(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】塗工白板紙
(51)【国際特許分類】
D21H 21/28 20060101AFI20220830BHJP
D21H 19/84 20060101ALI20220830BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
D21H21/28 A
D21H19/84
D21H27/00 E
(21)【出願番号】P 2018088357
(22)【出願日】2018-05-01
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】稲田 周平
(72)【発明者】
【氏名】吉松 丈博
(72)【発明者】
【氏名】関 順子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和也
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060975(JP,A)
【文献】特開2017-082386(JP,A)
【文献】特開2015-132023(JP,A)
【文献】特開2006-169707(JP,A)
【文献】特開2017-031544(JP,A)
【文献】特開2009-155746(JP,A)
【文献】特開2006-022439(JP,A)
【文献】特開2006-283223(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106436458(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-D21J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表層、中層および裏層の3層を有する基紙と、前記表層の表面に、顔料および接着剤を含有する顔料塗工層を備える塗工白板紙において、
前記裏層が印刷古紙パルプからなり、かつ、黄色色材により着色された層であることを特徴とする塗工白板紙
であって、
前記裏層の色相が、JIS P 8150による紫外線を含む光源によるb
*
値が、b
*
=0以上15以下であり、
前記黄色色材の添加量は、裏層の全パルプ100重量部に対して、0.01重量部以上0.1重量部以下であることを特徴とする塗工白板紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工白板紙に関する。特に、本発明は、非顔料塗工面も印刷映えや高級感のある塗工白板紙に関する。
【背景技術】
【0002】
白板紙は、通常2~9層の多層基紙構造からなる厚紙で、環境に対する取組みやコストダウンに対する要求が高まっていることから、古紙パルプが多く使用されている。例えば、表層には、晒パルプまたは脱墨パルプあるいは漂白された白色度の高い古紙パルプが、また中層、裏層にはより白色度が低く、安価な脱墨パルプおよび脱墨しない古紙パルプが使用されている。年々古紙パルプの配合比率は上昇し、グレードの低い白板紙では古紙パルプはほぼ100%配合されるほどになっている。こうした状況の中、古紙配合率増加に伴う基紙の問題として、塵、黒点等の欠陥、および白色ムラの発現の増加がある。塵等の異物を除去するために、脱墨工程や除塵工程を強化する対策がなされ、脱墨技術や除塵装置の進歩により塵の問題は大幅に改善されてきているが、まだ完全に除去できるほどまでは至っていない。脱墨処理や除塵処理を強化するほど、歩留が悪化し、経済的に不利になることから、現状では、一定のレベル以上には脱墨、除塵処理は施されない。
【0003】
塗工白板紙は、多層抄きされた基紙に顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工した顔料塗工層を有する白板紙であり、主として、食品、化粧品、医薬品、石鹸、ギフト品等の包装箱に使用されている。内包した商品をアピールするためオフセット印刷やグラビア印刷、近年ではインクジェット印刷等の各種印刷方式により塗工白板紙表面に印刷が施された後に、打ち抜き、糊付け等の各種の後加工を施されて紙器に加工される。この塗工白板紙は、基紙構成および塗工層形成状態の違いから、高級白板紙、特殊白板紙、塗工白ボールに分類される。高級白板紙は全層に化学パルプが使用されることが多く、両面に塗工層が設けられた白板紙であり、特殊白板紙は、表層および裏層には化学パルプが、それらより内側の層には古紙が利用され、両面あるいは片面に塗工層が設けられた白板紙であり、これら高級白板紙と特殊白板紙はマニラボールと称されている。また、塗工白ボールは、表層には化学パルプが、裏層およびそれらより内側の層には古紙が用いられ、片面に塗工層が設けられた白板紙である。
片面にのみ顔料塗工層を有する塗工白ボールは、菓子箱用途などに多用されており、顔料塗工面にのみ印刷することが想定されたものであるが、近年、塗工白ボールの裏面、すなわち非顔料塗工面にも説明書きやイラストが印刷される場合も増えており、裏面についても外観品質や印刷適性、印刷品質に対する要求が高まっている。このため、裏面にも顔料塗工層を有する塗工白ボールも提案(例えば、特許文献1、2等)されているがコスト高となるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-266283号公報
【文献】特開2000-192395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、裏面に顔料塗工層を有することなく、裏面についても外観品質および印刷適性に優れ、かつ、印刷された画像の見栄えも良好な塗工白板紙の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、塗工白板紙の基紙における裏層を、印刷古紙パルプからなり、かつ、黄色色材により着色された層とすることにより、外観性に高級感があり裏面印刷が映え、さらに印刷適性に優れる塗工白板紙が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.少なくとも表層、中層および裏層の3層を有する基紙と、前記表層の表面に、顔料および接着剤を含有する顔料塗工層を備える塗工白板紙において、
前記裏層が印刷古紙パルプからなり、かつ、黄色色材により着色された層であることを特徴とする塗工白板紙。
2.前記裏層の色相が、JIS P 8150による紫外線を含む光源によるb*値が、b*=0以上15以下であることを特徴とする、1.記載の塗工白板紙。
3.前記黄色色材の添加量は、裏層の全パルプ100重量部に対して、0.01重量部以上0.1重量部以下であることを特徴とする、1.または2.に記載の塗工白板紙。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基紙の裏層が印刷古紙パルプから構成されていても、この裏層は黄色色材により着色されているため外観性に高級感があり、菓子箱などの包装箱としての使用に好適な塗工白板紙を提供することができる。
しかも、本発明の塗工白板紙は、その裏面に顔料塗工層を有していないにも関わらず、裏面に説明書きやイラストを印刷した場合においても印刷映えが良好であり、外観性に優れ、さらには印刷適性に優れるという特徴を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の塗工白板紙について詳細に説明する。なお、本明細書において「印刷古紙パルプ」とは、雑誌古紙パルプなど印刷された古紙を意味し、未印刷古紙は含まない。
【0010】
<基紙について>
本発明の塗工白板紙における基紙は、少なくとも表層、中層および裏層の3層のパルプ層(紙層)を多層抄きしたものであり、裏層の基紙が印刷古紙パルプから構成されているものである。
本発明の基紙における裏層に使用する印刷古紙パルプは、印刷された紙類を原料とするものであればよく、原料の印刷古紙としては、新聞古紙、雑誌古紙、雑紙、チラシ古紙、色上古紙、模造紙等の中質古紙、低質古紙などが挙げられる。印刷古紙パルプとしては、脱墨していてもしていなくてもよいが、脱墨しているものが好ましい。
この裏層の坪量は、15~40g/m2であることが好ましい。より好ましくは18~35g/m2である。裏層の坪量が15g/m2未満では、中層に存在する塵、色ムラを覆い隠すことができない場合がある。また、裏層は黄色色材により着色された層であるため、この坪量が40g/m2を超えると、使用する黄色色材が多く必要となるため、コスト的に好ましくない。
【0011】
本発明の基紙における表層、中層は、一般に塗工白板紙の基紙に使用されるものを例外なく使用できるが、古紙パルプが配合されていることが好ましい。古紙パルプを多く含む、または脱墨されていないパルプを多く含有する基紙を用いることはコスト面でも有利であり、また、環境負荷も低くなる。古紙パルプとしては、脱墨してもしなくてもよく、脱墨パルプとしては、上質紙、中質紙、下級紙、新聞紙、チラシ、雑誌などの選別古紙やこれらが混合している無選別古紙を原料とする脱墨パルプなどを使用できる。古紙パルプの配合量は、基紙全体のパルプ中50重量%以上、好ましくは80重量%以上とすることができる。また、古紙パルプ以外のパルプは特に制限されず、クラフトパルプ、亜硫酸パルプなどの化学パルプ;サーモメカニカルパルプ、加圧砕木パルプなどの機械パルプ;ケミサーモメカニカルパルプなどの半化学パルプが使用できる。使用するパルプは、これら各種パルプを混合したものでもよいし、同一のパルプを用いたものでもよい。また、異なるパルプを含有する紙層を1層以上重ねてもよい。
本発明の基紙は、例えば、中層に白色度の低いパルプを用いて、表層にそれより白色度の高いパルプを用いることもできるし、すべての層のパルプを同じにして重ねることもできる。
【0012】
本発明における基紙は、填料を添加してもよいししなくてもよい。古紙パルプを多く含有する本発明の基紙は、古紙由来の持ち込みの灰分を多く含有するため、填料を新たに添加しなくても基紙は灰分を含有する。填料を添加する場合、添加する填料は特に限定されないが、例えば、クレー、焼成クレー、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミネーテッドカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ、亜硫酸カルシウム、石膏、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、製紙スラッジ、脱墨フロスからの再生無機粒子等の無機填料、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、プラスチック微小中空粒子などの有機填料、さらには古紙やブローク等に含まれている填料由来の再生填料を、単独もしくは適宜2種類以上を組み合わせて使用できる。基紙への填料配合は、中層に存在する塵、色ムラを覆い隠すため、裏層には上記填料を裏層のパルプ100重量%(固形分)に対し、2重量%以上配合することが好ましい。表層、中層への填料配合は特に制限はないが、填料の配合割合が多くなると、紙の層間強度が低くなるので、目的とする品質に合わせて適宜調節することが必要である。
【0013】
本発明における基紙の抄紙方法は特に限定されず、トップワイヤー等を含む長網抄紙機、オントップフォーマー、ギャップフォーマー、丸網抄紙機、長網抄紙機と丸網抄紙機を併用した板紙抄紙機、ヤンキードライヤーマシン、これらを組み合わせたハイブリッド型抄紙機等を用いて行なうことができ、1層もしくは2層以上を抄き合せて表層または中層としてもよい。抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよい。また、多層抄基紙の場合、各層の抄紙時のpHは、同一でもよいし、各層で異なってもよい。抄紙速度は、特に限定されない。なお、本発明の塗工白板紙における基紙の坪量は、通常150~650g/m2程度である。
また本発明により塗工白板紙を製造する場合は、基紙をオンラインソフトカレンダ、オンラインチルドカレンダなどにより、塗工工程の前に、予め平滑化しておいてもよい。
【0014】
本発明において、基紙を乾燥させる方法は制限されない。例えば蒸気加熱シリンダ、加熱熱風エアドライヤ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等各種の方法が単独もしくは併用して用いられる。
【0015】
また、本発明においては、平滑性の低い基紙を用いてもよいが、顔料塗工層の形成時のパドリングと呼ばれる塗工液溜まりが発生しない範囲で、平滑性の高い基紙を使用できる。基紙の平滑性を高めるために、顔料塗工層の形成前にプレカレンダー等の処理を行なってもよい。さらに、基紙の平滑性を改善する手段として、顔料塗工層の形成前に、澱粉を主成分としたクリア塗料または顔料を含んだ塗料を基紙に塗工することができる。このプレ塗工された基紙は、乾燥工程を経たのちに顔料塗工層の形成に供してもよいし、乾燥工程を経ないまま、すなわち基紙上の塗料が濡れた状態で、顔料塗工層の形成に供してもよい。このように、顔料塗工層の形成に供される前のプレ塗工後の基紙の状態は制限されない。
【0016】
<黄色色材について>
本発明における基紙の裏層は、黄色色材により着色されているものである。裏層の着色は、基紙の裏層自体に黄色色材を添加すればよいが、基紙の裏層およびクリア塗工層の双方に黄色色材を添加してもよい。基紙の裏層自体は着色せずに、裏層表面に接着剤と黄色色材とを混合したクリア塗工層を形成することにより、裏層が着色された外観を得る方法も考えられる。しかしながら、クリア塗工層に黄色色材を添加した場合、クリア塗工層の塗布ムラが黄色色材によって目立ってしまい、外観性を損なってしまう。したがって、基紙の裏層自体を黄色色材により着色することが、裏面についても外観品質および印刷適性に優れ、かつ、印刷された画像の見栄えも良好な塗工白板紙を得るために好適な手法である。
本発明において使用できる黄色色材としては、染料でも顔料でもよく黄色の色相を有する色材であれば制限は無い。具体的には、例えば、染料としては、C.I.ダイレクトイエロー-1、-2、-4、-8、-11、-12、-26、-27、-28、-33、-34、-41、-44、-48、-86、-87、-88、-135、-142、-144等の直接染料、C.I.アシッドイエロー-1、-3、-4、-7、-11、-12、-13、-14、-19、-23、-25、-34、-38、-41、-42、-44、-53、-55、-61、-71、-76、-79等の酸性染料、C.I.ベーシックイエロー-1、-11、-13、-19、-25、-33、-36等のカチオン性染料が挙げられる。また、顔料としては、アセト酢酸アニリド系モノアゾ顔料、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料、イソインドリノン系顔料の他、スレン系、金属錯体系、キノフタロン系、イソインドリン系の各種顔料が挙げられ、具体的には、シムラファストイエロー-GH、-10GH、4117等のモノアゾ系顔料、-GFコンク、-GRF、5GF、-8GF等のジスアゾ系顔料、クロモフタルイエロー-3G、6G、GR等の縮合アゾ系顔料等が挙げられる。中でも、直接染料が好ましい。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
本発明において、基紙の裏層中の黄色色材添加割合は、裏層の全パルプ100重量部(固形分)中、0.01重量部以上0.1重量部以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.02重量部以上0.08重量部以下であり、さらに好ましくは0.02重量部以上0.05重量部以下である。0.01重量部より少ないと、色材が十分でなく着色の効果が十分に得られず、0.1重量部より多いと、裏層の黄色味が強くなりすぎるため本発明の高級感が得られないうえに、印刷物が見にくくなってしまい好ましくない。
前述のように、塗工白板紙分野では、近年菓子箱などの用途において、一般的に印刷が施されることが想定される塗工層側(外側)だけでなく、基紙が露出している裏層(内側)にも、消費者に向けた説明書きやクイズなどの印刷が施されるケースが増えてきている。古紙を多く含有し、一般的には灰色に近い色相を持つ塗工白板紙の裏層に印刷を施した場合、清潔な印象がなく、さらには印刷映えもしない。しかしながら、本発明の黄色色材により裏層の基紙自体を着色することで、特に、裏層の全パルプ100重量部(固形分)中に黄色色材を0.01重量部以上0.1重量部以下の範囲で添加させることにより、高級感があり、印刷映えのする塗工白板紙とすることができる。
【0018】
<顔料塗工層について>
本発明の塗工白板紙は、基紙の表面に、顔料および接着剤を含有する顔料塗工層を備えるものである。本発明の顔料塗工層は、1層のみでもよいが2層以上であってもよい。本発明の顔料塗工層が2層からなる場合においては、最外塗工層を上塗り顔料塗工層、当該上塗り顔料塗工層を形成する塗工液を上塗り顔料塗工液ともいう。また、上記最外層に隣接し、より基紙に近い層を下塗り顔料塗工層、当該下塗り顔料塗工層を形成する塗工液を下塗り顔料塗工液ともいう。各塗工層を形成する顔料塗工液は、すべて異なる顔料塗工液でも、同一の顔料塗工液を2層以上に使用してもよい。
【0019】
本発明における顔料塗工液は、顔料や接着剤などの必要な成分と水とを混合して調整する。顔料塗工液の調製においては、ミキサー等の通常の混合手段を用いてよい。顔料塗工液に含有される各成分等について以下に説明する。
本発明における顔料塗工液は、従来の公知の顔料が使用できる。具体的には、例えば、クレー、焼成クレー、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミネーテッドカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ、亜硫酸カルシウム、石膏、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、製紙スラッジ、脱墨フロスからの再生無機粒子等の無機填料、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、プラスチック微小中空粒子などの有機填料等が挙げられる。中でも、高い隠蔽性、平滑性を得るためには、顔料塗工層のいずれか一層にデラミネーテッドカオリンを含有することが好ましい。デラミネーテッドカオリンの含有割合は、顔料100重量部中、5~100重量部含有することが好ましく、10~50重量部がさらに好ましい。また、高い白色度を維持しつつ隠蔽性を得るためには、顔料塗工層のいずれか一層に炭酸カルシウムを含有することが好ましく、特に、隠蔽性、高い白色度が求められる上塗り顔料塗工層に含有することがより好ましい。また、上塗り顔料塗工層が含有する炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウムでも軽質炭酸カルシウムでもよいが、隠蔽性に優れる軽質炭酸カルシウムが好ましい。重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムの何れかまたは両方の炭酸カルシウムの割合は、各層の顔料100重量部中、20重量部以上100重量部以下の範囲で含有することが好ましく、30重量部以上90重量部以下の範囲で含有することがさらに好ましい。
【0020】
本発明における顔料塗工液が含有する接着剤(バインダー)は特に制限されず、塗工紙に従来から用いられている接着剤を使用できる。具体的には、例えば、スチレン-ブタジエン系、スチレン-アクリル系、エチレン-酢酸ビニル系、ブタジエン-メチルメタクリレート系、酢酸ビニル-ブチルアクリレート系等の各種共重合およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸-メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ナノセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられ、これらの接着剤1種類以上を適宜選択して使用することができる。本発明の塗工白板紙は、十分な塗工層強度と塗工時の保水性を得るために、澱粉およびスチレン-ブタジエン系共重合体を使用することが好ましい。
【0021】
本発明の各塗工層を形成する顔料塗工液の顔料と接着剤の配合比率は、所望の顔料塗工液が得られる範囲で適宜調整される。通常は、固形分比率で、顔料100重量部に対し、接着剤を5~30重量部含有することが好ましく、さらに好ましくは8~20重量部である。5重量部より少ないと、顔料塗工層強度が弱くなってしまい、紙粉が発生する、印刷強度が劣るなどの問題が発生する。また、30重量部より多いと、塗工層中の白色顔料粒子間の空隙が接着剤で満たされ、塗工層の光散乱性が劣るため、不透明度が劣る、印刷時のインキの吸収性が悪化し印刷適性が劣る、コストが高くなるなどの問題が発生する。
【0022】
本発明の顔料塗工層を形成する顔料塗工液には、顔料と接着剤の他に、必要に応じて、分散剤、粘性改良剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、蛍光染料、着色染料、着色顔料、界面活性剤、pH調整剤、カチオン性樹脂、アニオン性樹脂、紫外線吸収剤、金属塩など、通常の塗工紙用顔料に配合される各種助剤を適宜使用できる。
顔料塗工液の固形分濃度は、58重量%以上が好ましく、62重量%以上がより好ましい。固形分が58重量%より低いと、顔料塗工液の基紙への過剰な浸透により塗工白板紙の品質が低下することがある。一方、固形分濃度の上限は特に制限されないが、送液性等を考慮すると、75重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましい。
【0023】
<塗工方法について>
本発明の顔料塗工層を形成する塗工方法について特に制限はなく、ブレードコーター、ロッドコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーターなどの通常の各種塗工装置を用い、1層または2層以上塗工する。
【0024】
本発明において顔料塗工層の塗工量は、1層または2層以上塗工する場合においても各層の合計で5~50g/m2が好ましく、45g/m2以下の塗工量とすることがより好ましい。顔料塗工層は、乾燥重量で10~40g/m2が好ましく、11~35g/m2がより好ましい。塗工量が5g/m2未満では、塗工層が薄くなり白板紙の白色度、白色ムラを十分に改善しにくい場合がある。一方、塗工量が50g/m2を越えると、塗工時の乾燥性が悪くなるなど操業性が低下したり、バインダーマイグレーションによる印刷ムラの原因になったりすることがある。
本発明の顔料塗工層として、下塗り顔料塗工層と上塗り顔料塗工層を形成させる場合における下塗り顔料塗工層の塗工量と上塗り顔料塗工層の塗工量は、特に制限されないが、隠蔽性と白色度を両立させるということから、乾燥重量で片面あたり、下塗り顔料塗工層が4~30g/m2、上塗り顔料塗工層が1~20g/m2の範囲であることが好ましく、下塗り塗工層より上塗り塗工層の塗工量の方が多いことが望ましい。
また顔料塗工層を3層以上とする場合、上塗り顔料塗工層と下塗り顔料塗工層以外の層(便宜上「その他顔料塗工層」という)は、白色度、比散乱係数とも、上塗り顔料塗工層および下塗り顔料塗工層の中間とすることができる。例えば、その他顔料塗工層の白色度を、基紙の白色度より高くかつ上塗り顔料塗工層の白色度より低くできる。また、その他顔料塗工層の比散乱係数は、下塗り顔料塗工層の比散乱係数と同等以上とすることができる。
【0025】
本発明の塗工白板紙は、基紙上に顔料塗工層を設けた後、通常の乾燥工程を経て製造されるが、必要に応じて表面処理工程等で平滑化処理してもよい。好ましい態様において、製造後の塗工白板紙水分量が3~10重量%、より好ましくは4~8重量%程度となるように調整して仕上げられる。平滑化処理には、通常のスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ、熱カレンダ、シューカレンダ等の平滑化処理装置を用いることができる。平滑化処理装置は、オンマシンやオフマシンで適宜用いられ、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も適宜調整される。好ましい態様において、製造後のクランプ圧2000kPaの条件におけるPPSラフネスが、1.6μm以下となるように平滑性を調整して仕上げられる。下限は0.1μm以上である。PPSラフネスが0.1μm未満のとき、平滑化処理に伴う顔料塗工層の高密度化が著しく、顔料塗工層の不透明度が低下し、基紙の塵、色ムラの高い隠蔽効果を得ることができなくなる。そのため、顔料塗工層の不透明度の低下を防ぐためにも、好ましくは0.5μm以上である。一方、PPSラフネスが1.6μmより高いと平滑性が低く、十分な白紙面感や印刷面感を得ることができない。
【0026】
本発明においては、剛度およびカール抑制のために顔料塗工層を設けていない裏層表面にクリア塗工層を設けてもよいが、顔料塗工層は設けない。本発明の塗工白板紙は、基紙の裏層が黄色色材により着色されていることにより、印刷古紙パルプからなるにも関わらず、外観性に高級感があり裏面印刷が映えるという特徴を有するものである。よって、基紙の裏層に黄色色材を添加する場合は、当該色材によって着色された基紙の色相を損なうことがないよう、透明性の高いクリア塗工層を設けることが好ましい。裏層の表面に塗工層を形成するクリア塗工液には、必要に応じて、従来から公知公用の前述のバインダーおよび、各種色材、分散剤、粘性改良剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、界面活性剤、pH調整剤、カチオン性樹脂、アニオン性樹脂、紫外線吸収剤、金属塩など、通常のクリア塗工液に配合される各種助剤を適宜使用できる。本発明の塗工白板紙は、表面強度とカール抑制、印刷適性の点から、バインダーとしては澱粉、スチレン-ブタジエン系共重合体、ポリビニルアルコールを使用することが好ましく、より好ましくはポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールは、透明性が高く、裏層の基紙の色相の透過を妨げないため好ましい。また、紙力増強剤としてポリアクリルアミドを使用することが好ましい。また、本発明の塗工白板紙は、裏層の表面のクリア塗工層に黄色色材等の色材を添加してもよい。
【0027】
本発明のクリア塗工層を形成する塗工方法について特に制限はなく、ブレードコーター、ロッドコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーターなどの通常の各種塗工装置を用いてもよいし、カレンダー工程で塗工してもよい。
【0028】
本発明の塗工白板紙の色相は、JIS P 8150に準じて測定した色相が、塗工層側はL*=91以上93以下、a*=-0.2以上0.1以下、b*=-0.1以上0.5以下が好ましく、裏層側はL*=77以上83以下、a*=0.0以上3.0以下、b*=0以上15以下が好ましく、塗工層側はL*=91以上92.5以下、a*=-0.1以上0.1以下、b*=0.0以上0.4以下がより好ましく、裏層側はL*=78以上82以下、a*=0.5以上2.0以下、b*=8.5以上11以下がより好ましい。本発明の塗工白板紙は、表層に白色顔料からなる顔料塗工層を設け上記範囲の色相とすることで、ムラのない高級感のある美麗な外観とすることができ、顔料塗工層を有さない裏層側においても、黄色色材によって裏層自体を着色し上記範囲の色相とすることで、菓子箱などの包装箱にした際の裏面にも高級感を付与することができる。本発明においては、裏面が黄色いことが好ましいため、b*値が上記範囲であることが重要である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の製造方法について詳細に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0030】
<評価方法>
(1)坪量:JIS P 8124に準じて測定した。
(2)紙厚:JIS P 8118に準じて測定した。
(3)密度:JIS P 8118に準じて坪量と紙厚から求めた。
(4)白色度:JIS P 8148「紙、板紙およびパルプ-ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠して測定した。
(5)L*a*b*表色系:JIS P 8150に準拠して、分光測色計(CMS-35SPX型、株式会社 村上色彩技術研究所)を用いて測定した。
L*a*b*表色系では、明度をL*、色相と彩度を示す色度をa*、b*で表わす。a*はプラス値が赤方向、マイナス値が緑方向、b*はプラス値が黄方向、マイナス値が青方向を示す。
【0031】
[実施例1]
<基紙1>
LBKP100%のパルプを使用して坪量33g/m2の表層、脱墨古紙パルプ100%を使用して坪量36g/m2の表下層、脱墨しない雑誌古紙パルプ100%のパルプを使用して中層に相当する3~6層目および裏層に相当する7層目をそれぞれ抄造して抄き合わせ、プレス、乾燥処理を行い坪量294g/m2の塗工白板紙基紙を得た。各層のパルプスラリーには、パルプ100重量%(固形分)に対して、紙力剤0.6重量%、硫酸バンド1.5重量%を添加し、裏層(7層目)を構成するパルプスラリーには、さらに黄色染料(日本化学工業所社製、ダイレクトペーパーイエロー)を、裏層のパルプ100重量%(固形分)に対して0.02重量%添加した。本発明では、多層抄きの基紙において、顔料塗工層を形成する側の最表層を表層、顔料塗工層から反対側に向かって2層目を表下層、最裏面を裏層、それ以外を中層という。
【0032】
<上塗り顔料塗工液1>
デラミネーテッドカオリン(イメリス社製、Contour 1500)25重量部、微粒カオリン(カオファイン)24重量部、重質炭酸カルシウム(イメリス社製、カービタル97)26重量部、紡錘状軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製、TP-221F)19重量部、二酸化チタン6重量部からなる顔料スラリーを調製した後、顔料100重量部に対して、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス14.5重量部、尿素燐酸エステル化澱粉2重量部を添加し、さらに水を添加して、固形分濃度60%の上塗り顔料塗工液を得た。
<下塗り顔料塗工液1>
デラミネーテッドカオリン(イメリス社製、Contour 1500)20重量部、重質炭酸カルシウム(イメリス社製、カービタル90)80重量部からなる顔料スラリーを調製した後、顔料100重量部に対して、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス12重量部、尿素燐酸エステル化澱粉3重量部を添加し、さらに水を添加して、固形分濃度60%の下塗り顔料塗工液を得た。
【0033】
<塗工・仕上げ処理>
基紙1の表面に、下塗り顔料塗工液1をバーコーターで片面塗工量が8g/m2となるように塗工した後に、乾燥工程を経ることなく、上塗り顔料塗工層1を片面塗工量が12g/m2となるように塗工、乾燥した。その後、カレンダーで平滑化処理を行い、裏層面のみにポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製、PX171P)2.2重量%、ポリアクリルアミド(ハリマ化成社製、G50)0.8重量%から成るクリア塗工液を1.0g/m2塗布し、目標坪量314g/m2となるように塗工白板紙を製造した。
【0034】
[比較例1]
基紙1の裏層に黄色色材を添加しない以外は、実施例1と同様に塗工白板紙を製造した。
【0035】
表1に、実施例1と比較例1の塗工白板紙の評価結果に示す。
【表1】
【0036】
表1の結果より、本発明の塗工白板紙は、L*a*b*表色系におけるb*値が高く黄色味の強い色相となっているため、裏面に説明書きやイラストを印刷した場合においても印刷映えが良好であり、顔料塗工層を有していないにも関わらず、外観性に優れることが明らかとなった。
本発明の塗工白板紙は、外観性に高級感があり、菓子箱などの包装箱としての使用に好適であることが確認された。