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特許7131808装着型歯科診療装置および装着型歯科診療システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】装着型歯科診療装置および装着型歯科診療システム
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
A61C19/00 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018113658
(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2019213778
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 翠
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 基
(72)【発明者】
【氏名】平良 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河崎 亮
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-213805(JP,A)
【文献】特開2001-340364(JP,A)
【文献】特開2015-016291(JP,A)
【文献】特開2004-159998(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037318(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科診療モジュールを身体に装着して診療するための装着型歯科診療装置であって、
前記歯科診療モジュールと、
この歯科診療モジュールを支持するモジュール支持部と、
このモジュール支持部を前記身体に装着する装着具と、を備え、
前記歯科診療モジュールは、
インスツルメントと、
前記インスツルメントに駆動エネルギを供給するエネルギ供給部と、
前記インスツルメントの動作を制御する動作制御部と、
少なくとも前記動作制御部を格納した本体と、
前記本体とは別体であって無線または有線によって少なくとも前記動作制御部と通信可能にそれぞれ接続される操作部および表示部と、
診療対象の患者に関する患者情報を取得する患者情報取得部と、
前記患者情報取得部によって取得された前記患者情報を前記表示部に表示させる表示制御部と、
通信ネットワークを介して通信可能な処理部を備えた情報共有先との間で前記患者情報を含む情報の送受信を行う通信部と、を備える装着型歯科診療装置。
【請求項2】
前記患者情報取得部は、前記診療対象の患者の脈拍、心拍、血圧の少なくとも1つを含む生体情報を前記患者情報として取得する生体情報取得部を含む、請求項1に記載の装着型歯科診療装置。
【請求項3】
前記患者情報取得部は、
前記診療対象の患者を撮影する撮影部と、
撮影された患者の顔画像情報を前記患者情報として取得する顔画像情報取得部と、を含む請求項1または請求項2に記載の装着型歯科診療装置。
【請求項4】
前記患者情報取得部は、
診療対象の患者を特定可能な情報である患者特定情報を取得する患者特定情報取得部と、
取得された患者特定情報を前記通信部によって通信ネットワークを介して前記情報共有先に送信することで、当該情報共有先から、前記患者情報として、前記診療対象の患者の診療情報を取得する診療情報取得部を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の装着型歯科診療装置。
【請求項5】
前記顔画像情報取得部によって取得された患者の顔画像情報を前記通信部によって通信ネットワークを介して前記情報共有先に送信することで、当該情報共有先から、前記患者情報として、前記診療対象の患者の診療情報を取得する診療情報取得部を含む、請求項3に記載の装着型歯科診療装置。
【請求項6】
患者の顔画像から予め抽出された顔の特徴点の情報を患者識別情報毎に記憶した特徴点情報記憶部と、
前記撮影部によって撮影された患者の顔画像から顔の特徴点の情報を抽出する特徴点情報抽出部と、
抽出された特徴点の情報を、前記特徴点情報記憶部に記憶された特徴点の情報と照合することで、前記診療対象の患者を識別する患者識別部と、
前記患者識別部によって識別された患者の識別情報を前記通信部によって通信ネットワークを介して前記情報共有先に送信することで、当該情報共有先から、前記患者情報として、前記診療対象の患者の診療情報を取得する診療情報取得部を含む、請求項3に記載の装着型歯科診療装置。
【請求項7】
前記診療情報は、患者のカルテ情報、患者の医療機関への予約情報、患者のX線画像情報、患者の口腔内スキャナ情報、患者のレセプト情報、治療歯の被せ物のCAD/CAM情報のうちのいずれかを含む請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の装着型歯科診療装置。
【請求項8】
前記診療情報へ書き込みがなされて当該診療情報に含まれるいずれかの情報が更新されると、予め定められた前記診療情報へ書き込みがなされたときの書込内容と当該書込内容に関連した前記情報共有先との対応規則にしたがって、いずれかの更新情報と当該更新情報に関連した情報共有先とを特定する更新情報特定部と、
前記通信部によって通信ネットワークを介して、前記更新情報特定部によって特定された更新情報を、当該更新情報に関連した前記情報共有先に送信し、当該更新情報を送信した旨を当該情報共有先に報知する更新報知部と、をさらに備えることを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の装着型歯科診療装置。
【請求項9】
前記通信部によって通信ネットワークを介して前記情報共有先から、前記インスツルメントのメンテナンス情報を取得するメンテナンス情報取得部をさらに備える、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の装着型歯科診療装置。
【請求項10】
前記歯科診療モジュール内に配設された少なくとも1つの装置について作動状態か否かを検出する作動状態検出部と、
前記作動状態検出部によって検出された前記装置の作動状態を示す装置情報を前記通信部によって通信ネットワークを介して前記情報共有先に通知する作動状態通知部と、をさらに備える請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の装着型歯科診療装置。
【請求項11】
前記操作部および表示部として一体型の装置を含み、前記一体型の装置は腕時計型またはタブレット端末である、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の装着型歯科診療装置。
【請求項12】
前記操作部および表示部として別体型の装置を含み、前記別体型の装置は、腕時計型の操作部またはメガネ型の表示部である、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の装着型歯科診療装置。
【請求項13】
前記エネルギ供給部は、前記インスツルメントに駆動エネルギとして電力を供給するバッテリを備え、
前記歯科診療モジュールは、前記バッテリを充電する充電部をさらに備え、
前記充電部は、前記バッテリに電気的に接続された自家発電部として、布タイプ太陽光発電機、ソーラーパネル、手動発電機、摩擦による発電が可能な衣服、または振動による発電が可能な靴のいずれかを含む請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の装着型歯科診療装置。
【請求項14】
請求項2に記載の装着型歯科診療装置と、前記情報共有先と、を備える装着型歯科診療システムであって、
前記装着型歯科診療装置または前記情報共有先に、
前記生体情報取得部により取得した生体情報を記憶する生体情報記憶部と、
診療中に取得する生体情報に基づいて前記生体情報記憶部から所定の統計解析を行い、前記患者の状態を判断する患者状態判断部と、を備え、
前記装着型歯科診療装置は、前記患者状態判断部の判断結果を報知する判断結果報知部を備えることを特徴とする装着型歯科診療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着型歯科診療装置に係り、特に、歯科診療モジュールを身体に装着して診療するための装着型歯科診療装置および装着型歯科診療装置を含む装着型歯科診療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科診療サービスを提供するための可搬式歯科診療装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された可搬式歯科診療装置は、訪問先での移動診療時に使用する歯科診療モジュールを運搬可能なケースに収容することで、訪問先で機動的に対応できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-19865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の可搬式歯科診療装置は、ケースに歯科診療モジュールを収容して使用するため、それぞれ個別に事情が異なる多様な訪問診療の現場に適用しにくい場合があった。
【0005】
訪問診療の現場は、患者の自宅、被災地の避難施設、病院、看護施設等の種々の異なる環境下に置かれている。例えば、訪問診療の現場によっては、狭い環境であるためにケースやインスツルメント等の機器を置く場所がない場合がある。また、置く場所があったとしてもインスツルメントホースの長さが足りず、インスツルメントが患者の口腔まで届かなかったりする場合がある。そこで、歯科医師、歯科衛生士や助手等(以下、「歯科医師等」という。)が歯科診療モジュールを自身の身体に装着した状態で診療を行うことが考えられるが、従来、そのような装置は知られていなかった。
【0006】
また、例えば、訪問診療の現場で診療対象の患者に関する患者情報を取得できれば診療に有益である。また、患者の歯の治療に必要な被せ物の形状・サイズの情報といった患者情報を、歯科医師等が訪問診療の現場に居ながら、例えば被せ物を作成する技工所との間で情報共有することができれば診療に有益である。しかしながら、従来、そのような仕組みは存在しなかった。
【0007】
本発明は、前記した事情に鑑みてなされたものであり、多様な歯科診療の現場において、狭い環境であっても診療を安定的に行うと共に現場で患者情報を取得して診療に役立てることが可能な装着型歯科診療装置および装着型歯科診療システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、装着型歯科診療装置は、歯科診療モジュールを身体に装着して診療するための装着型歯科診療装置であって、前記歯科診療モジュールと、この歯科診療モジュールを支持するモジュール支持部と、このモジュール支持部を前記身体に装着する装着具と、を備え、前記歯科診療モジュールは、インスツルメントと、前記インスツルメントに駆動エネルギを供給するエネルギ供給部と、前記インスツルメントの動作を制御する動作制御部と、少なくとも前記動作制御部を格納した本体と、前記本体とは別体であって無線または有線によって少なくとも前記動作制御部と通信可能にそれぞれ接続される操作部および表示部と、診療対象の患者に関する患者情報を取得する患者情報取得部と、前記患者情報取得部によって取得された前記患者情報を前記表示部に表示させる表示制御部と、通信ネットワークを介して通信可能な処理部を備えた情報共有先との間で前記患者情報を含む情報の送受信を行う通信部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、多様な歯科診療の現場において、狭い環境であっても診療を安定的に行うと共に現場で患者情報を取得して診療に役立てることができる装着型歯科診療装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る装着型歯科診療装置が適用された装着型歯科診療システムを示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る装着型歯科診療装置の外観を示す斜視図であり、身体に装着した状態を斜め前から見ている。
図3】本発明の実施形態に係る装着型歯科診療装置の外観を後ろから見た斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る装着型歯科診療装置の外観を前から見た斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る装着型歯科診療装置における歯科診療モジュールの内容を示す構成図である。
図6】歯科診療モジュールにおける情報取得基板の第1実施形態を模式的に示すブロック図である。
図7】歯科診療モジュールにおける情報取得基板の第2実施形態を模式的に示すブロック図である。
図8】歯科診療モジュールにおける情報取得基板の第3実施形態を模式的に示すブロック図である。
図9】歯科診療モジュールにおける情報取得基板の第4実施形態および第5実施形態を模式的に示すブロック図である。
図10】歯科診療モジュールの変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る装着型歯科診療装置1について、適宜図1から図6を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、装着型歯科診療システム100は、歯科医院内の診療室に設置された少なくとも1つの歯科治療装置101を備えている。歯科治療装置101は、患者に歯科治療を施すための装置であって診療に用いられる歯科用のインスツルメントや患者用椅子等を主に備えている。また、装着型歯科診療システム100は、訪問診療中の歯科医師等が身体Mに装着した少なくとも1つの装着型歯科診療装置1を備えている。
【0012】
図1に示すように、装着型歯科診療装置1は、通信ネットワークNWに接続されている。通信ネットワークNWは、有線LAN(Local Area Network)等の有線通信ネットワーク、無線LANやBluetooth(登録商標)等の無線通信ネットワーク、インターネットなどである。
【0013】
通信ネットワークNWには、装着型歯科診療装置1の情報共有先として、前記した歯科治療装置101と、歯科医院内の診療室に設置された情報処理装置102と、が接続されている。歯科治療装置101は、通信ネットワークNWと通信可能な処理部を備えている。また、通信ネットワークNWには、装着型歯科診療装置1の情報共有先として、例えば、インスツルメントの修理やメンテナンスを受け付けるコールセンタや、歯科医師または歯科技工士が歯科技工を行う技工所に設置された情報処理装置103が接続されている。また、通信ネットワークNWには、装着型歯科診療装置1の情報共有先として、例えば、インスツルメントを製造したメーカに設置された情報処理装置104が接続されている。これらの情報処理装置102~104は、通信ネットワークNWと通信可能な処理部を備えており、例えば一般的なパーソナルコンピュータ(PC)の他、タブレット型PC等の携帯型の端末機器等であってもよい。さらに、通信ネットワークNWには、クラウドサーバ105が接続されている。
【0014】
装着型歯科診療装置1は、通信ネットワークNWに接続されている歯科治療装置101、情報処理装置102~104、およびクラウドサーバ105との間で、後記する患者情報等の各種情報の通信を行うことが可能となっている。
【0015】
装着型歯科診療装置1は、図2に示すように、歯科診療モジュール2を身体Mに装着して歯科医師等が診療するための歯科診療装置である。この装着型歯科診療装置1は、例えば、図2から図4に示すように、歯科診療モジュール2を支持するモジュール支持部3と、モジュール支持部3を身体Mに装着する装着具4と、を備えている。
【0016】
歯科診療モジュール2は、医師等が診療目的や診療内容に応じて、診療するために必要な種々のインスツルメント5等を適宜選定したり、組み合わせたりして構成される。歯科診療モジュール2の詳細は後記する。
【0017】
モジュール支持部3は、歯科診療モジュール2の部分的な構成要素を分担してそれぞれ支持するインスツルメント支持部31と、本体支持部32と、容器ホルダ支持部33と、を備えている。
インスツルメント支持部31は、歯科診療モジュール2の一部であるインスツルメント5を支持するものである。インスツルメント5には、例えばマイクロモータ51やスケーラ53を含んでいる。
本体支持部32は、歯科診療モジュール2の一部である本体8を支持するものである。ここでは、本体8は、制御部等を格納した制御ボックスであるものとした。
容器ホルダ支持部33は、歯科診療モジュール2の一部である貯留容器61を保持するための容器ホルダ61aを支持するものである。
なお、インスツルメント5等を支持するとは、固定手段や容器に入れて固定して支持するものの他、インスツルメント5をトレー等の載置手段に置いて支持するものなどの種々の支持手段を適用することができる。
【0018】
装着具4は、モジュール支持部3を有する腰ベルト41と、腰ベルト41に連結されたショルダベルト42と、を備えている。
腰ベルト41は、モジュール支持部3によって歯科診療モジュール2を保持した状態で、身体Mに装着できるように、種々のサイズ調整機能を備えて構成されている。
図3図4に示すように、ショルダベルト42は、腰ベルト41の背部から肩部、および胸部を通って前部まで連結されている。ショルダベルト42は、身体Mの背部において背骨に沿って上下方向に延びる背部ベルト42aを備えている。ショルダベルト42は、身体Mの肩部から左右に分かれてそれぞれ胸部を通る右前ベルト42bと左前ベルト42cとを備えている。
【0019】
本実施形態においては、ショルダベルト42と腰ベルト41とを連結しているが、これに限定されるものでなく、連結せず、ショルダベルト42と腰ベルト41が独立していてもよい。
【0020】
図3図4に示す例では、右前ベルト42bには、マイクロモータ導通送出管52とスケーラ導通送出管54とを支持する導通送出管支持部43が配設されている。導通送出管支持部43は、適切な保持力を付与して支持する帯状のバンドであり、身体M(図2参照)の肩部から胸部にかけて1ヶ所乃至複数ヶ所に設けられている。導通送出管支持部43により、マイクロモータ導通送出管52とスケーラ導通送出管54は、身体Mの背部から肩部に向かって上方へ延び、肩部から胸部を通って下方へ延びるように右前ベルト42bに沿って支持される。
【0021】
図5に示すように、歯科診療モジュール2は、例えば、インスツルメント5と、注液装置6と、本体8と、圧縮エア供給部81と、電源部82と、制御部83と、操作部84と、表示部Dと、充電部90と、を備えている。本体8は、インスツルメント5を駆動する制御部83を少なくとも格納する。ここでは、例えば、圧縮エア供給部81、電源部82および制御部83が本体8に収容されている。操作部84および表示部Dは、本体8とは別体であって無線または有線によって制御部83と通信可能にそれぞれ接続される。無線の場合、近距離無線通信規格には、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)を含む。
【0022】
インスツルメント5は、治療器具であるマイクロモータ51と、マイクロモータ51と本体8とを導通させる導通送出管であるマイクロモータ導通送出管52と、スケーラ53と、スケーラ53と本体8とを導通させる導通送出管であるスケーラ導通送出管54と、を備えている。
【0023】
ここで、「導通送出管」は、インスツルメント5に必要な駆動エネルギ、診療液H等を供給するための供給流路であり、複数の供給管を束ねたものでもよいし、複数の供給管を1つの管に内装してもよい。
【0024】
「インスツルメント5」は、説明の便宜上、個々のインスツルメント5であるマイクロモータ51とスケーラ53等の治療器具を区別する必要がない場合に総称して表記する。
【0025】
マイクロモータ51には、先端部にハンドピースHPが装着されている。マイクロモータ導通送出管52には、マイクロモータ51を駆動する駆動源である電源部82等へ導通させる導通管であるケーブル52a、診療液Hを供給する送出管である診療液配管52b、および圧縮エアを供給する圧縮エア供給管81bが含まれている。
【0026】
スケーラ導通送出管54には、スケーラ53へ電力を供給する導通管であるケーブル54a、および、診療液Hを供給する送出管である診療液配管54bが内装されている。
【0027】
注液装置6は、インスツルメント5に診療液Hを供給するものである。ここで、診療液Hは、歯科診療に使用するための洗浄液、消毒液、水等の液体であるが、特に限定されない。注液装置6は、例えば、貯留容器61と、ポンプ62と、診療液配管52bと、電磁弁52cと、診療液配管54bと、電磁弁54cと、を備えている。
【0028】
貯留容器61は、診療液Hを貯留する。貯留容器61は、腰ベルト41に固定された容器ホルダ61a(図3参照)によって腰ベルト41に取り付けられている。貯留容器61に貯留された診療液Hを大気圧に開放した状態で吸引するので、貯留容器61は、ペットボトルを使用することができる。これにより、訪問先での歯科診療時においても可搬性、機動性、入手性に優れ、利便性を向上させることができる。
【0029】
診療液配管52bは、ポンプ62からマイクロモータ51へ連通する。診療液配管54bは、ポンプ62からスケーラ53へ連通する。電磁弁52c、電磁弁54c、ポンプ62は、電源部82から供給される電力によって駆動する。電磁弁52cは、診療液配管52bに配設され、マイクロモータ51への注液量を制御する。電磁弁54cは、診療液配管54bに配設され、スケーラ53への注液量を制御する。これら電磁弁52c,54cは、後記する水量ボリュームスイッチで調整される。
ポンプ62は、貯留容器61に貯留された診療液Hを大気圧に開放した状態で吸入管62aから吸引する。ポンプ62は、診療液配管52bを介して診療液Hをマイクロモータ51へ供給する。ポンプ62は、診療液配管54bを介して診療液Hをスケーラ53へ供給する。
【0030】
圧縮エア供給部81は、外部コンプレッサCに接続するためのエア充填接続部81aと、エア充填接続部81aとマイクロモータ51とを連結する圧縮エア供給管81bと、を備えている。圧縮エア供給部81は、エア充填接続部81aに接続された外部コンプレッサCによって、マイクロモータ導通送出管52からマイクロモータ51へモータ冷却用の圧縮エアや患部洗浄用のスプレーエアを供給する。
【0031】
電源部82は、インスツルメント5に駆動エネルギを供給するエネルギ供給部である。電源部82は、インスツルメント5に電力を供給するバッテリ82aと、商用電源等の外部電源に接続するための接続部82bと、電源スイッチ82cと、を備えている。電源部82は、接続部82bに電源ケーブル95を介して商用電源等の外部電源を接続した場合には外部電力を使用してインスツルメント5を駆動したり、バッテリ82aに充電したりすることができる。また、接続部82bから外部電源を切り離した場合には、バッテリ82aを使用してインスツルメント5を駆動することができる。
【0032】
充電部90は、バッテリ82aを充電するものであり、バッテリ82aに電気的に接続された自家発電部91を備えている。装着型歯科診療装置1は、訪問診療中の歯科医師等が身体Mに装着することから、診療室に固定された歯科治療装置101(図1参照)と比較して、インスツルメント5に供給する駆動エネルギ等の確保が極めて重要である。充電部90が自家発電部91を備えることにより、訪問診療の現場が、被災地の避難施設等の商用電源が利用できない環境であったとしてもバッテリ82aを充電することができる。
【0033】
自家発電部91は、例えば、布タイプ太陽光発電機91aを含んでいる。布タイプ太陽光発電機91aとしては、例えば、衣服に貼り付ける太陽電池や、球状太陽電池を基にした太陽光発電糸を横糸に、かつ、汎用の繊維を縦糸にして織り上げた生地等、従来公知のものを用いることができる。図2に示す布タイプ太陽光発電機91aは、術者の衣服の右袖に巻くようにして固定されているが、装着態様はこれに限らず、例えば術者のキャップに固定するようにしてもよい。
【0034】
表示部Dは、患者情報等の各種情報を表示するものであり、例えば、液晶ディスプレイ等から構成される。
操作部84は、インスツルメント5を操作するインスツルメント操作部や、患者情報等の各種情報の入出力管理を行う情報入出力操作部を備えている。
【0035】
インスツルメント操作部としては、マイクロモータ51およびスケーラ53をオン・オフするメインスイッチや、例えば水量や回転速度を制御するなどのインスツルメントを駆動するための付加的なサブスイッチを備えている。例えば、サブスイッチには、選択スイッチ、水量ボリュームスイッチ、パワーボリュームスイッチ、オプチカスイッチ、正転逆転スイッチ、注水スイッチを設けてもよい。
【0036】
選択スイッチは、マイクロモータ51またはスケーラ53を選択するものである。水量ボリュームスイッチは、マイクロモータ51およびスケーラ53へ供給する診療液Hの供給量を調整するものである。パワーボリュームスイッチは、マイクロモータ51やスケーラ53の駆動量を調整するものである。オプチカスイッチは、インスツルメント5に設けられた照明用のランプ(不図示)を点灯するものである。正転逆転スイッチは、マイクロモータ51の回転方向を選択するものである。注水スイッチは、診療液Hを患部に注水するものである。
【0037】
情報入出力操作部としては、例えば、患者情報等の各種情報を表示部Dに表示させる表示スイッチ、患者情報等の各種情報を患者情報記憶部14に記録する記録スイッチ、通信ネットワークNWを介して患者情報等の各種情報を送受信する通信スイッチを備えている。また、一般的な携帯端末機で可能な文字入力等の操作を行う操作部を含むことができる。
【0038】
操作部84は、図2に示す操作スイッチ84aのように、手に持って操作するものであってもよい。操作部84は有線、無線に限定されない。例えばスマートフォンなどの外部機器と制御部83、操作部84を連携して、音声認識、画像認識による制御や操作、画面に表示されたスライダーバーによるインスツルメント5の駆動量の制御や操作などを行うこともできる。
【0039】
つまり、操作部84および表示部Dが一体型の装置であっても構わない。このような一体型の装置は、図2に示す操作部85のようなタブレット端末や、図2に示す操作部86のような腕時計型端末であってもよい。操作部84として、例えばタブレット端末(操作部85)を使用する場合、操作部85を保持する操作部保持部70を設けることが好ましい。
【0040】
操作部84を複数備えることもできる。その場合、例えばインスツルメント操作部であれば、オン・オフするメインスイッチと、メインスイッチに比べて操作する頻度が少ないサブスイッチを個別の操作部として分けてもよい。例えばメインスイッチを操作スイッチ84aで操作して、サブスイッチを操作部85で操作しても構わない。
なお、図5図6図8に記載された操作部84は、操作スイッチ84a、操作部85、操作部86等を含んでいる。また、以下の説明では、操作スイッチ84a、操作部85、操作部86等を特に区別しない場合、単に操作部84と表記する。
【0041】
制御部83は、インスツルメント5の動作を制御する制御部(動作制御部)や、患者情報等の各種情報の通信を行う制御部を備えている。ここでは、制御部83は、図3および図5に示すように、マイクロモータ基板83aと、スケーラ基板83bと、情報取得基板83cとを備えている。
【0042】
マイクロモータ基板83aは、マイクロモータ51の動作を制御するものであり、スケーラ基板83bは、スケーラ53の動作を制御するものである。これらマイクロモータ基板83aおよびスケーラ基板83bは、歯科医院内の診療室に設置された歯科治療装置101(図1参照)に含まれる基板と同様に、前記操作部84のメインスイッチやサブスイッチに連動してマイクロモータ51およびスケーラ53を駆動する。これらの基板の構成は、従来公知なので、これ以上の説明を省略する。
【0043】
次に、情報取得基板83cについて図6を参照して説明する。
情報取得基板83cは、患者情報の取得を行うものである。ここで、情報の取得とは、例えば装着型歯科診療装置1を装着した術者が、装着型歯科診療装置1を使用して情報を取得すること全般を意味する。よって、情報を取得することには、(1)訪問診療の現場にいる患者から情報を収集すること、(2)装着型歯科診療装置1に記憶された情報を取り出すこと、(3)装着型歯科診療装置1を用いて通信ネットワークから情報を受信すること、の少なくとも1つを含んでいる。
【0044】
また、患者情報とは、患者個人を特定する情報や、患者の診療に関わる診療情報を含んでいる。患者個人を特定する情報は、例えば氏名や住所等の本人確認ができる個人情報、顔写真(顔画像)、その他の生体で認証ができる情報等を含む。診療情報は、患者の歯科全般に係る情報を含む。
【0045】
診療情報は、具体的には、例えば、患者のカルテ情報、患者の医療機関への予約情報、患者のX線画像情報、患者の口腔内スキャナ情報、患者のレセプト情報、治療歯の被せ物のCAD/CAM情報のうちのいずれかを含む。これらの患者情報は、診療目的以外に使用されないように厳重に管理される。例えば通信を用いて患者情報をやりとりする場合には、暗号化など公知の情報セキュリティ対策が講じられて安全が確保された通信ネットワークを利用する。
【0046】
情報取得基板の第1実施形態を図6に示す。
第1実施形態の情報取得基板83cは、図6に示すように、患者情報取得部11と、表示制御部12と、通信部13と、患者情報記憶部14と、を備えている。
【0047】
患者情報取得部11は、診療対象の患者に関する患者情報を取得する。表示制御部12は、患者情報取得部11によって取得された患者情報を表示部Dに表示させる。これらは、例えば、CPU(Central Processing Unit)が所定のプログラムをRAM(Random Access Memory)に展開して実行することで前記した機能を果たす。通信部13は、例えばネットワークカード等の所定の通信インタフェースからなり、通信ネットワークNWを介して情報共有先(情報処理装置102~104等)との間で患者情報を含む情報の送受信を行う。
【0048】
患者情報記憶部14は、例えば、RAMやROM(Read Only Memory)からなり、患者情報等の必要な情報を記憶する。ここでは、患者情報記憶部14は、後記する各種情報を記憶する記憶領域を備えている。また、患者情報記憶部14には、患者情報を取得するための動作プログラムがインストールされている。
【0049】
患者情報取得部11は、一例として、患者特定情報取得部15aと、顔画像情報取得部15bと、生体情報取得部15cと、を備えている。詳細は後記するが、これらは、いずれも訪問診療の現場にいる患者から情報を収集する機能を有している。これらを以下では便宜的に第1グループと呼ぶ。
【0050】
患者情報取得部11は、一例として、第1診療情報取得部16aと、第2診療情報取得部16bと、を備えている。詳細は後記するが、これらは、いずれも装着型歯科診療装置1を用いて通信ネットワークから情報を受信する機能や、装着型歯科診療装置1に記憶された情報を取り出す機能を有している。これらを以下では便宜的に第2グループと呼ぶ。
【0051】
患者情報取得部11は、上記第1グループ(患者特定情報取得部15a、顔画像情報取得部15b、生体情報取得部15c)と、第2グループ(第1診療情報取得部16a、第2診療情報取得部16b)とが連動するように動作させてもよいし、それぞれ単独で動作させてもよい。このような患者情報取得部11の動作を、以下では4つの具体例に分けて説明する。
【0052】
(第1の動作例)
患者情報取得部11は、図6に示すように、患者特定情報取得部15aと、第1診療情報取得部16aと、を備えている。なお、図6には、患者情報取得部11の他の機能部を図示しているが、これらについては後記する。
【0053】
患者特定情報取得部15aは、診療対象の患者を特定可能な情報である患者特定情報を取得する。患者特定情報は、例えば、図2に示す操作部85から文字入力できるような患者氏名や診察券番号等の情報であることが好ましい。患者特定情報取得部15aによって取得された患者特定情報は、患者情報記憶部14に、患者別の患者特定情報141として記憶保持され、必要に応じて患者特定情報取得部15aによって読み出される。取得された情報は、表示部Dに表示されたり、第1診療情報取得部16aに出力されたりする。
【0054】
第1診療情報取得部16aは、患者特定情報取得部15aによって取得された患者特定情報を通信部13によって通信ネットワークNWを介して情報処理装置102に送信することで、情報処理装置102から、患者情報として、診療対象の患者の診療情報を取得するものである。取得された診療情報は、患者情報記憶部14に、患者別の診療情報144として記憶保持され、必要に応じて第1診療情報取得部16aによって読み出される。第1診療情報取得部16aは、例えば、歯科医院内の診療室に設置された情報処理装置102(図1参照)から、例えば患者のカルテ情報を取得する。カルテ情報が表示部Dに表示されることにより、訪問診療の現場において、術者は、歯科医院で保管されているカルテ情報を閲覧することが可能となり、現場での診療に有益となる。
【0055】
(第2の動作例)
患者情報取得部11は、図6に示すように、撮影部9と、顔画像情報取得部15bと、を備えている。撮影部9は、診療対象の患者を撮影するものである。撮影部9としては、例えば、図2に示す操作部85のカメラ機能を用いることができる。
顔画像情報取得部15bは、撮影部9によって撮影された患者の顔画像情報を患者情報として取得するものである。患者の顔画像情報は、患者個人を特定することが可能である。これにより、例えば氏名等の文字を入力する場合の入力ミスを防止でき、手軽に操作できるメリットがある。顔画像情報取得部15bによって取得された顔画像情報は、患者情報記憶部14に、患者別の顔画像情報142として記憶保持され、必要に応じて顔画像情報取得部15bによって読み出される。取得された情報は、表示部Dに表示される。
【0056】
(第3の動作例)
患者情報取得部11は、図6に示すように、撮影部9および顔画像情報取得部15bに加えて、第2診療情報取得部16bを備えている。
第2診療情報取得部16bは、顔画像情報取得部15bによって取得された患者の顔画像情報を通信部13によって通信ネットワークNWを介して情報処理装置102に送信することで、情報処理装置102から、患者情報として、診療対象の患者の診療情報を取得する。取得された診療情報は、患者情報記憶部14に、患者別の診療情報144として記憶保持され、必要に応じて第2診療情報取得部16bによって読み出される。第2診療情報取得部16bは、第1診療情報取得部16aと同様の効果を奏する。
【0057】
(第4の動作例)
患者情報取得部11は、図6に示すように、生体情報測定部10と、生体情報取得部15cと、を備えている。
生体情報測定部10は、診療対象の患者の脈拍、心拍、血圧の少なくとも1つを含む生体情報を測定するものである。生体情報測定部10としては、公知の脈拍計、心拍計、血圧計等を用いることができる。
生体情報測定部10は、訪問診療の現場の設備(外部装置)であってもよい。その場合、比較的大きいものや重いものでも用いることができる。例えば、患者が横になるだけで脈拍数と心拍数とをリアルタイムで測定するマットや、患者が座る椅子のシートに内蔵された脈拍計等も利用できる。また、生体情報測定部10は、例えば、脈拍、心拍、血圧、体温、心電図等を常時測定またはインターバル測定可能な生体情報モニタであってもよい。生体情報モニタは医療用でも歯科用でも構わない。生体情報モニタとして、所定の時間間隔(例えば5分、10分、15分)で血圧を測定して記録することができるような市販装置を用いてもよい。
【0058】
生体情報測定部10は、装着型歯科診療装置1の本体8に格納できるような小型の機器として歯科診療モジュール2に備えてもよい。例えば患者の手首に装着して計測できる脈拍計等を用いてもよい。また、生体情報測定部10は、例えばパルスオキシメータであってもよい。パルスオキシメータは、例えば、指の先端部分にプローブをはさみ、そこから光を出して、脈拍とSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)を測定するものである。これによれば、パルスオキシメータは、小型軽量安価で、脈拍を診療中に常時測定し続けることができる。
【0059】
生体情報取得部15cは、生体情報測定部10から、診療対象の患者の生体情報を患者情報として取得するものである。生体情報取得部15cは、例えば情報取得基板83c上にコネクタ(図示省略)を備えており、このコネクタを通じて、生体情報測定部10からの測定信号を入力することができる。生体情報測定部10が、例えば生体情報モニタやパルスオキシメータといった機器である場合、これら機器の測定信号出力ケーブルの出力端子を、生体情報取得部15cのコネクタに接続されて使用される。生体情報取得部15cにより取得された生体情報は、患者情報記憶部14に、患者別の生体情報143として記憶保持され、必要に応じて生体情報取得部15cによって読み出される。
【0060】
訪問診療の現場が、例えば被災地の避難施設である場合、普段は健康に自信がある人でも不安や恐怖のために、脈が乱れて平時よりも痛みに敏感になりがちである。また、訪問診療の現場が、患者の自宅や看護施設等であっても、診療に対するストレスに強くはない患者が多いのも実情である。例えば高齢者、寝たきりの患者、持病を有する患者、あるいは通院が難しいが手術が必要な患者の場合もある。生体情報取得部15cを備えることで、患者のバイタル情報を正確に知ることができ、この有益な情報により、治療を続行したり中断したりするなど臨機応変に治療を行うことができる。
【0061】
次に、図6の情報取得基板83cと、図1に示す装着型歯科診療システム100との関係について図1を参照して説明する。本実施形態の装着型歯科診療システム100では、通信ネットワークNWを介した情報共有先(情報処理装置102~104等)間において既存の情報共有システムが存在することを前提にしている。この既存の情報共有システムにおいては、例えば、メーカは、歯科医院におけるインスツルメント5のメンテナンスに関して、情報処理装置104において状況を確認したり、情報処理装置104から歯科医院に設置された情報処理装置102にアナウンスを表示させたりすることができる。また、歯科医院のドクターやスタッフ等のユーザは、診療室に設置された情報処理装置102から、通信ネットワークNW上に設けられたコールセンタの情報処理装置103にクレーム等の情報を送ることができる。このようなメンテナンスの情報等の様々な情報を通信ネットワークNW上にあるクラウドサーバ105に記憶して管理することも可能である。
【0062】
そして、図6に示す情報取得基板83cが上記のように構成されているので、装着型歯科診療装置1を装着して訪問診療の現場で治療を行う術者の操作によって、装着型歯科診療装置1は、現場にいる患者から取得した患者情報(例えば患者の氏名)を、通信ネットワークNWを介して、例えば歯科医院内の診療室に設置された情報処理装置102に伝送することができる。この場合、例えば、歯科医院のユーザは、現場で術者が治療している患者に関する患者情報(患者の氏名)を情報処理装置102の表示部に表示させて、確認することができる。そして、歯科医院のユーザは、当該患者のカルテ情報など現場で必要とする患者情報(診療情報)を現場の装着型歯科診療装置1に送信することができる。これにより、装着型歯科診療装置1は、通信ネットワークNWを介して、情報処理装置102から受信することで取得された患者情報(診療情報)を、表示部Dに表示したり、患者情報記憶部14に保存したりする。したがって、現場にいる術者は、例えばカルテ情報等の診療情報(患者情報)を参照することで、現場にいる患者に対して適切な診療を行うことができる。
【0063】
また、装着型歯科診療装置1を装着して訪問診療の現場で治療を行う術者が、患者の歯の治療に必要な被せ物に関する情報や患者氏名を含む患者情報を、通信ネットワークNWを介して、例えば技工所に設置された情報処理装置103や歯科医院に設置された情報処理装置102との間で送受信することもできる。例えば、技工所の歯科技工士等のユーザは、情報処理装置103を用いて、患者情報(被せ物と患者氏名の情報)を現場で治療している術者に送ってもよい。
【0064】
ここで、被せ物の情報は、CAD/CAM冠(被せ物)情報を含む。CAD/CAM冠は、歯の形状をスキャンしたデータをコンピュータに入力し、所定材料のブロックをミリングマシンで削って歯の形状に加工したものである。また、患者のカルテには、例えばCAD/CAM冠(被せ物)に使用した材料の名称等を記載して管理することになっている。また、レセプトにもCAD/CAM冠等の情報や、患者が歯科用金属を原因とする金属アレルギーを有するか否かが分かるように記載されている。こうした情報も、患者情報として、現場の術者、技工所、歯科医院等の間で情報を共有することもできる。したがって、現場にいる術者は、例えばカルテ情報等の診療情報(患者情報)を参照することで、現場にいる患者に対して適切な診療を行うことができる。
【0065】
次に、情報取得基板の第2実施形態について図7を参照して説明する。
図7に示す情報取得基板83dは、患者情報取得部11の代わりに患者情報取得部11dを備える点が第1実施形態の情報取得基板83cと異なっている。なお、図6に示した第1実施形態の構成と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0066】
患者情報取得部11dは、図7に示すように、撮影部9および顔画像情報取得部15bに加えて、特徴点情報記憶部17と、特徴点情報抽出部18と、患者識別部19と、第3診療情報取得部16dと、を備えている。
【0067】
特徴点情報記憶部17は、例えば、画像メモリ等からなり、患者の顔画像から予め抽出された顔の特徴点の情報を患者識別情報毎に記憶している。
特徴点情報抽出部18は、撮影部9によって撮影された患者の顔画像から顔の特徴点の情報を抽出する。
患者識別部19は、特徴点情報抽出部18によって抽出された特徴点の情報を、特徴点情報記憶部17に記憶された特徴点の情報と照合することで、診療対象の患者を識別する。
【0068】
第3診療情報取得部16dは、患者識別部19によって識別された患者の識別情報を通信部13によって通信ネットワークNWを介して情報処理装置102に送信することで、情報処理装置102から、患者情報として、診療対象の患者の診療情報を取得する。取得された診療情報は、患者情報記憶部14に、患者別の診療情報144として記憶保持され、必要に応じて第3診療情報取得部16dによって読み出される。
【0069】
患者情報取得部11dによれば、通信ネットワークNWに送信する患者の識別情報は、患者の氏名や診察券番号の情報とすることができるので、顔画像情報を送信する場合に比べてデータ容量を低減することができる。また、患者の氏名や診察券番号を患者情報として受信する歯科医院においては、顔画像情報よりも確実に患者個人を特定し、患者を取り違えるようなミスを防止して、当該患者の診療情報を送り返すことができる。
【0070】
次に、情報取得基板の第3実施形態について図8を参照して説明する。
図8に示す情報取得基板83eは、メンテナンス情報取得部21と、作動状態検出部22aと、作動状態通知部22bと、を追加で備える点が第1実施形態の情報取得基板83cと異なっている。なお、図6に示した第1実施形態の構成と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0071】
メンテナンス情報取得部21は、通信部13によって通信ネットワークNWを介して、例えばインスツルメントを製造したメーカに設置された情報処理装置104から、インスツルメント5のメンテナンス情報を取得するものである。これにより、訪問診療の現場においても、インスツルメント5のメンテナンスを確実に行うことができる。
【0072】
作動状態検出部22aは、歯科診療モジュール2内に配設された少なくとも1つの装置について作動状態か否かを検出する。歯科診療モジュール2内の装置には、例えば、バッテリ82a、電源スイッチ82c、マイクロモータ基板83a、スケーラ基板83b、注液装置6、貯留容器61等が含まれる。作動状態検出部22aは、歯科診療モジュール2内の装置がON状態(作動状態)かOFF状態かを示す信号を作動状態通知部22bに出力する。
【0073】
作動状態通知部22bは、作動状態検出部22aによって検出された装置の作動状態を示す装置情報を取得して、この装置情報を通信部13によって通信ネットワークNWを介して情報処理装置104に通知する。作動状態通知部22bは、装置がON状態(作動状態)かOFF状態かを示す装置情報を、表示制御部12を介して表示部Dに表示させることもできる。
【0074】
このように構成することで、多様な歯科診療の現場において診療を安定的に行うことができる。例えば、訪問診療の現場に、歯科医院から2人の術者が派遣されている場合を想定する。この場合、一方の装着型歯科診療装置1で検出された作動状態から、歯科診療モジュール2内の装置がON状態であることを知り、他方の装着型歯科診療装置1で検出された作動状態から、歯科診療モジュール2内の装置がOFF状態であることを知ることもできる。このとき、歯科医院に残っているユーザは、訪問診療の現場に派遣された1人の術者が例えば診療中であり、もう1人の術者は例えば診療を終了したことを認識できる。したがって、診療を終了した術者に、他の訪問診療の現場に向かうように指示を送ることも可能である。あるいは、診療を終了した術者の装着型歯科診療装置1に、充分な充電を行ってから、他の訪問診療の現場に向かうように指示を送ることも可能である。
【0075】
次に、情報取得基板の第4実施形態について図9を参照して説明する。
図9に示す情報取得基板83fは、更新情報特定部23と、更新報知部24と、を備えている。図6に示した第1実施形態の情報取得基板83cの構成と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。なお、生体情報活用部25については後記する。
【0076】
更新情報特定部23は、診療情報144へ書き込みがなされて当該診療情報に含まれるいずれかの情報が更新されると、予め定められた対応規則231にしたがって、いずれかの更新情報と当該更新情報に関連した情報共有先とを特定するものである。ここで、情報共有先とは、装着型歯科診療システム100における歯科医院、技工所、メーカ等に設置された歯科治療装置101や情報処理装置102~104等のことである。また、対応規則231とは、患者情報記憶部14に記憶された診療情報144へ書き込みがなされたときの書込内容と、当該書込内容に関連した情報共有先と、の対応関係を設定した規則である。
【0077】
対応規則231において、予め設定された書込内容の種類としては、例えば、治療内容、患者が痛みを感じたかなどの状態情報、義歯に関する情報等を用いることができる。この設定された書込内容の種類は、書込イベントの発生条件と関連付けられている。書込イベントの発生条件は、例えば更新対象の診療情報のファイル名やタグ名、あるいは更新日時等のプロパティ等を含むことができる。なお、更新情報特定部23は、このような書込イベントの発生条件を監視することができる。
【0078】
対応規則231において、予め設定された情報共有先には、例えば、自らが所属する歯科医院に設置された情報処理装置102や、技工所に設置された情報処理装置103等を挙げることができる。
対応規則231には、例えば、以下の規則1や規則2を含めることもできる。
規則1)診療情報144への書込内容の種類が治療内容や患者の状態などの情報である場合、関連した情報共有先は、歯科医院の診療室に設けられた情報処理装置102とする。
規則2)診療情報144への書込内容の種類が義歯に関する情報である場合、関連した情報共有先は、技工所に設けられた情報処理装置103とする。
【0079】
更新報知部24は、通信部13によって通信ネットワークNWを介して、更新情報特定部23によって特定された更新情報を、当該更新情報に関連した情報共有先(情報処理装置102~104等)のいずれかに送信し、当該更新情報を送信した旨を当該情報共有先に報知するものである。更新報知部24は、更新情報として、例えば更新されたファイルを送信する。
【0080】
(第4実施形態の動作の具体例1)
訪問診療の現場において、装着型歯科診療装置1を装着した歯科衛生士は、診療が終わると、装着型歯科診療装置1の操作部84から本日の治療内容などの情報を、患者情報記憶部14の診療情報144へ書き込むことができる。このような書込イベントが発生したとき、更新情報特定部23は、診療情報144に含まれる治療内容などの情報が更新されたと判定し、対応規則231の上記規則1にしたがって、情報共有先が情報処理装置102であるものとして特定する。そして、更新報知部24は、通信部13によって通信ネットワークNWを介して、本日の治療内容などの更新情報を、情報処理装置102に送信し、当該更新情報を送信した旨を当該情報処理装置102に報知する。これにより、歯科医院では、診療室に設けられた情報処理装置102が、更新情報を受信した旨を表示し、これを見た歯科医師が、受信した更新情報を確認することで、訪問診療の現場で行われた治療内容を知り、情報の共有を行うことができる。
【0081】
(第4実施形態の動作の具体例2)
訪問診療の現場において、装着型歯科診療装置1を装着した歯科医師は、診療中または診療が終わると、装着型歯科診療装置1の操作部84から義歯に関する情報を、患者情報記憶部14の診療情報144へ書き込むことができる。このような書込イベントが発生したとき、更新情報特定部23は、診療情報144に含まれる義歯に関する情報が更新されたと判定し、対応規則231の上記規則2にしたがって、情報共有先が情報処理装置103であるものとして特定する。そして、更新報知部24は、通信部13によって通信ネットワークNWを介して、義歯に関する情報を、情報処理装置103に送信し、当該更新情報を送信した旨を当該情報処理装置103に報知する。これにより、技工所では、情報処理装置103が、更新情報を受信した旨を表示し、これを見た歯科技工士が、受信した更新情報を確認することで、情報の共有を行うことができる。
【0082】
次に、図9に示す生体情報活用部25について説明する。生体情報活用部25は、装着型歯科診療装置1、または、装着型歯科診療システム100の情報共有先(情報処理装置102~104等)が備える。ここでは、一例として、装着型歯科診療装置1が生体情報活用部25を備えている形態を、情報取得基板の第5実施形態として説明する。
【0083】
生体情報活用部25は、前記した生体情報測定部10および生体情報取得部15cを前提として、訪問診療の患者から診療中に取得した生体情報を診療に役立てるための処理部である。生体情報活用部25は、図9に示すように、生体情報記憶部26と、患者状態判断部27と、判断結果報知部28と、を備えている。
【0084】
生体情報記憶部26は、生体情報取得部15cにより取得した生体情報を記憶する。生体情報記憶部26に記憶される生体情報は、患者情報記憶部14に記憶される生体情報143と同様であるが、後記する統計処理のために、膨大なデータを有する点が相違している。生体情報記憶部26に記憶される生体情報の種類や記憶構造は、生体情報測定部10の種類、測定項目、測定方法等に応じて適宜設定される。
例えば、生体情報測定部10がパルスオキシメータであって、脈拍を診療中に常時測定できる場合、患者名と、脈拍とSpO2とを少なくとも含むことができる。また、脈拍の波形をそのまま記録しておいてもよい。
また、例えば、生体情報測定部10が生体情報モニタであって、血圧を10分間隔で測定して記録できる場合、患者名と、10分毎のデータとしての収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低値血圧)とを少なくとも含むことができる。この場合、測定データであり生体情報は、血圧の他に、脈拍、体温、心電図データ等を含めてもよい。
【0085】
生体情報記憶部26は、関連診療情報記憶部261を備えることができる。関連診療情報記憶部261は、患者特定情報としての患者名、治療履歴、患者状態等を過去の生体情報と関連付けて記憶している。ここで関連付けられている患者状態とは、治療時の痛みやストレスに関する患者の反応に関する情報を少なくとも含む。患者状態の情報は、歯科医師等が診療後にカルテに記載した所見と、診療可否の情報との組合せデータでもよい。患者状態の情報は、歯科衛生士が診療後にカルテに記載した瞬間的な痛み、顔色、皮膚や粘膜が青紫色になるチアノーゼが現れたかといった情報と、診療可否の情報との組合せでもよい。患者状態の情報は、生体情報測定部10で測定可能な患者の心拍や脈拍の急激な変化を表す波形や、血圧の時間的な変化を表す波形と、診療可否の情報との組合せであってもよい。
【0086】
患者状態判断部27は、診療中に取得する生体情報に基づいて生体情報記憶部26から所定の統計解析を行い、患者の状態を判断するものである。患者状態判断部27は、生体情報取得部15cによって取得する生体情報に基づいて、生体情報記憶部26に蓄積された膨大なデータから、診療中の患者が痛みやストレスを感じているか否かを推定する。患者状態判断部27は、診療中の患者が痛みやストレスを感じていると推定される場合、患者の状態は診療に適さない旨(NG:診療否)を判断結果報知部28に出力する。患者状態判断部27は、診療中の患者が痛みやストレスに耐えられる推定される場合、患者の状態は診療可能である旨(OK:診療可)を判断結果報知部28に出力する。
【0087】
本実施形態では、患者状態判断部27は、機械学習部271を備えている。機械学習部271は、学習段階において、生体情報記憶部26に記憶された所定の生体情報を入力すると、関連診療情報記憶部261に記憶された患者状態の情報を対応する出力値として出力するように機械学習を行う学習器として機能する。機械学習の方法は、特に限定されず、例えば、ニューラルネットワーク等の一般的な機械学習技術を利用することができる。所定の患者について過去に取得した生体情報のデータが充分には蓄積されていない場合には、他の一般的な患者の生体情報のデータを利用して学習を行ってもよい。その場合、蓄積データが少ない患者と同年代の患者のデータや、当該患者と同じ持病を有している患者のデータ等を利用して一般的な患者状態の情報を学習することもできる。
【0088】
この機械学習部271は、推定段階においては、学習済みの学習器として入力情報に応じて出力値を返す推定器として機能する。すなわち、機械学習部271は、推定段階においては、学習した生体情報と患者状態の情報との対応関係に基づいて、生体情報取得部15cによって入力として与えられる診療中の患者の生体情報から演算処理を実行することにより推定される患者状態の情報を抽出して出力する。
【0089】
判断結果報知部28は、患者状態判断部27の判断結果を報知するものである。判断結果報知部28は、患者状態判断部27によって診療不可(NG)と判別された場合にその旨を報知部から報知する。報知部としては例えば表示部Dを流用してもよい。本実施形態では、報知部は、一例として、操作部84兼用のスマートフォンからのブザー等を用いた警報とすることができる。また、音の場合、何らかのメロディーでもよいし、インスツルメント使用中に伝達できるようにスマートフォンの振動(バイブレーション)であってもよい。加えて、表示部D兼用のスマートフォンによって文字(NG)および色(赤)で表示してもよい。なお、判断結果報知部28は、患者状態判断部27によって診療可(OK)と判別された場合にその旨を報知部から報知するようにしてもよい。診療可(OK)の場合、緊急性を有さないことから、例えば、表示部D兼用のスマートフォンに文字(OK)および色(緑)で表示することとしてもよい。
【0090】
(第5実施形態の動作の具体例1)
例えば、生体情報測定部10が生体情報モニタであって、血圧を10分間隔で測定しているものとする。このとき、診療中の患者の血圧が、だんだん弱くなっていく状態が観測された場合、患者状態判断部27は、生体情報記憶部26に記憶された血圧の時間変化を統計解析した結果から、診療中の患者の生体情報が異常であると推定し、患者の状態は診療に適さない旨(NG:診療否)を判断結果報知部28に出力する。これにより、判断結果報知部28は、診療不可(NG)の旨をブザー等の警報で術者に報知する。術者は、診療中には、患者の口腔内を観察しながら治療に専念しているが、警報により異常を察知することができる。そのため、術者は、適切な手当、診療の中止およびその後の治療計画の再検討を行うことができる。
【0091】
(第5実施形態の動作の具体例2)
例えば、生体情報測定部10がパルスオキシメータであって、SpO2と共に脈拍(心拍)を常時測定しているものとする。このとき、診療中の患者の脈拍(心拍)が跳ね上がるなどの異常値が観測された場合、患者状態判断部27は、生体情報記憶部26に記憶された脈拍(心拍)を統計解析した結果から、診療中の患者の生体情報が異常であると推定し、患者の状態は診療に適さない旨(NG:診療否)を判断結果報知部28に出力する。これにより、判断結果報知部28は、診療不可(NG)の旨のブザー等を用いた警報で術者に報知する。警報により異常を察知した術者は、適切な手当、診療の中止およびその後の治療計画の再検討を行うことができる。さらに、このとき、関連診療情報記憶部261を有していれば、過去に脈拍(心拍)が跳ね上がった事象に関連付けられた患者状態(痛み)に基づいて、判断結果報知部28は、「診療中の患者は痛みを感じています」といった内容の音声や表示を併せて報知するようにしてもよい。
【0092】
第5実施形態によれば、生体情報活用部25によって、術者が、診療中に患者の痛みやストレスといった患者状態の情報を知ることができるので、装着型歯科診療装置1は、高齢者等への訪問診療や災害地等での診療に大いに役立つ。
【0093】
上記説明では、一例として、装着型歯科診療装置1が生体情報活用部25を備えているものとしたが、これに限らない。装着型歯科診療システム100の情報共有先(情報処理装置102~104等)が生体情報活用部25を備えることとしてもよい。ただし、その場合には、装着型歯科診療システム100の情報共有先は、図9に示す生体情報記憶部26と、患者状態判断部27と、を備え、装着型歯科診療装置1が判断結果報知部28を備える。この場合、装着型歯科診療装置1の生体情報取得部15cは、診療中の生体情報を、通信部13によって、通信ネットワークNWを介して、装着型歯科診療システム100の情報共有先(情報処理装置102~104等)に送信する。一方、装着型歯科診療システム100の情報共有先では、患者状態判断部27が、受信した生体情報に基づいて、生体情報記憶部26から所定の統計解析を行い、患者の状態を判断し、その判断結果を、通信ネットワークNWを介して装着型歯科診療装置1に送信する。そして、装着型歯科診療装置1では、判断結果報知部28が、受信した判断結果(NG/OK)を術者に報知する。
【0094】
前記したように、関連診療情報記憶部261に記憶される患者状態の情報は、歯科衛生士が診療後にカルテに記載した瞬間的な痛み、顔や口唇にチアノーゼが現れたかといった情報と、診療可否の情報との組合せでもよい。よって、生体情報測定部10および生体情報取得部15cで取得する生体情報の代わりに、撮影部9で撮影された顔画像情報を例えばチアノーゼの有無に利用することもできる。つまり、術者は、診療中の患者の顔画像情報から、痛みやストレスといった患者状態の情報を知ることができる。
【0095】
さらに、患者状態判断部27の機械学習部271は、生体情報および顔画像情報を入力すると、関連診療情報記憶部261に記憶された患者状態の情報を対応する出力値として出力するように機械学習を行うようにしてもよい。このようにすることで、機械学習による推定の精度をより一層向上させることが可能となる。
【0096】
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、情報取得基板83cにおいて、患者特定情報取得部15a、顔画像情報取得部15bおよび生体情報取得部15cのうち、いずれか1つだけを備える構成としてもよい。
また、情報取得基板83cには、第1診療情報取得部16aと第2診療情報取得部16bとを備えることとしたが、いずれか1つだけを備える構成としてもよい。
また、制御部83の基板構成は前記実施形態に限定されず、例えば、情報取得基板83c~83fの少なくとも2つを集約してもよいし、マイクロモータ基板83aやスケーラ基板83bに、情報取得基板83c~83fの少なくとも1つの構成を追加してもよい。
【0097】
図2に示す操作部保持部70は、装着具4のベルトに設けた例を示すが、これに限定されるものではなく、操作部84は、身体Mに装着自在に構成してもよい。
【0098】
また、身体Mに装着自在な操作部84として、図2に示すように手首等の身体Mに取り付けて操作する腕時計型の操作部86は、表示部Dとの一体型に限らず、表示部Dとは別体型の装置であってもよい。別体型の装置としては、図10に示すベルト型の操作部87やメガネ型の表示部88であってよい。
【0099】
図10に示すメガネ型の表示部88は、操作者である歯科医師が眼鏡のように装着して使用する透過型(シースルー)のものである。メガネ型の表示部88としては、例えば、所謂、光学シースルーグラスを採用してもよい。例えば、メガネ型の表示部88とタブレット端末(操作部85)との間の無線通信を介して、タブレット端末(操作部85)からの操作により、患者情報等の情報をメガネ型の表示部88に表示させることができる。これにより、操作者は、光を透過するグラス越しに外界(患者)を目視しながらグラスに配置された小型画面に表示された患者情報等を認識することができる。
【0100】
また、操作部84および表示部Dの一体型の装置としてのタブレット端末(操作部85)が、情報共有先との通信を担う通信部13として機能するようにしてもよい。この場合、装着型歯科診療装置1の情報取得基板83cには、前記した近距離無線通信機能を備えることとする。また、タブレット端末は、通常、例えばインターネット等のネットワークに接続する通信機能を有している。そのため、装着型歯科診療装置1の本体とタブレット端末とを前記した近距離無線通信で接続することで、装着型歯科診療システム100の情報共有先(情報処理装置102~104等)に対して、通信ネットワークNWを介して通信可能に接続することができる。この場合には、情報取得基板83cには、情報共有先との通信を担うネットワークカード等の装置を別途に設けなくて済む。
【0101】
充電部90において、自家発電部91は、図2に示す布タイプ太陽光発電機91aに限定されるものではなく、図10に示すソーラーパネル91bや手動発電機91cであっても構わない。ソーラーパネル91bは、本体8の上面、背面あるいは側面に固定することができる。手動発電機91cは、例えばレバーを手動で回転させることで発電するものであり、天候に左右されないメリットがある。手動発電機91cは、通常は本体8の内部に格納しておき、使用時に本体8の内部から取り出して用いる。その他、自家発電部91は、例えば、摩擦による発電が可能な衣服(図示を省略)や振動による発電が可能な靴(図示を省略)であってもよい。また、上記した自家発電部91をいくつか組み合わせて用いることとしてもよい。
【0102】
また、充電部90において、自家発電部91以外に、図10に示すUSBケーブル92を備えるようにしてもよい。USBケーブル92は、バッテリ82aに電気的に接続されている。これにより、訪問診療の現場で商用電源のコンセントがPC等の外部装置に占有されて電源ケーブル95(図3参照)を差し込むことができないときにも、当該外部装置にUSBケーブル92を接続することで、バッテリ82aを充電することができる。
【0103】
また、本実施形態においては、説明の便宜上、圧縮エア供給部81とエネルギ供給部である電源部82とを区別して説明したが、上記圧縮エアはモータ冷却用に限定されない。例えば、圧縮エアにより、エアスケーラ等のインスツルメントの駆動、制御部、操作部等の制御を行うことも含まれる。つまり、圧縮エア供給部81とエネルギ供給部とは、厳格に区別されるものではなく、インスツルメント5がエアタービン等(不図示)の場合には、例えば、圧縮エア供給管81bから圧縮エアをエアタービン等へ供給する。
【0104】
また、本実施形態においては、マイクロモータ51等を使用する例を説明したが、圧縮エアで駆動させるエアタービン(不図示)やエアスケーラであっても、駆動源の違いがあるが同様に構成することができる。つまり、エネルギ供給部は電源部82に限定されるものではなく、インスツルメントが圧縮エアを駆動エネルギとする場合、エネルギ供給部は圧縮エア供給管81b等で構成される。
【0105】
また、注液装置6は、ポンプ62の代わりに、診療液Hを貯留する貯留容器61と圧縮エアを貯留容器61に供給する供給管と、貯留容器61から診療液Hをインスツルメント5へ供給する送出管と、を備えていてもよい。この場合、外部コンプレッサCや圧縮エアを充填したエアタンクから、圧縮エアを貯留容器61に充填して貯留容器内に圧縮圧力を発生させることで、インスツルメント5に診療液Hを供給するようになる。
【符号の説明】
【0106】
1 装着型歯科診療装置
2 歯科診療モジュール
3 モジュール支持部
4 装着具
5 インスツルメント
6 注液装置
8 本体
11 患者情報取得部
12 表示制御部
13 通信部
14 患者情報記憶部
15a 患者特定情報取得部
15b 顔画像情報取得部
15c 生体情報取得部
16a 第1診療情報取得部
16b 第2診療情報取得部
16d 第3診療情報取得部
17 特徴点情報記憶部
18 特徴点情報抽出部
19 患者識別部
21 メンテナンス情報取得部
22a 作動状態検出部
22b 作動状態通知部
23 更新情報特定部
231 対応規則
24 更新報知部
25 生体情報活用部
26 生体情報記憶部
261 関連診療情報記憶部
27 患者状態判断部
271 機械学習部
28 判断結果報知部
31 インスツルメント保持部(モジュール支持部)
32 本体保持部(モジュール支持部)
33 容器ホルダ保持部(モジュール支持部)
51 マイクロモータ(インスツルメント)
53 スケーラ(インスツルメント)
61 貯留容器
82 電源部(エネルギ供給部)
82a バッテリ
82c 電源スイッチ
83 制御部
83a マイクロモータ基板(動作制御部)
83b スケーラ基板(動作制御部)
83c,83d,83e 情報取得基板
84~87 操作部
88,D 表示部
90 充電部
91 自家発電部
91a 布タイプ太陽光発電機
91b ソーラーパネル
91c 手動発電機
100 装着型歯科診療システム
101 歯科治療装置
102~104 情報処理装置
105 クラウドサーバ
H 診療液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10