(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】コンクリート構造物補修用硬化性組成物キット、コンクリート構造物の補修材料及びコンクリート構造物の補修方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
E04G23/02 A
(21)【出願番号】P 2018129833
(22)【出願日】2018-07-09
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2018099502
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】島田 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】黒田 健夫
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-016948(JP,A)
【文献】特開2017-186825(JP,A)
【文献】特開2012-241475(JP,A)
【文献】特開平07-010633(JP,A)
【文献】特開平09-067937(JP,A)
【文献】特開2017-226955(JP,A)
【文献】特開2014-201929(JP,A)
【文献】特開2017-031718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
C04B 41/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1キットと第2キットとにより構成される、既設のコンクリート構造物補修用硬化性組成物キット。
第1キット:珪酸ナトリウムを含む水溶液と、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるポゾラン活性物質とを含む硬化性組成物。
第2キット:2価以上の陽イオンと硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオンとを含む
改質剤の濃度が20重量%~60重量%である改質剤水溶液。
【請求項2】
前記改質剤水溶液は、硝酸カルシウムを含む請求項
1に記載の硬化性組成物キット。
【請求項3】
前記珪酸ナトリウムを含む水溶液は、下記式で表される数値nが0.5~1.1である請求項1
または2に記載の硬化性組成物キット。
n=S/M
(S:水溶液に含まれるケイ素のモル数、M:水溶液に含まれるナトリウムのモル数)
【請求項4】
前記珪酸ナトリウムを含む水溶液は、前記第1キットから得られる硬化物の乾燥固形分に対して、Na
2Oに換算して5重量%~30重量%のナトリウムを含む請求項1~
3のいずれか1つに記載の硬化性組成物キット。
【請求項5】
前記ポゾラン活性物質はアルミニウムを含む化合物であり、前記第1キットから得られる硬化物の乾燥固形分に対して、Al
2O
3に換算して20重量%~40重量%のアルミニウムを含む請求項1~
4のいずれか1つに記載の硬化性組成物キット。
【請求項6】
前記ポゾラン活性物質がメタカオリンである請求項1~
5のいずれか1つに記載の硬化性組成物キット。
【請求項7】
前記硬化性組成物は、25℃での粘度が400mPa・s~3000mPa・sである、
請求項1~6のいずれか1つに記載の硬化性組成物キット。
【請求項8】
既設のコンクリート構造物の補修に用いられる補修材料であって、
第1キットと第2キットとを含む硬化性組成物と、
透液性のシート状部材からなる補修用基材とからなることを特徴とするコンクリート構造物の補修材料。
第1キット:珪酸ナトリウムを含む水溶液と、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるポゾラン活性物質とを含む硬化性組成物。
第2キット:2価以上の陽イオンと硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオンとを含む
改質剤の濃度が20重量%~60重量%である改質剤水溶液。
【請求項9】
前記補修用基材は、少なくとも二層のシート状部材の積層体からなり、前記コンクリート構造物側から第一層及び第二層とした場合、前記第一層はマルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材であり、前記第二層が引裂強度2.0N以上のシート状部材である請求項8に記載のコンクリート構造物の補修材料。
【請求項10】
前記補修用基材は、少なくとも二層のシート状部材の積層体からなり、前記コンクリート構造物側から第一層及び第二層とした場合、前記第一層が引張強度150N以上のマルチフィラメントを目開き5mm~25mmで多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材であり、前記第二層が引裂強度2.0N以上のシート状部材である請求項8に記載のコンクリート構造物の補修材料。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1つに記載の硬化性組成物キットを用い、
前記第1キットの硬化性組成物を硬化させる工程、
前記硬化した硬化性組成物の表面に、第2キットの改質剤水溶液を塗工する工程を含むことを特徴とするコンクリート構造物の補修方法。
【請求項12】
請求項8~10のいずれか1つに記載の補修材料を準備する工程、
前記第1キットの硬化性組成物を前記補修用基材に含浸させ、コンクリート構造物に貼付する工程、
得られた前記補修用基材に対し、第2キットの改質剤水溶液を塗工する工程を含むことを特徴とするコンクリート構造物の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンクリート構造物補修用硬化性組成物キット、コンクリート構造物の補修材料及びコンクリート構造物の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物は、高強度で施工性及び耐久性に優れ、安価であるというメリットがあるため、日本では高度成長期を中心に、多くのコンクリート建造物が作られてきた。その一方、コンクリート建造物は、長年の使用で大気中の二酸化炭素が水分とともに浸透することによって中性化が引き起こされ、また、海風、凍結防止剤飛沫に含まれる塩化物イオンが浸透することによって腐食膨張するなどして、ヒビ割れが生じることがある。
このようなコンクリート構造物を補修する材料として、特許文献1には珪酸塩と高炉水砕スラグとを含む硬化性液上組成物が、特許文献2には珪酸塩とフライアッシュとを含む硬化性液上組成物が記載されている。また、特許文献3には珪酸塩とメタカオリンとを含む硬化性液上組成物とメッシュシート又は不織布等を組み合わせた種々の剥落防止用積層基材とを用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-301638号
【文献】特開平8-301639号
【文献】特開2017-186825号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、珪酸塩として最も安価な珪酸ナトリウムを使用した場合、硬化性組成物から得られる硬化物中に含まれる未反応の水酸化ナトリウムが、大気中の二酸化炭素と反応し、炭酸ナトリウムを形成する。形成された炭酸ナトリウムは、雨及び結露等により発生する水分に溶解し、その後乾燥すると、10水和物として膨張再結晶化し、硬化物の内部破壊を引き起こすことがある。また、溶解と表面乾燥とを繰り返すことにより、炭酸ナトリウムの結晶は表層付近に濃縮し、白亜化等の外観上の問題点を引き起こすこともある。
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、乾燥湿潤に対する耐久性をより高め、かつ白亜化等の外観上の問題を防ぐことのできるコンクリート構造物の補修に用いられる硬化性組成物キット、補修材料及び補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は以下の発明を含む。
(1)第1キットと第2キットとにより構成される、既設のコンクリート構造物補修用硬化性組成物キット。
第1キット:珪酸ナトリウムを含む水溶液と、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるポゾラン活性物質とを含む硬化性組成物。
第2キット:2価以上の陽イオンと硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオンとを含む改質剤水溶液。
(2)前記改質剤水溶液は、改質剤の濃度が20重量%~60重量%である上記記載の硬化性組成物キット。
(3)前記改質剤水溶液は、硝酸カルシウムを含む上記記載の硬化性組成物キット。
(4)前記珪酸ナトリウムを含む水溶液は、下記式で表される数値nが0.5~1.1である上記記載の硬化性組成物キット。
n=S/M
(S:水溶液に含まれるケイ素のモル数、M:水溶液に含まれるナトリウムのモル数)
(5)前記珪酸ナトリウムを含む水溶液は、前記第1キットから得られる硬化物の乾燥固形分に対して、Na2Oに換算して5重量%~30重量%のナトリウムを含む上記記載の硬化性組成物キット。
(6)前記ポゾラン活性物質はアルミニウムを含む化合物であり、前記第1キットから得られる硬化物の乾燥固形分に対して、Al2O3に換算して20重量%~40重量%のアルミニウムを含む上記記載の硬化性組成物キット。
(7)前記ポゾラン活性物質がメタカオリンである上記記載の硬化性組成物キット。
(8)既設のコンクリート構造物の補修に用いられる補修材料であって、
第1キットと第2キットとを含む硬化性組成物と、
透液性のシート状部材からなる補修用基材とからなることを特徴とするコンクリート構造物の補修材料。
第1キット:珪酸ナトリウムを含む水溶液と、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるポゾラン活性物質とを含む硬化性組成物。
第2キット:2価以上の陽イオンと硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオンとを含む改質剤水溶液。
(9)前記補修用基材は、少なくとも二層のシート状部材の積層体からなり、前記コンクリート構造物側から第一層及び第二層とした場合、前記第一層はマルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材であり、前記第二層が引裂強度2.0N以上のシート状部材である上記記載のコンクリート構造物の補修材料。
(10)前記補修用基材は、少なくとも二層のシート状部材の積層体からなり、前記コンクリート構造物側から第一層及び第二層とした場合、前記第一層が引張強度150N以上のマルチフィラメントを目開き5mm~25mmで多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材であり、前記第二層が引裂強度2.0N以上のシート状部材である上記記載のコンクリート構造物の補修材料。
(11)上記の硬化性組成物キットを用い、
前記第1キットの硬化性組成物を硬化させる工程、
前記硬化した硬化性組成物の表面に、第2キットの改質剤水溶液を塗工する工程を含むことを特徴とするコンクリート構造物の補修方法。
(12)上記記載の補修材料を準備する工程、
前記第1キットの硬化性組成物を前記補修用基材に含浸させ、コンクリート構造物に貼付する工程、
得られた前記補修用基材に対し、第2キットの改質剤水溶液を塗工する工程を含むことを特徴とするコンクリート構造物の補修方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のコンクリート構造物の補修に用いられる硬化性組成物キット、補修材料は、乾燥湿潤に対する耐久性をより高め、かつ白亜化等の外観上の問題を防ぐことができる。
また、本発明のコンクリート構造物の補修方法では、上述した硬化性組成物キット又は補修部材を用いることにより、乾燥湿潤に対する耐久性をより高め、かつ白亜化等の外観上の問題を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のコンクリート構造物の補修材料(二層構造)を用いたコンクリート構造物の補修形態の一例を示す模式的な断面図である。
【
図2】本発明のコンクリート構造物の補修材料(三層構造)を用いたコンクリート構造物の補修形態の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔コンクリート構造物の補修用硬化性組成物キット及び補修材料〕
本願のコンクリート構造物補修用の硬化性組成物キット及び補修材料は、既設のコンクリート構造物の補修に用いられるものである。
硬化性組成物キットは、主として珪酸ナトリウム水溶液とポゾラン活性物質とを含む硬化性組成物からなる第1キットと、改質剤水溶液からなる第2キットとを含み、補修材料は、これらの第1及び第2キットと、補修用基材とを含む。第2キットの改質剤水溶液は、通常、補修用基材の有無にかかわらず、第1キットの硬化性組成物の硬化物の表面に塗工して用いることが好ましい。
【0009】
(第1キット:硬化性組成物)
第1キットとは、珪酸ナトリウムを含む水溶液と、ポゾラン活性物質とを含む硬化性組成物(以下、「ジオポリマー」という場合がある)である。第1キットを構成する硬化性組成物は、通常、液状の組成物として調製されている。
珪酸ナトリウムは、コンクリート構造物の表面に塗布及び/又は含浸されたときに、コンクリート中の水酸化カルシウムとC-S-Hゲルを生成することができるため、補修材料又は硬化性組成物とコンクリート構造物との接着強度をより強固にすることができる。
ジオポリマーは、珪酸ナトリウム水溶液からなる液体成分とポゾラン活性物質からなる固体成分との比重差が、セメントスラリーに含まれる水とセメントとの比重差に比べて小さいため、硬化性組成物における成分の分離を抑制することができる。
【0010】
硬化性組成物、つまり、ジオポリマーにおいて、珪酸ナトリウム水溶液に由来するナトリウムは、その合計含有率が、硬化性組成物から得られる硬化物の乾燥固形分に対し、Na2Oに換算して、5重量%~30重量%であることが好ましく、10重量%~30重量%であることがより好ましい。
また、硬化性組成物は、珪酸ナトリウムを含む水溶液の下記数式で表される数値nが0.4~1.1であるものが好ましく、0.5~1.1であるものがより好ましく、0.5~1.0であるものがさらに好ましい。
n=S/M
(S:水溶液に含まれるケイ素のモル数、M:水溶液に含まれるアルカリ金属のモル数)
【0011】
ポゾラン活性物質とは、水と、酸化カルシウム、水酸化カルシウム又は水酸化アルミニウム等とが反応することにより硬化する物質であり、例えば、シリカダスト、珪藻土、タルク、アエロジル、ホワイトカーボン、カオリン、メタカオリン、活性白土、酸性白土等が挙げられる。なかでも、メタカオリンが好ましい。
ポゾラン活性物質は、通常、ポゾラン活性物質に由来するシリカの含有率が、硬化物の乾燥固形分に対し、SiO2に換算して、40重量%以上であるものが好ましい。
また、ポゾラン活性物質に由来するアルミニウムの含有率は、硬化物の乾燥固形分に対し、Al2O3に換算して、20重量%~40重量%であることが好ましく、25重量%~35重量%であることがより好ましい。
【0012】
ポゾラン活性物質は、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるものが好ましく、0.5mS/cm以上、0.6mS/cm以上又は0.7mS/cm以上であるものがより好ましく、0.8mS/cm以上、1.0mS/cm以上、1.2mS/cm以上であるものがさらに好ましい。このような電気伝導率差とすることにより、珪酸ナトリウム水溶液との反応性を十分に確保でき、補修部材とコンクリート構造物との接着強度を高めることができる。ここでの電気伝導率差は、アルカリ物質により誘発されるポゾラン活性物質の反応性に関連する指標であり、後述する評価方法により得られる飽和水酸化カルシウム水溶液のポゾラン活性物質投入前後の電気伝導率の差を意味する。
【0013】
ポゾラン活性物質は、通常、塊又は粉末状であるが、塊状又は粉末状のものをそのまま用いてもよい。また、活性化させるために、溶射処理、粉砕分級、機械的エネルギーの作用等の方法を用いて、その状態を変化させたものを用いてもよい。
溶射処理する方法としては、セラミックコーティングに適用される溶射技術が応用される。溶射技術は、例えば、プラズマ溶射法、高エネルギーガス溶射法、アーク溶射法等が挙げられる。好ましくは、材料粉末を2000℃~16000℃の温度で溶融し、30m/秒~800m/秒の速度で噴霧し、比表面積が0.1m2/g~100m2/gの粉末とすることが好ましい。
粉砕分級する方法としては公知の任意の方法が採用できる。粉砕は、ジェットミル、ロールミル、ボールミル等を用いる方法が挙げられる。また、分級は、篩、比重、風力、湿式沈降等を用いる方法が挙げられる。これらの手段は任意に併用することができる。
機械的エネルギーを作用させる方法としては、ボール媒体ミル、媒体撹拌型ミル、ローラミル等を用いる方法が挙げられる。作用させる機械的エネルギーは、適度に活性化しつつ、負荷を最小限とするために、0.5kwh/kg~30kwh/kgが好ましい。
【0014】
(その他の成分)
硬化性組成物は、上記成分に加えて、特開2017-186825号、特開2017-226955号等に開示された成分及び当該分野で公知の添加剤等を含んでいてもよい。例えば、フィラー、分散剤、硬化時間調整剤、顔料、酸化防止剤、ポリマーエマルション等が挙げられる。これらは特に限定されず、公知のものを利用することができる。フィラーとしては、一般に充填剤として使用されるもののいずれであってもよい。例えば、カーボン、セルロース、鉱物質微粉末、合成された無機質結晶粉末などが挙げられる。ポリマーエマルションとしては、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム又はこれらの混合物等が挙げられる。これらの添加剤は、硬化性組成物の意図する作用を損なわない範囲において、任意の含有量で用いることができる。特に、ポリマーエマルションは、硬化物の乾燥固形分に対して、固形分重量が3重量%~10重量%となるように配合されていることが好ましい。これにより、硬化性組成物の流動性を向上し、硬化物の接着強度を向上し、硬化物の乾燥収縮を抑制することができる。
【0015】
このような硬化性組成物は、25℃での粘度が400mPa・s~3000mPa・sであるものが好ましい。このような粘度とすることにより、補修用基材を使用する場合の含浸性を確保することができる。また、コンクリート構造物に貼着した際の硬化性組成物の液だれを防止することができる。
【0016】
(第2キット:改質剤水溶液)
第2キットとは、改質剤水溶液である。改質剤水溶液は、2価以上の陽イオンと硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオンとを含む。第2キットである改質剤水溶液は、硬化性組成物に対して塗工されるものである。ここで、改質剤水溶液を塗工する硬化性組成物は、硬化性組成物のみの硬化物、硬化性組成物が、後述する補修用基材に含浸又は貼着されたものでもよい。また、硬化物は、完全に硬化した硬化物のみならず、硬化反応が生じた後の硬化物であれば、その程度は特に限定されることなく、塗工することができる。なかでも、硬化性組成物の硬化物の表面含水率が8%を下回ってから行うことが好ましい。別の観点から、硬化性組成物の硬化直後から7日以内に行うことが好ましく、30分~24時間後に行うことがさらに好ましい。このような改質剤水溶液を塗工することにより、硬化性組成物に含まれる水分の蒸散が十分に進み、改質剤水溶液を十分に浸透させることができる。
改質剤水溶液に含まれる改質剤としては、2価以上の陽イオンと、硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオンとが挙げられる。
2価以上の陽イオンとしては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等が挙げられる。
2価以上の陽イオンと硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオンとを含む改質剤は、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、亜硝酸カルシウム等が挙げられる。これらの化合物を水溶液とすることにより、これらのイオンを供給することができる。なかでも、水への溶解度、ナトリウム塩となった時の水への溶解度、炭酸イオンの無害化の観点から硝酸カルシウムが特に望ましい。
改質剤水溶液は、改質剤の濃度が20重量%~60重量%であることが好ましい。改質剤水溶液を110℃で乾燥すると、改質剤が、水和物結晶として析出することがあるが、130℃で乾燥することにより、結晶水を揮発させることができる。従って、ここでの改質剤の濃度は、改質剤を構成する物質が結晶水を含まない状態での濃度を示す。
改質剤水溶液を、硬化性組成物に塗工することによって、硬化性組成物の硬化物中に含まれる未反応の水酸化ナトリウムが、改質剤と反応して、硝酸ナトリウム及び/又は亜硝酸ナトリウムとなり、内部破壊の原因となる炭酸ナトリウムの発生を防止することができる。特に、上述した改質剤の濃度範囲とすることにより、1回の塗工によって、未反応の水酸化ナトリウムを簡便かつ十分に反応させることができ、内部破壊などを有効に防止することができる。
また、硝酸ナトリウムおよび亜硝酸ナトリウムは水への溶解度が高いため、乾燥しても析出しにくく、白亜化の原因となる炭酸ナトリウムの濃縮を抑制することができる。
さらに、塗工前に既に発生している炭酸ナトリウムは2価以上の陽イオンと反応して炭酸塩の不溶物を形成し、内部破壊及び白亜化に対して無害な物質となる。
硬化性組成物キットにおける第1キットと第2キットとの量は、用いる水溶液の濃度、成分の種類、他の成分の有無等によって適宜調整することができる。例えば、第1キットによる硬化性組成物の硬化物の表面に第2キットによる改質剤水溶液を塗工して用いることから、硬化した硬化性組成物の表面積に対し、20g/m2~250g/m2塗布し得る量で、両者の量を組み合わせることが好ましい。このような量での範囲で塗工することにより、未反応の水酸化ナトリウムを簡便かつ十分に反応させることができ、内部破壊などを有効に防止することができる。
【0017】
(補修用基材)
補修用基材は、透液性のシート状部材である。シート部材は、少なくとも二層を積層して構成されるものが好ましい。二層以上を積層する場合、一層のみが透液性のものであってもよいし、二層以上が透液性のものであってよいし、透液性のもののみ積層したものであってもよい。
例えば、
図1に示すように、コンクリート構造物5側から第一層1及び第二層2がこの順に積層されたものであってもよいし、
図2に示すように、コンクリート構造物5側から第三層3、第一層1及び第二層2がこの順に積層されたものであってもよい。
【0018】
(第一層)
第一層1は、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材であることが好ましい。マルチフィラメントは、長繊維を利用して構成されたものが好ましく、引張強度150N以上のものが好ましい。マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材の式(1)で表される値Xは2.0以上であることが好ましく、2.5以上、2.8以上又は3.0以上であることがより好ましい。
X=A×B (1)
ここで、Aは上記シート状部材の1方向の引張強度kN/50mmを表し、Bは上記シート状部材の軸数を表す。Aは、マルチフィラメントの50mm当たりの本数を変えることにより任意の値をとることができる。Bは、2~4の範囲を有するものが挙げられる。なかでも、Aは、0.75kN以上であることが好ましく、Bは2~3であるものが好ましい。
このような第一層1により、コンクリート構造物から落下するコンクリート片を受け止める耐力層としての機能を満たすことができる。
第一層1の材質としてはポリエステル、ポリオレフィン、ビニロン、アラミド、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。なかでも、ビニロンメッシュシート又はガラスメッシュシートからなることが好ましい。ガラス繊維は、ガラスヤーン又はロービングを用いることが好ましい。ガラスヤーンは、ガラス繊維に撚りをかけて合撚糸としたものであり、ロービングは、ガラス繊維を集束したものである。多軸メッシュの織り方は、平織り、綾織り、絡み織り、組布等が挙げられる。多軸メッシュの織り方の方向は、直交する二軸又はそれ以上の多軸織物であってもよい。
【0019】
第一層1の厚みは、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以上1mm以下がより好ましい。
第一層1は、50g/m
2
以上の目付量であることが好ましく、60g/m
2
以上であることがより好ましく、75g/m
2
以上であることがさらに好ましい。このような目付量の範囲とすることにより、引張強度を向上させて、コンクリート片剥落時に破断を生じさせることなく、補修材料の十分な耐力を確保することができる。
第一層1は、5mm以上25mm以下の目開きの二軸織物であることが好ましい。目開きをこの範囲とすることにより、後述する第二層とコンクリート構造物との又は第二層と第三層との接着力を向上させ、補修材料の十分な強度を確保することができる。また、第一層の単位面積当たりの長繊維本数を適度な数として、第一層が第二層を破り出てくる際の抵抗力を高め、補修材料の十分な強度を確保することができる。
第一層は、5mm以上25mm以下の目開きで、50g/m
2
以上の目付量の二軸織物であることがより好ましい。また、二軸織物と同等の開口率の多軸織物であってもよい。特に、引張強度150N以上のマルチフィラメントを、目開き5mm~25mmで組み合わせた二軸又は三軸メッシュのシート状部材であることがより好ましい。
【0020】
(第二層)
第二層2は、透液性のシート状部材でなくてもよいが、透液性のシート状部材であることが好ましい。また、第二層の引裂強度は2.0N以上であることが好ましい。引裂強度を2.0N以上とすることにより、第二層は、第一層が第二層を破り出てくる際の抵抗力を高める補強層としての機能を満たすことができる。
第二層2の形状としては、織布、不織布等が挙げられる。
第二層2の材質としてはポリエステル、ポリオレフィン、ビニロン、アラミド、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。なかでも、ポリプロピレン不織布又はガラス不織布で構成されることが好ましく、特に、長繊維不織布であることがより好ましい。ガラス不織布は、硬化性組成物との相溶性に優れるため、硬化性組成物が浸透しやすく、硬化性組成物を硬化させたときに補修材料をコンクリート構造物に強固に固着させることができる。好適なガラス不織布として、チョップドストランドマット、ガラスペーパー、フェルト等が挙げられる。
ポリプロピレン不織布を用いる場合は、硬化性組成物との相溶性を高めるため、繊維に親水化処理を行うこともできる。親水化処理は、当該分野で公知の方法のいずれを利用してもよい。
第二層の厚みは、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.15mm以上0.5mm以下であることがより好ましい。このような厚みの範囲とすることにより、第一層が第二層を破り出てくる際の抵抗力を高める補強層としての機能を満たすとともに、硬化性組成物の基材への含浸量を抑えることができ、経済的にも有利である。
第二層2は、30g/m
2
以上の目付量であることが好ましく、50g/m
2
以上であることがより好ましく、60g/m
2
以上であることがさらに好ましい。このような目付量の範囲とすることにより、引張強度を向上させて、コンクリート片剥落時に破断を生じさせることなく、補修材料の十分な耐力を確保することができる。
第二層は、3mm以上30mm以下の目開きの二軸織物であることが好ましい。目開きをこの範囲とすることにより、後述する第三層との接着力を向上させ、補修材料の十分な強度を確保することができる。また、第一層の単位面積当たりの長繊維本数を適度な数として、第一層が第二層を破り出てくる際の抵抗力を高め、補修材料の十分な強度を確保することができる。
第二層は、引張強度10N以上のマルチフィラメントであることが好ましく、二軸又は三軸メッシュのシート状部材であることがより好ましい。また、引裂強度2.0N以上のシート状部材であることが好ましい。
補強用基材が、第一層と第二層との二層構造又はそれ以上の積層構造の場合、第一層はマルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材であり、第二層が引裂強度2.0N以上のシート状部材であることが好ましく、第一層が引張強度150N以上のマルチフィラメントを目開き5mm~25mmで多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材であり、第二層が引裂強度2.0N以上のシート状部材であることが好ましい。
【0021】
(第三層等)
補強用基材が、三層以上の構造の場合、第一層がコンクリート構造物側、第二層がその外側に配置されるのであれば、第三層目以上の層が、どこに何層配置されていてもよい。このような積層構造により、補修材料の強度とコンクリート構造物への密着性を両立することができる。これらの第三層目以上の層は、上述した第一層及び第二層のなかから選択してもよいし、当該分野で使用されるどのような層であってもよい。使い易さ、経済性等を考慮すると、2層構造、3層構造が好ましい。また、第三層は、気孔率が90%以上かつ透液性のシート状部材であることが好ましい。これにより、硬化性組成物の含浸性を確保することができるため、補修部材とコンクリート構造物の接着強度を向上させる接着層としての機能を満たすことができる。
【0022】
(積層一体化)
補修用基材が、二層以上のシート状部材を積層して構成される場合、補修用基材は、硬化性組成物を含浸することにより一体化してもよいが、予め一体化させておくことが好ましい。一体化させておくことにより、塗布含浸時の各シート部材のズレを防ぐことができる。
一体化の方法は、機械的な繊維交絡、化学的な接着等を利用することができ、例えば、縮絨、ニードルパンチ、ケミカルボンド、サーマルボンド、水流交絡等が挙げられる。
【0023】
〔コンクリート構造物の補修方法〕
本願のコンクリート構造物の補修方法は、上述した補修材料、つまり、第1キット、第2キット及び補修用基材を準備し、第1キットの硬化性組成物を補修用基材に含浸させ、コンクリート構造物に貼付し、得られた補修用基材に対し、第2キットの改質剤水溶液を塗工することを含む。あるいは、上述した硬化性組成物キット、つまり、第1キット及び第2キットを準備し、第1キットの硬化性組成物を硬化させ、硬化した硬化性組成物の表面に、第2キットの改質剤水溶液を塗工することを含む。
【0024】
(準備工程)
補修材料を準備する場合、第1キット、第2キット、補修用基材は、それぞれ別個に存在させてもよいが、補修の際に、後述するように第1キット、つまり、硬化性組成物を補修用基材に含浸させた状態とすることが好ましい。
【0025】
(含浸工程)
第1キットである硬化性組成物を、補修用基材に塗布及び/又は含浸させる。補修用基材を形成してから硬化性組成物を含浸させてもよいし、硬化性組成物を含浸させてから補修用基材を形成してもよいし、補修用基材を形成しながら硬化性組成物を含浸させてもよい。また、補修用基材を対象のコンクリート構造物に貼り付ける前後のいずれに硬化性組成物を含浸させてもよい。
硬化性組成物を含浸させる方法としては、例えば、(1)ローラを使って手作業で塗布含浸を行うハンドレイアップ法、(2)スプレーにより塗布含浸する方法、(3)金型により補修用基材の厚みを規定した後に、圧入によって硬化性組成物を補修用基材に塗布含浸させる方法、(4)減圧により補修用基材の厚みを規定した後、減圧注入によって硬化性組成物を補修用基材に含浸させる方法、(5)補修用基材を硬化性組成物に浸漬し、補修用基材に硬化性組成物を連続的に含浸させた後に、ロールによって補修用基材の厚みを規定する方法、(6)ロール転写により連続的に塗布含浸を行う方法等が挙げられる。これらは組み合わせて利用してもよい。
含浸時の作業性を上げるため、また含浸シートへのゴミの付着及び含浸シート同士の付着を防止するため、補修用基材の表裏面を樹脂製の保護フィルムでカバーしてもよい。この保護フィルムはコンクリート構造物に貼り付ける際に除去すればよい。
【0026】
(貼付工程)
第1キットである硬化性組成物が含浸された補修用基材を、コンクリート構造物に貼り付ける。この際、硬化性組成物が含浸された補修用基材とコンクリート構造物の表面との間に入り込んだ気泡を取り除くことは、コンクリート構造物の表面との密着性を高めるために重要である。気泡除去の方法としては、ロール又は金へら等を使って気泡を外側に追い出すことが好ましい。
含浸工程と貼付工程とはそれぞれ別個に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0027】
(硬化工程)
補修用基材に含浸された第1キットである硬化性組成物の硬化は、コンクリート構造物に密着させた状態で行う。コンクリート構造物の表面に、硬化性組成物を含浸させる時間を確保するという観点から、硬化性組成物の硬化時間は15分間~300分間であることが好ましく、30分間~240分間がより好ましい。硬化時間は、珪酸ナトリウムの含有率等によって、また、含まれる水分量、他の成分の量等によって、さらに、ポゾラン活性物質の電気伝導率差、アルミニウムの含有率等によって、適宜調整することができる。
硬化性組成物の硬化が完了すると、コンクリート構造物に硬化性組成物が含浸された補修用基材を固着させることができる。
【0028】
(改質剤水溶液の塗工)
改質剤水溶液を、コンクリート構造物に、硬化性組成物が含浸された補修用基材を密着させた状態で塗工することが好ましい。改質剤水溶液は、硬化性組成物に混合すると、その直後に硬化性組成物が硬化することから、硬化性組成物の硬化表面に塗工することが適している。そのタイミングは、硬化前、中又は後のいずれでもよく、硬化性組成物の硬化が進行した直後から、完全に硬化した後において塗工してもよい。特に、改質剤水溶液の硬化性組成物の硬化物又は補修用基材へ含浸性の観点から、硬化性組成物の硬化が進み、表面含水率が8%を下回ってから行うことが好ましい。また別の観点からは、硬化性組成物の作製直後から7日以内に行うことが好ましく、30分~24時間後に行うことがさらに好ましい。このような改質剤水溶液を塗工することにより、硬化性組成物に含まれる水分の蒸散が十分に進み、改質剤水溶液を十分に浸透させることができる。
塗工の方法は、一般的な方法を用いることができ、刷毛、ローラ、スプレーガン等が挙げられる。
改質剤水溶液の塗工が完了すると、炭酸ナトリウムによる硬化性組成物の内部破壊、白亜化等を抑制することができる。
硬化した硬化性組成物への改質剤水溶液の塗工は、硬化した硬化性組成物全体にわたって均一に行うことが好ましい。
改質剤水溶液の塗布量は、硬化した硬化性組成物の表面積に対し、20g/m2~250g/m2であることが好ましく、30g/m2~150g/m2であることがより好ましい。
【0029】
以下、本発明のコンクリート構造物補修用硬化性組成物キット、コンクリート構造物の補修材料及びコンクリート構造物の補修方法を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
実施例1
JIS K 1408で規定する3号珪酸ナトリウム水溶液100gへ15重量%水酸化ナトリウム水溶液78gを加えて調整した珪酸塩水溶液(n=0.8)に、その他成分のポリマーエマルションとしてスチレンブタジエンゴムエマルション(日本ゼオン株式会社製 商品名:LX407 F43、)20gを加え24時間撹拌し、その他成分を含む珪酸塩水溶液を得た。
上記水溶液に、ポゾラン活性物質としてメタカオリン140g(BASF社製 商品名:SP-33 電気伝導率差0.8mS/cm)、JIS A 6206で規定する高炉スラグ微粉末80g(日鉄住金セメント株式会社製 商品名:エスメント)を混合することにより、第1キットとして、硬化性組成物(Na2O含有量7.8重量%、Al2O3含有量26.5重量%)を調製した。
また、第2キットとして、45重量%の濃度の硝酸カルシウム水溶液を調製した。
得られた硬化性組成物を40×40×80mmのステンレス製型枠に流し込み、標準条件(温度23℃、相対湿度50%)下で24時間硬化後に脱型した。濃度45重量%の硝酸カルシウム水溶液を得られた硬化物の全表面積に対し1.5g(94g/m2)ローラ塗工し、その後同条件にて3日間養生してコンクリート構造物の補修材料を得た。
【0031】
実施例2
引張強度250Nのビニロンマルチフィラメントからなる二軸メッシュシート(目付量90g/m2、目開き7mm、厚み0.35mm、X=2.5)を、ガラス不織布(目付量25g/m2、厚み0.2mm、引張強度45N/25mm)を上に2枚、下に1枚重ね合わせ、四層のシート状部材を積層した補修用基材を作製した。
作製した補修用基材300mm×300mmに、実施例1で作製した第1キットである硬化性組成物110gを含浸させることにより、硬化性組成物が含浸された補修用基材を作製した。
硬化性組成物が含浸された補修用基材を、JIS A 5371で規定するコンクリート普通平板(300×300×60mm)に貼り付けた後、標準条件(温度23℃、相対湿度50%)下で18時間硬化後に、第2キットの改質剤水溶液として、濃度45重量%の硝酸カルシウム水溶液6.3g(70g/m2)を表面にローラ塗工し、3日間養生してコンクリート構造物の補修材料を得た。
【0032】
実施例3
改質剤水溶液を、3.2g(35g/m2)ローラ塗工したこと以外は実施例2と同様にしてコンクリート構造物の補修材料を得た。
実施例4
改質剤水溶液として、固形分濃度52重量%の硝酸カルシウム水溶液を18.0g(200g/m2)刷毛塗りしたこと以外は実施例2と同様にしてコンクリート構造物の補修材料を得た。
実施例5
改質剤水溶液として、濃度45%の亜硝酸カルシウム水溶液6.3g(70g/m2)を使用したこと以外は実施例2と同様にしてコンクリート構造物の補修材料を得た。
実施例6
改質剤水溶液として、濃度40%の硝酸マグネシウム水溶液6.3g(70g/m2)を使用したこと以外は実施例2と同様にしてコンクリート構造物の補修材料を得た。
【0033】
比較例1
第2キットである改質剤水溶液を、硬化物の表面に塗工しないこと以外は実施例1と同様にしてコンクリート構造物の補修材料を得た。
比較例2
第2キットである改質剤水溶液を、硬化性組成物が含浸された補修用基材の表面に塗工しないこと以外は実施例2と同様にしてコンクリート構造物の補修材料を得た。
比較例3
第2キットである改質剤水溶液のかわりに、硬化性組成物が含浸された補修用基材の表面にイオン交換水を塗工したこと以外は実施例2と同様にしてコンクリート構造物の補修材料を得た。
【0034】
(電気伝導率差)
ポゾラン活性物質について『Cement Concrete Research, Vol.19, pp.63-68, 1989』に従い、40±1℃の条件で、Ca(OH)
2飽和水溶液200mlの電気伝導率を測定した。続いて、メタカオリン5gを投入し、攪拌して2分後の電気伝導率を測定し、投入前の電気伝導率との差を電気伝導率差とした。
(白亜化)
実施例1および比較例1で得られたコンクリート構造物の補修材料を40×80mmの面を下にして水中に20mm半浸漬し、半浸漬の状態で23℃50%の環境下10日間養生した。その後23℃50%の環境下で3日間気中乾燥し、目視により白亜化発生の有無を判定した。
(付着強度/引張り強度)
実施例2~6及び比較例2、3で得られたコンクリート構造物の補修材料を貼り付けたコンクリート普通平板を、-20℃にて3時間→50℃にて3時間→23℃、湿度80%にて16時間の条件下で10サイクル養生を行い、補修材料付着力を建研式簡易引張試験機にて測定した。
これらの結果を表1から表4に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の補修材料によれば、コンクリート構造物の寿命を延命することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 第一層
2 第二層
3 第三層
4、14 補修材料
5 コンクリート構造物