(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ケージトップ及びこれを用いた動物飼育ラック
(51)【国際特許分類】
A01K 1/03 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
A01K1/03 A
(21)【出願番号】P 2018244071
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000222956
【氏名又は名称】東洋熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】杉田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】内山 憲一
(72)【発明者】
【氏名】溝下 真治
(72)【発明者】
【氏名】柳原 茂
(72)【発明者】
【氏名】石野 史子
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-029619(JP,A)
【文献】実開平02-107960(JP,U)
【文献】実開昭51-042288(JP,U)
【文献】実開平07-039396(JP,U)
【文献】特開2000-060344(JP,A)
【文献】特開2015-211662(JP,A)
【文献】登録実用新案第3170462(JP,U)
【文献】特開平09-047176(JP,A)
【文献】特開平07-203794(JP,A)
【文献】特開平08-228623(JP,A)
【文献】特開2005-095004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼育動物が収容されるケージ上部に取り付けられるケージトップであって、
前記ケージ上縁に沿った略矩形形状の枠体と、
該枠体を形成する前後及び左右に位置する前枠、後枠、左枠、及び右枠と、
該左枠及び右枠の全長に亘って上方に延びている板形状の仕切り板とを備え
、
前記枠体には、前記後枠からさらに後方に延びているストッパが形成されていて、
前記ストッパは、前記後枠から後方に向けて延びる水平部とこの水平部の後端部から鉛直上方に延びる鉛直部とで形成されていることを特徴とするケージトップ。
【請求項2】
前記仕切り板は、上方にいくにしたがって前記枠体の左右方向外側にそれぞれ広がっていることを特徴とする請求項1に記載のケージトップ。
【請求項3】
請求項1
又は2のいずれかに記載のケージトップが取り付けられた前記ケージが収容される動物飼育ラックであって、
前記ケージが左右方向に並べて配されている棚空間と、
該棚空間が上下方向に複数配されている棚本体と、
該棚本体の前側に位置して前記ケージが出し入れされるために開口している前側開口と、
前記棚本体の後側に位置して前記棚空間内の空気を吸引して排気するために開口している排気口と、
上下方向に隣り合う前記棚空間を仕切って且つ間隔を存して上下方向に平行に配されている棚板とを備え、
前記仕切り板は、前記排気口からの吸引により前記ケージ上部の空気を左右方向に漏らさないための
間隙を上側の前記棚板との間に有していることを特徴とする動物飼育ラック。
【請求項4】
前記ストッパは、前記排気口が形成されている
棚本体の後側の壁である後
壁に当接していることを特徴とする請求項
3に記載の動物飼育ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物を飼育しているケージが収容されている動物飼育ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
動物飼育ラックとしては、陰圧一方向タイプと、給排気タイプのものが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。これらはいずれもケージと称されるプラスティック容器内に飼育動物を収容し、このケージを複数収容する棚のようなものである。特許文献1に示す陰圧一方向タイプの動物飼育ラックは、棚の後面に備わる排気口からケージ内の空気を直接吸引することにより、棚に収容されているケージ内を陰圧とし、ケージ前面の開口部における気流を陰圧一方向流れに維持するものである。特許文献2に示す給排気タイプの動物飼育ラックは、棚の前面から給気された空気の一部をケージ内に吹き込み、吹き込んだ空気を背面から押し出してケージ内を換気するとともに、ケージ内を微陽圧に維持することによりケージ周囲の空気がケージ内に流入することを防御するものである。ケージから押し出された空気は、ラック後面の排気チャンバに備わる排気口から中央に備えられた排気ファンにより吸引されて大気に排気される。どちらのタイプも、ケージ内の動物からの臭気やアレルギー性物質等を棚前面の室内に漏らすことなく、空調又は浄化された室内空気をケージ内に供給して実験動物を飼育するものである。
【0003】
また一方で、動物飼育ラックにはケージ収容方式として置きタイプと吊りタイプのものが知られている。吊りタイプは特許文献1に示すように、上側の棚板から奥行き方向のケージ両側に垂れ壁を設け、この垂れ壁下端の係止片にケージの鍔部を引っかけるものである。この吊りタイプでは、ケージ下面は下側の棚板から離間している。吊りタイプの場合、ケージ上部の空間は左右方向にて仕切られているので、気流の制御がしやすいというメリットがある。置きタイプは特許文献3に示すように、下側の棚板にケージを載置してラック内に収容するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-95004号公報
【文献】特開平7-203794号公報
【文献】特開平8-228623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吊りタイプの場合、上述したように垂れ壁下端から横方に突出する係止片を設け、ここにケージの鍔部を引っかける構造となっており、このとき、鍔部の左右側面は垂れ壁に必ずしも密着しているわけではないので、鍔部の左右側面と垂れ壁との間には隙間が生じ、この隙間に対応した位置の係止片の全長に亘って餌屑や床敷粉末、動物由来の体毛等の塵埃が堆積する。このような係止片の上面に塵埃等が堆積すると、ケージを取り出した際には係止片を清掃する必要が生じ、その際はラックの奥まで手を伸ばして係止片の上面全長に亘って拭き取らなければならず、清掃作業性に問題があった。一方で置きタイプではケージ上部の空間の左右側を仕切り、安定した気流形成確保と隣り合うケージに気流が流れ込まないようにしなければならないという課題が残っている。
【0006】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、吊りタイプのラックが有する仕切り空間による気流の形成確保を保持しつつ、ラック使用中に発生した塵埃等の清掃作業性を高めたケージトップ及びこれを用いた動物飼育ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明では、飼育動物が収容されるケージ上部に取り付けられるケージトップであって、前記ケージ上縁に沿った略矩形形状の枠体と、該枠体を形成する前後及び左右に位置する前枠、後枠、左枠、及び右枠と、該左枠及び右枠の全長に亘って上方に延びている板形状の仕切り板とを備えたことを特徴とするケージトップを提供する。
【0008】
好ましくは、前記仕切り板は、上方にいくにしたがって前記枠体の左右方向外側にそれぞれ広がっている。
【0009】
好ましくは、前記枠体には、前記後枠からさらに後方に延びているストッパが形成されている。
【0010】
また、本発明では、上述したケージトップが取り付けられた前記ケージが収容される動物飼育ラックであって、前記ケージが左右方向に並べて配されている棚空間と、該棚空間が上下方向に複数配されている棚本体と、該棚本体の前側に位置して前記ケージが出し入れされるために開口している前側開口と、前記棚本体の後側に位置して前記棚空間内の空気を吸引して排気するために開口している排気口と、上下方向に隣り合う前記棚空間を仕切って且つ間隔を存して上下方向に平行に配されている棚板とを備え、前記仕切り板は、前記排気口からの吸引により前記ケージ上部の空気を左右方向に漏らさないための狭小隙間を上側の前記棚板との間に有していることを特徴とする動物飼育ラックを提供する。
【0011】
好ましくは、前記ストッパは、前記排気口が形成されている後板に当接している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケージトップの左右両側に仕切り板が備わっているので、ケージ上部の空間を左右方向で仕切ることができ、吊りタイプのラックが有する特許文献1に示すような上側の棚板下面に取り付けた奥行き方向のケージ両側の垂れ壁が無くても、安定した気流の形成を確保することができる。すなわち、仕切り板と上側の棚板との間には、排気口からの吸引によりケージ上部の空気を左右方向に漏らさないための狭小隙間が形成されるので、確実な気流形成確保を行うことができる。また、仕切り板を形成することにより従来の吊りタイプのラックが有していた係止片がなくなるので、この係止片上側に塵埃等が堆積することはなく、したがってラック使用中に発生した塵埃等の清掃作業性を高めることができる(係止片の清掃の必要がなくなる)。
【0013】
また、仕切り板が左右方向外側に向けてそれぞれ広がっているので、ケージトップを重ねて保管しておくことができる。動物飼育ラックを取り扱う現場では、定期的に床敷き交換をするために予備のケージ及びケージトップを備えておくという実情がある。このような実情に対応できるため、ケージ及びケージトップを保管するスペースが必要であるが、重ねることができるようにすることで保管スペースの狭小化に寄与できる。また、ケージトップはオートクレーブや自動洗浄機等により洗浄、殺菌されるので、このときのスペースの狭小化にも寄与できる。
【0014】
また、枠体にストッパを設け、このストッパが後板に当接することで、棚本体内でのケージの位置決めを行うことができるとともに、ケージ後方の上部空間も確実に仕切ることができ、塵埃等もこのストッパ上に集めることができるので清掃作業性も向上する。すなわちストッパは、ケージと後ろ壁との間の隙間を塞ぐ役割を持っている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る動物飼育ラックの概略正面図である。
【
図2】本発明に係るケージトップの概略斜視図である。
【
図3】本発明に係るケージトップが取り付けられたケージが動物飼育ラックに収容されている状態の概略正面図である。
【
図5】本発明に係るケージトップが取り付けられたケージが別の動物飼育ラックに収容されている状態の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まずは本発明に係る動物飼育ラック1の構成について概略を説明する。
図1に示すように、本発明に係る動物飼育ラック1は、略直方体形状で前面が開口した棚本体2を有している。棚本体2の前側の開口は前側開口3として形成されている。棚本体2内には上下方向に複数の棚空間4が形成されていて、これら棚空間4はそれぞれ棚板5により仕切られている。すなわち、棚板5は上下方向に隣り合う棚空間4を仕切って且つ間隔を存して上下方向に平行に配されている。棚空間4には、例えばマウス等の飼育動物を収容するケージ6が左右方向に並べて配されている。このケージ6の大きさは飼育動物の種類(例えばラット等)に応じて適宜変更される。棚空間4に対してケージ6を出し入れする際は、棚本体2の前側に位置している上述した前側開口3から行う。すなわち、この動物飼育ラック1では、前側開口3側が前側、その反対側のケージ6の収容方向奥側が後側、そしてその左右が左側、右側となっている。なお、ケージ6の上部には本発明に係るケージトップ7が取り付けられ、ケージ6の上側はこのケージトップ7にて覆われている。このケージトップ7はケージ6に取り付けられた状態でケージ6の内部に突出する突出部10を有し、ここに飼育動物のための餌(不図示)や給水瓶(不図示)が配設される。
【0017】
棚本体2の後側は筐形状の排気チャンバ8にて塞がれている(
図4参照)。排気チャンバ8は棚本体2の後側に開口して形成された排気口9を介して各棚空間4と通じている。すなわち、この排気口9は、棚本体2の後側に位置して棚空間4内の空気を吸引して排気チャンバ8に排気するためのものである。排気口9はそれぞれの棚空間4の後側の上部に左右方向に間隔を存して並べて複数個配設されている。なお、排気口9の入口側は除毛フィルタ等のフィルタ(不図示)にて覆われていてもよい。このフィルタにより飼育動物の体毛が排気チャンバ8内に流入することを防止できる。
【0018】
動物飼育ラック1にはキャスタ11が備わっている。このため、動物飼育ラック1は部屋のレイアウト変更等に応じて適宜移動可能である。また、動物飼育ラック1の下部には、キャスタ11の他に脚部となる固定脚12も備わっている。この固定脚12は、上下方向に伸長可能なアジャスタ機構を有している。動物飼育ラック1の位置を固定する場合は、固定脚12をキャスタ11よりも下方向に長くすればよい。
【0019】
上述したように、本発明に係るケージトップ7は、飼育動物を収容するためのケージ6の上部に取り付けられるものである。
図2~
図4に示すように、ケージ6は上面が略矩形形状に開口した容器であり、ケージトップ7はケージ6の開口した上縁に沿った略矩形形状の枠体13を備えている。この枠体13は、4本の前枠13a、後枠13b、左枠13c、右枠13dからなる。これら前枠13a、後枠13b、左枠13c、右枠13dのそれぞれの位置は、上述した動物飼育ラック1の前側、後側、左側、右側に対応している。なお、ケージトップ7は金網形状にて全体を形成されているが、材質としては金属の他、樹脂を用いてもよい。しかしながら強度及びオートクレーブ滅菌時の耐熱性を考慮すると金属製が好ましい。
【0020】
左枠13c及び右枠13dからは、板形状の仕切り板14が延びている。この仕切り板14は左枠13c及び右枠13dの全長に亘って連続して形成されている。この仕切り板14は、ケージトップ7がケージ6に取り付けられた状態で動物飼育ラック1の棚空間4内に収容された際、上側の棚板5との間に狭小な隙間である狭小隙間15が形成されるような高さで形成されている。この狭小隙間15は、排気口9からの吸引によりケージ6内及びケージ6上部の空気を左右方向に漏らさないような間隙として設定される。
【0021】
このように、ケージトップ7の左右両側に仕切り板14が備わっているので、ケージ6上部の空間を左右方向で仕切ることができ、吊りタイプのラックが有する上側の棚板下面に取り付けたケージ両側の垂れ壁が無くても、安定した気流の形成を置きタイプにして確保することができる。すなわち、仕切り板14と上側の棚板5との間には、排気口9からの吸引によりケージ6上部の空気を左右方向に漏らさないための狭小隙間15が形成されるので、確実な気流形成確保を行うことができる。このとき、ケージ6は棚板5に載置される置きタイプとできるので、ケージ6の左右方向の位置を自由にすることができ、ケージ6の配置について左右方向の制約がなくなる。また、仕切り板14を形成することにより従来の吊りタイプのラックが有していた係止片がなくなるので、この係止片上側に塵埃等が堆積することはなく、したがってラック使用中に発生した塵埃等の清掃作業性を高めることができる(係止片の清掃の必要がなくなる)。詳述すると、従来の吊りタイプの係止片は棚空間4内で動物飼育ラック1の前後方向に延びていたので、ここに塵埃が堆積すると作業者は棚空間4内に手を伸ばして係止片の上面を拭かなければならず、清掃作業性はあまりにも悪いものであった。本発明では、ケージ6の上部空間左右方向を仕切る壁を棚本体2ではなくケージトップ7に設けたため、仮に仕切り板14の何らかの部分に塵埃が堆積したとしても、作業者は棚本体2からケージ6ごとケージトップ7を取り出して手元にて拭き取り清掃を行うことができ、清掃作業性は格段に向上する。
【0022】
ここで、仕切り板14は、上方にいくにしたがって枠体13の左右方向外側に向かってそれぞれ広がっている。すなわち、仕切り板14は鉛直方向に対して若干傾斜して形成されている。このように仕切り板14を左右方向外側に向けてそれぞれ広げれば、仕切り板14の広がった部分からケージトップ7の下側を受け入れることができるので、ケージトップ7を重ねて保管しておくことができる。動物飼育ラック1を取り扱う現場では、定期的に床敷き交換をするために、予備のケージ6及びケージトップ7を備えておくという実情がある。このような実情に対応できるため、ケージ6及びケージトップ7を保管するスペースが必要であるが、ケージトップ7を重ねることができるようにすることで保管スペースの狭小化に寄与できる。また、ケージトップ7はオートクレーブや自動洗浄機等により洗浄、殺菌されるので、このときのスペースの狭小化にも寄与できる。
【0023】
一方で、枠体13には、後枠13bからさらに後方に延びているストッパ16が形成されている。ストッパ16は後枠13bから後方に向けて延びる水平部16aと、この水平部16aの後端部から鉛直上方に延びる鉛直部16bとで形成されている。このような構成により、ケージトップ7を取り付けた状態のケージ6は、棚空間4内に収容される際、前側開口3から後側に向けて棚板5上をスライドして挿入される。このとき、ストッパ16は枠体13よりも後方に向けて突出しているので、ストッパ16がまずは棚本体2の後側の壁(排気口9が形成されている後壁17)に当接する。このストッパ16が後壁17に当接することで、棚本体2内でのケージ6の位置決めを行うことができる。また、水平部16aによりケージ6後方の上部空間も確実に仕切ることができ、塵埃等もこの水平部16a上に集めることができるので清掃作業性も向上する。また、鉛直に形成されている後壁17に合わせて鉛直部16bも鉛直方向に延びているので、ケージ6の位置決めも一層確実なものとなる。
【0024】
図5及び
図6に示すように、上側の棚板5から下方に向けて垂れ膜18が配設されていてもよい。具体的には、垂れ膜18はケージ6が位置決めされた状態(ストッパ16が後壁17に当接した状態)で、仕切り板14の前側開口3側の前端面よりも後側に配設される。これにより、ケージ6の上部空間を仕切り板14とともにある程度覆うことで、棚板上に載置したケージ前面の上部棚板下面とケージ上面との間の開口部を小さくすることができるので、該開口部での陰圧一方向気流を少ない風量で維持することができ、ケージ6内の動物からの臭気やアレルギー性物質等を前側開口3から室内に向けて漏らすことなく、空調又は浄化された室内空気をケージ6内に供給して実験動物を飼育することができる。
【符号の説明】
【0025】
1:動物飼育ラック、2:棚本体、3:前側開口、4:棚空間、5:棚板、6:ケージ、7:ケージトップ、8:排気チャンバ、9:排気口、10:突出部、11:キャスタ、12:固定脚、13:枠体、13a:前枠、13b:後枠、13c:左枠、13d:右枠、14:仕切り板、15:狭小隙間、16:ストッパ、16a:水平部、16b:鉛直部、17:後壁、18:垂れ膜