(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ドア、建具及びドアの製造方法
(51)【国際特許分類】
E06B 3/82 20060101AFI20220830BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
E06B3/82
E06B5/00 B
(21)【出願番号】P 2018155238
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 心互
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120017(JP,A)
【文献】実開昭57-068899(JP,U)
【文献】特開2001-349144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/54-3/88
E06B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上骨材、下骨材及び一対の縦骨材を枠状に構成した骨組体と、前記骨組体の室外側に配置される外表面材と、前記骨組体の室内側に配置される内表面材と、を備えるドアであって、
前記外表面材及び前記内表面材はそれぞれ、その縁部を互いに近接する方向に屈曲させることで前記骨組体の枠外側見込み面に対向させた折曲片部を有し、
前記外表面材及び前記内表面材のそれぞれの前記折曲片部の先端部同士は、見込み方向に隙間を介して配置されており、
前記上骨材、前記下骨材及び前記一対の縦骨材のうち、少なくとも1つの骨材の前記枠外側見込み面には、枠内側に凹んだ凹部が設けられると共に、該凹部は、前記隙間と重なる位置に設けられ、
前記凹部には、該凹部が形成された前記骨材よりも柔軟な材料で形成された軟質部が設けられて
おり、
前記軟質部は、前記外表面材及び前記内表面材のそれぞれの前記折曲片部の先端部によって枠内側へと押し潰された状態で前記隙間を埋めている
ことを特徴とするドア。
【請求項2】
請求項1に記載のドアであって、
前記軟質部が設けられた前記骨材は、樹脂で形成された樹脂骨材を有し、
前記軟質部は、前記樹脂骨材よりも柔軟な材料で形成され、
前記樹脂骨材の枠外側見込み面に、前記凹部及び前記軟質部が設けられていることを特徴とするドア。
【請求項3】
請求項2に記載のドアであって、
吊元側の縦骨材は、金属で形成された金属骨材と、該金属骨材の枠外側見込み面を覆うように該金属骨材に取り付けられた前記樹脂骨材と、を有し、
前記外表面材の前記折曲片部及び前記内表面材の前記折曲片部の外面に重なるように設けられ、当該ドアをドア枠に対して回動可能に支持するためのヒンジを備え、
前記ヒンジは、前記外表面材の前記折曲片部と前記樹脂骨材とを貫通した室外側締結具と、前記内表面材の前記折曲片部と前記樹脂骨材とを貫通した室内側締結具と、を用いて前記金属骨材に締結されており、
前記軟質部は、見込み方向で前記室外側締結具と前記室内側締結具との間となる位置に配置されていることを特徴とするドア。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のドアと、該ドアを開閉可能に支持するドア枠と、を備えることを特徴とする建具。
【請求項5】
上骨材、下骨材及び一対の縦骨材を枠状に構成した骨組体の室外側に外表面材を設け、前記骨組体の室内側に内表面材を設けたドアの製造方法であって、
前記上骨材、前記下骨材及び前記一対の縦骨材のうち、少なくとも1つの骨材に対し、室内外方向に沿う見込み板部と、該見込み板部の室外側端部及び室内側端部をそれぞれ枠内側に屈曲させた一対の見付け板部と、を形成すると共に、
前記見込み板部の枠外側見込み面に対して枠内側に凹んだ凹部を形成し、さらに該凹部に前記骨材よりも柔軟な材料で形成された軟質部を設けておき、
前記外表面材及び前記内表面材のそれぞれに対し、その縁部を互いに近接する方向に屈曲させることで前記骨材の枠外側見込み面に対向可能な折曲片部を形成すると共に、各折曲片部の見込み方向長さを、前記外表面材及び前記内表面材がそれぞれ前記骨組体に固定された状態で互いの先端部同士の間に隙間が形成される寸法に設定し、さらに、各折曲片部の屈曲角度を、前記骨材の前記見込み板部と前記見付け板部との間の屈曲角度よりも小さい角度に設定しておき、
その後、前記外表面材及び前記内表面材の各折曲片部を前記骨材の枠外側見込み面に重ねるように配置すると共に、各折曲片部の先端部を前記軟質部に押し当てた状態で、前記外表面材及び前記内表面材を前記骨組体に固定することを特徴とするドアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア、建具及びドアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば玄関ドアのように建物の開口部を仕切るドアでは、室内外一対の表面材の間に枠状の骨組体を配設した構成がある。通常、この種のドアは、室内外の表面材の縁部を互いに近接する方向に屈曲させて形成した折曲片部を有し、各折曲片部を骨組体の見込み面に重ねた構成となっている。
【0003】
上記のようなドアでは、室内外の表面材間が熱橋となることを防止するため、各折曲片部の先端部同士の間に見込み方向の隙間を設けることがある。ところが、この隙間はドアの外観上に露出するため、製品の外観品質を低下させる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、室内外の表面材の各折曲片部を断面コ字状の骨材の見込み面に配置したドアにおいて、室内外の折曲片部間の隙間へと突出する部位(露出部)を骨材に設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構成の骨材は、断面コ字状に形成された金属製の骨材の表面に断面コ字状に形成された樹脂製の骨材を被せた構成であり、この樹脂製の骨材の見込み面に上記露出部を設けている。この露出部は、骨材を構成する樹脂材料の一部を突出させた構造であり、骨材と同じ硬質の樹脂材料で形成されている。このため、骨材や表面材の製造公差や組付交差が相当に高精度に設定されないと、各折曲片部間に露出部を適切に挟み込んで配置することができない事態を生じる。そうすると、各折曲片部が露出部に押されて枠外側に口開きしたような状態となり、結局、ドアの外観品質を低下させることになる。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、外観品質を向上することができるドア、建具及びドアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るドアは、上骨材、下骨材及び一対の縦骨材を枠状に構成した骨組体と、前記骨組体の室外側に配置される外表面材と、前記骨組体の室内側に配置される内表面材と、を備えるドアであって、前記外表面材及び前記内表面材はそれぞれ、その縁部を互いに近接する方向に屈曲させることで前記骨組体の枠外側見込み面に対向させた折曲片部を有し、前記外表面材及び前記内表面材のそれぞれの前記折曲片部の先端部同士は、見込み方向に隙間を介して配置されており、前記上骨材、前記下骨材及び前記一対の縦骨材のうち、少なくとも1つの骨材の前記枠外側見込み面には、枠内側に凹んだ凹部が設けられると共に、該凹部は、前記隙間と重なる位置に設けられ、前記凹部には、該凹部が形成された前記骨材よりも柔軟な材料で形成された軟質部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るドアの製造方法は、上骨材、下骨材及び一対の縦骨材を枠状に構成した骨組体の室外側に外表面材を設け、前記骨組体の室内側に内表面材を設けたドアの製造方法であって、前記上骨材、前記下骨材及び前記一対の縦骨材のうち、少なくとも1つの骨材に対し、室内外方向に沿う見込み板部と、該見込み板部の室外側端部及び室内側端部をそれぞれ枠内側に屈曲させた一対の見付け板部と、を形成すると共に、前記見込み板部の枠外側見込み面に対して枠内側に凹んだ凹部を形成し、さらに該凹部に前記骨材よりも柔軟な材料で形成された軟質部を設けておき、前記外表面材及び前記内表面材のそれぞれに対し、その縁部を互いに近接する方向に屈曲させることで前記骨材の枠外側見込み面に対向可能な折曲片部を形成すると共に、各折曲片部の見込み方向長さを、前記外表面材及び前記内表面材がそれぞれ前記骨組体に固定された状態で互いの先端部同士の間に隙間が形成される寸法に設定し、さらに、各折曲片部の屈曲角度を、前記骨材の前記見込み板部と前記見付け板部との間の屈曲角度よりも小さい角度に設定しておき、その後、前記外表面材及び前記内表面材の各折曲片部を前記骨材の枠外側見込み面に重ねるように配置すると共に、各折曲片部の先端部を前記軟質部に押し当てた状態で、前記外表面材及び前記内表面材を前記骨組体に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ドアの外観品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るドアを備えた建具を室外側から見た姿図である。
【
図4】
図2に示すドアの上端部を拡大した縦断面図である。
【
図5】
図3に示すドアの吊元側部分を拡大した横断面図である。
【
図6】
図6(A)は、吊元側の縦骨材のドアに組付前の状態を示す横断面図であり、
図6(B)は、吊元側の縦骨材及びその周辺部のドアに組付後の状態を示す横断面図である。
【
図7】
図7(A)は、変形例に係る軟質部を有する吊元側の縦骨材のドアに組付前の状態を示す横断面図であり、
図7(B)は、
図7(A)に示す吊元側の縦骨材及びその周辺部のドアに組付後の状態を示す横断面図である。
【
図8】
図8(A)は、別の変形例に係る軟質部を有する吊元側の縦骨材のドアに組付前の状態を示す横断面図であり、
図8(B)は、
図8(A)に示す吊元側の縦骨材及びその周辺部のドアに組付後の状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るドアについて、このドアを用いた建具との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る建具10は、ドア12と、ドア枠14とを備える。ドア12は、例えば建物の内外を仕切る外壁の開口部に取り付けされたドア枠14に対して開閉可能に支持される玄関ドアである。本発明は、玄関ドア以外のドアに適用しても勿論よい。本発明は、2枚のドア同士を突合わせて開閉可能に構成した親子ドアの一方又は両方のドアに適用してもよい。
【0014】
ドア12は、枠状の骨組体16の室外側及び室内側に外表面材18及び内表面材19を設け、内部に断熱材20を設けた構造である。
【0015】
骨組体16は、上骨材16aと、下骨材16bと、左右一対の縦骨材16c,16dとを四周枠組みすることで矩形枠状に構成されている。骨組体16は、吊元側の縦骨材16cが、例えば上下3個のヒンジ22を用いてドア枠14に連結され、これによりドア12がドア枠14に対して回動可能に支持される。
【0016】
本出願において、見込み方向とは建具10の室内外方向、つまり室内側から室外側に向かう方向又はその逆方向(図中に矢印Yで示す方向)をいい、見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な縦骨材16c等の場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な上骨材16a等の場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Zで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。枠状部材の内側(内周)とは、例えばドア枠14や骨組体16の枠内部分をいう。枠状部材の外側(外周)とは、例えばドア枠14に対向配置される骨組体16の枠外部分をいう。また、枠状部材の枠外側から枠内側に向かう方向を枠内方向といい、枠状部材の枠内側から枠外側に向かう方向を枠外方向という。
【0017】
図2に示すように、上骨材16a及び下骨材16bは、塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂を断面略コ字状に成形した押出形材である。骨材16a,16bが樹脂製(樹脂骨材)のため、これらが外表面材18と内表面材19との間の熱橋となることが防止されている。
【0018】
図3に示すように、吊元側の縦骨材16cは、金属骨材24と、樹脂骨材25とで構成されている。金属骨材24は、アルミニウムやスチール等の金属材料の成形材であり、断面略コ字状を成している。樹脂骨材25は、例えば骨材16a,16bと同一材料且つ同一形状である。樹脂骨材25は、金属骨材24の外面(枠外側見込み面及び室内外側見付け面)に被せて取り付けられている。金属骨材24の枠内側見込み面には、ヒンジ22の取付用の裏板となる取付金具26が設けられている。
【0019】
戸先側の縦骨材16dは、金属骨材28と、室内外一対の樹脂骨材30,31とで構成されている。金属骨材28は、例えば縦骨材16cの金属骨材24と同一材料且つ同一形状である。樹脂骨材30,31は、塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂を断面略コ字状に成形した押出形材であり、それぞれ一巻きの渦巻き形状を成している。樹脂骨材30は、金属骨材28の室外側の見付け板部28aを包み込むように、この見付け板部28aに外挿されて取り付けられている。樹脂骨材31は、金属骨材28の室内側の見付け板部28bを包み込むように、この見付け板部28bに外挿されて取り付けられている。樹脂骨材30,31は、それぞれ金属骨材28の見込み方向で端部のみに設けられている。このため、金属骨材28は、その枠外側見込み面の大分部が樹脂骨材30,31によって覆われずに露出しており、この露出部分がエッジ材34によって覆われている。樹脂骨材25,30,31は、金属骨材24,28が外表面材18と内表面材19との間の熱橋となることを防止している。
【0020】
外表面材18及び内表面材19は、薄い鋼板で構成されている。各表面材18,19のそれぞれの縁部には、各骨材16a~16dの屈曲形状に対応するように略直角方向に屈曲した折曲片部18a,19aが形成されている。折曲片部18a,19aは、互いに近接する方向に屈曲形成されることで各骨材16a~16dの枠外側見込み面に対向配置されている。上骨材16a、下骨材16b及び吊元側の縦骨材16cでは、各折曲片部18a,19aの先端がそれぞれの枠外側見込み面の見込み方向中央部で狭小な隙間Cを介して対向している(
図4及び
図5参照)。戸先側の縦骨材16dに対応する折曲片部18a,19aは、その見込み方向の幅寸法が他の骨材16aに対向配置される折曲片部18a,19aよりも小さい。縦骨材16dでは、折曲片部18a,19aがそれぞれ樹脂骨材30,31に重なる部分のみに配置されている。このため、戸先側の縦骨材16dでは、各折曲片部18a,19aの先端間に上骨材16a等の場合よりも大きな隙間が形成されている。
【0021】
断熱材20は、骨組体16と外表面材18と内表面材19とで囲まれた部分、つまりドア12の内部空間に配設されている。断熱材20は、例えば発泡スチロールや発泡ウレタンであり、各表面材18,19の内面及び各骨材16a~16dの室内外見付け面に接着されている。
【0022】
エッジ材34は、例えばアルミニウム等の金属材料の押出形材であり、縦骨材16dの枠外側見込み面及び各表面材18,19の戸先側の折曲片部18a,19aを覆っている。エッジ材34は、ドア12とドア枠14との間の隙間の室外側を覆う煙返し片44を有する。煙返し片44の根本部分にはポケット部46が設けられ、このポケット部46に熱膨張性部材48が設けられている。ポケット部46は、枠外方向を向いて開口しており、気密材50の基端部が挿入されて装着されている。熱膨張性部材48は、ポケット部46の底面、つまり見込み板部52の枠外側見込み面に貼り付けられている。熱膨張性部材48は、エッジ材34の長手方向に亘って延在しており、加熱された場合に膨張する黒鉛等によって形成された加熱発泡材である。熱膨張性部材48は、火災時に膨張することにより、ドア12とドア枠14との間の隙間を閉塞し、この部分に室内外を貫通する隙間が形成されることを一層確実に防止する。エッジ材34は、外表面材18の室外側表面に重なる位置に設けられた中空部54を有する。中空部54は、熱膨張性部材48を設けた見込み板部52を覆うことで、当該建具10が室外側からの火炎や熱を受けた際の防火壁として機能する。
【0023】
エッジ材34の枠外側見込み面には、錠装置56のラッチ56aが設けられている。錠装置56は、そのケースがエッジ材34を貫通してドア12の内部に挿入されている。ラッチ56aは、縦枠14dに埋設されたラッチ受け58に係止されることで、ドア12を
図2及び
図3に示す閉じ位置に規制する。ラッチ56aは、ドア12に設けられたハンドル59(
図1参照)を操作することによりドア12内に埋没し、ドア12を開くことが可能となる。
図1では室外側のハンドル59を図示しているが、ドア12の室内側にも同様なハンドルが設けられている。
【0024】
ドア枠14は、上枠14aと、下枠14bと、左右一対の縦枠14c,14dとを四周枠組みすることで矩形枠状に構成されている。各枠14a~14dは、例えばアルミニウム等の金属材料の押出形材である。各枠14a,14c,14dは、室外側部位と室内側部位との間を断熱材35を介して連結した断熱構造(形材断熱構造)を有する。吊元側の縦枠14cの枠内側見込み面には、ヒンジ22を介してドア12が連結されている(
図3参照)。上枠14aとドア12の上部との間は、ドアクローザ36で連結されている(
図2参照)。
【0025】
各枠14a~14dの枠内側見込み面には、枠内側に突出した戸当たり片38が設けられている。各戸当たり片38は、室外側を向いて開口した枠ポケット部38aを有し、この枠ポケット部38aには気密材40が装着されている。さらに、各枠14a~14dの枠ポケット部38aには、熱膨張性部材42が設けられている。熱膨張性部材42は、枠ポケット部38aの底面(室外側見付け面)に貼り付けられている。熱膨張性部材42は、枠ポケット部38aの長手方向全長に亘って延在しており、加熱された場合に膨張する黒鉛等によって形成された加熱発泡材である。熱膨張性部材42は、火災時にドア12の外周四周とドア枠14との間の隙間を閉塞し、この部分に室内外を貫通する隙間が形成されることを防止する。
【0026】
次に、上骨材16aの具体的な構成を説明する。
図4に示すように、上骨材16aは、見込み板部60aと、一対の見付け板部60b,60cとを有する。見込み板部60aは、室内外方向に沿って設けられており、その枠外側見込み面62が上骨材16aの枠外側見込み面となる。見込み板部60aの枠外側見込み面62には、表面材18,19の折曲片部18a,19aの内面が対向配置されている。
図4では、枠外側見込み面62と折曲片部18a,19aの内面との間に僅かな隙間を図示しているが、実際の製品では通常両者は当接しており、
図5~
図8についても略同様である。見付け板部60b,60cは、それぞれ見込み板部60aの室外側及び室内側の端部から枠内方向に屈曲した突出片である。見付け板部60bの室外側見付け面には、外表面材18の内面が接着される。見付け板部60cの室内側見付け面には、内表面材19が接着される。
図4中の参照符号64は、外表面材18の折曲片部18aの枠外側見込み面に取り付けられたドアストッパである。ドアストッパ64を取り付けるねじ65は、折曲片部18aを貫通し、見込み板部60aに締結されている。
【0027】
上骨材16aは、枠外側見込み面62の見込み方向中央部に、枠内側に凹んだ凹部62aを有する。凹部62aには、軟質部66が設けられている。各折曲片部18a,19aの先端部18b,19bは、見込み方向に離間しており、その間に隙間Cが形成されている。凹部62a及び軟質部66は、見込み方向で隙間Cと重なる位置に設けられており、隙間Cよりも見込み方向の幅寸法が多少大きい。凹部62aは、隙間Cの長手方向全長、つまり上骨材16aの長手方向全長に亘って設けられており、凹部62aの全長に亘って軟質部66が設けられている。軟質部66は、上骨材16aを形成している材料、例えば塩化ビニル樹脂よりも柔軟な材料で形成されている。軟質部66は、例えば上骨材16aと共に2色成形によって一体成形され、或いは後付けで凹部62a内に取り付けられる。軟質部66の具体的な構成例は後述する。
【0028】
次に、吊元側の縦骨材16cの具体的な構成を説明する。
図5に示すように、吊元側の縦骨材16cの金属骨材24は、見込み板部24aと、一対の見付け板部24b,24cとを有する。見込み板部24aは、室内外方向に沿って設けられている。見付け板部24b,24cは、それぞれ見込み板部24aの室外側及び室内側の端部から枠内方向に屈曲した突出片である。上記したように、樹脂骨材25は、例えば上骨材16aと同一材料且つ同一形状である。つまり樹脂骨材25は、見込み板部60aと、一対の見付け板部60b,60cとを有し、その枠外側見込み面62に凹部62a及び軟質部66を有する。縦骨材16cの凹部62a及び軟質部66についても、各折曲片部18a,19aの先端部18b,19b間の隙間Cと見込み方向で重なる位置にある。樹脂骨材25は、見付け板部60b,60cの先端部に形成された内向きの係止爪60dが金属骨材24の見付け板部24b,24cの端面にそれぞれ係止され、これにより金属骨材24に取り付けられる。
【0029】
ドア12の吊元側部分では、各表面材18,19の折曲片部18a,19aがそれぞれリベット68a,68bを用いて金属骨材24と締結されている。さらに、これら折曲片部18a,19aは、それぞれヒンジ22の固定用のねじ69a,69bを用いて取付金具26とも締結されている。リベット68a,68b及びねじ69a,69bは、縦骨材16cの長手方向に沿って適宜間隔でそれぞれ複数箇所に設けられている。リベット68a,68b及びねじ69a,69bは、折曲片部18a,19a及び見込み板部60aを貫通して金属骨材24と締結されている。軟質部66は、隙間Cの室外側に配置された室外側締結部となるリベット68a及びねじ69aと、隙間Cの室内側に配置された室内側締結部となるリベット68b及びねじ69bとの間に挟まれた位置に配置されている。
【0030】
なお、下骨材16bは、
図2に示すように上骨材16aと上下対称構造であるため、上骨材16aと同一の参照符号を付してその具体的な説明は省略する。また、上骨材16a及び下骨材16bが吊元側の縦骨材16cと同様に金属骨材に樹脂骨材を装着した構成であってもよく、吊元側の縦骨材16cが上骨材16a及び下骨材16bと同様に金属骨材を持たない構成であってもよい。戸先側の縦骨材16dについても、各骨材16a~16cと同様な構成であってもよく、つまりその枠外側見込み面に凹部及び軟質部を設けた構成としてもよい。但し、縦骨材16c,16dは、
図1に示すように縦長形状に構成されたドア12の剛性に対する影響が大きく、しかも開閉時の負荷が大きい。そこで、これら縦骨材16c,16dは、金属骨材24,28を備えた構成であることが好ましい。
【0031】
次に、軟質部66の具体的な構成例を説明する。以下、吊元側の縦骨材16cでの軟質部66の構成例を代表的に説明するが、他の骨材16a,16b(16d)の軟質部66も同様な構成でよい。
【0032】
図6(A)に示すように、軟質部66は、ドア12の組付前の状態において、例えば凹部62a内に設けられ、その頂部が凹部62aの開口から枠外側へと膨出した中実の断面略ドーム形状を有する。つまり軟質部66は、樹脂骨材25の枠外側見込み面62よりも枠外側に張り出している。軟質部66は、例えば樹脂骨材25と共に2色成形によって一体成形される。
図6(B)に示すように、軟質部66は、ドア12の組付後の状態では、折曲片部18a,19aの先端部18b,19bで枠内側へと押し潰されて変形している。この際、軟質部66は、凹部62aの開口から枠外側へと張り出した部分の一部が隙間Cに進入し、先端部18b,19b間に挟まれた状態となっている。また、軟質部66は、見込み方向で隙間Cと重なるだけでなく、折曲片部18a,19aの内面とも重なる見込み方向の幅寸法を有する。これにより軟質部66は、隙間Cの位置や形状に柔軟に対応して隙間Cを確実に埋めることができる。その結果、ドア12の外観上で隙間Cが目立つことや、隙間Cで先端部18b,19bが段差を生じることが防止されるため、ドア12の外観品質が向上する。
【0033】
図7(A)に示すように、上記した軟質部66に代えて、中空の断面略ドーム形状の軟質部70を用いてもよい。軟質部70は、凹部62aの見込み方向幅に亘って架け渡されたブリッジ形状を有し、凹部62aの開口から枠外側へと膨出している。軟質部70は、例えば接着剤等を用いて後付けで取り付けられる。従って、
図7(B)に示すように、この軟質部70についても、ドア12の組付後の状態では、折曲片部18a,19aの先端部18b,19bで枠内側へと押し潰されて変形した状態で隙間Cを埋めることができる。上述した軟質部66及び軟質部70としては、例えば、ポリ塩化ビニル、TPE(熱可塑性エラストマー)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)を適用することが可能である。一体成形する場合には、ポリ塩化ビニルが好適である。
【0034】
図8(A)に示すように、上記した軟質部66,70に代えて、板形状の軟質部72を用いてもよい。軟質部72は、凹部62a内に配設され、凹部62aの開口から枠外側へと膨出している。軟質部72は、例えばスポンジであり、接着剤や両面テープ等を用いて後付けで取り付けられる。従って、
図8(B)に示すように、この軟質部72についても、ドア12の組付後の状態では、折曲片部18a,19aの先端部18b,19bで枠内側へと押し潰されて変形した状態で隙間Cを埋めることができる。
【0035】
次に、ドア12の製造方法の一手順を説明する。この手順では、先ず、各骨材16a~16dを枠状に組んだ骨組体16を形成する。例えば上骨材16aでは、樹脂の押出成形によって見込み板部60a及び見付け板部60b,60cを形成しておく。また、例えば縦骨材16cでは、曲げ加工や押出成形によって見込み板部24a及び見付け板部24b,24cを形成した金属骨材24に、樹脂の押出成形によって見込み板部60a及び見付け板部60b,60cを形成した樹脂骨材25を装着しておく。この際、各骨材16a~16cの枠外側見込み面62には凹部62aを形成しておき、この凹部62aに軟質部66等を設けておく。そして、各骨材16a~16d間を所定の締結具等を用いて枠状に連結した骨組体16を形成する。
【0036】
続いて、軟質部66等を設けた骨組体16に対し、接着剤等を用いて表面材18,19を固定すると共に、その内側に断熱材20を配設する。本実施形態では、骨組体16と表面材18,19との組付作業に先立ち、予め表面材18,19に形成する折曲片部18a,19aの屈曲角度や見込み方向長さを所望の形状に調整しておく(
図6(A)参照)。
【0037】
例えば、
図6(A)に示すように、縦骨材16cに形成した見付け板部60b,60c(24b,24c)と見込み板部60a(24a)との屈曲角度をθ1と称し、ドア12の室外側表面及び室内側表面を構成する表面材18,19の表面板部18c,19cからの折曲片部18a,19aの屈曲角度をθ2と称する。この場合、表面材18,19の屈曲角度θ2は、縦骨材16cの屈曲角度θ1よりも小さい角度としておくことが好ましい(
図6(A)参照)。そうすると、
図6(B)に示すように、表面材18,19は、例えば縦骨材16cに組み付けられる際に折曲片部18a,19aの根本屈曲部が弾性変形し、屈曲角度θ2が縦骨材16cの屈曲角度θ1に対応した角度となる。その結果、折曲片部18a,19aの先端部18b,19bが軟質部66等に確実に押し付けられた状態となる。このため、これら先端部18b,19bが枠外方向に口開きしたような取付不良の発生が防止される。この際、各折曲片部18a,19aの見込み方向長さは、表面材18,19がそれぞれ骨組体16に固定された状態で互いの先端部18b,19b同士の間に所望の隙間Cが形成される寸法に設定しおけばよい。これら折曲片部18a,19aの屈曲角度や見込み方向長さの調整は、他の骨材16a,16b,16dについても同様に施せばよい。
【0038】
最終的には、このように骨組体16に表面材18,19及び断熱材20を取り付けたドア12に対し、さらにエッジ材34、ヒンジ22、錠装置56、ハンドル59等の付設部品を適宜取り付けることで、ドア12の製造が完了する。
【0039】
以上のように構成されたドア12及び建具10では、例えば骨材16a~16cがその枠外側見込み面62に凹部62aを有し、この凹部62aに軟質部66等を有する。そして、これら凹部62a及び軟質部66等は、表面材18,19に設けた折曲片部18a,19aの先端部18b,19b間の隙間Cに重なる位置にある。従って、軟質部66等が隙間Cに介在するため、隙間Cがドア12の外観上で目立つことや隙間Cで先端部18b,19bが段差を生じることが防止されるため、ドア12の外観品質が向上する。しかも軟質部66等は、樹脂骨材25等に比べて柔軟な材質で形成されている。このため、骨材16a~16cや表面材18,19の製造公差や組付交差をある程度の精度で管理しておけば、表面材18,19の先端部18b,19bで軟質部66等を確実に押し潰して隙間Cを確実に埋めることができる。その結果、折曲片部18a,19aが軟質部66によって押し返されて枠外側に口開きしたような取付状態となる不具合の発生も回避できる。つまり、表面材18,19の取付作業や製造作業が一層容易となる。なお、骨材16a~16dが、金属製の金属骨材のみで形成された構成である場合等には、この金属骨材の枠外側見込み面に凹部62a及び軟質部66等を設ければよい。
【0040】
本実施形態では、骨材16a~16cの枠外側見込み面62に設けた凹部62aに軟質部66等を設けている。このため、枠外側見込み面62と折曲片部18a,19aの内面との間の隙間がほとんどない状態であっても、凹部62aの深さによって軟質部66の枠内外方向の厚みを十分に確保でき、軟質部66の柔軟性を維持した状態で表面材18,19を取り付けることができる。
【0041】
ところで、本実施形態のドア12は、製造コストを低減しつつ環境への影響等を配慮して、樹脂製の上骨材16a、下骨材16b及び樹脂骨材25を、例えばリサイクル材で形成している。このため、これら樹脂製の骨材16a~16cは、例えば不規則なまだら模様等を呈しており、ドア12の外観に現れないことが望ましい。この点、当該ドア12では、隙間Cを軟質部66等で確実に塞いでいる。なお、軟質部66等は、例えば黒色等の単一色の材料で形成しておく。これにより、隙間Cからこれら骨材16a~16cの枠外側見込み面62が露出することがなく、外観品質と低コストや環境対策とを両立できる。
【0042】
なお、本実施形態では、熱膨張性部材42,48やエッジ材34の中空部54等により、高い防火性能を持った構成のドア12及び建具10を例示したが、これらドア12及び建具10は、防火構造を持たない非防火構造としてもよい。この場合、熱膨張性部材42,48やエッジ材34の中空部54等は省略してもよい。
【0043】
以上のように、本発明に係るドアは、上骨材、下骨材及び一対の縦骨材を枠状に構成した骨組体と、前記骨組体の室外側に配置される外表面材と、前記骨組体の室内側に配置される内表面材と、を備えるドアであって、前記外表面材及び前記内表面材はそれぞれ、その縁部を互いに近接する方向に屈曲させることで前記骨組体の枠外側見込み面に対向させた折曲片部を有し、前記外表面材及び前記内表面材のそれぞれの前記折曲片部の先端部同士は、見込み方向に隙間を介して配置されており、前記上骨材、前記下骨材及び前記一対の縦骨材のうち、少なくとも1つの骨材の前記枠外側見込み面には、枠内側に凹んだ凹部が設けられると共に、該凹部は、前記隙間と重なる位置に設けられ、前記凹部には、該凹部が形成された前記骨材よりも柔軟な材料で形成された軟質部が設けられていることを特徴とする。このような構成によれば、外表面材及び内表面材に設けた折曲片部の先端部間の隙間を、骨材に設けた軟質部によって埋めることができ、その外観品質が向上する。
【0044】
本発明に係るドアにおいて、前記軟質部が設けられた前記骨材は、樹脂で形成された樹脂骨材を有し、前記樹脂骨材の枠外側見込み面に、前記凹部及び前記軟質部が設けられた構成としてもよい。そうすると、樹脂骨材によって外表面材と内表面材との間の断熱性能を確保しつつ、軟質部によって各折曲片部の先端部間の隙間を確実に埋めることができる。
【0045】
本発明に係るドアにおいて、吊元側の縦骨材は、金属で形成された金属骨材と、該金属骨材の枠外側見込み面を覆うように該金属骨材に取り付けられた前記樹脂骨材と、を有し、前記外表面材の前記折曲片部及び前記内表面材の前記折曲片部の外面に重なるように設けられ、当該ドアをドア枠に対して回動可能に支持するためのヒンジを備え、前記ヒンジは、前記外表面材の前記折曲片部と前記樹脂骨材とを貫通した室外側締結具と、前記内表面材の前記折曲片部と前記樹脂骨材とを貫通した室内側締結具と、を用いて前記金属骨材に締結されており、前記軟質部は、見込み方向で前記室外側締結具と前記室内側締結具との間となる位置に配置された構成としてもよい。そうすると、ドア自身の自重や開閉時の負荷がかかる吊元側の縦骨材の強度を金属骨材によって確保できる。しかも軟質部は、この縦骨材にヒンジを取り付けるための室外側締結具と室内側締結具との間となる位置に配置される。このため、これら締結具によって軟質部が潰されることがなく、ヒンジの取付強度が不足することを防止できる。
【0046】
また、本発明に係る建具は、上記構成のドアと、該ドアを開閉可能に支持するドア枠と、を備えることを特徴とする。従って、当該建具は、製造コストを低減できる。
【0047】
また、本発明に係るドアの製造方法は、上骨材、下骨材及び一対の縦骨材を枠状に構成した骨組体の室外側に外表面材を設け、前記骨組体の室内側に内表面材を設けたドアの製造方法であって、前記上骨材、前記下骨材及び前記一対の縦骨材のうち、少なくとも1つの骨材に対し、室内外方向に沿う見込み板部と、該見込み板部の室外側端部及び室内側端部をそれぞれ枠内側に屈曲させた一対の見付け板部と、を形成すると共に、前記見込み板部の枠外側見込み面に対して枠内側に凹んだ凹部を形成し、さらに該凹部に前記骨材よりも柔軟な材料で形成された軟質部を設けておき、前記外表面材及び前記内表面材のそれぞれに対し、その縁部を互いに近接する方向に屈曲させることで前記骨材の枠外側見込み面に対向可能な折曲片部を形成すると共に、各折曲片部の見込み方向長さを、前記外表面材及び前記内表面材がそれぞれ前記骨組体に固定された状態で互いの先端部同士の間に隙間が形成される寸法に設定し、さらに、各折曲片部の屈曲角度を、前記骨材の前記見込み板部と前記見付け板部との間の屈曲角度よりも小さい角度に設定しておき、その後、前記外表面材及び前記内表面材の各折曲片部を前記骨材の枠外側見込み面に重ねるように配置すると共に、各折曲片部の先端部を前記軟質部に押し当てた状態で、前記外表面材及び前記内表面材を前記骨組体に固定することを特徴とする。このような方法によれば、各折曲片部の屈曲角度が骨材の見込み板部と見付け板部との間の屈曲角度よりも小さいことで、各折曲片部の先端部が枠外方向に口開きしたような取付不良を生じることを防止したドアを製造できる。
【0048】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
10 建具、12 ドア、14 ドア枠、16 骨組体、16a 上骨材、16b 下骨材、16c,16d 縦骨材、18 外表面材、18a,19a 折曲片部、18b,19b 先端部、19 内表面材、22 ヒンジ、24,28 金属骨材、24a,52,60a 見込み板部、24b,24c,28a,28b,60b,60c 見付け板部、25,30,31 樹脂骨材、62 枠外側見込み面、62a 凹部、65,69a,69b ねじ、66,70,72 軟質部、68a,68b リベット