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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】焼却炉及び焼却炉の排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   F23J 7/00 20060101AFI20220830BHJP
   F23G 5/14 20060101ALI20220830BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20220830BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
F23J7/00 ZAB
F23G5/14 F
F23G5/00 C
F23G5/50 H
F23G5/50 M
F23G5/50 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017218984
(22)【出願日】2017-11-14
(65)【公開番号】P2019090563
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100197549
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昌三
(72)【発明者】
【氏名】河地 広幸
(72)【発明者】
【氏名】森原 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 充彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 和基
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-057039(JP,A)
【文献】米国特許第05121700(US,A)
【文献】特開2014-031984(JP,A)
【文献】特開平03-238024(JP,A)
【文献】特開平11-218314(JP,A)
【文献】国際公開第03/083370(WO,A1)
【文献】特開2015-187517(JP,A)
【文献】特開2002-195534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00 - 5/50
F23L 9/02 - 9/04
F23J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を焼却処理する一次燃焼領域と、前記一次燃焼領域で生じた燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス流路中に脱硝剤を供給する脱硝剤供給機構と、前記脱硝剤供給機構より上流側で前記燃焼排ガス流路内へ向けてガスを供給するガス供給機構を備えている焼却炉であって、
前記ガス供給機構は、
前記燃焼排ガス流路を区画する少なくとも一対の対向壁に、前記燃焼排ガスの流れ方向視で対向するように設置された複数対のガス噴射ノズルと、
一対のガス噴射ノズル毎にそれぞれから噴射供給されるガスの流量比を調整可能な第1調整機構と、
各対向壁に設置されたガス噴射ノズルのそれぞれから噴射供給されるガスの総流量比を調整可能な第2調整機構と、
を備え、
前記第1調整機構は、前記複数対のガス噴射ノズルのうち、前記対向壁の一方に設置されたガス噴射ノズルよりも他方に設置されたガス噴射ノズルから噴射供給されるガスの流量比を大きくなるように調整した第1ガス噴射ノズル対と、前記第1ガス噴射ノズル対とは異なる流量比となるように調整した第2ガス噴射ノズル対とが分散配置されるように流量比を調整可能に構成され、
前記第1調整機構により調整したガスの流量比に従って、前記燃焼排ガス流路を流下する燃焼ガスに複数の主流を形成し、前記第2調整機構により、前記燃焼ガス流路を流下する前記複数の主流の形成位置が前記対向壁の何れかの壁面側に片寄ることなく中心側へ調整する焼却炉。
【請求項2】
前記ガス供給機構よりも下流側に配置され、前記燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向に沿って複数点の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出される複数点の温度が近づくように前記第1調整機構及び/または前記第2調整機構を制御するガス供給制御部を備えている請求項記載の焼却炉。
【請求項3】
前記脱硝剤供給機構は、
前記燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向に沿って設置され、燃焼排ガスの前記主流に向けて脱硝剤を噴射する複数の脱硝剤噴射ノズルと、
脱硝剤噴射ノズルの近傍温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出された温度に応じて各脱硝剤噴射ノズルからの脱硝剤の噴射時期及び/または噴射量比を制御する脱硝剤供給制御部を備えている請求項1または2記載の焼却炉。
【請求項4】
前記脱硝剤供給機構より下流側に前記燃焼排ガスに含まれるNOx濃度を測定するガスセンサを備え、
前記脱硝剤供給制御部は前記ガスセンサで検出されるNOx濃度に基づいて前記脱硝剤噴射ノズルからの脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比を制御する請求項記載の焼却炉。
【請求項5】
前記燃焼排ガス流路またはその下流側に前記燃焼排ガスに含まれる酸素ガス濃度を検出する酸素ガスセンサ、燃焼排ガスの流量を検出する排ガス流量計をさらに備え、
前記脱硝剤供給制御部は前記酸素ガスセンサで検出される酸素ガス濃度、前記排ガス流量計で検出される燃焼排ガス流量、前記温度センサで検出される燃焼排ガスの温度に基づいてNOx発生量を推定し、NOx発生量推定値に基づいて前記脱硝剤噴射ノズルからの脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比を制御する請求項記載の焼却炉。
【請求項6】
前記脱硝剤供給機構より下流側に前記燃焼排ガスに含まれるNOx濃度を測定するガスセンサを備え、
前記脱硝剤供給制御部は前記ガスセンサで検出されるNOx濃度に基づいて前記脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比の制御量を補正制御する請求項記載の焼却炉。
【請求項7】
廃棄物を焼却処理する一次燃焼領域と、前記一次燃焼領域で生じた燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス流路中に脱硝剤を供給するように、前記燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向に沿って複数の脱硝剤噴射ノズルが配置された脱硝剤供給機構と、
前記脱硝剤供給機構より上流側で前記燃焼排ガス流路を区画する少なくとも一対の対向壁に前記燃焼排ガスの流れ方向視で対向するように配置された複数対のガス噴射ノズルと、
前記複数対のガス噴射ノズルのうち、前記対向壁の一方に設置されたガス噴射ノズルよりも他方に設置されたガス噴射ノズルから噴射供給されるガスの流量比を大きくなるように調整した第1ガス噴射ノズル対と、前記第1ガス噴射ノズル対とは異なる流量比となるように調整した第2ガス噴射ノズル対とが分散配置されるように流量比を調整可能な第1調整機構と、各対向壁に設置されたガス噴射ノズルのそれぞれから噴射供給されるガスの総流量比を調整可能な第2調整機構と、を含むガス供給機構と、
前記ガス供給機構よりも下流側で前記脱硝剤噴射のノズル近傍または上流側に配置され、前記燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向に沿って複数点の温度を検出する温度センサと、を備えている焼却炉の排ガス処理方法であって、
前記第1調整機構を用いてガスの流量比を調整することにより、前記燃焼排ガス流路を流下する燃焼ガスに複数の主流を形成し、
前記第2調整機構を用いてガスの総流量比を調整することにより、前記燃焼ガス流路を流下する前記複数の主流の形成位置が前記対向壁の何れかの壁面側に片寄ることなく中心側へ調整する焼却炉の排ガス処理方法。
【請求項8】
前記温度センサにより検出された温度に応じて各脱硝剤噴射ノズルからの脱硝剤の噴射時期及び/または噴射量比を調整して、燃焼排ガスの前記主流に向けて脱硝剤を噴射する請求項記載の焼却炉の排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を焼却処理する一次燃焼領域と、前記一次燃焼領域で生じた燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス流路中に脱硝剤を供給する脱硝剤供給機構と、前記脱硝剤供給機構より上流側で前記燃焼排ガス流路内へ向けてガスを供給するガス供給機構を備えている焼却炉及び焼却炉の排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみや産業廃棄物を焼却処理するためにストーカ式の焼却炉が用いられている。炉内に投入された被焼却物は火格子によって撹拌搬送されながら焼却される。下方から一次燃焼用空気が供給される火格子上で一次燃焼が行なわれ、火格子の上流側では被焼却物の乾燥が促進され、中流側では被焼却物から生じた熱分解ガスが燃焼し、下流側では炭化された被焼却物が固体燃焼される。
【0003】
一次燃焼で生じた未燃成分を含む燃焼排ガスは、一次燃焼空間の下流側に形成された燃焼排ガス流路で完全燃焼され、煙道に備えた排ガス処理設備で浄化された排ガスが煙突から排気される。燃焼排ガス流路の入口側に二次燃焼を促進するためのガス供給機構が設けられ、ガス供給機構から供給されるガスにより燃焼排ガスが撹拌されて二次燃焼が促進される。
【0004】
そして、高温度で二次燃焼することにより生じる窒素酸化物NOxなどの有害物質が排ガスとともに排気されることがないように、燃焼排ガス流路にアンモニア(NH)水や尿素水などのような脱硝薬剤を噴霧する脱硝剤供給機構が設けられている。
【0005】
特許文献1には、炉内の温度場や燃焼排ガスのガス組成などの変動が生じた場合であっても、炉内の温度場の変動を迅速かつ適切に抑制し、安定して効率良く脱硝を行うことができ、簡素な装置構成で実現することができる廃棄物焼却プラントが開示されている。
【0006】
当該廃棄物焼却プラントは、焼却炉内に一次空気を導入して廃棄物を焼却処理する一次燃焼領域と、廃棄物の未燃焼物あるいは不完全燃焼物を二次空気により二次燃焼させる二次燃焼領域と、焼却炉の壁面に設けられ、廃棄物を焼却処理することにより生じた燃焼排ガスに脱硝薬剤溶液を噴霧する脱硝薬剤供給ノズルとを有すると共に、脱硝薬剤供給ノズルよりも燃焼排ガスのガス流れ方向の上流側であって、二次空気を供給する二次空気供給ノズルよりも燃焼排ガスのガス流れ方向の下流側の焼却炉の壁面に、燃焼排ガスを攪拌するための燃焼排ガス撹拌手段を有する焼却炉を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-180989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された焼却炉は、燃焼排ガス流路を流れる燃焼ガスを撹拌するために二次空気供給ノズルに加えて撹拌用ガス供給ノズルを設け、二次空気供給ノズルの設置位置から撹拌用ガス供給ノズルの設置位置までの間で燃焼排ガスが完全燃焼するように、以下の関係式を満たすように撹拌用ガス供給ノズルの設置位置を設定していた。
【0009】
二次空気供給ノズルの設置位置から撹拌用ガス供給ノズルの設置位置までの間の燃焼排ガスの滞留時間をSとして、1sec≦S≦2secを満たし、二次空気供給ノズルの設置位置から撹拌用ガス供給ノズルの設置位置までの間の容積をA、全ガス量Gとして、S=A/Gを満たす。
【0010】
しかし、現実には燃焼排ガスの温度や量は被焼却物の性状や投入量によって大きく変動するため、このような関係を満たすように二次空気供給の供給量を調整するのは非常に困難であり、また二次空気供給ノズルに加えて撹拌用ガス供給ノズルなどの目的に異なる多段のガス供給機構を設ける必要があるため、設備費が嵩むという問題もあった。
【0011】
本発明の目的は、上述した従来の問題点に鑑み、シンプルなガス供給機構でありながら、燃焼排ガス流路の燃焼排ガスの流れを脱硝に適した状態に調整可能な焼却炉及び焼却炉の排ガス処理方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明による焼却炉の第一の特徴構成は、廃棄物を焼却処理する一次燃焼領域と、前記一次燃焼領域で生じた燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス流路中に脱硝剤を供給する脱硝剤供給機構と、前記脱硝剤供給機構より上流側で前記燃焼排ガス流路内へ向けてガスを供給するガス供給機構を備えている焼却炉であって、前記ガス供給機構は、前記燃焼排ガス流路を区画する少なくとも一対の対向壁に、前記燃焼排ガスの流れ方向視で対向するように設置された複数対のガス噴射ノズルと、一対のガス噴射ノズル毎にそれぞれから噴射供給されるガスの流量比を調整可能な第1調整機構と、各対向壁に設置されたガス噴射ノズルのそれぞれから噴射供給されるガスの総流量比を調整可能な第2調整機構と、を備え、前記第1調整機構は、前記複数対のガス噴射ノズルのうち、前記対向壁の一方に設置されたガス噴射ノズルよりも他方に設置されたガス噴射ノズルから噴射供給されるガスの流量比を大きくなるように調整した第1ガス噴射ノズル対と、前記第1ガス噴射ノズル対とは異なる流量比となるように調整した第2ガス噴射ノズル対とが分散配置されるように流量比を調整可能に構成され、前記第1調整機構により調整したガスの流量比に従って、前記燃焼排ガス流路を流下する燃焼ガスに複数の主流を形成し、前記第2調整機構により、前記燃焼ガス流路を流下する前記複数の主流の形成位置が前記対向壁の何れかの壁面側に片寄ることなく中心側へ調整する点にある。
【0013】
燃焼排ガス流路を区画する一対の対向壁に設置された複数対のガス噴射ノズルから、それぞれ対向する壁に向けて噴射供給されたガスは、燃焼排ガスに撹拌効果をもたらしながら燃焼排ガスの流れの方向に沿って流下する。このとき、第1ガス噴射ノズル対から噴射されたガスは、燃焼排ガスの流れ方向視で中央部よりも対向壁の一方側に多く供給され、第2ガス噴射ノズル対から噴射されたガスは、これとは異なる態様で供給される。第1ガス噴射ノズル対と第2ガス噴射ノズル対が分散配置されるように流量比が調整されることにより、燃焼排ガスの流れ方向視で特定の箇所に偏ることなく分散するようにガスが供給され、その流れに沿って燃焼排ガス流路を流下する燃焼ガスに複数の主流が形成される。その結果、ガス供給機構の下流側において一部に偏った大きな偏流の発生が緩和され、脱硝剤供給機構から供給された脱硝剤との反応が分散して効率的に進むようになる。
【0014】
仮に一次燃焼で生じた燃焼排ガスの流量分布や成分分布に大きな偏りが生じて第一調整機構による調整だけでは偏流が十分に緩和されない場合でも、第2調整機構によってガスの総流量比が調整されることにより、燃焼排ガスの流れ方向視で中央部よりも両側の対向壁側に偏った領域に供給されるガス量バランスが変動し、その変動したガスの流れに沿って燃焼排ガスの流れが形成されるようになり、燃焼ガス流路を流下する前記複数の主流の形成位置が前記対向壁の何れかの壁面側に片寄ることなく中心側へ調整されるようになる。
【0015】
同第の特徴構成は、上述の第の特徴構成に加えて、前記ガス供給機構よりも下流側に配置され、前記燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向に沿って複数点の温度を検出する温度センサと、前記温度センサにより検出される複数点の温度が近づくように前記第1調整機構及び/または前記第2調整機構を制御するガス供給制御部を備えている点にある。
【0016】
ガス供給制御部によって、燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向での大きな偏りの有無が、温度センサにより検出された燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向に沿った複数の温度を指標にして判断され、当該複数点の温度が近づくように第1調整機構及び/または第2調整機構が制御されることにより、燃焼排ガスの流れが整えられ、以て、脱硝剤供給機構から供給された脱硝剤との反応が効率的に進められる。
【0017】
同第の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記脱硝剤供給機構は、前記燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向に沿って設置され、燃焼排ガスの前記主流に向けて脱硝剤を噴射する複数の脱硝剤噴射ノズルと、脱硝剤噴射ノズルの近傍温度を検出する温度センサと、前記温度センサにより検出された温度に応じて各脱硝剤噴射ノズルからの脱硝剤の噴射時期及び/または噴射量比を制御する脱硝剤供給制御部を備えている点にある。
【0018】
脱硝剤供給制御部によって、温度センサにより検出された温度を指標にして脱硝反応が効率的に行なえる領域が特定され、当該領域に対応する脱硝剤噴射ノズルから効率的に脱硝剤が供給されるように、各脱硝剤噴射ノズルから噴射される脱硝剤の噴射時期及び/または噴射量比が調整される。
【0019】
同第の特徴構成は、上述の第の特徴構成に加えて、前記脱硝剤供給機構より下流側に前記燃焼排ガスに含まれるNOx濃度を測定するガスセンサを備え、前記脱硝剤供給制御部は前記ガスセンサで検出されるNOx濃度に基づいて前記脱硝剤噴射ノズルからの脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比を制御する点にある。
【0020】
ガスセンサにより検出されたNOx濃度を指標にして、その濃度のNOxを還元処理できるように、脱硝剤噴射ノズルからの脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比が調整される。
【0021】
同第の特徴構成は、上述の第の特徴構成に加えて、前記燃焼排ガス流路またはその下流側に前記燃焼排ガスに含まれる酸素ガス濃度を検出する酸素ガスセンサ、燃焼排ガスの流量を検出する排ガス流量計をさらに備え、前記脱硝剤供給制御部は前記酸素ガスセンサで検出される酸素ガス濃度、前記排ガス流量計で検出される燃焼排ガス流量、前記温度センサで検出される燃焼排ガスの温度に基づいてNOx発生量を推定し、NOx発生量推定値に基づいて前記脱硝剤噴射ノズルからの脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比を制御する点にある。
【0022】
酸素ガスセンサ、排ガス流量、燃焼排ガスの温度に基づいてNOx発生量が推定され、推定されたNOx発生量に基づいて必要な脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比が調整される。
【0023】
同第の特徴構成は、上述の第の特徴構成に加えて、前記脱硝剤供給機構より下流側に前記燃焼排ガスに含まれるNOx濃度を測定するガスセンサを備え、前記脱硝剤供給制御部は前記ガスセンサで検出されるNOx濃度に基づいて前記脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比の制御量を補正制御する点にある。
【0024】
推定されたNOx発生量に対応する脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比が、ガスセンサによって検出されたNOx濃度に基づいて適正な量に補正される。
【0025】
本発明による焼却炉の排ガス処理方法の第一の特徴構成は、廃棄物を焼却処理する一次燃焼領域と、前記一次燃焼領域で生じた燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス流路中に脱硝剤を供給するように、前記燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向に沿って複数の脱硝剤噴射ノズルが配置された脱硝剤供給機構と、前記脱硝剤供給機構より上流側で前記燃焼排ガス流路を区画する少なくとも一対の対向壁に前記燃焼排ガスの流れ方向視で対向するように配置された複数対のガス噴射ノズルと、前記複数対のガス噴射ノズルのうち、前記対向壁の一方に設置されたガス噴射ノズルよりも他方に設置されたガス噴射ノズルから噴射供給されるガスの流量比を大きくなるように調整した第1ガス噴射ノズル対と、前記第1ガス噴射ノズル対とは異なる流量比となるように調整した第2ガス噴射ノズル対とが分散配置されるように流量比を調整可能な第1調整機構と、各対向壁に設置されたガス噴射ノズルのそれぞれから噴射供給されるガスの総流量比を調整可能な第2調整機構と、を含むガス供給機構と、前記ガス供給機構よりも下流側で前記脱硝剤噴射のノズル近傍または上流側に配置され、前記燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向に沿って複数点の温度を検出する温度センサと、を備えている焼却炉の排ガス処理方法であって、前記第1調整機構を用いてガスの流量比を調整することにより、前記燃焼排ガス流路を流下する燃焼ガスに複数の主流を形成し、前記第2調整機構を用いてガスの総流量比を調整することにより、前記燃焼ガス流路を流下する前記複数の主流の形成位置が前記対向壁の何れかの壁面側に片寄ることなく中心側へ調整し、前記温度センサにより検出された温度に応じて各脱硝剤噴射ノズルからの脱硝剤の噴射時期及び/または噴射量比を調整して、燃焼排ガスの前記主流に向けて脱硝剤を噴射する点にある。
【0026】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記温度センサにより検出された温度に応じて各脱硝剤噴射ノズルからの脱硝剤の噴射時期及び/または噴射量比を調整して、燃焼排ガスの前記主流に向けて脱硝剤を噴射する点にある。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した通り、本発明によれば、シンプルなガス供給機構でありながら、燃焼排ガス流路の燃焼排ガスの流れを脱硝に適した状態に調整可能な焼却炉及び焼却炉の排ガス処理方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ストーカ式焼却炉の構成を示す説明図である。
図2】ストーカ式焼却炉の要部拡大図である。
図3】ストーカ式焼却炉の一次燃焼領域及び二次燃焼領域を示す要部説明図である。
図4】(a)はガス供給機構の説明図であり、(b)は燃焼排ガスの流れの説明図である。
図5】(a)は本発明のガス供給機構に対応する燃焼排ガス流のシミュレーション図であり、(b)は同ガス供給機構による燃焼排ガス流の説明図であり、(c)は従来のガス供給機構に対応する燃焼排ガス流のシミュレーション図であり、(d)は従来のガス供給機構による燃焼排ガス流の説明図である。
図6】(a)はシミュレーションモデル式に用いられた係数の説明図、(b)は可燃性ガス、一次燃焼用空気、二次燃焼用空気、再循環ガスの流量説明図である。
図7】別実施形態を示し、(a)はガス供給機構の説明図であり、(b)は燃焼排ガスの流れの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明による焼却炉及び焼却炉の排ガス処理方法を図面に基づいて説明する。
【0030】
[ごみ焼却炉の全体構造]
図1には、ストーカ式のごみ焼却炉1が示されている。ごみ焼却炉1は、ごみ収集車が進入するプラットホームA、ごみ収集車により収集されたごみを集積するごみピットB、ごみ投入ホッパD、ごみピットBからごみをごみ投入ホッパDに移送するクレーン機構C、ストーカ式の焼却炉本体E、廃熱ボイラF、エコノマイザG、減温塔H、集塵機I、煙突Jなどを備えている。
【0031】
プラットホームAとごみピットBの間に設けられた臭気漏洩防止及び安全確保のための観音開き式のごみ投入扉Kを開放することにより、ごみ収集車によって収集運搬されたごみがごみピットBに投入される。
【0032】
ごみピットBに集積されたごみは、自動または制御室の運転員によって操作されるクラブバケット方式のクレーン機構Cによって把持されて、ごみ投入ホッパDの上端に形成された開口部まで移送された後に落下投入される。
【0033】
ごみ投入ホッパDの底部に給じん装置Pが設けられ、ごみ投入ホッパDに充填されたごみが焼却炉本体Eに押込み投入される。ごみ投入ホッパDに充填されたごみが、ごみ投入ホッパDから焼却炉本体Eに形成された炉室への外気の流入を遮断するシール機構として機能し、炉室が負圧に維持される。
【0034】
焼却炉本体Eに形成された炉室は、一次燃焼室2と一次次燃焼室2で生じた燃焼排ガスを完全燃焼させる二次燃焼室3を備え、二次燃焼室の壁部に廃熱ボイラFの複数の水管WTが埋め込まれている。一次燃焼室2が本発明の一次燃焼領域となり二次燃焼室が燃焼ガス流路となる。
【0035】
図2に示すように、一次燃焼室2には、固定火格子と可動火格子がごみの搬送方向に沿って交互に配置されたストーカ機構Sが設けられている。油圧機構h1、h2、h3によって可動火格子が固定火格子に対して前後方向に往復駆動されることにより、ごみが撹拌されながら下流側に搬送される。
【0036】
ストーカ機構Sの下部に上流側から下流側に向けて順に四つの風箱W1,W2,W3,W4が設けられ、押込み送風機から一次燃焼用空気が供給される。ストーカ機構Sのうち風箱W1に対応する上流領域が乾燥帯S1、風箱W2,W3に対応する中流領域が燃焼帯S2、風箱W4に対応する下流領域が後燃焼帯S4となる。
【0037】
給じん装置Pから一次燃焼室2に押し込まれたごみは乾燥帯で主に加熱乾燥され、燃焼帯でガス化燃焼されて、ガス化燃焼により炭化されたごみは後燃焼帯で固体燃焼され、灰化された後に後燃焼帯の端部から灰シュートに落下する。
【0038】
一次燃焼室2で生じた燃焼排ガスの出口部から二次燃焼室3の入口部にかけて、前壁2F及び後壁2Rにくびれ部が形成され、当該くびれ部にガス供給機構4が設けられている。ガス供給機構4から供給されるガスにより二次燃焼室3に流入する燃焼排ガスが撹拌され、整流されて二次燃焼室3で完全燃焼される。
【0039】
なお、ガス供給機構4から供給されるガスは二次燃焼用の空気であってもよいし、一次燃焼室から引抜かれた排ガス、集塵機Iより下流の煙道から分岐された再循環排ガス、或いはそれ以外の排ガス流路から分岐された排ガスであってもよいし、空気と前記各排ガスの混合ガスであってもよい。被焼却物に対する理論空気比が約1.3となるように一次燃焼用空気と二次燃焼用空気の総量が調整されていればよく、例えば理論空気比が約1.3となるように全ての空気が一次燃焼用空気で賄われている場合にはガス供給機構4から供給されるガスは、煙道から引抜かれた排ガスのみであってもよい。また、一次燃焼用空気で約1.0の空気が賄われ、二次燃焼用空気で約0.3の空気が賄われるように構成してもよい。
【0040】
さらに、二次燃焼室3の左右の側壁には、燃焼排ガスに脱硝剤を供給する脱硝剤供給機構6が設けられている。二次燃焼室3で燃焼排ガスが高温燃焼することにより生成される窒素酸化物NOxを無触媒脱硝法(SNCR:Selective Non-Catalytic Reduction)により還元除去するべく、脱硝剤供給機構6によってアンモニア水や尿素水のような脱硝剤が噴射供給される。
【0041】
無触媒脱硝法は、焼却炉内の燃焼排ガス中に液状またはガス状の脱硝薬剤を吹込み、二次燃焼により生成したNOxを還元する方法である。脱硝剤としてアンモニア水を用いる場合、800℃~1000℃の温度範囲、好ましくは820℃~860℃の温度範囲がNOxとアンモニアの反応が効率的に促進される。
【0042】
一次燃焼室2で生じた可燃性ガスを含む燃焼排ガスが、二次燃焼室3で完全燃焼されて煙道に流出する。二次燃焼室3に備えた廃熱ボイラFによって廃熱回収され、生成された蒸気が発電等などに利用される。煙道に沿って上述したエコノマイザG、減温塔H、集塵機I、煙突Jなどが配置されている。
【0043】
エコノマイザGは、排ガスの保有熱によってボイラの給水を予熱する熱回収装置である。減温塔Hによって温度が低下した排ガスは集塵機Iで除塵された後に煙突Jから排気される。焼却炉などの各機器から外部に炎や排ガスが流出することがないように、集塵機Iの下流側に誘引送風機Mが接続され、炉室が負圧に維持されている。
【0044】
即ち、本発明による焼却炉は、廃棄物を焼却処理する一次燃焼領域と、一次燃焼領域で生じた燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス流路中に脱硝剤を供給する脱硝剤供給機構と、脱硝剤供給機構より上流側で燃焼排ガス流路内へ向けてガスを供給するガス供給機構とを備えている。
【0045】
[ガス供給機構の構造]
図3及び図4(a),(b)に示すように、ガス供給機構4は、燃焼排ガス流路となる二次燃焼室3を区画する少なくとも一対の対向壁2F,2Rに、燃焼排ガスの流れ方向視で対向するように設置された複数対のガス噴射ノズル4A~4Hと、一対のガス噴射ノズル毎にそれぞれから噴射供給されるガスの流量比を調整可能な第1調整機構40としての第1ダンパ機構D1を備えている。
【0046】
また、各対向壁2F,2Rに設置されたガス噴射ノズル4A~4Hのそれぞれから噴射供給されるガスの総流量比を調整可能な第2調整機構41としての第2ダンパ機構D2、ガスの総流量を調整可能な第3調整機構42としての第3ダンパ機構D3を備えている。
【0047】
第3調整機構42(第3ダンパ機構D3)により調整されたガスの総流量に対して第2調整機構41(第2ダンパ機構D2)により各対向壁2F,2Rに設置されたガス噴射ノズル4A~4Hのそれぞれから噴射供給されるガスの総流量比が調整され、第2調整機構41(第2ダンパ機構D2)により調整されたガスの総流量比の下で、第1調整機構40(第1ダンパ機構D1)によって一対のガス噴射ノズル毎にそれぞれから噴射供給されるガスの流量比が調整される。
【0048】
そして、燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向での温度を検出する複数の温度センサTS1がガス供給機構4よりも下流側に配置され、当該温度センサTS1により検出される複数点の温度が近づくように第1調整機構40及び/または第2調整機構41を制御するガス供給制御部43を備えている。
【0049】
具体的には、一次燃焼室2で生じた燃焼排ガスの出口部から二次燃焼室3の入口部にかけてくびれ部が形成された前壁2F及び後壁2Rに、左右の側壁間である奥行き方向に均等な間隔でそれぞれ8本のストレートノズルが配されている。
【0050】
各ストレートノズルは燃焼排ガスの流れ方向視で対向するように配され、水平線に対して10~15°の角度で下方に傾斜するように配され、第1調整機構40によってガス噴射ノズル対4A,4Aからガス噴射ノズル対4H,4Hまでの8対のノズル対から噴射供給されるガスの流量比が調整される。なお、各ストレートノズルは10~15°の傾斜角度で配される態様に限るものではなく、水平姿勢に配されるものであってもよい。
【0051】
本実施形態では、ガス噴射ノズル対4Aから4Hのうち、4A,4C,4E,4Gの4つのノズル対で前壁2F側のノズルから噴射供給されるガスの流量比が大きくなるように、そして、4B,4D,4F,4Hの4つのノズル対で後壁2R側のノズルから噴射供給されるガスの流量比が大きくなるようにガスの流量比が、5:5より大きく10:0よりも小さい範囲で調整される。
【0052】
第1調整機構40によって一対のガス噴射ノズル毎にそれぞれから噴射供給されるガスの流量比が調整されることにより、一対のガス噴射ノズルから噴射されたガスのうち流量比が大きなノズルからは対向壁に向けたガス量が増し、流量比が小さなノズルからは対向壁に向けたガス量が減少する。
【0053】
図4(a),(b)に示すように、ガス噴射ノズル対4Aから4Hのうち、4A,4C,4E,4Gの4つのノズル対から供給されたガスは、前壁2Fと後壁2Rの中心よりも後壁2R側から燃焼排ガス流路に流入し、ガス噴射ノズル対4Aから4Hのうち、4B,4D,4F,4Hの4つのノズル対から供給されたガスは、前壁2Fと後壁2Rの中心よりも前壁2F側から燃焼排ガス流路に流入する。
【0054】
つまり、複数対のガス噴射ノズル4Aから4Hのうち、前壁2Fに設置されたガス噴射ノズルよりも後壁2Rに設置されたガス噴射ノズルから噴射供給されるガスの流量比を大きくなるように調整した第1ガス噴射ノズル対4B,4D,4F,4Hと、前壁2Fに設置されたガス噴射ノズルよりも後壁2Rに設置されたガス噴射ノズルから噴射供給されるガスの流量比を第1ガス噴射ノズル対4B,4D,4F,4Hとは異なる流量比となるように、ここでは小さくなるように調整した第2ガス噴射ノズル対4A,4C,4E,4Gと、が左右側壁間である奥行き方向に沿って均等に分散されるように交互に設置されている。
【0055】
その結果、燃焼ガス流路内に前壁2F側を流れる燃焼排ガスの緩やかな主流MF1と、後壁2R側を流れる燃焼排ガスの緩やかな主流MF2が形成され、大きな偏流が生じることなく、燃焼排ガスの偏流が緩和されるようになる。
【0056】
また、第2ダンパ機構D2を調整することにより、前壁2F側のガス噴射ノズル4A~4Hから噴射されるガスの総流量と後壁2R側のガス噴射ノズル4A~4Hから噴射されるガスの総流量の比率が可変調整され、燃焼ガス流路内を流れる燃焼排ガスの二本の主流の流れを前壁2F側または後壁2R側の何れかに片寄りを中心側に調整することができる。
【0057】
一対のガス噴射ノズル毎にそれぞれから噴射供給されるガスの流量比を調整可能な第1調整機構40としての第1ダンパ機構D1として図4(a)に示すような構成を採用すると、第1ガス噴射ノズル対4B,4D,4F,4H及び第2ガス噴射ノズル対4A,4C,4E,4Gのそれぞれで個別に異なる値にガスの流量比を調整することも可能になる。
【0058】
第1ガス噴射ノズル対4B,4D,4F,4Hに対して単一の第1ダンパ機構を設けるとともに第2ガス噴射ノズル対4A,4C,4E,4Gに対しても単一の第1ダンパ機構を設けると、各第1ダンパ機構の調整により第1ガス噴射ノズル対4B,4D,4F,4Hに対する流量比、第2ガス噴射ノズル対4A,4C,4E,4Gに対する流量比を一括で同じ値に調整することが可能になる。
【0059】
なお、図7(a),(b)に示すように、複数のガス噴射ノズル対で共用されるように第1ダンパ機構を設けてもよい。図7(a)の例では一対のガス噴射ノズルが6組設けられ、2組ずつにグループ分けされている。複数対のガス噴射ノズル4A~4Fのうち、前壁2Fに設置されたガス噴射ノズルよりも後壁2Rに設置されたガス噴射ノズルから噴射供給されるガスの流量比を大きくなるように調整した第1ガス噴射ノズル対4A,4Dと、前壁2Fに設置されたガス噴射ノズルよりも後壁2Rに設置されたガス噴射ノズルから噴射供給されるガスの流量比を小さくなるように調整した第2ガス噴射ノズル4C,4Fと、前壁2Fに設置されたガス噴射ノズルと後壁2Rに設置されたガス噴射ノズルから噴射供給されるガスの流量比を等しくなるように調整した第3ガス噴射ノズル4B,4Eで構成されている。
【0060】
その結果、図7(b)に示すように、燃焼ガス流路内に前壁2F側を流れる燃焼排ガスの主流MF1と、中央部を流れる燃焼排ガスの主流MF2と、後壁2R側を流れる燃焼排ガスの主流MF3が形成され、大きな偏流が生じることなく、燃焼排ガスの偏流が緩和されるようになる。
【0061】
一次燃焼室2では、乾燥帯で被焼却物の乾燥に伴って蒸気や未燃焼ガスが生じ、燃焼帯で被焼却物のガス化燃焼に伴って未燃分を含む燃焼ガスが生じ、後燃焼帯で固体燃焼に伴って空気リッチな排ガスが生じ、それらが燃焼排ガスとしてくびれ部を介して二次燃焼室に流入する。このときの燃焼排ガスの成分や量などは、ごみの性状や量や分布によって大きく変動するため、二次燃焼室でガスの大きな偏流が生じ易い。また、一次燃焼室へ再循環排ガスを吹き込むことで流れの向きが偏ることもあり得る。偏流が大きいと燃焼排ガス流路内で逆流し、渦状となることがある。
【0062】
燃焼排ガスに偏流が生じると、供給された脱硝剤が燃焼排ガスの流速の高い領域で十分に脱硝できずにNOxが煙道を流下し、燃焼排ガスの流速の低い領域や渦流となる領域で余剰となった脱硝剤がリークアンモニアとして煙道に流下するといった不都合な状況が生じるが、偏流を緩和することにより供給された脱硝剤が効率的に反応に寄与し、脱硝剤の必要量も低減できるようになる。
【0063】
そのような燃焼排ガスの変動に対応すべく、ガス供給制御部43は、温度センサTS1により検出される温度分布が均一になるように第1調整機構40及び/または第2調整機構41を制御するように構成されている。
【0064】
二次燃焼室で生じる偏流により高温部でサーマルNOxが発生し排ガスの流速や量が増えるため、そのような領域の有無を検知するために温度を測定する。従って、複数の流速センサを設けて二次燃焼室を流れる燃焼排ガスの複数点の流速を計測してもよい。
【0065】
温度センサTS1として熱電対が用いられ、燃焼排ガス流路である二次燃焼室3の左右側壁あって、脱硝剤供給機構6が設置された位置よりも上流側の側壁からガスの流れに交差する方向に、つまり前壁2F側から後壁2R側に向けて複数の熱電対(本実施形態では3つ)が内部に挿入設置されている。
【0066】
ガス供給制御部43は、温度センサTS1によって検出される温度の偏差が所定の閾値以内に入るように、つまり近づくように、第1調整機構40により二つの主流MF1,MF2の形成領域を調整するとともに、必要に応じて第2調整機構41により二つの主流MF1,MF2の流量バランスを調整する。
【0067】
燃焼排ガスの流れ方向に沿う大きな偏りの有無が、温度センサにより検出された燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向に沿った複数の温度を指標にして判断され、当該温度が近づくように第1調整機構及び/または第2調整機構が制御されることにより、二次燃焼室3の内部の燃焼排ガスの流れが整えられ、結果として、脱硝剤供給機構6を構成する各脱硝剤噴射ノズル(後述する)から供給された脱硝剤とNOxとの反応が効率的に促進される。
【0068】
例えば、温度センサTS1により検出された温度に基づいて、一次燃焼領域で生じた燃焼排ガスの流量分布や成分分布に大きな偏りが生じたと判断される場合でも、第1調整機構40及び/または第2調整機構41によってガスの総流量比が調整されることにより、ガス供給機構4から供給されるガス量バランスが変動し、その流れに沿って燃焼排ガスの二つの主流MF1,MF2のバランスが調整される。例えば、後壁2R側の温度が前壁2F側の温度より高くなった場合には、後壁2R側のガス噴射ノズル4Aから4Hのガス流量比を大きくすることにより、後壁2R側の温度を下げることができる。
【0069】
[脱硝剤供給機構の構造]
脱硝剤供給機構6は、燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向(本実施形態では水平方向)に設置された複数(本実施形態では左右側壁に各3本)の脱硝剤噴射ノズル60と、脱硝剤噴射ノズル60の近傍温度を検出する温度センサTS2と、温度センサTS2により検出された温度に応じてバルブVを介して各脱硝剤噴射ノズル60からの脱硝剤の噴射時期及び/または噴射量比を個別に制御する脱硝剤供給制御部61と、を備えている。なお、脱硝剤噴射ノズル60は薬剤微細化のために二流体ノズルが採用され、広範囲に噴霧できるように扇型の噴霧パターンで噴射される。温度センサTS2も温度センサTS1と同様に熱電対で構成されている。
【0070】
温度センサTS2により検出された温度を指標にして脱硝反応が効率的に行なえる領域が特定され、当該領域に対応する脱硝剤噴射ノズル60から効率的に脱硝剤が供給されるように、脱硝剤供給制御部61によって、各脱硝剤噴射ノズル60から噴射される脱硝剤の噴射時期及び/または噴射量比が調整される。脱硝剤噴射ノズル60の近傍温度とは、二次燃焼領域のうち脱硝剤噴射ノズル60から噴射供給された脱硝剤により窒素酸化物NOxの還元反応が期待される領域の温度をいう。従って、脱硝剤噴射ノズル60の周囲のみならず脱硝剤が噴射供給される領域の温度も含む概念である。
【0071】
例えば、温度センサTS2により検出される温度が反応効率の良い温度800℃以上になる領域となると脱硝剤の噴射を開始するように制御され、800℃を下回ると脱硝剤の噴射を停止するように制御される。ともに800℃以上であっても3か所の温度センサの値にばらつきがある場合、最も高温を示す領域に対応する脱硝剤噴射ノズル60から噴射される脱硝剤の量が他の脱硝剤噴射ノズル60から噴射される脱硝剤の量よりも多くなるように噴射量比が調整される。
【0072】
なお、脱硝剤としてアンモニア(NH)水が用いられているが、尿素水などの他の脱硝薬剤を用いてもよい。また、温度センサTS2は脱硝剤噴射ノズル60により噴射される領域の温度が検知できればよく、脱硝剤噴射ノズル60の近傍に配置されていれば下流側に配置されていてもよい。
【0073】
以下、脱硝剤供給制御部61の他の制御態様を説明する。
脱硝剤供給機構6より下流側(例えば二次燃焼室の出口部)に燃焼排ガスに含まれるNOx濃度を測定するガスセンサGS1(図2参照)を備え、脱硝剤供給制御部61は、温度センサTS2に加えてガスセンサGS1で検出されるNOx濃度に基づいて脱硝剤噴射ノズル60からの脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比を制御することが好ましい。
【0074】
温度センサTS2の値に基づいて設定した各脱硝剤噴射ノズル60からの脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比に基づいて、ガスセンサGS1により検出されたNOx濃度を指標にして、その濃度のNOxを還元処理できるように、脱硝剤噴射ノズルからの脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比が調整される。
【0075】
燃焼排ガス流路またはその下流側に前記燃焼排ガスに含まれる酸素ガス濃度を検出する酸素ガスセンサGS2、燃焼排ガスの流量を検出する排ガス流量計Qをさらに備え、脱硝剤供給制御部61は酸素ガスセンサGS2で検出される酸素ガス濃度、排ガス流量計Qで検出される燃焼排ガス流量、温度センサTS2で検出される燃焼排ガスの温度に基づいてNOx発生量を推定し、NOx発生量推定値に基づいて脱硝剤噴射ノズル60からの脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比をフィードフォワード制御することが好ましい。
【0076】
酸素ガスセンサ、排ガス流量、燃焼排ガスの温度に基づいてNOx発生量が推定され、推定されたNOx発生量に基づいて必要な脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比が調整される。
【0077】
脱硝剤供給機構6より下流側に燃焼排ガスに含まれるNOx濃度を測定するガスセンサを備え、脱硝剤供給制御部は前記ガスセンサで検出されるNOx濃度に基づいて前記脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比のフィードフォワード制御量を補正制御するように構成してもよい。
【0078】
推定されたNOx発生量に対応する脱硝剤の総噴射量及び/または噴射量比が、ガスセンサによって検出されたNOx濃度に基づいて適正な量に補正される。
【0079】
[シミュレーション結果の説明]
図5(a),(c)には、汎用熱流体解析ソフトFluent ver.18.0を使用し、実機スケールの三次元熱流体解析モデルに基づいて、燃焼排ガス流路である二次燃焼室のガス流を解析した結果が示されている。図中、色の濃い領域は低流速領域、色の薄い領域は高流速領域である。ガス供給機構4から供給されるガスにより一次燃焼領域で生じる燃焼排ガスの流れが調整されている。
【0080】
解析モデルのメッシュ数は約600万であり、乱流モデルにはRealizable k‐εモデル、輻射にはDOモデルを使用した。都市ごみの成分分析結果から可燃分であるC(炭素)、H(水素)、O(酸素)、N(窒素)の組成と発熱量を求め、汎用ソフトの可燃性ガス(wood_vol)の物性として、組成と発熱量に相当する生成エンタルピを与えた。都市ごみの可燃分の燃焼は、渦消散モデルと下式の総括二段階反応によりモデル化した。
wood_vol + a O2 → b CO + c H2O + d N2 (1式)
CO + 0.5O2 →CO2 (2式)
図6(a)にa,b,c,dの値と生成エンタルピの一例を示す。さらに、壁面条件に熱伝達率を設定し、実機でのボイラ吸熱を考慮した。熱流体解析の計算条件として、図6(b)に可燃性ガス、一次燃焼用空気、二次燃焼用空気、再循環ガスの一例を示す。これらの可燃性ガス、一次燃焼用空気、二次燃焼用空気、再循環ガスを各ノズルから供給した場合の燃焼排ガスの流速分布が図5(a),(c)に示されている。
【0081】
図5(c)に示された結果は、図5(d)に示すように、二次燃焼室を形成する一対の対向壁部にそれぞれ複数本のガス噴射ノズルを燃焼排ガスの流れ方向視で対向するように配置し、各ガス噴射ノズル対から等量のガスを供給した場合の結果であり、一次燃焼領域で生じる燃焼排ガスの性状等の変動に対処できず、二次燃焼領域で大きな偏流が生じる結果、高流速領域では脱硝剤供給機構6から供給される脱硝剤が効率的に反応に寄与せず、十分に脱硝できずに窒素酸化物と脱硝剤の双方が煙道に流下してしまう。
【0082】
図5(a)に示された結果は、図5(b)に示すように、二次燃焼室を形成する一対の対向壁部にそれぞれ8本のガス噴射ノズルを燃焼ガスの流れ方向視で対向するように配置し、ガスの流量比を第1ガス噴射ノズル対では約6.7:3.3に、第2ガス噴射ノズル対では3.3:6.7としてガスを供給した場合における本発明によるガス供給機構によって二次燃焼領域に緩やかな燃焼排ガスの主流が複数形成され、偏流が緩和された結果が示されている。この様な燃焼排ガスの主流が複数形成され、偏流が緩和された領域では、温度分布に大きな差が生じない。
【0083】
以上説明したように、本発明による焼却炉の脱硝剤供給方法は、廃棄物を焼却処理する一次燃焼領域と、一次燃焼領域で生じた燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス流路中に脱硝剤を供給するように、燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向に沿って複数の脱硝剤噴射ノズルが配置された脱硝剤供給機構と、脱硝剤供給機構より上流側で燃焼排ガス流路を区画する少なくとも一対の対向壁に燃焼排ガスの流れ方向視で対向するように配置された複数対のガス噴射ノズルと、一対のガス噴射ノズル毎にそれぞれから噴射供給されるガスの流量比を調整可能な第1調整機構と、各対向壁に設置されたガス噴射ノズルのそれぞれから噴射供給されるガスの総流量比を調整可能な第2調整機構と、を含むガス供給機構と、ガス供給機構よりも下流側で前記脱硝剤噴射のノズル近傍または上流側に配置され、燃焼排ガスの流れ方向に交差する方向に沿った複数の温度を検出する温度センサと、を備えている焼却炉の脱硝剤供給方法であって、温度センサにより検出された複数点の温度に応じて各脱硝剤噴射ノズルからの脱硝剤の噴射時期及び/または噴射量比を調整するように構成されている。
【0084】
また、温度センサにより検出される温度が近づくように第1調整機構及び/または前記第2調整機構を調整するように構成されている。
【0085】
以下、別実施形態を説明する。
上述した実施形態では、ガス供給機構を構成する各ガス噴射ノズル対が、対向壁に設置されたそれぞれ1本のガス噴射ノズルで構成された例を説明したが、ガス噴射ノズル対は、燃焼排ガス流路を区画する少なくとも一対の対向壁に、燃焼排ガスの流れ方向視で対向するように設置され、第1調整機構によってそれぞれから噴射供給されるガスの流量比が調整可能であればよく、それぞれ1本のガス噴射ノズルを備えた構成に限るものではない。例えば、一方の側壁に1本のガス噴射ノズルを備え、他方の側壁に2本のガス噴射ノズルを備えていてもよいし、一方の側壁に2本のガス噴射ノズルを備え、他方の側壁に2本のガス噴射ノズルを備えていてもよい。
【0086】
上述した実施形態ではガス供給制御部43が参照する温度センサTS1と、脱硝剤供給制御部が参照する温度センサTS2が個別に設置されているが、温度センサTS2が脱硝剤噴射ノズルの近傍に設置されていれば、温度センサTS1と温度センサTS2を兼用することも可能である。
【0087】
上述した実施形態では、第1調整機構によって調節された結果、複数対のガス噴射ノズルのうち、前壁2Fに設置されたガス噴射ノズルよりも後壁2Rに設置されたガス噴射ノズルから噴射供給されるガスの流量比を大きくなるように調整した第1ガス噴射ノズル対と、前壁2Fに設置されたガス噴射ノズルよりも後壁2Rに設置されたガス噴射ノズルから噴射供給されるガスの流量比を小さくなるように調整した第2ガス噴射ノズル対とが対向壁に沿って奥行き方向に均等に分散設置されるように構成された態様を説明したが、第1調整機構はこの様な態様で構成されるものに限定されるものではない。例えば、偏流の状態に応じて燃焼排ガスの流れ方向視で90度回転させた位置に設置してもよい。
【0088】
即ち、第1調整機構は、複数対のガス噴射ノズル4Aから4Hのうち、対向壁の一方(前壁2F)に設置されたガス噴射ノズルよりも他方(後壁2R)に設置されたガス噴射ノズルから噴射供給されるガスの流量比を大きくなるように調整した第1ガス噴射ノズル対4A,4C,4E,4Gと、対向壁の一方(前壁2F)に設置されたガス噴射ノズルよりも他方(後壁2R)に設置されたガス噴射ノズルから噴射供給されるガスの流量比を異なるように調整した第2ガス噴射ノズル対4B,4D,4F,4Hとが分散配置されるように流量比を調整可能に構成されていればよい。
【0089】
第1ガス噴射ノズル対から噴射されたガスは、燃焼排ガスの流れ方向視で中央部よりも対向壁の一方側に多く供給され、第2ガス噴射ノズル対から噴射されたガスは、燃焼排ガスの流れ方向視で中央部よりも対向壁の他方側に多く供給される。第1ガス噴射ノズル対と第2ガス噴射ノズル対が分散配置されるように流量比が調整されることにより、燃焼排ガスの流れ方向視で特定の箇所に偏ることなく分散するようにガスが供給され、その流れに沿って燃焼排ガスの流れが調整されるようになり、一部に偏った大きな偏流の偏りが緩和され、脱硝剤供給機構から供給された脱硝剤との反応が分散して効率的に進むようになる。
【0090】
例えば、第1調整機構によって個々のノズル対からの流量比を調整することにより、前壁2Fと後壁2R間のガス流の調整のみならず左右側壁間のガス流の調整も可能になる。
【0091】
上述した実施形態では、燃焼排ガス流路を区画する前壁2F及び後壁2Rを一対の対向壁として、燃焼排ガスの流れ方向視で対向するようにガス供給機構4を構成する複数対のガス噴射ノズルを設置し、ガス噴射ノズルの設置位置よりも下流側で燃焼排ガス流路を区画する左右側壁に脱硝剤供給機構6を構成する脱硝剤噴射ノズルを設置した構成を説明したが、ガス噴射ノズル及び脱硝剤噴射ノズルの設置位置を燃焼排ガスの流れ方向視で90度回転させてもよい。
【0092】
即ち、燃焼排ガス流路を区画する前壁2F及び後壁2Rに脱硝剤供給機構6を構成する脱硝剤噴射ノズルを設置するとともに、燃焼排ガス流路を区画する左右側壁に燃焼排ガスの流れ方向視で対向するようにガス供給機構4を構成する複数対のガス噴射ノズルを設置してもよい。この場合、ガス供給機構4よりも下流側に設置された温度センサTS1及び脱硝剤噴射ノズル60の近傍に配置された温度センサTS2も同様に、燃焼排ガスの流れ方向視で90度回転させることはいうまでもない。
【0093】
上述した実施形態ではストーカ式焼却炉を例にして、一次燃焼領域で生じた燃焼排ガスの整流を行なうガス供給機構と、整流された燃焼排ガスに脱硝剤を供給する脱硝剤供給機構とを備える燃焼排ガス流路の構成について説明したが、本発明が適用される燃焼排ガス流路は二次燃焼室に限るものではなく、一次燃焼領域で生じた燃焼排ガスの整流を行なうガス供給機構と、整流された燃焼排ガスに脱硝剤を供給する脱硝剤供給機構とを備える燃焼排ガス流路を備えている他の焼却炉にも適用可能である。
【0094】
尚、上述した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各部の具体的な構造、形状、材料、サイズ等を適宜変更設計できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0095】
1:ごみ焼却炉
2:一次燃焼室(一次燃焼領域)
3:二次燃焼室(燃焼排ガス流路)
4:ガス供給機構
4A~4H:ガス噴射ノズル対
6:脱硝剤供給機構
40:第1調整機構
41:第2調整機構
43:ガス供給制御部43
60:脱硝剤噴射ノズル
61:脱硝剤供給制御部
A:プラットホーム
B:ごみピット
C:クレーン機構
D:ごみ投入ホッパ
E:焼却炉本体
F:廃熱ボイラ
G:エコノマイザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7