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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】皮膚保湿剤および皮膚バリア機能改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20220830BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220830BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
A61K36/185
A23L33/105
A61P17/16
A61K131:00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021127318
(22)【出願日】2021-08-03
【審査請求日】2021-08-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-08
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507307260
【氏名又は名称】宇航人ジャパン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309033932
【氏名又は名称】株式会社フィネス
(73)【特許権者】
【識別番号】512310435
【氏名又は名称】株式会社ネイチャーツリー
(73)【特許権者】
【識別番号】521342201
【氏名又は名称】株式会社キュリラ
(73)【特許権者】
【識別番号】521305583
【氏名又は名称】株式会社デジタルプランツ
(73)【特許権者】
【識別番号】509248486
【氏名又は名称】株式会社常春堂
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】楊 建標
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 守恒
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】森井 隆信
【審判官】馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105853323(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103070815(CN,A)
【文献】特開2010-106001(JP,A)
【文献】特開2012-121871(JP,A)
【文献】特開平2-72850(JP,A)
【文献】豊潤サジー フィネス オーガニックサジー原料 ビタミンC 鉄分100% 天然900ml,Amazon.co.jp[online],2016年6月26日,[検索日:2021.08.27],インターネット<URL:http://www.amazon.co.jp/dp/B01HL133WW>
【文献】Molecules,2020年5月9日,Vol.25,No.9,pp.1-19
【文献】Afr.J.Pharm.Pharmacol.,2011年,Vol.5,No.8,pp.1092-1095
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K36/00
A23L33/00
CAplus/BIOSIS/CABA/EMBASE/FSTA/MEDLINE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジー由来物を有効成分として含有し、
前記サジー由来物が、果皮、果肉及び種子を含むサジー果実を圧搾して得られたサジー果汁であることを特徴とする経口用皮膚保湿剤。
【請求項2】
前記サジー由来物が、果皮、果肉及び種子を含むサジー果実を圧搾しピューレ状にした後、ろ過して得られたサジー果汁である、請求項1に記載の経口用皮膚保湿剤。
【請求項3】
経表皮水分蒸散量の上昇の抑制および/または経表皮水分蒸散量の低減に用いるための経口用皮膚バリア機能改善剤であり
ジー由来物を有効成分として含有し、
前記サジー由来物が、果皮、果肉及び種子を含むサジー果実を圧搾して得られたサジー果汁であることを特徴とする経口用皮膚バリア機能改善剤。
【請求項4】
前記サジー由来物が、果皮、果肉及び種子を含むサジー果実を圧搾しピューレ状にした後、ろ過して得られたサジー果汁である、請求項3に記載の経口用皮膚バリア機能改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚保湿剤および皮膚バリア機能改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚には、生体内の水分の喪失や透過を防いだり、ウイルス、細菌、アレルゲン物質等の有害物質が生体内に侵入することを防いだりするバリア機能がある。この皮膚のバリア機能が損なわれると、生体内の水分の喪失が増えたり、外部から有害物質が皮膚を通過して侵入しやすくなったりして、肌の乾燥や肌荒れといった問題が引き起こされる。このような問題を予防や改善し、皮膚本来の機能を発揮させるために、皮膚のバリア機能を改善させ、皮膚の水分量を適切な状態に保つことが求められている。
【0003】
保湿機能や皮膚バリア機能の評価の指標として、一般的に、角層水分量と経表皮水分蒸散量(TEWL)が用いられる。外部環境にさらされる、皮膚の最外層に存在する角層の水分量が大きいほど保湿されているといえる。TEWLは、体内から角層を通じて揮散する水分量を表す。このTEWLは値が小さいほど皮膚のバリア機能が優れるといえる。
【0004】
皮膚バリア機能を改善させる組成物として、例えば、特許文献1には、組成物中1~3質量%のタウリンを有効成分として含有することを特徴とする、皮膚バリア機能を維持又は改善するための経口用組成物(ただし、グルコサミン及び/又はその塩を含有する経口用組成物を除く)が開示されている。また、特許文献2には、米由来グルコシルセラミドと、アスパルテームを含有することを特徴とする美容組成物(ただし、γ-アミノ酪酸を含有する組成物、並びに、コラーゲン、茶ポリフェノール、グルタチオン、金属硫黄蛋白質、リコペン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンB2、及びビタミンB6を含有する日焼け止め飲料を除く)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6238406号公報
【文献】特許第6858986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、サジー果汁等のサジー由来物が、皮膚バリア機能を改善し、皮膚を保湿する効果を有するという新たな特性を見出した。また、サジー果汁等のサジー由来物は、天然物由来であるため、安全で嗜好的にも優れるものである。
【0007】
そこで、本発明の目的は、新たな皮膚保湿剤を提供することである。また、本発明の目的は、新たな皮膚バリア機能改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> サジー果汁、サジー果汁乾燥物、およびサジー果実乾燥物からなる群から選択される1以上のサジー由来物を有効成分として含有することを特徴とする皮膚保湿剤。
<2> 前記サジー由来物が、果皮を含むサジー果実を圧搾して得られたサジー果汁である、前記<1>に記載の皮膚保湿剤。
<3> サジー果汁、サジー果汁乾燥物、およびサジー果実乾燥物からなる群から選択される1以上のサジー由来物を有効成分として含有することを特徴とする皮膚バリア機能改善剤。
<4> 前記サジー由来物が、果皮を含むサジー果実を圧搾して得られたサジー果汁である、前記<3>に記載の皮膚バリア機能改善剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新たな皮膚保湿剤が提供される。また、本発明によれば、新たな皮膚バリア機能改善剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0012】
<本発明の皮膚保湿剤>
本発明は、サジー果汁、サジー果汁乾燥物、およびサジー果実乾燥物からなる群から選択される1以上のサジー由来物(以下、単に「サジー由来物」と記載する場合がある。)を有効成分として含有する皮膚保湿剤に関するものである。
【0013】
サジー果汁、サジー果汁乾燥物、およびサジー果実乾燥物からなる群から選択される1以上のサジー由来物は、角層水分量を保持または増加させる保湿作用を有する。そのため、当該サジー由来物は、皮膚保湿剤の有効成分として利用することができる。したがって、本発明の皮膚保湿剤は、角層水分量を保持または増加させることにより、乾燥や皮膚バリア機能が低下することにより引き起こされる疾患(シワ、肌荒れ、かゆみ、炎症、敏感肌など)の予防や治療のために利用することができる。
【0014】
<本発明の皮膚バリア機能改善剤>
本発明は、サジー果汁、サジー果汁乾燥物、およびサジー果実乾燥物からなる群から選択される1以上のサジー由来物(以下、単に「サジー由来物」と記載する場合がある。)を有効成分として含有する皮膚バリア機能改善剤に関するものである。
【0015】
皮膚バリア機能は、経表皮水分蒸散量(TEWL)により判断することができる。TEWLは、皮膚バリア機能が低下すると増加し、皮膚バリア機能が増加すると低下する傾向にある。皮膚バリア機能の改善とは、TEWLの上昇を抑制することや、TEWLを低減させることを意味する。
【0016】
サジー果汁、サジー果汁乾燥物、およびサジー果実乾燥物からなる群から選択される1以上のサジー由来物は、皮膚バリア機能を改善する作用を有し、皮膚バリア機能改善剤の有効成分として利用することができる。本発明の皮膚バリア機能改善剤は、乾燥や皮膚バリア機能が低下することにより引き起こされる疾患(シワ、肌荒れ、かゆみ、炎症、敏感肌など)の予防や治療のために利用することができる。
【0017】
以下、本発明の皮膚保湿剤および本発明の皮膚バリア機能改善剤に含有されるサジー由来物について説明する。なお、以下、「本発明の皮膚保湿剤」および「本発明の皮膚バリア機能改善剤」をまとめて、「本発明の各種剤」と称する。
【0018】
(サジー)
本発明の各種剤に含まれるサジー由来物は、グミ科、ヒッポファエ属のサジー(沙棘、学名:Hippophae rhamnoides L.、英語名:Sea buckthorn)から得られる。サジーは、ユーラシア大陸原産のグミ科の植物で、7千万年以上も前から生育していたと言われている。サジーの果実や、花、葉、茎、根には、ビタミン類、カロテノイド類、ミネラル類、不飽和脂肪酸類、アミノ酸類、有機酸類等の様々な栄養素や化学物質が含まれることから、食品、医薬品、畜産などの分野で広く使用されている。
【0019】
(使用されるサジーの部位)
サジー由来物を得るために使用される部位は、果実である。果実は、果皮を含む状態で用いてもよいし、果皮を取り除いて用いてもよいし、果皮及び種子を取り除いた果肉部分のみを用いてもよい。
【0020】
(サジー果汁)
サジー果汁は、サジー果実を圧搾することで得られる搾汁である。サジー果実は、そのまま圧搾してもよいし、破砕した後に圧搾してもよい。得られる搾汁は、そのまま用いることができる。また、圧搾後に、遠心分離や、ろ過、裏ごしをして、果皮や種子等の圧搾残渣を取り除いたものを、サジー果汁として用いてもよい。また、得られる搾汁を、濃縮したものを、サジー果汁として用いてもよい。
【0021】
サジー果汁は、果皮を含むサジー果実を圧搾し得ることが好ましく、果皮、果肉及び種子を含む果実を圧搾した後、果皮及び種子を取り除いたものが好ましい。
【0022】
(サジー果汁乾燥物)
サジー果汁乾燥物は、サジー果汁を乾燥させたものである。乾燥は、例えば、天日乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、フリーズドライ、噴霧乾燥等の公知の乾燥方法で行うことができる。また、乾燥物は粉砕したり、噴霧乾燥などを利用して乾燥のときに粉末化するなどして、乾燥粉末とすることが好ましい。
【0023】
(サジー果実乾燥物)
サジー果実乾燥物は、サジー果実をそのまま乾燥させたものである。乾燥は、サジー果汁乾燥物に準じて、例えば、天日乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、フリーズドライ、噴霧乾燥等の公知の乾燥方法で行うことができる。また、乾燥物を粉砕し、乾燥粉末とすることもできる。
【0024】
(本発明の各種剤)
本発明の各種剤は、上記の通り、サジー果汁、サジー果汁乾燥物、およびサジー果実乾燥物からなる群から選択される1以上のサジー由来物を含有するものである。中でも、本発明の各種剤が含有するサジー由来物は、サジー果汁および/またはサジー果汁乾燥物であることが好ましく、サジー果汁であることがより好ましい。
【0025】
本発明の各種剤は、そのまま製品にしたり、添加剤として製品に配合したりすることができる。サジー由来物を含有する組成物とすることで、保湿作用や皮膚バリア機能改善作用を有するものとでき、保湿用組成物や、皮膚バリア改善用組成物とすることができる。サジー由来物を含有する組成物は、保湿効果および皮膚バリア機能改善効果を有するため、乾燥や皮膚バリア機能が低下することにより引き起こされる疾患(シワ、肌荒れ、かゆみ、炎症、敏感肌など)の予防や治療のために用いることができる。なお、「予防」には、当該疾患または症状の発症の抑制および遅延が含まれる。また、「治療」には、当該疾患または症状の病態の改善および寛解、並びに当該疾患または症状の進展の抑制が含まれる。
【0026】
サジー由来物を含有する組成物の用途は特に限定されず、食品組成物や、医薬品組成物、化粧品組成物として用いることができる。サジー由来物を含有する組成物は、経口摂取することができる経口用組成物とすることが好ましく、食品組成物や経口投与用の医薬品組成物とすることが好ましい。
【0027】
(食品組成物)
本発明の各種剤は、天然物由来であるため、安全で嗜好的にも優れる。日常的に経口摂取しやすい食品組成物とすることで、長期的に摂取することも容易である。そのため、有効成分としてサジー由来物を含有する食品組成物とすることが好ましい。サジー由来物を含有する食品組成物は、一般の食品だけでなく、特別用途食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等、健康の維持・増進の目的で摂取する食品および/又は飲料も含む。この中でも保健機能食品である特定保健用食品や機能性表示食品、栄養機能食品が好ましい態様である。
【0028】
食品組成物の形状は特に限定されず、固体状、液体状、ペースト(半固体)状、ゲル状、ゾル状等のいずれの形状であってもよい。サジー果汁をそのまま用いることができ、その含有量を高めることができるため、飲料の形態とすることが好ましい。
【0029】
食品組成物として製品化する場合には、サジー由来物からなる製品としてもよいし、添加剤として食品、飲料に配合してもよい。また、食品組成物として製品化する場合には、サジー由来物以外にも、食品、飲料に用いられる様々な添加剤を添加してもよい。具体的には、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料等を添加していてもよい。
【0030】
食品組成物の対象となる、食品、飲料は特に限定されるものではない。例えば、食品として、ソーセージ、ハム、魚介加工品、ゼリー、キャンディー、チューインガムなどの食品類が挙げられる。また、飲料としては、各種の果汁飲料、茶類、清涼飲料水、酒類、栄養ドリンクなどが挙げられる。
【0031】
本発明の各種剤は、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。そのため、動物用として使用してもよく、また、ペットフード等の動物用食品組成物へサジー由来物を添加することもできる。
【0032】
(医薬品組成物)
サジー由来物は、薬学的に許容される担体とともに配合し、医薬品組成物とすることができる。なお、本発明において、医薬品組成物は、医薬品のみならず医薬部外品も含む。医薬品組成物は、経口投与されるものであっても、非経口投与されるものであってもよいが、投与しやすさからは、経口投与用の医薬品組成物とすることが好ましい。医薬品組成物の剤形は、特に限定されず、固体製剤であっても液体製剤であってもよい。具体的には、例えば、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、注射剤、点滴剤、軟膏などが挙げられる。薬学的に許容される担体としては、例えば、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝材、増粘剤、着色剤、分散剤、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤等が挙げられる。
【0033】
食品組成物や、医薬品組成物、化粧品組成物等のサジー由来物を含有する組成物とする場合、サジー由来物の配合量は、その態様等により異なるものである。サジー由来物以外の添加剤を配合する場合には、サジー由来物の含有量が低下するため、サジー由来物を含有する組成物に対するサジー由来物の含有量(サジー由来物の質量/サジー由来物を含有する組成物の質量×100(%))は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。サジー由来物を含有する組成物は、サジー由来物からなるものとしてもよいし、例えば、サジー由来物の含有量が99.99質量%以下や、99.98質量%などのように上限を適宜設定してもよい。
【0034】
サジー果汁を含有する飲料とする場合には、飲料に対するサジー果汁の含有量が、80質量%以上や、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上となるように、サジー果汁の配合量を高めることで、保湿効果や皮膚バリア機能改善効果をより高めることができる。
【0035】
サジー由来物を含有する組成物の摂取量は、摂取対象の性別、体重、年齢、利用目的などに応じて適宜選択すればよい。例えば、成人ヒトの場合、サジー由来物の1日あたりの摂取量は、1~300gや、10~250g、15~200g、20~100gなどとすることができる。また、機能性食品や医薬品組成物の摂取は、1日に1回または複数回に分けて行うことができ、数日~数週間、数か月間にわたり継続して摂取してもよい。
【実施例
【0036】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
I.サジー飲料の製造
H.rhamnoidesの果実(果肉および果皮、内モンゴル蛮漢山産)を枝葉がついた状態で-18℃に冷凍し、冷凍状態のまま枝葉を取り除き、飲用水で洗浄した。傷んだ果実を除去した。次いで、果実を果皮がついた状態で圧搾し、ピューレ状にした後、ろ過(60メッシュ)し、果皮残渣および種子を取り除き、高温瞬間殺菌を行い、サジー果汁(サジー由来物)を得た。サジー果汁にステビアを加え、メッシュ(40メッシュ)で異物を取りのぞきながら、調合し、加熱殺菌して、サジー果汁を99.95質量%含有する飲料(以下、「サジー飲料」と記載する)を得た。
【0038】
II.二重盲検並行群間比較試験
4週間サジー飲料を摂取することによる経表皮水分蒸散量(頬)及び皮膚水分量(頬)改善効果を検証することを目的に二重盲検並行群間比較試験を実施した。
【0039】
(i)研究デザイン
ランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験デザインにより11月下旬から12月下旬にかけての4週間の期間で実施した。
【0040】
(ii)割付
対象者34名を無作為に2群に割り付けた結果、介入群17名、プラセボ群17名であったが、事前測定で適格基準を満たさないことが判明した、介入群3名、プラセボ群1名を除外し、最終的に介入群14名、プラセボ群16名と設定した。対象者30名の年齢は20歳から56歳であり、平均年齢は41歳(S.D.±11歳)、BMIは16.9kg/m2から26.2kg/m2であり、平均は20.8kg/m2(S.D.±2.1kg/m2)であった。表1に群別対象者の背景を示す。2群間の年齢、BMIに有意な差はみられなかった。
【0041】
【表1】
【0042】
(iii)介入群、プラセボ群、介入期間
・介入群:I.サジー飲料の製造で調製したサジー飲料(サジー果汁99.95%含む)を、1日60mL摂取した。
・プラセボ群:プラセボ飲料を、1日60mL摂取した。プラセボ飲料は、プルーン果汁30mLと野菜ジュース30mLをブレンドし製造し(60mL)、外見や味、匂いから対象者が両者の識別が出来ないようにした。
・介入期間:4週間
【0043】
(iv)評価項目と測定
評価項目は、経表皮水分蒸散量とし、皮膚水分量を副次的な評価項目とした。洗顔10分後、一定温度・室温下で左頬同一部位について、肌質測定:水分(5回)、TEWL(1回)を測定した。TEWLはTewameter TM300(Courage+Khazaka electronic GmbH, Germany)により、皮膚水分量はCorneometer CM825(Courage+Khazaka electronic GmbH,Germany) により測定した。
【0044】
(v)統計手法
測定値は、平均値と標準誤差で示した。反復測定ANCOVAを用い、事前値で調整した。有意水準は両側検定5%とした。統計解析にはSPSS statistic 26(IBM)を使用した。
【0045】
(vi)結果
(vi-1)安全性
試験期間中に有害事象は認められなかった。本試験条件下では、試験飲料の長期(4週間)の摂取は安全であった。
【0046】
(vi-2)肌質測定
表2に肌質測定(水分、TEWL)の結果を示す。経表皮水分蒸散量で、有意な介入前後×群の交互作用はみられなかったが(p=0.629)、介入群のみに有意な低減がみられた(p<0.001)。
【0047】
【表2】
【0048】
(vi-3)考察
表2に示す通り、TEWLで、介入群のみに有意な低減がみられた。さらに皮膚水分量については、プラセボ群で有意に低下していたが、介入群では有意な変化が見られなかった。上記の通り、TEWLは、体内から角層を通じて揮散する水分量を表し、この値が小さい程、バリア機能に優れるといえる。サジー飲料摂取により、1日に必要な抗酸化作用のある栄養素の摂取が満たされ、バリア機能が改善され、肌が乾燥する時期であっても皮膚水分量の変化が見られなかったと考える。一方、プラセボ群では、バリア機能の有意な改善がみられず、気候の変化に伴い、皮膚水分量の有意な低下がみられたと考える。
【0049】
この機序の一つとして、サジー果汁に含まれるカロテノイド類等の抗酸化化合物により、紫外線及び外気からの刺激による炎症が抑制されたため、バリア機能の改善がみられたことが考えられる。サジー飲料をさらに長い期間摂取することにより、バリア機能が紫外線に対して強くなり、より確かな皮膚水分量の改善効果が確認できる可能性があると考えられる。また、サジー果実は、再生・修復に関与する幹細胞の動員を促進する作用を有するため、幹細胞へのダメージを抑制し総数の減少を防止することにより、バリア機能が保たれ、皮膚水分量の改善につながると考える。そのため、抗酸化化合物を多く含むプルーン飲料を含むプラセボ食品の摂取と比較しても、より高いバリア機能改善効果を有すると考える。本試験の結果より、サジー飲料を定期的に摂取することにより、肌の水分を逃しにくくし、光老化を抑制し、潤いのある健やかな肌を維持することができると考える。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の皮膚保湿剤および本発明の皮膚バリア機能改善剤は、食品、医薬品、化粧品およびこれらの添加剤として利用することができ、産業上有用である。
【要約】
【課題】新たな皮膚保湿剤を提供する。また、新たな皮膚バリア機能改善剤を提供する。
【解決手段】サジー果汁、サジー果汁乾燥物、およびサジー果実乾燥物からなる群から選択される1以上のサジー由来物を有効成分として含有することを特徴とする皮膚保湿剤。また、サジー果汁、サジー果汁乾燥物、およびサジー果実乾燥物からなる群から選択される1以上のサジー由来物を有効成分として含有することを特徴とする皮膚バリア機能改善剤。
【選択図】 なし