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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ガラス製立体配線パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/15 20060101AFI20220830BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20220830BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20220830BHJP
   C03C 17/09 20060101ALI20220830BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20220830BHJP
   H01L 23/08 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
H01L23/14 C
C03C19/00 Z
C03C15/00 Z
C03C17/09
H01L33/62
H01L23/08 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018149353
(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2020025041
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000133788
【氏名又は名称】株式会社テクニスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】須崎 真年
(72)【発明者】
【氏名】木下 浩子
(72)【発明者】
【氏名】茶本 茂廊
(72)【発明者】
【氏名】奥田 哲也
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/118785(WO,A1)
【文献】特開2009-088621(JP,A)
【文献】特開2016-181572(JP,A)
【文献】特開2009-076752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/15
C03C 19/00
C03C 15/00
C03C 17/09
H01L 33/62
H01L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通電極を有するガラス製立体配線パッケージの製造方法であって、
ガラスの軟化点より高い温度で変形しない電極材料を用いて、表面から上方に延びる柱状突起を有する成形型を生成する成形型生成工程と、
前記ガラスの軟化点以上に加熱した軟化ガラス又は溶融ガラスを前記成形型の表面に密着させると共に前記軟化ガラス又は前記溶融ガラスの内部に前記柱状突起を埋没させた後、前記軟化ガラス又は前記溶融ガラスを冷却固化してガラス基材を成形すると共に前記成形型に前記ガラス基材を固着させるガラス基材成形工程と、
前記成形型の表面に前記ガラス基材を固着させた状態で前記ガラス基材の表面側を研磨して平坦化すると共に前記柱状突起の上端を露出させる第一の研磨工程と、
前記成形型の表面に前記ガラス基材を固着させた状態で前記成形型の裏面側を研磨して前記ガラス基材の裏面および前記柱状突起の下端を露出させる第二の研磨工程と、
前記ガラス基材の表面を選択的にエッチングして、前記第一の研磨工程において露出させた前記柱状突起の上端を前記ガラス基材の表面よりも突出させるエッチング工程と、
前記エッチング工程において突出させた前記柱状突起の上端にめっきを施すめっき工程と、
前記第二の研磨工程において露出させた前記柱状突起の下端に接続される裏面電極を前記ガラス基材の裏面に形成する裏面電極形成工程とを含み、
前記第一の研磨工程において平坦化した前記ガラス基材の表面における前記柱状突起を含む領域に、デバイスを収容するためのキャビティを形成するキャビティ形成工程を前記エッチング工程の前に実施する、ガラス製立体配線パッケージの製造方法。
【請求項2】
前記成形型の素材の線膨張係数の±30%以内で規定される範囲と、前記ガラス基材の線膨張係数の±30%以内で規定される範囲との少なくとも一部が重複する、請求項1記載のガラス製立体配線パッケージの製造方法。
【請求項3】
前記電極材料は、シリコン(Si)、タングステン(W)、チタン(Ti)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)又はコバール(Fe-Ni-Co合金)のいずれかである、請求項1又は2記載のガラス製立体配線パッケージの製造方法。
【請求項4】
前記成形型生成工程において前記柱状突起を複数形成し、
前記キャビティ形成工程において、前記複数の柱状突起の少なくとも1個を含む領域に前記キャビティを形成すると共に、前記複数の柱状突起の少なくとも1個を前記キャビティの外側に位置づけ、
前記裏面電極形成工程において、前記キャビティに位置する前記柱状突起の下端と、前記キャビティの外側に位置する前記柱状突起の下端とを前記裏面電極によって接続する、請求項記載のガラス製立体配線パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通電極を有するガラス製立体配線パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ガラス製立体配線パッケージに発光素子を実装した発光デバイスおよびその製造方法が開示されている。この発光デバイスは、窪みを形成するための突起が表面に一体的に形成されたガラス基材と、ガラス基材の窪みの表面に設けられた貫通孔に導電材料が充填されてなる貫通電極と、ガラス基材の窪みに収納され貫通電極の上に実装された発光素子と、発光素子を封止するためにガラス基材の窪みに供給された封止材とを備えている。また、ガラス基材は、発光素子から発光される光を反射する材料で形成されている。
【0003】
そして、上記発光デバイスによれば、ガラス基材がガラス材料で一体的に形成されているので接着面や接合面がなく、発光素子の発熱による膨張・収縮が繰り返されても、外部から水分や不純物が浸入し難くなり、電極材料の腐食や発光素子の特性劣化が抑えられ、信頼性を向上させることができる旨が下記特許文献1に記載されている。
【0004】
また、下記特許文献1に開示されている発光デバイスの製造方法は、窪みを形成するための突起が表面に設けられ、窪みの表面に貫通孔が形成されたガラス基材を、光を反射する材料を用いて作製する第一工程と、貫通孔に導電材料を設けて貫通電極を形成する第二工程と、貫通電極の上に発光素子を実装する第三工程と、発光素子を覆うようにガラス基材の窪みに封止材を供給する第四工程と、封止材を硬化させる第五工程とを含む。
【0005】
そして、上記発光デバイスの製造方法によれば、パッケージの基材が単体で構成されているので製造工数を減らすことができ、低コストで高信頼性の発光デバイスを提供することができると共に、ガラス基材が発光素子から発光される光を反射する材料で構成されているので、反射面を別個に形成する必要がなく、低コストで高信頼性の発光デバイスを提供することができる旨が下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-171693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示された発光デバイスの製造方法では、貫通孔に導電材料を設けて貫通電極を形成する第二工程において、Agを含有する導電ペーストや、Ni、Fe、Cu、コバール等の金属材料をガラス基材の貫通孔に充填し、加熱固化させて貫通電極を形成しているので、貫通電極に空隙が発生してしまうおそれがあり、貫通電極とガラス基材との気密性の点で改善の余地がある。また、上記特許文献1には、貫通電極を形成する方法として、ガラス基材の貫通孔に金属芯材を挿入して接着固定する方法や、貫通孔に溶融した半田を充填して冷却固化させる方法も開示されているが、これらの方法においても貫通電極とガラス基材との気密性の点で改善の余地がある。
【0008】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、貫通電極とガラス基材との気密性に優れたガラス製立体配線パッケージの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明が提供するのは、以下のガラス製立体配線パッケージの製造方法である。すなわち、貫通電極を有するガラス製立体配線パッケージの製造方法であって、ガラスの軟化点より高い温度で変形しない電極材料を用いて、表面から上方に延びる柱状突起を有する成形型を生成する成形型生成工程と、前記ガラスの軟化点以上に加熱した軟化ガラス又は溶融ガラスを前記成形型の表面に密着させると共に前記軟化ガラス又は前記溶融ガラスの内部に前記柱状突起を埋没させた後、前記軟化ガラス又は前記溶融ガラスを冷却固化してガラス基材を成形すると共に前記成形型に前記ガラス基材を固着させるガラス基材成形工程と、前記成形型の表面に前記ガラス基材を固着させた状態で前記ガラス基材の表面側を研磨して平坦化すると共に前記柱状突起の上端を露出させる第一の研磨工程と、前記成形型の表面に前記ガラス基材を固着させた状態で前記成形型の裏面側を研磨して前記ガラス基材の裏面および前記柱状突起の下端を露出させる第二の研磨工程と、前記ガラス基材の表面を選択的にエッチングして、前記第一の研磨工程において露出させた前記柱状突起の上端を前記ガラス基材の表面よりも突出させるエッチング工程と、前記エッチング工程において突出させた前記柱状突起の上端にめっきを施すめっき工程と、前記第二の研磨工程において露出させた前記柱状突起の下端に接続される裏面電極を前記ガラス基材の裏面に形成する裏面電極形成工程とを含み、前記第一の研磨工程において平坦化した前記ガラス基材の表面における前記柱状突起を含む領域に、デバイスを収容するためのキャビティを形成するキャビティ形成工程を前記エッチング工程の前に実施する、ガラス製立体配線パッケージの製造方法である。
【0010】
前記成形型の素材の線膨張係数の±30%以内で規定される範囲と、前記ガラス基材の線膨張係数の±30%以内で規定される範囲との少なくとも一部が重複するのが好適である。前記電極材料は、シリコン(Si)、タングステン(W)、チタン(Ti)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)又はコバール(Fe-Ni-Co合金)のいずれかであるのが好ましい。前記成形型生成工程において前記柱状突起を複数形成し、前記キャビティ形成工程において、前記複数の柱状突起の少なくとも1個を含む領域に前記キャビティを形成すると共に、前記複数の柱状突起の少なくとも1個を前記キャビティの外側に位置づけ、前記裏面電極形成工程において、前記キャビティに位置する前記柱状突起の下端と、前記キャビティの外側に位置する前記柱状突起の下端とを前記裏面電極によって接続してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明が提供するガラス製立体配線パッケージの製造方法では、柱状突起を有する成形型の表面に軟化ガラス又は溶融ガラスを密着させると共に軟化ガラス又は溶融ガラスの内部に柱状突起を埋没させてガラス基材を成形すると共に成形型にガラス基材を固着させ、この状態でガラス基材の表面側および成形型の裏面側を研磨して柱状突起の上端および下端を露出させ、次いで、ガラス基材に固着している柱状突起の上端を選択エッチングによってガラス基材の表面から突出させた後、柱状突起の上端にめっきを施すと共に柱状突起の下端に接続される裏面電極をガラス基材の裏面に形成することから、電極材料から形成した成形型の柱状突起が貫通電極をなすと共に、貫通電極をなす柱状突起がガラス基材に固着しているので貫通電極とガラス基材との気密性に優れたガラス製立体配線パッケージを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)成形型に加工される前のシリコン基板の断面図、(b)シリコン基板の表面にレジスト膜を形成し、レジスト膜の上方にフォトマスクを位置づけた状態を示す断面図、(c)露光部分のレジスト膜を除去した状態を示すシリコン基板の平面図、(d)シリコン基板の表面に柱状突起を形成した後にレジスト膜を除去して生成された成形型の断面図。
図2】(a)表面に穴が形成されたカーボン基板の断面図、(b)電極材料から形成されたピンがカーボン基板の穴に差し込まれて構成された成形型の断面図。
図3】ガラス基材成形工程を実施した状態を示す断面図。
図4】第一の研磨工程および第二の研磨工程を実施した状態を示す断面図。
図5】キャビティ形成工程を実施した状態を示す断面図。
図6】エッチング工程を実施した状態を示す一部拡大断面図。
図7】めっき工程および裏面電極形成工程を実施した状態を示すガラス製立体配線パッケージの断面図。
図8図7に示すガラス製立体配線パッケージのキャビティ内にデバイスを収容して封止材で封止すると共に、ガラス基材の裏面に絶縁膜を形成した状態を示す断面図。
図9】キャビティに位置する柱状突起の下端と、キャビティの外側に位置する柱状突起の下端とを裏面電極によって接続したガラス製立体配線パッケージのキャビティ内にデバイスを収容して封止材で封止すると共に、ガラス基材の裏面に絶縁膜を形成した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のガラス製立体配線パッケージの製造方法の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図示の実施形態では、まず、ガラスの軟化点より高い温度で変形しない電極材料を用いて、表面から上方に延びる柱状突起を有する成形型を生成する成形型生成工程を実施する。図1を参照して説明すると、図示の実施形態の成形型生成工程では、まず、ガラスの軟化点より高い温度で変形しない電極材料であるシリコン(Si)から形成されたシリコン基板2を準備する。なお、ガラスの軟化点は、ガラスが自重で軟化変形する温度であってガラスの粘度が107.65(dpa・s)になる温度であり、ガラスの種類によって異なるが例えば820℃程度である。また、シリコン(Si)の溶融温度は1414℃程度である。
【0015】
シリコン基板2を用いる場合の成形型生成工程は、たとえば、フォトリソグラフィによって実施することができる。フォトリソグラフィによる成形型生成工程では、シリコン基板2を準備した後、図1(b)に示すとおり、シリコン基板2の表面に適宜の感光性樹脂を塗布してレジスト膜4を形成する。次いで、フォトマスク6をレジスト膜4の上方に位置づけて紫外線等の光を照射して露光する。このフォトマスク6は、石英等から形成される透明基板8の下面に、形成すべき柱状突起に対応する位置に配置された遮光膜10(たとえばクロム膜)を蒸着等により形成したものである。
【0016】
次いで、図1(c)に示すとおり、露光したシリコン基板2を現像液に浸して、露光部分のレジスト膜4を除去する。次いで、シリコン基板2に異方性エッチングを施して、図1(d)に示すとおり、レジスト膜4の残留部分以外においてシリコン基板2の表面側を除去する。これによって、ガラスの軟化点より高い温度で変形しない電極材料のシリコンを用いて、表面から上方に延びる柱状突起12を有する成形型14を生成することができる。なお、図示の実施形態の成形型14は一対の柱状突起12を有しているが、柱状突起12は1個でもよく、あるいは3個以上であってもよい。また、柱状突起12の配置は任意に設定することができる。
【0017】
成形型を生成するための電極材料は上述したシリコン(Si)に限定されず、溶融温度が3422℃であるタングステン(W)、溶融温度が1668℃であるチタン(Ti)、溶融温度が1768℃である白金(Pt)、溶融温度が2623℃であるモリブデン(Mo)又は溶融温度が1450℃であるコバール(Fe-Ni-Co合金)等の電極材料から成形型を生成してもよい。シリコン(Si)、タングステン(W)、チタン(Ti)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)又はコバール(Fe-Ni-Co合金)のいずれかの電極材料から成形型を生成する場合には、回転可能な研削ブレードを有する公知のダイシング装置(図示していない。)若しくは各種研削盤(図示していない。)等を用いて、又はサンドブラストを施すことによって、形成すべき柱状突起以外の電極材料基板の表面側部分を除去し、表面から上方に延びる柱状突起を有する成形型を生成することができる。
【0018】
さらに、成形型生成工程においては、図2に示すとおり、溶融温度が3370℃であるカーボンから形成されたカーボン基板16にドリル等を用いて穴18を形成し、タングステン(W)等の上記電極材料のいずれかから形成されたピン20を穴18に差し込むことによって、表面から上方に延びる柱状突起20を有する成形型22を生成してもよい。
【0019】
成形型生成工程を実施した後、成形型を用いてガラス基材を成形すると共に成形型にガラス基材を固着させるガラス基材成形工程を実施する。図示の実施形態のガラス基材成形工程では、まず、表面にガラス材料を載せたシリコン製の成形型14を真空炉の内部に入れる。次いで、真空炉内を減圧すると共に、真空炉内を昇温してガラスの軟化点以上にガラス材料を加熱する。これによって、ガラス材料が軟化した軟化ガラス又は溶融した溶融ガラスを成形型14の表面に密着させると共に、軟化ガラス又は溶融ガラスの内部に柱状突起12を埋没させる。そして、図3に示すとおり、軟化ガラス又は溶融ガラスを冷却固化してガラス基材24を成形すると共に成形型14にガラス基材24を固着させる。なお、軟化ガラス又は溶融ガラスを成形型14の表面に密着させる際は、プレスによって軟化ガラス又は溶融ガラスを成形型14に押し付けてもよい。また、本明細書における「軟化ガラス」とはガラスの軟化点以上の温度で加熱されたガラスであって100%溶融する前のガラスをいい、「溶融ガラス」とは100%溶融したガラスをいう。
【0020】
ガラス基材成形工程を実施した後、成形型14の表面にガラス基材24を固着させた状態でガラス基材24の表面側を研磨して平坦化すると共に柱状突起12の上端を露出させる第一の研磨工程を実施する。次いで、成形型14の表面にガラス基材24を固着させた状態で成形型14の裏面側を研磨してガラス基材24の裏面および柱状突起12の下端を露出させる第二の研磨工程を実施する。第一の研磨工程および第二の研磨工程は、公知の構成でよい研磨装置(図示していない。)を用いて実施することができる。第一の研磨工程および第二の研磨工程が実施された後のガラス基材24を図4に示す。なお、図4に示すガラス基材24は、図3に示す上側の一点鎖線よりも上方の部分を第一の研磨工程で除去し、図3に示す下側の一点鎖線よりも下方の部分を第二の研磨工程で除去したものである。
【0021】
図示の実施形態では、第一の研磨工程および第二の研磨工程を実施した後、第一の研磨工程において平坦化したガラス基材24の表面における柱状突起12を含む領域に、デバイスを収容するためのキャビティを形成するキャビティ形成工程を実施する。キャビティ形成工程は、公知の構成でよい研削装置(図示していない。)を用いて実施することができる。図示の実施形態では図5に示すとおり、ガラス基材24の表面から裏面に向かって次第に縮径する逆角錐台形状ないし逆円錐台形状のキャビティ26を形成しているが、キャビティ26の形状は図5に示す逆錐台形状に限定されない。キャビティはデバイスを収容可能な凹所であればよく、たとえば、キャビティの側面がガラス基材24の表面に対して垂直であってもよい。なお、キャビティ26を形成せずにデバイスをガラス基材24の表面に実装することができる場合には、キャビティ形成工程を実施しなくてもよい。
【0022】
キャビティ形成工程を実施した後(キャビティ形成工程を実施しない場合には、第一の研磨工程又は第二の研磨工程を実施した後)、ガラス基材24の表面を選択的にエッチングして、第一の研磨工程において露出させた柱状突起12の上端をガラス基材24の表面よりも突出させるエッチング工程を実施する。図示の実施形態では図6に示すとおり、エッチング工程において、ガラス基材24のキャビティ26の底面を選択的にエッチングして、柱状突起12の上端をキャビティ26の底面よりも突出させている。柱状突起12の突出量は任意に設定することができるが、たとえば5~15μm程度でよい。なお、エッチング工程においては、ガラス基材24の裏面も選択的にエッチングして、柱状突起12の下端をガラス基材24の裏面よりも突出させてもよい。
【0023】
エッチング工程を実施した後、図7に示すとおり、エッチング工程において突出させた柱状突起12の上端にめっき28を施すめっき工程を実施する。めっき工程で用いるめっき28としては、たとえば、ニッケル(Ni)又は金(Au)等でよい。
【0024】
図7を参照して説明を続けると、第二の研磨工程において露出させた柱状突起12の下端に接続される裏面電極30をガラス基材24の裏面に形成する裏面電極形成工程を実施する。裏面電極形成工程は、第二の研磨工程を実施した後であればいつでも実施することができ、たとえばエッチング工程の前に実施してもよく、あるいはめっき工程の後に実施してもよい。裏面電極形成工程では、チタン(Ti)、白金(Pt)又は金(Au)等をスパッタリング等により裏面全体に被覆させた後、フォトリソグラフィやイオンミリング等によって所要配線パターンの裏面電極30を形成する。なお、裏面電極形成工程においてはリフトオフ法を用いることもできる。
【0025】
以上のとおりであり、図示の実施形態では、電極材料から形成した成形型14の柱状突起12が貫通電極をなすと共に、貫通電極をなす柱状突起12がガラス基材24に固着しているので、貫通電極とガラス基材24との気密性に優れた図7に示すとおりのガラス製立体配線パッケージ32を製造することができる。また、図示の実施形態では、ガラスに対する濡れ性が良好なシリコン(Si)等から、貫通電極をなす柱状突起12を形成しているので、貫通電極とガラス基材24との固着度を一層高め、貫通電極とガラス基材24との気密性がより優れたガラス製立体配線パッケージ32を製造することができる。なお、図7に示すガラス製立体配線パッケージ32の側面は、適宜の研削装置又は研磨装置によって平坦化している。
【0026】
このようにして製造されたガラス製立体配線パッケージ32のキャビティ26には、図8に示すとおり、デバイス34が収容され合成樹脂製の封止材36で封止される。また、ガラス基材24の裏面には、ポリイミド等の適宜の合成樹脂による絶縁膜38が形成される。なお、図8に示す例においては、裏面電極30と他の部材との電気的な接続を確保するために、裏面電極30の外側端部には絶縁膜38が被覆されておらず、裏面電極30が露出している。あるいは、裏面電極30と他の部材とを電気的に接続するための半田ボールないし柱状電極が設けられていてもよい。
【0027】
本発明の製造方法によって製造されるガラス製立体配線パッケージの形態は、図7に示すとおりの形態に限定されず、他の形態のガラス製立体配線パッケージも含む。図9を参照して説明すると、たとえば、成形型生成工程において柱状突起12’を複数(図9に示す例では4個)形成し、キャビティ形成工程において、複数の柱状突起12’の少なくとも1個(図9に示す例では、内側に位置する一対の柱状突起12’)を含む領域にキャビティ26を形成すると共に、複数の柱状突起12’の少なくとも1個(図9に示す例では、外側に位置する一対の柱状突起12’)をキャビティ26の外側に位置づけ、裏面電極形成工程において、キャビティ26に位置する柱状突起12’の下端と、キャビティ26の外側に位置する柱状突起12’の下端とを裏面電極30’によって接続して、ガラス製立体配線パッケージ32’を製造することもできる。これによって、キャビティ26の外側に位置する柱状突起12’の上端にワイヤーボンディング40を行うことができる。
【0028】
なお、成形型の線膨張係数とガラス基材の線膨張係数との差は小さいほど好ましい。成形型およびガラス基材のそれぞれの線膨張係数の差が小さいほど、寸法精度のよいガラス基材を成形することができると共に、熱膨張差によるガラス基材の破損を防止することができる。線膨張係数の観点から、成形型とガラス基材との好適な組み合わせとしては、成形型の素材の線膨張係数の±30%以内で規定される範囲と、ガラス基材の線膨張係数の±30%以内で規定される範囲との少なくとも一部が重複する組み合わせである。
【0029】
たとえば、線膨張係数が3.9×10-6/℃であるシリコン(Si)を成形型として用いる場合には、線膨張係数が3.25×10-6/℃であるホウケイ酸ガラス(たとえばドイツ国ショット社製、商品名「テンパックス」)を好適に用いることができる。この理由については、シリコン(Si)の線膨張係数(3.9×10-6/℃)の±30%以内で規定される範囲(2.7~5.1×10-6/℃)と、上記ホウケイ酸ガラスの線膨張係数(3.25×10-6/℃)の±30%以内で規定される範囲(2.28~4.23×10-6/℃)との一部が重複するからである。また、シリコン(Si)を成形型として用いる場合には、線膨張係数が3.17×10-6/℃である無アルカリガラス(たとえば米国コーニング社製、商品名「イーグルXG」)を好適に用いることもできる。
【0030】
また、線膨張係数が4.5×10-6/℃であるタングステン(W)、線膨張係数が5.1×10-6/℃であるモリブデン(Mo)又は線膨張係数が5.1~5.3×10-6/℃であるコバール(Fe-Ni-Co合金)を成形型として用いる場合も、線膨張係数が3.25×10-6/℃である上記ホウケイ酸ガラスや、線膨張係数が3.17×10-6/℃である上記無アルカリガラスを好適に用いることができる。
【0031】
線膨張係数が8.8×10-6/℃であるチタン(Ti)や白金(Pt)を成形型として用いる場合には、線膨張係数が7.2×10-6/℃であるホウケイ酸ガラス(たとえばドイツ国ショット社製、商品名「D263」)を好適に用いることができる。
【0032】
また、図示の実施形態では、1個のガラス製立体配線パッケージ32を製造する方法を説明したが、1個の成形型用の基板(たとえばシリコン基板2)を用いて複数のガラス製立体配線パッケージ32を製造した後、適宜のダイシング装置によって個々のガラス製立体配線パッケージ32に分割してもよい。
【符号の説明】
【0033】
12:柱状突起
14:成形型
24:ガラス基材
26:キャビティ
28:めっき
30:裏面電極
32:ガラス製立体配線パッケージ
34:デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9