(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】食器洗浄機
(51)【国際特許分類】
A47L 15/46 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
A47L15/46 E
A47L15/46 Z
A47L15/46 D
(21)【出願番号】P 2018144766
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】佐橋 敏男
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-321391(JP,A)
【文献】特開2005-168897(JP,A)
【文献】特開平09-173272(JP,A)
【文献】特開2002-336175(JP,A)
【文献】特開2001-327454(JP,A)
【文献】特開2006-239401(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0024055(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 15/00-15/46
D06F 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器類を収納する洗浄槽と、洗浄槽内に設けられた洗浄ノズルと、洗浄槽内の洗浄水を洗浄ノズルに供給する洗浄ポンプと、制御手段とを備え、制御手段による制御で洗浄ポンプを駆動して洗浄ノズルから洗浄水を噴射する洗浄工程を実行する食器洗浄機において、
洗浄槽内での所定量以上の泡の発生を検知する泡検知手段と、報知手段とを備え、
制御手段は、洗浄工程中に泡検知手段により泡の発生が検知されると、洗浄工程を中断すると共に、報知手段による使用者への報知を行い、その後、使用者による所定の操作が行われたか否かを判別して、所定の操作が行われたときに、発生した泡を除去する消泡工程を実行するように構成され
、
所定の操作は、洗浄槽内を目視可能とするための操作であることを特徴とする食器洗浄機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記報知手段による報知を行った後、前記所定の操作が行われずに所定の設定時間経過したときにも前記消泡工程を実行するように構成されることを特徴とする請求項
1記載の食器洗浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器類を収納する洗浄槽と、洗浄槽内に設けられた洗浄ノズルと、洗浄槽内の洗浄水を洗浄ノズルに供給する洗浄ポンプと、制御手段とを備え、制御手段による制御で洗浄ポンプを駆動して洗浄ノズルから洗浄水を噴射する洗浄工程を実行する食器洗浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の食器洗浄機において、発泡しやすい洗剤を用いると、多量に発生した泡が食器表面でクッションとなって作用し、洗浄ノズルから洗浄水を勢いよく噴射しても、食器に当たる洗浄水の勢いが弱められて汚れが落ち難くなったり、洗浄ポンプに多量の泡が吸引されて、洗浄ポンプからの洗浄水の吐出圧が低下するといった不具合を生ずる。
【0003】
そこで、従来、洗浄槽内での所定量以上の泡の発生を検知する泡検知手段を備え、洗浄工程中に泡検知手段により泡の発生が検知されると、洗浄工程を中断して、発生した泡を除去する消泡工程を実行するようにした食器洗浄機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
然し、上記従来例のものでは、洗剤の誤使用により洗浄槽内で多量の泡が発生しても、消泡工程の実行で泡が除去されてしまうため、使用者が洗剤の誤使用に気づかず、誤使用を繰り返してしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、使用者が洗剤の誤使用を認識しやすくなるようにした食器洗浄機を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、食器類を収納する洗浄槽と、洗浄槽内に設けられた洗浄ノズルと、洗浄槽内の洗浄水を洗浄ノズルに供給する洗浄ポンプと、制御手段とを備え、制御手段による制御で洗浄ポンプを駆動して洗浄ノズルから洗浄水を噴射する洗浄工程を実行する食器洗浄機において、洗浄槽内での所定量以上の泡の発生を検知する泡検知手段と、報知手段とを備え、制御手段は、洗浄工程中に泡検知手段により泡の発生が検知されると、洗浄工程を中断すると共に、報知手段による使用者への報知を行い、その後、使用者による所定の操作が行われたか否かを判別して、所定の操作が行われたときに、発生した泡を除去する消泡工程を実行するように構成され、所定の操作は、洗浄槽内を目視可能とするための操作であることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、洗剤の誤使用により洗浄槽内で多量の泡が発生した場合、泡検知手段による泡の発生検知で報知手段による報知が行われ、この報知に使用者が気づいて所定の操作が行われたときに消泡工程が実行される。そのため、使用者が洗剤の誤使用を認識しやすくなり、繰り返しの洗剤の誤使用を抑制できる。
特に、本発明では、所定の操作が上記の如く洗浄槽内を目視可能とするための操作であるため、消泡工程前で洗浄槽内に多量の泡が発生している状況を使用者が目視することとなり、使用者に洗剤の誤使用をより効果的に認識させることができる。
【0009】
尚、周囲に人がいない場合には、報知手段による報知が行われても、所定の操作が行われないまま放置されてしまう。この場合、消泡工程をいつまでも実行しないと、次に使用するときに、洗浄槽内に残る泡の影響で直ぐには洗浄運転を開始できなくなり、使い勝手が悪くなる。そのため、本発明において、制御手段は、報知手段による報知を行った後、所定の操作が行われずに所定時間経過したときにも消泡工程を実行するように構成されることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の食器洗浄機の模式的切断側面図。
【
図2】実施形態の食器洗浄機が具備する水位検知装置の斜視図。
【
図3】実施形態の食器洗浄機の洗浄工程中の制御内容を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す本発明の実施形態の食器洗浄機は、前面が開放された外装ケース1内に前方に引き出し自在に収納した洗浄槽2を備えるビルトイン式のものである。洗浄槽2内には、食器カゴ21が設けられており、食器類Wを食器カゴ21に載置した状態で洗浄槽2に収納する。また、洗浄槽2内には、給水弁3aを介設した給水路3を介して水が供給される。
【0012】
更に、洗浄槽2内には、食器カゴ21に向けて洗浄水を噴射する洗浄ノズル22と、ヒータ23とが設けられている。洗浄槽2の底部には、水溜り部2aが凹設されている。そして、水溜り部2aに連通する洗浄ポンプ4が設けられ、更に、水溜り部2aに連通して洗浄槽2内の水位を検知する水位検知装置5が設けられている。
【0013】
ここで、洗浄ポンプ4を正転させると、洗浄槽2内の洗浄水が洗浄ノズル22に供給され、洗浄ポンプ4を逆転させると、洗浄槽2内の洗浄水が排水路6を介して排水される。また、外装ケース1内には、洗浄槽2内に空気を送風するファン7が設けられている。食器洗浄機は、更に、ヒータ23、給水弁3a、洗浄ポンプ4及びファン7等を制御するコントローラ8と、ブザー、ランプ等により使用者への報知を行う報知手段9とを備えている。
【0014】
食器洗浄機の運転スイッチをオンすると、制御手段たるコントローラ8による制御で洗浄運転を行う。洗浄運転では、先ず、給水弁3aを開弁させて洗浄槽2に給水し、洗浄槽2内の水位が所定水位になってこれが水位検知装置5で検知されたときに給水弁3aを閉弁して給水を停止する。尚、この給水に際しては、洗浄槽2内に供給する水に図外の洗剤供給手段から洗剤を混入し、洗浄槽2内に洗剤が混入された洗浄水を供給する。そして、給水停止後、ヒータ23に通電すると共に洗浄ポンプ4を正転させて、洗浄水を加熱しつつ洗浄ノズル22から噴射させ、所定時間の洗浄工程を行う。洗浄工程完了後は、洗浄ポンプ4を逆転させて洗浄槽2内の洗浄水を排水する排水工程を行い、次に、洗浄槽2に所定水位になるまで洗剤が混入していない洗浄水を供給した後、洗浄ポンプ4を正転させて洗浄ノズル22から洗浄水を噴射させ、所定時間のすすぎ工程を行う。すすぎ工程完了後は、洗浄ポンプ4を逆転させて洗浄槽2内の洗浄水を排水し、次に、ヒータ23に通電すると共にファン7を駆動させて、所定時間の乾燥工程を行う。
【0015】
次に、水位検知装置5について
図2を参照して詳述する。水位検知装置5は、底部の連通口511を介して洗浄槽2の水溜り部2aに連通する水位検知室51と、水位検知室51内の水位に応じて上下動するフロート52と、フロート52の上下動によって水位を検知する水位検知部53とを備える。水位検知部53は、水位検知室51の上蓋54に形成した透孔541を通して上蓋54の上方に突出する、フロート52に連結された検知ロッド531と、水位検知室51内の水位が所定水位になって、検知ロッド531が所定位置に上動したときにこれを検知する検知スイッチ532とで構成されている。
【0016】
上蓋54には、上方にのびる起立板542が立設されている。そして、起立板542の板面に直交する方向を前後方向、
図2で紙面手前側を前方として、起立板542の前方に隣接する上蓋54の部分に透孔541を形成している。また、起立板542に、検知ロッド531の上部後面に突設した突条531aが挿通される上下方向に長手のガイド孔542aを形成している。起立板542の上部前面には、リードスイッチから成る検知スイッチ532が設けられ、また、検知ロッド531の上端部には、マグネット531bが組み込まれている。そして、洗浄槽2内の水位、即ち、水位検知室51内の水位が所定水位になって、検知ロッド531が所定位置に上動したときに、検知ロッド531の上端が検知スイッチ532に当接して、マグネット531bの磁力により検知スイッチ532がオンするようにしている。
【0017】
水位検知装置5は、更に、起立板542の下部前面に配置した泡検知手段たる一対の泡検知電極55,55を備えている。また、上蓋54には、透孔541から前方にスリット状にのびる開口543が形成されている。誤って発泡しやすい洗剤を使用して洗浄槽2内で所定量以上の泡が発生すると、水位検知室51内でも泡が盛り上がり、開口543から泡が溢れ出て一対の泡検知電極55,55に接触し、両電極55,55間の導通で泡の発生が検知される。
【0018】
以下、
図3を参照して、洗浄工程中のコントローラ8による制御内容について説明する。洗浄工程では、先ず、STEP1でヒータ23に通電すると共に洗浄ポンプ4を正転させて洗浄工程を開始し、次に、STEP2で洗浄工程の開始から所定時間経過したか否かを判別する。所定時間経過するまでは、STEP3に進み、泡検知電極55,55間が導通したか否か、即ち、泡の発生(正確には、洗浄槽2内での所定量以上の泡の発生)が検知されたか否かを判別する。泡の発生が検知されなければ、STEP2に戻ることを繰り返し、所定時間経過したときに、STEP4でヒータ23への通電を停止すると共に洗浄ポンプ4を停止して洗浄工程を終了する。
【0019】
一方、所定時間経過する前、即ち、洗浄工程中に泡の発生が検知されたときは、STEP5でヒータ23への通電を停止すると共に洗浄ポンプ4を停止して洗浄工程を中断すると共に、STEP6で報知手段9による使用者への異常報知を行う。次に、STEP7に進み、使用者による所定の操作が行われたか否かを判別する。所定の操作が行われるまでは、STEP8で異常報知から所定の設定時間(例えば、1時間)経過したか否かを判別し、設定時間経過するまではSTEP7に戻ることを繰り返す。そして、所定の操作が行われたとき、或いは、所定の操作が行われずに設定時間経過したときに、STEP9に進み、発生した泡を除去する消泡工程を実行する。尚、消泡工程は、排水、送風、給水、すすぎをこの順序で複数回繰り返すことで行う。
【0020】
以上の制御によれば、泡の発生検知で報知手段9による報知が行われ、この報知に使用者が気づいて所定の操作が行われたときに消泡工程が実行される。そのため、使用者が洗剤の誤使用を認識しやすくなり、繰り返しの洗剤の誤使用を抑制できる。従って、水位検知装置5の検知ロッド531や透孔541に泡が繰り返し付着し、検知ロッド531が固着することによる水位検知不良等の不具合を防止することができる。ここで、所定の操作は、例えば、所定の確認スイッチの操作としてもよいが、好ましくは、洗浄槽2内を目視可能とするための操作、即ち、洗浄槽2を外装ケース1の前方に引き出す操作であることが望ましい。これによれば、消泡工程前で洗浄槽2内に多量の泡が発生している状況を使用者が目視することとなり、使用者に洗剤の誤使用をより効果的に認識させることができ、洗剤の誤使用抑制効果をより高めることができる。
【0021】
尚、使用者による所定の操作が行われたときにのみ消泡工程を実行することも可能である。然し、これでは、周囲に人がいない場合には、報知手段9による報知が行われても、所定の操作が行われないまま放置されて、消泡工程がいつまでも実行されない。そのため、次に使用するときに、洗浄槽2内に残る泡の影響で直ぐには洗浄運転を開始できず、使い勝手が悪くなり、更には、食器類Wに泡が固着することもある。一方、本実施形態では、所定の操作が行われなくても、報知手段9による報知開始から設定時間経過すると消泡工程が実行されるため、次に使用するときに直ぐに洗浄運転を開始できて、使い勝手がよくなり、更に、食器類Wに泡が固着することも抑制できる。
尚、報知手段9による報知開始から設定時間経過して消泡工程が実行される場合は、使用者に洗剤の誤使用を認識させるため、報知手段9による報知を継続することが望ましい。
【0022】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、泡検知手段を上記実施形態の水位検知装置5に設けた泡検知電極55以外のもので構成することも可能である。例えば、洗浄槽2内に多量に泡が発生すると、洗浄ポンプ4に泡が吸い込まれてポンプ負荷が減少するため、ポンプ負荷に基づいて泡の発生を検知するように泡検知手段を構成してもよい。また、上記実施形態は、ビルトイン式食器洗浄機であるが、洗浄槽の前面に開閉自在な扉を取付けた卓上式食器洗浄機にも同様に本発明を適用できる。この場合、洗浄槽内を目視可能とするための操作は、扉を開く操作になる。
【符号の説明】
【0023】
2…洗浄槽、22…洗浄ノズル、4…洗浄ポンプ、5…水位検知装置、55…泡検知電極(泡検知手段)、8…コントローラ(制御手段)、9…報知手段。