(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ビス-アリールアンモニウム化合物を含むメッキ用平坦剤及びこれを用いた銅メッキ方法
(51)【国際特許分類】
C25D 3/38 20060101AFI20220830BHJP
C07C 217/40 20060101ALI20220830BHJP
C25D 7/12 20060101ALI20220830BHJP
H01L 21/288 20060101ALI20220830BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20220830BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20220830BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C25D3/38 101
C07C217/40
C25D7/12
H01L21/288 E
H01L21/88 J
(21)【出願番号】P 2018149674
(22)【出願日】2018-08-08
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0008874
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(73)【特許権者】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨン、ヒョ-ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ミョン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ユン-ジェ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェ-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、フェ-チョル
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ヨン-ラン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ジ-ウン
(72)【発明者】
【氏名】オ、ジョン-ファン
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-527325(JP,A)
【文献】特開2016-211065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00- 9/12
H01L 21/28-21/288
H01L 21/88-21/90
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるビス-アリールアンモニウム(bis-aryl ammonium)化合物を含むメッキ用平坦剤。
[化学式1]
【化1】
(式中、中央鎖のAは、CH
2、またはOであることができる。R
1は、
ベンジル(benzyl)、ナフチル(naphthyl)のアリール基(aryl group)の中から選択される置換体であり、これらは、互いに同一であってもよく、異なってもよい。R
2及びR
3は、C
1~C
7のアルキル基(alkyl group
)から選択される置換体であり、これらは、互いに同一であってもよく、異なってもよい。X
-は、アンモニウムの対イオンである。nは、1~6から選択される整数である。)
【請求項2】
前記R
2及びR
3のC
1~C
7アルキル基は、メチル(methyl)、エチル(ethyl)、プロピル(propyl)、イソプロピル(iso-propyl)、ブチル(butyl)、イソブチル(iso-butyl)、tert-ブチル(tert-butyl)、ペンチル(pentyl)、イソペンチル(iso-pentyl)、ヘキシル(hexyl)、及びイソヘキシル(iso-hexyl)から選択さ
れる、ビス-アリールアンモニウム(bis-aryl ammonium)化合物を含む請求項
1に記載のメッキ用平坦剤。
【請求項3】
前記X
-は、ヨウ化物イオン(I
-)、臭化物イオン(Br
-)、塩化物イオン(Cl
-)、フッ化物イオン(F
-)、ヨウ素酸イオン(IO
3
-)、塩素酸イオン(ClO
3
-)、過塩素酸イオン(ClO
4
-)、臭素酸イオン(BrO
3
-)、硝酸イオン(NO
3
-)、亜硝酸イオン(NO
2
-)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF
6
-)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF
4
-)、硫酸イオン(HSO
4
-)、及びメチル硫酸イオン(CH
3SO
4
-)から選択される、ビス-アリールアンモニウム(bis-aryl ammonium)化合物を含む請求項1
または2に記載のメッキ用平坦剤。
【請求項4】
下記化学式2または下記化学式3で表される、ビス-アリールアンモニウム(bis-aryl ammonium)化合物を含む請求項1から
3のいずれか1項に記載のメッキ用平坦剤。
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載のメッキ用平坦剤を含む、銅メッキ液。
【請求項6】
前記平坦剤の濃度は、0.1~1,000μMである請求項
5に記載の銅メッキ液。
【請求項7】
前記銅メッキ液は、
銅イオン化合物を含み、
前記銅メッキ液は、脱イオン水(deionized water)
、支持電解質、塩素イオン化合物、加速剤及び抑制剤から選択される1種以上をさらに含む請求項
5または
6に記載の銅メッキ液。
【請求項8】
前記銅イオン化合物は、硫酸銅(CuSO
4)、硝酸銅(Cu(NO
3)
2)、酢酸銅(Cu(CO
2CH
3)
2)、銅メタンスルホン酸塩(Cu(CH
3SO
3)
2)、炭酸銅(CuCO
3)、シアン化銅(CuCN)、塩化第二銅(CuCl
2)及び過塩素酸銅(Cu(ClO
4)
2)から選択される1種以上である請求項
7に記載の銅メッキ液。
【請求項9】
前記支持電解質は、硫酸(H
2SO
4)、クエン酸(HOC(COOH)(CH
2COOH)
2)、過塩素酸(HClO
4)、メタンスルホン酸(CH
3SO
3H)、硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)、硫酸カリウム(K
2SO
4)、及びホウ酸(H
3BO
3)から選択される1種以上である請求項
7に記載の銅メッキ液。
【請求項10】
前記塩素イオン化合物は、塩酸(HCl)、塩化ナトリウム(NaCl)及び塩化カリウム(KCl)から選択される1種以上である請求項
7から
9のいずれか1項に記載の銅メッキ液。
【請求項11】
前記加速剤は、ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド(bis(3-sulfopropyl)-disulfide、SPS)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸(3-mercapto-1-propanesulfonic acid;MPSA)、及び3-N、N-ジメチルアミノ-ジチオカルバモイル-1-プロパンスルホン酸(3-N、N-dimethylaminodithiocarbamoyl-1-propanesulfonic acid;DPS)から選択される1種以上である請求項
7から
10のいずれか1項に記載の銅メッキ液。
【請求項12】
前記抑制剤は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol;PEG)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol;PPG)、ポリエチレンイミン(polyethylene imine)及びこの共重合体から選択される1種以上である請求項
7から
11のいずれか1項に記載の銅メッキ液。
【請求項13】
ビアホールが形成されている基板を前処理する段階と、
前記前処理された基板を請求項
5から
12のいずれか1項に記載の銅メッキ液でメッキしてビアを形成する段階と、を含む銅メッキ方法。
【請求項14】
前記基板は、シリコン基板であり、前記ビアは、シリコン貫通電極(Through Silicon Via、TSV)である請求項
13に記載の銅メッキ方法。
【請求項15】
前記前処理する段階は、電極部位剥離段階及び洗浄段階のうちの1種以上を含む請求項
13または
14に記載の銅メッキ方法。
【請求項16】
前記ビアホールは、深さ80~150μmであり、上部直径100~200μmであり、下部直径80~150μmである請求項
13から
15のいずれか1項に記載の銅メッキ方法。
【請求項17】
前記ビアホールは、1以上の縦横比(aspectRatio)を有する請求項
13から
16のいずれか1項に記載の銅メッキ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス-アリールアンモニウム(bis-aryl ammonium)化 合物を含むメッキ用平坦剤(leveler)及びこれを用いた銅メッキ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器が小型化及び超薄型化されることにより、アルミニウムの代わりに銅が配線物質として用いられている。銅は、アルミニウムに比べて相対的に低い電気抵抗を有し、エレクトロマイグレーション(electromigration)現象による空隙(void)の発生及び断線不良に対して高い抵抗性を有する。
【0003】
従来用いたアルミニウムは、メッキの後に乾式エッチング(dry etching)によりパターンを形成するが、銅の場合は、乾式エッチングによりパターンを形成すると、銅-ハロゲン化合物(Cu-X Complex)が生成され、除去されない問題が発生する。このため、銅を配線物質として用いる場合は、ダマシン工程(damascene process)が適用される。ダマシン工程は、先ず層間絶縁膜を形成し、フォトリソグラフィ工程及びエッチング工程等を用いてビアホール(via hole)またはトレンチ(trench)を形成した後に、ここに銅を充填してパターンを形成する方式である。
【0004】
銅電解メッキは、半導体基板、PCB、マイクロプロセッサー(microprocessor)、メモリー(memory)等の多くの電子素子の金属配線を形成することに用いられている。特に、半導体やPCB工程においての電解メッキの最も基本的な目的は、基板に形成された様々なパターンを欠陥なく充填することにあり、このためには、電解質に含まれている多くの有機添加剤(organic additive)の役割が非常に重要となる。
【0005】
有機添加剤は、メッキ液に含まれている少量の有機化合物であって、これらの構成及び濃度は、電着された薄膜の特性を決める重要な因子である。これらは、電気化学的な特性に応じて抑制剤(suppressor)や加速剤(accelerator)として、薄膜特性に与える影響に応じて光沢剤(brightener)、運搬剤(carrier)、平坦剤(leveler)等として区分される。
【0006】
一方、平坦剤としては、分子量の大きい有機化合物や、高分子系列で窒素、酸素、硫黄等のヘテロ原子を有する作用基を有した物質が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、下記の化学式1で表されるビス-アリールアンモニウム(bis-aryl ammonium)化合物を含むメッキ用平坦剤を提供する。
[化学式1]
【化1】
(式中、中央鎖のAは、CH
2、またはOであることができる。R
1は、アリール基(aryl group)の中から選択される置換体であり、これらは、互いに同一であってもよく、異なってもよい。R
2及びR
3は、C
1~C
7のアルキル基(alkyl group)及びアリール基から選択される置換体であり、これらは、互いに同一であってもよく、異なってもよい。X
-は、アンモニウムの対イオンである。nは、1~6から選択される整数である。)
【0009】
上記R1のアリール基は、フェニル(Phenyl)、ベンジル(benzyl)、ナフチル(naphthyl)、及びアントラセニル(anthracenyl)から選択されることができる。
【0010】
上記R2及びR3のC1~C7のアルキル基は、メチル(methyl)、エチル(ethyl)、プロピル(propyl)、イソプロピル(iso-propyl)、ブチル(butyl)、イソブチル(iso-butyl)、tert-ブチル(tert-butyl)、ペンチル(pentyl)、イソペンチル(iso-pentyl)、ヘキシル(hexyl)、及びイソヘキシル(iso-hexyl)から選択されることができ、上記アリール基は、フェニル(phenyl)、ベンジル(benzyl)、ナフチル(naphthyl)、及びアントラセニル(anthracenyl)から選択されることができる。
【0011】
上記X-は、ヨウ化物イオン(I-)、臭化物イオン(Br-)、塩化物イオン(Cl-)、フッ化物イオン(F-)、ヨウ素酸イオン(IO3
-)、塩素酸イオン(ClO3
-)、過塩素酸イオン(ClO4
-)、臭素酸イオン(BrO3
-)、硝酸イオン(NO3
-)、亜硝酸イオン(NO2
-)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6
-)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4
-)、硫酸イオン(HSO4
-)、及びメチル硫酸イオン(CH3SO4
-)から選択されることができる。
【0012】
上記メッキ用平坦剤は、下記化学式2または下記化学式3で表されるビス-アリールアンモニウム(bis-aryl ammonium)化合物を含むことができる。
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
【0013】
本発明の他の側面によれば、本願に開示されているメッキ用平坦剤を含む銅メッキ液を提供する。
【0014】
上記平坦剤の濃度は、0.1~1,000μMであってもよい。
【0015】
上記銅メッキ液は、脱イオン水(deionized water)、銅イオン化合物、支持電解質、塩素イオン化合物、加速剤及び抑制剤から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0016】
上記銅イオン化合物は、0.1~1.5M濃度を有することができ、上記銅イオン化合物としては、硫酸銅(CuSO4)、硝酸銅(Cu(NO3)2)、酢酸銅(Cu(CO2CH3)2)、銅メタンスルホン酸塩(Cu(CH3SO3)2)、炭酸銅(CuCO3)、シアン化銅(CuCN)、塩化第二銅(CuCl2)及び過塩素酸銅(Cu(ClO4)2)から選択される1種以上を用いることができる。
【0017】
上記支持電解質は、0.1~1.2M濃度を有することができ、上記支持電解質としては、硫酸(H2SO4)、クエン酸(HOC(COOH)(CH2COOH)2)、過塩素酸(HClO4)、メタンスルホン酸(CH3SO3H)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸カリウム(K2SO4)及びホウ酸(H3BO3)から選択される1種以上を用いることができる。
【0018】
上記塩素イオン化合物は、0.1~3mM濃度を有することができ、上記塩素イオン化合物としては、塩酸(HCl)、塩化ナトリウム(NaCl)及び塩化カリウム(KCl)から選択される1種以上を用いることができる。
【0019】
上記加速剤は、1~200μMの濃度を有することができ、上記加速剤としては、ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド(bis(3-sulfopropyl)-disulfide;SPS)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸(3-mercapto-1-propanesulfonic acid;MPSA)、及び3-N、N-ジメチルアミノジチオカルバモイル-1-プロパンスルホン酸(3-N、N-dimethylaminodithiocarbamoyl-1-propanesulfonic acid;DPS)から選択される1種以上を用いることができる。
【0020】
上記抑制剤は、700~10,000Da(dalton)の分子量を有することができ、上記抑制剤としては、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol;PEG)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol;PPG)、ポリエチレンイミン(polyethylene imine)及びこの共重合体から選択される1種以上を用いることができる。
【0021】
本発明のまた他の側面によれば、ビアホール(via hole)が形成された基板を前処理する段階と、上記前処理された基板を本願に記載の銅メッキ液によりメッキしてビアを形成する段階と、を含む、銅メッキ方法が提供される。
【0022】
上記基板は、シリコン基板であり、上記ビアは、シリコン貫通電極(Through Silicon Via、TSV)であることができる。
【0023】
上記前処理する段階は、電極部位剥離段階及び洗浄段階のうちの1種以上を含むことができる。
【0024】
上記ビアホールは、深さ80~150μmであり、上部直径が100~200μmであり、下部直径が80~150μmであってもよい。
【0025】
上記ビアホールは、1以上の縦横比(aspect ratio)を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1a】メッキ用平坦剤の種類に応ずる銅電解メッキのポテンシャル線形走査電位法(Linear sweep voltammetry)による電流変化を介して平坦剤の抑制強度を比較して示したグラフである。
【
図1b】メッキ用平坦剤の種類に応ずる銅電解メッキのポテンシャル線形走査電位法(Linear sweep voltammetry)による電流変化を介して平坦剤の抑制強度を比較して示したグラフである。
【
図1c】メッキ用平坦剤の種類に応ずる銅電解メッキのポテンシャル線形走査電位法(Linear sweep voltammetry)による電流変化を介して平坦剤の抑制強度を比較して示したグラフである。
【
図1d】メッキ用平坦剤の種類に応ずる銅電解メッキのポテンシャル線形走査電位法(Linear sweep voltammetry)による電流変化を介して平坦剤の抑制強度を比較して示したグラフである。
【
図2a】メッキ用平坦剤の種類に応ずるメッキの様相を比較して示したマイクロビア(microvia)の断面図である。
【
図2b】メッキ用平坦剤の種類に応ずるメッキの様相を比較して示したマイクロビア(microvia)の断面図である。
【
図2c】メッキ用平坦剤の種類に応ずるメッキの様相を比較して示したマイクロビア(microvia)の断面図である。
【
図2d】メッキ用平坦剤の種類に応ずるメッキの様相を比較して示したマイクロビア(microvia)の断面図である。
【
図3】本発明の実施例7に係る銅メッキ液を用いて電解メッキしたマイクロビアの断面図である。
【
図4】本発明の実施例8に係る銅メッキ液を用いて電解メッキしたマイクロビアの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の目的、特定の長所及び新規の特徴は、添付の図面に基づいた以下の詳細な説明及び実施例によりさらに明らかになるであろう。
【0028】
本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的で辞書的な意味に解釈されてはならず、発明者が自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという原則に基づいて、本開示の技術的思想に符合する意味や概念として解釈されるべきである。
【0029】
本明細書において、層、部分、または基板等の構成要素が他の構成要素の「上に」、「接続され」、または「結合して」と記載されている場合は、これは、直接的に他の構成要素の「上に」、「接続され」、または「結合して」いる場合を意味し、また両構成要素の間に一つ以上の他の構成要素が介在されている場合も意味する。これに対して、構成要素が他の構成要素に「直接的に上に」、「直接的に接続され」、または「直接的に結合して」と記載されている場合は、両構成要素の間には他の構成要素が介在されていないことを意味する。
【0030】
本出願で用いた用語は、ただ特定の実施例を説明するために用いたものであって、本開示を限定するものではない。単数の表現は、文の中で明白に表現しない限り、複数の表現を含む。
【0031】
本出願において、「含む」または「有する」等の用語は、明細書上に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在を指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたもの等の存在または付加可能性を予め排除するものではないことを理解しなくてはならない。
【0032】
本出願で、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特別に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。また、明細書の全般にわたって、「上に」とは、対象部分の上または下に位置することを意味し、必ずしも重力方向を基準にして上側に位置することを意味するものではない。
【0033】
本開示は、多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるため、特定の実施例を図面に例示し、詳細に説明する。しかし、これは本開示を特定の実施形態に限定するものではなく、本開示の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変換、均等物及び代替物を含むものとして理解されるべきである。本開示を説明するに当たって、係わる公知技術に対する具体的な説明が本開示の要旨をかえって不明にすると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0034】
以下、本開示の実施例を添付図面を参照して詳細に説明し、添付図面を参照して説明するに当たって、同一または対応する構成要素には、同一の図面符合を付し、これに関する重複説明を省略する。
【0035】
(メッキ用平坦剤)
本発明の平坦剤は、下記化学式1で表されるビス-アリールアンモニウム(bis-aryl ammonium)化合物を含む。
[化学式1]
【化4】
(式中、中央鎖のAは、CH
2、またはOであることができる。R
1は、アリール基(aryl group)の中から選択される置換体であり、これらは、互いに同一であってもよく、異なってもよい。R
2及びR
3は、C
1~C
7のアルキル基(alkyl group)及びアリール基から選択される置換体であり、これらは、互いに同一であってもよく、異なってもよい。X
-は、アンモニウムの対イオンである。nは、1~6から選択される整数である。)。
【0036】
本発明に係るメッキ用平坦剤は、ビアホールの底側よりもビアホールの入口側での銅メッキの速度を選択的に抑制することにより、高い縦横比のビアホールでも欠陥なく充填することができる。
【0037】
上記R1のアリール基は、フェニル(phenyl)、ベンジル(benzyl)、ナフチル(naphthyl)、及びアントラセニル(anthracenyl)から選択されることができる。これに限定されないが、上記R1のアリール基は、ベンジル(benzyl)またはナフチル(naphthyl)が好ましい。
【0038】
上記R2及びR3のC1~C7のアルキル基は、メチル(methyl)、エチル(ethyl)、プロピル(propyl)、イソプロピル(iso-propyl)、ブチル(butyl)、イソブチル(iso-butyl)、tert-ブチル(tert-butyl)、ペンチル(pentyl)、イソペンチル(iso-pentyl)、ヘキシル(hexyl)、及びイソヘキシル(iso-hexyl)から選択されることができ、上記アリール基は、フェニル(phenyl)、ベンジル(benzyl)、ナフチル(naphthyl)、及びアントラセニル(anthracenyl)から選択されることができる。
【0039】
上記X-は、ヨウ化物イオン(I-)、臭化物イオン(Br-)、塩化物イオン(Cl-)、フッ化物イオン(F-)、ヨウ素酸イオン(IO3
-)、塩素酸イオン(ClO3
-)、過塩素酸イオン(ClO4
-)、臭素酸イオン(BrO3
-)、硝酸イオン(NO3
-)、亜硝酸イオン(NO2
-)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6
-)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4
-)、硫酸イオン(HSO4
-)、及びメチル硫酸イオン(CH3SO4
-)から選択されることができる。
【0040】
これに限定されないが、上記X-は、臭化物イオン(Br-)が好ましい。
【0041】
上記メッキ用平坦剤は、下記化学式2または下記化学式3で表されるビス-アリールアンモニウム(bis-aryl ammonium)化合物を含むことができる。
[化学式2]
【化5】
[化学式3]
【化6】
【0042】
(銅メッキ液)
本発明の銅メッキ液は、本願に開示されているビス-アリールアンモニウム(bis-aryl ammonium)化合物を含むメッキ用平坦剤を含む。
【0043】
上記平坦剤の濃度は、0.1~1,000μMであってもよい。これに限定されないが、上記平坦剤の濃度は、1~500μMが好ましい。これに限定されないが、上記平坦剤の濃度が0.1μM未満であると、ビアホールの入口でのメッキ速度の選択的な抑制が不足となるため、底上げ充填(bottom-up filling)の向上に役に立たなく、1,000μMを超過すると、メッキ液と他の組成との不均衡により、メッキの特性が改善されないこともある。これに限定されないが、上記平坦剤の濃度は、1~500μM、1~100μM、1~50μM、または、1~10μMであってもよい。
【0044】
上記銅メッキ液は、脱イオン水(deionized water)、銅イオン化合物、支持電解質、塩素イオン化合物、加速剤及び抑制剤から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0045】
上記銅イオン化合物は、硫酸銅(CuSO4)、硝酸銅(Cu(NO3)2)、酢酸銅(Cu(CO2CH3)2)、銅メタンスルホン酸塩(Cu(CH3SO3)2)、炭酸銅(CuCO3)、シアン化銅(CuCN)、塩化第二銅(CuCl2)及び過塩素酸銅(Cu(ClO4)2)から選択される1種以上を用いることができる。上記銅イオン化合物は、0.1~1.5Mの濃度を有することができる。これに限定されないが、上記銅イオン化合物の濃度は、0.2~1.3Mが好ましい。
【0046】
上記支持電解質は、硫酸(H2SO4)、クエン酸(HOC(COOH)(CH2COOH)2)、過塩素酸(HClO4)、メタンスルホン酸(CH3SO3H)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸カリウム(K2SO4)、及びホウ酸(H3BO3)から選択される1種以上を用いることができる。上記支持電解質は、0.1~1.2Mの濃度を有することができる。これに限定されないが、上記支持電解質の濃度は、0.2~1.0Mが好ましい。
【0047】
上記塩素イオン化合物は、塩酸(HCl)、塩化ナトリウム(NaCl)及び塩化カリウム(KCl)から選択される1種以上を用いることができる。上記塩素イオン化合物は、0.1~3mMの濃度を有することができる。これに限定されないが、上記塩素イオンの濃度は、0.2~2mMが好ましい。
【0048】
上記加速剤は、ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド(bis(3-sulfopropyl)-disulfide、SPS)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸(3-mercapto-1-propanesulfonic acid;MPSA)、及び3-N、N-ジメチルアミノ-ジチオカルバモイル-1-プロパンスルホン酸(3-N、N-dimethylaminodithiocarbamoyl-1-propanesulfonic acid;DPS)から選択される1種以上を用いることができる。上記加速剤は、1~200μMの濃度を有することができる。これに限定されないが、上記加速剤の濃度は、1~100μMが好ましい。
【0049】
上記抑制剤は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol;PEG)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol;PPG)、ポリエチレンイミン(polyethylene imine)及びこの共重合体から選択される1種以上を用いることができる。上記抑制剤は、700~10,000Da(dalton)の分子量を有することができる。上記抑制剤の濃度は、1~2,000μMであってもよく、これに限定されないが、10~1,500μMが好ましい。
【0050】
(銅メッキ方法)
本発明の銅メッキ方法は、ビアホールが形成された基板を前処理する段階と、上記前処理された基板を本願に記載の銅メッキ液によりメッキしてビアを形成する段階と、を含む。
【0051】
上記基板は、シリコン基板であり、上記ビアは、シリコン貫通電極(Through Silicon Via、TSV)であることができる。
【0052】
上記前処理する段階は、電極部位剥離段階及び洗浄段階のうちの1種以上を含むことができる。上記電極部位剥離段階は、NaOH水溶液で構成された剥離液に、20~30分間浸漬することにより果たすことができ、剥離されたビアホールは、硫酸を含む洗浄液及び用水を使用する洗浄段階を経ることができる。
【0053】
上記ビアホールは、深さが80~150μmであり、上部直径が100~200μmであり、下部直径が80~150μmであってもよい。
【0054】
上記ビアホールは、1以上の縦横比(aspectRatio)を有することができる。
【0055】
本発明によれば、マイクロビアまたは縦横比の大きいビアホールの場合でも底上げ充填に優れたメッキを施すことができる。
【0056】
以下では、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。但し、これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されることはない。
【実施例】
【0057】
(メッキ用平坦剤の製造)
(実施例1:化学式2のメッキ用平坦剤化合物の製造)
上記化学式2のメッキ用平坦剤化合物は、下記反応式1に示すように製造した。
[反応式1]
【化7】
【0058】
より具体的には、上記化学式2のメッキ用平坦剤化合物は、下記の工程により製造された。
【0059】
(1)エチレングリコール(Ethylene glycol;1.1mL、20.00mmol)を無水テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;40mL)に溶かした後に、窒素雰囲気下で水素化ナトリウム(NaH;3equiv.)をゆっくり入れた後、30分間撹拌した。その後、テトラブチルアンモニウムアイオダイド(nBu4NI;0.2equiv.)及びアリルブロマイド(allyl bromide;3equiv.)を加え、室温で3時間撹拌した。反応の終了後に、蒸溜水を用いて水素化ナトリウムの反応性を無くし、エチルアセテート(EtOAc)に溶かした後に、蒸溜水で洗浄した。集めた有機溶液は、減圧蒸溜した後にコラムクロマトグラフィーにより精製して白色液体の生成物1(2.16g、76%)を得た。
【0060】
(2)生成物1(1.64g、11.67mmol)をジクロロメタン(dichloromethane;30mL)に溶かした後に、メタクロロペルオキシ安息香酸(meta-chloroperoxybenzoic acid;3equiv.)を入れて、5時間の間に還流撹拌した。反応の終わった反応物にジクロロメタン20mLを加えて希釈し、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)で飽和された水溶液を用いて数回洗浄した。集めた有機溶液は、減圧蒸溜した後にコラムクロマトグラフィーにより精製して白色液体の生成物2(1.41g、69%)を得た。
【0061】
(3)生成物2(1.57g、8.94mmol)に、50%のジメチルアミン(dimethyl amine;30equiv.)が溶けているメタノール溶液を入れて、室温で10時間撹拌した。反応物を減圧蒸溜し、蒸溜水40mLに溶かした後にエチルアセテート(EtOAc、20mL)により洗浄した。水溶液層を集めた後に減圧蒸溜して粘性のある黄色液体の生成物3(2.35g、quant.)を得た。
【0062】
(4)生成物3(1.70g、6.42mmol)をテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran;20mL)に溶かした後に、ベンジルブロマイド(benzyl bromide;2.2equiv.)を入れて、室温で10時間撹拌した。反応物を減圧蒸溜し、蒸溜水40mLに溶かした後にエチルアセテート(EtOAc、20mL)で洗浄した。水溶液層を集めた後に減圧蒸溜して粘性のある黄色液体の化学式2の化合物(3.66g、94%)を得た。
【0063】
(実施例2:化学式3のメッキ用平坦剤化合物の製造)
上記化学式3のメッキ用平坦剤化合物は、下記反応式2に示すように製造した。
[反応式2]
【化8】
【0064】
化学式2のメッキ用平坦剤化合物の製造方法に開示した生成物3(1.78g、6.73mmol)をテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran;20mL)に溶かした後、2-ブロモメチルナフタレン(2-(bromomethyl)naphthalene;2.2equiv.)を入れて、室温で10時間撹拌した。反応物を減圧蒸溜し、蒸溜水40mLに溶かした後に、エチルアセテート(EtOAc、20mL)で洗浄した。水溶液層を集めた後に減圧蒸溜して粘性のある黄色液体の化学式3の化合物(3.42g、72%)を得た。
【0065】
(比較例1:化学式4のメッキ用平坦剤化合物の製造)
化学式4のメッキ用平坦剤化合物は、下記のように製造して、比較例3のメッキ用組成物に使用した。
[化学式4]
【化9】
【0066】
化学式2の化合物のメッキ用平坦剤の製造方法に開示した生成物3(3.65g、13.81mmol)をテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran;20mL)に溶かした後に、アリルブロマイド(2.2equiv.)を加えて、室温で10時間撹拌した。反応物を減圧蒸溜し、蒸溜水40mLに溶かした後にエチルアセテート(EtOAc、20mL)で洗浄した。水溶液層を集めた後に減圧蒸溜して粘性のある黄色液体の化学式4の化合物(6.47g、93%)を得た。
【0067】
(比較例2:化学式5のメッキ用平坦剤化合物の製造)
化学式5のメッキ用平坦剤化合物は、下記のように製造され、比較例4のメッキ用組成物に使用した。
[化学式5]
【化10】
【0068】
化学式2の化合物の製造方法に開示した生成物3(0.37g、1.38mmol)をテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran;20mL)に溶かした後に、プロピルブロマイド(propyl bromide;6equiv.)を加えて、室温で10時間撹拌した。反応物を減圧蒸溜し、蒸溜水40mLに溶かした後にエチルアセテート(EtOAc、20mL)で洗浄した。水溶液層を集めた後に減圧蒸溜して粘性のある黄色液体の化学式5の化合物(0.46g、85%)を得た。
表1は、下記実施例1、2及び比較例1、2のメッキ液に使用されたメッキ用平坦剤化合物の構造を示すものである。
【0069】
【0070】
(銅メッキ液の製造)
(実施例3)
実施例3の銅メッキ液は、溶媒として脱イオン水(deionized water)を用いて、メッキ液の成分を撹拌しながら溶解させて製造した。銅メッキ液の成分の組成は、下記の通りである。
銅イオン源:0.92Mの硫酸銅(CuSO4・5H2O)
支持電解質:0.43Mの硫酸(H2SO4)
塩素イオン源:0.82mMの塩酸(HCl)
平坦剤:7.0μMの実施例1で製造した化学式2で表されるビス-アリールアンモニウム化合物
【0071】
(実施例4)
実施例4の銅メッキ液は、平坦剤として7.0μMの実施例2で製造した化学式3で表されるビス-アリールアンモニウム化合物を用いたこと以外には、実施例3と同じ組成で製造した。
【0072】
(実施例5)
実施例5の銅メッキ液は、下記抑制剤及び加速剤を加えたこと以外には、実施例3と同じ組成で製造した。
抑制剤:100μMのPPG-PEG-PPG(分子量2,000;poly(propylene glycol)-block-poly(ethylene glycol)-block-poly(propylene glycol))
加速剤:6μMのSPS
【0073】
(実施例6)
実施例6の銅メッキ液は、下記抑制剤及び加速剤を加えたこと以外には、実施例4と同じ組成で製造した。
抑制剤:100μMのPPG-PEG-PPG(分子量2,000;poly(propylene glycol)-block-poly(ethylene glycol)-block-poly(propylene glycol))
加速剤:6μMのSPS
【0074】
(比較例3)
比較例3の銅メッキ液は、溶媒として脱イオン水(deionized water)を用いてメッキ液の成分を撹拌しながら溶解させて製造した。銅メッキ液の成分組成は、下記の通りである。
銅イオン源:0.92Mの硫酸銅(CuSO4・5H2O)
支持電解質:0.43Mの硫酸(H2SO4)
塩素イオン源:0.82mMの塩酸(HCl)
平坦剤:7.0μMの比較例1で製造した化学式4で表されるビス-アルキルアンモニウム化合物
【0075】
したがって、比較例3の銅メッキ液は、平坦剤として7.0μMの化学式4で表されるビス-アルキルアンモニウム化合物を用いたこと以外には、実施例3と同じ組成で製造した。
【0076】
(比較例4)
比較例4の銅メッキ液は、平坦剤として7.0μMの比較例2で製造した化学式5で表されるビス-アルキルアンモニウム化合物を用いたこと以外には、比較例3と同じ組成で製造した。
【0077】
(比較例5)
比較例5の銅メッキ液は、下記抑制剤及び加速剤を加えたこと以外には、比較例3と同じ組成で製造した。
抑制剤:100μMのPPG-PEG-PPG(分子量2,000;poly(propylene glycol)-block-poly(ethylene glycol)-block-poly(propylene glycol))
加速剤:6μMのSPS
【0078】
(比較例6)
比較例6の銅メッキ液は、下記抑制剤及び加速剤を加えたこと以外には、比較例4と同じ組成で製造した。
抑制剤:100μMのPPG-PEG-PPG(分子量2,000;poly(propylene glycol)-block-poly(ethylene glycol)-block-poly(propylene glycol))
加速剤:6μMのSPS
【0079】
(実験例1)
下記条件下でメッキ用平坦剤の種類に応ずるメッキ速度抑制の強度を測定した。
a.WE:CuRDE(A:0.07Cm2)、CE:Cu wire、RE:Ag/AgCl、
b.Electrolyte:CuSO40.92M、H2SO40.43M、HCl0.82mM
c.Temperature:25℃
d.LSVConditions:10mV/s、150mV~-350mV
【0080】
その結果を、
図1a~
図1dに示した。
図1a~
図1dは、平坦剤の種類に応ずる銅電解メッキのポテンシャル線形走査電位法(Linear sweep voltammetry)による電流変化を介して平坦剤のメッキ速度抑制の強度を比較して示したグラフである。
図1a~
図1dにおいて、100rpm及び1,000rpmは、それぞれビアホールの底及び入口を描いた外部対流条件を示す。
【0081】
図1a及び
図1bを参照すると、メッキ用平坦剤としてビス-アルキルアンモニウム化合物を含む比較例3及び4の銅メッキ液の場合は、各100rpm及び1,000rpmのグラフにおいて同一の電流条件の15mA/cm
2でのポテンシャルの差が小さく示される。これは、ビアホールの底と入口での平坦剤のメッキ速度抑制の強度の差が小さいことを意味する。
【0082】
これに対して、
図1c及び
図1dを参照すると、メッキ用平坦剤として、ビス-アリールアンモニウム化合物を含む実施例3及び4の銅メッキ液の場合は、上記と同じ比較条件下で、100rpmと1,000rpmとの間のポテンシャル差が大きく示される。これは、ビアホールの入口と底での平坦剤のメッキ速度抑制の強度の差が大きいことを意味する。メッキ速度抑制の強度の差が大きくなると、ビアホールの底が充填される間にビアホールの入口でのメッキが抑制されて、底上げ充填を形成することができる。
【0083】
したがって、本発明に係る実施例3及び4の銅メッキ液の場合は、ビス-アリールアンモニウム化合物がメッキ用平坦剤として優れた特性を有することが分かる。
【0084】
(実験例2)
メッキ用平坦剤に応ずる銅メッキの様相を確認するために、深さ100μm、上部直径130μm、下部直径100μmのビアホールが形成されたPCBを、硫酸を含む洗浄液で洗浄した後に、上記実施例5及び6と比較例5及び6の銅メッキ液に浸し、1時間の間に下記メッキ条件で銅電解メッキを施した。
a.WE:PCB substrate(2.1×2.2cm2)
b.CE:insoluble anode
c.Electrolyte:CuSO40.92M、H2SO40.43M、HCl0.82mM
d.Nozzle pressure:0.5kgf/cm2
e.Temperature:25℃
f.CurrentConditions:15mA/cm2
【0085】
その結果を、
図2a~
図2dに示した。
図2a~
図2dは、メッキ用平坦剤の種類に応ずるメッキの様相を比較して示したマイクロビアの断面図である。
【0086】
図2a及び
図2bに示すように、メッキ用平坦剤としてビス-アルキルアンモニウム化合物を含む比較例5及び6の銅メッキ液の場合は、底上げ充填(bottom-up filling)特性が不足であることを確認することができた。
【0087】
これに反して、
図2c及び
図2dに示すように、メッキ用平坦剤としてビス-アリールアンモニウム化合物を含む実施例5及び6の銅メッキ液の場合、底上げ充填(bottom-up filling)に優れたメッキを施すことができることを確認することができた。
【0088】
(実施例7)
実施例7の銅メッキ液は、溶媒として脱イオン水(deionized water)を用いてメッキ液の成分を撹拌しながら溶解させて製造した。銅メッキ液の成分組成は、下記の通りである。
銅イオン源:0.92Mの硫酸銅(CuSO4・5H2O)
支持電解質:0.43Mの硫酸(H2SO4)
塩素イオン源:0.82mMの塩酸(HCl)
抑制剤:100μMのPPG-PEG-PPG(分子量2,000;poly(propylene glycol)-block-poly(ethylene glycol)-block-poly(propylene glycol))
加速剤:5.23μMのSPS
平坦剤:6.25μMの実施例1で製造した化学式2で表されるビス-アリールアンモニウム化合物
【0089】
したがって、実施例7の銅メッキ液は、支持電解質、加速剤、平坦剤の濃度を調整したこと以外には、実施例5と同じ組成で製造した。
【0090】
(実施例8)
実施例8の銅メッキ液は、平坦剤として6.25μMの実施例2で製造した化学式3で表されるビス-アリールアンモニウム化合物を用いたこと以外には、実施例7と同じ組成で製造した。
【0091】
(実験例3)
本発明に係るメッキ用平坦剤に応ずる銅メッキの様相を確認するために、深み100μm、上部直径130μm、下部直径100μmのビアホールが形成されたPCBを、硫酸を含む洗浄液で洗浄した後に、上記銅メッキ液に浸して、1時間の間に電流密度1.5 ASDの電流を印加して銅電解メッキを施した。
【0092】
その結果を
図3及び
図4に示した。
図3は、本発明の実施例7に係る銅メッキ液を用いて電解メッキされたマイクロビアの断面図であり、
図4は、本発明の実施例8に係る銅メッキ液を用いて電解メッキされたマイクロビアの断面図である。
【0093】
図3及び
図4に示すように、メッキ用平坦剤としてビス-アリールアンモニウム化合物を含む実施例7及び8の銅メッキ液の場合は、底上げ充填(bottom-up filling)効果に優れたメッキを施すことができることを確認できた。
【0094】
したがって、本発明の一実施例によれば、ビス-アリールアンモニウム系列の化合物1種以上を銅電解メッキの平坦剤として用いることにより底上げ充填(bottom-up filling)効果に優れたメッキを施すことができる。
【0095】
また、本発明の一実施例によれば、シリコン基板及びPCB基板のビアホールまたはトレンチ(trench)をメッキするとき、継ぎ目(seam)または空隙(void)等の欠陷(defect)のない、信頼性が高いメッキを施すことができる。
【0096】
以上、本開示を具体的な実施例を挙げて詳細に説明したが、これは、本開示を具体的に説明するためのものであって、本開示はこれに限定されず、本開示の技術的思想内で当分野の通常の知識を有した者によりその変形や改良が可能であることは明らかである。本開示の単純な変形や変更はすべて本開示の領域に属するものとなり、本開示の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明確になるであろう。