(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】液体採取装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/151 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
A61B5/151
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021117990
(22)【出願日】2021-07-16
(62)【分割の表示】P 2018526975の分割
【原出願日】2016-08-12
【審査請求日】2021-08-13
(32)【優先日】2015-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518048422
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ タスマニア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド チャールズ ベイリー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー グーレイ
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ジャーメイン ラピエール
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ジョン メルビル
(72)【発明者】
【氏名】ロッド アントニー ウィーベンガ
(72)【発明者】
【氏名】チャウ ホアン タン グェン
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン マイヤー
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0249451(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0358036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/03,5/06-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析用の液体の試料を採取するためのペン型液体採取装置であって、
手で保持可能であって且つ一方の端部に開口部を有する細長い管状のハウジングと、
前記ハウジング内に取り付けられた毛細管を含み、分析されるべき前記液体の体積と接触するように前記ハウジングの手動操作により配置可能な少なくとも1つの液体回収要素と、
前記ハウジング内に支持された少なくとも1つの保持要素と、を具備するペン型液体採取装置において、
前記毛細管は、その内部寸法によって定められる所定の液体採取容積を画定するように寸法的に構成され、それにより前記毛細管は、毛細管作用により、前記所定の液体採取容積の試料を回収して前記毛細管を充填し、且つ重力にも係わらず前記毛細管の任意の方向において前記試料を保持するように構成されており、
少なくとも1つの前記毛細管及び前記少なくとも1つの保持要素は、それらが接触するように相対的に移動可能に配置されており、
前記少なくとも1つの保持要素は、前記接触をすると前記所定の液体採取容積の試料を回収し、原位置での分析又はその後の回収のために、前記試料又はそれの成分を前記ハウジング内で保護された状態で保持するように適合されており、
前記保持要素による前記所定の液体採取容積の試料の回収は、前記毛細管の充填を条件とする、
ペン型液体採取装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの保持要素は、前記試料又はそれの成分のその後の分析のために、前記ハウジングから回収可能なカートリッジを具備する支持体において支持され、
前記支持体は、前記少なくとも1つの保持要素を前記少なくとも1つの液体回収要素と接触させるための滑動移動のために前記ハウジング内に取り付けられる、請求項1に記載のペン型液体採取装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの液体回収要素の端部の周りに取外し可能なカバーを具備する、請求項1に記載のペン型液体採取装置。
【請求項4】
前記カバーは、前記装置を表面上に直立状態で支持するための基部も提供する、請求項3に記載のペン型液体採取装置。
【請求項5】
前記カバー及び前記ハウジングは、前記装置の再使用を防止するために、前記試料が回収された後に該カバーを前記ハウジングに係止するための相互係合可能な構成を具備する、請求項3に記載のペン型液体採取装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの毛細管及び前記少なくとも1つの保持要素は、それらが手動操作により接触するように相対的に移動可能に配置される、請求項1に記載のペン型液体採取装置。
【請求項7】
前記毛細管は、それぞれの第1及び第2の移動のために取り付けられており、
前記第1の移動は、前記ハウジング内の第1の後退状態から前記開口部における伸長状態までであり、該第1の移動において、前記毛細管が、前記ハウジングの手動操作により前記液体の体積と接触して、それにより分析されるべき前記所定の液体採取容積の試料を回収するように配置可能であり、
前記第2の移動は、前記伸長状態から、前記少なくとも1つの保持要素と接触する前記ハウジング内の第2の後退状態までである、請求項1に記載のペン型液体採取装置。
【請求項8】
前記それぞれの第1及び第2の後退状態は一致する、請求項7に記載のペン型液体採取装置。
【請求項9】
前記毛細管は、動作中に前記液体の体積に接触する第1の端部又は遠位端部において開口し、及び動作中に前記少なくとも1つの保持要素に接触する第2の端部又は近位端部において開口する、請求項1に記載のペン型液体採取装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの液体回収要素の前記毛細管は、1~10μLの範囲の液体採取容積を有する、請求項9に記載のペン型液体採取装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの液体回収要素の前記毛細管は、2~5μLの範囲の液体採取容積を有する、請求項9に記載のペン型液体採取装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの保持要素は、前記少なくとも1つの毛細管から、前記少なくとも1つの保持要素と前記少なくとも1つの毛細管が接触したとき、前記試料の全体を吸収するように選択された吸収体である、請求項1に記載のペン型液体採取装置。
【請求項13】
前記ハウジング内において、複数の前記毛細管が存在する、請求項1に記載のペン型液体採取装置。
【請求項14】
複数の保持要素があり、前記複数の保持要素の各々は、前記複数の毛細管のそれぞれの一つと接触可能である、請求項13に記載のペン型液体採取装置。
【請求項15】
ペン型液体採取装置であって、
手で保持可能であって且つ一方の端部において開口部を有する細長い管状のハウジングと、
前記ハウジング内の複数の毛細管液体回収要素であって、液体の体積と接触してそれにより分析されるべき液体の試料の所定の全体積を回収するために前記ハウジングの手動操作により配置可能なそれぞれの毛細管を具備する複数の毛細管液体回収要素と、
前記毛細管と接触するように配置可能な、前記ハウジング内に支持される少なくとも1つの保持要素と、を具備するペン型液体採取装置において、
前記複数の毛細管の各々は、その内部寸法によって定められる所定の液体採取容積を画定するように寸法的に構成され、それにより前記毛細管は、毛細管作用により、前記所定の液体採取容積のそれぞれの試料部分を回収して前記毛細管を充填し、且つ重力にも係わらず前記それぞれの毛細管の任意の方向において前記試料部分を保持するように構成され、複数の前記毛細管は、前記試料の所定の全体積をまとめて回収し、
前記少なくとも1つの保持要素は、前記接触をすると前記毛細管から前記試料の所定の全体積を回収して、原位置分析又はその後の回収のために、前記試料の所定の全体積又はそれの成分を前記ハウジング内において保護された状態で保持するように適合されており、前記少なくとも1つの保持要素による前記試料の所定の全体積の回収は、前記毛細管の充填を条件とする、ペン型液体採取装置。
【請求項16】
前記毛細管は各々、1~10μLの範囲の液体採取容積を有する、請求項15に記載のペン型液体採取装置。
【請求項17】
前記毛細管は各々、2~5μLの範囲の液体採取容積を有する、請求項15に記載のペン型液体採取装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの保持要素は、前記試料又はそれの成分のその後の分析のために前記ハウジングから回収可能なカートリッジを具備する支持体において支持される、請求項15に記載のペン型液体採取装置。
【請求項19】
前記支持体は、前記少なくとも1つの保持要素を前記複数の毛細管に接触させる滑動移動のために前記ハウジングに取り付けられる、請求項18に記載のペン型液体採取装置。
【請求項20】
前記各毛細管は、それぞれの第1及び第2の移動のために取り付けられており、
前記第1の移動は、前記ハウジング内の第1の後退状態から前記開口部における伸長状態までであり、該第1の移動において、前記毛細管が、前記ハウジングの手動操作により前記液体の体積と接触してそれにより分析されるべき前記液体の前記試料を回収するように配置可能であり、
前記第2の移動は、前記伸長状態から、前記少なくとも1つの保持要素と接触する前記ハウジング内の第2の後退状態までである、請求項15に記載のペン型液体採取装置。
【請求項21】
各毛細管は、動作中に前記液体の体積に接触する第1の端部又は遠位端部、及び動作中に前記少なくとも1つの保持要素に接触する第2の端部又は近位端部において開口する、請求項15に記載のペン型液体採取装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つの保持要素
又はその各々は、前記毛細管から、前記少なくとも1つの保持要素と前記毛細管が接触したとき、前記試料の全体を吸収するように選択された吸収体である、請求項15に記載のペン型液体採取装置。
【請求項23】
前記複数の毛細管は、単一のガラス毛細管本体内において複数の毛細孔を具備する、請求項15に記載のペン型液体採取装置。
【請求項24】
前記複数の液体回収要素は、前記開口部において突出するように配置されるか配置可能である遠位端部において近接して離間する列を形成する、請求項13に記載のペン型液体採取装置。
【請求項25】
前記複数の液体回収要素は、前記ハウジングを巡って広げた状態で等角度で配置されている、請求項24に記載のペン型液体採取装置。
【請求項26】
前記複数の液体回収要素は、ピン刺し血液滴に同時に接触可能である、請求項25に記載のペン型液体採取装置。
【請求項27】
前記複数の液体回収要素に接触可能な単一の保持要素がある、請求項13に記載のペン型液体採取装置。
【請求項28】
前記少なくとも一つの液体回収要素が、複数の毛管孔を備える単一のガラス毛細管を具備する、請求項1に記載のペン型液体採取装置。
【請求項29】
分析されるべき前記試料の所定の全体積が10~30μLの範囲にあって、前記毛細管の各々が、前記所定の全体積の一部を提供し、該一部は3μL又は5μLである、請求項15に記載のペン型液体採取装置。
【請求項30】
前記毛細管の各々は、純粋な毛細管作用によって前記試料を回収するように構築されている、請求項15に記載のペン型液体採取装置。
【請求項31】
前記毛細管は、毛細管作用により、前記試料の所定の体積部分を回収するように、且つ重力にも係わらず前記毛細管の任意の方向において前記体積部分を保持するように寸法的に構成されている、請求項1に記載のペン型液体採取装置。
【請求項32】
前記試料の前記所定の体積部分が前記毛細管を満たす、請求項1に記載のペン型液体採取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね、分析のための液体試料の採取に係り、より詳しくは、同時の又はその後の診断のために患者から血液又は別の液体試料を採取するための微少流体装置に関する。1つ以上の実施形態において、本発明は、ピン刺し血斑からの血液微少試料の採取に対する用途を有するペン型液体採取装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
患者から診断用の血液試料を得る従来の方法は医療専門家を必然的に含んでおり、医療専門家は、皮下注射器を使用するか又は患者の腕に一時的なカニューレを装着し、そして各々が1つ以上の特定の分析に典型的に貢献する一連の別々の試料を個別のバイアル内に抽出する。より少ない量の試料への趨勢に伴い、多数の微少流体臨床診断装置が分析目的の範囲ために開発されてきた。殆どのその様な装置は、比較的費用を要し且つ操作が複雑であり、そして実験室における分析のために血液試料を移送する必要性を回避するが、依然として熟練した医療スタッフによる操作を必要とする。微少流体血液試料を比較的訓練されていない人員によるか又は患者自身によってさえも採取することが可能であるならば、医療の提供にとって有利であろう。血糖値及び自宅内妊娠キットの自己テスト用装置は、訓練されていない個人が自分自身で診断テストを実施可能な成功した製品の例であり、一方の場合においては、指を突き刺すことによる血斑が利用され、もう一方の場合においては尿採取により実施される。
【0003】
ラボチップ(Lab Chip)2014,14,957の「ラボインアペン(Lab-in-a-pen);低資源設定のための、患者によく知られている診断フォーマット」というタイトルの論文において、ゴング(Gong)等は、指で作動可能なランセットと、ランセットブレードに隣接する採取パッドを用いたろ紙分析法とを組み込んだペン型装置を開示する。展開の前後に、端部キャップは、露出したランセットブレード及び採取パッドを覆う。
【0004】
米国特許第4,360,016号は、胎児の血液試料採取の特定の目的のための、異なるタイプではないペン型採血装置を開示する。指で作動可能なランセットは、胎児の頭部の皮膚を突き刺し、血液は、隣接する毛細管に採取される。この管は、固定位置にクリップにより取り外し可能に取り付けられており、前記固定位置は展開時にランセットブレードの下に管の開放端部を配置する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前述の装置に対して1つ以上の利点を提供するペン型液体採取装置を提供することである。
【0006】
本明細書中の任意の先行技術への言及は、この先行技術が任意の管轄において共通の一般知識の一部を形成することを承認又は示唆するものではなく、あるいはこの先行技術が、当業者により別の先行技術の別の部分と合理的に組み合わされることが合理的に予想可能であるということを承認又は示唆するものではない。
【0007】
上述のようなもの等の従来の提案された装置は、著しい制限、とりわけ潜在的な汚染に対する採血要素の曝露を有することが認識されてきた。また、装置のランセット構成要素からの針刺し傷害の可能性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の形態において、本発明は、ペン型液体採取装置を提供しており、ペン型液体採取装置は、手で保持可能であって且つ一方の端部に開口部を有する細長い略管状のハウジングと;開口部において突出するように配置されるか又は配置可能であるように、ハウジング内に取り付けられた少なくとも1つの液体回収要素であって、液体の体積と接触し、それにより分析されるべき液体の試料を回収するように、ハウジングの手動操作により更に配置可能である少なくとも1つの液体回収要素と;を具備する。少なくとも1つの保持要素は、ハウジング内に支持される。少なくとも1つの液体回収要素及び少なくとも1つの保持要素は、それらが接触するように相対的に移動可能に配置されており、少なくとも1つの保持要素は、接触すると試料を回収し、原位置での分析又はその後の回収のために、ハウジング内で保護された状態で試料又はそれの成分を保持するように適合されている。
【0009】
一つの実施形態において、少なくとも1つの保持要素は、少なくとも1つの保持要素を少なくとも1つの液体回収要素と接触させるための滑動移動のためにハウジング内に取り付けられる支持体において支持される。支持体は、試料又はそれの成分のその後の分析のためにハウジングから回収可能なカートリッジであってよい。
【0010】
装置は、少なくとも1つの液体回収要素の突出部分の周りに取外し可能なカバーを更に具備してよい。カバーは、装置を表面上に直立状態で支持するための基部も提供してよい。
【0011】
一つの実施形態において、カバーは、装置の再使用を防止するために、試料が回収された後にカバーをハウジングに係止するための相互係合可能な構成を具備する。
【0012】
好ましくは、少なくとも1つの液体回収要素及び少なくとも1つの保持要素は、それらが手動操作により接触するように相対的に移動可能に配置される。
【0013】
一つの実施形態において、液体回収要素は、それぞれの第1及び第2の移動のために取り付けられており、第1の移動はハウジング内の第1の後退状態から開口部における伸張状態までであり、第1の移動において、液体回収要素がハウジングの手動操作により、液体の体積と接触してそれにより分析されるべき液体の試料を回収するように配置可能であり、第2の移動は、伸長状態から、少なくとも1つの保持要素と接触するハウジング内の第2の後退状態までである。それぞれの第1及び第2の後退状態は一致し得る。
【0014】
一つの実施形態において、少なくとも1つの液体回収要素は、液体の体積との接触において液体の試料を吸収するように選択された材料の吸収体であってよい。
【0015】
別の実施形態において、少なくとも1つの液体回収要素は、動作中に液体の体積に接触する第1の端部又は遠位端部において開口し、及び動作中に少なくとも1つの保持要素に接触する第2の端部又は近位端部において開口した毛細管である。
【0016】
少なくとも1つの保持要素は、少なくとも1つの液体回収要素から、2つが接触したとき、試料の全体を吸収するように選択された吸収体であることが好ましい。
【0017】
試料は、予め定められた又は所定の体積であってよい。
【0018】
一つの実施形態において、ハウジング内においてハウジングを巡って等角度で配置された例えば3つ以上の複数の液体回収要素が存在する。複数の保持要素は、それぞれの液体回収要素と接触可能であってよい。
【0019】
第2の形態において、本発明は、ペン型液体採取装置を提供しており、ペン型液体採取装置は、手で保持可能であって且つ一方の端部において開口部を有する細長い略管状のハウジングと、前記ハウジング内の複数の毛細管液体回収要素であって、液体の体積と接触してそれにより分析されるべき液体の試料の所定の全体積を回収するためにハウジングの手動操作により配置可能なそれぞれの毛細管を具備する複数の毛細管液体回収要素と、を具備しており、そこでは毛細管液体回収要素は、毛細管作用により、試料のそれぞれの所定の体積部分を回収するように、且つ重力にも係わらずそれぞれの要素の任意の方向において前記体積部分を保持するように構成される。少なくとも1つの保持要素は、毛細管回収要素と接触するように配置可能なハウジング内に支持されており、接触すると試料を回収して、原位置分析又はその後の回収のために、ハウジング内において保護された状態で試料又はそれの成分を保持するように適合されている。
【0020】
少なくとも1つの保持要素は、少なくとも1つの保持要素を複数の毛細管液体回収要素に接触させるように、滑動移動のためにハウジングに取り付けられる支持体において支持されてよい。支持体は、試料又はそれの成分のその後の分析のためにハウジングから回収可能なカートリッジであってよい。
【0021】
各毛細管液体回収要素は、動作中に液体の体積に接触する第1の端部又は遠位端部において、及び動作中に前記少なくとも1つの保持要素に接触する第2の端部又は近位端部において好ましく開口する。
【0022】
本発明の別の形態において、毛細管液体回収要素は各々、1~10μLの範囲、例えば2~5μLの範囲の液体採取容積を有してよい。
【0023】
第3の形態において、本発明は、ペン型液体採取装置を提供しており、ペン型液体採取装置は、手で保持可能であって且つ一方の端部に開口部を有する細長い略管状のハウジングと、それぞれの第1及び第2の移動のために取り付けられた液体回収要素であって、第1の移動はハウジング内の第1の後退状態から前記開口部における伸張状態までであり、第1の移動において、液体回収要素がハウジングの手動操作により液体の体積と接触してそれにより分析されるべき液体の試料を回収するように配置可能であり、第2の移動は、伸張状態から、回収された試料が、ハウジング内において汚染から保護されながら、原位置分析又はその後の回収のために保持されるハウジング内の第2の後退状態までである、液体回収要素と、第1及び第2の移動を実施するための手動操作可能なアクチュエータと、を具備する。
【0024】
一つの実施形態において、液体回収要素は、液体の体積との接触において液体の試料、好適にはそれの前述の体積を吸収するように選択された材料の吸収体である。血液採取等の用途に好適な別の実施形態において、液体回収要素は、遠位端部において開口する毛細管であり、その伸張状態において液体の体積に接触し且つその第2の後退状態においてそれぞれの吸収体に接触するように配置されており、吸収体は、管が第2の後退状態にあるときに、毛細管から試料の全体を吸収するように選択されたものである。この構成により、所定の試料体積は、毛細管の保持容積により回収され決定される。
【0025】
それぞれの第1及び第2の後退状態は、好ましく一致する。
【0026】
好ましくは、ハウジングを巡って等角度で配置された例えば3つ以上の複数の液体回収要素がハウジング内に存在する。各要素のための個別のアクチュエータ又は各要素に対応するそれぞれの選択可能な設定を有する単一のアクチュエータ機構が存在してよい。
【0027】
本発明の有利な実施形態において、任意のその形態において、ペン型液体採取装置は、ハウジングの一方の端部の開口部から突出可能なブレードを具備するランセット機構を更に具備する。この様に構成された装置は、指刺しを実行して、ハウジング内に設けられた液体回収要素の数に対応する複数の血液試料を直ちに採取するように使用されるか、又は異なる場所から又は異なる時間において別々の血液試料を採取するように代替的に使用されてよい。
【0028】
装置は、血液試料が、指定された工具を使用する指定された人によってのみ回収可能であるように構成されることが有利である。好ましくは、複数の液体回収毛細管を含む装置において、吸収体は、それらが試料の回収及びそれの分析のために取り外し可能な別々のサブハウジング内に含まれる。この目的のために、ハウジングは、複数の別個の部分からなり、吸収体サブハウジングを滑動可能に受容する。
【0029】
本発明はまた、第1と第2と第3の形態の組み合わせ、又はそれらの最適且つ好適な形態の任意の組み合わせにも及ぶ。
【0030】
本明細書において使用される際に、分脈がそうではないことを必要とする場合を除いて、用語「具備する」、及び「具備すること」と「具備する」と「具備される」等の前記用語の変形は、別の追加物、構成要素、整数又は手順を排除することを意図しない。
【0031】
本発明はここで、添付の図面を参照して、例としてのみ更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態によるペン型血液採取装置の軸方向断面図であって、ピン刺し血液体積から血液試料を回収するように、展開前、展開中及び展開後の状態が示される。
【
図2】
図2は、4つの別個の血液試料を回収して更に保持することができる本発明の第2の実施形態によるペン型血液採取装置の斜視図である。
【
図5】
図5は、血液のピン刺し体積を得るためのランセットを組み込んだ本発明の第3の実施形態によるペン型血液採取装置の斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第4の実施形態によるペン型血液採取装置の斜視図であり、二重目的のカバーと、支持基部と、一つ以上の収容された血液試料の分析のための使用及び戻りの地点に装置を送達するための関連する包装と共に示される。
【
図8】
図8は、
図7の実施形態及び二重目的のカバー及び支持基部との係合のそのモードを示す。
【
図10】
図10は、毛細管サブアセンブリの三次元構成要素図である。
【
図11】
図11は、吸収パッドを含むカートリッジの三次元構成要素図である。
【
図12】
図12は、一体的なばね構造の三次元構成要素図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に示されるペン型血液採取装置10は、所定の微少体積の単一の血液試料を、例えば5~30μLの範囲で回収して保持するように設計される。例えば、15μLの体積が、必要量として通常受け入れられるが、乾燥血斑分析には十分である。本実施形態は本質的には、15μLの血液を吸収するように実態及び寸法の両方について選択された吸収材料の円筒体を具備する液体回収要素の形態の液体回収要素によってインクボールを置き換えることにより修正されたボールペンである。適切なその様な材料は、多孔質ポリマー基材、親水性セルロース紙、モノリスポリマー、又は任意の同等に機能する不活性多孔質材料である。
【0034】
吸収性液体回収要素30を除くと、装置10は、ペン機構の通常の形態を具備しており、ペン機構は略管状のハウジング又は胴部12を具備しており、ハウジング又は胴部12は、その後端部において実質的に均一な直径からなり、中央端部開口部15を有する円錐状先端部まで、その前端部において緩やかに先細りする。この機構は、同軸プランジャ16(ペン内においてインク含有管としても機能する)と、ハウジング12及びプランジャ16上のそれぞれの肩部19a及び19bの間の圧縮された戻しばね19と、押しボタン機構22とを具備する。機構22は、内部カム装置26を有しており、これにより、押し棒23が指又は親指で押されると、プランジャ16が伸長位置に押し込まれて保持され、押し棒23が再び押されると、この位置は掛け金解除されて、ばね19がプランジャをその後退位置に押し戻す。
【0035】
プランジャ16の前端部は、液体回収要素30を形成するために液体吸収材によって封止されかつ液体吸収材が取り付けられ、前記液体回収要素30は開口部15から後方に延びる相補的な半径の孔28により滑動可能に滑らかに案内される。プランジャ16及び従って液体回収要素30の後退位置において、液体回収要素30は、
図1(a)に示されるように配設されており、それは開口部15の後の孔28に沿って窪むその前部先端部を有することにより使用前の汚染から保護される。
【0036】
指又は親指80又は個人の皮膚表面上の任意の別の適切な場所から血液試料を採取する時に、適切なランセット(図示せず)を用いて皮膚を突き刺してピン刺し傷82を形成し、そこから少量の血液84が皮膚81上に溜まる(
図1(b))。採取装置10は、押し棒23を押し下げて液体回収要素30を前方に移動させて、それが開口部15においてその伸長状態に達して開口部15から突出することにより、血液試料を回収するように準備される。装置10のハウジングは、ここで、溜められた血液84の体積に要素15を接触させるように操作され、その際要素の吸収性材料は、そこから血液の試料を回収する(
図1(b))。適切な時間の後に、装置は撤収され、押し棒23が押されて、液体回収要素30及びその同伴血液試料を開口部15の後ろのハウジング12内に引き込む。この後退状態(
図1(c)において、要素30はここで、後の回収及び分析にために収集された血液試料をその間に汚染から保護された状態で保持する保持要素又は吸収要素として働く。
【0037】
図1の実施形態は、より定性的な用途、例えば、血液試料が特定のウイルス又は別のマーカーを含むか含まないかについての分析には満足できるものである。より定量的な分析、例えば、既知量の血液が必要とされるヘモグロビンA1c(HbA1c)等のタンパク質マーカーの検出に対する
図1の実施形態の適用は、所定量の血液を一貫して回収する回収又は吸収要素30に依存することになる。一部の製造業者が、これがそうであると主張しているが、液体吸収材料により回収される実際の体積は、広い正常範囲内において個人間でかなり異なる血液のヘマトクリットに依存することが実際に分かっている。
図2~4の実施形態110は、ガラス毛細管としての回収要素を提供すること、及び別個の構成要素として吸収性保持要素を提供することによりこの不確実性に対処する。この実施形態はまた、4つの別個の試料を回収して保持することが可能であるより複雑な装置を明らかにする。
【0038】
ペン型を続けると、
図2~
図4の4つの試料装置110は、4色ボールペンから発展した構造を有する。
図2~
図4において、
図1の実施形態に関連する対応する要素は、「1」が先行して付された同様の参照番号で表示される。
【0039】
装置110は、主部分113を有する「丸みを帯びた正方形」断面の略管状のハウジング又は胴部112と、別個のノズルキャップ114とを具備する。ノズルキャップ114は、それがハウジング112の主部分113の端部内に嵌合するわずかなテーパ及び後方スカート114aを有する。ハウジング112の先端部14に比べてやや尖っていないノズルキャップ114は、その中にガラス毛細管台140及び吸取紙支持体160を保持する。全体構造は、別々の血液試料を回収して保持するように、四分の一毎に同一の別々の機構を有する四方向の角度対称性を有する。
【0040】
この目的のために、ガラス毛細管台140は、基部壁141と、4つの長手方向に延びる区画143を画定する十字形仕切り構造142とを有する成形された単一部品である。各区画143は、内側及び外側孔を有する扇形ブロック144を滑動可能に搭載する。内側孔は、所望の血液量、例えば15μL、に等しい内部容積のガラス毛細管130の形態の開放端部付きの液体回収要素を受容してそれに固定される。このガラス毛細管130は、端部壁141からわずかに後方に突出する。
【0041】
扇形ブロック144の外側孔は、その後部における盲孔であり、ガラス毛細管130の軸方向外側に位置する。この盲孔は、プランジャ116の前端部を受容してそれに固定されており、プランジャ116は、扇形ブロック144移動させ、従ってガラス毛細管130をチャンバ143内において前後方向に移動させるように滑動可能である。
【0042】
吸取紙支持体又はカートリッジ160は、ノズルキャップ114のスカート114aが当接するその後部に周縁リム161を有する丸みを帯びた四角形の一体の板である。吸取紙支持体160は、4つの等角の離間した内孔162を有しており、前記4つの内孔162は、円筒状の保持要素、即ち吸収性本体130aを装備し、ガラス毛細管130が最後部又は後退位置にある時にそれらガラス毛細管130の後部開放端部が接触するように整列される。この場合において、吸収性保持要素130aは、血液試料を吸収して保持するように選択された吸取紙である。支持体160内の4つの外側孔163は、プランジャ116を滑動可能に受容する。
【0043】
吸取紙支持体160の後面は、血液試料が装置内の原位置にある間に血液試料を乾燥させるために及び乾燥した血斑分析のために血液試料を準備するために、吸取紙吸収性保持要素130a上の血液試料から水分を吸収するための親水性シリカゲルカプセル165を装備する。
【0044】
ガラス毛細管130を選択的に移動させるためのそれぞれのプランジャ機構は、標準的な4色ボールペンにおけるものと同様であり、各ガラス毛細管130の周りの収縮したばね119と、ハウジング112の側部スロット123a内のそれぞれの押しクリップ123とを具備する。プランジャ116は、ハウジング内の中央プランジャガイド125により位置決めされてそれにより案内される。この機構は、押しクリップ123の間にカム相互作用部123bを更に具備しており、それにより、押し下げられたものは解放されて、既に伸長していたプランジャの後退がそれぞれのばね119の作用の下で引き起こされる。
【0045】
図4aは、展開の準備ができている完全に後退した状態の
図2及び
図3の装置を示す。血液試料を採取することが所望される場合に、選択されたクリップ123が押し下げられ更に前方に押され、これにより対応するプランジャ116及び扇形ブロック144を押して、関連するガラス毛細管130をそのばね119に対して、ノズルキャップ114の鈍い先端部のそれぞれの開口部115を通して移動させる。ガラス毛細管はここで、開口部115においてその伸長状態にあり、ハウジング112の手動操作により、ピン刺しにより得られた所定量の血液に接触して、毛細管作用により、その開放前端部を介して血液試料を回収するように配置可能である。試料は、毛細管を満たし、その毛細管により決定される一定且つ予測可能な体積からなる。
【0046】
異なる押しクリップ123が押されると、突き出したプランジャは、解放され、更にガラス毛細管は、そのばね119により伸長状態からその後退状態に引っ込められ、前記後退状態ではガラス毛細管の開放後端部がそれぞれの吸取紙吸収要素130aに接触し、吸取紙吸収要素130aは全血液試料を迅速に採取してガラス毛細管を空にする。これにより、血液試料は、その後の回収のためにハウジング内に保持される一方でその間汚染から保護される。ノズルキャップ114は、少なくとも部分的に透明であり、毛細管の充填及び全排出を明確に観察することを可能にする。
【0047】
図示された実施形態において、少なくとも1から4つまでの所望の数の血液試料が採取された時に、その装置は許可された人により現場で開放可能であるか、又は開放のために別の場所に送られる。典型的に、これは、適切な環境におけるノズルキャップ114の除去と、吸取紙支持体160の回収と、既知の手段による吸取紙吸収要素130aの抜き取り又は押し出しを必要とする。ハウジングを閉じるためのノズルキャップ114の係合は、望ましくは、血液を当初に採取していた人が容易に入手できない特殊な工具の使用を必要としてもよい。
【0048】
図5及び
図6は、毛細管230により回収されるべきピン刺し血液体積を得るための中央ランセット装置270を具備するペン型液体採取装置210の第3の実施形態を示す。これらの図において、第1と第2の実施形態に関する同様の部分は、「2」が先行して付された同様の参照番号により示される。機構の詳細は完全に図示されないが、しかしこの実施形態は、回転可能なランセット深さ調整ダイアル272と、主ハウジング212の側部のランセットアクチュエータボタン274とを具備することが注目される。第2の実施形態におけるように別個の押しクリップ123を有するのではなく、ハウジングの後部にはアクチュエータボタン223が取り付けられており、前記アクチュエータボタン223は、ガラス毛細管を選択するように回転可能であって、次に、ランセット装置270により抽出された体積から血液を回収するために、選択されたガラス毛細管230をその伸長又は展開位置に移動させるように押し込まれる。前述の実施形態のように、液体吸収性保持要素は、別個の支持体構成要素260に保持された吸取紙要素230aの形態である。
【0049】
装置10,110又は210は、1回より多い液体回収要素30、130,230の展開を防止する特徴を好ましく具備する。
【0050】
図7~
図13は、4本の血液毛細管の内容物を4つの独立した吸収パッドに同時に移すための単一の機構を使用するペン型液体採取装置310の第4の実施形態を示す。この実施形態において、先に説明した実施形態に関する同様の部分は、「3」が先行して付された同様の参照番号により示される。ペン310は、非係合位置にあるカバー/基部400内に配置され、シール蓋311aを具備するプラスチックパッケージ311内で運ばれる。ペン及び基部は、接着パッチ402を使用して共に所定の位置に保持される。一旦ペンがパッケージ311から取り出されると、ペンは直立状態で基部400上に設置される(
図8)。
【0051】
この実施形態は、吸取紙支持体又はカートリッジ360及びガラス毛細管330が、吸収性保持要素330aをガラス毛細管330の内側端部と接触させるように相対的に移動可能であるという点で前の実施形態とは異なっている。前の実施形態においては、吸収性保持要素は所定の位置に固定されて、毛細管は長手方向に個別に移動可能であるので。
【0052】
装置310は、手による把持を容易にするように、対向する側部平坦部312aを有する略管状のハウジング又は胴部312を具備する。ハウジングは、2つの部分、即ち、丸く閉じた後端部313eを有する主部分313と、前部キャップ部分314の円筒状スカート314aを受容する開いた前部リム(縁部)313aとを具備する。ハウジング部分313、314のそれぞれの周縁肩部361a、361bの間の係合(
図13)は、力でぱっと分離される場合を除いて、それらの分離を防止するが2つの部分は、より明確になる目的のために互いに向って入れ子式に動くことができる。
【0053】
この場合において、ガラス毛細管330の形態の4つの液体回収要素は、毛細管サブアセンブリ335を形成するように、
図10において最も良く分かるガラス毛細管台340により支持される。台340は、前部圧入ノッチ340aと後側の適切に穴あけされた一体型ホルダー340bとにおいてガラス毛細管を後方に広げた状態で保持する4つの周縁で離間した同一の要素部分を有する。ガラス毛細管台は、ハウジングキャップ部分314の開いた首部分314c内にしっかりと保持され、この実施形態において、4本の管が、それらの先端部330dにおいて近接して離間する四角形列を形成するように、ハウジングの前部首部分開口部315から突出する。
【0054】
吸取紙支持体又はカートリッジ360は、第2の実施形態のものと概略同様、即ち4つの角度的に離間した管状カップ支持体362aを有する丸みを帯びた四角形の一体の板361である。これらの支持体は、長手方向のリブ363cで裏打ちされた孔362bを画定し、リブ363cは、先に検討した材料又は別の適切な材料の内の1つの円板状の液体吸収性保持要素又はパッド330a用の座部を画定する。リブ362cは、フレア状に拡げられて、支持体360がその最前の位置にある時に、ガラス毛細管330の後部開放端部を受容するように整列される。この場合もやはり、保持要素又はパッド330aは、血液試料を吸収し保持するように選択された吸取紙であり得る。
【0055】
リブ構造は、異なる時にパッドを管330に接触させる異なる整列を補償するように、孔に沿ってパッド330aを幾らか調整することを可能にする。別の構成は、カップ支持体362aに荷重を作用させるか又はそれらを対でクロスバランシングさせる個別のばねを提供することを含んでよい。
【0056】
吸取紙支持体又はカートリッジ360は、複雑なばね構造380の前部円形パッド384上で、対向する弾性撓み可能なフック382により取り外し可能に保持される。ばね構造380は、
図12に示される形態の一体型成形部品であり、ハウジング部分313のリブ313dにより画定された棚上に設置される後端部板386を有しており、また親水性シリカゲル乾燥剤カプセル365を保持するための中央チャンバ388を画定する箱状ペデスタル387も有する。このカプセルは、血液試料が装置内の原位置にある間に血液試料を乾燥させるために、及び乾燥した血斑分析のために血液試料を準備するために、吸取紙保持要素330a上の血液試料から水分を吸収するためのものである。端部板386の後のハウジング部分313の内部は、例えば、装置の時間及び日付スタンプ使用のための任意の所望の制御又は記録電子装置のための適切なチャンバ385である。
【0057】
ばね構造380は、カートリッジ360を円滑に付勢して毛細管330と接触させる3つの弾性要素を有するとともに、吸取紙と毛細管の内側端部との相対位置の変更も可能にする。これらの特徴部は、ペデスタルとパッド384を一体的に接続するペデスタル387の上のジグザグ状の中央ウェブ構造383と、各側面の実質的に正弦波状のフィラメント要素389とを具備する。
【0058】
装置310は、パッケージ311内で汚染から保護されて配送される。それは、パッケージからの取り出しにより使用が準備され、接着パッチ402により保持された二重目的のカバー/基部400上で直立位置に設置される。このカバー/基部400は、ハウジング部分313の張り出しリム313aと係合し、毛細管330の突出端部の周りで延びてそれを保護する。
【0059】
血液等の液体試料は、ペン型装置310をその基部400から取り出して、その毛細管330をピン刺し血液滴に接触させることにより採取される。一旦毛細管が満たされると、ペンは、基部400内の所定の位置に戻され、ハウジング312を押し下げることにより基部内に押し込まれる。押し込む力は、ハウジング312を基部390に係止状態で係合させるように、固定特徴部390(
図8)に係合させて、支持体360の吸取紙を毛細管330の内側開放端部としっかりと弾性的に支持された状態で接触させるようにハウジング部分313、314を一緒に入れ子式に動かす。管は、孔362b内に受容されて吸取紙パッド330aと係合する。ばね構造380は、管又はパッドへの損傷のリスクを最小にするために、適切であるが穏やかで且つ横方向に可変の応答性の付勢を提供する。
【0060】
一旦管とパッドとの間の接触が行われると、管内の液体の全体が吸取紙パッド内に吸い取られ、即ち吸取紙パッド内に流入して回収され、そこで、液体はその後の回収及び分析のために安全に保持される。
【0061】
一旦このようにしてそのカバー/基部内に係止状態で再係合されると、装置310は、再使用可能ではなく、典型的には血液採取場所において基部から回収不能である。それは、特別な工具が固定特徴部390を係合解除してハウジング内からのカートリッジ360の回収を可能にするように使用される分析場所に送達されなければならない。好適な構成において、吸収パッドの配列は、1つ以上の標準的な分析機器において自動的に受容可能であるように寸法決めされる。別の構成において、カートリッジ360は、パッド330aの排出を可能にするように穴を具備するか、又は分析プロセスにおいて試料穴として機能するように構成されるか、又は電気機械的要素を具備してもよい。
【0062】
本発明の特定の用途において、毛細管は、純粋な毛細管作用により標的液体を回収し、その後の移動又は輸送中に液体を重力の影響にも係わらず保持するように設計され得る。毛細管力を使用して毛細管内を移動する液体の高さは、毛細管の表面と関与する液体と空気との間の界面張力と、液体の密度と、重力とを含む多くのパラメータにより支配されることが知られている。採取されるべき液体(血液等)の所定の体積に関して、毛細管力が重力により打ち負かされる毛細管の寸法が存在することが、それにより示され得る。例えば、3μL又は5μLの血液体積に関して、毛細管容積の任意の寸法構成は、毛細管力を維持するであろうが、しかしながら10μL又は20μL等のより大きな体積については、毛細管力が重力により打ち負かされる特定の毛細管寸法が存在し、またそうではない別のものが存在する。
【0063】
この観察の結果は、例えば10~30μLの範囲の、通常求められる試料微少体積は、例えば、毛細管吸引作用がより予測可能で且つ制御可能である3μL又は5μLの所望の液体体積の一部分に毛細管が寄与する装置310等の装置を使用して採取可能であることである。最終的用途に応じて、所望の体積の一部分は、別々に採取可能であるか、あるいは別の実施形態において、吸取紙支持体360は、単一の吸取紙上の液体部分の全てか又は2枚の吸取紙上の対の4つの部分を採取するように変更されてよい。
【0064】
この様にして、複数の毛細管サブアセンブリは、正確で精密なより大きな体積の液体を採取するための良好な細い経路であり得る。例えば、単一のホウケイ酸ガラス毛細管本体は、各々3μLの10個の孔を含み得る。これらの毛細管内の血液の吸引は、必要であれば、10個の孔が完全に充填されるまで、毛細管作用のみにより発生可能であり、30μLの液体の採取という結果になる。実際には、直立姿勢における装置の使用が推奨されるであろう。3μL孔の使用は、多くの利点を有しており:即ち、毛細管力が唯一の吸引機構であるので、装置は、任意の傾きで使用可能であり、そしてもし直立して使用されるならば液体採取中における気泡形成の危険性が存在しない。装置が激しく動かされたとき、毛細管孔から外への液体の流出は起こらない。
【0065】
より一般的には、毛細管の一方の端部内への吸引、及びもう一方の端部における液体吸収紙等の接触保持要素への分配は、非常に少量の液体の分析において精密性と正確性を達成する特に有効な方法であることが分ってきた。これは、高い表面張力を有する血液等の液体に関して一層そうである。ピペットで発生するような同じ端部からの吸引及び分配は、オリフィスの外側に保持された微小な液滴から生じる精度の欠如のリスクを与え、吸上げ材料との接触は、分配オリフィスにおけるこの不正確性の原因を取り除く。
【0066】
別の変更例では、任意の上記の実施形態は、原位置分析要素、例えば マーカー応答性細片又は光学分析器と、分析結果に先行するための表示器とを具備してよい。例えば、液体吸収要素(30、130、230a;330a)は、バイオセンサ要素であってもよい。この文脈において特に興味のある分析は、診断データ基部に対して、糖尿病診断のための米国糖尿病学会(ADA)と、国際糖尿病連合(IDF)と、欧州糖尿病学会(EASD)とにより現在公式に承認されたタンパク質マーカーヘモグロビンA1c [HbA1c]である。別の例は、以下のもの、即ち:
米国特許出願第20140127669号に記載されるような生物学的試料の貯蔵のための修正された多孔性基材と;
米国特許出願第20150211967A1号に記載されているような全血からの血漿の分離を可能にする修正された多孔質基材と;
血漿分離を行うための要素の液体吸収要素の一部としての組み込み、例えば、躍動的な血漿分離膜(ポール(Pall)社から入手可能)と;
糖尿病等の病気を監視するための血液又は血漿の採取量における適切な濃度において検体を検出するためのセンサの組み込みと;を含む。
適切なセンサの例は、以下の通りである。
・Delaney等により開示されたグルコースセンサ、Anal Chem.2011、83、1300-1306
・AbD Serotecにより提供されるもののような抗体を使用してHbA1cを監視するための免疫学的センサ(http//www.abdserotec.com/hbalc-hemaglobin-alc-antibody.html)
・Francios等、2013、Optics Express 21.(19).22566-22577により開示されるような「ウィスパリングギャラリーモード」検出のための適切な微小球を備える修正された光ファイバ等のバイオセンサ
【0067】
本発明は、分析のための広範囲の液体の精密で正確な非常に小さい(例えば、微小)体積の採取に適用可能であることが理解されよう。本発明は、特に第3又は第4の実施形態の形で血液試料を採取することに特に有用である。この装置は、熟練した医療関係者のどんな存在もなしに試料を採取するために、個人により彼ら自身から、又はより一般的には比較的未熟な人員により血液試料を採取するように使用可能であることが更に理解されるであろう。液体回収要素は、保護された位置に展開前に保持され、そして試料はその後、分析のための採取と回収との間の汚染からそれを保護する様態で保持される。