(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】複合サッシ
(51)【国際特許分類】
E06B 1/32 20060101AFI20220830BHJP
E06B 3/26 20060101ALI20220830BHJP
E06B 3/72 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
E06B1/32
E06B3/26
E06B3/72
(21)【出願番号】P 2017068511
(22)【出願日】2017-03-30
【審査請求日】2019-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005005
【氏名又は名称】不二サッシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083851
【氏名又は名称】島田 義勝
(74)【代理人】
【識別番号】100194205
【氏名又は名称】河内 幸雄
(74)【復代理人】
【識別番号】100173657
【氏名又は名称】瀬沼 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 秀和
(72)【発明者】
【氏名】城詰 幸男
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180269(JP,A)
【文献】特開平5-330335(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2044329(GB,A)
【文献】特開平10-140933(JP,A)
【文献】特開平8-103944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00- 3/99
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外側の金属材と室内側の樹脂材からなる複合サッシにおいて、樹脂材は、ブロー成形により形成され、
前記金属材と前記樹脂材は、ブロー成形により一体に形成された複合形材であり、
前記金属材によりガラス溝が形成されており、
前記樹脂材は前記金属材に対し、見込み方向の一方にブロー成形されていることを特徴とする複合サッシ。
【請求項2】
前記金属材である矩形状の金属枠体と、パネル体と、ブロー成形により矩形状に形成された樹脂材である樹脂枠とを一体に組み付けたことを特徴とする請求項
1に記載の複合サッシ。
【請求項3】
ブロー成形時に、予め金型にセットされた金具が、前記樹脂材に埋め込まれていることを特徴とする請求項
1に記載の複合サッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、複合サッシを構成する樹脂材に、ブロー成形に係る樹脂材を用いた複合サッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属材と樹脂材とから構成される複合サッシが知られている。
特許文献1の「サッシ障子構造」及び特許文献2の「複合サッシの窓枠」は、共に課題として「断熱性能の向上」を掲げており、特許文献1の「サッシ障子構造」では、室外側に設けられた金属框部と室内側に設けられた木質様樹脂成形框部を備え、その木質様樹脂成形框部には空隙部21による断熱層が形成されている(同文献段落0026)。また、許文献2の「複合サッシの窓枠」では、窓開口部に装着されるアルミ枠とそのアルミ枠の室内側露出部分を覆う樹脂枠を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-71967号公報
【文献】特開2002-180748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような複合サッシが解決されるべき課題は、次のとおりである。
(1) 金属材と樹脂材を一体化させて複合させるためには、樹脂材も金属材と同様に、切削又はプレス等による加工が必要となる。かかる加工工程が必須であることの他に、その加工時の圧力によって樹脂枠に歪みや表面欠陥が発生する場合がある。
(2) 複合サッシの組立工程においては、樹脂材への補強材等の金具を取り付ける作業が必要となる場合がある。
(3) 樹脂材を加工して使用する場合には、隣接する樹脂材の両端を接続して使用するため、その樹脂材に断熱性向上に資する空隙部を設けても、樹脂材の両端からの空気の移動は避けられず、断熱の効果を低下させる要因となっている、等である。
【0005】
そこで、本願では、上記各課題を解決するため、複合サッシを構成する樹脂材に、ブロー成形に係る樹脂材を用いた複合サッシを提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、室外側の金属材と室内側の樹脂材からなる複合サッシにおいて、樹脂材は、ブロー成形により形成され、前記金属材と前記樹脂材は、ブロー成形により一体に形成された複合形材であり、前記金属材によりガラス溝が形成されており、前記樹脂材は前記金属材に対し、見込み方向の一方にブロー成形されていることを特徴とする複合サッシとした(請求項1に記載の発明)。
【0008】
上記発明において、前記金属材は、樹脂材が流れ込む空間部を有することを特徴とする複合サッシとした(請求項3に記載の発明)。
【0009】
上記発明において、金属材である矩形状の金属枠体と、パネル体と、ブロー成形により矩形状に形成された樹脂材である樹脂枠とを一体に組み付けたことを特徴とする複合サッシとした(請求項4に記載の発明)。
【発明の効果】
【0010】
本願発明の複合サッシによれば、ブロー成形により金属材の寸法に合わせて、樹脂材を一体成形することが可能であり、金属材と樹脂材を一体化するための加工や作業が不要となる。
また、ブロー成形時に、ナットや補強材等の金具を金型にセットすることにより、これらの金具と樹脂材と一体化させることができ、金具の取付作業を軽減化させることができる。
また、従来の前記押出成形による樹脂材(形材)とは異なり、本発明に係る樹脂材である樹脂枠は金型により成形されることから、窓枠の四周の範囲を同時に、即ち、矩形状に製造することができ、3次元的な成形品とすることができる。よって、樹脂材(形材)端部の接合部が無いことから、従来の樹脂材を用いる場合より、中空部での空気の移動が少なく、「断熱性能を向上」させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】同サッシにおいて、その生産工程の一例を示す金型の断面図、
【
図9】実施例3の複合サッシの製造及び組み付け工程図、
【
図12】同サッシの製造及び組み付け工程図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
実施例1の複合サッシ1は、
図1乃至
図3に図示したように、室外側に金属材2を配し、室内側の樹脂材3を配すると共に、前記樹脂材3をブロー成形により成形されるブロー成形品としたものである。
このブロー成形は、成形機(押出機)で作られたパリソンを金型で挟み、加圧空気を吹き込んで、金型内面に沿った中空の成形品を得る方法である。
その工程の詳細は、概ね次の通りである。
押出機に金型をセットする→パリソンを金型に押出す→金型を閉じる→パリソンに加圧空気を吹込む→金型を開く→成形品を取り出す。
【0013】
前記金属材2は、アルミニウム又はアルミニウム合金から成形されている(以下、金属材2をアルミ枠20と称する場合がある)。
前記樹脂材3は、前記金属材2の寸法に合わせて、ブロー成形により、金属材2の室内側に一体に成形したものである(以下、樹脂材3を樹脂枠30と称する場合がある)。
即ち、前記金属材2と前記樹脂材3は、ブロー成形により一体に形成された複合形材をなすもので、複合サッシ1の窓枠10の四周を構成している。
なお、以下の本発明に係る実施形態の詳細説明において、同一の構成は、同じ符号を付することにより又は同じ用語を用いることにより、詳細な説明は省略することとする。
【0014】
前記複合サッシ1は、例えば、建物の開口部11に配置した窓枠10にガラスを納めたFIX窓として構成されている。
【0015】
前記窓枠10は、上下枠21,22及び左右枠23,24からなり、例えば、上枠21の両端部及び左右枠23,24の各上端並びに下枠22の両端部及び左右枠23,24の各下端をそれぞれ約45度に切り欠いて、端部を周知の技術で接合することで、窓枠10の四周を構成している。
前記右枠24は、
図3に図示されているように、ブロー成形の過程において、加圧空気によりパリソンが金型に押し付けられた際に、そのパリソンが流れ込むことができる空間部25を備えている。図示は省略するが、上下枠21,22及び左枠23も同様な空間部を備えている。
この空間部25は、後述するブロー成形された矩形状の樹脂枠30を、別体に形成された矩形状のアルミ枠20に一体化させる場合に、アルミ枠20と樹脂枠30との係合部ともなるものである。
なお、前記アルミ枠20には、
図1及び
図2のようにパネル体としてのペアガラス4が組み込まれている。
【0016】
前記樹脂枠30は、
図3に図示されているように、前記アルミ枠20に当接する当接面部31と、室内に面する室内面部32と、建物の開口部11の下地12側に位置する下地面部33と、前記各部に囲まれる中空部34を備えている。
前記当接面部31を介して、前記アルミ枠20と前記樹脂枠30とが一体的に複合される。
【0017】
前記室内面部32は、ブロー成形に用いる金型により平滑仕上げにすること、また、金型に細かい模様、例えば凹凸を設けることにより、その模様を前記室内面部32に転写させる、所謂「シボ」を設けることも可能である。
【0018】
以上の複合サッシ1の作用効果は、次のとおりである。
(1) ブロー成形により、金属材2の寸法に合わせて、樹脂材3を一体成形することが可能であり、金属材と樹脂材を一体化するための加工や作業が不要となるので、製品コストを抑えることができる。
(2) 樹脂材3の表面に、後加工を行うことなく、様様な凹凸模様を付与することができる。
【実施例2】
【0019】
次に、
図4~
図7に基づき、実施例2に係る複合サッシ1Aの構成例を説明する。
この複合サッシ1Aは、アルミ枠20Aと樹脂枠30Aとをそれぞれ別々に矩形状に形成した後、アルミ枠20Aと樹脂枠30Aとを一体化(複合)させるものであり、樹脂枠30Aのブロー成形時に同時に組み込まれて樹脂枠30Aに一体化されるアタッチ材5を設けている。このアタッチ材5を介してアルミ枠20Aに係合される前記樹脂枠30Aと、ペアガラス4が組み込まれた前記アルミ枠20Aを備えている。
【0020】
前記アタッチ材5は、ブロー成形の過程において、加圧空気によりパリソンが金型に押し付けられた際に、そのパリソンが流れ込むことができる空間部25とアルミ枠20Aと係合する係合部50とを有する。
【0021】
かかるアタッチ材5は、
図6に図示されているように、金型Lに予めセットされるもので、金型Rと金型Lとを閉じて、金型Rと金型L内にパリソンを押圧してブロー成形を行う過程において、パリソンが空間部25に入り込むことで、樹脂枠30Aの成形と同時にその樹脂枠30Aに前記アタッチ材5が一体化されることとなる。
図6に図示されているような、パリソンが金型Rと金型Lの隙間に流出して固化した部分のバリB(紙面の右側はペアガラス4が位置する)は、矩形状に成形された樹脂枠30Aから容易に剥離させることができ、その剥離された廃材としてのバリBは、そのまま再生できる。
なお、
図6に図示する前記金型Rと金型Lは、
図5に対応させて左枠23Aに一体化させる樹脂枠30Aの成形部分のみが図示されているが、同様な金型が上下枠21A、22A及び右枠24Aの樹脂枠30Aの成形用に構成されている。
【0022】
前記アルミ枠20Aを構成する左枠23Aは、
図5に図示されているように、前記アタッチ枠5の係合部50を係合させる係合溝26を備えており、図示は省略するが上下枠21A,22A及び右枠24Aも同様である。
【0023】
前記複合サッシ1Aの具体的な製造及び組み付け工程は、
図7に図示する通りである。
工程(1) 前記アルミ枠20Aを周知の技術(形材組み立て等)で矩形状に形成する。
工程(2) そのアルミ枠20Aにペアガラス4を周知の技術で組み込む。
工程(3) 樹脂枠30Aをブロー成形により、矩形状に成形すると同時に樹脂枠30Aにアタッチ材5を一体化させる。
工程(4) 前記アルミ枠20Aに前記係合部50と前記係合溝26を介して前記アタッチ枠5を係合させて、アルミ枠20Aと樹脂枠30Aとを一体化(複合)させる。
なお、上記工程の手順として、工程3を工程1及び工程2に先行させてもよい。
【0024】
以上の複合サッシ1Aの作用効果は、次のとおりである。
(3) 従来の複合サッシに用いられる押出成形に係る樹脂枠とは異なり、パリソンが前記アタッチ材5の空間部25に「入り込む」ことにより、樹脂枠30Aとアタッチ材5との一体化が容易である。
(4) 従来の前記押出成形(形材)とは異なり、樹脂枠30Aは金型により成形されることから、窓枠10の四周の範囲を同時に、即ち、矩形状に製造することができ、3次元的な成形品とすることができる。
(5) バリBは、容易に樹脂枠30Aから剥離させることができ、その剥離された廃材としてバリBは、そのまま再生できるので、材料費のコスト安につなげることができる。
【0025】
なお、その他の構成は、上記各構成と同様である。
【0026】
〔実施例2の変形例〕
次に、
図8に基づき、実施例2に係る複合サッシ1Aの変形例を説明する。
この複合サッシ1Bは、ブロー成形時に樹脂枠30Bに一体化されたアルミ枠20Bからなる複合形材と、このアルミ枠20Bにセットされたペアガラス4からなる。
即ち、前記アルミ枠20Bを前記複合サッシ1Aのアタッチ材5にかえて樹脂枠30Bと一体化させたもので、ブロー成形の過程において、アルミ枠20Bは予め金型にセットされる。前記アルミ枠20Bは、ブロー成形においてパリソンが金型に押し付けられた際に、そのパリソンが流れ込むことができる空間部25を2か所備えている。
【0027】
以上の複合サッシ1Bの作用効果は、次のとおりである。
(6) 前記空間部25を2か所設けているので、アルミ枠20Bと樹脂枠30Bとの複合形材としての強度を向上させることができる。
【0028】
なお、その他の構成は、上記複合サッシ1と同様である。
【実施例3】
【0029】
次に、
図9及び
図10に基づき、実施例3に係る複合サッシ1Cの構成例を説明する。
この複合サッシ1Cは、実施例2の複合サッシ1Aと同様に、アルミ枠20Cと樹脂枠30Cとをそれぞれ別々に矩形状に形成した後、アルミ枠20Aと樹脂枠30Aとを一体化(複合)させるものであるが、前記複合サッシ1Aと異なる構成は、前記樹脂枠30Cのブロー成形の際に予め金型にセットされたナット6が前記樹脂枠30Cに埋め込まれることである。
【0030】
この複合サッシ1Cの製造及び組み付け工程は、
図9に図示する通りである。
工程(1) 前記アルミ枠20Cを周知の技術(形材組み立て等)で矩形状に形成する。
工程(2) そのアルミ枠20Cにペアガラス4をセットする。
工程(3) ブロー成形により矩形状に形成された樹脂枠30Cを、前記アルミ枠20Cの係合部25に係合した後、前記ナット6にボルト固定して、樹脂枠30Cとアルミ枠20Cを一体化(複合)させる。
【0031】
以上の複合サッシ1Cの作用効果は、次のとおりである。
(7) ブロー成形時に、前記ナット6や補強材等の金具を金型にセットすることにより、樹脂枠と一体化させることができ、金具の取付作業を軽減化させることができる。
【0032】
なお、その他の構成は、上記複合サッシ1Aと同様である。
【実施例4】
【0033】
次に、
図11及び
図12に基づき、実施例4に係る複合サッシ1Dの構成例を説明する。
複合サッシ1Dは、実施例3の複合サッシ1Cと同様に、アルミ枠20Dと樹脂枠30Dとをそれぞれ別々に矩形状に形成した後、アルミ枠20Dと樹脂枠30Dとを一体化(複合)させるものである。
即ち、矩形状のアルミ枠20Dに対し、ブロー成形された矩形状の樹脂枠30Dをペアガラス4を介して固定する組立て構造となっている。
【0034】
前記樹脂枠30Dには、そのブロー成形の際に、金型に予めセットされたナット6が一体化されており、樹脂枠30Dの中空部34が、アルミ枠20Dの室外側面近くまで係合されている。
【0035】
この複合サッシ1Dのより詳細な工程は、
図12に図示する通りである。
工程(1) 前記アルミ枠20Dを周知の技術(形材組み立て等)で矩形状に形成する。
工程(2) 前記樹脂枠30Dをブロー成形により矩形状に形成する。
工程(3) 前記アルミ枠20Dにペアガラス4をセットすると共に、前記樹脂枠30Dをセット(係合)する。
工程(4) 前記ナット6にボルトを固定して、樹脂枠30Dとアルミ枠20Dを一体化させる。
【0036】
以上の複合サッシ1Dの作用効果は、次のとおりである。
(8) 前記アルミ枠20Dに対して、樹脂枠30Dの中空部34を深く係合すると共にボルト固定することで、一体化の強度を向上させることができる。
【0037】
なお、その他の構成は、上記複合サッシ1Cと同様である。
【0038】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において、通常の知識を有する者により可能である。
例えば、窓種はスライディングサッシやプロジェクトサッシ等でもよく、枠と障子に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 複合サッシ 1A 複合サッシ
1B 複合サッシ 1C 複合サッシ
1D 複合サッシ
10 窓枠 11 開口部
12 下地
2 金属材 20 アルミ枠
20A アルミ枠 20B アルミ枠
20C アルミ枠 20D アルミ枠
21,22 上下枠 23,24 左右枠
21A,22A 上下枠 23A,24A 左右枠
25 空間部(係合部) 26 係合溝
3 樹脂材 30 樹脂枠
30A 樹脂枠 30B 樹脂枠
30C 樹脂枠 30D 樹脂枠
31 当接面部 32 室内面部
33 下地面部 34 中空部
4 ペアガラス
5 アタッチ材 50 係合部
6 ナット
L 金型 R 金型
B バリ