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特許7131838中性ビーム注入器のための光子中性化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】中性ビーム注入器のための光子中性化装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 3/00 20060101AFI20220830BHJP
   G21K 1/14 20060101ALI20220830BHJP
   H05H 1/22 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
H05H3/00
G21K1/14
H05H1/22
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020016276
(22)【出願日】2020-02-03
(62)【分割の表示】P 2017526672の分割
【原出願日】2015-11-18
(65)【公開番号】P2020074323
(43)【公開日】2020-05-14
【審査請求日】2020-02-03
(31)【優先権主張番号】2014146574
(32)【優先日】2014-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515056990
【氏名又は名称】ティーエーイー テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル ヴェー. ブルダコフ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル アー. イワノフ
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ エス. ポポフ
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/039579(WO,A2)
【文献】特開2001-099995(JP,A)
【文献】米国特許第04960990(US,A)
【文献】中国特許出願公開第1784109(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 3/00
G21K 1/14
H05H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性ビーム注入器のための非共振型光中性化装置であって、
光子トラップを形成する対向鏡面を有する、第1および第2の鏡を備え、前記第1および第2の鏡は、間隔を空けた関係で位置付けられており、
前記第1および第2の鏡の鏡面のうちの1つ以上は、凹面であり、
前記第1の鏡は、中心鏡と、第1および第2の外側鏡とを含む鏡アセンブリを備え、前記第1の外側鏡は、第1の端部で前記中心鏡の第1の端部に隣接して位置付けられており、前記第1の外側鏡の第2の端部に向かって前記中心鏡から軸方向に延在しており、前記第1の外側鏡と前記第2の鏡との間の距離は、前記第1の外側鏡の第1の端部から前記第1の外側鏡の第2の端部へと減少しており、前記第2の外側鏡は、第1の端部で前記中心鏡の第2の端部に隣接して位置付けられており、前記第2の外側鏡の第2の端部に向かって前記中心鏡から軸方向に延在しており、前記第2の外側鏡と前記第2の鏡との間の距離は、前記第2の外側鏡の第1の端部から前記第2の外側鏡の第2の端部へと減少しており、
前記光子トラップは、前記第1および第2の鏡の鏡面に共通の法線群に隣接する閉じ込め領域を備える、光中性化装置。
【請求項2】
前記光子トラップは、球状、楕円形、または円筒形である、請求項1に記載の光中性化装置。
【請求項3】
中性ビーム注入器のための非共振型光中性化装置であって、
光子トラップを形成する対向鏡面を有する、第1および第2の鏡を備え、前記第1および第2の鏡は、間隔を空けた関係で位置付けられており、
前記第1の鏡は、中心鏡と、第1および第2の外側鏡とを含む鏡アセンブリを備え、
前記第1の鏡の鏡面は、凹面であり、前記第2の鏡の鏡面は、平坦であり、
前記第1の鏡の鏡面のうちの1つ以上は、凹面であり、
前記第1の外側鏡は、第1の端部で前記中心鏡の第1の端部に隣接して位置付けられており、前記第1の外側鏡の第2の端部に向かって前記中心鏡から軸方向に延在しており、前記第1の外側鏡と前記第2の鏡との間の距離は、前記第1の外側鏡の第1の端部から前記第1の外側鏡の第2の端部へと減少しており、
前記第2の外側鏡は、第1の端部で前記中心鏡の第2の端部に隣接して位置付けられており、前記第2の外側鏡の第2の端部に向かって前記中心鏡から軸方向に延在しており、前記第2の外側鏡と前記第2の鏡との間の距離は、前記第2の外側鏡の第1の端部から前記第2の外側鏡の第2の端部へと減少している、光中性化装置。
【請求項4】
前記中心鏡は、円筒形状であり、前記外側鏡は、円錐形状である、請求項1に記載の光中性化装置。
【請求項5】
前記光子トラップは、前記第1および第2の鏡に対してr=0.999の鏡反射率を伴う約1000の貯蔵効率P/Pinを有し、前記貯蔵効率は、
【数1】


として定義される、請求項1に記載の光中性化装置。
【請求項6】
負イオン系中性ビーム注入器であって、
負イオン源と、
前記負イオン源と同軸方向に位置付けられる非共振型光中性化装置であって、前記光中性化装置は、光子トラップを形成する対向鏡面を有する、第1および第2の鏡を含み、前記第1および第2の鏡は、間隔を空けた関係で位置付けられている、光中性化装置と
を備え、
前記第1および第2の鏡の鏡面のうちの1つ以上は、凹面であり、
前記第1の鏡は、中心鏡と、第1および第2の外側鏡とを含む鏡アセンブリを備え、前記第1の外側鏡は、第1の端部で前記中心鏡の第1の端部に隣接して位置付けられており、前記第1の外側鏡の第2の端部に向かって前記中心鏡から軸方向に延在しており、前記第1の外側鏡と前記第2の鏡との間の距離は、前記第1の外側鏡の第1の端部から前記第1の外側鏡の第2の端部へと減少しており、前記第2の外側鏡は、第1の端部で前記中心鏡の第2の端部に隣接して位置付けられており、前記第2の外側鏡の第2の端部に向かって前記中心鏡から軸方向に延在しており、前記第2の外側鏡と前記第2の鏡との間の距離は、前記第2の外側鏡の第1の端部から前記第2の外側鏡の第2の端部へと減少しており、
前記光子トラップは、前記第1および第2の鏡の鏡面に共通の法線群に隣接する閉じ込め領域を備える、中性ビーム注入器。
【請求項7】
前記光子トラップは、球状、楕円形、または円筒形である、請求項6に記載の中性ビーム注入器。
【請求項8】
負イオン系中性ビーム注入器であって、
負イオン源と、
前記負イオン源と同軸方向に位置付けられる非共振型光中性化装置であって、前記光中性化装置は、光子トラップを形成する対向鏡面を有する、第1および第2の鏡を含み、前記第1および第2の鏡は、間隔を空けた関係で位置付けられている、光中性化装置と
を備え、
前記第1の鏡は、中心鏡と、第1および第2の外側鏡とを含む鏡アセンブリを備え、
前記第1の鏡の鏡面は、凹面であり、前記第2の鏡の鏡面は、平坦であり、
前記第1の鏡の鏡面のうちの1つ以上は、凹面であり、
前記第1の外側鏡は、第1の端部で前記中心鏡の第1の端部に隣接して位置付けられており、前記第1の外側鏡の第2の端部に向かって前記中心鏡から軸方向に延在しており、前記第1の外側鏡と前記第2の鏡との間の距離は、前記第1の外側鏡の第1の端部から前記第1の外側鏡の第2の端部へと減少しており、
前記第2の外側鏡は、第1の端部で前記中心鏡の第2の端部に隣接して位置付けられており、前記第2の外側鏡の第2の端部に向かって前記中心鏡から軸方向に延在しており、前記第2の外側鏡と前記第2の鏡との間の距離は、前記第2の外側鏡の第1の端部から前記第2の外側鏡の第2の端部へと減少している、中性ビーム注入器。
【請求項9】
前記中心鏡は、円筒形状であり、前記外側鏡は、円錐形状である、請求項6に記載の中性ビーム注入器。
【請求項10】
前記光子トラップは、前記第1および第2の鏡に対してr=0.999の鏡反射率を伴う約1000の貯蔵効率P/Pinを有し、前記貯蔵効率は、
【数2】


として定義される、請求項6に記載の中性ビーム注入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される主題は、概して、中性ビーム注入器に関し、より具体的には、負イオンに基づく中性ビーム注入器のための光子中性化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ加熱または中性ビーム支援診断のための負イオンH-、D-ビームから中性ビームを産生するための従来のアプローチは、過剰電子の脱離のために、ガスまたはプラズマ標的中の負イオンビームを中性化することである。しかしながら、本アプローチは、効率性に関して有意な限界を有する。現在、例えば、1MeVビームを用いるように設計された加熱注入器に関して[R.Hemsworth et al., 2009, Nucl. Fusion 49 045006]、ガスおよびプラズマ標的中の中性化効率は、それぞれ、約60%および85%となり[G. I. Dimov et al.,
1975, Nucl. Fusion 15, 551]、これは、注入器の全体的効率に著しく影響を及ぼす。加えて、そのような中性化装置の用途は、ガスパフに起因した真空条件の劣化および原子ビーム中の正イオンの出現を含む、複雑性と関連付けられ、これは、いくつかの用途では、有意となり得る。
【0003】
高エネルギー負イオンからの電子の光脱離は、ビーム中性化の魅力的な方法である。そのような方法は、中性化装置容器の中へのガスまたはプラズマパフを要求せず、正イオンを産生せず、かつ負イオンに起因する少量の不純物のビーム清浄を支援する。電子の光脱離は、以下のプロセス、すなわち、H+hω=H+eに対応する。大部分の負イオンと同様に、H-イオンは、単一安定状態を有する。それにもかかわらず、光脱離は、励起状態から可能である。光脱離断面積は、周知である[例えば、L.M.Branscomb et al., Phys. Rev. Lett. 98, 1028 (1955)参照]。光脱離断面積は、事実上全ての可視および近IRスペクトルに重複する、広光子エネルギー範囲内に及ぶほど十分に大きい。
【0004】
そのような光子は、H0からの全電子またはH-からの全電子をノックアウトし、正イオンを産生することができない。本アプローチは、1975年にJ.H.FinkおよびA.M.Frank[J.H. Fink et al., Photodetachment of electrons from negative ions in a
200 keV deuterium beam source, Lawrence
Livermore Natl. Lab. (1975), UCRL-16844]によって提案されたものである。それ以降、光子中性化装置のためのいくつかのプロジェクトが提案されている。概して、光子中性化装置プロジェクトは、ファブリ・ペローセルに類似する光学共振器に基づく。そのような光学共振器は、非常に高反射率を伴う鏡および細線を伴う強力な光源を必要とし、光学要素は全て、非常に精密に同調される必要がある。例えば、Kovari[M. Kovari et al., Fusion Engineering and Design 85 (2010) 745-751]によって検討される案では、鏡の反射率は、99.6%未満ではないことが要求され、総レーザ出力パワーは、約300W/cmの出力強度を伴う約800kWであることが要求され、レーザ帯域幅は、100Hz未満であることが要求される。そのようなパラメータがともに実現され得る可能性は、低い。
【0005】
したがって、非共振型光中性化装置を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】R.Hemsworth et al., 2009, Nucl. Fusion 49 045006
【文献】G. I. Dimov et al., 1975, Nucl. Fusion 15, 551
【文献】L.M.Branscomb et al., Phys. Rev. Lett. 98, 1028 (1955)
【文献】J.H. Fink et al., Photodetachment of electrons from negative ions in a 200 keV deuterium beam source, Lawrence Livermore Natl. Lab. (1975), UCRL-16844
【文献】M. Kovari et al., Fusion Engineering and Design 85 (2010) 745-751
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
中性ビーム注入器のための非共振型光中性化装置であって、
光子トラップを形成する対向鏡面を有する、第1および第2の鏡を備える、光中性化装置。
(項目2)
前記光子トラップは、球状、楕円形、円筒形、またはトロイダル形状である、項目1に記載の光中性化装置。
(項目3)
前記光子トラップは、前記第1および第2の鏡の鏡面に共通の法線群に隣接する閉じ込め領域を備える、項目1に記載の光中性化装置。
(項目4)
前記第1および第2の鏡の鏡面のうちの1つまたはそれを上回るものは、凹面である、項目1に記載の光中性化装置。
(項目5)
前記第1の鏡の鏡面は、凹面であって、前記第2の鏡の鏡面は、平坦である、項目1に記載の光中性化装置。
(項目6)
前記第1の鏡は、中心鏡と、前記中心鏡に結合される第1および第2の外側鏡とを含む、鏡アセンブリを備える、項目5に記載の光中性化装置。
(項目7)
前記中心鏡は、円筒形状であって、前記外側鏡は、円錐形状である、項目6に記載の光中性化装置。
(項目8)
前記光子トラップは、前記第1および第2の鏡に対してr =0.999の鏡反射率を伴う約1000の貯蔵効率P/P in を有し、前記貯蔵効率は、
【数1】

として定義される、項目1に記載の光中性化装置。
(項目9)
負イオン系中性ビーム注入器であって、
負イオン源と、
前記負イオン源と同軸方向に位置付けられる非共振型光中性化装置であって、前記光中性化装置は、光子トラップを形成する対向鏡面を有する、第1および第2の鏡を含む、光中性化装置と、
を備える、中性ビーム注入器。
(項目10)
前記光子トラップは、球状、楕円形、円筒形、またはトロイダル形状である、項目9に記載の中性ビーム注入器。
(項目11)
前記光子トラップは、第1および第2の鏡面に共通の法線群に隣接する閉じ込め領域を備える、項目9に記載の中性ビーム注入器。
(項目12)
前記第1および第2の鏡の鏡面のうちの1つまたはそれを上回るものは、凹面である、項目9に記載の中性ビーム注入器。
(項目13)
前記第1の鏡の鏡面は、凹面であって、前記第2の鏡の鏡面は、平坦である、項目9に記載の中性ビーム注入器。
(項目14)
前記第1の鏡は、中心鏡と、前記中心鏡に結合される第1および第2の外側鏡とを含む、鏡アセンブリを備える、項目13に記載の中性ビーム注入器。
(項目15)
前記中心鏡は、円筒形状であって、前記外側鏡は、円錐形状である、項目14に記載の中性ビーム注入器。
(項目16)
前記光子トラップは、前記第1および第2の鏡に対してr =0.999の鏡反射率を伴う約1000の貯蔵効率P/P in を有し、前記貯蔵効率は、
【数2】

として定義される、項目9に記載の中性ビーム注入器。
本明細書に提供される実施形態は、負イオン系中性ビーム注入器のための非共振型光中性化装置に関するシステムおよび方法を対象とする。本明細書に説明される非共振型光中性化装置は、光子の経路が、交絡し、ある空間領域、すなわち、光子トラップ内にトラップされる、非共振型光子蓄積の原理に基づく。トラップは、好ましくは、相互に面した2つの平滑鏡面として形成され、少なくとも1つの表面が凹面である。最も単純な形態では、トラップは、好ましくは、楕円形形状である。トラップの閉じ込め領域は、トラップの両鏡面に共通の法線群近傍の領域である。最近傍共通法線から十分に小さい角偏位を伴う光子は、閉じ込められる。具体的条件に応じて、トラップの形状は、球状、楕円形、円筒形、トロイダル、またはそれらの組み合わせのうちの1つであってもよい。
【0008】
動作時、トラップに沿って、およびそれを横断して所与の角発散を伴う光子ビームは、鏡のうちの1つまたはそれを上回るもの内の1つまたはそれを上回る小孔を通して注入される。光子ビームは、標準的産業用パワーファイバレーザから生じることができる。光中性化装置は、光子標的をポンピングするための高品質レーザ放射源を要求せず、かつ光学要素の非常に高精度の調節および整合も要求しない。
【0009】
例示的実施形態の他のシステム、方法、特徴、および利点は、以下の図および発明を実施するための形態の吟味に応じて、当業者に明白である、または明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
構造および動作を含む、例示的実施形態の詳細は、部分的に、同一参照番号が同一部品を指す、付随の図面の検討によって得られる。図中の構成要素は、必ずしも、縮尺通りではなく、代わりに、本発明の原理を図示するために強調が置かれる。さらに、全ての例証は、概念を伝達することを意図しており、相対的サイズ、形状、および他の詳細属性は、文字通りまたは精密にではなく、概略的に図示され得る。
【0011】
図1図1は、非共振型光子トラップの概略図である。
【0012】
図2図2は、準平面型断熱光学トラップの概略図である。
【0013】
図3図3は、図2に示される準平面型断熱光学トラップの概略斜視図である。
【0014】
図4図4は、XY平面において-3°~5°およびトラップに沿って-5°~5°のランダムな角度を伴う、光子トラップ内の単一光線のトレースであって、反射数は、4000である。端部鏡の円錐角は、約3°である。
【0015】
図5図5は、表面強度分布の実施例およびトラップの中央におけるその断面外形を図示する。
【0016】
図6図6は、中性化度(点線)および全体的中性化装置効率(連続曲線)対レーザ注入パワーを示す、チャートである。
【0017】
図7図7は、負イオン系中性ビーム注入器レイアウトの平面図である。
【0018】
図8図8は、図7に示される負イオン系中性ビーム注入器の断面等角図である。
【0019】
類似構造または機能の要素は、概して、図全体を通して例証目的のために、同一参照番号によって表されることに留意されたい。また、図は、好ましい実施形態の説明を促進することのみ意図されることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に開示される付加的特徴および教示の各々は、別個に、または他の特徴および教示と併せて利用され、負イオン系中性ビーム注入器のための非共振型光中性化装置を提供することができる。本明細書に説明される実施形態の代表的実施例(その実施例は、別個かつ組み合わせて、これらの付加的特徴および教示の多くを利用する)が、ここで、添付の図面を参照してさらに詳細に説明される。本発明を実施するための形態は、単に、当業者に本教示の好ましい側面を実践するためのさらなる詳細を教示することが意図され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。したがって、以下の詳細な説明に開示される特徴およびステップの組み合わせは、最も広義な意味では、本発明を実践するために必要ではない場合があり、代わりに、単に、本教示の代表的実施例を説明するために教示される。
【0021】
さらに、代表的実施例および従属請求項の種々の特徴は、本教示の付加的有用実施形態を提供するために、具体的かつ明示的に列挙されていない方法で組み合わせられてもよい。加えて、説明および/または請求項に開示される全特徴は、元々の開示の目的のために、かつ実施形態および/または請求項における特徴の組成から独立して請求される主題を制限する目的のために、相互から別個かつ独立して開示されることが意図されることに明示的に留意されたい。また、全値範囲または実体群の指示は、元々の開示の目的のために、かつ請求される主題を制限する目的のために、あらゆる可能性として考えられる中間値または中間実体も開示することに明示的に留意されたい。
【0022】
本明細書に提供される実施形態は、負イオン系中性ビーム注入器のための新しい非共振型光中性化装置を対象とする。負イオン系中性ビーム注入器の詳細な議論は、露国特許出願第2012137795号およびPCT出願第PCT/US2013/058093号(参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0023】
本明細書に説明される非共振型光中性化装置は、光子の経路が、交絡し、ある空間領域、すなわち、光子トラップ内にトラップされる、非共振型光子蓄積の原理に基づく。トラップは、好ましくは、相互に面する2つの平滑鏡面として形成され、少なくとも1つの表面は、凹面である。最も単純な形態では、トラップは、好ましくは、楕円形形状である。トラップの閉じ込め領域は、トラップの両鏡面に共通の法線群近傍の領域である。最近傍共通法線から十分に小さい角偏位を伴う光子は、閉じ込められる。具体的条件に応じて、トラップの形状は、球状、楕円形、円筒形、トロイダル、またはそれらの組み合わせのうちの1つであってもよい。
【0024】
動作時、トラップに沿って、およびそれを横断して所与の角発散を伴う光子ビームは、鏡のうちの1つまたはそれを上回るもの内の1つまたはそれを上回る小孔を通して注入される。光子ビームは、標準的産業用パワーファイバレーザから生じることができる。光中性化装置は、光子標的をポンピングする高品質レーザ放射源を要求せず、かつ光学要素の非常に高精度の調節および整合も要求しない。
【0025】
図に目を向けると、非共振型光子トラップ10の実施形態が、図1に示される。2次元の場合に描写されるように、トラップ10は、底部平坦鏡20と、上部凹面鏡30とを備える。トラップ10内の垂直軸に対してある小角度を伴う光子γが、発生し、上側鏡30からの各反射は、トラップ10の中心軸に対してある水平運動量差を伴う。n番目の反射後の光子γの位置は、高さF(x)を伴う反射点xからの横座標、垂直からの角度φ、および光子速度βによって定義される。水平運動は、以下の連立方程式によって説明される。
【化1】
【化2】
【0026】
安定性調査のために、方程式(1)および(2)の線形化バージョンが、組み合わせられ、以下の方程式が、得られる。
【化3】
【化4】
【0027】
方程式(3)および(4)を組み合わせることによって、以下の線形再帰関係が、得られる。
【化5】
式中、Rは、上部鏡30の曲率半径である。方程式(5)は、単位時間ステップおよび固有周波数
【化5-1】
を伴う発振システムのための一種の有限差分法である。解は、
【化5-2】
の形態で表現可能であって、式中、qは、複素数である。したがって、qに関して、以下のように定義される。
【化6】
安定性条件は、
【化6-1】
であって、そこから、ある幾何学的光学内における光子閉じ込めが、非負値
【化6-2】
を考慮して、以下のように判定される。
【化7】
上側鏡30の曲率半径は、光子閉じ込めに影響を及ぼす。再帰系(1)および(2)は、運動の積分の提示を可能にする。
【化8】
以下のような上側鏡30の十分に小曲率および小ステップの場合、
【化9】
積分和(8)は、
【化9-1】
または以下の標準的断熱不変量に近似変換される。
【化10】
関係(10)は、光子によって充填される領域を判定する。
【0028】
これらの推定は、負イオンビームのための効果的光子中性化装置の設計を可能にする。図2および3に目を向けると、トラップ10の合理的3次元幾何学形状は、4つの構成要素の長い弧状のアセンブリである。図2に描写されるように、トラップ10は、好ましくは、平面または平坦形状である、トラップ10の底部における底部または下側鏡20と、円筒形形状である中心鏡32および円錐形形状であって中心鏡32の端部に結合される一対の外側鏡34を備える、上側鏡アセンブリ30とを備える。示されるように、イオンビームHが、光子トラップに沿って通過される。サイズは、国際熱核融合実験炉(ITER)のためのビーム注入器の単一中性化装置チャネルの特性スケールから求められる。
【0029】
以下は、ITER NBIのための光子中性化装置の数値シミュレーションの結果を提供する。本シミュレーションは、ZEMAXコードを使用することによって実施された。図4は、XY平面において-3°~3°およびトラップ10に沿って-5°~5°のランダムな角度を伴う、図2に与えられるトラップシステム10内の1つの光線トレースを示す。
【0030】
図4に提示される軌道は、4000回の反射を含有し、その後、光線は、トラップシステム内に残った。共振デバイス[M. Kovari, B. Crowley. Fusion Eng. Des. 2010, v.85 p. 745-751]では、鏡反射率r=0.9996下における貯蔵効率は、
【化10-1】
である。より低い鏡反射率のr=0.999を伴う、本明細書に記載の場合では、判定される貯蔵効率は、以下となる。
【化11】
【0031】
損失は、主に、キャビティ内側の多数の表面および回折と関連付けられる傾向にあるであろう。[J.H. Fink, Production and Neutralization of Negative Ions and Beams: 3rd Int. Symposium, Brookhaven 1983, AIP, New York, 1984, pp. 547-560]
【0032】
トラップ10内側の水平平面を通した放射エネルギー束の分布は、図5に示されており、全表面の反射係数は、0.999に等しく、入力放射パワーは、1Wに等しい。トラップ10のキャビティ内の計算される累積パワーは、722ワットに等しい。計算損失(Zemaxコードは、そのような損失を監視および評価する)を考慮すると、累積されるパワー値は、248ワット増加されるはずである。したがって、貯蔵効率は、ほぼ最大可能値(11)に到達する。したがって、準平面システムは、幾何学的光学内に、所与のサイズを伴う閉じ込め領域の生成を可能にする。
【0033】
端部円錐鏡34および主要円筒形鏡32および20は、図2および3に示されるように、折れを形成する。折れは、これが不安定性領域を形成するため、光子の縦方向閉じ込めに悪影響を及ぼす傾向にある((7)参照)。しかしながら、光子寿命の間の光線によるこれらの境界の交差回数は、総反射数と比較して、多くはなく、したがって、光子は、縦方向角度を有意に増加する時間を有さず、トラップ10の端部を通してトラップから出る。
トラップおよび源の中への放射注入
【0034】
光学セルにポンピングするために、トラップ10に沿って、およびそれを横断して所与の角拡散を伴う光子ビームが、1つまたはそれを上回る鏡内の1つまたはそれを上回る小孔を通して注入されることができる。例えば、これは、イッテルビウムファイバレーザ(λ=1070nm、総パワー50kW超)を使用することによって可能である[http://www.ipgphotonics.com/Collateral/Documents/English-US/HP_Brochure.pdf]。これらの直列レーザは、十分なパワーを有し、その放出ラインは、ほぼ最適である。
【0035】
必要角拡散を伴う放射ビームは、特殊断熱円錐形または放物線成形器によって、ファイバレーザ放射から調製される。例えば、ファイバから15の拡散およびφ300μを伴う放射が、本明細書に説明される中性化装置トラップ10のために十分である、5およびφ1mmに変換されてもよい。
光子中性化の効率
【0036】
中性化度は、以下のように表現可能である。
【化12】
式中、dは、中性化領域の幅であって、Eは、光子エネルギーであって、Vは、イオンの速度である。Pは、
【化12-1】
として定義された総累積パワーであって、式中、Pは、光学ポンピングパワーである。全体的効率ηを伴うレーザによるD-束の中性化効率は、以下のように判定され得る。
【化13】
式中、P_は、負イオンビームパワーである。効率は、D-ビームパワーの増大に伴って増加する。効率(13)および中性化度(12)は、図6に示される。本曲線は、10MW部分が通過される、ITER注入器内の単一チャネルガス中性化装置のために計算されている。したがって、そのようなアプローチでは、ほぼ100%の中性化が、約90%の非常に高エネルギー効率を伴って達成されることができる。比較のために、ITER中性ビーム注入器は、58%中性化[R. Hemsworth et al.// Nucl. Fusion. 2009, v.49, 045006]およびそれに相応した同一効率を有する。全体的注入器効率は、加速器供給および輸送損失を考慮して、Krylov[A. Krylov, R.S. Hemsworth. Fusion Eng. Des. 2006, v.81, p. 2239-2248]によって推定されている。
【0037】
負イオン系中性ビーム注入器100の例示的実施形態の好ましい配列は、図7および8に図示される。描写されるように、注入器100は、イオン源110と、ゲート弁120と、低エネルギービームラインを偏向させるための偏向磁石130と、絶縁体支持体140と、高エネルギー加速器150と、ゲート弁160と、中性化装置管(概略的に示される)170と、分離磁石(概略的に示される)180と、ゲート弁190と、ポンピングパネル200および202と、真空タンク210(以下に論じられる真空容器250の一部である)と、クライオソープションポンプ220と、三連四重極レンズ230とを含む。注入器100は、記載のように、イオン源110と、加速器150と、中性化装置170とを備え、約0.50~1.0MeVのエネルギーを伴う約5MW中性ビームを産生する。イオン源110は、真空タンク210の内側に位置し、9A負イオンビームを産生する。真空タンク210は、接地に対して-880kVにバイアスされ、SF6ガスで充填されたより大きい直径のタンク240の内側の絶縁支持体140上に設置される。イオン源によって産生されたイオンは、イオンビームをプラズマから抽出し、ある割合の要求されるビームエネルギーまで加速するために使用される、イオン源110内の静電多開口グリッド前置加速器111によって、高エネルギー加速器150の中への注入の前に、120keVまで事前に加速される。イオン源110からの120keVビームは、高エネルギー加速器150に進入する前に、ビームを軸外に偏移させることが可能である、一対の偏向磁石130を通して通過する。偏向磁石130間に示されるポンピングパネル202は、仕切およびセシウムトラップを含む。
【0038】
負イオン系中性ビーム注入器のより詳細な議論は、露国特許出願第2012137795号およびPCT出願第PCT/US2013/058093号(参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0039】
しかしながら、本明細書に提供される例示的実施形態は、単に、例証的実施例であって、いかようにも限定されることを意図しない。
【0040】
前述の明細書では、本発明は、その具体的実施形態を参照して説明された。しかしながら、種々の修正および変更が、本発明のより広義の精神および範囲から逸脱することなくそこに成されてもよいことは、明白となるであろう。例えば、読者は、本明細書に説明されるプロセス流れ図に示されるプロセス作用の具体的順序および組み合わせが、別様に記載されない限り、単に例証であって、本発明が、異なるもしくは付加的プロセス作用またはプロセス作用の異なる組み合わせもしくは順序を使用して行われることもできることを理解するはずである。別の実施例として、一実施形態の各特徴は、他の実施形態に示される他の特徴と混合および合致されることができる。当業者に公知の特徴およびプロセスも同様に、所望に応じて組み込まれてもよい。加えて、かつ明白なこととして、特徴は、所望に応じて、追加または削除されてもよい。故に、本発明は添付の請求項およびその均等物に照らして以外、制限されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8