(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】自動洗浄装置、及び、自動洗浄装置の使用方法
(51)【国際特許分類】
A47K 3/00 20060101AFI20220830BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A47K3/00 Q
B08B3/02 F
(21)【出願番号】P 2018111411
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2017164891
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】能登 健治
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 和由紀
(72)【発明者】
【氏名】杉 茂人
(72)【発明者】
【氏名】木下 将晃
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-170614(JP,A)
【文献】特開平03-191937(JP,A)
【文献】特開2008-237436(JP,A)
【文献】特開2002-263020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00、3/02、3/20
E03C 1/00-1/10
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の自動洗浄装置であって、
前記浴槽の底面に配置されたノズルと、
前記ノズルに洗浄水を噴出させるように構成された制御機と
を備え、
前記ノズルによる前記洗浄水の噴出角度は、噴出された前記洗浄水が前記浴槽の内壁面の最上部を越えないように設定され
、
前記ノズルは、
すり鉢状であり、上方及び下方に開口部が形成された部品と、
前記部品の下方の開口部を貫通しており、前記底面の法線方向に延びる軸を中心に回転するように構成された回転体と
を含み、
前記回転体は、
吐水口と、
前記吐水口に前記洗浄水を供給するように構成された通水路と
を含み、
前記吐水口及び前記通水路は、前記底面に対して斜めに傾いている、自動洗浄装置。
【請求項2】
前記浴槽には、所定水位まで自動的に湯を張る機能が搭載されており、
前記ノズルによる前記洗浄水の噴出角度は、噴出された前記洗浄水が前記浴槽の内壁面のうち前記所定水位よりも高い位置にかかるように設定されている、請求項1に記載の自動洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄水は、洗剤水及び濯ぎ水を含み、
前記制御機は、前記ノズルに、前記濯ぎ水を前記洗剤水よりも前記内壁面における高い位置にかけさせるように構成されている、請求項1又は請求項2に記載の自動洗浄装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の自動洗浄装置の使用方法であって、
前記浴槽に蓋がされていない状態で、前記自動洗浄装置に前記浴槽の洗浄を行なわせるステップを含む、自動洗浄装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動洗浄装置及び該自動洗浄装置の使用方法に関し、特に、浴槽の自動洗浄装置及び該自動洗浄装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平10-314058号公報(特許文献1)は、浴槽の自動洗浄装置を開示する。この自動洗浄装置においては、浴槽に蓋がされた状態で、浴槽の自動洗浄が行なわれる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高齢者介護施設のような様々な人々が同居する施設の一部においては、衛生面を考慮して、入浴者が変わるたびに浴槽の洗浄及び湯の入れ替えが行なわれる。このように、入浴者が変わるたびに湯の入れ替えが行なわれる場合には、湯の保温が必要ないため、風呂蓋が使用されない。
【0005】
風呂蓋が使用されない場合に、上記特許文献1に開示されているような浴槽の自動洗浄装置が用いられると、たとえば、洗浄水が浴槽の外部に多量に飛び散ってしまう可能性がある。また、たとえば高齢者介護施設において、介護作業者は、高齢者の介護で手が離せないため、浴槽の自動洗浄だけのために浴槽に風呂蓋をすることが困難な場合もある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、浴槽の洗浄時に風呂蓋が使用されない場合に、洗浄水が浴槽の外部に多量に飛び散るのを防止することができる自動洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある局面に従う自動洗浄装置は、浴槽の自動洗浄装置である。自動洗浄装置は、ノズルと、制御機とを備える。ノズルは、浴槽の底面に配置されている。制御機は、ノズルに洗浄水を噴出させるように構成されている。ノズルによる洗浄水の噴出角度は、噴出された洗浄水が浴槽の内壁面の最上部を越えないように設定されている。
【0008】
この自動洗浄装置においては、洗浄水が浴槽の内壁面の最上部を越えないように設定されている。したがって、この自動洗浄装置によれば、風呂蓋が使用されなくても、洗浄水が浴槽の外部に多量に飛び散るのを防止することができる。なお、「最上部を超えないように」とは、噴出されたすべての洗浄水が厳密に最上部を超えないことを意味するのではなく、噴出された洗浄水の一部が最上部を超えることは許容される。例えば、噴出された洗浄水の重量のうち、10%以内、好ましくは5%以内の重量の洗浄水が最上部を超えることは許容される。
【0009】
好ましくは、上記自動洗浄装置において、浴槽には、所定水位まで自動的に湯を張る機能が搭載されている。ノズルによる洗浄水の噴出角度は、噴出された洗浄水が浴槽の内壁面のうち上記所定水位よりも高い位置にかかるように設定されている。
【0010】
浴槽においては、内壁面のうち、人が入っていない状態の水位(第1水位)と人が入った状態の水位(第2水位)との間の領域が最も汚れやすい。この自動洗浄装置においては、洗浄水が浴槽の内壁面のうち人が入っていない状態の水位よりも高い位置にかけられる。したがって、この自動洗浄装置によれば、浴槽の内壁面のうち汚れが強い位置に洗浄水を適切にかけることができる。
【0011】
好ましくは、上記自動洗浄装置において、洗浄水は、洗剤水及び濯ぎ水を含む。制御機は、ノズルに、濯ぎ水を洗剤水よりも内壁面における高い位置にかけさせるように構成されている。
【0012】
この自動洗浄装置においては、濯ぎ水が洗剤水よりも高い位置にかけられる。したがって、この自動洗浄装置によれば、濯ぎ水によって洗剤水を十分に流すことができる。
【0013】
好ましくは、上記自動洗浄装置において、ノズルは、平面視において略円形であり、吐水口と、通水路とを含む。吐水口は、平面視におけるノズルの外周に形成されている。通水路は、吐水口から斜めに延びている。
【0014】
この自動洗浄装置においては、吐水口がノズルの外周に形成されているとともに、洗浄水が斜め下方から吐水口に供給される。したがって、この自動洗浄装置によれば、ノズルの外周から洗浄水が斜め上方に吐出するため、第1水位と第2水位との間の領域など浴槽の内壁面の適切な位置に洗浄水をかけることができる。
【0015】
好ましくは、上記自動洗浄装置において、ノズルは、すり鉢状の部品と、通水路とを含む。すり鉢状の部品は、上方及び下方に開口部が形成されている。通水路は、上記部品の下方の開口部から延びており、上記部品の内側表面に向けて洗浄水を供給するように構成されている。通水路から上記部品の内側表面に向けて洗浄水が供給された場合に、上記部品の内側表面において洗浄水の渦が形成されて、洗浄水がノズルの外周方向に散布される。
【0016】
この自動洗浄装置において、洗浄水は、渦を巻いた状態で、ノズルから吐出する。したがって、この自動洗浄装置によれば、平面視におけるノズルの外周よりも外側に向かって洗浄水が渦を形成しながら吐出するため、浴槽の内壁面の適切な位置に洗浄水をかけることができる。
【0017】
好ましくは、上記自動洗浄装置において、ノズルは、すり鉢状の部品と、回転体とを含む。上記部品においては、上方及び下方に開口部が形成されている。回転体は、吐水口と、通水路とを含む。回転体は、浴槽の底面の法線方向に延びる軸を中心に回転するように構成されている。通水路は、吐水口に洗浄水を供給するように構成されている。吐水口及び通水路は、浴槽の底面に対して斜めに傾いている。
【0018】
この自動洗浄装置においては、回転体が回転するとともに、洗浄水が斜め下方から回転体の吐水口に供給される。したがって、この自動洗浄装置によれば、回転体が回転した状態で洗浄水が斜め上方に吐出するため、浴槽の内壁面の適切な位置に洗浄水をかけることができる。
【0019】
本発明の別の局面に従う、自動洗浄装置の使用方法は、上記自動洗浄装置の使用方法であって、浴槽に蓋がされていない状態で、自動洗浄装置に浴槽の洗浄を行なわせるステップを含む。
【0020】
この自動洗浄装置の使用方法においては、浴槽の自動洗浄時に浴槽に蓋がされない。したがって、この使用方法によれば、作業者が浴槽の自動洗浄の度に浴槽に蓋をするという作業を省略することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、浴槽の洗浄時に風呂蓋が使用されない場合であっても、洗浄水が浴槽の外部に多量に飛び散るのを防止することができる自動洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態1に従う自動洗浄装置を含む風呂システムの概略構成を示す図である。
【
図5】洗浄水の軌道を説明するための浴槽の平面図である。
【
図8】風呂システムにおける自動洗浄の流れを示すフローチャートである。
【
図9】高齢者介護施設における介護作業者の作業及び風呂システムの動作を示すタイムチャートである。
【
図10】実施の形態2における洗剤水及び濯ぎ水の軌道を示す図である。
【
図11】実施の形態3におけるノズルの平面図である。
【
図13】実施の形態4におけるノズルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
[1.実施の形態1]
(1-1.風呂システムの構成)
図1は、本実施の形態1に従う自動洗浄装置を含む風呂システムの概略構成を示す図である。この風呂システムは、主に高齢者介護施設のような様々な人々が同居する施設の内部に設置され、共用される。なお、
図1においては、配管の一部が省略されている。
【0025】
図1に示されるように、風呂システム1は、浴槽100を含む浴室10と、制御機200と、リモコン400とを備えている。詳細については後述するが、風呂システム1においては、制御機200に含まれるポンプによって、湯及び洗浄水が浴槽100に供給される。風呂システム1においては、制御機200がリモコン400から制御信号を受信して各種制御を実行することによって、浴槽100の排水、洗浄及び湯はりが自動的に行なわれる。
【0026】
上述のように、浴室10は、少なくとも浴槽100を含んでいる。浴室10は、例えば、壁パネル、天井パネル及び防水パン等から構成されるユニット室とすることができる。浴槽100には、蛇口110と、洗剤タンク120と、排水口130と、ノズル140とが設けられている。
【0027】
蛇口110は、制御機200から湯の供給を受けて、浴槽100に湯をはるように構成されている。蛇口110は、浴槽100の框上面に設けられている。そして、蛇口110の吐水口は、浴槽100のあふれ面よりも上方に設けられている。したがって、風呂システム1においては、蛇口110の吐水口から湯が制御機200側に逆流することがないため、蛇口110からの湯の逆流を防止するための逆流防止タンクを設ける必要がない。
【0028】
洗剤タンク120は、浴槽100の洗浄時に使用される液状の洗剤を貯えるように構成されている。詳細については後述するが、洗剤タンク120に貯えられた洗剤は、制御機200を経由してノズル140に供給される。洗剤タンク120の本体は、浴槽100の框の下方に取り付けられ、浴槽本体とエプロン125、浴室壁との間に収められている。洗剤タンク120の蓋122は、浴槽100の框の上方に突出している。たとえば、介護作業者は、蓋122を開けることによって、洗剤タンク120内に洗剤を注入することができる。
【0029】
排水口130は、大口径であって下方開放された浴槽排水口である。排水口130は、制御機200からの制御信号S1に従って自動的に開閉するように構成されている。自動開閉のための機構は、通水面積の減少を抑制するために、コンパクトに形成されている。排水口130が閉鎖された状態で、蛇口110から湯が供給されると浴槽100内に湯が貯えられる。一方、浴槽100内に湯が貯えられた状態で、排水口130が開放されると、浴槽100内の湯が排水される。
【0030】
ノズル140は、たとえば金属若しくは樹脂製であり、制御機200から供給される洗浄水を放射状に噴出するように構成されている。ここで、「噴出」とは、液体を噴き出すことをいい、霧状及び粒状の液体を噴き出すことを含む。たとえば、ノズル140は、制御機200から供給される洗剤水(洗剤タンク120に貯えられた洗剤を湯で薄めたもの)及び濯ぎ水を噴出する。本実施の形態1においては、ノズル140から噴出される洗浄水によって、浴槽100の自動洗浄が行なわれる。浴槽100の自動洗浄においては、ノズル140が浴槽100の内壁面に向かって洗剤水を放射状に噴出し、その後、ノズル140が浴槽100の内壁面に向かって濯ぎ水を放射状に噴出することによって、浴槽100の内壁面の汚れが落とされる。但し、マニュアル操作により、洗剤水のみ、あるいは濯ぎ水のみを噴出することもできる。
【0031】
図2は、浴槽100の平面図である。
図2に示されるように、排水口130及びノズル140は、浴槽100の底面に設けられている。特に、ノズル140は、浴槽100の底面中央部分に設けられている。また、蛇口110及び洗剤タンク120の各々は、浴槽100の角部分に設けられている。
【0032】
再び
図1を参照して、制御機200は、各種ポンプ210と、逆流防止タンク220と、受信部230と、制御機本体240とを含んでいる。制御機200は、たとえば、浴室10の天井裏に設置されている。
【0033】
各種ポンプ210の説明をする前に、風呂システム1における配管のうち、
図1において省略されている配管の一部について説明する。風呂システム1においては、たとえば、各種ポンプ210のいずれかと蛇口110とをつなぐ配管、各種ポンプ210のいずれかとノズル140とをつなぐ配管、及び、各種ポンプ210のいずれかと洗剤タンク120とをつなぐ配管が設けられている。
【0034】
各種ポンプ210は、1又は複数のポンプを含み、たとえば、以下の機能を実現するように構成されている。各種ポンプ210は、たとえば、給湯器300に接続された湯配管305から供給された湯と、水配管310から供給された水とを混ぜることによって温度が調整された湯を蛇口110に供給する機能を有する。なお、給湯器300としては、公知の種々の給湯器を用いることが可能である。
【0035】
また、各種ポンプ210は、洗剤タンク120から供給された洗剤と、湯配管305から供給された湯とを混ぜることによって生成された洗剤水をノズル140に供給する機能を有する。また、各種ポンプ210は、湯配管305から供給された湯を濯ぎ水としてノズル140に供給する機能を有する。たとえば、各種ポンプ210は、洗剤水及び濯ぎ水を一定水圧でノズル140に供給するように構成されている。
【0036】
逆流防止タンク220は、ノズル140からの湯の逆流を防止するために設けられたタンクである。逆流防止タンク220は、いわゆる、シスターンタンクである。
【0037】
受信部230は、リモコン400と通信するように構成されている。受信部230は、たとえば、リモコン400から赤外線を受信し、受信された信号を電気信号に変換して、受信結果を制御機本体240に送信する。たとえば、受信部230は、介護作業者がリモコン400を介して浴槽100の自動洗浄やお湯はりの開始指示を行なった場合に、所定の信号を受信し、受信結果を制御機本体240に送信する。
【0038】
制御機本体240は、図示しないCPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含み、内部メモリに記憶された情報や各センサ(不図示)からの信号等に基づいて各種ポンプ210及び排水口130等を制御するように構成されている。
【0039】
(1-2.浴槽の自動洗浄)
風呂システム1が設置される高齢者介護施設等の一部においては、衛生面を考慮して、入浴者(要介護者)が変わるたびに浴槽100の洗浄及び湯の入れ替えが行なわれる。このように、入浴者が変わるたびに湯の入れ替えが行なわれる場合には、湯の保温が必要ないため、風呂蓋が使用されない。
【0040】
風呂蓋が使用されない状態で浴槽100の自動洗浄が行なわれる場合に、仮にノズル140からの洗浄水の噴出角度が大きすぎると、洗浄水が浴槽100の外部に多量に飛び散ってしまう可能性がある。また、高齢者介護施設において、介護作業者は、高齢者の介護で手が離せないため、浴槽100の自動洗浄だけのために浴槽に風呂蓋をすることが困難な場合もある。
【0041】
本実施の形態1において、ノズル140による洗浄水の噴出角度は、噴出された洗浄水が浴槽100の内壁面の最上部を超えないように設定されている。すなわち、本実施の形態1においては、洗浄水が浴槽100の内壁面の最上部から外部に飛び散る可能性を低減できる。本実施の形態1によれば、風呂蓋が使用されなくても、洗浄水が浴槽100の外部に飛び散る可能性を低減することができる。以下、ノズル140の形状、ノズル140からの洗浄水の軌道等について説明する。
【0042】
(1-3.ノズルの構成)
図3は、ノズル140の平面図である。
図4は、
図3のIV-IV断面図である。
図3,4を参照して、ノズル140は、平面視において略円形である。ノズル140は、部品146,148を含んでいる。
【0043】
部品146は、上方及び下方の各々に略円形の開口部が形成された金属製の部品である。部品146において、上方の開口部の直径d1(
図3)は、下方の開口部の直径d2(
図4)よりも長い。下方の開口部には、制御機200から洗浄水が供給される。
【0044】
部品148は、部品146の上方に取り付けられた金属製の部品である。部品148の下部は、円錐状である。部品146と部品148との間には、円錐側面状の狭い空間である通水路144が形成される。通水路144の上端部、つまり斜め上方先端の吐水口142は、ノズル140の外周全体に形成される。部品146と部品148との間には部分的にこれらを連結する壁が設けられ、通水路144は保持される。部品146の下部開口から通水路144を介して斜め上方に供給された洗浄水は、吐水口142から斜め上方に向かって噴出する。
【0045】
なお、破線矢印L1は、ノズル140から噴出される洗浄水の軌道の一部を示す。破線矢印L1は、放物線である。破線L2は、破線矢印L1の接線である。本実施の形態1における洗浄水の「噴出角度」は、浴槽100の底面と破線L2とがなす角An1である。
【0046】
(1-4.洗浄水の軌道及び到達位置)
図5は、洗浄水の軌道を説明するための浴槽100の平面図である。
図6は、
図5のVI-VI断面図である。
図7は、
図5のVII-VII断面図である。
図5-7において、破線矢印は、ノズル140が噴出する洗浄水の軌道の一部を示す。
図5に示されるように、ノズル140は、ノズル140の外周方向全体に洗浄水を噴出する。
【0047】
図6,7を参照して、水位102は、要介護者が浴槽100に入る前の水位である。たとえば、浴槽100には水位102(所定水位)まで自動的に湯をはる機能が搭載されており、水位102は、たとえば水位104(あふれ面:浴槽の上端)の70%~80%の水位である。ノズル140から噴出された洗浄水は、水位102と水位104との間の領域A1にかかるように調整される。すなわち、上述したノズル140の噴出角度や、水圧等を調整することで、洗浄水が領域A1にかかるように調整されている。
【0048】
浴槽100においては、内壁面のうち、人が入っていない状態の水位(水位102)と人が入った状態の水位(水位104)との間の領域A1が最も汚れやすい。この浴槽100においては、洗浄水が浴槽100の内壁面のうち人が入っていない状態の水位(水位102)よりも高い位置にかけられる。
【0049】
すなわち、ノズル140における洗浄水の噴出角度は、噴出された洗浄水が、水位102より高い位置、かつ、水位104を越えない位置にかけられる角度(An1(
図4))となっている。したがって、ノズル140によれば、浴槽100の内壁面のうち汚れが強い位置に洗浄水を適切にかけることができる。そして、浴槽100の内壁面に向かって噴出された洗浄水は内壁面において下方に垂れるため、ノズル140によれば、浴槽100を全体的に洗浄することができる。
【0050】
(1-5.自動洗浄の流れ)
図8は、風呂システム1における自動洗浄の流れを示すフローチャートである。
図8のフローチャートに示される処理は、浴槽100に風呂蓋が置かれていない状態で、介護作業者がリモコン400を介して浴槽100の自動洗浄・お湯はりの開始指示を行なうと開始される。
【0051】
図8を参照して、介護作業者によって自動洗浄・お湯はりの開始指示が行なわれると、制御機200は、開放状態となるように排水口130を制御する(ステップS100)。
【0052】
その後、制御機200は、所定時間が経過したかを判定する(ステップS110)。所定時間は、予め定められた時間であり、たとえば、水位102まで貯められた湯の排水が終了する時間にマージンを加えた時間である。所定時間が経過するまで、制御機200は待機する(ステップS110においてNO)。
【0053】
所定時間が経過したと判定されると(ステップS110においてYES)、湯の排水が完了しているため、制御機200は、ノズル140に洗浄水を供給し、浴槽100の洗浄を開始する(ステップS120)。たとえば、制御機200は、洗剤水のノズル140への供給と、濯ぎ水のノズル140への供給とを複数回繰り返すことによって、浴槽100の洗浄を行なう。
【0054】
浴槽100の洗浄が完了すると、制御機200は、閉鎖状態となるように排水口130を制御する(ステップS130)。その後、制御機200は、蛇口110に湯を供給することによって、浴槽100への給水を開始する(ステップS140)。水位102までの給水が終了することによって、本フローチャートに示される処理は終了する。
【0055】
このように、本実施の形態1においては、浴槽100における排水、洗浄及び給水が自動的に行われる。次に、風呂システム1が高齢者介護施設に導入された場合の効果について説明する。
【0056】
(1-6.高齢者介護施設に導入した場合の効果)
図9は、高齢者介護施設における介護作業者の作業及び風呂システムの動作を示すタイムチャートである。
図9を参照して、横軸は時間を示す。縦軸の上方は、風呂システム1が導入されていない施設における介護作業及び風呂システム(風呂システム1とは異なる風呂システム)の動作を示し、縦軸の下方は、風呂システム1が導入されている施設における介護作業及び風呂システム1の動作を示す。
【0057】
図9の上方を参照して、風呂システム1が導入されていない高齢者介護施設においては、たとえば、入浴者が変わるたびの湯の入れ替え及び浴槽の洗浄が介護作業者によって手動で行なわれる。したがって、入浴が終わった要介護者の拭き取り、脱衣所への移動、着衣等の介護作業を一通り終えた後に、浴槽の洗浄及び浴槽の湯はりが介護作業者によって手動で行なわれる。
【0058】
一方、
図9の下方を参照して、風呂システム1が導入されている高齢者介護施設においては、上述のように、介護作業者がリモコン400を操作するだけで(SW(スイッチ)操作)、浴槽100における湯の排水、洗浄及び湯はりが自動的に行なわれる。したがって、風呂システム1が導入されている施設においては、要介護者の入浴が終わった場合に、介護作業者が、要介護者の拭き取り等を行なう前に、リモコン400の操作だけを行なえば、要介護者の拭き取り等と浴槽100の自動洗浄等とを並列的に進めることができる。
【0059】
したがって、たとえば高齢者介護施設においては、風呂システム1を導入することによって、一部の作業を並列的に進めることができるため、要介護者の入浴後、次の要介護者の入浴を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0060】
(1-7.特徴)
以上のように、本実施の形態1において、ノズル140による洗浄水の噴出角度は、噴出された洗浄水が浴槽100の内壁面の最上部を超えないように設定されている。そのため、浴槽100を超えて外部に洗浄水が多量に飛び散るのを防止することができる。特に、本実施形態では、ノズルから噴出された洗浄水が、水位102と104との間の領域A1にかかるように設定されているため、浴槽において汚れやすい部分を効果的に洗浄でき、且つ洗浄水が外部に多量に飛び散るのを防止することができる。したがって、本実施の形態1によれば、風呂蓋が使用されなくても、洗浄水が浴槽100の外部に飛び散る可能性を低減することができる。なお、上記構成により、すべての洗浄水が厳密に浴槽100の外部に飛び散らないのではなく、ごく少量、例えば、噴出された洗浄水の重量の10%以内、好ましくは5%以内の重量の洗浄水が、浴槽100の最上部を超えて外部に飛び散ることは許容される。この点は、後述する実施形態を含め、本発明において同じである。
【0061】
なお、浴槽100は、本発明の「浴槽」の一例であり、ノズル140は、本発明の「ノズル」の一例であり、制御機200は、本発明の「制御機」の一例である。ノズル140と制御機200とを含む構成は、本発明の「自動洗浄装置」の一例である。また、吐水口142は、本発明の「吐水口」の一例であり、通水路144は、本発明の「通水路」の一例である。
【0062】
[2.実施の形態2]
上記実施の形態1においては、ノズル140から噴出される洗剤水の軌道と、濯ぎ水の軌道とは同様であった。しかしながら、ノズル140から噴出される洗剤水の軌道と、濯ぎ水の軌道とは同様である必要はない。本実施の形態2においては、洗剤水の軌道と、濯ぎ水の軌道とが異なる。ここでは、実施の形態1と異なる部分を中心に説明し、同様部分については説明を繰り返さない。
【0063】
図10は、本実施の形態2における洗剤水及び濯ぎ水の軌道を示す図である。
図10を参照して、軌道O1はノズル140から噴出された洗剤水の軌道であり、軌道O2はノズル140から噴出された濯ぎ水の軌道である。
【0064】
すなわち、本実施の形態2においては、洗剤水よりも濯ぎ水の方が、浴槽100Aの内壁面において高い位置に噴出される。たとえば、本実施の形態2においては、濯ぎ水の噴出時に制御機本体240がポンプ210の出力を上げ、洗剤水の噴出時よりも水圧を上げることによって、濯ぎ水が洗剤水よりも高い位置に噴出される。
【0065】
本実施の形態2によれば、濯ぎ水が洗剤水よりも高い位置から下方に流れることによって、洗剤水を確実に排水口130に流すことができる。
【0066】
[3.実施の形態3]
上記実施の形態1においては、浴槽100の底面に設けられるノズルとして、ノズル140が用いられた。しかしながら、浴槽100の底面に設けられるノズルの形状は、ノズル140に限定されない。本実施の形態3においては、上記実施の形態1と比較して、浴槽100の底面に設けられるノズルの構造が異なる。ここでは、実施の形態1と異なる部分を中心に説明し、同様部分については説明を繰り返さない。
【0067】
図11は、本実施の形態3におけるノズル140Bの平面図である。
図12は、
図11のXII-XII断面図である。
図11,12において、破線矢印は、洗浄水の軌道の一部を示す。
図11,12を参照して、ノズル140Bは、部品146Bを含んでいる。部品146Bは、すり鉢状の部品である。
【0068】
部品146Bの上方には内壁面が円錐状の吐水口142Bが形成されている。すなわち、下方にいくにしたがって径が小さくなるように形成されている。部品146Bの下方には開口部147Bが形成されている。開口部147Bから斜め下方には、通水路144Bが延びている。通水路144Bには、制御機200から洗浄水が供給される。通水路144Bを介して斜め上方に供給された洗浄水は、部品146Bの内側表面において渦を形成し、ノズル140Bの外周方向全体に散布される。本実施の形態3におけるノズル140Bによれば、洗浄水がノズル140Bの外周方向全体に散布されるため、浴槽100の内壁面の適切な位置に洗浄水をかけることができる。
【0069】
なお、破線矢印L31は、ノズル140Bから噴出される洗浄水の軌道の一部を示す。破線矢印L31は、放物線である。破線L32は、破線矢印L31の接線である。本実施の形態3における洗浄水の「噴出角度」は、浴槽100の底面と破線L32とがなす角An3である。
【0070】
[4.実施の形態4]
本実施の形態4においては、上記実施の形態3と同様、上記実施の形態1と比較して、浴槽100の底面に設けられるノズルの構造が異なる。ここでは、実施の形態1と異なる部分を中心に説明し、同様部分については説明を繰り返さない。
【0071】
図13は、本実施の形態4におけるノズル140Cを示す図である。
図13を参照して、ノズル140Cは、部品146Cと、回転体148Cとを含んでいる。部品146Cは、上方及び下方の各々に略円形の開口部が形成された樹脂製の部品である。部品146Cおいて、上方の開口部の直径d41は、下方の開口部の直径d42よりも長い。
【0072】
回転体148Cは、回転軸AX1を中心に回転するように構成された金属製の部品である。たとえば、回転体148Cの回転は、制御機200によって制御される。回転体148Cの内部には、通水路144Cが形成されている。回転体148Cは、部品146Cの上方及び下方の開口部を貫通している。回転体148Cの一部が屈曲することによって、回転体148Cの先端(吐水口142C)は、斜め上方を向いている。本実施の形態4におけるノズル140Cを用いて、回転体148Cが回転した状態で洗浄水を斜め上方に噴出することによって、浴槽100の内壁面上端付近の適切な位置に洗浄水をかけることができる。ノズル140Cの回転位置に応じてポンプ210の出力を調整して、浴槽100の大きさや形状に関わらず常に浴槽100の上端付近の適切な位置に洗浄水が当たるようにしてもよい。
【0073】
なお、破線矢印L41は、ノズル140Cから噴出される洗浄水の軌道の一部を示す。破線矢印L41は、放物線である。破線L42は、破線矢印L41の接線である。本実施の形態4における洗浄水の「噴出角度」は、浴槽100の底面と破線L42とがなす角An4である。
【0074】
[5.変形例]
以上、実施の形態1-4について説明したが、本発明は、上記実施の形態1-4に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。但し、以下の変形例は適宜組合せ可能である。
【0075】
(5-1)
上記実施の形態1-4においては、介護作業者がリモコン400を操作することによって、浴槽の自動洗浄が開始されることとした。しかしながら、自動洗浄の開始のきっかけは、リモコン400の操作に限定されない。たとえば、浴室10に人感センサが設置され、人感センサによって介護作業者及び要介護者の浴室10からの退室が検知された場合に、自動洗浄が開始されるようにしてもよい。これにより、介護作業者がリモコン400の操作を忘れることによって、湯はりが行なわれないという事態を回避することができる。
【0076】
(5-2)
上記実施の形態1-4においては、制御機200が浴室10の天井裏に設置された。しかしながら、制御機200の設置場所はこれに限定されない。たとえば、制御機200は、浴室10の内部に設置されてもよいし、浴室10に隣接する脱衣所に設置されてもよい。
【0077】
(5-3)
上記実施の形態1-4においては、洗剤タンク120は、浴槽に取り付けられた。しかしながら、洗剤タンク120の設置位置はこれに限定されない。たとえば、洗剤タンク120は、浴室10に隣接する脱衣所に設置されてもよいし、制御機200の内部に設けられてもよい。
【0078】
(5-4)
上記実施の形態1-4においては、制御機200に湯配管305と水配管310とが接続された。しかしながら、制御機200が浴槽100に一定温度の湯を供給すれば足りる場合には、水配管310は、必ずしも制御機200に接続されなくてもよい。
【0079】
(5-5)
上記実施の形態1においては、ノズル140の外周全体に吐水口142が形成されることとした。しかしながら、吐水口は、必ずしもノズル140の外周全体に形成される必要はない。たとえば、ノズル140の外周においては、所定間隔おきに複数の吐水口が設けられてもよい。この場合であっても、所定間隔をある程度短くすることによって、浴槽100の内周全体に洗浄水をかけることができる。
【0080】
(5-6)
上記実施の形態1,3,4においては、角度An1,An3,An4がそれぞれ洗浄水の「噴出角度」とされた。しかしながら、洗浄水の噴出角度はこれに限定されない。洗浄水の「噴出角度」は、ノズルから噴出された洗浄水が浴槽100の内壁面の最上部を越えない角度であればよい。より好ましくは、洗浄水の「噴出角度」は、ノズルから噴出された洗浄水が水位102と水位104との間の領域A1(
図6,7)にかかる角度であればよい。
【0081】
(5-7)
上記実施の形態1-4においては、浴槽100内にノズルが1つだけ設けられた。しかしながら、浴槽100内に設けられるノズルの数は1つに限定されない。たとえば、ノズルを浴槽100の長手方向や短手方向に複数箇所設けてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 風呂システム、10 浴室、100,100A 浴槽、102,104 水位、110 蛇口、120 洗剤タンク、122 蓋、125 エプロン、130 排水口、140,140B,140C ノズル、142,142B,142C 吐水口、144,144B,144C 通水路、146,146B,146C,148 部品、148C 回転体、200 制御機、210 各種ポンプ、220 逆流防止タンク、230 受信部、240 制御機本体、300 給湯器、305 湯配管、310 水配管、400 リモコン、A1 領域、AX1 回転軸、O1,O2 軌道、S1 制御信号。