(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】小型水力発電用水車装置
(51)【国際特許分類】
F03B 13/06 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
F03B13/06
(21)【出願番号】P 2021047921
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2020034224
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507092344
【氏名又は名称】大原 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】大原 幸雄
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-183825(JP,A)
【文献】特開2005-113893(JP,A)
【文献】登録実用新案第3143189(JP,U)
【文献】国際公開第2010/143709(WO,A1)
【文献】特開2006-118405(JP,A)
【文献】特公昭40-016185(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/00-13/26;17/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成され一端側に形成された流入口を開口面が下側を向くように傾斜させて形成した圧力管と、この圧力管の内部に回転自在に配設され、外方や内方に向けて突出した複数の羽根を形成するとともに、一端側にシャフトが取り付けられた円筒型水車を備え、前記円筒型水車を配設した前記圧力管の他端側を流入口よりも下流側に落差を設けて配置し、前記圧力管の流入口から流水を流入させて前記円筒型水車を回転駆動する水車装置であって、
前記円筒型水車は、
円筒の周面に複数の羽根が螺旋状になるように外方や内方に向けて
突出させて形成され、各前記羽根が軸方向で重複しないように前記羽根の間に間隔を開けたことを特徴とする小型水力発電用水車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は用水路等に設置して発電機を駆動する小型水力発電用水車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、用水路などの流れている水の中に入れた水車や、パイプを設置して落差を利用してパイプの下流部で発電していた。水量の不安定や小落差では発電するための水力が不十分なことから、十分な発電ができない。これは、用水路などの落差が小さいことから水車を駆動するための水圧や水量が少ないことに起因している。このような、落差が小さい場合にも発電効率を高めるためサイフォンの原理を応用した水力発電装置が提案されている。
【0003】
サイフォン式水力発電装置としては、例えば、実開昭59-184382号公報に示すように、水源の水を発電装置の水車にサイフォン管をもって導水するとともに、サイフォン管の最高部上面に、空気溜を連設することにより、水流に混入してサイフォン管に流入した空気を集めるようにし、その水位を探知して、自動的に真空ポンプにより排気することが示されている。このように、従来一般のサイフォン式水力発電装置は、サイフォン管の最高部に溜まる空気を真空ポンプ等によって排気し、サイフォン管内部の空気を排除することにより、サイフォン現象を機能させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイフォン式水力発電装置は、特許文献1に示されているようにサイフォン現象を機能させるために、サイフォン管の最高部の空気を排気し、サイフォン管内部を水で充満させるために、真空ポンプ等の排気装置を設置する必要があり、装置が複雑になり、しかも高額になる問題があった。
【0006】
また、サイフォン管内に導水された水流により回転する水車は、一般には、プロペラ型や螺旋形が多用されているが、構成が複雑なうえに、所定の内径の小さなサイフォン管では不向きであり、所定の効率が得られない問題がある。
【0007】
さらに、用水路などに設置した場合、浮遊ごみや小石がサイフォン管内に流入する事が多々あり、これらによって水車を制動させて、発電できなくなることもあった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、簡易な構成により、特別な装置を設ける事もなく、サイフォン現象を作用させることができ、高効率で水車を回転駆動することができる小型水力発電用水車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明による小型水力発電用水車装置は、円筒状に形成され一端側に形成された流入口を開口面が下側を向くように傾斜させて形成した圧力管と、この圧力管の内部に回転自在に配設され、外方や内方に向けて突出した複数の羽根を形成するとともに、一端側にシャフトが取り付けられた円筒型水車を備え、前記円筒型水車を配設した前記圧力管の他端側を流入口よりも下流側に落差を設けて配置し、前記圧力管の流入口から流水を流入させて前記円筒型水車を回転駆動する小型水力発電用水車であって、前記円筒型水車に形成される羽根は、円筒の周面に螺旋状に斜めに間隔をあけ外法や内方に向けて形成したことを要旨としている。
【0010】
また前記円筒型水車に形成される羽根は、円筒の周面を奇数で割り螺旋状に外方向に向け折曲して形成する。これと同じものを半回転させて羽根が相対するように形成して圧力管内の水流を効率良く発電機に回転運動を伝える円筒型水車としている。
【0011】
さらに、前記圧力管の流入口が形成された一端側には取水桝を設置することが望ましく、前記取水桝は、流水の上流側を頂部とした略五角形の箱型に形成され、上流側の頂部には離間させて二重にした壁が形成され、上流側の上端は流水面より高くし、下流側の壁は流水面より低くし、上流側と下流側の前記壁の上流側の底部を開口して水を流入させるようにしている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の小型水力発電用水車によれば、円筒状に形成された圧力管の一端側に形成された流入口を、開口面が下側に向かうように傾斜させて形成しているので、流入口が下方を向くことで水面は大気圧で押さえつけられ、水面下の水は浮力があるので下方に向けられた流入口は大気圧による押圧、水の浮力と圧力管内の重力加速度による流水の作用、さらには上流からの水圧により圧力管内の水流は圧力管内の空気を押し出すことでサイフォン現象が発生する。サイフォン現象が発生する条件は圧力管の流入口は水面下にあること、下流側の流出口は大気中に解放されていることが条件である。この結果、圧力管内が真空状態になるので、用水路の流速より早くなり水力が増すので、圧力管内の内部に配設された円筒型水車をより高速で回転駆動する事ができ、円筒型水車に連結した発電機を効率よく駆動して発電することが可能となる。
【0013】
また、円筒型水車に形成される羽根は、円筒の周面に複数の羽根が螺旋状になるように
外方や内方に向けて突出させて形成し、複数の羽根が軸方向で重複しないように各羽根の
間に間隔を開けることにより、圧力管内の水力が、間隔を開けた各羽根の間を通り下流側の羽根に加えられるので、水力を落とさず円筒型水車3aに回転力を伝えることができる。この羽根は、構成が簡単で、複数の羽根を容易に製作できる。この複数の羽根によって水流を回転方向に駆動するので、円筒型水車を効率よく回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の小型水力発電用水車装置を示す側面図である
【
図2】
図1に示す小型水力発電用水車装置の平面図である。
【
図3】円筒型水車の羽根を螺旋状に形成した展開図ある。
【
図4】円筒型水車の外方に折曲した羽根を示す正面図である。
【
図5】円筒型水車の内方に折曲した羽根を示す正面図である。
【
図6】円筒型水車の外法に折曲した羽根示す正面図である
【
図7】圧力管によるサイフォン現象を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による小型水力発電用水車は、円筒状に形成され一端側に形成された流入口を開口面が下側を向くように傾斜させて形成した圧力管と、この圧力管の内部に回転自在に配設され、外方や内方に向けて突出した複数の羽根を形成するとともに、一端側にシャフトが取り付けられた円筒型水車を備え、前記円筒型水車を配設した前記圧力管の他端側を流入口よりも下流側に落差を設けて配置し、前記圧力管の流入口から流水を流入させて前記円筒型水車を回転駆動する小型水力発電用水車であって、前記円筒型水車に形成される羽根は、円筒の周面に螺旋状に斜めに間隔をあけ外方や内方に向けて形成している。
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施例について説明する。
図1、
図2は、本発明による小型水力発電用水車装置を示している。用水路などに圧力管1aを配管するための穴の開いた堰を設けて水を滞留させ水量を確保し水中に取水桝を設置する。取水桝に、配管する圧力管1aは、塩化ビニール製の長さが概ね、1,5mの円筒状のパイプで形成され、図示右方の一端側には、流入口2aが形成されている。この流入口2aは、図示のように、開口面の切り口が下側に向くように傾斜させて形成され、楕円型の流入口2aの開口面積mは、圧力管1aの内径よりも大きくなっている。また、圧力管の傾斜角は、圧力管1aの上面に対してパイプ内に空気が残らないように少し下流側を下げ、後述する円筒型水車3aに取り付けられるシャフト4が導出されるような角度に設定することが望ましい。一方、圧力管1aの他端側は圧力管1bに連結するためのジョイントを設けて圧力管1bに連結する、なお、圧力管1aの流入口2aと他端側との高低差を大きくする場合には、圧力管1bの他端側に追加の圧力管を連結することが望ましい。圧力管1bの傾斜角度は流入口2aより落差を設ければどのような角度でもよく、流出口2bが大気中に解放された状態であればよい。
【0017】
この圧力管1aの内部には、円筒型水車3aが配設されている。円筒型水車3aは圧力管1aと同様に塩化ビニール製の長さが概ね1mのパイプによって円筒状に形成されている。さらに、円筒型水車3aの羽根の外形は圧力管1aの内径よりも小さく、圧力管1a内で自由に回転できるように設定されている。
【0019】
円筒型水車3aの外面には、
図3、
図4に示すように、複数の羽根3bが外方に向けて突出するように形成されている。これらの羽根3bは、円筒型水車3aの周面に対して軸方向14と円周方向15に螺旋状に斜め外方に折曲させて形成されている。これらの羽根3bは、四角形に折曲形成している。この羽根3bの形状は、四角形の他、三角形、台形、或いは半円形に形成しても良い。さらに、羽根3bは、
図3に示すように、円筒の外周を5分割して軸方向14、円周方向15とした座標により水車の羽根の寸法を算出する。羽根▲1▼と、羽根▲5▼が軸方向で重複しないようにして▲2▼▲3▼▲4▼の間隔を開け算出する。算出した羽根の寸法を円筒に写し▲1▼▲5▼▲9▼▲13▼▲17▼を
外方に折曲する。算出したのを半回転させて羽根が相対するように螺旋状に羽根を
外方に少し湾曲させて折曲する。
羽根の間隔を開けることで圧力管内の水力を落とさず円筒型水車3aに回転力を伝えることができる。この円筒型水車3aの圧力管1aの流入口2.aには、
図1、
図2に示す発電機5に連結されるシャフト4が取り付けられている。そして、円筒型水車3aの回転によってシャフト4を介して発電機5を回転駆動することにより発電が行われる。
【0020】
図5は、円筒型水車の内方に向け折曲した羽根の正面図である。円筒の外周を13分割し、▲1▼▲5▼▲9▼▲13▼▲17▼を内方に折曲した羽根である。円筒型水車の中央部は圧力管内の重力加速度による流速を妨げないようにするために羽根を大きくしないことが重要である。
図6は、高落差、多水量の場合に適している円筒型水車の羽根である。円筒の外周を5分割し▲1▼▲3▼▲5▼▲7▼▲9▼を
外方に折曲した羽根である。
【0021】
一方、圧力管1aの流入口2aには取水桝6が設置され、この取水桝6を介して、流入口2aに水が流入される。取水桝6は、
図1図2及び
図8に示すように、例えば用水路などに上流側を頂部とした略5角形の箱型に形成され、上流側の頂部には離間させて壁6a,6bが二重に形成されている。そして上流側の壁6aの上端は、川の流水面8よりも高くし、下流側の壁6bは流水面8よりも低く形成され、上流側と下流側の壁6a、6bとの間の底部は開口され、解放されている、この取水桝6は、コンクリート、プラスチック。金属板、木製のいずれかでも良い。
【0022】
次に、本発明による小型水力発電用水車3aを回転させるための水の動きについて説明する。この小型発電用水車3aは、
図1、
図2、
図7、
図8に示すように、水を滞留させた用水路や川の中に浸漬した取水桝に設置する。この時、図示すように、水圧力管1aの流入口2.aよりも圧力管1bの流出口は下流側に落差を設けて設置する。
【0023】
用水路や川7から流れる水は、まず取水桝の外壁6aと内壁6bの間の底部から取水桝6に流入して、圧力管1aの流入口2aに流入する。このとき、圧力管1aは水面下7に浸漬しているので、流入口2.aは水面下になる。
図7に示すように水面8には大気圧9により押圧される一方、上流からの水圧17、また水には反力としての浮力10が生ずる。圧力管1aの流入口2.aは、図示のように、開口面の切り口が下側に向かうように傾斜させた開口面積mを有していることから、流入口2aの垂直方向の開口上部には、浮力10を生じた水が、上昇し内面上部に当たり浮力を阻止された水は上流からの水圧 17と水圧力管1bに流れる水の重力加速度G11が増した流水に吸引されて空気を押し出す。この現象は、前述した、従来一般に知られたサイフォン式水力発電装置におけるサイフォン管の最後部の空気瑠を排気することと同じであり、空気が排除された真空状態になりサイフォン現象が発生する。この結果、圧力管1aの流入口2aには、川7の水が勢いを増して流入する。
【0024】
圧力管1aに勢いを増して流入した水は、円筒型水車3aにも流入する。水は、円筒型水車3aの内部に流入する事により内菅の内側は重力加速度G11による流水に負荷が無いので水車の芯となり、外側は、外方に向けて螺旋状に軸方向に対して傾斜した4角状に突出するように形成された複数の羽根3bを水力で押圧する事によって回転駆動力を得ることができる。円筒型水車3aの回転によってシャフト4を介して発電機5に回転駆動される。
【0025】
圧力管1aの流入口2.aには、取水桝6を経由して水が流入する。取水桝6は、前述したように、略5角形の箱型に形成され、上流側の頂部には、離間させて外壁6a、内壁6bが二重に形成され、上流側の外壁6aの上端は、川の流水面8よりも高くし、下流側の内壁6bは流水面8よりも低く形成され、上流側と下流側に壁6a6bとの間の底部は開口され、両側も解放されている。用水路のような川7には、種種の浮遊物12及び小石13等の固形物が流れ、これらが円筒型水車3aに侵入した場合には、回転不能の事故が発生する。例えば、川7の水面8に浮遊物12が流れた場合には、取水桝6の上流側の外壁6aの上端を川7の流水面8よりも高くして頂部を矢のように形成されているので、浮遊物12は上流側の外壁6aの左右いずれかに振り分けられて下流方向に流れる。
【0026】
一方、小石等13の固形物は比重が大きく沈殿するため、頂部を矢のように形成された下流側の内壁6bの外面によって、
図2及び
図8に示すように、左右いずれかに振り分けられる。上流側の外壁6aと下流側の内壁6bとの間の両側が解放されているので、固形物13は壁の6bの外面に沿って押し流され、取水桝6の外方に流出する。このため、固形物13も圧力管1aに到達させないようにしている。
【0027】
このように、取水桝6は、上流側の外壁6aによって浮遊物12を排除し、下流側の内壁6bによって小石等の固形物13を排除するので、圧力管1aの流入口2aには川7の流水のみが流され、圧力管1aにサイフォン現象をさせる事ができ、この結果、円筒型水車3aを最大限に効率よく回転駆動させることが可能となる。
【0028】
以上、本発明の全容を具体的に説明したが、本発明は限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種種変形可能であることは言うまでもない。例えば、圧力管の流入口の傾斜角度は、図示の角度よりも鋭角または鈍角にしても良くまた、開口面は直線でなく、湾曲させても良い。さらに取水桝の形状も川の状態に応じて適宜に変更しても良い。
【符号の説明】
【0029】
1a 圧力管
1b 圧力管
2a 流入口
2b 流出口
3a 円筒型水車
3b 円筒型水車の羽根
4 シャフト
5 発電機
6 取水桝
6a 取水桝の外壁
6b 取水桝の内壁
7 川、用水路
7a 堰
8 流水面
9 大気圧
10 浮力
11 重力加速度による流水
12 浮遊物
13 小石
14 軸方
15 円周方向
16 水の流れ
17 上流からの水圧