(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】電極キャップ用マガジンの充填レベル検出
(51)【国際特許分類】
B23K 11/36 20060101AFI20220830BHJP
B23K 11/11 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B23K11/36
B23K11/11
(21)【出願番号】P 2021509983
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2019000053
(87)【国際公開番号】W WO2020052792
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】102018007252.6
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520405020
【氏名又は名称】ブラウアー システムテクニック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ニッツ,ジェンス
(72)【発明者】
【氏名】ゾンターク,フランク
(72)【発明者】
【氏名】カットナー,ロビン
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-514182(JP,A)
【文献】特開2000-255717(JP,A)
【文献】国際公開第2018/069304(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/036971(WO,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02874523(FR,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012201671(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00-11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極キャップ用マガジンを備える溶接電極の電極キャップ用マガジンのための、充填レベルを検出するためのシステムであって、
前記電極キャップ用マガジンはマガジンヘッド(1)及び取替可能マガジン(2)を備え、
前記取替可能マガジン(2)を前記マガジンヘッド(1)に接続するために、クイック解放デバイス(4及び4a)が配置され、
少なくとも1つのガイドデバイスが、前記マガジンヘッド(1)及び前記取替可能マガジン(2)が接続されるときに、前記マガジンヘッド(1)及び前記取替可能マガジン(2)の所定の位置を保証するために配置され、
前記取替可能マガジン(2)は、
2つの電極キャップ用チャネル(5)を有し、
それぞれの電極キャップ用チャネル(5)の中に
、1つのキャップコンベヤ(6)が、直線的に可動に配置され
、バネ力で荷重をかけられ、
前記キャップコンベヤ(6)は、前記電極キャップ用チャネル(5)に包含された前記電極キャップ(3)を、溶接ガンがアクセスするための取出し用開口部の方向に動かし、
前記2つの電極キャップ用チャネル(5)は、それぞれに包含された電極キャップ(3)の接触面が互いに斜めに向かい合うように、前記取替可能マガジン(2)及びマガジンヘッド(1)に配置され、
前記システムは、
2つの前記キャップコンベヤ(6)それぞれに機械的に接続され
ており、計測面(8)として使用するのに適した要素
と、
前記2つの電極キャップ用チャネル(5)それぞれに平行で、それぞれに前記計測面(8)を包含する2つの計測用チャネル(9)とを有し、
一方の計測用チャネル(9)が一方の電極キャップ用チャネル(5)の側方、且つ他方の電極キャップ用チャネル(5)に包含された電極キャップ(3)の接触面と対向する側に配置され、
前記マガジンヘッド(1)において、
2つのセンサ(7)が距離を計測するために配置され、
前記
2つのセンサ(7)
のそれぞれは、
前記2つの計測用チャネル(9)のそれぞれにおいて計測ビームを前記計測面(8)に放ち、前記センサ(7)と前記計測面(8)との間の距離を計測するのに適しており、
前記電極キャップ用マガジンに包含された前記電極キャップ(3)の正確な数を、前記
2つのセンサ(7)によって計測された距離を評価することによって判断できることを特徴とする、充填レベル検出のためのシステム。
【請求項2】
請求項1に記載されている、溶接電極の電極キャップ用マガジンのための、充填レベル検出のためのシステムの使用方法であって、
前記電極キャップ用マガジンは、マガジンヘッド(1)及び取替可能マガジン(2)を備え、
クイック解放デバイス(4及び4a)が、前記取替可能マガジン(2)を前記マガジンヘッド(1)に接続するために配置され、
前記マガジンヘッド(1)及び前記取替可能マガジン(2)が接続されたときに、前記マガジンヘッド(1)及び前記取替可能マガジン(2)の所定の位置を保証するための、少なくとも1つのガイドデバイスが配置され、
前記取替可能マガジン(2)は
2つの電極キャップ用チャネル(5)を有し、
それぞれの電極キャップ用チャネル(5)の中
で1つのキャップコンベヤ(6)は直線的に可動に配置され
、バネ力で荷重をかけられ、
前記キャップコンベヤ(6)は、前記電極キャップ用チャネル(5)に包含された前記電極キャップ(3)を、前記マガジンヘッド(1)の方向に動かし、
前記2つの電極キャップ用チャネル(5)は、それぞれに包含された電極キャップ(3)の接触面が互いに斜めに向かい合うように、前記取替可能マガジン(2)及びマガジンヘッド(1)に配置され、
2つの前記キャップコンベヤ(6)それぞれに機械的に接続され
た要素は
、計測面(8)としての機能を有し、
前記2つの電極キャップ用チャネル(5)それぞれに平行に配置された2つの計測用チャネル(9)は、それぞれに前記計測面(8)を包含し、
一方の計測用チャネル(9)が一方の電極キャップ用チャネル(5)の側方、且つ他方の電極キャップ用チャネル(5)に包含された電極キャップ(3)の接触面と対向する側に配置され、
前記マガジンヘッド(1)において、距離を計測するための
2つのセンサ(7)が配置され、
前記
2つのセンサ(7)
のそれぞれは、
前記2つの計測用チャネル(9)のそれぞれにおいて計測ビームを前記計測面(8)に放ち、前記センサ(7)と前記計測面(8)との間の距離を計測し、
前記電極キャップ用マガジンに包含された前記電極キャップ(3)の正確な数が、前記
2つのセンサ(7)によって計測された距離を評価することによって判断される、充填レベル検出のためのシステムの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接電極のための電極キャップ用マガジンの、充填レベル検出デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特に自動車産業において、スポット溶接が、金属シートとストリップとを接合させるために、自動生産ラインにおいて自動車の車体に使用されることが多い。
【0003】
溶接ロボットは通常、スポット溶接を介して車体パネルを接続するために使用される。これらの溶接ロボットには溶接ガンが装着され、その各顎部には、電極キャップと呼ばれるスポット溶接電極が装着される。
【0004】
これらの溶接ガンは、共に溶接されるよう位置付けられた、シート金属部品まで動かされる。共に溶接される金属シートに対する溶接ガンの正確な位置、及び互いに対する金属シートの配置は、自動的かつコンピュータの助けを伴って決定される。このような自動生産ラインにおいて、溶接作業は、可能な限り最短のサイクル時間で、中断することなく実行される。
【0005】
その結果、特に電極キャップは高い摩耗を受ける。なぜなら、電極キャップの接触面は、溶接されるシート金属の車体パネルの各々に接触するからである。
【0006】
この溶接作業において、共に溶接される重複した車体パネルを通して、電極間に電流が流れる。
【0007】
この作業中、溶接領域における電極キャップの接触面で、変化が生じる。
【0008】
頻繁に接触面縁部が平たくなり、これはマッシュルーミングと呼ばれ、接触表面積が大きくなることによって溶接条件を変化させる。
【0009】
この変化が、電流の増加による妨害を受ける必要のないことを保証するために、電極キャップは、それらが受ける負荷及び生じる摩耗に依拠して、定期的に目直しされる。
【0010】
多くの事例において、相互作用する溶接ガンの電極は、同じかまたは類似の範囲が摩耗することになり、したがって定期的かつ同じ時期に目直しされる必要がある。
【0011】
特定の回数の目直し処理後、電極キャップから除去される材料の量が多いので、電極キャップは交換する必要がある。交換目的で、摩耗した電極キャップは、溶接電極シャフトから抜き取られる。溶接電極シャフトに新しい未使用の電極キャップを装着するために、通常は単純な実施形態のマガジンが使用される。これらのマガジンは、所定の位置の顎部を閉じることによって、溶接ガンが新しい電極キャップを取り付け、溶接ガンを互いに対して押圧することによって、溶接電極シャフト上のキャップの位置を確定する。マガジンは、溶接ガンによって接近される所定の位置に配置されなければならないので、これらのマガジンを所定の位置に残し、その場で手動によってマガジンを再充填する必要がある。
【0012】
しかし、一般にこれは処理を中断する必要がある。なぜなら、活動しているロボットの運動範囲内で人が動くことは許可されないので、作業中に再充填を実施するのは安全基準のために不可能であるからである。
【0013】
マガジンを取り換えることも、この欠点を排除するために提案されている。
【0014】
例えば、独国特許発明第19905477号明細書は、溶接電極の電極キャップ用マガジン、詳細には溶接ロボットの溶接ガン用マガジンを開示している。この解決策は、電極キャップを、キャップガイドに1列でマガジンに格納するよう配置することを提案している。このキャップガイドの外形は、電極キャップの形状に対応しており、そのため、このキャップガイドはマガジンの長手方向軸に平行であり、同じ位置に取出し用開口部を有する。この事例において、取出し用開口部は、溶接ガンのアクセス方向に十分離れて開けられており、その溶接キャップの各々は、その開口部をアクセス方向に位置付けられ、かつフルアクセスのために露出されている。
【0015】
例えば、独国特許出願公開第102009058937号明細書からの解決策も知られている。それは、処理の信頼性を保証するために、固定位置にマガジンヘッドを有し、電極キャップの交換マガジンは掛け金が掛けられる。
【0016】
以前の公知の解決策における、1つの利点は、電極キャップの唯一のレベルインジケータを、インジケータによって監視することができること、及び完全に空の電極キャップは、検出または監視され得ないことである。
【0017】
欧州特許公開第2072170号明細書の「Magazine unit for a spot welding cap changer for a robotic or stationary spot welding device」によると、誘導センサが使用され、それを用いて金属ピンを検出することができるが、正確な充填レベルを計測することはできない。
【0018】
独国特許発明第20000270号明細書の「Fill Level indicator for one, two, and multi-row ammunition magazines」は、機械式計数機構を提案している。
【0019】
充填レベルが最小充填レベルを下回るときに、信号が出力される解決策が、独国特許発明第19905477号明細書「Device for providing electrode caps for welding electrodes of automatic welding machines」において提案されている。この解決策も、正確な充填レベルを計測することができない。したがって公知の解決策においては、電極キャップ用マガジンの再充填時間または取替時間を、個々に計画することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】独国特許発明第19905477号明細書
【文献】独国特許出願公開第102009058937号明細書
【文献】欧州特許公開第2072170号明細書
【文献】独国特許発明第20000270号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、以前の公知の解決策における難点を可能な限り回避し、電極キャップ用マガジンの充填レベルを精確に検出するのを可能にする解決策を提案する、という目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、請求項1~3によるデバイスによって実現され、このシステムは、
図1~
図4及び以下の実施形態の説明で、より詳細に説明する。この実施形態は、マガジンヘッド1及び交換マガジン2から成る電極キャップ用マガジンの例を使用した、本発明による、目的に対する解決策を示す。しかし、先行技術からすでに知られている単一片の電極キャップ用マガジンにおいて、本発明による解決策を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】連結解除状態の、センサ7及び計測面8を伴う、本発明による充填レベル検出を有する電極キャップ用マガジンの詳細図である。
【
図2】各電極キャップ用チャネル5に1つのセンサ7を伴う、2チャネル式マガジンヘッド1を示す図である。
【
図3】充填レベル検出を伴う、電極キャップ用マガジンのセンサ7から計測面8における、計測ビームの詳細図である。
【
図4】連結状態の、本発明による充填レベル検出を伴う、電極キャップ用マガジンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による電極キャップ用マガジンは、マガジンヘッド1及び取替可能マガジン2から成る。取替可能マガジン2をマガジンヘッド1に接続するため、クイック解放デバイス4及び4aは、テンショナー4がマガジンヘッド1に配置されるよう、及びテンションフック4aが取替可能マガジン2に配置されるよう、位置付けられる。この配置は技術的に理にかなっている。なぜなら、取替可能マガジン2は、マガジンヘッド1に向かって、テンショナー4の力が作動される方向に動き、それによってその機能的位置方向に荷重力を受けるからである。
【0025】
マガジンヘッド1及び取替可能マガジン2を接続するとき、それら2つのアセンブリが確実に所定の位置となるよう、少なくとも1つのガイド要素が配置される。
【0026】
このガイド要素は、好ましくはその形状及び寸法公差に関して、容易に係合でき、かつマガジンヘッド1及び取替可能マガジン2が、互いに対して確実に所定の位置となるよう、設計される。
【0027】
電極キャップ3は、取替可能マガジン2及びマガジンヘッド1の中に格納され、それによって、例示的実施形態及び図による取替可能マガジン2及びマガジンヘッド1には、2つの電極キャップ用チャネル5が装着される。電極キャップ用チャネル5は、取替可能マガジン2の長手方向軸に平行、かつマガジンヘッド1においても同じ配置で位置付けられる。
【0028】
電極キャップ用チャネル5は、取替可能マガジン2及びマガジンヘッド1の中で対角線上にオフセットされて取り付けられ、それによって電極キャップの接触面は互いに面し、かつ対角線上にオフセットされる。
【0029】
しかし、本発明のコンセプトは、1つもしくは複数の電極キャップ用チャネル5、または1つもしくは複数のキャップガイドのみが装着された、技術的設計も含む。
【0030】
電極キャップ3の開口部を外側に向けた、取替可能マガジン2及びマガジンヘッド1における電極キャップ3の配置を介して、溶接ガンは、電極キャップ3の取出し用開口部の中に延びて、電極シャフトを用いて電極キャップ3を取り付けるのを可能にする。
【0031】
複数の電極キャップ用チャネルが使用される場合、取替可能マガジン2及びマガジンヘッド1の断面は、対角線上にオフセットされて互いに面するよう配置される。電極キャップ用チャネル5のこの配置は、ユニットの可能な限り小さいサイズを実現するよう選択される。なぜなら、それによってデバイスの全高は、2つの対向するキャップの高さに、キャップガイドを分離する壁の壁厚を加えた高さ未満になるためである。
【0032】
先行技術によると、電極キャップ用チャネル5は、小さい力で電極キャップ3を搬送するよう、かつ、特に取替可能マガジン2とマガジンヘッド1との間の接点において、キャップ3が傾いて電極キャップ用チャネル5の中で詰まるのを防止するよう、設計される。これは、電極キャップ用チャネル5を、電極キャップ3に適切な許容値を加えたものと同じ形状で設計することによって、実現される。
【0033】
マガジンヘッド1及び取替可能マガジン2の精確な接続のための、公知の技術的解決策は、独国特許出願公開第102009058937号明細書に記載されている。
【0034】
全ての電極キャップ用チャネル5において、直線的に可動に配置され、好ましくはバネ力で荷重をかけられた、少なくとも1つのキャップコンベヤ6が存在し、それは電極キャップ用チャネル5に位置された電極キャップ3を、マガジンヘッド1に向けて動かす。
【0035】
電極キャップ用チャネル5におけるキャップコンベヤ6の位置は、取替可能マガジン2及びマガジンヘッド1に位置された電極キャップ3の数に依拠する。
【0036】
少なくとも1つのセンサ7は、距離を計測するためにマガジンヘッド1に配置される。このセンサ7は、取替可能マガジン2の計測用チャネル9における少なくとも1つの計測面8、例えば反射面にビームを放ち、センサ7と計測面8との間の距離を計測する。例えば反射光スキャナを、センサ7として使用することができる。センサ7は、計測面8として作用する反射面にビームを向ける。
【0037】
計測面8は、電極キャップ用チャネル5に平行に配置された計測用チャネル9において計測が実現されるよう、キャップコンベヤ6に機械的に接続され、そのため、電極キャップ用チャネル5における電極キャップ3の数と、計測用チャネル9における計測面8の位置との間に、直接的な依存関係が存在する。
【0038】
電極キャップの取出しによる、取替可能マガジン2及びマガジンヘッド1における電極キャップ3の数の変化は、センサ7によって計測される距離を変化させる。
【0039】
センサによって計測された距離を評価することによって、マガジンヘッド1及び取替可能マガジン2における電極キャップ3の正確な数を、判断することができる。
【0040】
この利点は、電極キャップ3が個々に再充填されるときの時間を計画可能とすることである。なぜなら、本発明により、特定の充填レベルに到達したことを検出可能であるだけではなく、電極キャップ3の正確な数も判断可能であるからである。