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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】電気伝導率計
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/22 20060101AFI20220830BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G01R27/22 Z
G01N27/06 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018138542
(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公開番号】P2020016500
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 修
(72)【発明者】
【氏名】間々田 浩一
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-176785(JP,A)
【文献】特開2017-026359(JP,A)
【文献】特開昭62-207968(JP,A)
【文献】特開2009-250733(JP,A)
【文献】特開2018-077118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/22
G01N 27/06
G01F 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定管内の液体に関する電気伝導率を計測する電気伝導率計であって、
予め設定された信号周波数を有する矩形波信号を生成する信号生成回路と、
前記測定管の延伸方向互いに離間して取り付けられて前記矩形波信号を前記液体に印加する第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極から検出した検出信号を安定化して出力するバッファアンプと、
前記バッファアンプの出力をサンプリングすることにより前記検出信号の振幅を検出する検出回路と、
前記振幅に基づいて前記液体に関する電気伝導率を演算処理により求める演算処理回路と、
前記測定管と直交し、かつ、前記第1および第2の電極の両電極間に配置されたプリント配線基板とを備え、
前記信号生成回路および前記バッファアンプのうち、少なくともいずれか一方または両方が、前記プリント配線基板に搭載されている
ことを特徴とする電気伝導率計。
【請求項2】
請求項1に記載の電気伝導率計において、
前記信号生成回路は、前記矩形波信号として一定振幅を有する交流の矩形波電圧からなる矩形波定電圧信号を生成することを特徴とする電気伝導率計。
【請求項3】
請求項1に記載の電気伝導率計において、
前記信号生成回路は、前記矩形波信号として一定振幅を有する交流の矩形波電流からなる矩形波定電流信号を生成することを特徴とする電気伝導率計。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載の電気伝導率計において、
前記第1の電極は、前記液体と接液する接液電極からなり、前記第2の電極は、前記測定管の外周部に形成されて、前記液体と接液していない非接液電極からなることを特徴とする電気伝導率計。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載の電気伝導率計において、
前記プリント配線基板は、前記測定管が挿入される管孔を有し、前記管孔と前記測定管の外周面とが当接することにより、前記外周面に取り付けられることを特徴とする電気伝導率計。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の電気伝導率計において、
前記プリント配線基板のパターン面に、前記第1および第2の電極への電極配線を接続するための電極接続端子と、前記信号生成回路および前記バッファアンプのうち、少なくともいずれか一方または両方と前記電極接続端子とを接続するための配線パターンとが形成されていることを特徴とする電気伝導率計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の電気伝導率を計測するための電気伝導率計測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の電気伝導率(導電率)を計測する機器として、2電極方式の電気伝導率計が知られている。2電極方式の電気伝導率計は、2つの電極間に正弦波や方形波などの交流信号を印加し、電極間に発生した電気信号を検出することによって液体の電気伝導率を求める計測器である。2電極方式の電気伝導率計の従来技術については、特許文献1乃至3に開示がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、2つの電極を計測対象の液体中に浸した状態において、一方の電極に交流電圧を印加したときの他方の電極に流れ込む電流を検出することにより、計測対象の液体の電気抵抗から電気伝導率を計測する2電極方式の電気伝導率計が開示されている。また、特許文献2,3には、2つの電極が棒状に形成された2電極方式の電気伝導率計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平7-15490号公報
【文献】特開2005-148007号公報
【文献】特開2002-296312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような2電極方式の電気伝導率計では、2つの電極と電気伝導率を導出する回路とを一対の配線で結ぶ必要があるが、これら配線の長さによっては配線のインピーダンスが大きくなって、電気伝導率の計測において無視できなくなる。したがって、配線インピーダンスの影響により電極で検出した信号波形に歪みが生じ、電気伝導率の計測精度が低下するという問題点があった。
【0006】
この点については、特許文献1において検討されている。図20は、従来の電気伝導率計の信号処理回路を示す回路図である。図21は、図20の電極間およびケーブルに関する等価回路である。
図20に示す信号処理回路50において、信号生成回路51で生成された交流矩形波の印加電圧Vgは、バッファアンプU1で印加電圧Vg’に安定化された後、端子N1および電極配線LT1を介して電極T1に印加される。電極T2に発生した検出電流Itは、電極配線LT2および端子N2を介してオペアンプU2と帰還抵抗Rfに入力されて、検出電圧Vtに変換された後、同期整流回路52で整流されて直流電圧Etに変換出力される。
【0007】
図21に示す等価回路において、Cp,Rpは、電極T1,T2が液体と接液する際に電極-液体間に発生する分極容量および分極抵抗であり、Rlは、電極T1,T2間の液体に関する液体抵抗である。また、Cwは、電極配線LT1,LT2間に生じる線間容量であり、Rwは、LT1,LT2が持つ配線抵抗である。
図21に示すように、信号処理回路50側から端子N1,N2を介して電極T1,T2側を見た場合、分極容量Cpおよび分極抵抗Rpの並列回路と液体抵抗Rlとの直列回路に対して、線間容量Cwと配線抵抗Rwの直列回路が並列接続されているように見える。
【0008】
特許文献1では、このようなCp,Cwによる検出電圧Vtの歪みの影響が小さいタイミング、例えば印加電圧Vg’の出力開始直後に発生する微分ノイズの後であって、印加電圧Vg’の出力停止前までの期間に複数回Vtをサンプリングし、得られた複数のサンプル電圧からCp,Cwの影響を受けないVtを計算式で求めている。
しかしながら、上記計算式では線間容量Cwを無視できると仮定しているため、電極配線LT1,LT2が長くてCwを無視できない場合には、高い精度で電気伝導率を計測できないという問題点があった。
【0009】
一般に、分極容量Cpの影響を抑制するには、T1,T2間に印加する印加電圧Vgの周波数を高くする必要がある。しかし、印加電圧Vgの周波数を高くすると線間容量Cwの影響が大きくなって、T1,T2から得られる検出電圧Vtの歪みが大きくなり、電気伝導率の計測精度が低下する原因となる。また、電極配線LT1,LT2が長くなればなるほどCwが大きくなって、検出電圧Vtの歪みが大きくなり、電気伝導率の計測精度が低下する原因となる。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、電極を接続する電極配線の線間容量による影響を抑制し、高い精度で電気伝導率を計測できる電気伝導率計測技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明にかかる電気伝導率計は、測定管内の液体に関する電気伝導率を計測する電気伝導率計であって、予め設定された信号周波数を有する矩形波信号を生成する信号生成回路と、前記測定管に取り付けられて前記矩形波信号を前記液体に印加する第1および第2の電極と、前記第1および第2の電極から検出した検出信号を安定化して出力するバッファアンプと、前記バッファアンプの出力をサンプリングすることにより前記検出信号の振幅を検出する検出回路と、前記振幅に基づいて前記液体に関する電気伝導率を演算処理により求める演算処理回路と、前記第1および第2の電極の近傍位置に配置したプリント配線基板とを備え、前記信号生成回路および前記バッファアンプのうち、少なくともいずれか一方または両方が、前記プリント配線基板に搭載されているものである。
【0012】
また、本発明にかかる上記電気伝導率計の一構成例は、前記信号生成回路が、前記矩形波信号として一定振幅を有する交流の矩形波電圧からなる矩形波定電圧信号を生成するようにしたものである。
【0013】
また、本発明にかかる上記電気伝導率計の一構成例は、前記信号生成回路が、前記矩形波信号として一定振幅を有する交流の矩形波電流からなる矩形波定電流信号を生成するようにしたものである。
【0014】
また、本発明にかかる上記電気伝導率計の一構成例は、前記第1の電極が、前記液体と接液する接液電極からなり、前記第2の電極は、前記測定管の外周部に形成されて、前記液体と接液していない非接液電極からなるものである。
【0015】
また、本発明にかかる上記電気伝導率計の一構成例は、前記プリント配線基板が前記測定管が挿入される管孔を有し、前記管孔と前記測定管の外周面とが当接することにより、前記外周面に取り付けられるものである。
【0016】
また、本発明にかかる上記電気伝導率計の一構成例は、前記プリント配線基板のパターン面に、前記第1および第2の電極への電極配線を接続するための電極接続端子と、前記信号生成回路および前記バッファアンプのうち、少なくともいずれか一方または両方と前記電極接続端子とを接続するための配線パターンとが形成されているものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、信号生成回路やバッファアンプと第1および第2の電極とを接続する電極配線の長さを短くすることができ、電極配線間の線間容量を小さくすることができる。このため、比較的高い信号周波数を用いても、高い精度で電気伝導率を計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の回路構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の側面図である。
図3】第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の上面図である。
図4】第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の斜視図である。
図5】第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の他の斜視図である。
図6】サブ基板を示す正面図である。
図7】サブ基板を示す裏面図である。
図8】第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の動作を示す信号波形図である。
図9】第1の実施の形態にかかる電極側の等価回路である。
図10】振幅データと電気伝導率との対応関係を示す特性図である。
図11】第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の動作を示す他の信号波形図である。
図12】第2の実施の形態にかかる電気伝導率計の回路構成を示すブロック図である。
図13】矩形波電流源の構成例である。
図14】第2の実施の形態にかかる電気伝導率計の動作を示す信号波形図である。
図15】第2の実施の形態にかかる電極側の等価回路である。
図16】第3の実施の形態にかかる電気伝導率計の側面図である。
図17】第3の実施の形態にかかる電気伝導率計の上面図である。
図18】第3の実施の形態にかかる電気伝導率計の斜視図である。
図19】第3の実施の形態にかかる電気伝導率計の他の斜視図である。
図20】従来の電気伝導率計の信号処理回路を示す回路図である。
図21図20の電極間およびケーブルに関する等価回路である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1図5を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる電気伝導率計10について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の回路構成を示すブロック図である。図2は、第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の側面図である。図3は、第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の上面図である。図4は、第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の斜視図である。図5は、第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の他の斜視図である。
【0020】
本発明にかかる電気伝導率計10は、図1図5に示すように、測定管3に取り付けられた2つの電極T1,T2間に交流の矩形波信号SGを印加し、T1,T2間から検出した検出信号すなわち検出電圧Vtの振幅に基づいて、測定管3内の液体に関する電気伝導率を求める機能を有している。
【0021】
図1に示すように、電気伝導率計10は、主な回路部として、検出回路11、演算処理回路12、設定・表示回路13、伝送回路14、信号生成回路21、バッファアンプ22を備えている。
【0022】
本発明は、これら回路部のうち、信号生成回路21およびバッファアンプ22のうち、少なくともいずれか一方または両方を、測定管3の外周面のうち電極T1,T2の近傍位置に取り付けられたサブ基板(プリント配線基板)2に実装し、ジャンパー線J1,J2を介して電極T1,T2をサブ基板2に電気的に接続するようにしたものである。以下では、検出回路11、演算処理回路12、設定・表示回路13、および伝送回路14をメイン基板(プリント配線基板)1に実装し、信号生成回路21およびバッファアンプ22をサブ基板2に実装した場合を例として説明する。
【0023】
検出回路11は、信号生成回路21を制御することにより、電極T1,T2に対して予め設定された信号周波数fgを有する交流の矩形波信号SGを印加する機能と、電極T1,T2に発生した検出電圧Vtの振幅を検出して演算処理回路12へ出力する機能とを有している。
【0024】
本発明にかかる電気伝導率計10のバリエーションについては、電極T2として液体に接液しない非接液電極を用いてもよく、液体に接液する接液電極を用いてもよい。また、矩形波信号SGとして一定振幅を有する交流の矩形波電圧からなる矩形波定電圧信号を用いてもよく、一定振幅を有する交流の矩形波電流からなる矩形波定電流信号を用いてもよい。
本実施の形態では、電極T2が非接液電極であって、矩形波信号SGが矩形波定電圧信号である場合を例として説明する。なお、矩形波信号SGが矩形波定電流信号である場合や、電極T2が接液電極である場合については、他の実施の形態で後述する。
【0025】
検出回路11は、主な回路部として、クロック生成回路11A、サンプルホールド回路(SH回路)11B、およびA/D変換回路(ADC回路)11Cを備えている。
クロック生成回路11Aは、演算処理回路12からのクロック信号CLK0に基づいて、矩形波信号SG生成用のクロック信号CLKsと、サンプリング制御用のクロック信号CLKh,CLKlとを生成する機能を有している。
【0026】
サンプルホールド回路11Bは、クロック生成回路11Aからのクロック信号CLKh,CLKlに基づいてスイッチSWh,SWlをオンオフ制御することにより、バッファアンプ22からの出力電圧Vt’をサンプルホールドし、得られた検出電圧VH,VLをA/D変換回路11Cへ出力する機能を有している。
A/D変換回路11Cは、サンプルホールド回路11BからのVH,VLの差分電圧、すなわちVtの振幅電圧をA/D変換し、得られた振幅データDAを演算処理回路12へ出力する機能を有している。
【0027】
メイン基板1に実装されているコネクタCN1は、4芯の接続配線LCを介してサブ基板2に実装されているコネクタCN2と接続されている。これにより、メイン基板1とサブ基板2とが電気的に接続されている。具体的には、CN1の端子T11からLCを介してCN2の端子T21へクロック信号CLKsが供給されている。また、CN1の端子T12からLCを介してCN2の端子T22へ基準電圧Vsが供給されている。また、CN1の端子T13からLCを介してCN2の端子T23へ接地電圧GNDが供給されている。また、CN2の端子T24からLCを介してCN1の端子T14へバッファアンプ22の出力電圧Vt’が供給されている。
【0028】
また、サブ基板2は、ジャンパー線J1,J2を介して第1および第2の電極T1,T2と電気的に接続されている。具体的には、サブ基板2に形成されたパッド(電極接続端子)P1が、ジャンパー線J1を介して第1の電極T1と接続されており、サブ基板2に形成されたパッド(電極接続端子)P2が、ジャンパー線J2を介して第2の電極T2と接続されている。P1は、サブ基板2に形成された配線パターンLP1を介してサブ基板2上の接地電圧GNDと接続されており、P2は、サブ基板2に形成された配線パターンLP2を介してサブ基板2上の信号生成回路21およびバッファアンプ22と接続されている。
【0029】
信号生成回路21は、予め設定された信号周波数fgを有する矩形波信号SG、ここでは一定振幅を有する交流の矩形波電圧からなる矩形波定電圧信号を生成する機能を有している。具体的には、信号生成回路21は、一方の入力端子がT22の基準電圧Vsに接続され、他方の入力端子がT23の接地電圧GNDに接続され、制御端子がT21に接続されたスイッチSWgと、一端がSWgの出力端子に接続され、他端がLP2を介してP2に接続された抵抗素子Rgとを備えている。信号生成回路21は、検出回路11からのクロック信号CLKsに基づいて、スイッチSWgを切替制御することにより、振幅がVsでCLKsと同じ信号周波数fgを有する矩形波信号SGを生成する。
【0030】
バッファアンプ22は、例えばオペアンプやバッファ回路からなり、電極T1,T2から検出した検出電圧(検出信号)Vtを安定化し、出力電圧Vt’として出力する機能を有している。具体的には、バッファアンプ22において、入力端子はLP2を介してパッドP2に接続され、出力端子はT24に接続されている。
【0031】
演算処理回路12は、CPUとプログラムとを協働させることにより、検出回路11で得られた振幅データDAに基づいて、測定管3内の液体に関する電気伝導率を演算処理により求める機能を有している。演算処理回路12は、主な処理部として、電気伝導率算出部12Aと空状態判定部12Bとを備えている。
【0032】
電気伝導率算出部12Aは、検出回路11で得られた振幅データDAに基づいて、測定管3内の液体に関する電気伝導率を算出する機能を有している。具体的には、予め設定されている電気伝導率算出式を用いて、検出回路11からの振幅データDAに対応する電気伝導率を計算してもよいが、振幅データDAと電気伝導率との対応関係を予め計測し、得られた特性をルックアップテーブルとして予め設定しておき、検出回路11からの振幅データDAに基づいてルックアップテーブルを参照することにより、測定管3内の液体に関する電気伝導率を導出してもよい。
【0033】
空状態判定部12Bは、電気伝導率算出部12Aによって算出された電気伝導率に基づいて、測定管3内の液体の有無を判定する機能を有している。具体的には、空状態判定部12Bは、電気伝導率算出部12Aによって算出された電気伝導率と、予め設定されている閾値伝導率とを比較し、算出された電気伝導率が閾値伝導率よりも小さい場合、測定管3内に液体が存在しない、すなわち空状態と判定する。
【0034】
設定・表示回路13は、操作用ボタンやLED・LCD等の表示装置を備え、作業者の設定操作入力を検出して演算処理回路12へ出力する機能と、演算処理回路12からの各種データを表示する機能とを備えている。
伝送回路14は、伝送路LTを介してコントローラなどの上位装置(図示せず)との間でデータ伝送を行う機能と、演算処理回路12で得られた電気伝導率や空状態判定結果を、上位装置へ送信する機能とを備えている。
【0035】
[電気伝導率計の構造]
次に、図2図5を参照して、本実施の形態にかかる電気伝導率計10の構造について説明する。なお、以下では、便宜上、測定管3が伸延する方向を第1の方向Xといい、第1の方向Xに直交する測定管3の左右方向を第2の方向Yといい、第1および第2の方向X,Yに直交する測定管3の上下方向を第3の方向Zという。
【0036】
測定管3は、円筒形状をなすセラミックや樹脂などの絶縁性および誘電性に優れた材料からなり、下側ケース4の内部に収納されている。下側ケース4は、上側に開口部4Dを有する有底箱状の樹脂、または金属筐体から構成されている。
【0037】
下側ケース4の側面のうち第1の方向Xと直交する一対の側面4Aには、電気伝導率計10の外部に設けられる配管(図示せず)と測定管3とを連結可能な、金属材料(例えば、SUS)から構成された管状の継手5A,5Bが配設されている。測定管3は、第1の方向Xに沿って下側ケース4の内部に収納され、測定管3の両端部には、一対のOリングORを挟んで継手5Aと継手5Bがそれぞれ連結される。
【0038】
ここで、継手5A,5Bのうちの少なくとも一方は、電極(第1の電極)T1として機能する。例えば、継手5Aは、接地電圧GND(コモン電位)に接続されることにより、外部の配管と測定管3とを連結するだけでなく、電極T1としても機能する。
このように、電極T1を金属からなる継手5Aによって実現することにより、T1が液体と接触する面積が大きくなる。
【0039】
これにより、T1に異物の付着や腐食が生じた場合であっても、異物の付着や腐食が生じた部分の面積がT1の全面積に対して相対的に小さくなるため、分極容量の変化による測定誤差を抑えることが可能となる。また、継手5Aに接地電圧GNDが印加されるため、継手5Aに接続される外部配管が金属であっても、外部配管がアンテナとなって電磁波ノイズを放射してしまうことはない。また、継手5Aが電極T1として兼用されるため、別途T1を設ける必要がなく、電気伝導率計10の小型化が図れる。
【0040】
一方、下側ケース4の側面のうち第2の方向Yと直交する一対の側面4Bと下側ケース4の底面4Eの外側面には、断面コの字形状の金属板からなるシールド6が取り付けられている。これにより、電気伝導率計10から外部に放射されるノイズを低減できる。
【0041】
また、測定管3の外周面3Aのうち、サブ基板2を挟んで継手5Aと反対側には、測定管3の全周にわたって薄膜導体からなる面電極(第2の電極)T2が、非接液電極としてパターン形成されている。また、T2のうちサブ基板2側の側端部には、パッドP3がサブ基板2に向かって突出して形成されている。
【0042】
前述したように、信号生成回路21およびバッファアンプ22のうち、少なくともいずれか一方を、測定管3の外周面3Aのうち電極T1,T2の近傍位置に取り付けられたサブ基板(プリント配線基板)2に実装し、ジャンパー線J1,J2を介して電極T1,T2をサブ基板2に電気的に接続するようにしたものである。
【0043】
図6は、サブ基板を示す正面図である。図7は、サブ基板を示す裏面図である。
図6に示すように、サブ基板2のうち、継手5Aからなる電極T1側の基板面2Aには、第2の方向Yに沿って管孔2Hの横位置にパッドP1がパターン形成されており、J1を介してこのP1とT1とを接続している。J1はP1およびT1の外表面に半田付けされる。
【0044】
また、図7に示すように、サブ基板2のうち、電極T2側の基板面2Bには、第3の方向Zに沿って管孔2Hの上位置にパッドP2がパターン形成されており、J2を介してこのP2とP3とを接続している。J2はP2およびP3に半田付けされる。
また、基板面2Bのうち、パッドP2を含む管孔2Hの上側には、回路実装領域2Gが設けられており、信号生成回路21やバッファアンプ22、さらにはコネクタCN2が実装され、配線パターンLP1,LP2(図示せず)を介してP1,P2が接続されている。
【0045】
これにより、サブ基板2と電極T1,T2とを接続する電極配線、すなわちジャンパー線J1,J2の長さを極めて短くでき、J1,J2のインピーダンスを極めて低く抑えることができる。また、サブ基板2に信号生成回路21またはバッファアンプ22を実装したため、メイン基板1とサブ基板2とを接続する接続配線LCのインピーダンスも低く抑えることができる。このため、電気伝導率の計測において、ジャンパー線J1,J2さらには接続配線LCのインピーダンスを無視することができる。
【0046】
図2に示すように、下側ケース4の上部には、開口部4Dを覆うように上側ケース9が取り付けられる。メイン基板1は、この上側ケース9内に固定されており、検出回路11、演算処理回路12、設定・表示回路13、伝送回路14などの各回路部が実装されている。サブ基板2のコネクタCN2は、接続配線LCを介してメイン基板1のコネクタCN1と接続されている。
なお、サブ基板2のうち、回路部品や配線パターン以外の領域に、接地電圧GNDと接続されたグランドパターンを形成してもよい。これにより、電気伝導率計10の外部から電極T2に混入するノイズを低減でき、測定誤差を抑えることが可能となる。
【0047】
サブ基板2については、測定管3の外周面3Aであればいずれの方向に取り付けてもよいが、本実施の形態は、サブ基板2に設けた管孔2Hに測定管3を圧入することにより、サブ基板2を測定管3に固定している。
図6および図7に示すように、サブ基板2のうち、紙面に向かって左右の方向である左右方向Yの中央位置には、測定管3を圧入するための管孔2Hが形成されている。これにより、取付ネジなどの固定部材を用いることなく極めて簡素な構成で、サブ基板2を測定管3に固定することができる。
【0048】
管孔2Hの大きさは、測定管3の外周部の大きさと同じもしくは少し小さめに設定されている。この際、管孔2Hは、測定管3の外周形状に合わせて真円形状にする必要はなく、略多角形状、図6および図7では略八角形状としてもよい。これにより、管孔2Hの端部が外周面3Aと部分的に接触することになり、管孔2Hの端部の全周にわたって外周面3Aと接する構成と比較して、測定管3からサブ基板2に実装した信号生成回路21やバッファアンプ22に伝わる熱の影響を抑制することができる。
【0049】
また、管孔2Hと測定管3との間に隙間2Sが離散して形成されるため、管孔2Hに対して測定管3を容易に圧入することができ、圧入専用の治具を用意する必要がなく、作業負担を軽減できる。
なお、管孔2Hの形状については略多角形状に限定されるものではなく、管孔2Hの孔壁面に複数の凸部を備え、この凸部が外周面3Aと当接するようにしてもよい。あるいは、管孔2Hの周部の一部がサブ基板2の側端部に向けて直接開口する切欠きや間接的に開口するスリットを設けてもよい。これにより、前述と同様の作用効果が得られる。
【0050】
また、本実施の形態において、下側ケース4の側面4Bの内壁部4Cには、凸状または凹状のレールからなる一対のガイド部7X,7Yが形成されている。サブ基板2の側端部2X,2Yがこれらガイド部7X,7Yに嵌合するよう、下側ケース4の開口部4Dから挿入することにより、サブ基板2を介して測定管3を下側ケース4に取り付けられる。これにより、極めて簡素な構造でサブ基板2さらには測定管3を下側ケース4の内部に取り付けることができる。
【0051】
なお、ガイド部7X,7Yについては、凸状部分または凹状部分が伸延して形成されている必要はなく、側端部2X,2Yがスムーズに挿入される間隔で、凸状部分または凹状部分を複数に分離して形成してもよい。また、図3では、ガイド部7X,7Yが2つの突条からなる場合が例として示されているが、突条に代えて側端部2X,2Yが挿入される溝であってもよい。
また、ガイド部7X,7Yでサブ基板2を固定する必要はなく、逆に少し遊びがあったほうが継手5A,5Bによるネジ止めの際に、測定管3あるいはサブ基板2にかかる機械的ストレスを緩和することができる。
【0052】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図8を参照して、本実施の形態にかかる電気伝導率計10の動作について説明する。図8は、第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の動作を示す信号波形図である。
ここでは、電極T2が非接液電極であって、矩形波信号SGが矩形波定電圧信号である場合を例として説明する。
【0053】
クロック生成回路11Aは、演算処理回路12からのクロック信号CLK0に基づいて、矩形波信号SG生成用のクロック信号CLKsと、サンプリング制御用のクロック信号CLKh,CLKlとを生成する。ここでは、CLKsの周波数、すなわち矩形波信号SGの信号周波数fgが3MHzである場合が示されている。
【0054】
信号生成回路21は、CLKsに基づいてスイッチSWgをオンオフ制御する。これにより、図8に示すように、検出回路11から供給された基準電圧Vsと接地電圧GNDとが、スイッチSWgにより信号周波数fgの半周期ごとに切り替えられて、抵抗素子Rrを介して電極T2に印加されることになる。したがって、信号生成回路21から供給された基準電圧Vsは、抵抗素子Rgと電極T1,T2間のインピーダンスとで分圧され、その分圧電圧が電極T1,T2間の電圧、すなわち検出電圧Vtとなる。
【0055】
サンプルホールド回路11Bは、クロック生成回路11AからのCLKhに基づいて、バッファアンプ22でVtが安定化(インピーダンス変換)されて得られた出力電圧Vt’のうち、Vsが供給されているハイレベル期間TH(SGの半周期)における検出電圧VHをサンプリングする。また、サンプルホールド回路11Bは、クロック生成回路11AからのCLKlに基づいて、Vt’のうち、GNDが供給されているローレベル期間TL(SGの半周期)における検出電圧VLをサンプリングする。
【0056】
VH,VLをサンプリングするタイミングについては、TH,TLの切り替えに伴うVtの波形変化や、Vtの飽和の影響を受けない時間位置が望ましい。また、TH,TLの開始時点を基準とした同一時間位置でVH,VLをサンプリングすることが望ましい。したがって、例えばVtが安定しているTH,TL(SGの半周期)の中央位置でVH,VLをサンプリングすればよい。
【0057】
A/D変換回路11Cは、サンプルホールド回路11Bで得られたVHとVLの差分電圧ΔVtを振幅データDAにA/D変換して出力する。
一般には、交流の検出電圧Vtを全波整流する方法、例えばTLにおける検出電圧VtをVtの中間レベルで折り返してTHのVtと加算する方法が考えられる。しかし、このような方法では、TLとTHのVtが等しくないと、全波整流しても脈流が残り、安定した直流電圧とならないため、計測誤差の原因となる。
【0058】
本実施の形態によれば、交流の検出電圧Vtを全波整流せず、TLとTHでそれぞれ別個にサンプリングし、得られたVH,VLの差分電圧を振幅データとして取得している。このため、液体の流速変化などによりVtに揺らぎが含まれているような場合や、外部から液体を介してコモンモードノイズがVtに混入しているような場合でも、振幅データへの影響を回避することができ、電気伝導率の安定した計測を実現できる。
【0059】
電気伝導率算出部12Aは、A/D変換回路11CからのDAに基づいて、液体の電気伝導率を算出する。
また、空状態判定部12Bは、電気伝導率算出部12Aで得られた電気伝導率を閾値伝導率と比較することにより、測定管3内が空状態であるか否か判定する。
【0060】
図9は、第1の実施の形態にかかる電極側の等価回路である。前述したように、矩形波信号SGの振幅を示す印加電圧Vgは、抵抗素子Rgと電極T1,T2間のインピーダンスとで分圧される。このため、図9に示すように、サブ基板2から見た電極側の等価回路は、信号生成回路21に相当する矩形波電圧源VGに対して、信号生成回路21の抵抗素子Rgと、電極T1,T2間のインピーダンスを示す側の等価回路Ztとが直列接続された形式となる。
【0061】
この際、Ztにおいて、電極T1,T2と液体との接液時に電極-液体間に分極容量Cpおよび分極抵抗Rpが発生し、T2が非接液電極であるため、液体と電極T2との間に電極容量Ctが発生する。したがって、電極T1,T2間の液体に関する液体抵抗をRlとすると、Ztは、分極容量Cpおよび分極抵抗Rpの並列回路と、液体抵抗Rlと、電極容量Ctとが直列接続された等価回路で表される。ここで、矩形波信号SGの信号周波数fgが比較的高い場合、Cp,Ctのインピーダンスは非常に小さくなり、図8に示すように、Cp,Rpの両端電圧VcpおよびCtの両端電圧Vctは無視できるレベルとなる。これにより、Ztは、液体抵抗Rlのみと見なすことができる。
【0062】
矩形波信号SGが、Vsの中点Vs/2を中心として±Vs/2の振幅を有する交流信号であると考えた場合、Vg=Vsであるハイレベル期間THに検出された検出電圧VtをVHとすると、Rgの両端電圧はVrgH=Vs-VHとなり、Ztの両端電圧Vzすなわち液体抵抗Rlの両端電圧はVrlH=VH-Vs/2となる。また、Vg=GNDであるローレベル期間TLに検出された検出電圧VtをVLとすると、Rgの両端電圧はVrgL=VLとなり、液体抵抗Rlの両端電圧はVrlL=Vs/2-VLとなる。
【0063】
したがって、VrgHL=VrgH+VrgLとし、VrlHL=VrlH+VrlLとした場合、VrgHLとVrlHLとの比は、次の式(1)となる。
【数1】
【0064】
ここで、VrgHLとVrlHLとの比は、RgとRl(≒Zt)との比とほぼ等しいと見なせるため、Rlは次の式(2)で求められる。
【数2】
【0065】
この際、式(2)において、RgおよびVsは既知であり、差分電圧VH-VLは、SH回路11Bで検出されてA/D変換回路11Cで振幅データDAに変換されて演算処理回路12へ入力される。したがって、電気伝導率算出部12Aは、これらデータに基づいてRlを容易に算出することができる。
【0066】
図10は、振幅データと電気伝導率との対応関係を示す特性図であり、縦軸が振幅データDAを示し、横軸が電気伝導率を示している。電気伝導率が既知の標準流体を複数種用いてキャリブレーション作業を行うことによって、このような振幅データDAと電気伝導率との対応関係を予め計測し、得られた特性をルックアップテーブルとして、例えば半導体メモリ(図示せず)に設定しておき、検出回路11からの振幅データDAに基づいて、電気伝導率算出部12Aが、ルックアップテーブルを参照して、測定管3内の液体に関する電気伝導率を導出してもよい。
【0067】
図11は、第1の実施の形態にかかる電気伝導率計の動作を示す他の信号波形図である。図8では、CpおよびCtのインピーダンスが無視できるレベルの信号周波数としてfg=3MHzの場合を例として説明した。しかし、fgが比較的低い場合、例えば図11に示すように、fg=150kHzの場合、Cp,Ctのインピーダンスが無視できなくなる。このため、VctやVrl、さらにはVtがそれぞれの時定数で指数関数的に変化するようになり、VH,VLを安定して検出できなくなる。
【0068】
このように、Vtの波形が歪んだ場合、振幅データDAの検出時に誤差が含まれやすくなり、結果として電気伝導率に関する測定精度の低下の要因となる。このため、fgとして、Cp,Ctのインピーダンスが無視できる程度の高い周波数を用いる必要がある。一方、fgを高くすると、図21に示した従来の等価回路のように電極配線の線間容量Cwによる影響が大きくなって電極配線で信号漏れが発生し、Vtの波形が歪む原因となる。
【0069】
本実施の形態では、信号生成回路21およびバッファアンプ22のうち、少なくともいずれか一方または両方を、測定管3の外周面3Aのうち電極T1,T2の近傍位置に取り付けられたサブ基板2に実装し、ジャンパー線J1,J2を介して電極T1,T2をサブ基板2に電気的に接続するようにしたものである。これにより、J1,J2に相当する電極配線の長さを極めて短くすることができ、J1,J2間の線間容量Cwを小さくすることができる。このため、fgとして、Cp,Ctのインピーダンスが無視できる程度の高い周波数を用いても、J1,J2間での信号漏れを低く抑えることができる。したがって、高い精度で電気伝導率を計測することが可能となる。
【0070】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、測定管3に取り付けられている電極T1,T2の近傍位置にサブ基板2を配置し、矩形波信号SGを生成する信号生成回路21、および、電極T1,T2から検出した検出信号を安定化して出力するバッファアンプ22のうち、少なくともいずれか一方または両方を、サブ基板2に搭載するようにしたものである。
より具体的には、信号生成回路21が、矩形波信号SGとして一定振幅を有する交流の矩形波電圧からなる矩形波定電圧信号を生成するようにしたものである。また、電極T1は、液体と接液する接液電極からなり、電極T2は、測定管3の外周部に形成されて、液体と接液していない非接液電極からなるものである。
【0071】
これにより、信号生成回路21やバッファアンプ22と電極T1,T2とを接続する電極配線、すなわちジャンパー線J1,J2の長さを大幅に短縮することができ、電極配線間の線間容量を小さくすることができる。このため、比較的高い信号周波数を用いても、高い精度で電気伝導率を計測することが可能となる。また、電極を接続する電極配線の線間容量による影響を抑制し、高い精度で電気伝導率を計測できる。
また、電極T2が非接液電極であるため、電極面への汚れ付着や電極の腐食に起因する計測誤差の発生を抑止できる。また、白金黒のような高価な接液電極を用いる必要がなく、大幅なコストダウンが図れる。
【0072】
また、本実施の形態において、サブ基板2に測定管3が挿入される管孔2Hを設け、管孔2Hと測定管3の外周面3Aとが当接することにより、外周面3Aに取り付けられるようにしてもよい。
これにより、取付ネジなどの固定部材を用いることなく極めて簡素な構成で、サブ基板2を測定管3に固定することができる。
【0073】
また、このような構成により、電極T1と電極T2との間に測定管3の長手方向と直交させてサブ基板2を配置することができる。このため、サブ基板2から電極T1,T2までの電極配線、すなわちジャンパー線J1,J2を、異なる位置および方向に配置・接続することができ、電極配線間の線間容量を極めて小さくすることができる。また、電極T1である継手5Aに金属配管が接続された場合、液体への印加電流が金属配管に回り込んで計測誤差が生じる可能性があるが、上記構成により、T1からある程度の距離を持ってT2を容易に配置することができる。したがって、金属配管に対する印加電流の回り込みを抑制でき、精度よく電気伝導率を計測することが可能となる。
【0074】
また、本実施の形態において、サブ基板2のパターン面に、電極T1,T2への電極配線を接続するためのパッド(電極接続端子)と、信号生成回路21およびバッファアンプ22のうち、少なくともいずれか一方または両方とパッドとを接続するための配線パターンとを形成するようにしてもよい。
これにより、コネクタを用いることなく、サブ基板2に実装されている信号生成回路21やバッファアンプ22と、電極T1,T2とをジャンパー線J1,J2により極めて容易に接続することができる。
【0075】
[第2の実施の形態]
次に、図12を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる電気伝導率計10について説明する。図12は、第2の実施の形態にかかる電気伝導率計の回路構成を示すブロック図である。
本実施の形態では、電極T2が非接液電極であって、矩形波信号SGが矩形波定電流信号である場合を例として説明する。
【0076】
図12に示すように、信号生成回路21は、予め設定された信号周波数fgを有する矩形波信号SG、ここでは一定振幅(設定電流Is)を有する交流の矩形波定電流信号を生成する機能を有している。具体的には、信号生成回路21は、全体としてオンオフ動作する矩形波電流源IGからなり、T22の基準電圧VsとT23の接地電圧GNDに接続されて、T21のクロック信号CLKsに基づいて、振幅が設定電流IsでCLKsと同じ信号周波数fgを有する矩形波信号SGを生成する機能を有している。
【0077】
図13は、矩形波電流源の構成例である。図13に示すように、矩形波電流源IGは、スイッチSWi、オペアンプUg、および電流検出回路DETを備えている。SWiは、CLKsに基づいてVsとGNDとを切替出力するアナログスイッチである。DETは、IGから出力される印加電流Igの電流値を検出する回路である。Ugは、DETからの電流検出出力に基づいてIgの電流値を設定電流Isに維持制御するとともに、SWiの出力に基づいてIgの出力をオンオフ制御する機能を有している。
【0078】
前述した抵抗素子Rgは不要であるため、信号生成回路21の出力、すなわちIGの出力端子は、サブ基板2に形成された配線パターンLP2を介してパッドP2に接続されている。
本実施の形態にかかる電気伝導率計10に関する、その他の回路構成、および、測定管3、電極T1,T2、サブ基板2などの構造については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0079】
[第2の実施の形態の動作]
次に、図14を参照して、本実施の形態にかかる電気伝導率計10の動作について説明する。図14は、第2の実施の形態にかかる電気伝導率計の動作を示す信号波形図である。
ここでは、電極T2が非接液電極であって、矩形波信号SGが矩形波定電流信号である場合を例として説明する。なお、振幅データDAに基づく電気伝導率の基本的な演算処理については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0080】
クロック生成回路11Aは、演算処理回路12からのクロック信号CLK0に基づいて、矩形波信号SG生成用のクロック信号CLKsと、サンプリング制御用のクロック信号CLKh,CLKlとを生成する。ここでは、CLKsの周波数、すなわち矩形波信号SGの信号周波数fgが150kHzである場合が示されている。
【0081】
信号生成回路21は、CLKsに基づいて矩形波電流源IGをオンオフ制御する。これにより、図14に示すように、信号周波数fgの半周期ごとに印加電流Igが、予め設定されている設定電流Isとゼロとの間で切り替えられて、電極T2に印加されることになる。したがって、信号生成回路21から供給された印加電流Igにより、電極T1,T2間における液体の液体抵抗で発生した電圧が電極T1,T2間の電圧、すなわち検出電圧Vtとなる。
【0082】
サンプルホールド回路11Bは、クロック生成回路11AからのCLKhに基づいて、バッファアンプ22でVtが安定化(インピーダンス変換)されて得られた出力電圧Vt’のうち、Isが供給されているハイレベル期間TH(SGの半周期)における検出電圧VHをサンプリングする。また、サンプルホールド回路11Bは、クロック生成回路11AからのCLKlに基づいて、Vt’のうち、ゼロが供給されているローレベル期間TL(SGの半周期)における検出電圧VLをサンプリングする。
【0083】
A/D変換回路11Cは、サンプルホールド回路11Bで得られたVHとVLの差分電圧ΔVtを振幅データDAにA/D変換して出力する。
電気伝導率算出部12Aは、A/D変換回路11CからのDAに基づいて、液体の電気伝導率を算出する。
また、空状態判定部12Bは、電気伝導率算出部12Aで得られた電気伝導率を閾値伝導率と比較することにより、測定管3内が空状態であるか否か判定する。
【0084】
図15は、第2の実施の形態にかかる電極側の等価回路である。本実施の形態では、矩形波信号SGとして矩形波定電流信号を用いているため、抵抗素子Rgを用いる必要がない。このため、図15に示すように、サブ基板2から見た電極側の等価回路は、信号生成回路21の矩形波電流源IGに対して、電極T1,T2間のインピーダンスを示す側の等価回路Ztが接続された形式となる。
【0085】
この際、Ztにおいて、電極T1,T2と液体との接液時に電極-液体間に分極容量Cpおよび分極抵抗Rpが発生し、T2が非接液電極であるため、液体と電極T2との間に電極容量Ctが発生する。したがって、電極T1,T2間の液体に関する液体抵抗をRlとすると、Ztは、分極容量Cpおよび分極抵抗Rpの並列回路と、液体抵抗Rlと、電極容量Ctとが直列接続された等価回路で表される。ここで、矩形波信号SGの信号周波数をfg=150kHzとした場合、Cpのインピーダンスは比較的小さいものの、Ctのインピーダンスがある程度大きくなるため、Ctの両端電圧VctさらにはVtが過渡的に変化するようになる。
【0086】
図11に示したように、矩形波信号SGとして一定振幅を有する交流の矩形波電圧からなる矩形波定電圧信号を用いた場合、Vctや液体抵抗Rlの両端電圧Vrl、さらにはVtがそれぞれの時定数で指数関数的に変化するようになり、VH,VLを安定して検出できなくなる。
このように、Vtの波形が歪んだ場合、振幅データDAの検出時に誤差が含まれやすくなり、結果として電気伝導率に関する測定精度の低下の要因となる。このため、fgとして、Cp,Ctのインピーダンスが無視できる程度の高い周波数を用いる必要がある。一方、fgを高くすると、図21に示した従来の等価回路のように電極配線の線間容量Cwによる影響が大きくなって電極配線で信号漏れが発生し、Vtの波形が歪む原因となる。
【0087】
これに対して、本実施の形態では、矩形波信号SGとして矩形波定電流信号を用いているため、fg=150kHzとした場合でも、VctおよびVtの傾斜が直線的となり、VH,VLを安定して検出することができる。
【0088】
印加電流Igが設定電流Isであるハイレベル期間THに検出された検出電圧VtをVHとし、そのときのVrlおよびVctをVrlHおよびVctHとすると、VH=VrlH+VctHとなる。また、Ig=0であるローレベル期間TLに検出された検出電圧VtをVLとし、そのときのVrlおよびVctをVrlLおよびVctLとすると、VL=VrlL+VctLとなる。
【0089】
この際、検出したVH,VLには、Vctが含まれるものの、CLKhおよびCLKlがTH,TL(SGの半周期)の中央位置を示しているため、サンプリングされたVHとVLに含まれるVctHとVctLは等しくなる。これにより、VHとVLの差分電圧ΔVtを採ることによりVctHとVctLが相殺され、Vctを含まない振幅データDAが得られる。
【0090】
すなわち、ΔVt=VH-VL=VrlH-VrlLとなる。これにより、Igが一定であるため、Rlは次の式(3)で求められる。
【数3】
【0091】
式(3)において、Igは既知であり、差分電圧VH-VLは、SH回路11Bで検出されてA/D変換回路11Cで振幅データDAに変換されて演算処理回路12へ入力される。したがって、電気伝導率算出部12Aは、これらデータに基づいてRlを容易に算出することができる。
【0092】
これにより、fg=150kHzの場合でも、VH,VLを安定して精度よく検出することができる。これにより、fg=3MHzの場合と比較して、電極配線、すなわちジャンパー線J1,J2の線間容量による影響を極めて小さくでき、極めて高い精度で電気伝導率を計測することが可能となる。
【0093】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、測定管3に取り付けられている電極T1,T2の近傍位置にサブ基板2を配置し、矩形波信号SGを生成する信号生成回路21、および、電極T1,T2から検出した検出信号を安定化して出力するバッファアンプ22のうち、少なくともいずれか一方または両方を、サブ基板2に搭載するようにしたものである。
より具体的には、信号生成回路21が、矩形波信号SGとして一定振幅を有する交流の矩形波電流からなる矩形波定電流信号を生成するようにしたものである。また、電極T1は、液体と接液する接液電極からなり、電極T2は、測定管3の外周部に形成されて、液体と接液していない非接液電極からなるものである。
【0094】
これにより、信号生成回路21やバッファアンプ22と電極T1,T2とを接続する電極配線、すなわちジャンパー線J1,J2の長さを短くすることができ、電極配線間の線間容量を小さくすることができる。このため、比較的低い信号周波数を用いても、高い精度で電気伝導率を計測することが可能となる。
【0095】
また、矩形波信号SGとして一定振幅を有する交流の矩形波電流からなる矩形波定電流信号を用いることにより、非接液電極T2を用いた場合に特有の、液体と電極T2との間に発生する電極容量Ctの影響を大幅に低減することができる。これにより、矩形波信号SGの信号周波数fgとして比較的低い周波数を用いることができるため、J1,J2の線間容量による影響をさらに低減でき、極めて高い精度で電気伝導率を計測することが可能となる。
【0096】
また、本実施の形態において、検出回路11が、矩形波信号SGの半周期の中央時間位置で、検出電圧Vtをサンプリングするようにしてもよい。
これにより、T2として非接液電極を用いた場合でも、ハイレベル期間THにサンプリングしたVHに含まれるT2の電極容量Ctの両端電圧VctHと、ローレベル期間TLにサンプリングしたVLに含まれるCtの両端電圧VctLとが等しくなる。したがって、VHとVLの差分電圧ΔVtを採ることによりVctHとVctLが相殺され、Vctを含まない振幅データDAが得られる。このため、高い精度で電気伝導率を計測することが可能となる。
【0097】
また、本実施の形態において、信号生成回路21の矩形波電流源IGを、矩形波定電流信号の大きさを検出する電流検出回路DETと、信号周波数fgを示すクロック信号CLKsと電流検出回路DETからの検出結果とに基づいて、矩形波定電流信号である印加電流Igの振幅を設定電流Isに維持するオペアンプUgとにより構成してもよい。
これにより、比較的簡素な構成で、精度の高い安定した印加電流Igを生成することができる。
【0098】
[第3の実施の形態]
次に、図16図19を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる電気伝導率計10について説明する。図16は、第3の実施の形態にかかる電気伝導率計の側面図である。図17は、第3の実施の形態にかかる電気伝導率計の上面図である。図18は、第3の実施の形態にかかる電気伝導率計の斜視図である。図19は、第3の実施の形態にかかる電気伝導率計の他の斜視図である。
【0099】
第1および第2の実施の形態では、電極T2として液体に接液しない非接液電極を用いた場合を例として説明した。本実施の形態では、電極T2として液体に接液する接液電極を用いる場合について説明する。なお、本実施の形態は、第1および第2の実施の形態のいずれにも適用できる。
【0100】
[電気伝導率計の構造]
次に、図16図19を参照して、本実施の形態にかかる電気伝導率計10の構造について説明する。なお、以下では、便宜上、測定管3が伸延する方向を第1の方向Xといい、第1の方向Xに直交する測定管3の左右方向を第2の方向Yといい、第1および第2の方向X,Yに直交する測定管3の上下方向を第3の方向Zという。
【0101】
測定管3は、円筒形状をなすセラミックや樹脂などの絶縁性および誘電性に優れた材料からなり、下側ケース4の内部に収納されている。下側ケース4は、有底箱状の樹脂、または金属筐体から構成されている。
【0102】
下側ケース4の側面のうち第1の方向Xと直交する一対の側面4Aには、電気伝導率計10の外部に設けられる配管(図示せず)と測定管3とを連結可能な、金属材料(例えば、SUS)から構成された管状の継手5A,5Bが配設されている。この際、測定管3は、長手方向Xに沿って下側ケース4の内部に収納され、測定管3の両端部には、一対のOリングORを挟んで継手5Aと継手5Bがそれぞれ連結される。
【0103】
ここで、継手5A,5Bのうちの少なくとも一方は、電極(第1の電極)T1として機能する。例えば、継手5Aは、接地電圧GND(コモン電位)に接続されることにより、外部の配管と測定管3とを連結するだけでなく、電極T1としても機能する。
このように、電極T1を金属からなる継手5Aによって実現することにより、T1が液体と接触する面積が大きくなる。これにより、T1に異物の付着や腐食が生じた場合であっても、異物の付着や腐食が生じた部分の面積がT1の全面積に対して相対的に小さくなるため、分極容量の変化による測定誤差を抑えることが可能となる。
【0104】
一方、下側ケース4の側面のうち第2の方向Yと直交する一対の側面4Bと下側ケース4の底面4Eの外側面には、断面コの字形状の金属板からなるシールド6が取り付けられている。これにより、電気伝導率計10から外部に放射されるノイズを低減できる。
【0105】
また、測定管3の外周面3Aのうち、サブ基板2を挟んで継手5Aと反対側には、測定管3の壁部を貫通して測定管3内に突出するよう、金属棒体からなる接液電極(第2の電極)T2が取り付けられている。測定管3内に突出した部分は、測定管3内の液体と接液することになる。
【0106】
前述したように、信号生成回路21およびバッファアンプ22のうち、少なくともいずれか一方を、測定管3の外周面3Aのうち電極T1,T2の近傍位置に取り付けられたサブ基板2に実装し、ジャンパー線J1,J2を介して電極T1,T2をサブ基板2に電気的に接続するようにしたものである。この際、具体的には、J1はP1およびT1の外表面に半田付けされ、J2はP2およびT2に半田付けされる。
【0107】
[第3の実施の形態の動作]
次に、本実施の形態にかかる電気伝導率計10の動作について説明する。
電極T2を非接液電極から接液電極に変更した場合、非接液電極の場合におけるT2と液体との間の電極容量Ctがなくなる。このため、図9および図15に示した等価回路Ztは、分極容量Cpおよび分極抵抗Rpの並列回路と、液体抵抗Rlとが直列接続された等価回路で表される。本実施の形態にかかるこのほかの電気伝導率計測動作については、第1および第2の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0108】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、電極T1,T2が、液体と接液する接液電極からなるものである。これにより、T2として非接液電極を用いた場合に特有の、液体と電極T2との間に発生する容量Ctによる影響を排除することができ、矩形波信号SGの信号周波数として比較的低い周波数を用いることができる。このため、電極配線、すなわちジャンパー線J1,J2の線間容量による影響を極めて小さくでき、極めて高い精度で電気伝導率を計測することが可能となる。
【0109】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0110】
10…電気伝導率計、1…メイン基板、2…サブ基板、2A,2B…基板面、2G…回路実装領域、2H…管孔、2S…隙間、2X,2Y…側端部、3…測定管、3A…外周面、4…下側ケース、4A,4B…側面、4C…内壁部、4D…開口部、4E…底面、5A,5B…継手、6…シールド、7X,7Y…ガイド部、9…上側ケース、11…検出回路、11A…クロック生成回路、11B…サンプルホールド回路(SH回路)、11C…A/D変換回路(ADC回路)、12…演算処理回路、13…設定・表示回路、14…伝送回路、21…信号生成回路、22…バッファアンプ、VG…矩形波電圧源、IG…矩形波電流源、T1,T2…電極、P1,P2,P3…パッド、J1,J2…ジャンパー線、LC…接続配線、CN1,CN2…コネクタ、LP1,LP2…配線パターン、SWg,SWh,SWl,SWi…スイッチ、Rg…抵抗素子、CLK0,CLKs,CLKh,CLKl…クロック信号、Vs…基準電圧、GND…接地電圧、SG…矩形波信号、Vg…印加電圧、Ig…印加電流、Vt,VH,VL…検出電圧、Vt’ …出力電圧、DA…振幅データ。
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