(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】可動プレート移動ガイド付きワーククランプトレイ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20220830BHJP
B65D 25/10 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H01L21/68 U
B65D25/10
(21)【出願番号】P 2018164149
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591034028
【氏名又は名称】東洋精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 淳也
(72)【発明者】
【氏名】泉尾 達哉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 保
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-159220(JP,A)
【文献】特開2017-183372(JP,A)
【文献】特開2009-096523(JP,A)
【文献】特開2011-037518(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0226587(US,A1)
【文献】特開平03-073551(JP,A)
【文献】特開2015-159219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側プレートと、可動プレートと、下側プレートとがこの順で積層配置され、
前記可動プレートは、ワークを収容する複数個の位置決め穴を有し、収容されたワークを固定する固定位置と、当該固定されたワークを解放する解放位置とに移動が可能であり、
前記上側プレート及び前記下側プレートの少なくとも一方には、前記位置決め穴へのワークの収容を可能とする収容穴が形成され、
前記可動プレートは、外力が加わることによって固定位置から解放位置又は/及び解放位置から固定位置に移動するワーククランプトレイであって、
前記可動プレートの移動をガイドするガイド部を有し、
前記ガイド部は、積層方向に突出するガイドピンと、前記外力が加わる方向と交差する方向に伸び前記ガイドピンが係入可能なガイド穴とから構成され、
前記上側プレート及び前記下側プレートの少なくとも一方が、前記ガイドピン又は前記ガイド穴を有し、
前記可動プレートが前記ガイド穴又は前記ガイドピンを有し、
前記可動プレートに対して固定位置又は解放位置の方向に外力が加えられると、前記可動プレートは、前記ガイドピンと前記ガイド穴とによって前記外力が加わる方向と交差する方向に移動することを特徴とするワーククランプトレイ。
【請求項2】
前記ガイド部が、前記外力が加わる方向及び/又は前記外力が加わる方向に対して垂直方向に所定間隔で2つ以上設けられた請求項1記載のワーククランプトレイ。
【請求項3】
前記ガイドピンは、柱状の本体部と、前記本体部の底面から中心軸線方向外方へ突出した突出部とを有し、
前記上側プレート及び前記下側プレートの少なくとも一方は、前記突出部の嵌め入れが可能な取付穴を有し、
前記ガイドピンの前記突出部が前記取付穴に嵌め入れられることで前記上側プレート及び前記下側プレートの少なくとも一方に前記ガイドピンが取付けられている請求項1又は2に記載のワーククランプトレイ。
【請求項4】
前記可動プレートの外周を囲む枠プレートと、
前記可動プレートと前記枠プレートとの間に、前記可動プレートを前記解放位置の方向又は前記固定位置の方向へ付勢するバネ部材と
をさらに有する請求項1~3のいずれかに記載のワーククランプトレイ。
【請求項5】
前記可動プレートと、前記枠プレートと、前記バネ部材とが一体成形されている請求項4記載のワーククランプトレイ。
【請求項6】
前記可動プレートにおける前記位置決め穴の各々の内側面に弾性部材が設けられ、
前記可動プレートが前記固定位置へ移動した状態において、前記弾性部材はワークに当接する請求項1~5のいずれかに記載のワーククランプトレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワークの固定と解放が可能なワーククランプトレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数個のワークに同時に印刷を行う場合、ワークを実装機に供給する場合、半導体ワークにボンディングを行う場合などには、高い精度でワークを位置決め固定することが要求される。
【0003】
このような要求に対応するため、これまで種々のワーククランプトレイが提案されている(例えば、特許文献1,2等)。これらのワーククランプトレイでは、上側プレートと下側プレートとの間に可動プレートが積層配置され、可動プレートに外力が加えられることによって可動プレートが移動してワークを位置決め固定している。このような構成において、可動プレートは可動プレートに加えられる外力の方向に移動していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-183363号公報
【文献】特開2014-82295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可動プレートの移動方向が外力が加えられる方向であると、ワーククランプトレイにおける外力を加える位置が限られるため、ワーククランプトレイの形状を含めた設計の自由度が狭くなっていた。また、ワークを位置決め固定するための位置決め穴や当接部の形状や大きさ等の設計裕度が狭くなっていた。
【0006】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、可動プレートに加わる外力の方向によらず所望の方向に可動プレートを移動させることが可能なワーククランプトレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るワーククランプトレイは、上側プレートと、可動プレートと、下側プレートとがこの順で積層配置され、前記可動プレートは、ワークを収容する複数個の位置決め穴を有し、収容されたワークを固定する固定位置と、当該固定されたワークを解放する解放位置とに移動が可能であり、前記上側プレート及び前記下側プレートの少なくとも一方には、前記位置決め穴へのワークの収容を可能とする収容穴が形成され、前記可動プレートは外力が加わることによって固定位置から解放位置又は/及び解放位置から固定位置に移動するワーククランプトレイであって、前記可動プレートの移動をガイドするガイド部を有し、前記ガイド部は、積層方向に突出するガイドピンと、前記外力が加わる方向と交差する方向に伸び前記ガイドピンが係入可能なガイド穴とから構成され、前記上側プレート及び前記下側プレートの少なくとも一方が、前記ガイドピン又は前記ガイド穴を有し、前記可動プレートが前記ガイド穴又は前記ガイドピンを有し、前記可動プレートに対して固定位置又は解放位置の方向に外力が加えられると、前記可動プレートは、前記ガイドピンと前記ガイド穴とによって前記外力が加わる方向と交差する方向に移動することを特徴とする。なお、上記各種のプレートは略板状の部材(プレート部材)であるが、その具体的な外形などは問わない。
【0008】
上記構成において、前記ガイド部が、前記外力が加わる方向及び/又は前記外力が加わる方向に対して垂直方向に所定間隔で2つ以上設けられた構成としてもよい。
【0009】
また上記構成において、前記ガイドピンは、柱状の本体部と、前記本体部の底面から中心軸線方向外方へ突出した突出部とを有し、前記上側プレート及び前記下側プレートの少なくとも一方は、前記突出部の嵌め入れが可能な取付穴を有し、前記ガイドピンの前記突出部が前記取付穴に嵌め入れられることで前記上側プレート及び前記下側プレートの少なくとも一方に前記ガイドピンが取付けられている構成としてもよい。
【0010】
また上記構成において、前記可動プレートの外周を囲む枠プレートと、前記可動プレートと前記枠プレートとの間に、前記可動プレートを前記解放位置の方向又は前記固定位置の方向へ付勢するバネ部材とをさらに有する構成としてもよい。
【0011】
また上記構成において、前記可動プレートと、前記枠プレートと、前記バネ部材とが一体成形されている構成としてもよい。
【0012】
また上記構成において、前記可動プレートにおける前記位置決め穴の各々の内側面に弾性部材が設けられ、前記可動プレートが前記固定位置へ移動した状態において、前記弾性部材はワークに当接する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワーククランプトレイでは、可動プレートの移動をガイドするガイド部を有し、前記可動プレートは前記ガイド部によって前記外力が加わる方向と交差する方向に移動可能であるので、ワーククランプトレイにおける外力を加える部分位置を自由に設計可能となる。また、ワークを位置決め固定するための位置決め穴や当接部の形状や大きさ等の設計裕度が広くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】可動プレート、枠プレート、バネ部材の一体成形体の平面図である。
【
図8】ガイドピンの取付穴への取付を説明する図である。
【
図9】ガイドピンがガイド穴及び係入穴に係入した状態の垂直断面図である。
【
図10】ガイドピンがガイド穴に係入した状態の平面図である。
【
図11】クランプトレイT1でワークを固定する工程図である。
【
図12】ガイド穴の他の実施形態を示す平面図である。
【
図13】丸穴にピンを挿入することによって可動プレートに外力を加える場合を説明するための垂直断面図である。
【
図14】丸穴にピンを挿入することによって可動プレートに外力を加える場合を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るワーククランプトレイを図に基づいて詳述する。但し、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明においてx、y及びzの直交座標軸は、各図に示す通りである。また、特に断りの無い限り、「平面方向」はxy平面の方向(各プレート部材の平面が広がる方向)であり、「左右方向」はx方向、「積層方向」及び「上下方向」はz方向(各プレート部材が積層される方向)とする。
【0016】
(第1実施形態)
まず第1実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るワーククランプトレイT1(以下、「クランプトレイT1」と記すことがある)の平面図を示す。また
図2に、
図1のA-A線断面図を示す。
図1及び
図2に示すクランプトレイT1は、z方向上側から下方向に順に上側プレート1、スペーサープレート2、可動プレート3(枠プレート7とバネ部材Sと一体成形)、当接プレート4、高さ調整プレート5および下側プレート6の各プレート部材が、この順に積層配置された構成となっている。なお、スペーサープレート2は
図2には表れていない。
【0017】
まず各プレート部材の構成について、
図3~
図6を参照しながら以下に説明する。上側プレート1と当接プレート4についてまず説明する。上側プレート1と当接プレート4は同一のプレートである。当接プレート4は可動プレート3の積層方向下側に配置される。これにより、上側プレート1と当接プレート4とが可動プレート3の上側と下側に位置しワークWに当接して位置決め固定がされるのでワークの固定安定性が向上する。もちろん、当接プレート4を用いることなく上側プレート1と可動プレート3とでワークを位置決め固定することも可能である。上側プレート1と当接プレート4とは同一のプレートであるので、以下代表して上側プレート1について説明する。なお、
図3における符号のカッコ内は当接プレート4における部分及び部材の符号である。
【0018】
図3に上側プレート1の平面図を示す。上側プレート1は、所定の厚みを有し、平面視においてx方向に長い長方形を有する。そして、ワークWを収容可能な四角形状の収容穴11が、y方向中央にx方向に所定間隔で8個形成されている。また、上側プレート1の4つの角部は面取りされ、x方向一方端側(
図3では右側)のy方向中央部には凹部12が形成されている。後述するようにこの凹部12によって可動プレート3の押しボタン部32の一部が露出し、可動プレート3を内方へ押し入れる、すなわち可動プレート3に外力を加えることが可能とされている。
【0019】
上側プレート1の4つ角部と、y方向一方端側のx方向中央よりもx方向一方端側と、y方向他方端側のx方向中央よりもx方向他方端側とにはそれぞれ、後述の各プレートを貼り合わせる際にプレートを位置決めするための位置決め穴13が形成されている。また、上側プレート1のy方向中央部においてx方向両端部及びx方向中央部の3カ所に、後述するガイドピン8の本体部81の係入を可能とする係入穴14が形成されている。係入穴14の内径はガイドピン8の本体部81の外径と実質上同一に設定されている。また後述する高さ調整プレート5における係入穴54についても上側プレート1の係入穴14と同じ形状に設定されている。
【0020】
スペーサープレート2について説明する。スペーサープレート2は、可動プレート3の移動の円滑化及び上側プレート1の収容穴11の内周壁とワークWとの当接領域の調整等を図るために用いられる。これらの効果が奏されるようスペーサープレート2の厚さや使用枚数などが適宜調整される。
図4はスペーサープレート2の平面図である。スペーサープレート2は略コ字状であって、外形形状は上側プレート1と同一である。具体的には、スペーサープレート2は、平行且つ離隔対向するように配置された第1枠部2aと第2枠部2b、及び第1枠部2aと第2枠部2bのx方向一方端部を接続する接続部2cを有する。そして、第1枠部2a及び第2枠部2bの、上側プレート1の位置決め穴13と対応する位置には、上側プレート1と同様に、位置決め穴23が形成されている。また、対向する第1枠部2a及び第2枠部2bの内側壁には、x方向に対して45°方向に傾斜した矩形状の凹部21がx方向に所定間隔で各々4つ形成されている。
【0021】
次に、可動プレート3、枠プレート7及びバネ部材Sの一体成形物について説明する。本実施形態では、可動プレート3と、枠プレート7と、バネ部材Sとは一体に成形されている。
図5は、一体成形された可動プレート3、枠プレート7、バネ部材Sの平面図である。
【0022】
まず枠プレート7から説明する。枠プレート7は、スペーサープレート2と同一の形状及び構成を有する。すなわち、平行且つ離隔対向するように配置された第1枠部7aと第2枠部7b、及び第1枠部7aと第2枠部7bのx方向一方端部を接続する接続部7cを有し、第1枠部7a及び第2枠部7bの、上側プレート1の位置決め穴13と対応する位置には、上側プレート1と同様に、位置決め穴73が形成されている。また、対向する第1枠部7a及び第2枠部7bの内側壁には、x方向に対して45°方向に傾斜した矩形状の凹部71がx方向に所定間隔で各々4つ形成されている。
【0023】
可動プレート3は、長方形状を有し、x方向の長さは枠プレート7の第1枠部7a及び第2枠部7bの内側壁よりも若干短く、y方向の長さは枠プレート7の第1枠部7aの内側壁と第2枠部7bの内側壁との離隔距離よりも若干短く設定されている。すなわち、可動プレート3は枠プレート7内のxy平面において移動可能となるよう設定配置されている。可動プレート3のx方向一方側端部(
図5の右側端部)が、可動プレート3に外力を加える押しボタン部32となる。押しボタン部32の外方に面した側壁は、外力が加わらない状態において枠プレート7の第1枠部7a及び第2枠部7bの右側壁と面一となるよう設定されている。もちろん、外力が加わらない状態において押しボタン部32が枠プレート7の第1枠部7a及び第2枠部7bの右側壁よりも外方に突出する構成としても本発明の効果は奏される。
【0024】
可動プレート3のy方向中央部には、上側プレート1に形成された収容穴11に対応する位置にそれぞれ位置決め穴31が形成されている。位置決め穴31は平面視四角形状を有し、それぞれの位置決め穴31の隣り合う2つの内壁面(
図5では上内壁面及び左内壁面)には、ワークWをx方向に付勢する第1板バネ33aとy方向に付勢する第2板バネ33b(何れも弾性部材)とが可動プレート3と一体に形成されている。第1板バネ33a及び第2板バネ33bはいずれも、ワークWに当接する当接部331とクランク状に成形された弾性部332とを有する。
【0025】
また、可動プレート3は、y方向中央部においてx方向両端部及びx方向中央部の3カ所に、x方向に対して45°方向に傾斜した長穴であるガイド穴34が形成されている。ガイド穴34の長手方向両端部はそれぞれ半円状とされている。このガイド穴34内に後述のガイドピン8が係入し、可動プレート3の移動方向がガイドされる。
【0026】
可動プレート3において、枠プレート7の第1枠部7a及び第2枠部7bの内側壁に形成された凹部71と対向する位置には、凹部71の底面と平行で且つ対向する突出面351を有する突出部35がそれぞれ形成されている。そして、凹部71の底面と突出面351との間にバネ部材Sが設けられている。このバネ部材Sは、可動プレート3が解放位置とされると可動プレート3を固定位置の方向(
図5の右下方向)に付勢する働きを奏する。
【0027】
本実施形態において可動プレート3と、枠プレート7と、バネ部材Sとは一体形成されている。これらを一体成形する際してはフォトエッチング加工が好適に使用できる。なお、可動プレート3と、枠プレート7と、バネ部材Sとを別部材として作製し組み立て使用しても構わないが、加工精度や組立精度を考慮すればフォトエッチング加工等による一体成形が推奨される。
【0028】
高さ調整プレート5について説明する。
図6に高さ調整プレート5の平面図を示す。高さ調整プレート5は、可動プレート3の第1板バネ33a及び第2板バネ33bと、上側プレート1及び当接プレート4の収容穴11,41とでワークWが位置決め固定される際の、ワークWのz方向の固定位置を調整するためのものであり、高さ調整プレート5の厚みあるいは使用枚数は、ワークWのz方向の高さなどから適宜決定される。高さ調整プレート5は上側プレート1の略同一の形状及び構成を有する。すなわち、平面視においてx方向に長い長方形を有し、上側プレート1に形成された収容穴11に対応する位置に四角形状の収容穴51が形成されている。なお、ワークWが収容孔51の内周壁と接触しないように、収容孔51の外形形状は上側プレート1の収納穴11よりも若干大きく設定されている。また、高さ調整プレート5のx方向一方端側(
図6では右側)のy方向中央部には凹部52が形成されている。前述のように、この凹部52によって可動プレート3の押しボタン部32の一部が露出し、可動プレート3を内方へ押し入れる、すなわち可動プレート3に外力を加えることが可能とされている。
【0029】
また高さ調整プレート5の4つ角部と、y方向一方端側のx方向中央よりもx方向一方端側と、y方向他方端側のx方向中央よりもx方向他方端側とにはそれぞれ位置決め穴53が形成され、高さ調整プレート5のy方向中央部においてx方向両端部及びx方向中央部の3カ所には、ガイドピン8の本体部81の係入を可能とする係入穴54が形成されている。
【0030】
下側プレート6について説明する。
図7に、下側プレート6の平面図を示す。下側プレート6は、上側プレート1と同じ平面形状を有し、下側プレート6のx方向一方端側(
図7では右側)のy方向中央部には凹部62が形成されている。前述のように、この凹部62によって可動プレート3の押しボタン部32の一部が露出し、可動プレート3を内方へ押し入れる、すなわち可動プレート3に外力を加えることが可能とされている。
【0031】
また、下側プレート6は、上側プレート1の収容穴11のそれぞれに対応する位置に吸引穴61を有する。そして、下側プレート6の4つ角部と、y方向一方端側のx方向中央よりもx方向一方端側と、y方向他方端側のx方向中央よりもx方向他方端側とにはそれぞれ位置決め穴63が形成され、下側プレート6のy方向中央部においてx方向両端部及びx方向中央部の3カ所には、ガイドピン8を取り付けるための円形の取付穴64が形成されている。
【0032】
次に、クランプトレイT1の組み立てについて説明する。まず、下側プレート6にガイドピン8を取り付ける。
図8に示すように、ガイドピン8は、円柱状の本体部81と、本体部81の底面から中心軸線方向外方(
図8の下方向)に突出した本体部81よりも小径の円柱状の突出部82とが一体に成形されたものである。本体部81の上端外周は面取りがなされている。また突出部82の外径は下側プレート6の取付穴64の内径と実質上同一に設定され、突出部82の底面にはすり鉢状の凹部821(
図8の破線部)が形成されている。本体部81の中心軸線方向長さは、少なくとも本体部81の頂部が可動プレート3の上面から突出するよう設定される。本実施形態では、本体部81の中心軸線方向長さは、上側プレート1の上面から本体部81の頂部が若干突出する長さに設定されている。また、突出部82の中心軸線方向長さは、下側プレート6の厚みと同じかそれ以下に設定するのが好ましく、本実施形態では下側プレート6の厚みと実質上同一に設定されている。
【0033】
ガイドピン8の下側プレート6への取付は、ガイドピン8の突出部82を下側プレート6の取付穴64に嵌め入れることにより行われる。その後、下側プレート6の下面側に露出した突出部82の底面のすり鉢状の凹部821に特定の工具を用いて衝撃を加えて突出部82を下側プレート6の取付穴64にかしめ止める。もちろん、接着や溶接など従来公知の方法を用いてガイドピン8を下側プレート6の取付穴64に固定しても構わない。
【0034】
次に、ガイドピン8が取付けられた下側プレート6の上に、高さ調整プレート5、当接プレート4、枠プレート7(可動プレート3とバネ部材Sとの一体成形物として)、スペーサープレート2、上側プレート1がこの順で重ね合わせられる。そして、各プレートに形成された6つの位置決め穴13,23,43,53,63,73をz方向(上下方向)に重なり合うようにし、これらの穴にピン(不図示)が嵌め入れられ、下側プレート6と、高さ調整プレート5、当接プレート4、枠プレート7(可動プレート3とバネ部材Sとの一体成形物として)、スペーサープレート2、上側プレート1とが位置決めされる。
【0035】
このとき、下側プレート6に取り付けられたガイドピン8は、
図9に示すように、高さ調整プレート5の係入穴54、当接プレート4の係入穴44、可動プレート3のガイド穴34、上側プレート1の係入穴14のそれぞれを挿通し、ガイドピン8の本体部81の頂部が上側プレート1の上面から僅かに突出した状態となっている。
【0036】
これら積層されたプレートは、所定位置において従来公知の方法で接合されてクランプトレイT1とされる。接合には、例えばスポット溶接やネジによる締結など従来公知の接合方法を用いることができる。
【0037】
図10に、組み立てられたクランプトレイT1における、可動プレート3に形成されたガイド穴34とガイドピン8の状態を示す平面図を示す。なお、この図ではガイド穴34とガイドピン8の状態が理解しやすいように上側プレート1が外されて、可動プレート3が露出した状態の平面図とされている。
【0038】
前述のようにガイド穴34は、x方向に対して45°方向に傾斜した長穴である。ガイド穴34の短手方向の幅はガイドピン8は外径と実質上同一で、ガイドピン8はガイド穴34内を相対移動可能とされている。
図10に示す状態は、可動プレート3が固定位置にある状態であって、ガイド穴34の左上の端部側壁がガイドピン8に当接し、可動プレート3のこれ以上の移動が規制されている。
【0039】
次に、このような構成のクランプトレイT1によるワークWの固定及び解放について説明する。
図11に、クランプトレイT1の収容穴11及びその近傍の平面図を示す。
図1及び
図11を参照して、通常状態すなわち可動プレート3に外力が加わらない状態では、可動プレート3はワークWを固定する固定位置にある。このとき、可動プレート3の押しボタン部32の一部は、上側プレート1、当接プレート4及び下側プレート6に形成された凹部12,52,62によって露出している(
図1を参照)。また、この状態では、上側プレート1の収容穴11から第1板バネ33a及び第2板バネ33bの当接部331の少なくとも一部が露出している(
図11(a))。
【0040】
次に、クランプトレイT1にワークWを位置決め固定する場合には、押しボタン部32(
図1に図示)に力を加え、バネ部材Sの付勢力に抗してクランプトレイT1の内側方向(
図1の左方向)に押し込む。すると、可動プレート3が移動する。このとき可動プレート3の移動方向は、ガイドピン8がガイド穴34内を相対移動する方向に定まり、本実施形態ではx方向に対して45°方向(
図1及び
図11では左上方向)に可動プレート3は移動する。これによって、第1板バネ33a及び第2板バネ33bの当接部331は上側プレート1の収容穴11から見えない位置に移動し、ワークWを収容穴11に収容可能な状態となる(
図11(b))。
【0041】
次いで、収容穴11および位置決め穴31にワークWを収容する(
図11(c))。収容穴11は、ワークWの大きさのバラツキを考慮し標準的なワークWの外形よりも大きく形成されている。そのためこの段階では、収容されたワークWは位置決め固定されていない。
【0042】
次に、押しボタン部32に加えていた力を外すと、バネ部材Sの付勢力によって可動プレート3は固定位置の方向(
図1及び
図11では右下方向)に移動する。このとき、第1板バネ33aと第2板バネ33bの当接部331がワークWに当接してワークWを上側プレート1及び当接プレート4の内側壁の方向へ移動させる。そして、第1板バネ33aと第2板バネ33bの当接部331及び上側プレート1及び当接プレート4の内側壁によって、ワークWは位置決めされるとともに挟持され固定される。このとき可動プレート3は、収容されたワークWを押し付けて固定する固定位置にある。
【0043】
以上説明した実施形態のワーククランプトレイT1によれば、外力が加わる方向にかかわらず長穴であるガイド穴34の形成方向によって可動プレート3を所望の方向に移動させることが可能となる。また、以上説明した実施形態ではガイド穴34の形成方向のx方向に対して45°方向としていたが、当該形成方向はx方向に対して絶対値で90°未満であればよく、ガイドピン8とガイド穴34との摺擦を抑える観点からは絶対値で45°未満とするのが望ましい。なお、外力が加わる方向(
図1ではx方向)に対するガイド穴34の傾きは外力が加わる方向を基準として時計回りを「+」、反時計回りを「-」としたものである。
【0044】
そしてまた、前記実施形態では当接プレート4を積層配置し、上側プレート1と当接プレート4の内側壁によってワークWの一方側の位置決め固定がなされていたが、当接プレート4を使用せず上側プレート1の内側壁のみでワークWの一方側の位置決め固定を行ってもよい。
【0045】
また、前記実施形態では下側プレート6にガイドピン8を設け、可動プレート3にガイド穴34を設けていたが、下側プレート6及び上側プレート1の少なくとも一方にガイド穴を設け、可動プレート3に前記ガイド穴に係入するガイドピンを設ける構成としても本発明の効果は得られる。
【0046】
(第1変形例)
第1実施形態のワーククランプトレイT1のガイド穴は、長手方向両端部が半円状である形状であったが、これに限定されるものではなく、例えば、
図12に示すような、長方形状のガイド穴34aであっても構わない。なお、可動プレート3のがたつきを防止する観点から、
図12のガイド穴34aの短手方向の幅はガイドピン8の本体部81の外径と実質上同一とされる。またガイド穴34aの長手方向の長さ及びx方向からの傾きによって、可動プレート3の最大移動距離及び移動方向が定められる。
【0047】
(第2変形例)
第1実施形態のワーククランプトレイT1では、可動プレート3に押しボタン部32を設け、押しボタン部32に外力を加えることによって可動プレート3を移動させてワークWの固定と解放を行っていたが、例えば、クランプトレイT1に可動プレート3に外力を加えるための長穴や丸穴を形成し、これらの長穴や丸穴にピンを挿入することによって可動プレート3に外力を加える構成としてもよい。
【0048】
図13及び
図14に一例を示す。
図13は丸穴9及びその近傍の垂直断面図であり、
図14はその平面図である。なお、ワーククランプトレイT1のプレート積層構成は第1実施形態と同一である。上側プレート1、当接プレート4、高さ調整プレート5、下側プレート6の各プレートには丸穴91,94,95,96(総称して「丸穴9」と記すことがある。)が形成されている。上側プレート1、当接プレート4、高さ調整プレート5、下側プレート6の丸穴91,94,95,96は、重ね合わせたときに平面視において完全に一致する位置に形成されている。一方、可動プレート3にはx方向に対して45°方向に伸びた長穴93が形成されている。そして、この楕円穴93の形成位置は、上側プレート1と下側プレート6の丸穴91,96よりも
図13及び
図14において右方向に若干ずれた位置に形成されている。このため、上側プレート1と下側プレート6の丸穴91,96から可動プレート3が一部露出した状態となっている。
【0049】
クランプトレイT1に形成された丸穴9を用いてワークWを固定する場合は、上側プレート1、当接プレート4、高さ調整プレート5、下側プレート6の各プレートの丸穴9及び可動プレート3の長穴93にピンPを挿入して、丸穴9から露出している可動プレート3を丸穴9から見えない位置まで移動させる。これにより、ワークWを収容穴11に収容可能な状態となる。次いで、収容穴11および位置決め穴31にワークWを収容する。その後、丸穴9からピンPを引き抜く。すると、バネ部材Sの付勢力によって可動プレート3は
図13及び
図14において右方向に移動し、第1板バネ33aと第2板バネ33bの当接部331及び上側プレート1と当接プレート4の内側壁によって、ワークWは位置決めされるとともに挟持され固定される。
【0050】
一方、ワークWを解放する場合は、上側プレート1、当接プレート4、高さ調整プレート5、下側プレート6の各プレートの丸穴9及び可動プレート3の長穴93にピンPを挿入して、丸穴9から露出している可動プレート3を丸穴9から見えない位置まで移動させる。これにより、第1板バネ33aと第2板バネ33bの当接部331及び上側プレート1と当接プレート4の内側壁とによるワークWの挟持が解除され、ワークWを収容穴から取り出すことが可能となる。
【0051】
なお、ワークWの固定と解放のための丸穴9は1箇所であってもよいし2箇所以上であってもよい。
【0052】
(その他)
以上説明した各プレートをエッチングにより加工する場合、プレート材料はエッチング液に対して腐食性を有するものであり、例えばステンレス鋼、鉄、銅、アルミニウムなどの金属材料が好適に使用される。
【0053】
また、下側プレート6に形成されている吸引穴61は、ワークWの収容穴11への固定を補助・補強するためのものであって、円形に限定されるものではなく多角形などであってもよい。吸引穴61の形成個数も1つに限定されるものではなく2つ以上であっても勿論構わない。また、吸引穴61は無くてもよい。さらには、吸引穴61に換えて上側プレート1の収容穴と同一形状の穴を形成してもよい。このような穴を形成した場合、z方向に長いワークWの固定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、各種のワークをクランプするワーククランプトレイに利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 上側プレート
2 スペーサープレート
3 可動プレート
4 当接プレート
5 高さ調整プレート
6 下側プレート
7 枠プレート
8 ガイドピン
9 丸穴
T1 ワーククランプトレイ
W ワーク
S バネ部材
11 収容穴
12,52,62 凹部
13,23,43,53,63,73 位置決め穴
14,44,54 係入穴
31 位置決め穴
33a 第1板バネ
33b 第2板バネ
34 ガイド穴
61 吸引穴
64 取付穴
81 本体部
82 突出部
331 当接部