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特許7131825無線通信システム、無線アクセスポイント、無線端末接続先誘導方法および無線端末接続先誘導プログラム
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  • 特許-無線通信システム、無線アクセスポイント、無線端末接続先誘導方法および無線端末接続先誘導プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線アクセスポイント、無線端末接続先誘導方法および無線端末接続先誘導プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/06 20090101AFI20220830BHJP
   H04W 28/08 20090101ALI20220830BHJP
   H04W 76/10 20180101ALI20220830BHJP
   H04W 76/30 20180101ALI20220830BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20220830BHJP
【FI】
H04W48/06
H04W28/08
H04W76/10
H04W76/30
H04W92/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019171666
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021048562
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】新貝 卓也
【審査官】伊藤 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0109912(US,A1)
【文献】特開2017-123592(JP,A)
【文献】特開2017-157876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが携行する無線端末を接続することが可能な親機となる無線アクセスポイントが複数存在している無線通信システムにおいて、
複数の前記無線アクセスポイントそれぞれは、
前記無線端末が使用することが可能な帯域における混雑度に関する情報を収集して、収集した該混雑度に関する情報を各前記無線アクセスポイントとの間で送受信することにより、前記無線アクセスポイントそれぞれにおける前記混雑度に関する情報を互いに共有する状態で保持し、
かつ、
前記無線端末から複数の前記無線アクセスポイントのいずれかに対して接続要求があった際に、
該接続要求を受信した、いずれかの前記無線アクセスポイントは、
保持している各前記無線アクセスポイントそれぞれの前記混雑度に関する情報に基づいて、複数の前記無線アクセスポイントの中から前記無線端末の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定して、前記無線端末の接続先として決定した該無線アクセスポイントを示す情報を、前記無線端末の接続先に関する決定通知として、複数の前記無線アクセスポイントそれぞれに通知することにより、
接続先として決定した前記無線アクセスポイントに対して接続要求が前記無線端末から送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送して、前記無線端末との間を接続し、
接続先として決定した前記無線アクセスポイント以外の無線アクセスポイントに対して前記無線端末から接続要求が送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送することなく、該接続要求を破棄し、
複数の前記無線アクセスポイントそれぞれは、
前記無線端末のユーザがあらかじめ接続先として指定した親機の無線アクセスポイントをあらかじめ登録している接続先登録テーブルを保持している場合、
当該無線端末の接続先を決定する際に、
各前記無線アクセスポイントそれぞれの前記混雑度に関する情報に基づいて当該無線端末の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定する動作を行う代わりに、
前記接続先登録テーブルを参照して、当該無線端末の接続先として登録されている無線アクセスポイントを当該無線端末の接続先として決定する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記無線端末を接続することが可能な前記親機となる前記無線アクセスポイントとして、
前記無線端末同士の接続や他のネットワークとの接続の機能を有する無線接続装置のみならず、該無線接続装置と前記無線端末との間で送受信される信号を中継する機能を有する中継器を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
複数の前記無線アクセスポイントそれぞれは、
前記混雑度に関する情報をあらかじめ定めた周期で定期的に収集し、収集した前記混雑度に関する情報を各前記無線アクセスポイントとの間で送受信することにより、前記無線アクセスポイントそれぞれにおける前記混雑度に関する情報を定期的に最新の状態に更新した状態で互いに共有し、
かつ、
前記無線端末と接続中の状態にある前記無線アクセスポイントにおける前記混雑度が他のいずれかの前記無線アクセスポイントにおける前記混雑度を超えて高くなったことを検知した場合、
前記無線端末と接続中の状態にある該無線アクセスポイントは、
接続中の前記無線端末との接続状態を遮断して、最新の状態において前記混雑度が最も低くなっている他のいずれかの前記無線アクセスポイントに前記無線端末の接続先を変更する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記混雑度に関する情報として、
前記無線端末が使用する帯域におけるRSSI(Received Signal Strength Indication:受信電波強度)値、接続済みの前記無線端末の台数、接続済みの前記無線端末との間のスループット値、同一チャネルを用いている他の前記無線アクセスポイントの台数のいずれか1ないし複数の情報を用いる、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項5】
複数の前記無線アクセスポイントそれぞれは、
収集した前記混雑度に関する情報の送受信、前記無線端末の接続先の決定通知および前記無線端末との接続完了のそれぞれに関する情報を、IEEE802.11規格に準拠したビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)を用いて、各前記無線アクセスポイントとの間で送受信する、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記無線端末からの前記接続要求は、IEEE802.11規格に準拠した認証要求(Authentication)信号を用いて行う、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項7】
ユーザが携行する無線端末を接続することが可能な親機となる無線アクセスポイントであって、
他の無線アクセスポイントとともに無線通信システムに設けられ、
前記無線端末が使用することが可能な帯域における混雑度に関する情報を収集して、収集した該混雑度に関する情報を前記他の無線アクセスポイントそれぞれとの間で送受信することにより、自無線アクセスポイントおよび前記他の無線アクセスポイントそれぞれにおける前記混雑度に関する情報を互いに共有する状態で保持し、
かつ、
前記無線端末から接続要求があった際に、
保持している自無線アクセスポイントおよび前記他の無線アクセスポイントそれぞれにおける前記混雑度に関する情報に基づいて、前記無線端末の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定して、前記無線端末の接続先として決定した該無線アクセスポイントを示す情報を、前記無線端末の接続先に関する決定通知として、前記他の無線アクセスポイントそれぞれに通知することにより、
自無線アクセスポイントが該接続先として決定した場合、前記接続要求が前記無線端末から送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送して、前記無線端末との間を接続し、
前記他の無線アクセスポイントのいずれかが前記接続先として決定した場合に、前記接続要求が前記無線端末から送信されてきた場合には、該接続要求に対して肯定応答を返送することなく、該接続要求を破棄し、
前記無線端末のユーザがあらかじめ接続先として指定した親機の無線アクセスポイントをあらかじめ登録している接続先登録テーブルを保持している場合、
当該無線端末の接続先を決定する際に、
保持している自無線アクセスポイントおよび前記他の無線アクセスポイントそれぞれにおける前記混雑度に関する情報に基づいて当該無線端末の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定する動作を行う代わりに、
前記接続先登録テーブルを参照して、当該無線端末の接続先として登録されている無線アクセスポイントを当該無線端末の接続先として決定する、
ことを特徴とする無線アクセスポイント。
【請求項8】
ユーザが携行する無線端末を接続することが可能な親機となる無線アクセスポイントが複数存在している無線通信システムにおいて、前記無線端末の接続先を親機側の前記無線アクセスポイントにて決定して、決定した該接続先に前記無線端末の接続を誘導する無線端末接続先誘導方法であって、
複数の前記無線アクセスポイントそれぞれは、
前記無線端末が使用することが可能な帯域における混雑度に関する情報を収集して、収集した該混雑度に関する情報を各前記無線アクセスポイントとの間で送受信することにより、前記無線アクセスポイントそれぞれにおける前記混雑度に関する情報を互いに共有する状態で保持し、
かつ、
前記無線端末から複数の前記無線アクセスポイントのいずれかに対して接続要求があった際に、
該接続要求を受信した、いずれかの前記無線アクセスポイントは、
保持している各前記無線アクセスポイントそれぞれの前記混雑度に関する情報に基づいて、複数の前記無線アクセスポイントの中から前記無線端末の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定して、前記無線端末の接続先として決定した該無線アクセスポイントを示す情報を、前記無線端末の接続先に関する決定通知として、複数の前記無線アクセスポイントそれぞれに通知することにより、
接続先として決定した前記無線アクセスポイントに対して接続要求が前記無線端末から送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送して、前記無線端末との間を接続し、
接続先として決定した前記無線アクセスポイント以外の無線アクセスポイントに対して前記無線端末から接続要求が送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送することなく、該接続要求を破棄し、
複数の前記無線アクセスポイントそれぞれは、
前記無線端末のユーザがあらかじめ接続先として指定した親機の無線アクセスポイントをあらかじめ登録している接続先登録テーブルを保持している場合、
当該無線端末の接続先を決定する際に、
各前記無線アクセスポイントそれぞれの前記混雑度に関する情報に基づいて当該無線端末の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定する動作を行う代わりに、
前記接続先登録テーブルを参照して、当該無線端末の接続先として登録されている無線アクセスポイントを当該無線端末の接続先として決定する、
ことを特徴とする無線端末接続先誘導方法。
【請求項9】
ユーザが携行する無線端末を接続することが可能な親機となる無線アクセスポイントが複数存在している無線通信システムにおいて、前記無線端末の接続先を親機側の前記無線アクセスポイントにて決定して、決定した該接続先に前記無線端末の接続を誘導する処理を、前記無線アクセスポイントに搭載のコンピュータによって実行する無線端末接続先誘導プログラムであって、
複数の前記無線アクセスポイントそれぞれは、
前記無線端末が使用することが可能な帯域における混雑度に関する情報を収集して、収集した該混雑度に関する情報を各前記無線アクセスポイントとの間で送受信することにより、前記無線アクセスポイントそれぞれにおける前記混雑度に関する情報を互いに共有する状態で保持し、
かつ、
前記無線端末から複数の前記無線アクセスポイントのいずれかに対して接続要求があった際に、
該接続要求を受信した、いずれかの前記無線アクセスポイントは、
保持している各前記無線アクセスポイントそれぞれの前記混雑度に関する情報に基づいて、複数の前記無線アクセスポイントの中から前記無線端末の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定して、前記無線端末の接続先として決定した該無線アクセスポイントを示す情報を、前記無線端末の接続先に関する決定通知として、複数の前記無線アクセスポイントそれぞれに通知することにより、
接続先として決定した前記無線アクセスポイントに対して接続要求が前記無線端末から送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送して、前記無線端末との間を接続し、
接続先として決定した前記無線アクセスポイント以外の無線アクセスポイントに対して前記無線端末から接続要求が送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送することなく、該接続要求を破棄し、
複数の前記無線アクセスポイントそれぞれは、
前記無線端末のユーザがあらかじめ接続先として指定した親機の無線アクセスポイントをあらかじめ登録している接続先登録テーブルを保持している場合、
当該無線端末の接続先を決定する際に、
各前記無線アクセスポイントそれぞれの前記混雑度に関する情報に基づいて当該無線端末の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定する動作を行う代わりに、
前記接続先登録テーブルを参照して、当該無線端末の接続先として登録されている無線アクセスポイントを当該無線端末の接続先として決定する、
ことを特徴とする無線端末接続先誘導プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、無線アクセスポイント、無線端末接続先誘導方法および無線端末接続先誘導プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現状の無線環境においては、子機の無線端末(STA:station)の接続先の候補となる親機側の無線アクセスポイント(AP:wireless access-point)が複数存在する無線環境の場合、無線端末が接続する無線アクセスポイントは、例えば特許文献1の特開2007-110373号公報「無線アクセスポイント選択方法、無線装置ならびにコンピュータプログラム」等にも記載されているように、無線端末側の決定に依存している。この特許文献1の技術でては、接続先の選択を行う無線端末に、各無線アクセスポイントの通信スループットを算出する機能を付与し、最も通信効率が良いと予想される無線アクセスポイントを接続先として選択することを可能にしている。
【0003】
ここで、親機側の複数の接続先候補としてすべてが無線アクセスポイントの場合だけみに限るものではなく、図8に示すように、無線アクセスポイントと中継器(RP:repeater)とが存在している場合であっても同様である。この中継器は、無線端末と無線アクセスポイントとの間で送受信される信号の中継を行う機能を有する親機の一種である。図8は、現状の無線通信システムにおいて無線端末の接続先候補として無線アクセスポイントと中継器との双方が存在している無線環境の例を示す模式図である。
【0004】
つまり、図8の例では、無線端末30aが、無線アクセスポイント10aおよび中継器20a双方からの電波を受信することができる位置に存在していた場合には、無線端末30aにおいて、無線アクセスポイント10aおよび中継器20aそれぞれの通信スループットを算出し、もっとも通信効率が良いと予測される方を接続先として選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-110373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上に述べた本発明に関連する現状の技術においては、以下のような解決するべき課題がある。
【0007】
現状の技術では、子機の無線端末に対し、複数の接続先候補の親機が存在していた場合、いずれの親機を選択して接続するかは、無線端末側が決定し、接続先候補の親機側の無線アクセスポイントや中継器あるいは無線端末のユーザは関与することができない構成となっている。
【0008】
したがって、全ての無線端末を通信品質の良い無線アクセスポイントや中継器に接続させるためには、不特定多数の全ての無線端末に対して通信スループットの算出機能を付与し、最も通信品質が良い接続先を選択するようにしなければならなくなるので、現実的ではない。
【0009】
また、このような無線端末接続方法では、無線端末は、通信スループットのみに着目して接続先を選択して決定し、接続先の候補である無線アクセスポイント側や中継器側の混雑度を考慮していないので、決定した接続先の無線アクセスポイントや中継器に偏りが発生して、負荷が集中してしまったり、通信品質の悪い無線アクセスポイントや中継器に接続してしまったりする可能性がある。
【0010】
さらに、使用チャネルユーザが無線端末の接続先を指定したいとき、接続しようとする接続先以外の全ての親機に関するプロファイル情報を無線端末の記憶部から削除することが必要であり、手間がかかる。さらに、複数の接続先候補として同じSSID(Service Set Identifier:無線アクセスポイント識別子)とパスワードとを使用する他無線アクセスポイントが存在していた場合、接続先の無線アクセスポイントは、無線端末の仕様に依存していて、該無線端末のユーザも関与することはできない。したがって、素性の知れない同じSSIDとパスワードとを有する他無線アクセスポイントに接続してしまう可能性があり、この可能性がセキュリティ上の解決するべき課題となっている。
【0011】
(本発明の目的)
本発明は、かくのごとき解決するべき課題に鑑み、子機側の無線端末の接続先候補となる親機が複数存在する無線環境において、子機側の無線端末が接続すべき接続先を親機側が決定して、決定した該接続先に接続するように無線端末を誘導する無線通信システム、無線アクセスポイント、無線端末接続先誘導方法および無線端末接続先誘導プログラムを提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決するため、本発明による無線通信システム、無線アクセスポイント、無線端末接続先誘導方法および無線端末接続先誘導プログラムは、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0013】
(1)本発明による無線通信システムは、
ユーザが携行する無線端末を接続することが可能な親機となる無線アクセスポイントが複数存在している無線通信システムにおいて、
複数の前記無線アクセスポイントそれぞれは、
前記無線端末が使用することが可能な帯域における混雑度に関する情報を収集して、収集した該混雑度に関する情報を各前記無線アクセスポイントとの間で送受信することにより、前記無線アクセスポイントそれぞれにおける前記混雑度に関する情報を互いに共有する状態で保持し、
かつ、
前記無線端末から複数の前記無線アクセスポイントのいずれかに対して接続要求があった際に、
該接続要求を受信した、いずれかの前記無線アクセスポイントは、
保持している各前記無線アクセスポイントそれぞれの前記混雑度に関する情報に基づいて、複数の前記無線アクセスポイントの中から前記無線端末の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定して、前記無線端末の接続先として決定した該無線アクセスポイントを示す情報を、前記無線端末の接続先に関する決定通知として、複数の前記無線アクセスポイントそれぞれに通知することにより、
接続先として決定した前記無線アクセスポイントに対して接続要求が前記無線端末から送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送して、前記無線端末との間を接続し、
接続先として決定した前記無線アクセスポイント以外の無線アクセスポイントに対して前記無線端末から接続要求が送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送することなく、該接続要求を破棄する、
ことを特徴とする。
【0014】
(2)本発明による無線アクセスポイントは、
ユーザが携行する無線端末を接続することが可能な親機となる無線アクセスポイントであって、
他の無線アクセスポイントとともに無線通信システムに設けられ、
前記無線端末が使用することが可能な帯域における混雑度に関する情報を収集して、収集した該混雑度に関する情報を前記他の無線アクセスポイントそれぞれとの間で送受信することにより、自無線アクセスポイントおよび前記他の無線アクセスポイントそれぞれにおける前記混雑度に関する情報を互いに共有する状態で保持し、
かつ、
前記無線端末から接続要求があった際に、
保持している自無線アクセスポイントおよび前記他の無線アクセスポイントそれぞれにおける前記混雑度に関する情報に基づいて、前記無線端末の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定して、前記無線端末の接続先として決定した該無線アクセスポイントを示す情報を、前記無線端末の接続先に関する決定通知として、前記他の無線アクセスポイントそれぞれに通知することにより、
自無線アクセスポイントが該接続先として決定した場合、前記接続要求が前記無線端末から送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送して、前記無線端末との間を接続し、
前記他の無線アクセスポイントのいずれかが前記接続先として決定した場合に、前記接続要求が前記無線端末から送信されてきた場合には、該接続要求に対して肯定応答を返送することなく、該接続要求を破棄する、
ことを特徴とする。
【0015】
(3)本発明による無線端末接続先誘導方法は、
ユーザが携行する無線端末を接続することが可能な親機となる無線アクセスポイントが複数存在している無線通信システムにおいて、前記無線端末の接続先を親機側の前記無線アクセスポイントにて決定して、決定した該接続先に前記無線端末の接続を誘導する無線端末接続先誘導方法であって、
複数の前記無線アクセスポイントそれぞれは、
前記無線端末が使用することが可能な帯域における混雑度に関する情報を収集して、収集した該混雑度に関する情報を各前記無線アクセスポイントとの間で送受信することにより、前記無線アクセスポイントそれぞれにおける前記混雑度に関する情報を互いに共有する状態で保持し、
かつ、
前記無線端末から複数の前記無線アクセスポイントのいずれかに対して接続要求があった際に、
該接続要求を受信した、いずれかの前記無線アクセスポイントは、
保持している各前記無線アクセスポイントそれぞれの前記混雑度に関する情報に基づいて、複数の前記無線アクセスポイントの中から前記無線端末の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定して、前記無線端末の接続先として決定した該無線アクセスポイントを示す情報を、前記無線端末の接続先に関する決定通知として、複数の前記無線アクセスポイントそれぞれに通知することにより、
接続先として決定した前記無線アクセスポイントに対して接続要求が前記無線端末から送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送して、前記無線端末との間を接続し、
接続先として決定した前記無線アクセスポイント以外の無線アクセスポイントに対して前記無線端末から接続要求が送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送することなく、該接続要求を破棄する、
ことを特徴とする。
【0016】
(4)本発明による無線端末接続先誘導プログラムは、
ユーザが携行する無線端末を接続することが可能な親機となる無線アクセスポイントが複数存在している無線通信システムにおいて、前記無線端末の接続先を親機側の前記無線アクセスポイントにて決定して、決定した該接続先に前記無線端末の接続を誘導する処理を、前記無線アクセスポイントに搭載のコンピュータによって実行する無線端末接続先誘導プログラムであって、
複数の前記無線アクセスポイントそれぞれは、
前記無線端末が使用することが可能な帯域における混雑度に関する情報を収集して、収集した該混雑度に関する情報を各前記無線アクセスポイントとの間で送受信することにより、前記無線アクセスポイントそれぞれにおける前記混雑度に関する情報を互いに共有する状態で保持し、
かつ、
前記無線端末から複数の前記無線アクセスポイントのいずれかに対して接続要求があった際に、
該接続要求を受信した、いずれかの前記無線アクセスポイントは、
保持している各前記無線アクセスポイントそれぞれの前記混雑度に関する情報に基づいて、複数の前記無線アクセスポイントの中から前記無線端末の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定して、前記無線端末の接続先として決定した該無線アクセスポイントを示す情報を、前記無線端末の接続先に関する決定通知として、複数の前記無線アクセスポイントそれぞれに通知することにより、
接続先として決定した前記無線アクセスポイントに対して接続要求が前記無線端末から送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送して、前記無線端末との間を接続し、
接続先として決定した前記無線アクセスポイント以外の無線アクセスポイントに対して前記無線端末から接続要求が送信されてきた場合に、該接続要求に対して肯定応答を返送することなく、該接続要求を破棄する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の無線通信システム、無線アクセスポイント、無線端末接続先誘導方法および無線端末接続先誘導プログラムによれば、主に、以下のような効果を奏することができる。
【0018】
すなわち、本発明においては、親機側に複数の無線アクセスポイント(中継器も親機として含む)が存在する無線環境下においては、子機側の無線端末の親機側への接続先を、親機側である無線アクセスポイント側において制御するために、複数の無線アクセスポイントそれぞれの混雑度に関する情報を共有し、いずれかの無線アクセスポイントに無線端末からの接続要求があった際に、共有している混雑度の情報に基づいて、複数の無線アクセスポイントの中から無線端末の接続先を選択して決定するので、決定した接続先に子機の無線端末の接続先を誘導することができる。而して、親機側の負荷分散を図ることが可能であり、通信品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムにおいて無線アクセスポイント、中継器、無線端末との間で情報をやり取りする一例を示すネットワーク構成図である。
図2】本発明の一実施形態として図1に示した無線通信システムにおける無線アクセスポイント、中継器および無線端末の内部構成の一例を示すブロック構成図である。
図3】本発明の一実施形態として図1に示した無線通信システムにおいて無線アクセスポイントと中継器との間で送受信するビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)に追加して付加したエレメントの一例を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態として図1に示した無線通信システムにおける無線アクセスポイントの動作の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態として図1に示した無線通信システムにおける中継器の動作の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一動作例として図4および図5に示した無線アクセスポイントおよび中継器が送受信するビーコン(Beacon)信号にエレメントとして追加し、付加している制御情報フラグの遷移状態の一例を示す遷移図である。
図7】複数の無線アクセスポイントと管理無線アクセスポイントとが設置されている場合において各無線アクセスポイント、無線端末との間の情報のやり取りの一例を示すネットワーク構成図である。
図8】現状の無線通信システムにおいて無線端末の接続先候補として無線アクセスポイントと中継器との双方が存在している無線環境を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による無線通信システム、無線アクセスポイント、無線端末接続先誘導方法および無線端末接続先誘導プログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明による無線通信システム、無線アクセスポイントおよび無線端末接続先誘導方法について説明するが、かかる無線端末接続先誘導方法をコンピュータにより実行可能な無線端末接続先誘導プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、無線端末接続先誘導プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。また、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではないことも言うまでもない。
【0021】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、子機側の無線端末(STA:station)の接続先候補となる親機側の無線アクセスポイント(AP:wireless access point)が複数存在する無線環境下にある場合、無線端末が使用することが可能な帯域の各無線アクセスポイントそれぞれにおける混雑度に関する情報を各無線アクセスポイントが共有して保持し、無線端末から接続要求があった際に、各無線アクセスポイントそれぞれの前記混雑度に関する情報に基づいて、無線端末の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定して、接続先として決定した無線アクセスポイントのみが無線端末からの接続要求に対して応答することにより、無線端末の接続先を誘導することを主要な特徴としている。
【0022】
なお、ここでは、親機として、無線端末同士の接続や他のネットワークとの接続を行う機能を有する無線接続装置である無線アクセスポイントのみを示している。しかし、無線端末と無線接続装置である無線アクセスポイントとの間で送受信される信号を中継する中継器(RP:repeater)も親機の一種であり、子機側の無線端末の接続先候補の親機として無線アクセスポイント(すなわち無線接続装置)と中継器とを含めて複数存在する環境下においては、中継器が、前述した無線アクセスポイント(すなわち無線接続装置)と同様の動作を行うことも主要な特徴の一つである。
【0023】
而して、親機として無線アクセスポイント(すなわち無線接続装置)側や中継器側が無線端末の接続先を制御することになり、無線アクセスポイント(すなわち無線接続装置)や中継器の負荷分散や通信品質の向上を図ることができる。また、前述のように、無線アクセスポイント(すなわち無線接続装置)側や中継器側に無線端末の接続先を選択して決定する機能を具備することにより、無線端末の接続要求に対して、無線端末側の機能に依存することなく、不特定多数の全ての無線端末を最適な接続先に誘導することができる。
【0024】
つまり、現状の技術の場合、子機側の無線端末に関する接続先候補となる親機(無線アクセスポイントや中継器)が複数存在する場合において、子機側の無線端末が、複数の親機それぞれのSSID(無線アクセスポイントや中継器の識別子)を検知可能な場所に存在している場合や、子機側の無線端末が複数の親機に関するプロファイル情報を有している場合などにおいては、前述したように、子機側の無線端末がどの親機(無線アクセスポイントや中継器)に接続するかは、子機側の無線端末の仕様に依存して決定される。
【0025】
これに対して、本発明においては、マネージメントフレームを用いて複数の親機同士で情報を共有し、子機側の無線端末から接続要求があった際に、各親機が共有する前記情報に基づいて該子機側の無線端末の接続先とすべき最適な親機を選択して決定した後、接続先として決定した親機のみが、該子機からの接続要求に対して応答(肯定応答)するが、接続先として決定した親機以外の親機は、該子機からの接続要求に対して応答しないように動作することにより、親機側が該子機の接続先を誘導するように制御することができる。
【0026】
ここで、各親機が共有する前記情報として、RSSI(Received Signal Strength Indication:受信電波強度)値などの混雑度に関する情報を利用することにより、子機の接続先を選択して決定するようにすれば、該子機の接続に関し、より通信品質が良い親機へと誘導することができる。さらには、RSSI値だけでなく、スループット値に関する情報も判断材料として利用することにより、通信品質がより高い上位ネットワークを使用している親機(無線アクセスポイント)を接続先として決定することができる。
【0027】
また、複数の親機間で情報を共有するために、ビーコン(Beacon)信号に該情報を付与して情報交換することにより、複数の親機が異なるネットワークに存在している場合であっても、複数の親機間で前記情報を共有することが可能であり、異なるネットワークに存在する親機であっても、子機が最適とする親機を接続先として決定することができる。
【0028】
(本発明の実施形態)
次に、本発明に係る無線通信システムの実施形態について説明する。無線端末の接続先の候補となる無線アクセスポイントが複数存在する無線通信システムの場合、例えば、図8に示したように、無線端末30aの接続先の候補として、無線アクセスポイント10aと中継器20aとが存在している場合、本実施形態においては、図8の現状の技術の場合とは異なり、子機の無線端末側ではなく、親機の無線アクセスポイント側および中継器側に無線端末の接続先を選択して決定する機能を備え、無線端末からの接続要求に対して、無線端末の接続先を親機側で選択して決定して、決定した接続先に、該無線端末の接続先を誘導するという接続先誘導機能を備えている構成を採用している。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システムにおいて無線アクセスポイント、中継器、無線端末との間で情報をやり取りする一例を示すネットワーク構成図であり、図8の場合と同様、ユーザが使用する無線端末30が、無線アクセスポイント10と中継器20との双方の電波を受信することができる位置に存在する場合を示している。つまり、子機の無線端末30の接続先の候補として、無線アクセスポイント10と中継器20との2つが親機として存在し、該親機を形成する無線アクセスポイント10と中継器20との双方には、本発明に特有の前記接続先誘導機能を備えている場合を示している。
【0030】
ここで、無線アクセスポイント10は、無線端末同士の接続や他のネットワークとの接続を行う機能を有する無線接続装置であり、また、中継器20は、無線接続装置である無線アクセスポイント10と無線端末30との間で送受信される信号を中継する装置である。無線アクセスポイント10と中継器20とは、前記接続先誘導機能として、それぞれの混雑度に関する情報を互いに共有し、無線子機の接続先を制御する点に関しては全く同様の動作を行う。したがって、以下の説明においては、説明を簡素化するために、無線接続装置である無線アクセスポイント10と中継器20との双方を明確に区別した説明を要しない場合には、無線アクセスポイント10と中継器20とを纏めて「無線アクセスポイント」という用語により代表して説明する場合もある。
【0031】
本発明の一実施形態として図1に示した無線通信システム100において、無線端末30が、例えば、無線アクセスポイント10に対してIEEE802.11規格準拠のAUTH(Authentication:認証要求)信号を接続要求信号として送信してくると(シーケンスSeq1)、該AUTH信号を受信した無線アクセスポイント10は、受信した該AUTH信号に対する応答を一旦保留する。そして、無線アクセスポイント10は、他の無線アクセスポイントに対して、図1の場合は中継器20に対して、無線端末30が使用可能な帯域における混雑度に関する情報の返送を要求するデータ要求(Data Request)信号を送信する(シーケンスSeq2)。
【0032】
中継器20は、無線アクセスポイント10からのデータ要求(Data Request)信号を受け取ると、該データ要求(Data Request)信号の要求に該当する混雑度に関する情報としてあらかじめ保持している情報を取り出して、データ応答(Data Response)信号として要求元の無線アクセスポイント10に返送する(シーケンスSeq3)。ここで、混雑度に関する情報は、無線端末30が使用することが可能な帯域における混雑度を示す情報であり、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indication)値を示す情報である。そして、中継器20における該RSSI値の情報は、例えば、無線端末30からのAUTH信号の送信に先立って、該無線端末30から親機問い合わせ用として送信される、該親機のSSID(Service Set Identifier:無線アクセスポイントや中継器の識別子)情報付きのプローブ要求(Probe Request)信号等を監視することにより、あらかじめ取得することが可能である。
【0033】
無線アクセスポイント10は、中継器20からデータ応答(Data Response)信号として返送されてきた該中継器20における混雑度情報例えばRSSI値に関する情報を受け取ると、自無線アクセスポイント10における混雑度情報を示す例えばRSSI値に関する情報と比較する。そして、無線アクセスポイント10は、該比較結果において、混雑度が少ない方の装置(無線アクセスポイント10または中継器20)を、認証要求用(すなわち接続要求用)のAUTH信号の送信元である無線端末30の接続先として決定する。そして、接続先として決定した装置(無線アクセスポイント10または中継器20)を特定するMACアドレス(MAC addr)を、無線端末30の接続先決定通知(Access Point Notification)信号として、中継器20に対して通知する(シーケンスSeq4)。例えば、無線アクセスポイント10が、中継器20の方が自無線アクセスポイント10よりも混雑度が少ないと判定して、中継器20を無線端末30の接続先として決定した場合には、中継器20を特定するMACアドレスを中継器20に対して通知する。
【0034】
なお、無線アクセスポイント10と中継器20との間の情報の送受信(混雑度情報の取得要求を行うデータ要求(Data Request)信号、混雑度情報を返送するデータ応答(Data Response)信号、無線端末30の接続先を決定したことを通知する決定通知(Access Point Notification)信号、無線端末30との接続が完了したことを通知する接続完了(Association Done)信号等の送受信)は、マネージメントフレームとして、例えばIEEE802.11規格に準拠したビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)を用いて行う。
【0035】
無線アクセスポイント10が、中継器20を無線端末30の接続先として決定した場合には、該無線アクセスポイント10は、当該無線アクセスポイントが受信していたAUTH信号に対する応答であるAck(Acknowledge:肯定応答)信号を無線端末30に対して返送する動作は行うことなく、保留していたAUTH信号を破棄する(シーケンスSeq5)。この結果、無線端末30は、AUTH信号の応答タイムアウトを検知して、他の無線アクセスポイントに対して、図1の場合は中継器20に対して、AUTH信号を送信し直す(シーケンスSeq6)。
【0036】
中継器20は、無線端末30からAUTH信号を受け取ると、無線アクセスポイント10から該無線端末30の接続先が自中継器20であることを示すMACアドレスの通知を受け取っているので、 該AUTH信号の送信元の無線端末30に対して、AUTH信号の応答であるAck(Acknowledge:肯定応答)信号を返送することにより(シーケンスSeq7)、該無線端末30を認証して該無線端末30との間を無線接続する。
【0037】
(本実施形態の構成例)
次に、本発明に係る無線アクセスポイント、中継器、無線端末の実施形態として図1に示した無線アクセスポイント10、中継器20および無線端末30の内部構成について、その一例を、図2を用いて説明する。図2は、本発明の一実施形態として図1に示した無線通信システム100における無線アクセスポイント10、中継器20および無線端末30の内部構成の一例を示すブロック構成図である。
【0038】
図2に示すように、無線アクセスポイント10と中継器20とは、本実施形態に関連する部位に関しては、同じ内部構成からなっていて、それぞれ、無線アクセスポイント10は、無線部11、制御部12、記憶部13を内部に有し、中継器20は無線部21、制御部22、記憶部23を内部に有している。また、無線端末30は、無線部31、制御部32を内部に有している。
【0039】
図2に示す無線端末30の無線部31から、親機問い合わせ用としてSSID(Service Set Identifier)情報に無線アクセスポイント10を指定したIEEE802.11規格準拠のプローブ要求(Probe Request)信号をブロードキャスト送信すると、無線アクセスポイント10の無線部11と中継器20の無線部21との双方が、無線端末30からのプローブ要求信号を受信する。そして、無線アクセスポイント10の無線部11と中継器20の無線部21とのそれぞれにて受信した該プローブ要求信号のRSSI値と送信元の無線端末30のMACアドレスとに関する情報を取得して、取得した該情報をそれぞれにおける混雑度を示す情報として、それぞれの制御部12と制御部22とにより、それぞれの記憶部13と記憶部23とに書き込んで保持する。そして、それぞれの記憶部13と記憶部23とに書き込んだ無線端末30からのプローブ要求信号のRSSI値は、該無線端末30からプローブ要求信号を受信する都度、最新の状態に上書きされて更新されていく。
【0040】
また、無線アクセスポイント10の制御部12は、自無線アクセスポイント10が無線端末30からのプローブ要求信号にて親機問い合わせ用として指定されているSSID情報に該当する装置であることを確認すると、送信元の無線端末30に対して該プローブ要求信号に対する応答を無線部11から返送する。一方、中継器20の制御部22は、無線端末30からのプローブ要求信号が指定している接続先が自装置ではないので、該プローブ要求信号に対する応答は返送しない。
【0041】
次に、無線端末30の無線部31は、無線アクセスポイント10から返送されてきた応答(送信したプローブ要求信号に対する応答)を受け取ると、制御部32により認証要求用(すなわち接続要求用)の信号として生成したIEEE802.11規格準拠のAUTH(Authentication:認証要求)信号を、無線アクセスポイント10に対して送信する。無線アクセスポイント10の無線部11は、無線端末30からのAUTH信号を受信すると、受信したAUTH信号を制御部12に引き渡す。
【0042】
制御部12は、該AUTH信号の送信元の無線端末30の接続先として、無線端末30が存在を認識している中継器20や他の無線アクセスポイントよりも自無線アクセスポイント10が最適であるか否かを確認するために、受信したAUTH信号に対する応答の返送を一時保留して、中継器20や他の無線アクセスポイントに対して、それぞれにおける混雑度に関する情報を取得するためのマネージメントフレームを無線部11からブロードキャスト送信する。
【0043】
それぞれにおける混雑度に関する情報を取得するために送信する該マネージメントフレームとして、例えば、IEEE802.11規格準拠のビーコン(Beacon)信号を用いる。そして、該ビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)に、中継器20や他の無線アクセスポイントにおいて保持している無線端末30のRSSI値情報の返送を要求するためのデータ要求フラグ(Data Request Flag)をオン(‘1’)にしたエレメントを追加した信号を生成して 、生成した該ビーコン(Beacon)信号を無線部11からブロードキャスト送信する。ここで、該無線端末30のRSSI値とは、該無線端末30が使用することが可能な帯域に関する混雑度情報であり、中継器20や他の無線アクセスポイントが無線端末30からプローブ要求信号を受信した際のRSSI値に関する情報である。
【0044】
中継器20は、無線部21において無線アクセスポイント10が送信したビーコン(Beacon)信号を受信すると、制御部22において該ビーコン(Beacon)信号に追加して付加されているエレメントを解析する。解析結果として、該エレメントに自中継器20における無線端末30のRSSI値情報の返送を要求するデータ要求フラグ(Data Request Flag)がオン(‘1’)に設定されていることを検知する。したがって、中継器20の制御部22は、記憶部23に保持している自中継器20における無線端末30のRSSI値に関する情報(すなわち無線端末30からプローブ要求信号を受信した際のRSSI値に関する情報)を当該中継器20における混雑度情報として読み出す。
【0045】
そして、中継器20の制御部22は、例えば、ビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)に、自中継器20における無線端末30のRSSI値に関する情報を設定したエレメントと、該RSSI値に関する情報の返送を示すデータ応答フラグ(Data Response Flag)をオン(‘1’)にしたエレメントとを追加した信号を生成して 、生成した該ビーコン(Beacon)信号を無線部21からブロードキャスト送信する。
【0046】
なお、本実施形態においては、図1に示すように、無線端末30が接続可能な親機として認識している装置は、無線アクセスポイント10と中継器20とであり、他の無線アクセスポイントを認識していない。したがって、無線アクセスポイント10からブロードキャスト送信されたビーコン(Beacon)信号を、中継器20以外の他の無線アクセスポイントが受信したとしても、中継器20以外の他の無線アクセスポイントは無線端末30からのプローブ要求(Probe Request)信号を受信していない状況にあるので、中継器20以外の他の無線アクセスポイントからは、無線アクセスポイント10からのビーコン(Beacon)信号にて要求されている無線端末30のRSSI値情報を送信する動作は行わない。
【0047】
次に、無線アクセスポイント10の無線部11は、中継器20からブロードキャスト送信されてきたビーコン(Beacon)信号を受信すると、制御部12において該ビーコン(Beacon)信号に追加して付加されているエレメントを解析する。解析結果として、制御部12は、該エレメントにRSSI値情報の返送を示すデータ応答フラグ(Data Response Flag)がオン(‘1’)に設定されていることを検知すると、該ビーコン(Beacon)信号により返送されてきた中継器20における無線端末30のRSSI値の情報を取得する。
【0048】
そして、制御部12は、返送されてきた中継器20における無線端末30のRSSI値と、記憶部13に保持している自無線アクセスポイント10における無線端末30のRSSI値とを比較する。比較結果として、返送されてきた中継器20における無線端末30のRSSI値の方が、自無線アクセスポイント10における無線端末30のRSSI値よりも大きい値であった場合には、中継器20が自無線アクセスポイント10よりも混雑度が少なく、通信品質が良好であるので、自無線アクセスポイント10よりもより適した状態にある中継器20を、無線端末30の接続先として決定する。
【0049】
したがって、かかる場合には、制御部12は、無線端末30の接続先として決定した中継器20のMACアドレスを記憶部13に保持するとともに、無線端末30の接続先として中継器20が決定した旨を通知する接続先決定通知信号を生成して無線部11から送信する。
【0050】
該接続先決定通知信号としては、例えば、ビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)に、無線端末30の接続先として決定した中継器20のMACアドレスに関する情報を無線端末30のMACアドレスとともに設定したエレメントと、無線端末30の接続先となる親機(無線アクセスポイントのみならず中継器である場合も含む)を選択して決定した旨を通知するためのアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)をオン(‘1’)にしたエレメントと、を追加した信号を生成する。そして、生成した該ビーコン(Beacon)信号を無線部11からブロードキャスト送信する。
【0051】
さらに、かかる場合には、制御部12は、無線端末30から認証要求用(すなわち接続要求用)のAUTH信号を受信していても、該AUTH信号を破棄して、該AUTH信号に対する応答を示すAck信号を、無線端末30に対して返送する動作は行わない。この結果、該AUTH信号の送信元の無線端末30は、送信した該AUTH信号の応答タイムアウトを検出して、問い合わせ先の無線アクセスポイント10は接続することができない状態にあるものと見做して、他の親機(本実施形態においては中継器20)を次の接続先の候補として選択して、該中継器20に対してAUTH信号を送信する動作を行う。
【0052】
一方、中継器20は、無線部21において無線アクセスポイント10が送信したビーコン(Beacon)信号を受信すると、制御部22において該ビーコン(Beacon)信号に追加して付加されているエレメントを解析する。解析結果として、無線アクセスポイント10が無線端末30の接続先を中継器20に決定していた場合には、該エレメントに、無線端末30の接続先の無線アクセスポイントが決定した旨のアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)がオン(‘1’)に設定されていて、かつ、無線端末30の接続先として自中継器20のMACアドレスが設定されていることを検知する。したがって、制御部22は、受信した該ビーコン(Beacon)信号のエレメントから、自中継器20が接続先として決定した接続対象の無線端末30のMACアドレスを(または、接続対象として決定した自中継器20のMACアドレスと無線端末30のMACアドレスとの双方を)読み出して、記憶部23に保持する。
【0053】
しかる後において、中継器20は、無線部21において無線端末30から送信されてきた認証要求用(すなわち接続要求用)のAUTH信号を受信すると、受信した該AUTH信号を制御部22に引き渡す。制御部22は、該AUTH信号が指定した認証要求先のMACアドレスが自中継器のMACアドレスであり、該AUTH信号の送信元を示す無線端末30のMACアドレスが、記憶部23に接続先が自中継器20に決定した無線端末30を特定する情報として保持されている無線端末30のMACアドレスと一致しているか否かを確認する。
【0054】
確認結果、送信元の無線端末30のMACアドレスが、記憶部23に保持されている無線端末30のMACアドレスと一致していた場合には、制御部22は、正当な接続対象の無線端末30からのAUTH信号を受信しているものと判定して、当該無線端末30との接続を許可する認証動作を行い、受信したAUTH信号に対する肯定応答として、Ack(Acknowledge)信号を、無線部21から送信元の無線端末30に対して返送する。
【0055】
さらに、中継器20の制御部22は、Ack信号の返送により無線端末30との間の接続を完了すると、例えば、ビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)に、無線端末30との接続を完了した旨を示す接続完了フラグ(Association done Flag)をオン(‘1’)にしたエレメントと該無線端末30のMACアドレスと接続先となった中継器20のMACアドレスとに関する情報を含むエレメントとを追加した信号を生成する。そして、生成した該ビーコン(Beacon)信号を無線部21からブロードキャスト送信する。
【0056】
そして、無線アクセスポイント10の無線部11は、中継器20からブロードキャスト送信されてきたビーコン(Beacon)信号を受信すると、制御部12において該ビーコン(Beacon)信号に追加して付加されているエレメントを解析する。解析結果として、制御部12は、該エレメントに無線端末30との接続を完了した旨を示す接続完了フラグ(Association done Flag)がオン(‘1’)に設定されていることを検知すると、自無線アクセスポイント10の無線部11からあらかじめ定めた周期で定期的に送信しているビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)に、接続先決定通知として無線端末30の接続先に中継器20を選択して決定した旨を通知するために追加して付加していたエレメントを削除して、エレメントを付加していない初期状態に復帰する。
【0057】
ここで、無線アクセスポイント10の制御部12において生成したビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)に、接続先決定通知として追加して付加しているエレメントとは、前述したように、無線端末30のMACアドレスと該無線端末30の接続先として決定した中継器20のMACアドレスとを設定したエレメントと、無線端末30の接続先の無線アクセスポイントを選択して決定した旨を通知するためのアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)をオン(‘1’)にしたエレメントとである。
【0058】
図3は、本発明の一実施形態として図1に示した無線通信システム100において無線アクセスポイント10と中継器20との間で送受信するビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)に追加して付加したエレメントの一例を示す模式図である。親機として、無線アクセスポイント10と中継器20との他に、他の無線アクセスポイントや中継器がさらに存在していた場合には、他の無線アクセスポイントや中継器との間でも、図3と同様のエレメントが送受信されることは言うまでもない。
【0059】
前述した実施形態の場合には、図3に示すビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)において、第2行目の「Staion1」は、接続要求元の無線端末30の識別名を示す接続要求元無線端末欄41であり、第3~第7行目は送受信する制御情報の種別をフラグにより示す制御情報フラグ欄42であり、第8行目の「Station address」は、接続要求元の無線端末30のMACアドレスを示す接続要求元無線端末アドレス欄43であり、第9行目の「Access Point address」は、接続先として決定した中継器20のMACアドレスを示す接続先アドレス欄44であり、第10行目の「Rssi」は、無線アクセスポイント10に返送されてくる他無線アクセスポイント(中継器20を含む)におけるRSSI値を示すRSSI値欄45である。
【0060】
なお、図3の制御情報フラグ欄42の先頭行(すなわちエレメントの第3行目)に示す「Control Flag:0X0100」は、制御情報種別のフラグを16進数表示で示したものであり、下位から第3番目のフラグのみがオン(‘1’)になっているが、それ以外のフラグはすべてオフ(‘0’)である場合を示している。ここで、制御情報フラグ欄42の第2行目(すなわちエレメントの第4行目)以降に示すように、制御情報種別のフラグの先頭から順番に、下位から第1番目のフラグは無線アクセスポイント10が中継器20(他の無線アクセスポイントも含む)に送信する混雑度情報返送要求用のデータ要求フラグ(Data request Flag)を示し、第2番目のフラグは中継器20(他の無線アクセスポイントも含む)が無線アクセスポイント10に返送する混雑度情報返送用のデータ応答フラグ(Data response Flag)を示す。また、下位から第3番目のフラグは無線アクセスポイント10が中継器20(他の無線アクセスポイントも含む)に送信する接続先決定通知用のアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)を示し、第4番目のフラグは接続先として決定した中継器20(他の無線アクセスポイントも含む)が無線アクセスポイント10(他の無線アクセスポイントも含む)に送信する接続完了通知用の接続完了フラグ(Association done Flag)を示している。
【0061】
つまり、前述したように、複数の親機を形成する無線アクセスポイント(中継器も含む)それぞれは、収集した混雑度に関する情報の送受信、無線端末の接続先の決定通知、無線端末との接続完了等のそれぞれに関する情報を、IEEE802.11規格に準拠したビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)を用いて、各前記無線アクセスポイントとの間で送受信することにより、各親機間で情報を共有する。そして、該ビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)により送受信する情報を識別するための識別子として、例えば、図3に示すような制御情報フラグを用いている。かくのごとく、複数の親機間で情報を共有するために、ビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)にエレメントとして共有用の情報を追加して付加した形で情報交換することにより、複数の親機が異なるネットワークに存在している場合であっても、複数の親機間で前記情報を共有することが可能であり、異なるネットワークにある親機であっても子機が最適とする親機を接続先として決定することができる。
【0062】
なお、図3に示す制御情報フラグ欄42は、前述した説明において、無線アクセスポイント10が、中継器20から無線端末30との接続を完了した旨を示す接続完了フラグ(Association done Flag)がオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受け取った際のビーコン(Beacon)信号のベンダ用フィールド(Vender Specific Field)に追加して付加しているエレメントの制御情報フラグの設定状態を例にして示している。
【0063】
(本実施形態の動作例の説明)
次に、図1図2に本発明の一実施形態として示した無線アクセスポイント10の動作例について、その一例を、図4のフローチャートを用いて説明する。図4は、本発明の一実施形態として図1に示した無線通信システム100における無線アクセスポイント10の動作の一例を示すフローチャートであり、無線端末30から自無線アクセスポイント10のSSID(Service Set Identifier)を指定して送信してきたプローブ要求(Probe Request)信号に対する応答信号を返送し、かつ、親機を形成する自無線アクセスポイント10のみならず中継器20それぞれにおいて受信したプローブ要求(Probe Request)信号のRSSI値に関する情報を保持した後の動作例について示している。なお、無線アクセスポイント10、中継器20以外の他の無線アクセスポイントや中継器は、無線端末30からのプローブ要求(Probe Request)信号を受信していない場合を示している。
【0064】
図4に示すように、無線アクセスポイント10が無線端末30に対してプローブ要求(Probe Request)信号の応答を返送した後の通常動作時においては(ステップS100)、無線端末30から認証要求用(すなわち接続要求用)のAUTH信号を受信したか否かを監視し続ける(ステップS101)。そして、AUTH信号を受信しない限り(ステップS101のNo)、ステップ101の動作を繰り返す。
【0065】
一方、無線アクセスポイント10は、無線端末30からAUTH信号を受信すると(ステップS101のYes)、他の無線アクセスポイントや中継器20における無線端末30との無線通信に関する混雑度を調べるために、他の無線アクセスポイントや中継器20における無線端末30のRSSI値情報の送信を要求するデータ要求フラグ(Data Request Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスとをエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号を生成して、ブロードキャスト送信する(ステップS102)。
【0066】
しかる後、無線アクセスポイント10は、他の無線アクセスポイントや中継器20からの返送時限としてあらかじめ定めた一定時間(n秒間)が経過したか否かを監視する(ステップS103)。該一定時間(n秒間)がまだ経過していない場合は(ステップS103のNo)、次に、他の無線アクセスポイントや中継器20から、無線端末30との無線通信に関する混雑度を示す情報として、他の無線アクセスポイントや中継器20における無線端末30のRSSI値情報が返送されてきたか否かを調べる(ステップS104)。
【0067】
他の無線アクセスポイントや中継器20から無線端末30のRSSI値情報がまだ返送されてきていなかった場合(ステップS104のNo)、ステップS102に復帰して、データ要求フラグ(Data Request Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスとをエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号のブロードキャスト送信動作を繰り返す。
【0068】
一方、ステップS103において、ビーコン(Beacon)信号をブロードキャスト送信してからあらかじめ定めた一定時間(n秒間)が経過したことを検出した場合(ステップS103のYes)、他の無線アクセスポイントや中継器20は、無線端末30との間のRSSI値情報を取得していない状態にあるものと判断して、無線アクセスポイント10は、自無線アクセスポイント10を無線端末30の接続先として決定する。そして、無線アクセスポイント10は、無線端末30の接続先が決定した旨を示すアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスと接続先として決定した自無線アクセスポイント10のMACアドレスとに関する情報をエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号を生成して、ブロードキャスト送信する(ステップS105)。しかる後、無線アクセスポイント10は、ステップS101において無線端末30から受け取ったAUTH信号に対する肯定応答として、Ack信号を該無線端末30に対して返送する(ステップS106)。
【0069】
さらに、AUTH信号に対する肯定応答を返送した無線アクセスポイント10は、無線端末30との接続が完了した旨を、他の無線アクセスポイントや中継器20に通知する。すなわち、無線アクセスポイント10は、無線端末30との接続を完了した旨を示す接続完了フラグ(Association done Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスおよび接続先となった自無線アクセスポイント10のMACアドレスとに関する情報をエレメントとを追加したビーコン(Beacon)信号を生成して 、ブロードキャスト送信する(ステップS107)。しかる後、無線アクセスポイント10は通常動作時の状態に復帰する(ステップS112)。
【0070】
また、ステップS104において、他の無線アクセスポイントや中継器20のうち例えば中継器20からのみ無線端末30のRSSI値情報が混雑度情報として返送されてきた場合には(ステップS104のYes)、無線アクセスポイント10は、返送されてきた中継器20における無線端末30のRSSI値を、自無線アクセスポイント10における無線端末30のRSSI値情報と比較する。つまり、返送されてきた中継器20における無線端末30のRSSI値よりも自無線アクセスポイント10における無線端末30のRSSI値の方が低い値で、自無線アクセスポイント10の方が中継器20よりも混雑度が高い状態にあるか否かを確認する(ステップS108)。
【0071】
自無線アクセスポイント10における無線端末30のRSSI値が中継器20における無線端末30のRSSI値よりも低い値ではなく、自無線アクセスポイント10の方が中継器20よりも混雑度が高くない状態にあると判定した場合には(ステップS108のNo)、自無線アクセスポイント10を無線端末30の接続先として決定し、ステップS105に移行する。
【0072】
これに対して、自無線アクセスポイント10における無線端末30のRSSI値が中継器20における無線端末30のRSSI値よりも低い値であり、自無線アクセスポイント10の方が中継器20よりも混雑度が高い状態にあると判定した場合には(ステップS108のYes)、無線アクセスポイント10は、中継器20を無線端末30の接続先として決定する。そして、無線アクセスポイント10は、無線端末30の接続先が決定した旨を示すアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスと接続先として決定した中継器20のMACアドレスとに関する情報をエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号を生成して、ブロードキャスト送信する(ステップS109)。
【0073】
しかる後、無線アクセスポイント10は、接続先として決定した中継器20からのビーコン(Beacon)信号を監視して、中継器20と接続対象子機の無線端末30との間の接続が完了したか否かを監視する状態に移行する。つまり、無線アクセスポイント10は、無線端末30との接続を完了した旨を示す接続完了フラグ(Association done Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスと接続先となった中継器20のMACアドレスとに関する情報をエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号が中継器20から送信されてくることを監視し続ける(ステップS110)。
【0074】
無線アクセスポイント10は、接続完了フラグ(Association done Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスと接続先となった中継器20のMACアドレスとに関する情報をエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号を中継器20から受信すると、自無線アクセスポイント10からあらかじめ定めた周期で定期的に送信しているビーコン(Beacon)信号から、無線端末30の接続先として中継器20を選択して決定した旨を通知するために追加して付加していたエレメントを削除する(ステップS111)。しかる後、無線アクセスポイント10は通常動作時の状態に復帰する(ステップS112)。
【0075】
次に、図1図2に本発明の一実施形態として示した中継器20の動作例について、その一例を、図5のフローチャートを用いて説明する。図5は、本発明の一実施形態として図1に示した無線通信システム100における中継器20の動作の一例を示すフローチャートであり、無線端末30から無線アクセスポイント10向けに送信されたプローブ要求(Probe Request)信号を傍受した際のRSSI値を、該無線端末30と自中継器20との接続時における混雑度情報として、取得済みの状態になった後の動作例について示している。
【0076】
図5に示すように、中継器20が無線端末30のRSSI値を取得済みの状態になっている通常動作においては(ステップS200)、自中継器20における無線端末30のRSSI値情報の送信を要求するデータ要求フラグ(Data Request Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスとをエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号が、無線アクセスポイント10から送信されてきたか否かを監視し続ける(ステップS201)。そして、データ要求フラグ(Data Request Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスとをエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号を受信しない限り(ステップS201のNo)、ステップ201の動作を繰り返す。
【0077】
一方、中継器20は、データ要求フラグ(Data Request Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスとをエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号を無線アクセスポイント10から受信すると(ステップS201のYes)、無線端末30が使用しようとする帯域の自中継器20における混雑度を示す情報を返送する動作を行う。すなわち、中継器20は、自中継器20における無線端末30のRSSI値情報と該RSSI値情報の返送を示すデータ応答フラグ(Data Response Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスとをエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号を生成して、ブロードキャスト送信する(ステップS202)。
【0078】
しかる後、中継器20は、無線端末30の接続先が決定した旨を示すアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスと接続先として決定した無線アクセスポイント10または自中継器20のMACアドレスとに関する情報をエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号を、無線アクセスポイント10から送信されてきたか否かを監視し続ける(ステップS203)。そして、アクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスと接続先として決定した無線アクセスポイント10または自中継器20のMACアドレスとに関する情報をエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号を受信しない限り(ステップS203のNo)、ステップ203の動作を繰り返す。
【0079】
一方、中継器20は、アクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスと接続先として決定した無線アクセスポイント10または自中継器20のMACアドレスとに関する情報をエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号を無線アクセスポイント10から受信すると(ステップS203のYes)、受信した該ビーコン(Beacon)信号のエレメントに設定されているMACアドレスが、自中継器20のMACアドレスと一致しているか否かを確認する(ステップS204)。
【0080】
受信した該ビーコン(Beacon)信号のエレメントに設定されているMACアドレスが、自中継器20のMACアドレスと一致していた場合には(ステップS204のYes)、中継器20は、無線アクセスポイント10において無線端末30の接続先として自中継器20が選択されて決定された場合であると判定する。したがって、中継器20は、しかる後、接続対象とする該無線端末30から認証要求用(すなわち接続要求用)のAUTH信号が自中継器20に対して送信されてきたか否かを監視し続ける(ステップS205)。そして、該無線端末30からAUTH信号を受信しない限り(ステップS205のNo)、ステップ205の動作を繰り返す。
【0081】
一方、中継器20は、接続対象の無線端末30から自中継器20に対して送信されてきたAUTH信号を受信すると(ステップS205のYes)、受信したAUTH信号に対する肯定応答を示すAck信号を該無線端末30に対して返送することにより(ステップS206)、接続対象の無線端末30と接続する状態に移行する。
【0082】
しかる後、中継器20は、無線端末30との接続を完了すると、無線端末30との接続を完了した旨を示す接続完了フラグ(Association done Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスと接続先となった自中継器20のMACアドレスとに関する情報をエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号をブロードキャスト送信することにより、無線アクセスポイント10や他の無線アクセスポイントに通知する(ステップS207)。しかる後、中継器20は通常動作の状態に復帰する(ステップS210)。
【0083】
また、ステップS204において、受信したビーコン(Beacon)信号のエレメントに設定されているMACアドレスが、自中継器20のMACアドレスと一致していなかった場合には(ステップS204のNo)、中継器20は、自中継器20が無線端末30の接続先として決定されていなく、エレメントに設定されているMACアドレスが示す無線アクセスポイント10や他の無線アクセスポイントが接続先として決定された場合であると判定する。
【0084】
したがって、中継器20は、接続先として決定した無線アクセスポイント10や他の無線アクセスポイントから、無線端末30との接続を完了した旨を示す接続完了フラグ(Association done Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスと接続先となった無線アクセスポイントのMACアドレスとに関する情報をエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号が送信されてくることを監視し続ける(ステップS208)。そして、無線端末30との接続を完了した旨を示す接続完了フラグ(Association done Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスと接続先となった無線アクセスポイントのMACアドレスとに関する情報をエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号を受信しない限り(ステップS208のNo)、ステップ208の動作を繰り返す。
【0085】
一方、中継器20は、接続先として決定した無線アクセスポイント10や他の無線アクセスポイントから、無線端末30との接続を完了した旨を示す接続完了フラグ(Association done Flag)をオン(‘1’)にした制御情報フラグと該無線端末30のMACアドレスと接続先となった無線アクセスポイントのMACアドレスとに関する情報をエレメントとして追加して付加したビーコン(Beacon)信号を受信すると(ステップS208のYes)、自中継器20からあらかじめ定めた周期で定期的に送信しているビーコン(Beacon)信号から、中継器20における混雑度情報として無線端末30のRSSI情報を返送するために追加して付加していたエレメントを削除する(ステップS209)。しかる後、中継器20は通常動作の状態に復帰する(ステップS210)。
【0086】
次に、図4および図5のフローチャートに示した無線アクセスポイント10および中継器20の動作例において、ブロードキャスト送信するビーコン(Beacon)信号のエレメントとして追加して付加している制御情報フラグの遷移状態を、図6の遷移図を用いてさらに説明する。図6は、本発明の一動作例として図4および図5に示した無線アクセスポイント10および中継器20が送受信するビーコン(Beacon)信号にエレメントとして追加して付加している制御情報フラグの遷移状態の一例を示す遷移図である。図6の遷移図において、丸印のボックスが、制御情報フラグの設定状態を示し、丸印のボックス内の16進数表示の数値は、ビーコン(Beacon)信号のエレメントに設定するために保持している制御情報フラグの設定内容を示している。そして、丸印のボックス間を接続する矢印線が、制御情報フラグの設定状態の遷移を引き起こす条件を示している。
【0087】
図6において、無線アクセスポイント10や中継器20が通常動作状態にある場合においては、制御情報フラグのいずれもオフ(‘0’)の状態であって、‘0X0000’の状態(状態0)になっている。そして、状態0において、無線端末30からAUTH信号を受信すると、状態1に遷移して、制御情報フラグは、下位から第1番目のデータ要求フラグ(Data Request Flag)がオン(‘1’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X0001’のデータ要求状態(状態1)に遷移する。
【0088】
また、状態0において、他の無線アクセスポイント(無線アクセスポイント10または中継器20)からデータ要求フラグ(Data Request Flag)がオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受信すると、状態2に遷移して、制御情報フラグは、下位から第2番目のデータ応答フラグ(Data Response Flag)がオン(‘1’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X0010’のデータ応答状態(状態2)に遷移する。
【0089】
また、状態0において、無線端末30からのAUTH信号を受信していなく、かつ、他の無線アクセスポイントからデータ要求フラグ(Data Request Flag)以外の他の制御情報フラグのいずれかがオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受信した場合には、通常動作状態(状態0)のままの状態を維持する。
【0090】
次に、下位から第1番目のデータ要求フラグ(Data Request Flag)がオン(‘1’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X0001’のデータ要求状態(状態1)について説明する。状態1において、他の無線アクセスポイント(無線アクセスポイント10または中継器20)からデータ要求フラグ(Data Request Flag)がオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受信すると、自身が無線端末30からAUTH信号を受信していた親機であった場合(前述の図4においては無線アクセスポイント10であった場合)には、データ要求状態(状態1)のままの状態を維持する。しかし、自身が無線端末30からAUTH信号を受信していた親機ではなかった場合(前述の図4においては中継器20であった場合)には、状態2に遷移して、制御情報フラグは、下位から第2番目のデータ応答フラグ(Data Response Flag)がオン(‘1’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X0010’のデータ応答状態(状態2)に遷移する。
【0091】
また、状態1において、他の無線アクセスポイント(無線アクセスポイント10または中継器20)からデータ応答フラグ(Data Response Flag)がオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受信すると、状態3に遷移して、制御情報フラグは、下位から第3番目のアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)がオン(‘1’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X0100’の接続先決定通知(アクセスポイント決定通知)状態(状態3)に遷移する。
【0092】
また、状態1において、他の無線アクセスポイント(無線アクセスポイント10または中継器20)からアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)がオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受信すると、状態4に遷移して、制御情報フラグは、下位から第4番目の接続完了フラグ(Association done Flag)がオン(‘1’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X1000’の接続完了状態(状態4)に遷移する。
【0093】
また、状態1において、他の無線アクセスポイント(無線アクセスポイント10または中継器20)からデータ要求フラグ(Data Request Flag)、データ応答フラグ(Data Response Flag)、アクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)以外の他の制御情報フラグのいずれかがオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受信した場合には、無効の制御情報フラグを受信した例外状態が発生した場合であると判断して、通常動作状態(状態0)に遷移して、制御情報フラグのいずれもオフ(‘0’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X0000’の状態(状態0)に遷移する。
【0094】
次に、下位から第2番目のデータ応答フラグ(Data Response Flag)がオン(‘1’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X0010’のデータ応答状態(状態2)について説明する、状態2において、他の無線アクセスポイント(無線アクセスポイント10または中継器20)からアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)がオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受信すると、自身が無線端末30の接続先であった場合には、状態4に遷移して、制御情報フラグは、下位から第4番目の接続完了フラグ(Association done Flag)がオン(‘1’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X1000’の接続完了状態(状態4)に遷移する。
【0095】
また、状態2において、他の無線アクセスポイント(無線アクセスポイント10または中継器20)からデータ要求フラグ(Data Request Flag)オン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受信した場合には、データ応答状態(状態2)のままの状態を維持する。
【0096】
また、状態2において、他の無線アクセスポイント(無線アクセスポイント10または中継器20)からアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)がオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受信しても、自身が無線端末30の接続先ではなかった場合、または、他の無線アクセスポイントからデータ要求フラグ(Data Request Flag)やアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)以外の他の制御情報フラグのいずれかがオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受信した場合には、無効の制御情報フラグを受信した例外状態が発生した場合であると判断して、状態0に遷移して、制御情報フラグのいずれもオフ(‘0’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X0000’の通常動作状態((状態0)に遷移する。
【0097】
次に、下位から第3番目のアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)がオン(‘1’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X0100’の接続先決定通知(アクセスポイント決定通知)状態(状態3)において、他の無線アクセスポイント(無線アクセスポイント10または中継器20)から接続完了フラグ(Association done Flag)がオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受信すると、状態0に遷移して、制御情報フラグのいずれもオフ(‘0’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X0000’の通常動作状態(状態0)に遷移する。
【0098】
また、状態3において、自身が無線端末30の接続先であった場合には、無線端末30から受信したAUTH信号に対する応答としてAck信号を該無線端末30に返送すると、状態4に遷移して、制御情報フラグは、下位から第4番目の接続完了フラグ(Association done Flag)がオン(‘1’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X1000’の接続完了状態(状態4)に遷移する。
【0099】
また、状態3において、自身が無線端末30の接続先ではなく、かつ、他の無線アクセスポイント(無線アクセスポイント10または中継器20)から接続完了フラグ(Association done Flag)以外の制御情報フラグのいずれかがオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受信した場合には、接続先決定通知(アクセスポイント決定通知)状態(状態3)のままの状態を維持する。
【0100】
次に、下位から第4番目の接続完了フラグ(Association done Flag)がオン(‘1’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X1000’の接続完了状態(状態4)について説明する。状態4において、接続完了フラグ(Association done Flag)がオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を送信した後、通常状態への復帰用の時間としてあらかじめ定めた経過時間が経過してタイムアウト(Time out)が発生した場合、状態0に遷移して、制御情報フラグのいずれも、オフ(‘0’)に設定されて、制御情報フラグの設定状態が‘0X0000’の通常動作状態(状態0)に遷移する。
【0101】
また、状態4において、他の無線アクセスポイント(無線アクセスポイント10または中継器20)から制御情報フラグのいずれかがオン(‘1’)のビーコン(Beacon)信号を受信した場合には、接続完了状態(状態4)のままの状態を維持する。
【0102】
(本実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては、以下のような効果を奏することができる。
【0103】
すなわち、親機側に複数の無線アクセスポイント(中継器も親機として含む)が存在する無線環境下においては、子機側の無線端末30の親機側への接続先を、親機側である無線アクセスポイント10や中継器20側において制御するために、無線アクセスポイント10や中継器20それぞれの混雑度に関する情報を双方で共有し、例えば無線アクセスポイント10に無線端末30からの接続要求があった際に、無線アクセスポイント10は、共有している混雑度の情報に基づいて、無線アクセスポイント10、中継器20のいずれかを無線端末30の接続先として決定するので、決定した接続先に子機の無線端末30の接続先を誘導することができる。而して、親機側の負荷分散を図ることが可能であり、通信品質の向上を図ることができる。
【0104】
(本発明の他の実施形態)
本発明の実施形態は、図1図6を用いて前述した実施形態に限るものではなく、以下に説明するような他の実施形態を適用することも可能である。
【0105】
<本発明の他の実施形態1>
前述した実施形態においては、親機を形成する無線アクセスポイント10が1台、中継器20が1台の場合について説明したが、親機を形成する台数は、かかる台数に限るものではない。例えば、無線アクセスポイントや中継器のそれぞれの台数が2台以上の任意の台数であっても、前述した実施形態の場合と同様の手順を踏むことにより、親機側にて無線端末30の接続先を選択して決定することができ、決定した接続先に無線端末30の接続先を誘導することができる。
【0106】
<本発明の他の実施形態2>
前述した実施形態においては、親機を形成する無線アクセスポイント10や中継器20における混雑度を示す情報として無線アクセスポイント10や中継器20における無線端末30の使用可能な帯域のRSSI値情報を用いる場合について説明したが、混雑度を示す情報は、かかるRSSI値情報のみに限るものではない。例えば、親機側の無線アクセスポイント10や中継器20のそれぞれに既に接続済みになっている無線端末の台数や、接続済みの無線端末との間のスループット値、あるいは、同一チャネルを用いている他の無線アクセスポイントの台数等の情報に置き換えることも可能であるし、かかる各情報のうち、複数の情報を組み合わせて用いることも可能である。
【0107】
<本発明の他の実施形態3>
また、前述した実施形態においては、親機側の無線アクセスポイント10や中継器20における混雑度を示す情報(例えばRSSI値情報)を用いて無線端末30の接続先を選択して決定する場合について説明したが、無線端末30の接続先を決定する動作は、かかる混雑度情報に基づいて自動的に決定する場合に限るものではない。例えば、無線端末30のユーザが、親機側の無線アクセスポイント10や中継器20のうち、任意の装置を無線端末30の接続先としてあらかじめ指定することも可能である。
【0108】
そして、無線端末30を特定するMACアドレスと、当該無線端末30のユーザが該無線端末30の接続先として指定した親機(無線アクセスポイント10や中継器20)のMACアドレスとを対応付けた接続先登録テーブルをあらかじめ作成して、親機側の無線アクセスポイント10の記憶部13や中継器20の記憶部23にあらかじめ保持しておくことにする。しかる後、当該無線端末30から、親機を形成するいずれかの装置例えば無線アクセスポイント10に対して、認証用のAUTH信号を送信してきた際に、無線アクセスポイント10は、記憶部13に保持している該接続先登録テーブルを参照して、接続先を決定するようにしても良い。
【0109】
すなわち、複数の無線アクセスポイントそれぞれ(前述の実施形態の場合、無線アクセスポイント10や中継器20)が、無線端末30のユーザがあらかじめ接続先として指定した親機の無線アクセスポイントをあらかじめ登録している接続先登録テーブルをそれぞれの記憶部に保持している場合には、当該無線端末30の接続先を決定する際に、各無線アクセスポイントそれぞれの混雑度に関する情報に基づいて当該無線端末30の接続先として最適な無線アクセスポイントを選択して決定する動作は行わない。そして、かかる動作に代わって、前記接続先登録テーブルに当該無線端末30の接続先として登録されている無線アクセスポイントを当該無線端末30の接続先として決定する。
【0110】
そして、無線端末のMACアドレスおよび決定した接続先の無線アクセスポイント(前述の実施形態の場合、無線アクセスポイント10または中継器20)のMACアドレスの情報とアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)をオン(‘1’)に設定したビーコン(Beacon)信号を生成して、無線アクセスポイント10からブロードキャスト送信することにより、当該無線端末30の接続先をユーザによりあらかじめ指定した接続先に誘導することができる。
【0111】
<本発明の他の実施形態4>
また、前述した実施形態においては、1台の無線アクセスポイント10と1台の中継器20とが存在する無線環境の場合について説明したが、他の実施形態1において前述したように、無線アクセスポイントや中継器の台数が複数存在する無線環境であっても、親機側の無線アクセスポイントや中継器側において決定した接続先に無線端末30の接続先を誘導することができる。ただし、複数の無線アクセスポイントが存在している場合、場合によっては、無線アクセスポイント同士の通信が不可能な位置に設置されている可能性がある。
【0112】
したがって、かかる場合に対応するために、図7に示すように、各無線アクセスポイントとの通信が可能な位置に配置して、各無線アクセスポイントを管理するための管理無線アクセスポイントを別途設置することが必要になる場合がある。図7は、図1の場合とは異なり、複数の無線アクセスポイントと管理無線アクセスポイントとが設置されている場合において各無線アクセスポイント、無線端末との間の情報のやり取りの一例を示すネットワーク構成図である。
【0113】
図7に示すように、第1無線アクセスポイント51、第2無線アクセスポイント52、第3無線アクセスポイント53の3台の無線アクセスポイントが、無線端末30の親機側の無線アクセスポイントとして設置されている無線環境の場合においては、各無線アクセスポイントを管理するための管理無線アクセスポイント54が、第1無線アクセスポイント51、第2無線アクセスポイント52、第3無線アクセスポイント53それぞれと通信することが可能な位置に配置されている。
【0114】
なお、図7のような構成の場合においても、無線端末30の接続先を決定するための基本的な動作に関して、図1図4図5に前述した実施形態の場合と同様の動作を行うことにより、管理無線アクセスポイント54において無線端末30の接続先を選択して決定することができる。すなわち、管理無線アクセスポイント54は、第1無線アクセスポイント51、第2無線アクセスポイント52、第3無線アクセスポイント53の各無線アクセスポイントの混雑度に関する情報を収集することにより、無線端末30の接続先として最適の無線アクセスポイントを選択して決定することができる。
【0115】
そして、管理無線アクセスポイント54は、決定した無線アクセスポイントのMACアドレスと無線端末30のMACアドレスとアクセスポイント決定通知フラグ(Access Point Notification Flag)がオン(‘1’)のエレメントを追加して付加したビーコン(Beacon)信号をブロードキャスト送信することにより、第1無線アクセスポイント51、第2無線アクセスポイント52、第3無線アクセスポイント53の各無線アクセスポイントに対して決定した接続先に関する情報を通知することができる。
【0116】
図7に示したシーケンス(Seq)番号の順番に従って、無線端末30の接続先を決定する動作についてさらに説明する。まず、無線端末30が、例えば、第1無線アクセスポイント51を指定して、認証要求用のAUTH信号を送信してくると(シーケンスSeq11)、該AUTH信号を受信した第1無線アクセスポイント51は、受信したAUTH信号に対する応答を一旦保留して、管理無線アクセスポイント54に対して、混雑度情報の返送を要求するデータ要求(Data request)信号を送信する(シーケンスSeq12)。
【0117】
管理無線アクセスポイント54は、第1無線アクセスポイント51からデータ要求(Data request)信号を受信したことを契機にして、第1無線アクセスポイント51、第2無線アクセスポイント52、第3無線アクセスポイント53の各無線アクセスポイントに対して、それぞれの混雑度情報の返送を要求するデータ要求(Data request)信号を送信する(シーケンスSeq13)。
【0118】
第1無線アクセスポイント51、第2無線アクセスポイント52、第3無線アクセスポイント53の各無線アクセスポイントは、管理無線アクセスポイント54からのデータ要求(Data request)信号を受け取ると、それぞれ、あらかじめ保持している自無線アクセスポイントにおける無線端末30の使用帯域の混雑度に関する情報例えばRSSI情報を取り出して、データ応答(Data response)信号として要求元の管理無線アクセスポイント54に返送する(シーケンスSeq14)。
【0119】
管理無線アクセスポイント54は、第1無線アクセスポイント51、第2無線アクセスポイント52、第3無線アクセスポイント53の各無線アクセスポイントからデータ応答(Data response)信号として返送されてきた混雑度情報例えばRSSI値に関する情報を受け取ると、第1無線アクセスポイント51、第2無線アクセスポイント52、第3無線アクセスポイント53の各無線アクセスポイントにおける混雑度情報例えばRSSI値に関する情報を比較する。
【0120】
そして、管理無線アクセスポイント54は、該比較結果において、混雑度が最も少ない装置を、接続要求元の無線端末30すなわちAUTH信号の送信元の無線端末30の接続先として決定する。そして、接続先として決定した装置を特定するMACアドレス(MAC addr)を、第1無線アクセスポイント51、第2無線アクセスポイント52、第3無線アクセスポイント53の各無線アクセスポイントに対して通知する(シーケンスSeq15)。
【0121】
例えば、管理無線アクセスポイント54が、第3無線アクセスポイント53が無線端末30の使用帯域における混雑度が最も少ないと判定して、第3無線アクセスポイント53を無線端末30の接続先として決定した場合には、第3無線アクセスポイント53のMACアドレスを示す情報を、第1無線アクセスポイント51、第2無線アクセスポイント52、第3無線アクセスポイント53の各無線アクセスポイントに対して通知する。
【0122】
シーケンスSeq11において無線端末30からAUTH信号を受信していた第1無線アクセスポイント51が、管理無線アクセスポイント54から、該無線端末30の接続先を決定した旨を示す情報として、自第1無線アクセスポイント51ではなく、第3無線アクセスポイント53のMACアドレスを示す情報を受信した場合、先に受信していたAUTH信号に対する肯定応答であるAck信号を無線端末30に返送することなく、該AUTH信号を破棄する(シーケンスSeq16)。
【0123】
また、第2無線アクセスポイント52が、管理無線アクセスポイント54から、無線端末30の接続先を決定した旨を示す情報として、第3無線アクセスポイント53のMACアドレスを示す情報を受信した以降において、該無線端末30からAUTH信号を受信した場合(シーケンスSeq17)、第1無線アクセスポイント51の場合と同様、該無線端末30からのAUTH信号に対する肯定応答であるAck信号を該無線端末30に返送することなく、該AUTH信号を破棄する(シーケンスSeq18)。
【0124】
また、第3無線アクセスポイント53が、管理無線アクセスポイント54から、無線端末30の接続先を決定した旨を示す情報として、自第3無線アクセスポイント53のMACアドレスを示す情報を受信した以降において、該無線端末30からAUTH信号を受信した場合(シーケンスSeq19)、自第3無線アクセスポイント53が無線端末30の接続先として決定しているので、第1無線アクセスポイント51、第2無線アクセスポイント52の場合とは異なり、該無線端末30からのAUTH信号に対する肯定応答であるAck信号を該無線端末30に返送することにより(シーケンスSeq20)、無線端末30との間を無線接続する。
【0125】
<本発明の他の実施形態5>
また、前述した実施形態においては、無線端末30からの接続要求時点で、該無線端末が使用する帯域における各親機側の混雑度を各親機で共有することにより、該無線端末30の接続先となる親機(無線アクセスポイント10や中継器20)を決定する場合について説明したが、各親機側の混雑度を共有するタイミングについては、かかる時点に限るものではない。例えば、無線端末30の接続要求を受信する前であっても、あるいは、無線端末30との接続後であっても、あらかじめ定めた周期で定期的に各親機側の混雑度を最新の状態に更新して共有する動作を実施するようにしても良い。
【0126】
混雑度に関する情報を定期的に最新の状態に更新して共有することにより、例えば、無線端末30を親機に接続した後において、接続先の親機が混雑してきて、当該親機の混雑度が他の親機の混雑度を上回ってしまった場合には、接続中の無線端末30との接続状態を遮断して、最新の状態において混雑度が最も低くなっている他の親機に無線端末30の接続先を動的に変更することが可能である。
【0127】
すなわち、例えば、無線端末30を中継器20に接続している状態のまま、該無線端末30を携行するユーザが、中継器20の近傍から離れて、無線アクセスポイント10の近傍まで接近していった場合には、混雑度に関する情報を共有している中継器20は、自中継器20における混雑度が悪化し、無線アクセスポイント10における混雑度が改善されて、自中継器20における混雑度が無線アクセスポイント10における混雑度を上回っている状態を検知する場合が生じる。かかる状態を検知した場合には、中継器20は、意図的に、無線端末30との接続を遮断することにより、無線端末30に再接続を実施させ、該再接続時において、該無線端末30の接続先を無線アクセスポイント10に切り替えるように誘導することができる。
【0128】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0129】
10 無線アクセスポイント(AP)
10a 無線アクセスポイント(AP)
11 無線部
12 制御部
13 記憶部
20 中継器(RP)
20a 中継器(RP)
21 無線部
22 制御部
23 記憶部
30 無線端末(STA)
30a 無線端末(STA)
31 無線部
32 制御部
41 接続要求元無線端末欄
42 制御情報フラグ欄
43 接続要求元無線端末アドレス欄
44 接続先アドレス欄
45 RSSI値欄
51 第1無線アクセスポイント
52 第2無線アクセスポイント
53 第3無線アクセスポイント
54 管理無線アクセスポイント
100 無線通信システム
図1
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