(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】スロットル装置
(51)【国際特許分類】
F02D 9/10 20060101AFI20220830BHJP
F02D 9/00 20060101ALI20220830BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
F02D9/10 H
F02D9/00 A
F02D9/02 351M
F02D9/02 361J
(21)【出願番号】P 2018008805
(22)【出願日】2018-01-23
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 大輔
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-113260(JP,A)
【文献】特開2000-234905(JP,A)
【文献】特開2011-089949(JP,A)
【文献】特開2001-289068(JP,A)
【文献】特開2010-019137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸気ポートを有するエンジンに装着されるスロットル装置であって、
第1の吸気通路が形成された第1のスロットルボディおよび第2の吸気通路が形成された第2のスロットルボディと、
前記第1の吸気通路内に設けられた第1のスロットルバルブおよび前記第2の吸気通路内に設けられた第2のスロットルバルブと、
前記第1および第2のスロットルバルブを支持するスロットルシャフトと、
前記スロットルシャフトを介して前記第1および第2のスロットルバルブを開閉駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータおよび前記スロットルシャフトの間に介在する回転伝動機構と、
前記回転伝動機構中の変位を検出するポジションセンサと、を備え、
前記回転伝動機構は、前記アクチュエータによって駆動される第1伝動部材と、前記第1伝動部材に対し連動可能であるとともに前記スロットルシャフトに回転方向一体に結合された第2伝動部材とを有しており、
前記第2伝動部材の変位を検出する前記ポジションセンサと前記回転伝動機構は、前記第1および第2のスロットルボディの間に配設されており、
前記ポジションセンサは、前記第2伝動部材に支持された可動側検出要素と前記回転
伝動機構が収納される収納カバーに配置された固定側検出要素とによって構成されており、
前記固定側検出要素が、前記可動側検出要素の角度変位を検出するよう構成され、
前記可動側検出要素が、前記スロットルシャフトの半径方向延びるとともに一面側で前記回転伝動機構を覆う前記収納カバーに対向する前記第2伝動部材の面上に配置され、
前記第2のスロットルボディは、前記アクチュエータを収納する収納部を有し、
前記第1および第2のスロットルボディが互いに隣り合う方向に一体に締結され、
締結された両スロットルボディの一方側で、前記第1のスロットルボディが、前記回転伝動機構を覆う前記収納カバーに一体に結合するとともに、
両スロットルボディの他方側で、前記第2のスロットルボディが、前記アクチュエータを収納する前記収納部を一体化させていることで、
前記第1の吸気通路と前記第2の吸気通路との間に前記ポジションセンサが配置されていることを特徴とするスロットル装置。
【請求項2】
一体に締結された前記第1のスロットルボディ
および前記第2のスロットルボディと前記スロットルシャフトの間に介装され、前記
第1および第2のスロットルバルブを所定開度位置に付勢する捩りコイルばねをさらに備えており、
前記ポジションセンサは、前記捩りコイルばねの配置領域より半径方向外方側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスロットル装置。
【請求項3】
前記ポジションセンサの前記可動側検出要素が、前記第2伝動部材の歯幅方向一端側の側面上に配置されたマグネットまたはブラシで構成されており、
前記ポジションセンサの前記固定側検出要素が、ホール素子または抵抗被膜で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスロットル装置。
【請求項4】
前記可動側検出要素および前記固定側検出要素が、前記第2伝動部材の半径方向に対向するとともに、前記可動側検出要素が、前記第2伝動部材の前記第1伝動部材との連動用の噛合歯部に対して半径方向で反対側に配置されていることを特徴とする請求項1、2または3に記載のスロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットル装置に関し、特にエンジンの吸気経路上の複数のスロットルバルブを共通するアクチュエータにより開度制御する多連式のスロットル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多気筒内燃エンジンの電子スロットル装置、特に二輪車に搭載されるエンジンのスロットル装置においては、吸気ポート付近の複数の吸気通路中に配置される複数のスロットルバルブを共通の電動アクチュエータで駆動し連動させるバイワイヤ方式の多連式のものが多用されている。
【0003】
この種のスロットル装置としては、例えばスロットルバルブを支持するスロットルシャフトを減速機構付きのモータで駆動する一方、スロットルシャフトの回動(角度変位)をこれと平行に配置されたセンサシャフトに歯車伝動し、その角度変位をスロットルバルブの開度としてスロットルポジションセンサにより検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この装置では、スロットルシャフトからセンサシャフトへの回転伝動用のギヤと、センサシャフト、スロットルポジションセンサおよび減速機構付きのモータが、複数の吸気通路が隣り合う方向(気筒配列方向)の中央側に設定されており、モータからスロットルシャフトへの回転伝動用のギヤトレーンがスロットルボディの端部に位置することによってそのスロットルボディの全幅が増大することを防止することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来のスロットル装置にあっては、複数の吸気ポートが隣り合う気筒配列方向におけるスロットルボディの中央付近に、スロットルシャフトとは別軸のセンサシャフトが設けられるのに加えて、スロットルシャフトからセンサシャフトへの回転伝動用のギヤ、センサシャフト、スロットルポジションセンサおよび減速機構付きのモータ等が集中して配置されていたため、気筒配列方向における中央の2つの吸気通路の間隔を広くせざるを得なかった。
【0007】
そのため、スロットルバルブ開度制御用の回転伝動機構(ギヤトレーン)やスロットルポジションセンサを、それぞれスロットルボディの全幅範囲外に突出させないものではあっても、全体としてスロットル装置のコンパクト化を図ることが容易でないばかりか、センサシャフトやその軸端部のセンサ配置等に伴って、スロットル装置の上下方向での配置の自由度が制限されてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決すべくなされたものであり、ポジションセンサをスロットルボディの全幅範囲外に突出させて配置せずに済み、かつ、装置のコンパクト化および配置の自由度拡大を図ることができるスロットル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスロットル装置は、上記目的達成のため、複数の吸気ポートを有するエンジンに装着されるスロットル装置であって、吸気通路が形成された複数のスロットルボディと、前記吸気通路内にそれぞれ開度制御可能に設けられたスロットルバルブと、前記スロットルバルブを支持するスロットルシャフトと、前記スロットルシャフトを介して前記スロットルバルブを開閉駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータおよび前記スロットルシャフトの間に介在する回転伝動機構と、前記回転伝動機構中の変位を検出するポジションセンサとを備え、前記回転伝動機構は、前記アクチュエータによって駆動される第1伝動部材と、前記第1伝動部材に対し連動可能であるとともに前記スロットルシャフトに回転方向一体に結合された第2伝動部材とを有しており、前記第2伝動部材の変位を検出する前記ポジションセンサと前記回転伝動機構は、前記複数のスロットルボディの間に配設されているものである。
【0010】
この発明のスロットル装置では、第1伝動部材がアクチュエータにより駆動されると、これに係合する第2伝動部材と一体にスロットルシャフトが回動し、スロットルバルブ開度が変化する。そして、第2伝動部材の角度変位がポジションセンサによって検知され、スロットルバルブの開度が検出される。したがって、スロットルシャフトの角度変位をポジションセンサに検出させるために、センサシャフトその他の別部材の伝動要素といった吸気通路周りの機能部位を設ける必要が無く、気筒配列方向に隣り合う2つの吸気通路の間隔を狭めることができることとなる。
【0011】
本発明のスロットル装置において、前記複数のスロットルボディは、第1の吸気通路を有する第1のスロットルボディと、第2の吸気通路を有し、前記アクチュエータを収納する収納部を有する第2のスロットルボディとからなり、前記第1の吸気通路と前記第2の吸気通路との間に前記ポジションセンサを有する構成とすることができる。その場合、吸気通路周りの機能部位を極力減らし、スロットルボディの肉厚部位を減らすことが可能なため、スロットルボディの大型化を抑えることができる。
【0012】
本発明のスロットル装置においては、前記スロットルバルブは、前記第1の吸気通路に設けられた第1のスロットルバルブと、前記第2の吸気通路に設けられた第2スロットルバルブとからなり、前記第1のスロットルバルブと前記第2スロットルバルブは、同一の前記スロットルシャフトに固定されている構成とすることができる。この場合、第2伝動部材の角度変位を検出するポジションセンサが1つで済むため、スロットル装置全体としてコンパクト化でき、車両のレイアウト上の自由度が高くなる。
【0013】
本発明のスロットル装置においては、前記ポジションセンサは、前記第2伝動部材に支持された可動側検出要素と前記回転伝導機構が収納される収納カバーに配置された固定側検出要素とによって構成されていてもよい。また、前記可動側検出要素は、前記スロットルシャフトの半径方向延びる前記第2伝動部材の面上に配置されている構成とすることができる。そのようにすると、第2伝動部材の対向面上に可動側検出要素が配置され得ることから、実装が容易でかつその設置スペースが少なくて済み、回動半径方向の設置の自由度も高くなる。また、可動側検出要素の回動を検知する固定側検出要素のその固定配置も容易となる。前記スロットルボディと前記スロットルシャフトの間に介装され、前記スロットルバルブを所定開度位置に付勢する捩りコイルばねをさらに備えている場合、前記ポジションセンサは、前記捩りコイルばねの配置領域より半径方向外方側に配置され得る。本発明のスロットル装置は、さらに、前記ポジションセンサの前記可動側検出要素が、前記第2伝動部材の歯幅方向一端側の側面上に配置されたマグネットまたはブラシで構成されており、前記ポジションセンサの前記固定側検出要素が、ホール素子または抵抗被膜で構成されているものであってもよい。そのようにすると、少ない部品点数で可動側検出要素の変位を検出可能な簡素なポジションセンサとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポジションセンサをスロットルボディの全幅範囲外に突出させて配置せずに済み、スロットル装置のコンパクト化および配置の自由度拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスロットル装置の要部の概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るスロットル装置を4気筒エンジンに実装する場合のその全体の概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るスロットル装置の4気筒エンジンへの実装形態を示すその正面図である。
【
図5】4気筒エンジンに搭載される2つのスロットル装置を従来配置とした2つの例を示すそれぞれの正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るスロットル装置を3気筒エンジンに実装する場合のその全体の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を引用しつつ説明する。
【0017】
(一実施形態)
図1ないし
図4は、本発明の一実施形態に係るスロットル装置の構成を示している。
【0018】
まず、その構成について説明する。
【0019】
図1および
図2に示すように、本実施形態のスロットル装置10は、多気筒内燃エンジン、例えば二輪車用の4気筒のエンジン1に適応される多連式のものである。なお、ここではエンジン1については、詳述しないが、二輪車の前後方向(
図2の紙面に垂直な方向)に延びる車体フレームに対し複数の気筒1cが左右方向(車幅方向)で互いに隣り合うように、すなわちクランク軸が車幅方向に延びる横置き状態で搭載されている。また、
図3に示すように、エンジン1に対し一対のスロットル装置10(同図中10A、10B)が左右に隣り合うように並列配置されている。
【0020】
図1に示すように、スロットル装置10は、吸気通路12a(第1の吸気通路)を有するスロットルボディ部11a(第1のスロットルボディ)と、吸気通路12b(第2の吸気通路)を有するスロットルボディ部11b(第2のスロットルボディ)と、スロットルボディ部11a、11bに軸回りに回転可能に支持された共通(同一)のスロットルシャフト14と、スロットルシャフト14を介して複数のスロットルバルブ13a、13bを開閉駆動することができるモータ15および回転伝動機構20とを備えている。
【0021】
また、回転伝動機構20は、隣接するスロットルバルブ13aとスロットルバルブ13bとの間の位置でスロットルシャフト14に接続されるようスロットルボディ部11aおよび11bの間に配設されており、スロットルボディ部11aおよび11bの中間位置に設けられることで、スロットルシャフト14の略中心位置に動力伝達可能になっている。
【0022】
スロットルボディ部11a、11bは、それぞれ円形断面の内周壁面を有するとともに並列に設けられており、複数の吸気ポート1aに連通する複数の吸気通路12a、12b(マニホールドの場合は複数の枝通路)を形成している。また、それぞれの吸気通路12a、12b内には、複数のスロットルバルブ13a、13bが開度制御可能に設けられている。なお、
図1中では、複数のスロットルボディ部11a、11bとそれらの間の回転伝動経路の周辺以外のボディ部分(後述するユニットボディ11)の形状を、四角形で略示している。また、複数のスロットルバルブ13a、13bは、それぞれ弁開閉方向に回動する方式、例えばバタフライ式のものであるが、他方式のものでもよい。
【0023】
スロットルシャフト14は、その両端側の一定長さ領域で複数のスロットルバルブ13a、13bを回動可能に支持する回動中心軸として機能するとともに、その軸央部において回転伝動機構20を介しモータ15からの回転(角度)操作量に応じて回動することで、複数のスロットルバルブ13a、13bの開度を制御することができるようになっている。
【0024】
モータ15は、アクチュエータ、例えばステップモータその他のパルスモータであり、二輪車両のアクセル操作に応じた加速要求入力に基づいて、スロットルバルブ13a、13bに要求される開度位置(スロットルポジション)に対応するスロットルシャフト14の回転角度位置を制御することができるようになっている。
【0025】
回転伝動機構20は、モータ15の回転出力軸に一体に装着されたピニオン21と、ユニットボディ11に軸回りに回転可能に支持されつつピニオン21に噛み合い係合するアイドラーギヤ22と、スロットルシャフト14に一体結合されつつアイドラーギヤ22に噛み合い係合するコントロールギヤ23と、を含んで構成されている。
【0026】
すなわち、回転伝動機構20は、車両の左右方向に隣り合う各一対の吸気通路12a、12bの間に、モータ15によって駆動される第1伝動部材としての歯車であるピニオン21と、このピニオン21に対し連動可能であるとともにスロットルシャフト14に回転方向一体に結合された第2伝動部材としての歯車であるコントロールギヤ23と、を有し、さらに、両歯車間に介在するアイドラーギヤ22を有している。
【0027】
この回転伝動機構20は、ピニオン21、アイドラーギヤ22、コントロールギヤ23の順にピッチ円半径が大きくなっており、これらがモータ15およびスロットルシャフト14の間に介在することで、減速機能および高精度位置決め機能を発揮することができるようになっている。
【0028】
スロットル装置10には、さらに、コントロールギヤ23に支持された可動側検出要素31と、可動側検出要素31の角度変位(変位)を検出可能な固定側検出要素32とが設けられている。そして、これら可動側検出要素31および固定側検出要素32によって、スロットルシャフト14およびコントロールギヤ23の角度変位、すなわちスロットルバルブ13a、13bの開度に対応する回転伝動機構20中の特定部位の変位を検出し、ポジション信号Pthを出力するポジションセンサ30(スロットルポジションセンサ)が構成されている。
【0029】
このポジションセンサ30の可動側検出要素31は、コントロールギヤ23の歯幅方向一端側の側面上に配置されたマグネット(N/Sの磁極を交互に配置した磁気パターンでもよい)またはブラシで構成されており、一方、ポジションセンサ30の固定側検出要素32は、ホール素子または抵抗被膜で構成されている。
【0030】
図2に、本スロットル装置10を4気筒のエンジン1に適応するレイアウトで例示する。同図において、エンジン1の気筒配列方向に一列に並ぶ複数の吸気ポート1aを2気筒分ずつ覆うそれぞれ全幅W1の2つのスロットル装置10は、それぞれスロットルボディ部11a、11bを一体化したユニットボディ11を有している。そして、各ユニットボディ11には、複数の吸気ポート1aに連通する吸気通路12a、12bが並列に並ぶようにスロットルボディ部11a、11bが隣接して設けられており、それぞれの吸気通路12a、12b内には、複数のスロットルバルブ13a、13bが開度制御可能に設けられている。
【0031】
図3および
図4に、本スロットル装置10を二輪車用の4気筒のエンジン1に適応した場合の一形態を示す。ユニットボディ11には、複数の吸気通路12a、12b内に燃料噴射可能な複数の燃料噴射弁41と、これら複数の燃料噴射弁41に燃料を分配および供給する燃料パイプ42と、が装着されている。また、ユニットボディ11は、回転伝動機構20を片面側で覆うギヤカバー部11c
(収納カバー)をスロットルボディ部11aまたは11bのいずれか一方と一体に結合した第1セグメントボディ11f(第1のスロットルボディ)と、モータ15を収納するモータカバー部11d(収納部)をスロットルボディ部11bまたは11aのいずれか他方に一体化した第2セグメントボディ11s(第2のスロットルボディ)とを、スロットルボディ部11a、11bの隣り合う方向(
図3中の左右方向)に一体に締結したものである。そして、第1セグメントボディ11fおよび第2セグメントボディ11sのそれぞれに燃料噴射弁41が装着され、第1セグメントボディ11fおよび第2セグメントボディ11sを連結するように燃料パイプ42が装着されている。
【0032】
図1、
図3および
図4に示すように、可動側検出要素31は、ギヤカバー部11cに対向するコントロールギヤ23の対向面23a(一側面、シャフト半径方向の面)上に配置されている。固定側検出要素32は、ギヤカバー部11cに装着されている。これにより、ポジションセンサ用に別ケースを設ける必要が無い。なお、可動側検出要素31および固定側検出要素32は、それぞれコントロールギヤ23を所定の回転角度位置に付勢する捩りコイルばね16等の付勢手段や軸受(図示せず)等が設けられる場合に、その捩りコイルばね16等の配置領域より半径方向外方側に配置するのがよい。ここにいう捩りコイルばね16等の付勢手段は、例えばユニットボディ11とスロットルシャフト14またはコントロールギヤ23との間に介装され、スロットルシャフト14の軸回りでスロットルバルブ13a、13bを所定開度位置(典型的には閉弁位置)に付勢するものであり、所定の回転半径位置とは、捩りコイルばね16等の付勢手段の設置に必要な半径領域の外側の任意の半径位置である。
【0033】
次に、作用について説明する。
【0034】
本実施形態のスロットル装置10では、二輪車両のアクセル操作に応じた加速要求入力に応じて、ピニオン21がモータ15により駆動されると、これ係合するコントロールギヤ23と一体にスロットルシャフト14が回動し、スロットルバルブ13a、13bの開度が変化する。すなわち、スロットルバルブ13a、13bに要求される開度位置に対応するスロットルシャフト14の回転角度位置の制御が実行される。
【0035】
この回転角度位置の制御中、コントロールギヤ23の対向面23a(側面)上に支持された可動側検出要素31の角度変位が、スロットルシャフト14に直結するコントロールギヤ23の回転角度位置として、ギヤカバー部11c側に設けられた固定側検出要素32によって検知され、スロットルバルブ13a、13bの開度が検出される。
【0036】
本実施形態では、スロットルシャフト14の角度変位をポジションセンサ30に伝達するために、センサシャフト等その他の別部材の回転伝動要素(吸気通路周りの機能部位)を設ける必要が無い。したがって、回転伝動機構20を挟んでエンジン1の気筒配列方向に隣り合う2つの吸気通路12a、12bの間隔d1(
図2参照)およびそれに対応するユニットボディ11の肉厚部(回転伝動機構20を取り囲む部分)の幅寸法を小さく抑えることができることとなる。
【0037】
また、本実施形態では、ユニットボディ11を2つ組み合わせて4気筒のエンジン1に適応させており、中央の2つのスロットルバルブ部11a、11bの間の間隔d2を狭めることができる。さらに、4気筒のエンジン1に対し、2つのユニットボディ11を組み合わせることにより、設置の自由度も高くなる。
【0038】
さらに、ポジションセンサ30の可動側検出要素31は、ユニットボディ11のギヤカバー部11cに対向するコントロールギヤ23の対向面23a上に配置され、可動側検出要素31の回動を検知する固定側検出要素32のその固定配置も、コントロールギヤ23の対向面23aの回転半径領域における第1セグメントボディ11f(スロットルボディ)のギヤカバー部11cの対向面付近となる。よって、スロットル装置10におけるポジションセンサ30の実装形態が非常にコンパクトで、かつその実装作業が容易なものとなる。これにより、ポジションセンサの配置が容易でかつ配置スペースが少なくて済み、さらに吸気通路12a、12bの間隔d1を狭めることができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、ポジションセンサ30の可動側検出要素31および固定側検出要素32が、それぞれコントロールギヤ23の所定の回転半径位置に配置されているので、半径方向内方側に他の部材、例えばコントロールギヤ23を所定の角度位置に付勢する捩りコイルばね16等が配置されていたとしても、その半径方向外側にポジションセンサを配置でき、かつ、十分な検出精度が得られる。
【0040】
加えて、本実施形態では、コントロールギヤ23の歯幅方向一端側の側面である対向面23a上に配置されたマグネットまたはブラシで可動側検出要素31が構成される一方、ホール素子または抵抗被膜で固定側検出要素32が構成されているので、コンパクトで構成の簡素なポジションセンサ30となり、全幅W1を抑えたコンパクトなスロットル装置10の提供が可能となる。
【0041】
このように、本実施形態によれば、ポジションセンサ30を従来のようにスロットルボディの全幅の範囲外に突出させて配置せずに済み、スロットル装置10のコンパクト化および配置の自由度拡大を図ることができる。よって、スロットル装置10を実装するエンジン1の二輪車体フレームへの搭載性を高めることができる。
【0042】
図5に、エンジンの4気筒に対応する従来配置のスロットル装置110、120を示す。同図において、モータ111、121からスロットルシャフト(符号なし)への回転伝動をなす歯車伝動機構112、122とポジションセンサ113、123とを、それぞれのスロットルシャフトの両端側に配置している。この場合、ポジションセンサ113、123によりスロットルシャフトの角度変位を直接検出でき、モータ111、121側にセンサを設ける場合のように伝動経路のガタによる誤差を含まないものにできるが、両スロットルポジションセンサ113、123および歯車伝動機構112、122の存在によってスロットル装置110、120の全幅Wa1、Wb2がスロットルボディ115、125の全幅に対して、歯車伝動機構112、122または、スロットルポジションセンサ113、123の幅分、それぞれ大きくなってしまうこととなる。
【0043】
本発明のスロットル装置は、従来、スロットルシャフトの端部側に配置していた歯車伝動機構、ポジションセンサを2つのスロットルボディの間に配置することにより、従来のスロットル装置に比べ、スロットル装置の全幅を狭めることができ、エンジンに対する搭載性の向上に寄与できる。さらに、ポジションセンサをスロットルシャフトの中央に配置することで、スロットルシャフトのねじれによる精度誤差等の影響を受けることなく良好な検出精度を担保でき、歯車伝動機構を収容するケース内に設けることで、さらに全幅W1を狭めることができ、二輪車への艤装性を高めることができる。
【0044】
なお、前述の実施形態においては、4気筒エンジンに搭載されるスロットル装置としたが、本発明は、2気筒以上のエンジンに実装されるスロットル装置にも適用可能である。例えば、
図6に示すように3気筒のエンジン1に実装される場合、
図1に示すような一実施形態の要部と同様の2気筒分のスロットル装置10Aと、その片側のスロットルバルブ13を除去し、スロットルシャフト14の一部14´を残した1気筒分の第3セグメントボディ11tを有するスロットル装置10Bとを、組み合わせて実装することができる。この場合も、エンジン1の全幅W2を抑え、二輪車体フレーム内への配置が容易な搭載性の高いものにできる。
【0045】
また、回転伝動機構20は、3つの歯車を用いるもので例示したが、歯車の数は任意であるし、回転伝動要素が歯車以外であってもよい。2気筒分ずつのスロットル装置10を気筒配列方向に複数配置する場合、
図2に示すように回転伝動機構20に対しモータ15を車体左右方向の一方側に配置するのでなく、他の装備との関係で重心を考慮しつつ、車体左右方向の両側に反転して配置してもよい。
【0046】
さらに、スロットル開度を検出するポジションセンサ30の可動側検出要素31および固定側検出要素32は、コントロールギヤ23の歯幅方向に対向するものとしたが、コントロールギヤ23の噛合歯部はスロットルバルブ13の回動位置制御に足りる範囲にのみ形成され、全周に形成されていないので、可動側検出要素31および固定側検出要素32は、欠歯側の所定角度範囲内でコントロールギヤ23の半径方向に対向するように配置することも可能である。
【0047】
以上説明したように、本発明は、ポジションセンサをスロットルボディの全幅範囲外に突出させて配置せずに済み、スロットル装置のコンパクト化および配置の自由度拡大を図ることができるという効果を奏するものであり、エンジンの吸気経路上の複数のスロットルバルブを共通するアクチュエータにより開度制御する多連式のスロットル装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 エンジン
1a 吸気ポート
10 スロットル装置
11 ユニットボディ(スロットルボディ)
11a スロットルボディ部(第1のスロットルボディ)
11b スロットルボディ部(第2のスロットルボディ)
11c ギヤカバー部(収納カバー)
11d モータカバー部(収納部)
11f 第1セグメントボディ(第1のスロットルボディ)
11s 第2セグメントボディ(第2のスロットルボディ)
12a、12b 吸気通路
13a、13b スロットルバルブ
14 スロットルシャフト
15 モータ(アクチュエータ)
16 捩りコイルばね(付勢手段)
20 回転伝動機構
21 ピニオン(第1伝動部材、歯車)
22 アイドラーギヤ(歯車)
23 コントロールギヤ(第2伝動部材、歯車)
23a 対向面(一側面、シャフト半径方向の面)
30 ポジションセンサ(スロットルポジションセンサ)
31 可動側検出要素(マグネットまたはブラシ)
32 固定側検出要素(ホール素子または抵抗被膜)
41 燃料噴射弁
42 燃料パイプ
d1 間隔
W1 全幅