IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニコベンチャーズ トレーディング リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-エアロゾル化可能材料に適した加熱要素 図1
  • 特許-エアロゾル化可能材料に適した加熱要素 図2
  • 特許-エアロゾル化可能材料に適した加熱要素 図3
  • 特許-エアロゾル化可能材料に適した加熱要素 図4
  • 特許-エアロゾル化可能材料に適した加熱要素 図5
  • 特許-エアロゾル化可能材料に適した加熱要素 図6
  • 特許-エアロゾル化可能材料に適した加熱要素 図7
  • 特許-エアロゾル化可能材料に適した加熱要素 図8
  • 特許-エアロゾル化可能材料に適した加熱要素 図9
  • 特許-エアロゾル化可能材料に適した加熱要素 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】エアロゾル化可能材料に適した加熱要素
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/465 20200101AFI20220830BHJP
   A24F 47/00 20200101ALI20220830BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20220830BHJP
   H05B 6/36 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F47/00
H05B6/10 371
H05B6/36 D
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020526233
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2018085686
(87)【国際公開番号】W WO2019129553
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】1722177.1
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】ホロッド, マーティン ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト, ジュリアン ダリン
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506915(JP,A)
【文献】国際公開第2017/068099(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0119051(US,A1)
【文献】特表2016-525341(JP,A)
【文献】特表2021-508438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
H05B 6/02- 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる際に用いられる加熱要素であって、耐熱支持部及び前記支持部上の被膜を備え、前記被膜が、コバルトから成り
前記支持部が、金属、及び合金から成る群から選択される1つ又は複数の材料を含む、加熱要素。
【請求項2】
平面状又は実質的に平面状である、請求項1に記載の加熱要素。
【請求項3】
管状又は実質的に管状である、請求項1に記載の加熱要素。
【請求項4】
前記被膜が、前記支持部の半径方向外方に位置付けられた、請求項3に記載の加熱要素。
【請求項5】
前記被膜は、厚さが50ミクロン以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の加熱要素。
【請求項6】
前記被膜は、厚さが20ミクロン以下である、請求項5に記載の加熱要素。
【請求項7】
耐熱保護被膜を備え、コバルトから成る前記被膜が、前記支持部と前記耐熱保護被膜との間に位置付けられた、請求項1~6のいずれか一項に記載の加熱要素。
【請求項8】
前記耐熱保護被膜が、セラミック材料、金属窒化物、窒化チタン、及びダイヤモンドから成る群から選択される1つ又は複数の材料を含む、請求項7に記載の加熱要素。
【請求項9】
前記耐熱保護被膜は、厚さが50ミクロン以下である、請求項7又は8に記載の加熱要素。
【請求項10】
前記耐熱保護被膜は、厚さが20ミクロン以下である、請求項9に記載の加熱要素。
【請求項11】
エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とともに用いられる物品であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の加熱要素と、前記加熱要素と熱的接触したエアロゾル化可能材料とを備えた、物品。
【請求項12】
前記エアロゾル化可能材料が、前記加熱要素と表面接触した、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記エアロゾル化可能材料が、再生物、セルロース系、又はゲルフォームである、請求項11又は12に記載の物品。
【請求項14】
前記エアロゾル化可能材料が、タバコ並びに/又は1つ若しくは複数の保湿剤を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
実質的に円筒状である、請求項11~14のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させるシステムであって、
請求項11~15のいずれか一項に記載の物品と、
前記物品の前記エアロゾル化可能材料を加熱して、前記物品の前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置であり、前記物品を受容する加熱ゾーンと、前記物品が前記加熱ゾーンにある場合に、前記物品の前記加熱要素を加熱させるデバイスとを備えた、装置と、
を備えた、システム。
【請求項17】
前記デバイスは、前記物品が前記加熱ゾーンにある場合に、前記物品の前記加熱要素に侵入する変動磁場を生成する磁場生成器を備えた、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置であって、
エアロゾル化可能材料を含む物品を受容する加熱ゾーンと、
前記加熱ゾーンを加熱する請求項1~10のいずれか一項に記載の加熱要素と、
前記加熱要素を加熱させるデバイスと、
を備えた、装置。
【請求項19】
前記デバイスが、使用中に前記加熱要素に侵入する変動磁場を生成する磁場生成器を備えた、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記加熱要素が、前記加熱ゾーンに突き出た、請求項18又は19に記載の装置。
【請求項21】
エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させるシステムであって、
請求項18~20のいずれか一項に記載の装置と、
前記装置の前記加熱ゾーンに存在する物品と、
を備えた、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる際に用いられる加熱要素と、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とともに用いられる物品と、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻タバコ、葉巻タバコ等の喫煙品は、使用中にタバコを燃焼させて、タバコ煙を生成する。燃焼なしに化合物を放出する製品の創出によって、これらの物品の代替物を提供しようとする試みがなされている。このような製品の例は、いわゆる「非燃焼加熱式」製品又はタバコ加熱デバイス若しくは製品であり、材料を燃焼させずに加熱することによって化合物を放出する。この材料は、例えばタバコ又は他の非タバコ製品が考えられ、ニコチンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる際に用いられる加熱要素であって、耐熱支持部及び支持部上の被膜を備え、被膜が、コバルトを含む、加熱要素を提供する。
【0004】
例示的な一実施形態において、この加熱要素は、平面状又は実質的に平面状である。
【0005】
例示的な一実施形態において、この加熱要素は、管状又は実質的に管状である。
【0006】
例示的な一実施形態において、被膜は、支持部の半径方向外方に位置付けられる。
【0007】
例示的な一実施形態において、被膜は、厚さが50ミクロン以下である。例示的な一実施形態において、被膜は、厚さが20ミクロン以下である。
【0008】
例示的な一実施形態において、支持部は、金属、合金、セラミック材料、及びプラスチック材料から成る群から選択される1つ又は複数の材料を含む。例示的な一実施形態において、支持部は、ステンレス鋼を含む。
【0009】
例示的な一実施形態において、この加熱要素は、耐熱保護被膜を備え、コバルトを含む被膜は、支持部と耐熱保護被膜との間に位置付けられる。
【0010】
例示的な一実施形態において、コバルト被膜は、封入されている。例示的な一実施形態において、耐熱保護被膜及び支持部は、コバルト被膜を一体的に封入している。例示的な一実施形態において、耐熱保護被膜は、コバルト被膜及び支持部を封入している。
【0011】
例示的な一実施形態において、耐熱保護被膜は、セラミック材料、金属窒化物、窒化チタン、及びダイヤモンドから成る群から選択される1つ又は複数の材料を含む。
【0012】
例示的な一実施形態において、耐熱保護被膜は、厚さが50ミクロン以下である。例示的な一実施形態において、耐熱保護被膜は、厚さが20ミクロン以下である。
【0013】
本発明の第2の態様は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とともに用いられる物品であって、本発明の第1の態様の加熱要素と、加熱要素と熱的接触したエアロゾル化可能材料とを備えた、物品を提供する。
【0014】
例示的な一実施形態において、エアロゾル化可能材料は、加熱要素と表面接触している。
【0015】
例示的な一実施形態において、エアロゾル化可能材料は、再生物、セルロース系、又はゲルフォームである。
【0016】
例示的な一実施形態において、エアロゾル化可能材料は、タバコ並びに/又は1つ若しくは複数の保湿剤を含む。
【0017】
例示的な一実施形態において、この物品は、実質的に円筒状である。
【0018】
本発明の第3の態様は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させるシステムであって、本発明の第2の態様の物品と、物品のエアロゾル化可能材料を加熱して、物品のエアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置であり、物品を受容する加熱ゾーンと、物品が加熱ゾーンにある場合に、物品の加熱要素を加熱させるデバイスとを備えた、装置と、を備えた、システムを提供する。
【0019】
例示的な一実施形態において、デバイスは、物品が加熱ゾーンにある場合に、物品の加熱要素に侵入する変動磁場を生成する磁場生成器を備える。
【0020】
本発明の第4の態様は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置であって、エアロゾル化可能材料を含む物品を受容する加熱ゾーンと、加熱ゾーンを加熱する本発明の第1の態様の加熱要素と、加熱要素を加熱させるデバイスと、を備えた、装置を提供する。
【0021】
例示的な一実施形態において、デバイスは、使用中に加熱要素に侵入する変動磁場を生成する磁場生成器を備える。
【0022】
例示的な一実施形態において、加熱要素は、加熱ゾーンに突き出ている。
【0023】
本発明の第5の態様は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させるシステムであって、本発明の第4の態様の装置と、装置の加熱ゾーンに存在する物品と、を備えた、システムを提供する。
【0024】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明するが、これらは一例に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる際に用いられる加熱要素の一例の模式側断面図である。
図2】エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる際に用いられる別の加熱要素の一例の模式側断面図である。
図3】エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる際に用いられる別の加熱要素の一例の模式側断面図である。
図4】エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる際に用いられるさらに別の加熱要素の一例の模式側断面図である。
図5】エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とともに用いられる物品であって、図3の加熱要素を備えた、物品の一例の模式側断面図である。
図6】エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とともに用いられる別の物品であって、図4の加熱要素を備えた、物品の一例の模式側断面図である。
図7図5の物品と、物品のエアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とを備えたシステムの一例の模式側断面図である。
図8図6の物品と、物品のエアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とを備えたシステムの一例の模式側断面図である。
図9】エアロゾル化可能材料を含む物品と、図3の加熱要素を備えた装置とを備えたシステムの一例の模式側断面図である。
図10】エアロゾル化可能材料を含む物品と、図4の加熱要素を備えた装置とを備えたシステムの一例の模式側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書において、用語「エアロゾル化可能材料(aerosolisable material)」は、通常は蒸気又はエアロゾルの形態で、加熱時に揮発成分を与える材料を含む。「エアロゾル化可能材料」は、非タバコ含有材料であってもよいし、タバコ含有材料であってもよい。「エアロゾル化可能材料」としては、例えば、タバコそれ自体、タバコ派生物、拡張タバコ、再生タバコ、タバコ抽出物、均質化タバコ、及びタバコ代替品のうちの1つ又は複数が挙げられる。エアロゾル化可能材料としては、挽きタバコ、刻みラグタバコ、押出タバコ、再生タバコ、再生エアロゾル化可能材料、液体、ゲル、ゲル化シート、粉末、又は塊等の形態が可能である。また、「エアロゾル化可能材料」としては、他の非タバコ製品も挙げられ、製品によっては、ニコチンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「エアロゾル化可能材料」には、グリセロール又はプロピレングリコール等の1つ又は複数の保湿剤を含んでいてもよい。
【0027】
本明細書において、用語「加熱材料(heating material又はheater material)」は、変動磁場の侵入によって加熱可能な材料を表す。
【0028】
誘導加熱は、物体への変動磁場の侵入によって導電性物体が加熱されるプロセスである。このプロセスは、ファラデーの誘導の法則及びオームの法則によって記述される。誘導加熱器は、電磁石と、交流電流等の変動電流を電磁石に通過させるデバイスとを備えていてもよい。電磁石及び加熱対象の物体が好適に、電磁石により生成される結果としての変動磁場が物体に侵入するように相対位置決めされると、物体の内側には、1つ又は複数の渦電流が生成される。物体は、電流の流れに対する抵抗を有する。したがって、物体中にこのような渦電流が生成されると、その物体の電気抵抗に対する流れによって、物体が加熱される。このプロセスは、ジュール加熱、オーム加熱、又は抵抗加熱と称する。誘導加熱可能な物体は、サセプタとして知られている。
【0029】
サセプタが閉回路の形態である場合は、使用中のサセプタと電磁石との磁気結合が増強されて、ジュール加熱が増大又は向上することが分かっている。
【0030】
磁気ヒステリシス加熱は、物体への変動磁場の侵入によって、磁性材料で構成された物体が加熱されるプロセスである。磁性材料は、多くの原子スケールの磁石すなわち磁気双極子を含むものと考えられ得る。磁場がこのような材料に侵入すると、磁気双極子が磁場と一致する。したがって、例えば電磁石が生成するような交番磁場等の変動磁場が磁性材料に侵入すると、変動磁場の印加に伴って、磁気双極子の配向が変化する。このような磁気双極子の再配向によって、磁性材料中に熱が発生する。
【0031】
物体が導電性且つ磁性の両方である場合は、物体への変動磁場の侵入によって、ジュール加熱及び磁気ヒステリシス加熱の両方が物体中に生じ得る。さらに、磁性材料の使用により磁場が強くなり得るため、ジュール加熱及び磁気ヒステリシス加熱が増大され得る。
【0032】
上記プロセスのそれぞれにおいては、外部熱源からの伝熱ではなく、物体自体の内側で熱が発生するため、特に、好適な物体材料及び形状並びに好適な変動磁場の大きさ及び物体に対する配向の選択によって、物体中の急速な昇温及びより均等な熱分布が実現され得る。さらに、誘導加熱及び磁気ヒステリシス加熱では、変動磁場源と物体との物理的な接続が不要であるため、加熱プロファイルの設計自由度及び制御が増すとともに、コストが低下する可能性がある。
【0033】
誘導加熱中、変動磁場からのエネルギーがサセプタに移動して、サセプタに1つ又は複数の変動電流を誘導するため、サセプタの温度が上昇する。サセプタを可能な限り効率的に加熱するため、サセプタへのエネルギーの移動は、可能な限り損失を多くして、電流のエネルギーが急速に熱に変換されるようにする。サセプタの熱質量を小さくすると、所与のエネルギー入力に対する温度変化が増大する。また、誘導電流の全体的な大きさを抑えることは、エネルギーが反射して磁場生成器に戻ることを低減又は回避するのに役立ち得る。
【0034】
消費者製品用の実用的なシステムの生産においては、コスト、材料の入手性、製造時の構成の容易性、及び寿命(腐食耐性を含む)等、多くの側面を考慮する必要がある。軟鋼には、これらの利益の一部があるものの、腐食に対する脆弱性から、長期の使用には不適と考えられる。また、腐食に対する脆弱性と場合により関係する理由から、極薄板状の軟鋼は、利用の可能性が限られる。
【0035】
逆に、ステンレス鋼は、軟鋼よりも広く利用可能であり、使用時には、はるかに堅牢である。ただし残念ながら、誘導加熱システムの場合は、強磁性特性を示さないことから、使用が限られる。オーム加熱の観点から、ステンレス鋼は、軟鋼の6~7倍前後の抵抗を示し得るが、比透磁率(μr)の値が1前後であることから、ステンレス鋼の磁化能力は非常に小さい。比較として、軟鋼の対応する値は、100前後にもなり得る。SUS430ステンレス鋼等、比透磁率(μr)の値が高いステンレス鋼合金も存在するが、これらは、市場において専門家の手元にしか存在しない傾向にあり、特に断面が薄いものは、広く利用可能ではない。
【0036】
本発明は、実用的な誘導加熱サセプタの生産のため、コストと性能との許容できる妥協点がどのように達成され得るかについての本発明者らの知見に基づく。
【0037】
導電性(且つ、磁化可能)媒体の場合は、電磁場が侵入可能な特性深さ(「表皮深さ」)が存在する。軟鋼においては、表面からの距離に対する指数関数的依存性で電磁場が侵入することになる。したがって、電磁場強度は(暗示的には、それに含まれるエネルギーも)、約25ミクロンの材料においてほとんどが吸収されることになる。ステンレス鋼に関する計算では、約280ミクロンという特性吸収深さが得られるが、所与の磁場から同量のエネルギーを抽出するには、はるかに厚いサセプタが必要になることを示している。
【0038】
本発明者らは、磁場生成器に対向する表面等、加熱要素の表面が純ニッケルの薄い(数ミクロン等)被膜で被覆されている場合、より厚い軟鋼板と同じ吸収を達成するには、被膜を約15ミクロン厚にしさえすればよいことを見出している。ニッケルは、例えば化学めっき法、電気化学めっき法によって、又は真空蒸着によって適用することも可能である。さらに、ニッケルの代わりにコバルトが用いられる場合、被膜又は層の厚さは、約10ミクロンまで減らすことができる。1つ又は複数の表皮深さの厚さは、利用可能なエネルギーの大部分をサセプタへと案内するのに役立つものとする。いくつかの実施形態においては、2つ前後の表皮深さの厚さが最適と考えられる。コバルトは、めっきによって適用することも可能である。
【0039】
さらに、コバルトは、ニッケルよりも高いキュリー点温度を有する(353~354℃に対して、1,120~1,127℃)。キュリー点温度すなわちキュリー温度は、特定の磁性材料の磁気特性が急激に変化する温度である。キュリー点温度は、それを下回る場合に外部からの磁場の印加なく自然な磁化が存在し、それを上回る場合に材料が常磁性となる温度であることが了解される。例えば、キュリー点温度は、強磁性材料の強磁性相と常磁性相との間の磁気変態温度である。このような磁性材料がそのキュリー点温度に達すると、その透磁率が低下又はゼロになって、変動磁場の侵入による材料の加熱能力も低下又はゼロになる。すなわち、磁気ヒステリシス加熱によって材料をそのキュリー点温度より高くまで加熱するのは、不可能と考えられる。コバルトは、本発明の実施形態の加熱要素の通常の動作温度を十分に上回るキュリー点温度を有するため、通常の動作においては、ニッケルが代わりに用いられる場合よりも、キュリー点温度の影響がはるかに抑えられることになる(或いは、いくつかの実施形態においては、識別不可能となる)。
【0040】
コバルト被膜又は層が設けられた支持部は、印加変動磁場と相互作用して当該支持部中に熱を発生させる必要がない。すなわち、支持部は、それ自体が変動磁場の侵入により加熱可能である必要がない。支持部は、内部に発生した熱に耐えつつ、コバルト被膜を支持可能でありさえすればよい。したがって、支持部は、任意好適な耐熱材料で構成可能である。例示的な材料は、アルミニウム、鋼、銅、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)若しくはカプトン等の高温ポリマーである。
【0041】
したがって、本発明の例示的な実施形態の加熱要素によれば、相対的な低コスト、材料の入手の容易性、及び製造時の構成の容易性といった利益を保ちつつ、変動磁場から加熱要素へのエネルギーの効率的な移動が可能となる。
【0042】
コバルト被膜は、温度が高くなると、酸化の影響をさらに受けやすくなり得る。このため、未酸化金属面に対する相対放射率(εr)が高くなり、放射によりエネルギーが失われる速度が増すことによって、放射による熱損失が増大し得る。放射エネルギーが最終的に環境中へ失われる場合は、このような放射によって、システムのエネルギー効率が低下し得る。また、酸化によって、化学的腐食に対するコバルト被膜の耐性が低下し得るため、加熱要素の耐用年数が短くなる可能性もある。したがって、いくつかの実施形態においては、窒化チタン等の耐熱保護被膜によって、コバルト被膜が被覆されている。窒化チタンは、例えば物理的気相成長法を用いて適用可能である。他の例示的な耐熱保護被膜は、セラミック材料、金属窒化物、及びダイヤモンドである。いくつかの実施形態において、耐熱保護被膜は、コバルト被膜を化学的に処理して、コバルト被膜上の保護膜の成長を促進する方法又は陽極酸化等のプロセスを用いて保護酸化層を形成する方法等、異なる方法で設けることができる。下層のコバルト被膜を酸化から保護することのほか、耐熱保護被膜は、コバルト被膜を機械的摩耗から物理的に保護することにも役立ち得る。いくつかの実施形態において、コバルト被膜は、封入されている。いくつかの実施形態において、耐熱保護被膜及び支持部は、コバルト被膜を一体的に封入していてもよい。いくつかの実施形態において、耐熱保護被膜は、コバルト被膜及び支持部を封入していてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、耐熱保護被膜は、コバルト被膜ではなく当該耐熱保護被膜中に電流を誘導することのないように(又は、著しく誘導することのないように)低導電性又は非導電性であってもよい。
【0044】
以下、図面を参照して、いくつかの例示的な実施形態を説明する。
【0045】
図1は、本発明の一実施形態に係る、加熱要素の一例の模式側断面図である。加熱要素1は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる際に用いられる。加熱要素1は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置での使用及び/又はエアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とともに用いられる物品での使用が可能である。加熱要素1は、平面状又は実質的に平面状である。ただし、他の実施形態において、加熱要素1は、非平面状であってもよい。
【0046】
加熱要素1は、耐熱支持部1aを備える。本実施形態の耐熱支持部1aは、鋼、より具体的にはステンレス鋼を含む。ただし、他の実施形態において、耐熱支持部1aは、例えば金属、合金、セラミック材料、及びプラスチック材料から成る群から選択される1つ又は複数の材料を含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、耐熱支持部1aは、鋼、軟鋼、アルミニウム、銅、又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)若しくはカプトン等の高温ポリマーを含んでいてもよい。
【0047】
加熱要素1は、支持部1a上の層、膜、又は被膜1bを備える。被膜1bは、コバルトを含む。本実施形態において、コバルト被膜1bは、厚さがおよそ10ミクロンである。ただし、他の実施形態において、コバルト被膜1bは、厚さが50ミクロン以下又は20ミクロン以下等、異なる厚さを有していてもよい。被膜は、めっきであってもよい。
【0048】
図2は、本発明の一実施形態に係る、別の加熱要素の一例の模式側断面図である。図2の加熱要素2は、耐熱支持部2a及び支持部2a上のコバルトを含む被膜2bを備える。加熱要素2は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置での使用及び/又はエアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とともに用いられる物品での使用が可能である。
【0049】
加熱要素2は、平面状又は実質的に平面状である。ただし、他の実施形態において、加熱要素2は、非平面状であってもよい。図2の加熱要素2は、耐熱保護被膜2cも備える点を除いて、図1の加熱要素1と同じである。耐熱保護被膜2cは、コバルト被膜2b上に設けられている。より具体的に、コバルト被膜2bは、支持部2aと耐熱保護被膜2cとの間に位置付けられる。本実施形態の耐熱保護被膜2cは、窒化チタンを含む。ただし、他の実施形態において、耐熱保護被膜2cは、例えばセラミック材料、金属窒化物、窒化チタン、及びダイヤモンドから成る群から選択される1つ又は複数の材料を含んでいてもよい。本実施形態において、耐熱保護被膜2cは、厚さがおよそ10ミクロンである。ただし、他の実施形態において、耐熱保護被膜2cは、厚さが50ミクロン以下又は20ミクロン以下等、異なる厚さを有していてもよい。図1の実施形態に対して考え得る本明細書に記載の変形例のいずれかが、図2の実施形態になされて、別の実施形態を構成していてもよい。
【0050】
図3は、本発明の一実施形態に係る、別の加熱要素の一例の模式側断面図である。図3の加熱要素3は、耐熱支持部3aと、支持部3a上に位置付けられたコバルトを含む被膜3bと、コバルト被膜3bが支持部3aとの間に位置付けられるように配置された耐熱保護被膜3cとを備える。加熱要素3は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置での使用及び/又はエアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とともに用いられる物品での使用が可能である。
【0051】
加熱要素3は、平面状又は実質的に平面状である。ただし、他の実施形態において、加熱要素3は、非平面状であってもよい。図2の実施形態においては、コバルト被膜2b及び耐熱保護被膜2cが耐熱支持部2aの一方の面上にのみ位置付けられる一方、図3の実施形態においては、コバルト被膜3b及び耐熱保護被膜3cが耐熱支持部3aの両側にある2つの主面それぞれに位置付けられる点を除いて、図3の加熱要素3は、図2の加熱要素2と同じである。すなわち、図3の実施形態において、支持部3aは、コバルト被膜3bの2つの塊の間に位置付けられ、支持部3a及びコバルト被膜3bの塊の組合せは、耐熱保護被膜3cの2つの塊の間に位置付けられる。別の実施形態においては、耐熱保護被膜3cが省略されてもよいし、支持部3a及びコバルト被膜3bの塊の組合せの一方の面上にのみ設けられていてもよい。図1及び図2の実施形態に対して考え得る本明細書に記載の変形例のいずれかが、図3の実施形態になされて、別の実施形態を構成していてもよい。
【0052】
図4は、本発明の別の実施形態に係る、加熱要素の一例の模式側断面図である。この場合も、図4の加熱要素4は、耐熱支持部4aと、支持部4a上に位置付けられたコバルトを含む被膜4bと、コバルト被膜4bが支持部4aとの間に位置付けられるように配置された耐熱保護被膜4cとを備える。加熱要素4は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置での使用及び/又はエアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とともに用いられる物品での使用が可能である。
【0053】
本実施形態において、加熱要素4は、実質的に円形の断面を有する実質的な円筒状であるが、他の実施形態においては、加熱要素4は、長円又は楕円断面を有していてもよいし、円筒状以外であってもよい。いくつかの実施形態において、加熱要素4は、例えば多角形状、四角形状、長方形状、正方形状、三角形状、星形状、又は不規則な断面を有していてもよい。本実施形態において、加熱要素4は、中空の内側領域4dを有する管状である。他の実施形態において、加熱要素4は、軸方向に延びた間隙をその周方向に有しつつ、依然として、実質的に管状であってもよい。いくつかの実施形態において、加熱要素4は、ロッドであってもよい。いくつかの実施形態においては、エアロゾル化可能材料等の材料が内側領域4dに位置付けられていてもよいし、内側領域4dを満たしていてもよい。
【0054】
本実施形態において、加熱要素4は、細長であり、長手方向軸A-Aを有する。他の実施形態において、加熱要素4は、細長でなくてもよい。このような他のいくつかの実施形態においても、加熱要素4は依然として、当該加熱要素4の断面に垂直な軸方向A-Aを有する。
【0055】
本実施形態において、コバルト被膜4bは、耐熱支持部4aの半径方向外方に位置付けられる。すなわち、コバルト被膜4bは、耐熱支持部4aの外側にある。さらに、本実施形態において、耐熱支持部4aの半径方向内方対向面には、コバルト被膜4bがない。他の実施形態においては、耐熱支持部4aの半径方向外方の追加又は代替として、耐熱支持部4aの半径方向内方に、コバルト被膜4bが設けられていてもよい。ただし、コバルト被膜4bが半径方向外方の追加として半径方向内方に設けられている場合は、加熱要素4の熱質量が増大する可能性があり、使用中の所与の変動磁場によって加熱要素4を加熱可能な速度が低下し得る。
【0056】
本実施形態において、耐熱保護被膜4cは、耐熱支持部4a及びコバルト被膜4bの半径方向外方に位置付けられる。すなわち、耐熱保護被膜4cは、コバルト被膜4bの外側にある。さらに、本実施形態において、耐熱支持部4aの半径方向内方対向面には、耐熱保護被膜4cがない。ただし、他の実施形態においては、耐熱支持部4aの半径方向外方の追加又は代替として、耐熱支持部4aの半径方向内方に、耐熱保護被膜4cが設けられていてもよい。ただし、この場合も、耐熱保護被膜4cが半径方向外方の追加として半径方向内方に設けられている場合は、加熱要素4の熱質量が増大する可能性がある。
【0057】
それぞれが図示の実施形態の変形例であるいくつかの実施形態において、コバルト被膜2b、3b、4bは、封入されている。それぞれが図示の実施形態の変形例であるいくつかの実施形態において、耐熱保護被膜2c、3c、4c及び支持部2a、3a、4aは、コバルト被膜2b、3b、4bを一体的に封入している。それぞれが図示の実施形態の変形例である他のいくつかの実施形態において、耐熱保護被膜2c、3c、4cは、コバルト被膜2b、3b、4b及び支持部2a、3a、4aを封入している。
【0058】
図5は、本発明の一実施形態に係る、物品の一例の模式側断面図である。物品10は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とともに用いられる。
【0059】
物品10は、図3の加熱要素3及びエアロゾル化可能材料11を備える。エアロゾル化可能材料11は、再生エアロゾル化可能材料(例えば、再生タバコ)又はゲルフォーム等、本明細書に論じるエアロゾル化可能材料のいずれであってもよい。物品10は、ゲル等のエアロゾル化可能材料11が含浸又は被覆された紙等の基板を備えていてもよい。エアロゾル化可能材料11は、セルロース系のエアロゾル化可能材料であってもよい。
【0060】
物品10は、実質的に円形の断面を有する実質的な円筒状であるが、他の実施形態においては、物品10は、長円又は楕円断面を有していてもよいし、円筒状以外であってもよい。いくつかの実施形態において、物品10は、例えば多角形状、四角形状、長方形状、正方形状、三角形状、星形状、又は不規則な断面を有していてもよい。本実施形態において、物品100は、ロッドである。
【0061】
本実施形態において、物品10は、細長状で、長手方向軸B-Bを有する。物品10の長手方向軸B-Bは、加熱要素3の長手方向軸A-Aと一致する。他の実施形態において、物品10は、細長でなくてもよい。このような他のいくつかの実施形態においても、物品10は依然として、当該物品10の断面に垂直な軸方向B-Bを有する。
【0062】
エアロゾル化可能材料11は、加熱要素3と熱的接触している。したがって、使用時には、加熱要素3において発生した熱を使用して、エアロゾル化可能材料11を加熱することにより、エアロゾル化可能材料11の少なくとも1つの成分を揮発させることができる。いくつかの実施形態において、エアロゾル化可能材料11は、加熱要素3と表面接触している。これにより、加熱要素からエアロゾル化可能材料11に熱が直接伝わり得る。これは、エアロゾル化可能材料11の加熱の効率をさらに向上させるのに役立ち得る。他の実施形態において、加熱要素3は、エアロゾル化可能材料11と表面接触しないように保たれていてもよい。例えば、いくつかの実施形態においては、加熱材料及びエアロゾル化可能材料のない伝熱障壁が加熱要素3をエアロゾル化可能材料11から離隔していてもよい。いくつかの実施形態において、伝熱障壁は、エアロゾル化可能材料11又は加熱要素3上の被膜であってもよい。このような障壁を設けることは、放熱によって加熱要素3中のホットスポットを緩和するのに役立ち得るため都合が良い。
【0063】
また、物品10は、エアロゾル化可能材料11に巻き付けられたラッパー12を含む。ラッパー12は、エアロゾル化可能材料11を囲み、輸送及び使用中の損傷からエアロゾル化可能材料11を保護するのに役立ち得る。また、ラッパー12は、使用中に空気の流れをエアロゾル化可能材料11へと案内して通過させるのに役立つとともに、蒸気又はエアロゾルの流れをエアロゾル化可能材料11に通過させて放出させるのに役立ち得る。
【0064】
本実施形態において、ラッパー12は、自由端が互いに重なるようにエアロゾル化可能材料11に巻き付けられている。ラッパー12は、物品10の円周方向外面の全体又は大部分を構成していてもよい。ラッパー12は、紙、ボール紙、再生エアロゾル化可能材料(例えば、再生タバコ)、又は加熱材料(例えば、アルミニウム箔等の金属又は合金箔)等、任意好適な材料で構成することも可能である。また、ラッパー12は、当該ラッパー12の重なった自由端を互いに接着する接着剤(図示せず)を含んでいてもよい。接着剤としては、例えばアラビアガム、天然若しくは合成樹脂、デンプン、並びにワニスのうちの1つ又は複数が挙げられる。接着剤は、ラッパー12の重なった自由端の分離を防止するのに役立つ。他の実施形態においては、接着剤が省略されてもよいし、ラッパー12が上述と異なる形態であってもよい。このような種類のラッパーのいずれか1つが本明細書に記載又は図示のその他の物品に適用されて、別の実施形態を構成していてもよい。いくつかの実施形態においては、ラッパー12が省略されてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、物品10は、1つ又は複数の別の構成要素を備えていてもよい。例えば、物品10は、使用中に当該物品10のエアロゾル化可能材料11から放出されたエアロゾル又は蒸気をフィルタリングするフィルタを備えることも可能である。フィルタとしては、タバコ業界において使用される任意の種類が可能である。例えば、フィルタは、酢酸セルロースで構成されていてもよい。フィルタは、実質的に円形の断面及び長手方向軸を有する実質的な円筒状であってもよい。他の実施形態において、フィルタは、物品に関して本明細書に論じる断面のいずれか等、異なる断面を有すること、円筒状以外であること、及び/又は細長でないことも可能である。いくつかの実施形態において、フィルタは、エアロゾル化可能材料11の長手方向端部に隣接しており、加熱要素3と軸方向に位置合わせされている。他の実施形態において、フィルタは、間隙並びに/又は物品10の1つ若しくは複数の別の構成要素等によって、エアロゾル化可能材料11から離隔していてもよい。例示的な(1つ又は複数の)別の構成要素は、例えばろ過材の本体による保持又はろ過材の2つの本体間の保持が可能な添加剤又は香料源(添加剤又は香料含有カプセル又はスレッド)である。
【0066】
いくつかの実施形態において、物品10は、エアロゾル化可能材料11及びフィルタ(設けられている場合)に巻き付けられ、エアロゾル化可能材料11に対してフィルタを保持するラップを含む。ラップは、エアロゾル化可能材料11及びフィルタを囲んでいてもよい。また、ラップは、使用中に空気の流れをエアロゾル化可能材料11へと案内して通過させるのに役立つとともに、蒸気又はエアロゾルの流れをエアロゾル化可能材料11に通過させて放出させるのに役立ち得る。ラップは、自由端が互いに重なるようにエアロゾル化可能材料11及びフィルタに巻き付けられていてもよい。ラップは、物品10の円周方向外面の全体又は大部分を構成していてもよい。ラップは、紙、ボール紙、又は再生エアロゾル化可能材料(例えば、再生タバコ)等、任意好適な材料で構成することも可能である。また、ラップは、本明細書の他の場所で論じる接着剤のうちの1つ等、当該ラップの重なった自由端を互いに接着する接着剤(図示せず)を含んでいてもよい。接着剤は、ラップの重なった自由端の分離を防止するのに役立つ。他の実施形態においては、接着剤が省略されてもよいし、ラップが上述と異なる形態であってもよい。他の実施形態において、フィルタは、接着剤等、ラップ以外のコネクタによりエアロゾル化可能材料11に対して保持されていてもよい。
【0067】
図6は、本発明の一実施形態に係る、別の物品の一例の模式側断面図である。物品20は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とともに用いられる。図6の物品20は、図3の加熱要素3の代わりに図4の加熱要素4を有する点を除いて、図5と同じである。物品20は、加熱要素4の中空の内側領域4dにより規定された中空の内側領域を有する管状であり、エアロゾル化可能材料21及び加熱要素4にラッパー22が巻き付けられている。本明細書に論じる図5の物品10に対して考え得る変形例のいずれかが、図6の物品20になされて、別の実施形態を構成していてもよい。さらに、いくつかの実施形態においては、エアロゾル化可能材料等の材料が加熱要素4の内側領域4dに位置付けられていてもよいし、内側領域4dを満たしていてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、物品10、20は、当該物品10、20のエアロゾル化可能材料11、21を加熱して、エアロゾル化可能材料11、21の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とともに提供されていてもよい。物品10、20及び装置が一体として、システムに備えられていてもよい。
【0069】
例えば、図7は、本発明の一実施形態に係る、システムの一例の模式側断面図である。システム1000は、図5の物品10と、物品10のエアロゾル化可能材料11を加熱して、エアロゾル化可能材料11の少なくとも1つの成分を揮発させる装置100とを備える。他の実施形態において、物品10は、本明細書に記載のその他の物品のいずれかで置き換え可能である。本実施形態において、装置100は、タバコ加熱製品(当技術分野においては、タバコ加熱デバイス又は非燃焼加熱式デバイスとしても知られる)である。
【0070】
全般的に、装置100は、物品10を受容する加熱ゾーン111と、物品10が加熱ゾーン111にある場合に、物品10の加熱要素3を加熱させるデバイス112とを備える。
【0071】
より具体的に、本実施形態の装置100は、本体110及びマウスピース120を備える。マウスピース120は、プラスチック材料、厚紙、酢酸セルロース、紙、金属、ガラス、セラミック、又はゴム等の任意好適な材料で構成されていてもよい。マウスピース120は、内部を通るチャネル122を規定する。マウスピース120は、加熱ゾーン111への開口を覆うように、本体110に対して位置付け可能である。マウスピース120が本体110に対してこのように位置付けられた場合、マウスピース120のチャネル122は、加熱ゾーン111と流体連通する。使用中、チャネル122は、加熱ゾーン111に挿入された物品のエアロゾル化可能材料から装置100の外部まで揮発材料が通過し得るようにする通路として作用する。本実施形態において、マウスピース120は、本体110に接続されるように、本体110と解除可能に係合可能である。他の実施形態において、マウスピース120及び本体110は、ヒンジ又は可撓性部材等によって、永久に接続されていてもよい。物品自体がマウスピースを備える実施形態等のいくつかの実施形態においては、装置100のマウスピース120が省略されてもよい。
【0072】
装置100は、加熱ゾーン111を装置100の外部と流体接続する空気入口(図示せず)を規定していてもよい。このような空気入口は、本体110及び/又はマウスピース120により規定されていてもよい。ユーザは、マウスピース120のチャネル122を通じてエアロゾル化可能材料の(1つ又は複数の)揮発成分を吸い出すことにより、(1つ又は複数の)揮発成分を吸引可能であってもよい。(1つ又は複数の)揮発成分が物品10から取り出されると、装置100の空気入口を介して、空気が加熱ゾーン111に取り込まれ得る。
【0073】
本実施形態において、本体110は、加熱ゾーン111を備える。本実施形態において、加熱ゾーン111は、物品10の少なくとも一部を受容する凹部111を含む。他の実施形態において、加熱ゾーン111は、棚、表面、又は突起等、凹部以外であってもよく、また、物品との協働又は物品の受容のため、物品との機械的係合を要するものであってもよい。本実施形態において、加熱ゾーン111は、細長であり、物品10全体を収容するようにサイズ規定及び成形されている。他の実施形態において、加熱ゾーン111は、細長状以外であること及び/又は物品10の一部のみを受容するような寸法規定が可能である。
【0074】
本実施形態において、デバイス112は、物品10が加熱ゾーン111にある場合に、物品10の加熱要素3に侵入する変動磁場を生成する磁場生成器112を含む。ただし、他の実施形態においては、他の形態のデバイス112も使用可能である。
【0075】
本実施形態において、磁場生成器112は、電力源113と、コイル114と、交流電流等の変動電流をコイル114に通過させるデバイス116と、制御装置117と、制御装置117のユーザ操作のためのユーザインターフェース118とを備える。
【0076】
本実施形態の電力源113は、充電式バッテリである。他の実施形態において、電力源113は、非充電式バッテリ、キャパシタ、バッテリキャパシタ混成、又は商用電源への接続等、充電式バッテリ以外であってもよい。
【0077】
コイル114は、任意好適な形態であってもよい。本実施形態において、コイル114は、銅等の導電性材料のヘリカルコイルである。いくつかの実施形態において、磁場生成器112は、コイル114が巻回された透磁性コアを備えていてもよい。このような透磁性コアは、使用中にコイル114により生成された磁束を集中させて、より強力な磁場を形成する。透磁性コアは、例えば鉄で構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、透磁性コアは、コイル114の長さに沿って一部のみが延びることで、磁束を特定の領域に集中させるようにしてもよい。いくつかの実施形態において、コイルは、平坦なコイルであってもよい。すなわち、コイルは、2次元螺旋状であってもよい。本実施形態において、コイル114は、加熱ゾーン111を囲む。コイル114は、加熱ゾーン111の長手方向軸と実質的に位置合わせされた長手方向軸に沿って延びる。位置合わせされた両軸は、一致する。本実施形態の変形例において、軸は、互いに平行であってもよいし、斜めであってもよいし、垂直であってもよい。
【0078】
本実施形態において、変動電流をコイル114に通過させるデバイス116は、電力源113とコイル114との間で電気的に接続されている。また、本実施形態において、制御装置117は、電力源113に対して電気的に接続されるとともに、デバイス116に対して通信可能に接続されて、デバイス116を制御する。より具体的に、本実施形態において、制御装置117は、デバイス116を制御することによって、電力源113からコイル114への電力の供給を制御する。本実施形態において、制御装置117は、プリント回路板(PCB)上の集積回路(IC)等のICを備える。他の実施形態において、制御装置117は、異なる形態であってもよい。いくつかの実施形態において、装置は、デバイス116及び制御装置117を備えた電気的又は電子的構成要素を1つだけ有していてもよい。本実施形態において、制御装置117は、ユーザインターフェース118のユーザ操作によって動作する。本実施形態において、ユーザインターフェース118は、本体110の外部に位置付けられる。ユーザインターフェース518は、押しボタン、トグルスイッチ、ダイヤル、タッチスクリーン等を備えていてもよい。他の実施形態においては、ユーザインターフェース118が遠隔で、Bluetooth等を介して、装置のその他の部分に無線接続されていてもよい。
【0079】
本実施形態においては、ユーザによるユーザインターフェース118の操作によって、制御装置117により、デバイス116が交流電流をコイル114に通過させる。これにより、コイル114は、交番磁場を生成する。装置100のコイル114及び加熱ゾーン111は、物品10が加熱ゾーン111に位置付けられた場合に、コイル114により生成された変動磁場が物品10の加熱要素3に侵入するように、好適に相対位置決めされている。加熱要素3のコバルト被膜3bのコバルトが導電性材料であるため、この侵入によって、加熱要素3のコバルト被膜3bに1つ又は複数の渦電流が発生する。コバルトの電気抵抗に対する渦電流の流れによって、コバルト被膜3bがジュール加熱により加熱される。コバルトが強磁性であることから、コバルト中の磁気双極子の配向は、印加された変動磁場とともに変化する可能性があり、これによって加熱要素3のコバルト被膜3b中に熱が発生する。コバルト被膜3b中に発生した熱エネルギーは、物品30のエアロゾル化可能材料に移動する。
【0080】
本実施形態の装置100は、加熱ゾーン111の温度を検知する温度センサ119を備える。温度センサ119は、制御装置117が加熱ゾーン111の温度をモニタリングできるように、制御装置117に対して通信可能に接続されている。温度センサ119から受信された1つ又は複数の信号に基づいて、制御装置117は、コイル114を通過する変動又は交流電流の特性を必要に応じてデバイス116に調整させることにより、加熱ゾーン111の温度が所定の温度範囲内に保たれるようにしてもよい。この特性は、例えば振幅、周波数、又はデューティサイクルであってもよい。所定の温度範囲内での使用時は、加熱ゾーン111に位置付けられた物品内のエアロゾル化可能材料の十分な加熱によって、エアロゾル化可能材料の燃焼なく、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分が揮発する。したがって、制御装置117(全体として、装置100)は、エアロゾル化可能材料の加熱によって、エアロゾル化可能材料の燃焼なく、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させるように構成されている。いくつかの実施形態において、温度範囲は、およそ50℃~およそ250℃、およそ50℃~およそ150℃、およそ50℃~およそ120℃、およそ50℃~およそ100℃、およそ50℃~およそ80℃、又はおよそ60℃~およそ70℃等、およそ50℃~およそ300℃である。いくつかの実施形態において、温度範囲は、およそ170℃~およそ220℃である。他の実施形態において、温度範囲は、この範囲以外であってもよい。いくつかの実施形態において、温度範囲の上限としては、300℃超も可能である。いくつかの実施形態においては、温度センサ119が省略されてもよい。いくつかの実施形態において、加熱要素3の被膜3bは、当該被膜3bを加熱するのが望ましい最大温度に基づいて選択されるキュリー点温度を有するコバルト合金を含んでいてもよく、被膜3bの誘導加熱による当該温度を超えたさらなる加熱が阻止又は防止される。
【0081】
図8は、本発明の一実施形態に係る、別のシステムの一例の模式側断面図である。システム2000は、図6の物品20と、物品20のエアロゾル化可能材料21を加熱して、エアロゾル化可能材料21の少なくとも1つの成分を揮発させる装置200とを備える。他の実施形態において、物品20は、本明細書に記載のその他の物品のいずれかで置き換え可能である。図7の装置に対して考え得る本明細書に記載の変形例のいずれかが、図8の装置になされて、装置の別の実施形態及び/又はシステムの別の実施形態を構成していてもよい。
【0082】
本実施形態においては、物品20の中空の内側領域4dに位置付けて使用中に加熱ゾーン111中の所定の場所に物品20を位置決め可能な支持部130を図8の装置200が備える点を除いて、装置200は、図7に示す装置100と同じである(したがって、同じ特徴は同じ参照番号で示される)。これは、装置200のコイル114に対して物品20の加熱要素4を正しく位置決めするのに役立ち得る。その他、装置200の動作及び物品20への影響については、実質的に上述の通りであり、したがって簡略化のため再び説明することはない。
【0083】
図9は、本発明の一実施形態に係る、別のシステムの一例の模式側断面図である。システム3000は、エアロゾル化可能材料を含む物品30を備える。また、システム3000は、物品30のエアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置300を備える。他の実施形態において、物品30は、本明細書に記載のその他の物品のいずれかで置き換え可能である。図7又は図8の装置に対して考え得る本明細書に記載の変形例のいずれかが、図9の装置になされて、装置の別の実施形態及び/又はシステムの別の実施形態を構成していてもよい。
【0084】
本実施形態においては、加熱ゾーン111を加熱する加熱要素140を図9の装置300自体が備える点を除いて、装置300は、図7に示す装置100と同じである(したがって、同じ特徴は同じ参照番号で示される)。加熱要素140は、加熱ゾーン111に突き出ている。加熱要素140は、図3の加熱要素3と同じであるため、耐熱支持部3aと、支持部3a上に位置付けられたコバルトを含む被膜3bと、コバルト被膜3bが支持部3aとの間に位置付けられるように配置された耐熱保護被膜3cとを備える。図3の加熱要素3に対して考え得る本明細書に記載の変形例のいずれかが、図9の装置の加熱要素140になされて、装置の別の実施形態及び/又はシステムの別の実施形態を構成していてもよい。例えば、いくつかの実施形態においては、装置300の加熱要素140から耐熱保護被膜3cが省略されてもよい。いくつかの実施形態において、装置300の加熱要素は、加熱ゾーン111への突出の追加又は代替として、加熱ゾーン111の少なくとも一部を囲む。
【0085】
図10は、本発明の一実施形態に係る、別のシステムの一例の模式側断面図である。システム4000は、エアロゾル化可能材料を含む物品40を備える。また、システム4000は、物品40のエアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置400を備える。他の実施形態において、物品40は、本明細書に記載のその他の物品のいずれかで置き換え可能である。図7図8、又は図9の装置に対して考え得る本明細書に記載の変形例のいずれかが、図10の装置になされて、装置の別の実施形態及び/又はシステムの別の実施形態を構成していてもよい。
【0086】
本実施形態においては、図10の装置400の加熱要素が図4の加熱要素4と同じである点を除いて、装置400は、図9に示す装置300と同じである(したがって、同じ特徴は同じ参照番号で示される)。したがって、加熱要素150は、耐熱支持部4aと、支持部4a上で半径方向外方に位置付けられたコバルトを含む被膜4bと、コバルト被膜4bが支持部4aとの間に位置付けられるように配置された耐熱保護被膜4cとを備える。図4の加熱要素4に対して考え得る本明細書に記載の変形例のいずれかが、図10の装置の加熱要素150になされて、装置の別の実施形態及び/又はシステムの別の実施形態を構成していてもよい。例えば、いくつかの実施形態においては、装置400の加熱要素150から耐熱保護被膜4cが省略されてもよい。
【0087】
図9及び図10のシステム3000、4000それぞれにおいては、コイル114により生成された変動磁場が使用中に装置300、400の加熱要素140、150に侵入するように、コイル114及び加熱要素140、150が好適に相対位置決めされている。加熱要素140、150のコバルト被膜3b、4bのコバルトが導電性材料であるため、この侵入によって、加熱要素140、150のコバルト被膜3b、4bに1つ又は複数の渦電流が発生する。コバルトの電気抵抗に対する渦電流の流れによって、加熱要素140、150がジュール加熱により加熱される。コバルトが強磁性であることから、コバルト中の磁気双極子の配向は、印加された変動磁場とともに変化する可能性があり、これによって加熱要素140、150のコバルト被膜3b、4b中に熱が発生する。
【0088】
図9及び図10のシステム3000、4000それぞれにおいては、物品30、40が加熱ゾーン111に挿入された場合に、加熱要素140、150を物品30、40中に位置付け(物品30、40の既存の中空領域中の位置付け又は物品30、40のエアロゾル化可能材料の一部の置換による位置付け等)可能であるため、物品30、40が加熱ゾーン111に位置付けられた場合は、加熱要素140、150で発生した熱が伝導(及び/又は、場合により対流)によって、物品30、40のエアロゾル化可能材料へと効率的に受け渡される。その他、装置300,400の動作及び物品30、40への影響については、実質的に上述の通りであり、したがって簡略化のため再び説明することはない。
【0089】
いくつかの実施形態において、システム3000、4000の一方の物品30、40は、コイル114により生成された変動磁場の侵入により加熱可能な加熱要素を具備していてもよい。したがって、物品30、40のエアロゾル化可能材料は、物品30、40の加熱要素及び装置300、400の加熱要素140、150の一方又は両方により加熱され得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、コバルトを含む被膜は、コバルトのみから成る。ただし、他の実施形態において、被膜は、コバルトのほか、導電性材料、磁性材料、及び磁気導電性材料から成る群から選択される1つ又は複数の材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、被膜は、コバルト合金を含んでいてもよい。また、いくつかの実施形態において、コバルトを含む被膜は、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、導電性カーボン、グラファイト、鋼、普通炭素鋼、軟鋼、ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、銅、及び青銅から成る群から選択される1つ又は複数の材料を含んでいてもよい。他の実施形態においては、コバルトのほか、(1つ又は複数の)他の加熱材料が用いられるようになっていてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、加熱要素には、孔も切れ目もない。いくつかの実施形態において、加熱要素は、箔を含む。ただし、いくつかの実施形態において、加熱要素は、孔又は切れ目を有していてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、加熱要素は、メッシュ、穿孔シート、又は穿孔箔を含んでいてもよい。
【0092】
いくつかの実施形態において、加熱要素は、ステンレス鋼耐熱支持部と、支持部上のコバルト被膜と、窒化チタンを含む耐熱保護被膜とを備えるか、又は、これらから成り、コバルト被膜が支持部と耐熱保護被膜との間に位置付けられる。
【0093】
コバルト被膜は、誘導電流及び/又は磁気双極子の誘導再配向のほとんどが発生する外部ゾーンである表皮深さを有していてもよい。コバルト被膜の厚さが比較的小さいことを前提に、その他の寸法よりも比較的大きな深さ又は厚さを有する加熱材料と比較して、コバルト被膜のより大きな割合が所与の変動磁場により加熱可能であってもよい。このため、材料のより効率的な使用が実現され、そしてまたコストが低下する。
【0094】
いくつかの実施形態において、エアロゾル化可能材料は、タバコを含む。ただし、他の実施形態において、エアロゾル化可能材料は、タバコから成っていてもよいし、実質的に全体がタバコから成っていてもよいし、タバコ及びタバコ以外のエアロゾル化可能材料を含んでいてもよいし、タバコ以外のエアロゾル化可能材料を含んでいてもよいし、タバコを含んでいなくてもよい。いくつかの実施形態において、エアロゾル化可能材料は、蒸気若しくはエアロゾル形成剤又はグリセロール、プロピレングリコール、トリアセチン、若しくはジエチレングリコール等の保湿剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、エアロゾル化可能材料は、非液体エアロゾル化可能材料であり、装置は、非液体エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させるためのものである。
【0095】
いくつかの実施形態において、物品10、20、30は、消耗品である。物品10、20、30中のエアロゾル化可能材料の(1つ又は複数の)揮発可能な成分のすべて又は実質的にすべてが使い果たされた場合に、ユーザは、装置100、200、300、400の加熱ゾーン111から物品10、20、30を取り外して破棄するようにしてもよい。その後、ユーザは、別の物品10、20、30とともに装置100、200、300、400を再利用するようにしてもよい。ただし、他の各実施形態においては、物品が非消耗品であってもよく、エアロゾル化可能材料の(1つ又は複数の)揮発可能な成分が使い果たされた場合に、装置及び物品が一体的に破棄されるようになっていてもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、物品10、20、30は、当該物品10、20、30とともに使用可能な装置100、200、300、400とは別個に販売、供給、或いは提供される。ただし、いくつかの実施形態においては、場合により洗浄用具等の付加的な構成要素とともに、キット又はアセンブリ等のシステムとして、装置100、200、300、400並びに1つ若しくは複数の物品10、20、30が一体的に提供されるようになっていてもよい。
【0097】
様々な問題に対処するとともに技術を進歩させるため、本開示は全体として、特許請求の範囲に係る発明を実施可能であり、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる際に用いられる優れた加熱要素と、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置とともに用いられる物品と、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置と、このような物品及び/又はこのような装置を備えたシステムとを可能にする種々実施形態を例示的な一例として示している。本開示の利点及び特徴は、実施形態の代表的なサンプルに過ぎず、網羅的及び/又は排他的なものではない。これらは、理解の手助け及び特許請求の範囲或いは開示の特徴の教示のみを目的として提示される。本開示の利点、実施形態、例、機能、特徴、構造、及び/又は他の態様は、特許請求の範囲により規定される本開示に対する制限とも、特許請求の範囲の同等物に対する制限とも考えるべきではなく、また、本開示の範囲及び/又は主旨から逸脱することなく、他の実施形態の利用及び改良が可能であることが了解されるものとする。種々実施形態は、開示の要素、構成要素、特徴、部分、ステップ、手段等の種々組合せを好適に含んでいてもよいし、種々組合せから成っていてもよいし、種々組合せから本質的に成っていてもよい。本開示は、現時点では請求されていないものの、将来的に請求され得る他の発明を含んでいてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10