
【0081】
ここで、シランカップリング剤としては、アミノシラン、クロルシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、(メタ)アクリルシランを挙げることができる。
【0082】
アミノシランとしては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0083】
クロルシランとしては、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0084】
エポキシシランとしては、(β-(3,4 -エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0085】
メルカプトシランといては、γ-メルカプトトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0086】
ビニルシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0087】
(メタ)アクリルシランとしては、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0088】
本実施形態では、前記シランカップリング剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0089】
潤滑剤としては、変性シリコーンオイル、動物油及びこの水素添加物、植物油及びこの水素添加物、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物系ワックス、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールの縮合物、ポリエチレンイミン、ポリアルキルポリアミンアルキルアマイド誘導体、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。
【0090】
動物油としては、牛脂等を挙げることができる。
【0091】
植物油としては、大豆油、ヤシ油、ナタネ油、パーム油、ひまし油等を挙げることができる。
【0092】
動物性ワックスとしては、蜜蝋、ラノリン等を挙げることができる。
【0093】
植物性ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス等を挙げることができる。
【0094】
鉱物系ワックスとしては、パラフィンワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
【0095】
高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールの縮合物としては、ラウリルステアレート等のステアリン酸エステル等を挙げることができる。
【0096】
脂肪酸アミドとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸との脱水縮合物等を挙げることができる。
【0097】
第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0098】
本実施形態では、前記潤滑剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0099】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。本実施形態では、前記界面活性剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0100】
ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物を挙げることができる。
【0101】
カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン塩(酢酸塩や塩酸塩等)、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩を挙げることができる。
【0102】
アニオン系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩を挙げることができる。
【0103】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩などのアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルベタインなどのベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤を挙げることができる。
【0104】
本実施形態のガラス繊維織物は、前述の本実施形態のガラス繊維を含む。具体的には、本実施形態のガラス繊維織物は、前述の本実施形態のガラス繊維を、少なくとも経糸又は緯糸の一部として、それ自体公知の織機により製織することより得ることができる。前記織機としては、例えば、エアージェット又はウォータージェット等のジェット式織機、シャトル式織機、レピア織機等を挙げることができる。また、前記織機による織り方としては、例えば、平織、朱子織、ななこ織、綾織等を挙げることができ、製造効率の観点から平織が好ましい。本実施形態のガラス繊維織物は、前述の本実施形態のガラス繊維を経糸及び緯糸として用いることが好ましい。
【0105】
本実施形態のガラス繊維織物において、前述の本実施形態のガラス繊維は、フィラメント径3.0~9.0μmのガラスフィラメントが、35~400本集束されて、0~1.0回/25mmの撚りを備え、0.9~69.0tex(g/km)の質量を備えることが好ましい。
【0106】
本実施形態のガラス繊維織物において、前述の本実施形態のガラス繊維を経糸又は緯糸として用いる場合、経糸織密度は、40~120本/25mmであることが好ましく、緯糸織密度は、40~120本/25mmであることが好ましい。
【0107】
本実施形態のガラス繊維織物は、製織された後で、脱油処理、表面処理、及び開繊処理を施されてもよい。
【0108】
脱油処理としては、ガラス繊維織物を雰囲気温度が350℃~400℃の加熱炉内に40~80時間配置し、ガラス繊維に付着している有機物を加熱分解する処理を挙げることができる。
【0109】
表面処理としては、前記シランカップリング剤、又は、前記シランカップリング剤及び前記界面活性剤を含む溶液中にガラス繊維織物を浸漬し、余分な水を絞液した後、80~180℃の温度範囲で、1~30分間、加熱乾燥させる処理を挙げることができる。
【0110】
開繊処理としては、例えば、ガラス繊維織物の経糸に30~200Nの張力をかけながら、水流圧力による開繊、液体を媒体とした高周波の振動による開繊、面圧を有する流体の圧力による開繊、ロールによる加圧での開繊等を行い、経糸及び緯糸の糸幅を拡幅する処理を挙げることができる。
【0111】
本実施形態のガラス繊維織物は、7.0~190.0g/mの範囲の単位面積あたりの質量を備えることが好ましく、8.0~200.0μmの範囲の厚さを備えることが好ましい。
【0112】
本実施形態のガラス繊維織物の経糸の糸幅は、110~600μmであることが好ましく、緯糸の糸幅は、110~600μmであることが好ましい。
【0113】
本実施形態のガラス繊維織物は、前記シランカップリング剤、又は、前記シランカップリング剤及び前記界面活性剤を含む表面処理層を備えてもよい。本実施形態のガラス繊維織物が該表面処理層を含む場合、該表面処理層は、表面処理層を含むガラス繊維織物全量に対して、例えば、0.03~1.50質量%の範囲の質量を備えることができる。
【0114】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、前述の本実施形態のガラス繊維を含む。具体的には、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、樹脂(熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂)、ガラス繊維、その他の添加剤を含むガラス繊維強化樹脂組成物において、ガラス繊維強化樹脂組成物全量に対して、10~90質量%のガラス繊維を含む。また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、ガラス繊維強化樹脂組成物全量に対して、90~10質量%の樹脂を含み、その他の添加剤を0~40質量%の範囲で含む。
【0115】
ここで、前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン/無水マレイン酸樹脂、スチレン/マレイミド樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン/スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸メチル(ASA)樹脂、スチレン/アクリロニトリル(SAN)樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、アイオノマー(IO)樹脂、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン樹脂、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、オレフィン/ビニルアルコール樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0116】
具体的に、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン等を挙げることができる。
【0117】
ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0118】
ポリスチレンとしては、アタクチック構造を有するアタクチックポリスチレンである汎用ポリスチレン(GPPS)、GPPSにゴム成分を加えた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、シンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレン等を挙げることができる。
【0119】
メタクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、脂肪酸ビニルエステルのうち一種を単独重合した重合体、又は二種以上を共重合した重合体等を挙げることができる。
【0120】
ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、または、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、または、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等を挙げることができる。
【0121】
ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリキシレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ナイロンPXD6)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロン5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ナイロン4I)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)等の成分のうち1種、もしくは2種以上の成分を組み合わせた共重合体やこれらの混合物等を挙げることができる。
【0122】
ポリアセタールとしては、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする単独重合体、および、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2~8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を含有する共重合体等を挙げることができる。
【0123】
ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、エチレングリコールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0124】
ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、1,4-ブタンジオールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0125】
ポリトリメチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、1,3-プロパンジオールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0126】
ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを溶融状態で反応させるエステル交換法により得られる重合体、又は、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法により得られる重合体を挙げることができる。
【0127】
ポリアリーレンサルファイドとしては、直鎖型ポリフェニレンサルファイド、重合の後に硬化反応を行うことで高分子量化した架橋型ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドサルフォン、ポリフェニレンサルファイドエーテル、ポリフェニレンサルファイドケトン等を挙げることができる。
【0128】
ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,3-ジメチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-クロロメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ〔2-(4’-メチルフェニル)-1,4-フェニレンエーテル〕、ポリ(2-ブロモ-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-ブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等を挙げることができる。
【0129】
変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/無水マレイン酸共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体とのポリマーアロイ、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖末端にアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基等の官能基を導入したもの、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖側鎖にアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基、メタクリル基等の官能基を導入したもの等を挙げることができる。
【0130】
ポリアリールエーテルケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)等を挙げることができる。
【0131】
液晶ポリマー(LCP)としては、サーモトロピック液晶ポリエステルである芳香族ヒドロキシカルボニル単位、芳香族ジヒドロキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、脂肪族ジヒドロキシ単位、脂肪族ジカルボニル単位等から選ばれる1種以上の構造単位からなる(共)重合体等を挙げることができる。
【0132】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、フッ化エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)、ポリビニルフロライド(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)等を挙げることができる。
【0133】
アイオノマー(IO)樹脂としては、オレフィンまたはスチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であって、カルボキシル基の一部を金属イオンで中和してなる重合体等を挙げることができる。
【0134】
オレフィン/ビニルアルコール樹脂としては、エチレン/ビニルアルコール共重合体、プロピレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物、プロピレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物等を挙げることができる。
【0135】
環状オレフィン樹脂としては、シクロヘキセン等の単環体、テトラシクロペンタジエン等の多環体、環状オレフィンモノマーの重合体等を挙げることができる。
【0136】
ポリ乳酸としては、L体の単独重合体であるポリL-乳酸、D体の単独重合体であるポリD-乳酸、またはその混合物であるステレオコンプレックス型ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0137】
セルロース樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等を挙げることができる。
【0138】
また、前記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ(EP)樹脂、メラミン(MF)樹脂、フェノール樹脂(PF)、ウレタン樹脂(PU)、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、ポリイミド(PI)、ユリア(UF)樹脂、シリコーン(SI)樹脂、フラン(FR)樹脂、ベンゾグアナミン(BR)樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン(BT)樹脂、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)等を挙げることができる。
【0139】
具体的に、不飽和ポリエステル樹脂としては、脂肪族不飽和ジカルボン酸と脂肪族ジオールをエステル化反応させることで得られる樹脂を挙げることができる。
【0140】
ビニルエステル樹脂としては、ビス系ビニルエステル樹脂、ノボラック系ビニルエステル樹脂を挙げることができる。
【0141】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂やフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0142】
メラミン樹脂としては、メラミン(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン)とホルムアルデヒドとの重縮合からなる重合体を挙げることができる。
【0143】
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、または、アリールアルキレン型フェノール樹脂等が挙げられ、この中の一種、もしくは、二種以上を組み合わせたものを挙げることができる。
【0144】
ユリア樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる樹脂を挙げることができる。
【0145】
前記熱可塑性樹脂又は前記熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0146】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、低い誘電特性を求められる用途に用いられることから、前記樹脂としては、エポキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)が好ましい。
【0147】
前記その他の添加剤としては、ガラス繊維以外の強化繊維(例えば、炭素繊維、金属繊維)、ガラス繊維以外の充填剤(例えば、ガラスパウダー、タルク、マイカ)、難燃剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、流動性改良剤、アンチブロッキング剤、潤滑剤、核剤、抗菌剤、顔料等を挙げることができる。
【0148】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、本実施形態の前記ガラス繊維織物に、それ自体公知の方法により、前記樹脂を含浸させ、半硬化させたプリプレグであってもよい。
【0149】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、中空成形法、発泡成形法(超臨界流体も含む)、インサート成形法、インモールドコーティング成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法、スタンピング成形法、インフュージョン法、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、レジントランスファーモールディング法、シートモールディングコンパウンド法、バルクモールディングコンパウンド法、プルトルージョン法、フィラメントワインディング法等の公知の成形法で成形して種々のガラス繊維強化樹脂成形品を得ることができる。また、前記プリプレグを硬化させることによっても、ガラス繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
【0150】
このような成形品の用途としては、例えば、電子機器筐体、電子部品、車両外装部材、車両内装部材、車両エンジン周り部材、マフラー関連部材、高圧タンク等を挙げることができる。
【0151】
電子部品としては、プリント配線基板を挙げることができる。
【0152】
車両外装部材としては、バンパー、フェンダー、ボンネット、エアダム、ホイールカバー等を挙げることができる。
【0153】
車両内装部材としては、ドアトリム、天井材等を挙げることができる。
【0154】
車両エンジン周り部材としては、オイルパン、エンジンカバー、インテークマニホールド、エキゾーストマニホールド等を挙げることができる。
【0155】
マフラー関連部材としては、消音部材等を挙げることができる。
【0156】
なお、本実施形態のガラス繊維は、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物以外にも、石膏やセメントといった無機材料の補強材としても好適に用いることができる。例えば、石膏(とりわけ、厚さ4~60mmの石膏ボード)の補強材として用いられる場合、前記の範囲のガラス組成を備えるガラス繊維は、石膏の全質量に対して、0.1~4.0質量%の範囲で含まれることができる。
【0157】
次に本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例
【0158】
まず、溶融固化後のガラス組成が、表1に示された実施例1~4及び、表2、3に示された比較例1~10の各組成となるように、ガラス原料を混合し、ガラスバッチを得た。
【0159】
次に、実施例1~4又は比較例1~10のガラス繊維用ガラス組成に対応するガラスバッチを、80mm径の白金ルツボに入れ、1550℃で4時間、1650℃で2時間溶融し、ルツボから取り出し、均質なガラスバルクやガラスカレットを得た。次いで、得られたガラスバルク及びガラスカレットを、620℃、8時間で焼き鈍し、試験片を得た。得られた試験片について、以下に示す方法で、誘電率及び誘電正接を評価した。また、試験片作成過程で得られたガラスカレットを用いて、以下に示す方法で、耐水性の評価を行った。また、試験片作成過程で得られたガラスカレットを用いて、以下に示す方法で、作業温度範囲を算出した。実施例1~4の結果を表1に、比較例1~5の結果を表2に、比較例6~10の結果を表3に、それぞれ示す。
【0160】
〔耐水性の評価方法〕
前述のようにして得られたガラスカレットを、容器底部に1つの円形ノズルチップを有する小型の筒型白金製ブッシング内に入れ、所定の温度に加熱して溶融したのち、ノズルチップから吐出した溶融ガラスを所定の速度でステンレス製コレットに巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却固化して、真円状の円形断面を備え、繊維径13μmのガラス繊維を得た。得られたガラス繊維約1g(試験用ガラス繊維)をコレットから採取し、120℃で1時間乾燥させ、質量(操作前質量)を測定した。次いで、試験用ガラス繊維を100mlの蒸留水中に、80℃にて24時間静置した。その後、試験用ガラス繊維をおよそ150μmの目穴の開いた金網にとり、蒸留水で洗浄したのち、120℃で1時間乾燥させ、質量(操作後質量)を測定した。
【0161】
前記操作前質量及び操作後質量より、質量減少率(100×(1-(操作後質量/操作前質量)))を算出した。質量減少率が2.0%以下であり、水中においてもガラス繊維の成分がほぼ溶出しないものをOKとし、質量減少率が2.0%超であり、水中においてガラス繊維の成分が大きく溶出するものをNGとした。
【0162】
〔誘電率及び誘電正接の測定方法〕
試験片を研磨し、80mm×3mm(厚さ1mm)の研磨試験片を作成した。次いで、得られた研磨試験片を、絶乾後、23℃、湿度60%の室内に24時間保管した。次いで、得られた研磨試験片につき、JIS C 2565:1992に準拠し、株式会社エーイーティー製空洞共振器法誘電率測定装置ADMS01Oc1(商品名)を用いて、10GHzにおける誘電率(誘電定数Dk)及び誘電正接(散逸率Df)を測定した。
【0163】
〔作業温度範囲の算出方法〕
まず、回転粘度計付高温電気炉(芝浦システム株式会社製)を用い、白金ルツボ中でガラスカレットを溶融し、回転式ブルックフィールド型粘度計を用いて溶融温度を変化させながら連続的に溶融ガラスの粘度を測定し、回転粘度が1000ポイズのときに対応する温度を測定することにより、1000ポイズ温度を求めた。
【0164】
次いで、ガラスカレットを粉砕し、粒径0.5~1.5mmのガラス粒子40gを180×20×15mmの白金製ボートに入れ、1000~1400℃の温度勾配を設けた管状電気炉で8時間以上加熱した後、該管状電気炉から取り出し、偏光顕微鏡で観察して、ガラス由来の結晶(失透)が析出し始めた位置を特定した。管状電気炉内の温度をB熱電対を用いて実測し、前記結晶が析出し始めた位置の温度を求めて液相温度とした。
【0165】
次いで、前記1000ポイズ温度と前記液相温度との差により、作業温度範囲を算出した。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】

【0169】
表1から、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、59.00~65.00質量%の範囲のSiOと、16.00~26.00質量%の範囲のBと、7.00~14.00質量%の範囲のAlと、0~5.00質量%の範囲のCaOと、0~4.00質量%の範囲のMgOと、0~6.00質量%の範囲のSrOと、0.10~5.00質量%の範囲のTiOと、合計で0~2.00質量%の範囲のF及びClとを含み、Pの含有率が0.20質量%未満であり、NaO、KO及びLiOの合計含有率が1.00質量%未満であり、前記CaO、MgO及びSrOの合計含有率(質量%)に対するTiOの含有率(質量%)の割合(TiO/(CaO+MgO+SrO))が0.66~4.00の範囲にあり、前記SiOの含有率(質量%)SI及び前記Alの含有率(質量%)Aが前記式(1)を満たす実施例1~4のガラス繊維用ガラス組成物によれば、優れた耐水性と、測定周波数10GHzの高周波数領域における誘電率が4.2以下、誘電正接が0.0011以下という優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体26℃以上の十分な作業温度範囲を備えることができることが明らかである。
【0170】
一方、表2から、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiOの含有率が59.00質量%未満、Bの含有率が26.00質量%超、Alの含有率が7.00質量%未満、TiOの含有率が0.10質量%未満である、比較例1のガラス繊維用ガラス組成物によれば、十分な耐水性を備えるガラス繊維を得ることができないことが明らかである。
【0171】
また、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiOの含有率が59.00質量%未満、Bの含有率が26.00質量%超、Alの含有率が7.00質量%未満である、比較例2のガラス繊維用ガラス組成物においても、十分な耐水性を備えるガラス繊維を得ることができないことが明らかである。
【0172】
また、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiOの含有率が59.00質量%未満、Bの含有率が26.00質量%超、Alの含有率が7.00質量%未満である、比較例3のガラス繊維用ガラス組成物においても、十分な耐水性を備えるガラス繊維を得ることができないことが明らかである。
【0173】
また、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiOの含有率が59.00質量%未満、Bの含有率が26.00質量%超、Alの含有率が7.00質量%未満であり、TiOの含有率が5.00質量%超である、比較例4のガラス繊維用ガラス組成物においては、十分な耐水性を備えるガラス繊維を得ることができない上に、結晶化が発生することが明らかである。
【0174】
また、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiOの含有率が59.00質量%未満、Bの含有率が26.00質量%超である、比較例5のガラス繊維用ガラス組成物においても、十分な耐水性を備えるガラス繊維を得ることができないことが明らかである。
【0175】
また、表3から、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiOの含有率が59.00質量%未満、Alの含有率が14.00質量%超であり、前記式(1)の値が4.65超である、比較例6のガラス繊維用ガラス組成物においては、十分な耐水性を備えるガラス繊維を得ることができない上に、分相が発生することが明らかである。
【0176】
また、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiOの含有率が59.00質量%未満、Bの含有率が26.00質量%超である、比較例7のガラス繊維用ガラス組成物においても、十分な耐水性を備えるガラス繊維を得ることができないことが明らかである。
【0177】
また、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Alの含有率が14.00質量%超であり比較例8のガラス繊維用ガラス組成物によれば、十分な作業温度範囲を備えず、測定周波数10GHzの高周波数領域において十分に低い誘電正接を備えるガラス繊維を得ることができないことが明らかである。
【0178】
また、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Pの含有率が0.20質量%超である比較例9のガラス繊維用ガラス組成物によれば、測定周波数10GHzの高周波数領域において十分に低い誘電率及び誘電正接を備えるガラス繊維を得ることができないことが明らかである。
【0179】
また、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するCaO、MgO及びSrOの合計含有率(質量%)に対するTiOの含有率(質量%)の割合(TiO/(CaO+MgO+SrO))が0.66未満である比較例10のガラス繊維用ガラス組成物によれば、十分な耐水性、及び、測定周波数10GHzの高周波数領域において十分に低い誘電正接を備えるガラス繊維を得ることができないことが明らかである。
【要約】
優れた耐水性及び誘電特性を備えるガラス繊維を得ることができ、十分な作業温度範囲を備えるガラス組成物を提供する。59.00~65.00質量%のSiO、16.00~26.00質量%のB、7.00~14.00質量%のAl、0~5.00質量%のCaO、0~4.00質量%のMgO、0~6.00質量%のSrO、0.10~5.00質量%のTiO、合計0~2.00質量%のF及びCl、0.20質量%未満のP、合計1.00質量%未満NaO、KO及びLiOを含み、CaO、MgO及びSrOの合計含有率に対するTiOの含有率の割合(TiO/(CaO+MgO+SrO))が0.66~4.00で、SiOの含有率SI及びAlの含有率Aが次式(1)を満たす。
1.00 ≦ 1000×A/SI ≦ 4.65 ・・・(1)