(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】緩衝CMP研磨溶液
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220830BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20220830BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20220830BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
B24B37/00 H
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018116812
(22)【出願日】2018-06-20
【審査請求日】2021-06-04
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ホンユー・ワン
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-153865(JP,A)
【文献】特開2015-159259(JP,A)
【文献】特開2007-16232(JP,A)
【文献】特表2005-522027(JP,A)
【文献】特開2014-208390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09K 3/14
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基材を化学機械研磨するのに有用な水溶液であって、
酸化剤0~25重量%、
グアニジン塩酸塩、グアニジン硫酸塩、アミノグアニジン塩酸塩、グアニジン酢酸、グアニジン炭酸塩、グアニジン硝酸塩又はそれらの組み合わせ0.05~5重量%、
溶液を緩衝するためのグリシン緩衝成分0.1~1重量%、
溶液を緩衝するためのN-メチルエタノールアミン緩衝成分0.1~5重量%、
有機酸錯化剤0.05~5重量%、
ベンゾトリアゾールインヒビター0.05~2.2重量%、
コロイダルシリカ0~5重量%、及び
残余としての水
を含み、前記水溶液が9.5~10.5のpH及び0.1~0.8の緩衝能βを有し、
各緩衝成分がアルカリ(alkali)、アルカリ性(alkaline)及び遷移金属イオンを含まない、水溶液。
【請求項2】
酸化剤を含まない、請求項1記載の水溶液。
【請求項3】
コロイダルシリカを少なくとも0.01重量%含有する、請求項1記載の水溶液。
【請求項4】
pH10に緩衝されている、請求項1記載の水溶液。
【請求項5】
有機酸錯化剤がクエン酸である、請求項1記載の水溶液。
【請求項6】
半導体基材を化学機械研磨するのに有用な水溶液であって、
酸化剤0~5重量%、
グアニジン塩酸塩、グアニジン炭酸塩又はそれらの組み合わせ0.1~3重量%、
溶液を緩衝するためのグリシン緩衝成分0.1~1重量%、
溶液を緩衝するためのN-メチルエタノールアミン緩衝成分0.5~3重量%、
有機酸錯化剤0.1~5重量%、
ベンゾトリアゾールインヒビター0.05~1重量%、
コロイダルシリカ0.01~5重量%、及び
残余としての水
を含み、前記水溶液が9.8~10.2のpH及び0.2~0.7の緩衝能βを有し、
各緩衝成分がアルカリ、アルカリ性及び遷移金属イオンを含まない、水溶液。
【請求項7】
酸化剤を含まない、請求項6記載の水溶液。
【請求項8】
コロイダルシリカが0.05~5重量%である、請求項6記載の水溶液。
【請求項9】
pH10に緩衝されている、請求項6記載の水溶液。
【請求項10】
有機酸錯化剤がクエン酸である、請求項6記載の水溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、現在係属中の2017年6月21日出願のUS Ser.No.15/628,838の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
超大規模集積回路(ULSI)技術がさらに小さなライン幅に移行するにつれ、従来の化学機械研磨(CMP)加工の集積に関して新たな難題が生じる。加えて、low-k及び超low-k絶縁膜の導入は、そのような膜の低い機械的強度及び隣接層への弱い接着のせいで、より穏和なCMP加工の使用を要求する。さらには、ますます厳しくなる欠陥仕様は、low-k膜のための研磨スラリーに対してさらなる要求を課すようになっている。
【0003】
USLIへの様々なlow-k膜の集積はまた、多数の余分な工程及び新技術、例えば超臨界清浄、絶縁体及び金属キャップ、バリヤ及び銅の共形的堆積、低いダウンフォース及び無砥粒スラリーを用いる化学機械平坦化の統合を要求することがある。これらの技術的オプションに加えて、ULSI製造者は、加工の複雑さ対収率、信頼性、機械的強度及び性能、すなわち、抵抗-キャパシタンス(RC)遅延からの電力散逸を考慮し、それらに対処しなければならない。
【0004】
low-k材料の実現を取り巻く複雑な事情が、バリヤCMP加工の場合により大きな難題を招き入れ、それが、複雑な入力変数を制御し、一貫して高い収率を達成する能力を必要とするであろう。プロセス変数のチューニングは、low-k膜に対する研磨の変動を減らすことに貢献することができる。しかし、最も望ましいバリヤCMPスラリーは、プロセスチューニング可能な性能調節自在性を有するlow-k絶縁体専用の界面活性化剤を配合するであろう。例えば、Thomas et. al.は、米国特許出願公開第2007/0051917号において、窒化タンタル、銅及び炭素ドープ酸化物(CDO)除去速度を制御するために、ポリビニルピロリドン及びリン酸塩の量を調節するスラリーを開示している。ポリビニルピロリドン及びシリカの量の調節は、そのスラリーを用いて達成される、CDO(超low-k絶縁体)除去速度に対する窒化タンタル(バリヤ)除去速度の比を制御する。残念ながら、これらのスラリーは、一部の用途の場合、誤ったバリヤ選択比を有することがある。さらに、これらのアルカリ性スラリーは、low-k絶縁体を汚染し得るあるカリウムを含有する。
【0005】
過度なカリウム汚染なしに絶縁体に対する選択的バリヤ除去及び低いエロージョンを達成することができる選択的バリヤ研磨溶液が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、半導体基材を化学機械研磨するのに有用な水溶液であって、酸化剤0~25重量%、グアニジン塩酸塩、グアニジン硫酸塩、アミノグアニジン塩酸塩、グアニジン酢酸、グアニジン炭酸塩、グアニジン硝酸塩又はそれらの組み合わせ0.05~5重量%、溶液を緩衝するためのグリシン緩衝成分0.1~1重量%、溶液を緩衝するためのN-メチルエタノールアミン緩衝成分0.1~5重量%、有機酸錯化剤0.05~5重量%、ベンゾトリアゾールインヒビター0.05~2.2重量%、コロイダルシリカ0~5重量%及び残余としての水を含み、前記水溶液が9.5~10.5のpH及び0.1~0.8の緩衝能βを有し、各緩衝成分がアルカリ(alkali)、アルカリ性(alkaline)及び遷移金属イオンを含まない、水溶液を提供する。
【0007】
本発明のさらなる態様は、半導体基材を化学機械研磨するのに有用な水溶液であって、酸化剤0~5重量%、グアニジン塩酸塩、グアニジン炭酸塩又はそれらの組み合わせ0.1~3重量%、溶液を緩衝するためのグリシン緩衝成分0.1~1重量%、溶液を緩衝するためのN-メチルエタノールアミン緩衝成分0.5~3重量%、有機酸錯化剤0.1~5重量%、ベンゾトリアゾールインヒビター0.05~1重量%、コロイダルシリカ0.01~5重量%及び残余としての水を含み、前記水溶液が9.8~10.2のpH及び0.2~0.7の緩衝能βを有し、各緩衝成分がアルカリ、アルカリ性及び遷移金属イオンを含まない、水溶液を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
グリシンとN-メチルエタノールアミンとの組み合わせを添加すると、カリウムの添加なしで、すなわち、半導体基材に悪影響を及ぼすことなく、バリヤ溶液を緩衝することができるということがわかった。本明細書に関して、半導体基材は、特定の電気信号を発することができるやり方で絶縁層によって分けられた金属導体配線及び絶縁材料を有するウェーハを含む。さらに、これらの溶液は、砥粒含量の増加を可能にして、low-k又は銅除去速度にマイナスの影響を及ぼすことなく、バリヤ除去速度をさらに高める。最後に、これらの溶液は、多様な厳しい半導体用途を満足させるためにバリヤ、銅及び絶縁体除去速度を調節するためのプラットフォームを提供する。
【0009】
0.1~1重量%のグリシン緩衝成分を0.1~5重量%のN-メチルエタノールアミン緩衝成分と組み合わせたものが、アルカリ性バリヤ研磨溶液のために有効な緩衝を提供するということがわかった。有利には、溶液は、0.5~3重量%のN-メチルエタノールアミンをグリシンと組み合わせて含む。最も有利には、溶液は、0.5~3重量%のN-メチルエタノールアミンを0.4重量%のグリシンと組み合わせて含む。この緩衝成分の組み合わせは、アルカリ性pHレベルでの緩衝に特に有効である。特に断りのない限り、本明細書では、すべての濃度を百万分率等の重量%で表現する。
【0010】
研磨組成物は塩基性pHレベルで作用することができる。有利には、研磨組成物は、9.5~10.5のpH及び残余としての水を有する。好ましくは、pHは9.8~10.2であり、最も好ましくは、pHは10に緩衝されている。加えて、溶液は、最も好ましくは、偶発的な不純物を制限するために、残余としての脱イオン水に依存する。最も有利には、溶液は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのような、ナトリウム又はカリウムイオンの供給源を含有しない。好ましくは、全カリウムイオン濃度は5重量百万分率又は5重量ppm未満である。最も好ましくは、全カリウムイオン濃度は1重量百万分率又は1重量ppm未満である。
【0011】
タンタルバリヤ除去剤は、バリヤ除去速度を高めるために、グアニジン塩及びその混合物であることができる。具体的な例は、グアニジン塩酸塩、グアニジン硫酸塩、アミノグアニジン塩酸塩、グアニジン酢酸、グアニジン炭酸塩及びグアニジン硝酸塩又はそれらの組み合わせの少なくとも一つを含む。有利には、溶液は、グアニジン塩酸塩、グアニジン炭酸塩又はそれらの組み合わせを含む。任意選択で、溶液はバリヤ除去剤を0.05~5重量%含有する。有利には、溶液はバリヤ除去剤を0.1~3重量%含有する。最も有利には、溶液はバリヤ除去剤を0.2~2.5重量%含有する。これらのバリヤ除去剤は、固形分濃度がより低い調合物の場合により大きな影響を有する。さらには、pHレベルに依存して、過酸化水素のような酸化剤の添加量を増すと、バリヤ除去速度の影響をさらに増すことができる。
【0012】
0~25重量%の任意の量の酸化剤は、バリヤ層、例えばタンタル、窒化タンタル、チタン及び窒化チタンの除去を促進することができる。任意選択で、溶液は酸化剤を0~20重量%含有する。最も好ましくは、溶液は酸化剤を0~5重量%含有する。好適な酸化剤としては、例えば、過酸化水素、一過硫酸塩、ヨウ素酸塩、過フタル酸マグネシウム、過酢酸及び他の過酸、過硫酸塩、臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、硝酸塩、鉄塩、セリウム塩、マンガンMn(III)、Mn(IV)及びMn(VI)塩、銀塩、銅塩、クロム塩、コバルト塩、ハロゲン、次亜塩素酸塩又は前記酸化剤の少なくとも一つを含む組み合わせが挙げられる。好ましい酸化剤は過酸化水素である。酸化剤は通常、使用の直前に研磨組成物に加えられ、そのような場合、酸化剤は、別個のパッケージに収容され、使用の場で混合されるということが留意されるべきである。これは、過酸化水素のような不安定な酸化剤の場合に特に有用である。
【0013】
また、過酸化物のような酸化剤の量を調節すると、金属配線除去速度を制御することができる。例えば、過酸化物濃度の増大は銅除去速度を高める。しかし、酸化剤の過度な増量は研磨速度に対して悪影響を及ぼす。最も好ましくは、溶液は酸化剤を含まない。
【0014】
バリヤ金属研磨組成物は、任意選択で、バリヤ材料の「機械的」除去のためのコロイダルシリカを含む。コロイダルシリカは、low-k絶縁体を低速で侵食する利点を提供し、コロイダルシリカが好ましい砥粒を代表する。コロイダルシリカ砥粒は、研磨組成物の水相中0~5重量%の濃度を有する。無砥粒溶液の場合、固定砥粒パッドがバリヤ層の除去を支援する。有利には、溶液はコロイダルシリカを少なくとも0.01重量%含有する。好ましくは、コロイダルシリカ砥粒濃度は0.01~5重量%である。最も好ましくは、コロイダルシリカ砥粒濃度は0.05~5重量%である。通常、砥粒濃度の増大はバリヤ材料の除去速度を高め;特に、タンタル含有バリヤ、例えば炭化タンタル、窒化タンタル及び炭窒化タンタル含有バリヤの除去速度を高める。例えば、半導体製造者がバリヤ除去速度の増大を望むならば、砥粒含量を増すことによって絶縁体除去速度を所望のレベルまで高めることができる。
【0015】
砥粒は、好ましくは、過度の金属ディッシング及び絶縁体エロージョンを防ぐために、150nm未満の平均粒径を有する。本明細書に関して、粒径とは、コロイダルシリカの平均粒径をいう。最も好ましくは、シリカは、金属ディッシング及び絶縁体エロージョンをさらに減らすために、100nm未満の平均粒径を有する。特に、75nm未満の平均砥粒粒径が、絶縁材料を過度に除去することなくバリヤ金属を許容可能な速度で除去する。例えば、20~75nmの平均粒径を有するコロイダルシリカを用いた場合、絶縁体エロージョン及び金属ディッシングが最も少ない。コロイダルシリカの粒径を減らすことは、溶液の選択比を改善する傾向を示すが、バリヤ除去速度を下げる傾向をも示す。加えて、好ましいコロイダルシリカは、酸性pH範囲でシリカの安定性を改善するための添加物、例えば分散剤を含むことができる。一つのそのような砥粒は、フランス PuteauxのMerck EMD Performance Materialsから市販されているコロイダルシリカである。
【0016】
任意選択で、溶液は、非鉄金属の析出を防ぐために、有機酸銅錯化剤を0.05~5重量%含有する。例えば、溶液は、有機酸銅錯化剤を0.1~5重量%含有することができる。例示的な銅錯化剤としては、酢酸、クエン酸、アセト酢酸エチル、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、シュウ酸、サリチル酸、ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸、チオグリコール酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、エチレンジアミン、トリメチルジアミン、マロン酸、グルタル酸(gluteric acid)、3-ヒドロキシ酪酸、プロピオン酸、フタル酸、イソフタル酸、3-ヒドロキシサリチル酸、3,5-ジヒドロキシサリチル酸、没食子酸、グルコン酸、ピロカテコール、ピロガロール、タンニン酸及びそれらの塩が挙げられる。好ましくは、銅錯化剤は、酢酸、クエン酸、アセト酢酸エチル、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、シュウ酸からなる群から選択される。最も好ましくは、銅錯化剤はクエン酸である。
【0017】
0.05~2.2重量%のベンゾトリアゾールインヒビターの添加は、銅配線の除去速度を下げ、銅を静的エッチングから保護する。本出願に関して、銅配線とは、偶発的な不純物を有する銅又は銅ベースの合金で形成された配線をいう。インヒビターの濃度を調節することは、金属を静的エッチングから保護することによって銅配線除去速度を調節する。好ましくは、溶液はベンゾトリアゾールインヒビターを0.05~1重量%含有する。
【0018】
緩衝された溶液は、45℃未満の温度での長期貯蔵中、pHドリフトをほとんど又は全く起こさない。例えば、溶液は、30℃で30日間保持されたとき、0.05pH単位未満しかドリフトしない。有利には、溶液は、30℃で30日間保持されたとき、0.02pH単位未満しかドリフトしない。
【0019】
研磨組成物は、任意選択で、殺生剤、例えばThe Dow Chemical Company製のKordek(商標)MLX(メチル-4-イソチアゾリン-3-オン 9.5~9.9%、水 89.1~89.5%及び関連反応生成物 ≦1.0%)を含有することができる(KordekはThe Dow Chemical Companyの商標である)。
【0020】
好ましくは、溶液は、溶液を半導体基材に適用し、21kPa以下の下向き力を研磨パッドに加えることにより、半導体基材を研磨する。下向き力は、半導体基材に対する研磨パッドの力を表す。研磨パッドは、円形、ベルト形又はくもの巣形状を有することができる。この低い下向き力は、半導体基材を平坦化して半導体基材からバリヤ材料を除去するのに特に有用である。最も好ましくは、研磨は、15kPa未満の下向き力で実施される。
【0021】
ウェーハに対して垂直に計測して20.7kPa未満の微孔性ポリウレタン研磨パッド圧を用いた場合、溶液は、毎分オングストローム単位で計測してTEOS除去速度よりも高い窒化タンタル除去速度又は毎分オングストローム単位の除去速度で計測して少なくとも1:1の窒化タンタル:炭素ドープ酸化物の選択比を提供する。選択比を決定するのに有用な具体的な研磨パッドは、The Dow Chemical Company製のVisionPad(商標)6000多孔性ポリウレタン研磨パッドである。有利には、ウェーハに対して垂直に計測して20.7kPa未満の微孔性ポリウレタン研磨パッド圧を用いた場合、溶液は、毎分オングストローム単位で計測して少なくとも1.5:1の窒化タンタル:炭素ドープ酸化物の選択比を提供し、最も有利には、この範囲は少なくとも2:1である。
【実施例】
【0022】
溶液調製手順
この実験に使用した研磨水溶液は以下の手順に従って調製した。ベンゾトリアゾール又はBTA、クエン酸、グアニジンHCl、グリシン及びN-メチルエタノールアミン(NMEA)を、表1に記載された指定の重量%まで、DI水に加えた。次いで、Klebosol(商標)1598B25 粒径25nmコロイダルシリカを前記溶液に混合した。
【0023】
【0024】
Applied MaterialsのReflexion(商標)CMP研磨ツール上で研磨試験を実施した。使用したパッドは、The Dow Chemical Company製のVisionPad(商標)6000多孔性ポリウレタン研磨パッドであった。研磨レシピは、2psi(13.8kPa)×93rpm×87rpm(ダウンフォース×テーブル速度×キャリヤ速度)を含むものであった。溶液流量は300ml/minであった。すべての研磨を、low-kがApplied Materials製のBlack Diamond(商標)3ナノ多孔性low-k絶縁体であるブランケットウェーハに対して実施した。
【0025】
定義により、緩衝能βは、小単位のpH変化を生じさせるために必要な酸又は塩基の規定度である。これは、より高い緩衝能がより高いpH安定性を提供することができることを示す。
β=db/dpH=-da/dpH
【0026】
研磨溶液は本来10のpHを有する。まず、それを1.0M KOHで段階的に滴定した。KOHを添加するごとにpH値を記録した。pHが11.5に達したところでこのKOH滴定を終了した。次いで、新鮮な溶液試料を1.0M HClで段階的に滴定した。HClを添加するごとにpH値を記録した。pHが8.5に達したところでこのHCl滴定を終了した。
【0027】
次いで、滴定中に各pH変化を生じさせるKOH及びHClの規定度を計算した。次いで、これらの規定度値を対応するデルタpH値で割って、表2のβ値を生成した。
【0028】
【0029】
表2は、pH9.5~10.5で強い緩衝能(β=0.12~0.56)を示し、最大緩衝能はpH10~10.5で見られた(β=0.19~0.56)。緩衝成分であるN-メチルエタノールアミン及びグリシンの濃度を高くすることにより、緩衝能βを増加させることが可能である。通常の研磨スラリーは、0.1~0.8の緩衝能βを有する。好ましくは、研磨スラリーは、0.2~0.7の緩衝能βを有する。最も好ましくは、研磨スラリーは、0.25~0.6の緩衝能βを有する。
【0030】
【0031】
上記表3の研磨結果から、砥粒レベルを変更したとしても、研磨溶液がlow-k絶縁体、TaN、Cu、TiN及びCo膜の選択的除去を提供し、TEOS膜で止まるということが観察される。これは、TEOSでのハードストップを要する任意の加工にとって理想的である。加えて、TEOSを含まない集積スキームの場合、高められたlow-k絶縁体除去のための希釈によってlow-k絶縁膜に対する膜の選択比をチューニングして、より良好なトポグラフィー修正を得ることができる。表4を参照すること。
【0032】
【0033】
N-メチルエタノールアミン(NMEA)及びグリシンを含有する緩衝された研磨溶液は、アルカリ性バリヤ研磨の場合に優れた緩衝を提供する。これらの緩衝成分は、アルカリ、アルカリ性及び遷移金属イオンを含まない。好ましくは、研磨溶液の全体は、アルカリ、アルカリ性及び遷移金属イオンを含まない。さらに、それは、KOHの意図的な添加を回避しながらも有効な緩衝能を提供する。カリウムイオンの排除は、半導体絶縁体の有害な被毒を制限する。