(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】吹付支援装置
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20220830BHJP
B25J 13/00 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
E21D11/10 D
B25J13/00 Z
(21)【出願番号】P 2018096319
(22)【出願日】2018-05-18
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】永里 純一
(72)【発明者】
【氏名】古家 義信
(72)【発明者】
【氏名】宮越 征一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133213(JP,A)
【文献】特開2007-044663(JP,A)
【文献】特開2000-213293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動台車に取り付けられ、
4以上の関節が設けられた支持部材と、前記支持部材に取り付けられ、吹付ノズルを有する吹付ヘッド装置とを備えたコンクリート吹付機における、前記吹付ノズルの先端部の位置の制御を支援する吹付支援装置であって、
前記移動台車と前記支持部材の第1の構成部品と
の間に形成されて前記移動台車の鉛直方向に延びている軸を回転軸とする第1の回転関節の動作の指示入力、及び前記第1の構成部品と前記支持部材の第2の構成部品と
の間に形成されて前記移動台車の左右方向に延びている軸を回転軸とする第2の回転関節の動作の指示入力を受け付ける指示入力部と、
前記第1及び第2の回転関節、及び前記第2の構成部品と前記支持部材の第3の構成部品との間に形成されて前記第2の構成部品の長手方向に延びている直同軸に沿って伸縮する直動関節の動作を検出する動作量検出部と、
前記指示入力部で受け付けた指示入力に基づき、前記第1及び第2の回転関節の動作の目標値を算出
するとともに、
前記指示入力とは関係なく、前記動作量検出部の検出結果に基づき、前記吹付ノズルの先端部の位置を予め定められた平面内に維持させるための、前
記直動関節の動作の目標値を算出する目標値演算部と、
前記目標値演算部で算出した
前記第1及び第2の回転関節、及び前記直動関節の動作の目標値に基づき、前記第1及び第2の回転関節、及び前記直動関節の動作
のみを制御する関節動作制御部と、を備えることを特徴とする吹付支援装置。
【請求項2】
前記吹付ノズルの先端部の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部で検出された3点の位置に基づき、それらの位置を含む平面を、前記予め定められた平面として設定する平面設定部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の吹付支援装置。
【請求項3】
前記位置検出部は、前記動作量検出部の検出結果に基づき、前記吹付ノズルの先端部の位置を検出することを特徴とする請求項2に記載の吹付支援装置。
【請求項4】
前記移動台車の傾き度合いを検出する傾き度合い検出部を備え、
前記目標値演算部は、前記動作量検出部の検出結果と、前記傾き度合い検出部の検出結果とに基づき、前記吹付ノズルの先端部の位置を前記平面内に維持させるための、前記直動関節の動作の目標値を算出することを特徴とする請求項
1から3の何れか1項に記載の吹付支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事に用いられるコンクリート吹付機に適用される吹付支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動台車に取り付けられた支持部材と、支持部材に取り付けられ、吹付ノズルを有する吹付ヘッド装置と、を備えたコンクリート吹付機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載のコンクリート吹付機では、オペレータが、操縦レバー等を動かして、支持部材や吹付ヘッド装置の動作を手動操作するようになっている。
しかし、特許文献1に記載のコンクリート吹付機では、支持部材の根元側の回転関節を動作させると、吹付ノズルの先端位置が半球状に変化する。それゆえ、例えば、トンネル内の壁面や切羽にコンクリートを吹き付ける場合、オペレータに高い技術が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、コンクリートの吹付作業をより容易に実行可能な吹付支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、(a)移動台車に取り付けられ、4以上の関節が設けられた支持部材と、支持部材に取り付けられ移動台車に取り付けられ、複数の関節が設けられた支持部材と、支持部材に取り付けられ、吹付ノズルを有する吹付ヘッド装置とを備えたコンクリート吹付機における、吹付ノズルの先端部の位置の制御を支援する吹付支援装置であって、(b)移動台車と支持部材の第1の構成部品との間に形成されて移動台車の鉛直方向に延びている軸を回転軸とする第1の回転関節の動作の指示入力、及び第1の構成部品と支持部材の第2の構成部品との間に形成されて移動台車の左右方向に延びている軸を回転軸とする第2の回転関節の動作の指示入力を受け付ける指示入力部と、(c)第1及び第2の回転関節、及び第2の構成部品と支持部材の第3の構成部品との間に形成されて第2の構成部品の長手方向に延びている直同軸に沿って伸縮する直動関節の動作を検出する動作量検出部と、(d)指示入力部で受け付けた指示入力に基づき、第1及び第2の回転関節の動作の目標値を算出するとともに、指示入力とは関係なく、動作量検出部の検出結果に基づき、吹付ノズルの先端部の位置を予め定められた平面内に維持させるための、直動関節の動作の目標値を算出する目標値演算部と、(e)目標値演算部で算出した第1及び第2の回転関節、及び直動関節の動作の目標値に基づき、第1及び第2の回転関節、及び直動関節の動作のみを制御する関節動作制御部と、を備える吹付支援装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吹付ノズルの先端部がある一定の平面内を移動するように、直動関節を自動的に伸縮させることができる。そのため、コンクリートの吹付作業をより容易に実行可能な吹付支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】吹付支援装置とコンクリート吹付機との概略構成を表す概念図である。
【
図2】支持部材と吹付ヘッド装置とを説明するための説明図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【
図4】支保工内面の天端、左端及び右端と基準平面とを説明するための説明図であり、(a)は
図1のA方向から見た場合の図であり、(b)は(a)のB-B線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態に係る吹付支援装置について図面を参照して説明する。
(構成)
図1に示すように、本発明の実施形態に係る吹付支援装置1は、トンネル内空壁の互いに隣り合う支保工2a、2b間の円周壁面や切羽3に対しコンクリートを吹き付けるためのトンネル工事用作業用車両(以下「コンクリート吹付機4」とも呼ぶ)に搭載される。
本発明の実施形態に係るコンクリート吹付機4は、移動台車5と、移動台車5に取り付けられ、回転関節及び直動関節を含む複数の関節が設けられた支持部材6と、支持部材6に取り付けられ、吹付ノズル7hを有する吹付ヘッド装置7と、支持部材6の各関節(回転関節、直動関節)それぞれを駆動させる関節駆動装置8と、を備えている。
【0009】
図2(a)(b)に示すように、支持部材6は、移動台車5に取り付けられた第1の構成部品6aと、第1の構成部品6aに取り付けられた角筒状の第2の構成部品6b(アウターブーム)と、第2の構成部品6bに挿入された角柱状の第3の構成部品6c(インナーブーム)と、を備えている。また、第3の構成部品6cに取り付けられた第4の構成部品6dと、第4の構成部品6dに取り付けられた第5の構成部品6eと、を備えている。
【0010】
移動台車5と第1の構成部品6aとの間には、鉛直方向(
図2のZ方向)に延びている軸を回転軸(以下、「第1の回転軸9a」とも呼ぶ)とする回転関節(以下、「第1の関節10a」とも呼ぶ)からなるブームスイング機構が形成されている。また、第1の構成部品6aと第2の構成部品6bとの間には、移動台車5の左右方向(水平方向)に延びている軸を回転軸(以下、「第2の回転軸9b」とも呼ぶ)からなるブームチルト機構とする回転関節(以下、「第2の関節10b」とも呼ぶ)が形成されている。さらに、第2の構成部品6bと第3の構成部品6cとの間には、第2の構成部品6bの長手方向に延びている直動軸(以下、「第3の直動軸9c」とも呼ぶ)に沿って伸縮する直動関節(以下、「第3の関節10c」とも呼ぶ)からなるブームスライド機構が形成されている。すなわち、第1の関節10aは移動台車5と第1の構成部品6aとを相対変位可能とし、第2の関節10bは第1の構成部品6aと第2の構成部品6bとを相対変位可能とし、第3の関節10cは第2の構成部品6bと第3の構成部品6cとを相対変位可能とする。
【0011】
第3の構成部品6cと第4の構成部品6dとの間には、第2の回転軸9bと平行な移動台車5の左右方向に延びている軸を回転軸(以下、「第4の回転軸9d」とも呼ぶ)とする回転関節(以下、「第4の関節10d」とも呼ぶ)からなるアームチルト機構が形成されている。また、第4の構成部品6dと第5の構成部品6eとの間には、第4の回転軸9dと直交する方向に延びている軸を回転軸(以下、「第5の回転軸9e」とも呼ぶ)とする回転関節(以下、「第5の関節10e」とも呼ぶ)からなるアームスイング機構が形成されている。
図2(a)(b)の例では、第5の回転軸9eは、第1の回転軸9a(鉛直方向に延びている軸)と平行となっている。
【0012】
吹付ヘッド装置7は、支持部材6の第5の構成部品6eに取り付けられた第6の構成部品7fと、第6の構成部品7fに取り付けられた第7の構成部品7gと、第7の構成部品7gに取り付けられ、コンクリートを噴射する吹付ノズル7h(第8の構成部品)と、を備えている。第5の構成部品6eと第6の構成部品7fとの間には、第5の回転軸9eと直交する方向に延びている直動軸(以下、「第6の直動軸9f」とも呼ぶ)に沿って伸縮する直動関節(以下、「第6の関節10f」とも呼ぶ)からなるノズルスライド機構が形成されている。
図2(a)(b)の例では、第6の直動軸9fは、第3の直動軸9cと平行となっている。第6の構成部品7fと第7の構成部品7gとの間には、第6の直動軸9fと平行な方向に延びている軸を回転軸(以下、「第7の回転軸9g」とも呼ぶ)とする回転関節(以下、「第7の関節10g」とも呼ぶ)からなるノズルチルト機構が形成されている。また、第7の構成部品7gと吹付ノズル7h(第8の構成部品)との間には、第7の回転軸9gと直交する方向に延びている軸を回転軸(以下、「第8の回転軸9h」とも呼ぶ)とする回転関節(以下、「第8の関節10h」とも呼ぶ)からなるノズルスイング機構が形成されている。
図2(a)(b)の例では、第8の回転軸9hは、第2の回転軸9b(左右方向に延びている軸)と平行となっている。
【0013】
関節駆動装置8は、後述するコントローラ17からの指令に従って、第1~第8の関節10a~10hを駆動(回転、伸縮)させる。関節駆動装置8としては、例えば、第1~第8の関節10a~10hのそれぞれに設けられた油圧シリンダや電動モータ等への油圧供給を制御して、第1~第8の関節10a~10hそれぞれを駆動可能な油圧制御装置を採用できる。具体的には、第1の関節10aの駆動には、油圧シリンダや電動モータ等として、スイングマスターシリンダ11aやブームスイングシリンダ11bが用いられる。また、第2の関節10bの駆動には、チルトマスターシリンダ11cやブームチルトシリンダ11dが用いられる。さらに、第3の関節10cの駆動には、ブームスライドシリンダ11eが用いられる。また、第4の関節10dの駆動には、アームチルトシリンダ11fが用いられる。さらに、第5の関節10eの駆動には、アームスイングシリンダ11gが用いられる。また、第6の関節10fの駆動には、ノズルスライドシリンダ11hが用いられる。さらに、第7の関節10gの駆動には、ノズルスイングモータ11iが用いられる。また、第8の関節10hの駆動には、ノズルチルトシリンダ11jが用いられる。
【0014】
また、本発明の実施形態に係る吹付支援装置1は、
図1に示すように、動作量検出部12a、12b、12cと、傾き度合い検出部13と、指示入力部14と、モード切替スイッチ15と、位置検出ボタン16、コントローラ17と、を備えている。
動作量検出部12aは、第1の関節10aによる第1の構成部品6aの回転角度を検出する。動作量検出部12aとしては、例えば、ブームスイング角度センサを採用できる。また、動作量検出部12bは、第2の関節10bによる第2の構成部品6bの回転角度を検出する。動作量検出部12bとしては、例えば、ブームリフトセンサ(傾斜計)を採用できる。さらに、動作量検出部12cは、第3の関節10cによる伸縮量を検出する。動作量検出部12cとしては、例えば、ブームスライド長センサ(油圧)を採用できる。そして、動作量検出部12a~12cは、検出結果をコントローラ17に出力する。
【0015】
傾き度合い検出部13は、移動台車5の前後・左右方向への傾き度合いを検出する。傾き度合い検出部13としては、例えば、移動台車5に搭載した2軸の傾斜計を採用できる。そして、傾き度合い検出部13は、検出結果をコントローラ17に出力する。
なお、本発明の実施形態に係る吹付支援装置1では、動作量検出部12a~12c、傾き度合い検出部13として、傾斜計や油量計を用いる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、同様の数値を検出可能な他のセンサを採用してもよい。
指示入力部14は、オペレータからの第1~第8の関節10a~10hの回転や収縮の指示入力を受け付ける。そして、受け付けた指示入力をコントローラ17に出力する。
【0016】
モード切替スイッチ15は、オペレータからの動作モードの切り替えの指示入力を受け付ける。動作モードとしては、例えば、第1~第8の関節10a~10hを手動操作可能とする通常モードと、第1及び第2の関節10a、10bを手動操作可能としつつ、吹付ノズル7hの先端部の位置が
図4(a)(b)に示した予め定められた平面(以下、「基準平面18」とも呼ぶ)内を移動するように、第3の関節10cを自動的に伸縮させる吹付モードとを有している。そして、受け付けた指示入力をコントローラ17に出力する。
位置検出ボタン16は、基準平面18の設定のために、吹付ノズル7h先端部の位置検出の指示入力を受け付ける。そして受け付けた指示入力をコントローラ17に出力する。
【0017】
コントローラ17は、A/D(Analog to Digital)変換回路、D/A(Digital to Analog)変換回路、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等から構成した集積回路を備える。ROMは、CPUで実行される各種処理のプログラムを記憶している。CPUは、モード切替スイッチ15が通常モードを表す指示入力を出力している場合に、ROMが記憶しているプログラムに従って、指示入力部14が出力する第1~第8の関節10a~10hの動作の指示入力に基づき、第1~第8の関節10a~10hのそれぞれを動作させる指令を関節駆動装置8に出力する。これにより、オペレータは、第1~第8の関節10a~10hを手動操作可能となる。
また、CPUは、ROMが記憶しているプログラムに従って、目標値演算部17aと、関節動作制御部17bと、位置検出部17cと、平面設定部17dとを実現する。そして、これら目標値演算部17aと、関節動作制御部17bと、位置検出部17cと、平面設定部17dとにより、後述する吹付実行処理を実行する。
【0018】
(吹付実行処理)
次に、コントローラ17(目標値演算部17a、関節動作制御部17b、位置検出部17c、平面設定部17d)が実行する吹付実行処理について説明する。吹付実行処理は、モード切替スイッチ15が吹付モードを表す指示入力を出力している場合に実行される。
図3に示すように、まず、ステップS101では、目標値演算部17aは、指示入力部14が出力する第1の関節10a、第2の関節10b及び第3の関節10cの動作の指示入力に基づき、第1の関節10a、第2の関節10b及び第3の関節10cの動作の目標値を算出する。本発明の実施形態に係る吹付支援装置1では、第1の関節10aの動作の目標値としては、例えば、第1の関節10aの角速度の目標値dθ
1ref/dtを採用できる。同様に、第2の関節10bの動作の目標値としては、例えば、第2の関節10bの角速度の目標値dθ
2ref/dtを採用できる。また、第3の関節10cの動作の目標値としては、例えば、第3の関節10cの伸縮速度の目標値dL
3ref/dtを採用できる。
【0019】
続いてステップS102に移行して、関節動作制御部17bは、ステップS101で算出した第1の関節10a、第2の関節10b及び第3の関節10cの動作の目標値、及び動作量検出部12a~12cの検出結果と、傾き度合い検出部13の検出結果とに基づき、第1の関節10a、第2の関節10b及び第3の関節10cを目標値と等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する。例えば、第1の関節10aの角速度の目標値dθ1ref/dt、第2の関節10bの角速度の目標値dθ2ref/dt、第3の関節10cの伸縮速度の目標値dL3ref/dt、動作量検出部12a~12cの検出結果及び傾き度合い検出部13の検出結果に基づき、第1の関節10aの角速度dθ1/dt、第2の関節10bの角速度dθ2/dt及び第3の関節10cの伸縮速度dL3/dtを目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する。これにより、関節駆動装置8が、コントローラ17からの指令に従って、第1~3の関節10a~10cを駆動することで、吹付ノズル7hの先端部の位置を操作可能とする。
【0020】
これらステップS101、S102では、オペレータは、吹付ノズル7hの先端部が
図4(a)(b)に示した基準平面18内の任意の3点に順番に接触するように吹付ノズル7hの先端部の位置を操作する。基準平面18の3点としては、例えば、
図4(a)(b)に示すように、コンクリート吹付機4側の支保工2bの内面の天端18a、左端18b及び右端18cを採用できる。また、例えば、吹付ノズル7hの先端部を支保工2bの内面の天端18a、左端18b及び右端18cに接触させず、それらの近傍それぞれに順番に移動するように吹付ノズル7hの先端部の位置を操作するようにしてもよい。
【0021】
続いてステップS103に移行して、位置検出部17cは、位置検出ボタン16の出力に基づき、位置検出ボタン16が操作されたかを判定する。そして、位置検出ボタン16が操作されたと判定した場合には(Yes)ステップS104に移行する。一方、位置検出ボタン16が操作されていないと判定した場合には(No)ステップS101に戻る。
続いてステップS104に移行して、位置検出部17cは、動作量検出部12a~12cの検出結果と、傾き度合い検出部13の検出結果とに基づき、吹付ノズル7hの先端部の位置(座標)を検出する。
【0022】
続いてステップS105に移行して、位置検出部17cは、ステップS104で検出された位置が合計3つ以上になったかを判定する。すなわち、位置検出部17cで3点の位置が検出されたかを判定する。そして、3つ以上になったと判定した場合には(Yes)、位置検出部17cで3点の位置が検出されたと判定し、ステップS106に移行する。一方、3つ未満であると判定した場合には(No)、位置検出部17cで1点または2点の位置しか検出されていないと判定し、ステップS101に戻る。
ステップS106では、平面設定部17dは、ステップS104で検出された3点の位置に基づき、その位置を含む平面を基準平面18として設定する。
【0023】
続いてステップS107に移行して、目標値演算部17aは、指示入力部14が出力する第1及び第2の関節10a、10bの動作の指示入力に基づき、第1の関節10a及び第2の関節10bの動作の目標値を算出する。例えば、第1の関節10aの角速度の目標値dθ1ref/d及び第2の関節10bの角速度の目標値dθ2ref/dtを算出する。
続いてステップS108に移行して、目標値演算部17aは、動作量検出部12a~12cの検出結果と、傾き度合い検出部13の検出結果とに基づき、吹付ノズル7hの先端部の位置を基準平面18内に維持させるための、第3の関節10cの動作の目標値を算出する。例えば、動作量検出部12a~12cの検出結果と、傾き度合い検出部13の検出結果とに基づき、吹付ノズル7hの先端部の速度の、基準平面18の法線方向の成分がゼロとなるように第3の関節10cの伸縮速度の目標値dL3ref/dtを算出する。
【0024】
続いてステップS109に移行して、関節動作制御部17bは、ステップS107で算出した第1の関節10a及び第2の関節10bの動作の目標値、ステップS108で算出した第3の関節10cの動作の目標値、動作量検出部12a~12cの検出結果、及び傾き度合い検出部13の検出結果に基づき、第1の関節10a、第2の関節10b及び第3の関節10cを目標値と等しくするための指令を関節駆動装置8に出力した後、ステップS107に戻る。例えば、第1の関節10aの角速度の目標値dθ1ref/dt、第2の関節10bの角速度の目標値dθ2ref/dt、第3の関節10cの伸縮速度の目標値dL3ref/dt、動作量検出部12a~12cの検出結果、及び傾き度合い検出部13の検出結果に基づき、第1の関節10aの角速度dθ1/dt、第2の関節10bの角速度dθ2/dt及び第3の関節10cの伸縮速度dL3/dtを目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する。これにより、関節駆動装置8が、コントローラ17からの指令に従って、第1~3の関節10a~10cを駆動することで、吹付ノズル7hの先端部の位置を基準平面18内に維持しつつ、基準平面18内における、吹付ノズル7hの先端部の位置をオペレータが操作可能とする。
【0025】
(動作その他)
次に、実施形態に係る吹付支援装置1の動作について説明する。
まず、オペレータが、
図1に示したモード切替スイッチ15を操作し、動作モードを通常モードから吹付モードに切り替えたとする。そして、
図1に示した指示入力部14を操作し、
図2(a)(b)に示した吹付ノズル7hの先端部の位置を維持させる任意の平面(
図4(b)に示した基準平面18)の
図4(a)に示した天端18aに
図2(a)(b)に示した吹付ノズル7hの先端部が移動するように、
図2(a)(b)に示した第1の関節10a、第2の関節10b及び第3の関節10cを動作させる指示入力を行ったとする。すると、
図1に示したコントローラ17が、
図3に示した吹付実行処理を開始し、
図1に示した指示入力部14が出力する指示入力に基づき、
図2(a)(b)に示した第1の関節10a、第2の関節10b及び第3の関節10cの動作の目標値を算出する。
【0026】
続いて、
図1に示したコントローラ17が、算出された
図2(a)(b)に示した第1の関節10a、第2の関節10b及び第3の関節10cの動作の目標値、
図1に示した動作量検出部12a~12cの検出結果、及び
図1に示した傾き度合い検出部13の検出結果とに基づき、
図2(a)(b)に示した第1の関節10a、第2の関節10b及び第3の関節10cを目標値と等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する。これにより、
図1に示した関節駆動装置8が、
図1に示したコントローラ17からの指令に従って、
図2(a)(b)に示した第1~第3の関節10a~10cを駆動させる。それゆえ、
図1に示した指示入力部14が出力した指示入力に従って、
図2(a)(b)に示した吹付ノズル7hの先端部の位置が移動される。
【0027】
また、上記フローが繰り返され、
図4(b)に示した基準平面18の天端18aに
図2(a)(b)に示した吹付ノズル7hの先端が移動したとする。そして、オペレータが、
図1に示した位置検出ボタン16を操作したとする。すると、
図1に示したコントローラ17が、位置検出ボタン16が操作されたと判定し、
図1に示した動作量検出部12a~12cの検出結果と、傾き度合い検出部13の検出結果とに基づき
図2(a)(b)に示した吹付ノズル7hの先端部の位置を検出する。これにより、
図4(b)に示した基準平面18の天端18aの位置を検出する。続いて、検出された位置の合計が3未満であると判定し、上記フローが繰り返される。
【0028】
続いて、オペレータが、
図1に示した指示入力部14を操作し、
図4(b)に示した基準平面18の左端18bに
図2(a)(b)に示した吹付ノズル7hの先端部の位置を移動させた後、
図1に示した位置検出ボタン16を操作することで、
図1に示したコントローラ17が、
図2(a)(b)に示した吹付ノズル7hの先端部の位置を検出し、
図4(b)に示した基準平面18の左端18bの位置を検出する。続いて、オペレータが、
図1に示した指示入力部14を操作し、
図4(b)に示した基準平面18の右端18cに
図2(a)(b)に示した吹付ノズル7hの先端部の位置を移動させた後、
図1に示した位置検出ボタン16を操作することで、
図1に示したコントローラ17が、
図2(a)(b)に示した吹付ノズル7hの先端部の位置を検出し、
図4(b)に示した基準平面18の右端18cの位置を検出する。すると、
図1に示したコントローラ17が、検出された位置の合計が3つ以上であると判定する。そして、検出された3点の位置に基づき、それらの位置を含む平面を、
図4(b)に示した基準平面18として設定する。
【0029】
続いて、オペレータが、
図1に示したコンクリート吹付機4を操作し、
図2(a)(b)に示した吹付ノズル7hにコンクリートを噴出させ、トンネル内空壁の互いに隣り合う支保工2a、2b間の円周壁面に対するコンクリートの吹き付けを開始させる。そして、
図1に示した指示入力部14を操作し、円周壁面のうちのコンクリートが吹き付けられていない位置に吹付ノズル7hの先端部が移動するように、
図2(a)(b)に示した第1の関節10a及び第2の関節10bを動作させる指示入力を行ったとする。すると、
図1に示したコントローラ17が、
図1に示した指示入力部14が出力する
図2(a)(b)に示した第1の関節10a及び第2の関節10bの動作の指示入力に基づき、
図2(a)(b)に示した第1の関節10a及び第2の関節10bの動作目標値を算出する。続いて、
図1に示した動作量検出部12a~12cの検出結果と、傾き度合い検出部13の検出結果とに基づき、
図2(a)(b)に示した吹付ノズル7hの先端部の位置を
図4(b)に示した基準平面18内に維持させるための、
図2(a)(b)に示した第3の関節10cの動作の目標値を算出する。
【0030】
続いて、
図1に示したコントローラ17が、算出された
図2(a)(b)に示した第1の関節10a、第2の関節10b及び第3の関節10cの動作の目標値、
図1に示した動作量検出部12a~12cの検出結果、及び
図1に示した傾き度合い検出部13の検出結果に基づき、
図2(a)(b)に示した第1の関節10a、第2の関節10b及び第3の関節10cを目標値と等しくするための指令を
図1に示した関節駆動装置8に出力する。これにより、
図1に示した関節駆動装置8が、
図1に示したコントローラ17からの指令に従って、
図2(a)(b)に示した第1~3の関節10a~10cを駆動させる。それゆえ、
図1に示した吹付ノズル7hの先端部の位置が
図4(b)に示した基準平面18内に維持されるように、
図2(a)(b)に示した第3の関節10cが自動的に伸縮される。そのため、オペレータは、
図2(a)(b)に示した第1の関節10a及び第2の関節10bを操作するだけでよく、コンクリートが吹き付けられていない位置に吹付ノズル7hの先端部を比較的容易に移動できる。
【0031】
以上、本実施形態では、
図2(a)(b)の第1の関節10aが第1の回転関節を構成する。以下同様に、
図2(a)(b)の第2の関節10bが第2の回転関節を構成する。また、
図2(a)(b)の第3の関節10cが直動関節を構成する。
【0032】
(1)このように、本発明の実施形態に係る吹付支援装置1では、動作量検出部12a~12cの検出結果に基づき、吹付ノズル7hの先端部の位置を予め定められた平面(基準平面18)内に維持させるための、第3の関節10cの動作の目標値を算出するようにした。そして、算出した目標値に基づき、第3の関節10cの動作(伸縮速度等)を制御するようにした。それゆえ、吹付ノズル7hの先端部がある一定の平面(基準平面18)内を移動するように、第3の関節10cを自動的に伸縮させることができる。そのため、コンクリートの吹付作業をより容易に実行可能な吹付支援装置1を提供することができる。
【0033】
ちなみに、例えば、第1~第3の関節10a~10cの動作をすべて手動操作する従来の方法では、操作が難しいため、オペレータの技量が未熟であると、時間がかかったり、吹き付け厚さがムラになったり、コンクリートが付着せず落下するリバウンドが増加したりする。そのため、熟練の技量が必要とされるが、習熟には多くの時間がかかる。
これに対し、本実施形態に係る吹付支援装置1では、コンクリートの吹付作業をより容易に行うことができるため、技量が未熟なオペレータでも、作業時間を短縮でき、吹き付け厚さのムラを抑制することができ、リバウンドを抑制することができる。また、熟練の技量を持つオペレータには、操作の省力化をもたらすことができる。
【0034】
また、本発明の実施形態に係る吹付支援装置1では、第1の関節10a及び第2の関節10bの動作の指示入力を受け付ける指示入力部14を備えるようにした。そして、指示入力部14で受け付けた指示入力に基づき第1の関節10a及び第2の関節10bの動作の目標値を算出するようにした。それゆえ、コンクリートの付着状況を見つつ、吹付ノズル7hを動かすことができ、コンクリートをより適切に吹き付けることができる。
ちなみに、例えば、吹付ノズル7hを自動的に一定周期で往復運動させる方法では、操作負荷を低減できるが、吹き付け厚さがムラになったり、リバウンドが増加したりする。
【0035】
(2)また、本発明の実施形態に係る吹付支援装置1では、吹付ノズル7hの先端部の位置を検出する位置検出部17cを備えるようにした。そして、位置検出部17cで検出された3点の位置に基づき、それらの位置を含む平面を、予め定められた平面(基準平面18)として設定するようにした。それゆえ、吹付ノズル7hの先端部を移動させ、位置検出部17cに位置検出させることで、基準平面18をより容易に設定できる。
ちなみに、例えば、移動台車5の車軸と直交する方向に基準平面18を設定する方法では、基準平面18を容易に設定できるが、トンネル進行方向に対し移動台車5の車軸が曲がった状態で停止すると、吹付ノズル7hの先端部の位置が誤った平面内に維持される。
【0036】
(3)さらに、本発明の実施形態に係る吹付支援装置1では、動作量検出部12a~12cは、第1の関節10a、第2の関節10b及び第3の関節10cの動作量を検出するようにした。それゆえ、動作量検出部12a~12cの検出結果を基に、吹付ノズル7hの先端部の位置を検出することができる。そのため、吹付支援装置1を実現できる。したがって、例えば、複数の関節10a~10hの全部の動作を検出する方法、つまり、複数の関節10a~10hの全部にセンサを設ける方法に比べ、センサの数が少なくて済み、耐故障性を向上できる。また、価格を低減でき、吹付支援装置1の実現がより容易となる。なお、少ないセンサで演算するためには、第1~第3の関節10a~10cの動作しか許容されない。すなわち、その他の第4~第8の関節10d~10hの動作は禁止される。
ちなみに、例えば、複数の関節10a~10h全部にセンサを設ける方法では、使用環境が劣悪なため故障のリスクが高く、また、センサの数が増えるため価格が高価となる。
【0037】
(4)また、本発明の実施形態に係る吹付支援装置1では、移動台車5の傾き度合いを検出する傾き度合い検出部13を備えるようにした。そして、目標値演算部17aは、動作量検出部12a~12cの検出結果と、傾き度合い検出部13の検出結果とに基づき、吹付ノズル7hの先端部の位置を基準平面18内に維持させるための、第3の関節10cの動作の目標値を算出するようにした。それゆえ、第3の関節10cをより適切に制御することができ、吹付ノズル7hの先端部の位置をより適切に制御することができる。
【0038】
(変形例)
(1)なお、本実施形態では、動作量検出部12a~12cで、第1の関節10a、第2の関節10b及び第3の関節10cの動作量、移動台車5の傾き度合い、つまり、複数の関節10a~10hの一部の動作を検出する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、全ての関節10a~10hにセンサを内蔵し、複数の関節10a~10hの全部の動作を検出する構成としてもよい。この場合、コンクリートの吹付の実行中に、第4~第8の関節10d~10hも手動操作可能とすることができる。そのため、例えば、第6の関節10fを伸縮させ、吹付ノズル7hを往復運動させることで、互いに隣り合う支保工2a、2b間の円周壁面にコンクリートを容易に吹き付けることができる。
【0039】
(2)また、本実施形態では、吹付ノズル7hの先端部の位置が基準平面18内に維持されるように、第3の関節10cの動作を制御する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、第3の関節10c(ブームスライド機構)に加えて、第6の関節10f(ノズルスライド機構)の動作を制御する構成としてもよい。この場合、目標値演算部17aが、動作量検出部12a~12cの検出結果と、傾き度合い検出部13の検出結果とに基づき、吹付ノズル7hの先端部の位置を基準平面18内に維持させるための、第3の関節10c(ブームスライド機構)の動作量の目標値と、第6の関節10f(ノズルスライド機構)の動作量の目標値とを算出する。そして、関節動作制御部17bが、目標値演算部17aで算出した目標値に基づき、第3の関節10c(ブームスライド機構)の動作と第6の関節10f(ノズルスライド機構)の動作とを制御する。なお、第6の関節10f(ノズルスライド機構)は、互いに隣り合う支保工2a、2b間で吹付ノズル7hを往復運動させるのに用いられ、伸び切ってしまうと吹付作業に支障をきたすので、第3の関節(ブームスライド機構)の動作のみを制御する構成のほうが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1…吹付支援装置、2a、2b…支保工、3…切羽、4…コンクリート吹付機、5…移動台車、6…支持部材、6a…第1の構成部品、6b…第2の構成部品、6c…第3の構成部品、6d…第4の構成部品、6e…第5の構成部品、7…吹付ヘッド装置、7f…第6の構成部品、7g…第7の構成部品、7h…吹付ノズル、8…関節駆動装置、9a…第1の回転軸、9b…第2の回転軸、9c…第3の直動軸、9d…第4の回転軸、9e…第5の回転軸、9f…第6の直動軸、9g…第7の回転軸、9h…第8の回転軸、10a…第1の関節、10b…第2の関節、10c…第3の関節、10d…第4の関節、10e…第5の関節、10f…第6の関節、10g…第7の関節、10h…第8の関節、11a…スイングマスターシリンダ、11b…ブームスイングシリンダ、11c…チルトマスターシリンダ、11c…ブームチルトシリンダ、11e…ブームスライドシリンダ、11f…アームチルトシリンダ、11g…アームスイングシリンダ、11h…ノズルスライドシリンダ、11i…ノズルスイングモータ、11j…ノズルチルトシリンダ、12a~12c…動作量検出部、13…傾き度合い検出部、14…指示入力部、15…モード切替スイッチ、16…位置検出ボタン、17…コントローラ、17a…目標値演算部、17b…関節動作制御部、17c…位置検出部、17d…平面設定部、18…基準平面、18a…天端、18b…左端、18c…右端