(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】三次元細胞培養装置および三次元細胞培養方法並びに薬物評価装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220830BHJP
C12M 1/04 20060101ALI20220830BHJP
C12N 5/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/04
C12N5/00
(21)【出願番号】P 2018218850
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504109746
【氏名又は名称】株式会社熊本アイディーエム
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】花田 克浩
(72)【発明者】
【氏名】友 雅司
(72)【発明者】
【氏名】高倉 信
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-180334(JP,A)
【文献】特開平09-098769(JP,A)
【文献】特開2018-117578(JP,A)
【文献】特開2007-312689(JP,A)
【文献】特開平02-245176(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069085(WO,A1)
【文献】特表昭60-500119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細気泡を含有した微細気泡水を生成する微細気泡水生成装置と、
前記微細気泡水生成装置が生成した微細気泡水を、細胞が培養される多孔質中空糸に通水する培養装置とを備え、
前記微細気泡水生成装置は、前記微細気泡を一方の電位に帯電させる帯電手段を備え、
前記培養装置は、前記多孔質中空糸に前記一方の電位とは反対の他方の電位を付与する電位付与手段を備えた三次元細胞培養装置。
【請求項2】
前記帯電手段は、微細気泡をマイナス電位に帯電させるものであり、
前記電位付与手段は、前記多孔質中空糸にプラス電位を付与するものである請求項1記載の三次元細胞培養装置
【請求項3】
前記微細気泡水生成装置は、酸素ガスを微細気泡として前記微細気泡水を生成するものである請求項1または2記載の三次元細胞培養装置。
【請求項4】
前記培養装置は、前記多孔質中空糸が束状から前記多孔質中空糸同士の間隔が拡がって隙間ができるように膨らんで形成された培地が配置された培養室を備えた請求項1から3のいずれかの項に記載の三次元細胞培養装置。
【請求項5】
前記培養室は、複数の仕切板により区画され、
前記区画ごとに前記培地が形成された請求項4記載の三次元細胞培養装置。
【請求項6】
前記多孔質中空糸は、微細孔の孔径が100nm~500nmにより形成された請求項1から5のいずれかの項に記載の三次元細胞培養装置。
【請求項7】
前記多孔質中空糸に培養される細胞を観察するためのマイクロスコープを備えた請求項1から6のいずれかの項に記載の三次元細胞培養装置。
【請求項8】
前記微細気泡水生成装置が生成した微細気泡水に、栄養素を含む培養液を注入する液供給手段を備えた請求項1から7のいずれかの項に記載の三次元細胞培養装置。
【請求項9】
微細気泡水生成装置により微細気泡を含有した微細気泡水を生成するステップと、
前記微細気泡を、帯電手段により一方の電位に帯電させるステップと、
前記微細気泡水が流れ、細胞を培養する多孔質中空糸に、電位付与手段により前記一方の電位とは反対の他方の電位を付与するステップとを含む三次元細胞培養方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかの項に記載の三次元細胞培養装置に、前記微細気泡水生成装置が生成した微細気泡水に薬液を注入する液供給手段を備えた薬物評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元細胞培養することができる三次元細胞培養装置および三次元細胞培養方法と、三次元細胞培養された細胞を用いて薬物の機能性や薬物代謝、毒物の毒性評価に使用される薬物評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元細胞培養は、再生医学など研究領域で注目されている培養方法である。三次元培養は、生体内により近い環境を模した腎臓モデルや肝臓モデル等により、ヒト組織モデルが構築できる。更に、三次元細胞培養は、細胞塊を長時間維持できるので、この特徴を活かして薬物の機能性や薬物代謝、毒物の毒性評価(特に反復毒性評価)などに応用できる。
しかし、ハンキングドロップ法やコラーゲン包理法では、細胞塊が大きくなると栄養分や酸素等が充分に供給できないため、成長が止まってしまう。
そこで、三次元細胞培養について中空糸を用いることが、例えば、特許文献1,2に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の細胞培養用中空糸モジュールは、半透膜機能を有する中空糸束と、細胞培養面を備えた多孔質体と、細胞培養面に向き合う対向部材と、中空糸束、多孔質体および対向部材を格納するハウジングとを有している。細胞の培養に際しては、中空糸の内部空間(ルーメン)に、空気等の酸素を含むガス、および、培養液から選択される1種の媒体が配置される。これによりECS(Extra capillary Space)内に存在する細胞の培養に必要な酸素や培地成分を、中空糸を介して供給できると共に、ECS内で発生した細胞の代謝成分等をECSからルーメン側へと移動させることができる。
【0004】
また、特許文献2に記載の培養用中空糸モジュールは、多数の中空糸をたばねて封入したものであり、中空糸内腔に灌流させる培養液の流速を適切な速度まであげることで拡散濾過能すなわち栄養、酸素の供給速度を高めている。
【0005】
更に、細胞を培養にするにあたり、微細気泡を用いることが特許文献3,4に記載されている。
特許文献3に記載のミトコンドリア活性組成物には、水素0.45~0.55ppm、酸素10~12.5ppm、窒素7~8ppm含有する、粒径30マイクロメートル以下のナノバブルを有効成分とした組成物を含有するものである。
【0006】
特許文献4に記載の生物反応装置は、培養槽からの培養液を菌体ろ過器で菌体とろ過液に分離し、菌体ろ過器からのろ過液をマイクロナノバブル発生槽に導入して、ろ過液にマイクロナノバブルを混合することで、培養槽の微生物が活性化するので、生物反応時間を短縮できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】2016-104046号公報
【文献】2005-333945号公報
【文献】2016-063804号公報
【文献】2007-312689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1,2に記載の従来の三次元細胞培養装置による中空糸を介した培養では、中空糸中に流れる培養液から細胞が酸素等を取り込んでいるが、中空糸の微細孔からでは細胞の取り込みが弱く、栄養分や酸素等を充分に吸収できず、細胞の活性が低下し、成長が止まり、大きな細胞塊を形成できない。
【0009】
例えば、特許文献1,2に記載の従来の三次元細胞培養装置における中空糸に、培養液として、特許文献3,4に記載のように、微細気泡を用いた場合でも、微細気泡が培養液の流れと共に、中空糸を流れ、通過してしまうため、中空糸の微細孔から細胞が微細気泡を取り込むことは容易ではない。
【0010】
そこで本発明は、多孔質中空糸の微細孔から積極的に気体を取り込むことができ、細胞を活性化させることにより、細胞塊の培養を促進することができ、細胞塊を長期間維持することができる三次元細胞培養装置および三次元細胞培養方法並びに薬物評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の三次元細胞培養装置は、微細気泡を含有した微細気泡水を生成する微細気泡水生成装置と、前記微細気泡水生成装置が生成した微細気泡水を、細胞が培養される多孔質中空糸に通水する培養装置とを備え、前記微細気泡水生成装置は、前記微細気泡を一方の電位に帯電させる帯電手段を備え、前記培養装置は、前記多孔質中空糸に前記一方の電位とは反対の他方の電位を付与する電位付与手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の三次元細胞培養方法は、微細気泡水生成装置により微細気泡を含有した微細気泡水を生成するステップと、前記微細気泡を、帯電手段により一方の電位に帯電させるステップと、前記微細気泡水が流れ、細胞を培養する多孔質中空糸に、電位付与手段により前記一方の電位とは反対の他方の電位を付与するステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、中空糸に酸素微細気泡水が流れるときに、電位付与手段により中空糸に一方の電位が付与される。従って、一方の電位に帯電した微細気泡が、中空糸の他方の電位に引き寄せられ、微細孔から細胞へ微細気泡による気体を連続的に送り込むことができる。
【0014】
前記帯電手段は、微細気泡をマイナス電位に帯電させるものであり、前記電位付与手段は、前記多孔質中空糸にプラス電位を付与するものであることが望ましい。微細な気泡となることによりマイナス電位を帯びる微細気泡を、帯電装置によりマイナス電位に帯電させることで、より強くマイナス電位に帯電させることができる。
【0015】
前記微細気泡水生成装置が、酸素ガスを微細気泡として前記微細気泡水を生成するものであるため、細胞に充分な酸素を送ることができる。
【0016】
前記培養装置は、前記多孔質中空糸が束状から前記多孔質中空糸同士の間隔が拡がって隙間ができるように膨らんで形成された培地が配置された培養室を備えることができる。細胞が培養されると細胞同士が密着せずに離れた状態で成長できるので、細胞への過度なストレスを抑制することができ、中空糸を中心に大きく細胞塊とすることができる。
【0017】
前記培養室は、複数の仕切板により区画され、前記区画ごとに前記培地が形成されていることにより、区画ごとに別種類の細胞を培養することが可能である。
【0018】
前記多孔質中空糸は、微細孔の孔径が100nm~500nmにより形成されていることが望ましい。中空糸の微細孔が100nmから500nmに形成されているため、微細気泡のほとんどを、微細孔を通過させて細胞へ届けることができる。
【0019】
前記多孔質中空糸に培養される細胞を観察するためのマイクロスコープを備えることが望ましい。観察者は、マイクロスコープにより多孔質中空糸に培養される細胞をリアルタイムに観察することができる。
【0020】
前記微細気泡水生成装置が生成した微細気泡水に、栄養素を含む培養液を注入する液供給手段を備えることが望ましい。
液供給手段により、微細気泡水に栄養素を含む培養液を注入すると、一方の電位に帯電した微細気泡の球面に、栄養液などの培養液が吸着するため、微細気泡が運ぶ栄養液を、細胞へ行き渡らせることができる。
【0021】
本発明の薬物評価装置は、本発明の三次元細胞培養装置に、前記微細気泡水生成装置が生成した微細気泡水に薬液を注入する液供給手段を備えたことを特徴とする。
本発明の薬物評価装置によれば、液供給手段により、微細気泡水に薬液を注入すると、一方の電位に帯電した微細気泡の球面に、薬液が吸着するため、微細気泡が運ぶ薬液を、細胞へ行き渡らせることができる。従って、細胞に薬物の機能性や薬物代謝、毒物の毒性評価など行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、一方の電位に帯電した微細気泡が、中空糸の他方の電位に引き寄せられ、微細孔から細胞へ微細気泡による気体を連続的に送り込むことができるので、多孔質中空糸の微細孔から積極的に気体を取り込むことができ、細胞を活性化させることにより、細胞塊の培養を促進することができ、細胞塊を長期間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係る三次元細胞培養装置を示す図である。
【
図2】
図1に示す三次元細胞培養装置の微細気泡水生成装置の構成を説明するための図である。
【
図3】
図1に示す三次元細胞培養装置の培養室に配置された培地を説明するための図であり、(A)は、横長の容器が仕切板によって3室に区画された培養ディッシュを示す平面図、(B)は、(A)の右側面図、(C)は円形の容器により形成された培養ディッシュを示す平面図である。
【
図4】
図1に示す三次元細胞培養装置の動作を説明するための図であり、多孔質中空糸内を微細気泡水が流れる状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(三次元細胞培養装置)
本発明の実施の形態に係る三次元細胞培養装置を図面に基づいて説明する。
図1に示す三次元細胞培養装置10は、酸素による微細気泡と栄養成分とを含む培養液を生成するものである。
三次元細胞培養装置10は、微細気泡水生成装置20と、培養装置30とを備えている。
【0025】
まず、微細気泡水生成装置20の構成を
図2に基づいて説明する。
なお、
図2においては、配管の各所に逆止弁が設けられているが、便宜上、説明は省略する。
図2に示す微細気泡水生成装置20は、気体を微細化して原水とした水に混合させ、ナノバブルと称される微細気泡を含有した微細気泡水を生成するものである。気体は、酸素タンクT1から供給される。
【0026】
微細気泡水生成装置20は、原水である純水を貯留する原水タンクT2を備えている。原水タンクT2は、純水を酸素微細気泡水貯留タンクT3へ送水する送水ポンプP1を備えている。
酸素微細気泡水貯留タンクT3は、酸素ガスを微細気泡化した微細気泡水を貯水するものである。酸素微細気泡水貯留タンクT3は、自動弁V1を介して微細気泡混合器21に接続されている。
【0027】
微細気泡混合器21は、第1混合器211と、ターボミキサー212と、第2混合器213とを備え、それぞれに酸素タンクT1が3方向自動弁V2を介して接続されている。
ている。微細気泡混合器21は、3方向自動弁V3を介して一方が酸素微細気泡水貯留タンクT3に接続されている。また、微細気泡混合器21は、3方向自動弁V3を介して他方が帯電装置22に接続されている。
【0028】
帯電装置22は、酸素ガスがナノバブルとなった微細気泡水の微細気泡をマイナス電位に帯電させる帯電手段として機能するものである。帯電装置22は、微細気泡をマイナス電位に帯電させるものであれば、様々なものが使用できるが、例えば、株式会社TAMURAの光電子付与装置が使用できる。
【0029】
帯電装置22は、微細な不純物(混合物)を除去するフィルタ23と、紫外線を照射して微生物を死滅させる紫外線殺菌器24とに接続されている。
紫外線殺菌器24は、一方が調整弁V4を介して酸素微細気泡水貯留タンクT3に接続され、他方がボールバルブV5を介して供給用容器25に接続されている。
【0030】
次に、培養装置30の構成を
図1および
図3に基づいて説明する。
図1に示すように、培養装置30は、微細気泡水生成装置20からの供給用容器25に培養液を供給する液供給手段として機能する液供給装置31を備えている。
液供給装置31は、定期的に所定量の培養液を供給用容器25に注入する機能を有するものである。液供給装置31は、自動的に培養液を注入するものであってもよいが、手動で培養液を注入するピペットとしてもよい。
供給用容器25には、撹拌装置32が設けられている。撹拌装置32は、供給用容器25内の微細気泡水と、液供給装置31から液体(培養液)とを混合して撹拌する機能を有する。撹拌装置32は、例えば、供給用容器25内で棒状の撹拌子を磁力により回転させて液体を撹拌するマグネチックスターラーが使用できる。
供給用容器25には、微細気泡水を汲み上げるポンプ33を介して培養室34が接続されている。
【0031】
図3(A)から同図(C)に示すように、培養室34には、2つの培養ディッシュ341,342が配置されている。
培養ディッシュ341は、横長の容器341aが仕切板341bによって3室に区画されている。多孔質中空糸(以下、単に中空糸Fと称す)は、各室の広さに応じて、束状から中空糸F同士の間隔が拡がって隙間ができるように膨らむ球状または楕円球状に形成された培地Mが形成されている。
培養ディッシュ342は、中空糸Fが、円形の容器342a内で、束状から球状に拡がるように形成されている。
中空糸Fは、例えば、血液透析濾過器にて使用される中空糸が使用できる。中空糸Fは、例えば、ポリスルホン、ポリビニルピロリドン(PVP)などから形成されている。中空糸Fは、微細孔の孔径が100nm~500nmのものが使用できる。
中空糸Fの両端に接続された配管には、バルブ341c,342cが接続されている。
【0032】
図1に示す培養室34には、中空糸Fにプラス電位を付与する電位付与手段として機能する電位付与装置35が接続されている。
培養室34には、培養室34からの液体を貯留する廃液容器36が接続されている。
【0033】
なお、
図1においては図示していないが、供給用容器25からの酸素微細気泡水を一定の温度に維持するための加熱冷却装置および送風ファンを備えている。
更に、培養室34における中空糸Fに培養される細胞の状況を観察するためのマイクロスコープ37を備えている。
【0034】
以上のように構成された本実施の形態に係る三次元細胞培養装置10の動作および使用状態について図面に基づいて説明する。
まず、
図2に示す微細気泡水生成装置20により酸素ガスによる微細気泡水を生成する。
【0035】
原水タンクT2からの純水は、酸素微細気泡水貯留タンクT3に貯留される。酸素微細気泡水貯留タンクT3からの純水は、自動弁V1を介して微細気泡混合器21へ送水される。
純水が微細気泡混合器21へ圧送されると、酸素タンクT1からの酸素ガスが微細気泡混合器21の第1混合器211により酸素気泡水となり、ターボミキサー212により酸素微細気泡水となって第2混合器213を通過して、3方向自動弁V3を介して酸素微細気泡水貯留タンクT3へ戻る。
【0036】
酸素微細気泡水貯留タンクT3に貯留される酸素微細気泡水は、このような循環を繰り返すことで、気泡が更に微細化されると共に、酸素ガスの濃度が高められる。
そして、気泡が微細化され、酸素ガス濃度が高められた酸素微細気泡水は、3方向自動弁V3を介して帯電装置22へ流れる。
【0037】
酸素微細気泡水に含まれる微細気泡は、微細な気泡となることによりマイナス電位を帯びることが知られている。この酸素微細気泡水が帯電装置22を通過することで、微細気泡をより強くマイナス電位に帯電させることができる。
【0038】
帯電装置22を通過した酸素微細気泡水はフィルタ23を通過することで、不純物を除去することができ、紫外線殺菌器24を通過することで微生物を死滅させることができる。このように処理された酸素微細気泡水は、供給用容器25に貯留される。
【0039】
図1に示すように、供給用容器25を培養装置30にセットする。
そして、液供給装置31から適量の培養液を供給して、撹拌装置32により培養液が混合した酸素微細気泡水を撹拌する。
培養液が混合された酸素微細気泡水は、ポンプ33により培養室34へ送水される。
【0040】
培養室34では、
図4に示すように、中空糸Fに酸素微細気泡水が流れる。培養室34では、電位付与装置35により中空糸Fにプラス電位が付与されている。
従って、マイナス電位に帯電した微細気泡Bが、中空糸Fのプラス電位に引き寄せられ、微細孔Hから細胞Cへ微細気泡Bによる気体を連続的に送り込むことができる。
本実施の形態では、酸素ガスにより微細気泡Bとしているため、細胞Cに充分な酸素を送ることができる。
【0041】
このとき、マイナス電位に帯電した微細気泡Bの球面に、栄養液などの培養液が吸着して、微細気泡Bを、栄養素が栄養膜となった状態で微細気泡水中を搬送される中空カプセルとして機能させることで、微細気泡Bが運ぶ栄養液を、細胞Cへ行き渡らせることができる。
従って、生存と成長に必要な酸素と栄養素とを連続的に細胞Cに供給できることで、細胞Cを活性化させることができるため、細胞塊の培養を促進することができ、細胞塊を長期間維持することができる。
【0042】
また、中空糸は、例えば、人工透析のダイアライザーでは約5~100nmの穴径の微細孔のものが使用されるが、本実施の形態では、微細孔Hが100nmから500nmの中空糸Fを使用している。粒径が約1μm以下のものをナノバブルと称しているが、中空糸Fの微細孔Hが100nmから500nmに形成されているため、微細気泡のほとんどを、微細孔Hを通過させて細胞Cへ届けることができる。
【0043】
培養ディッシュ341,342では、中空糸Fが束状から中空糸F同士の間隔が拡がって隙間ができるように膨らんでいるため、細胞Cが培養されると細胞C同士が密着せずに離れた状態で成長できるので、細胞Cへの過度なストレスを抑制することができ、中空糸Fを中心に大きく細胞塊とすることができる。
【0044】
培養ディッシュ341は、横長の容器341aが仕切板341bによって区画されているため、それぞれの区画内の中空糸Fでは、別種類の細胞を培養することが可能である。
また、培養ディッシュ342では、円形の容器342a内で大きな細胞塊を培養することが可能である。
【0045】
また、中空糸Fに培養される細胞の状況を観察するためのマイクロスコープ37を備えているため、観察者は細胞の変化をリアルタイムに観察することができる。
【0046】
中空糸Fを通過した酸素微細気泡水は、廃液容器36へ流れ、廃棄される。
なお、本実施の形態では、酸素微細気泡水は、廃液容器36に貯留された後に、廃棄されるようにしているが、中空糸Fを通過した酸素微細気泡水を微細気泡水生成装置20に戻して循環させるようにしてもよい。
【0047】
更に、本実施の形態では、微細気泡水生成装置20にて酸素ガスと水とから微細気泡水を生成していたが、水素ガス、炭酸ガスなど他の気体でもよいし、酸素ガスを必須ガスとして他のガスを一種類または複数種類混合して微細気泡水を生成するようにしてもよい。
【0048】
また、本実施の形態では、
図2に示す帯電装置22により微細気泡に一方の電位としてマイナス電位を帯電させ、
図1に示す電位付与装置35により中空糸Fに他方の電位としてプラス電位を付与していた。
しかし、帯電装置22により微細気泡に一方の電位としてプラス電位を帯電させ、電位付与装置35により中空糸Fに他方の電位としてマイナス電位を付与するようにしてもよい。
【0049】
(薬物評価装置)
本発明の実施の形態に係る薬物評価装置を図面に基づいて説明する。
図1に示す三次元細胞培養装置10では、供給用容器25に液供給装置31から培養液を注入して微細気泡水に培養液を添加していた。
薬物評価装置では、液供給装置31が供給する液体を培養液の代わりに薬物(薬液)としている。そうすることで、微細気泡水生成装置20により気体が微細化すると共にマイナス電位に帯電した微細気泡Bであり、薬液が吸着した微細気泡Bが、
図4に示すように、プラス電位が付与された中空糸Fを流れるときに、中空糸Fの微細孔Hから細胞Cへ届く。
従って、培養室34での細胞に薬物の機能性や薬物代謝、毒物の毒性評価など行うことができる。
【0050】
このように、三次元細胞培養装置10を薬物評価薬物として機能させることにより細胞に対して薬物評価が行えるため、肝臓モデルを培養すれば、薬物代謝や毒性評価などを行うことができる。また、動物実験でした検証できないような様々な生体実験を細胞モデルにより行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、三次元細胞培養が可能であるため大学や研究所、製薬会社、受託により細胞を培養する企業に好適である。
【符号の説明】
【0052】
10 三次元細胞培養装置
20 微細気泡水生成装置
21 微細気泡混合器
211 第1混合器
212 ターボミキサー
213 第2混合器
22 帯電装置
23 フィルタ
24 紫外線殺菌器
25 供給用容器
T1 酸素タンク
T2 原水タンク
T3 酸素微細気泡水貯留タンク
P1 送水ポンプ
V1 自動弁
V2,V3 3方向自動弁
V4 調整弁
V5 ボールバルブ
30 培養装置
31 液供給装置
32 撹拌装置
33 ポンプ
34 培養室
341,342 培養ディッシュ
341a,342a 容器
341b 仕切板
341c,342c バルブ
35 電位付与装置
36 廃液容器
37 マイクロスコープ
C 細胞
F 多孔質中空糸(中空糸)
H 微細孔
M 培地
B 微細気泡