(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ドアウェザーストリップ
(51)【国際特許分類】
B60J 10/27 20160101AFI20220830BHJP
B60J 10/21 20160101ALI20220830BHJP
B60J 10/25 20160101ALI20220830BHJP
B60J 10/86 20160101ALI20220830BHJP
【FI】
B60J10/27
B60J10/21
B60J10/25
B60J10/86
(21)【出願番号】P 2018178006
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】矢野下 晴香
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-234997(JP,A)
【文献】特開2013-032080(JP,A)
【文献】特開2004-224257(JP,A)
【文献】特開2013-028211(JP,A)
【文献】特開2011-011566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/27
B60J 10/21
B60J 10/25
B60J 10/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ドアのルーフ側に設けられたドアルーフサッシュが、
ロール成形されるとともに、底面部とその両端に形成され車内側に向けて突出する車外側突出部と車外側に向けて突出する車内側突出部からなる断面略C字状で上方に開口したガイドレール部と、前記車外側突出部の端部が車外側に折り返されて上方に延びさらに車外側に折り返されて下方に延びる上端縁部が形成されたロールサッシュと、
プレス成形されるとともに立ち上がり面が形成されたプレスサッシュが接合されてなり、
前記上端縁部に前記立ち上がり面が接合されることで生じた接合段差部分に、前記ルーフ側に沿って直線状に延びる上部押出成形部の端部と下降する下部押出成形部の端部を接続する型成形部が装着されるとともに、
前記上部押出成形部,及び前記型成形部の一部分は、前記ロールサッシュに嵌め込まれ、車外側端部と車内側端部に車外側突部と車内側突部が形成された取付基部と、ドア閉時にボディのドア開口縁に弾接する中空シール部をそれぞれ備えるドアウェザーストリップであって、
前記上部押出成形部の取付基部に形成された車外側突部から上方に離間した位置から前記型成形部側に延びて、前記ロールサッシュのガイドレール部の車外側突出部よりも上方に位置する上端縁部の車内側面に弾接しつつ、前記接合段差部分を跨ぐように連設された背面リップ部と、
前記上部押出成形部の取付基部に形成された車外側突部に連設された、前記型成形部の取付基部の車外側突部の車外側面から前記接合段差部分側に延びて、前記ロールサッシュのガイドレール部の車外側凹部立ち上がり面に弾接しつつ、前記接合段差部分を跨いで、前記プレスサッシュの立ち上がり面の車内側面に弾接するように連設された第一ビード部を備えることを特徴とするドアウェザーストリップ。
【請求項2】
前記上部押出成形部の取付基部に形成された車外側突部に連設された、前記型成形部の取付基部の車外側突部の下面から前記接合段差部分側に延びて、前記ロールサッシュのガイドレール部の底面部に弾接しつつ、前記接合段差部分を跨いで、前記プレスサッシュの立ち上がり面の下方から車内側に設けられ前記型成形部の取付基部が取付けられる、前記プレスサッシュの取付面の上面に弾接するように連設された第二ビード部を備えることを特徴とする請求項1に記載のドアウェザーストリップ。
【請求項3】
前記背面リップ部を、前記型成形部の上部において、前記上部押出成形部からそのまま直線状に延びる背面水平延長部と、前記第一ビード部より上方で下降して延びる背面下降延長部に分岐させたことを特徴とする請求項1又は2に記載のドアウェザーストリップ。
【請求項4】
前記第一ビード部を、前記型成形部内において下降するにしたがい車外側に徐々に寄せて設けたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のドアウェザーストリップ。
【請求項5】
前記第二ビード部の連設位置よりも車内側に高発泡スポンジ材を設けたことを特徴とする請求項2乃至4のうちいずれか一つに記載のドアウェザーストリップ。
【請求項6】
前記高発泡スポンジ材を、前記型成形部から前記下部押出成形部側に下降するにしたがい車外側に徐々に寄せて設けたことを特徴とする請求項5に記載のドアウェザーストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のドアウェザーストリップに関する。より詳細には、自動車のルーフ側に設けられたドアルーフサッシュがロールサッシュとプレスサッシュが接合されることにより生じた接合段差部分からの水の進入を防止するドアウェザーストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8及び
図9に示すように、車両リヤドア2のルーフ側に設けられたドアルーフサッシュ10が、後方上縁のコーナー部Xにおいて、ロールサッシュ11にプレスサッシュ12が溶接によって接合されてなるタイプのものが知られている。ドアルーフサッシュ10は、その車外側から装飾用モール20で覆われてなり、その装飾用モール20の後端部にはエンドキャップ25が嵌め込まれている。
そして、このようなドア2のルーフ側外周縁には、ドア2の閉時にボディ3のドア開口縁に弾接するドアウェザーストリップ30が取付けられている。
【0003】
ドアウェザーストリップ30は、
図11に示すように、リヤドア2側では、ルーフ側に沿って直線状に延びる上部押出成形部31とピラー側に沿って下降する下部押出成形部32が型成形接続されその型成形部33がリヤドア2のコーナー部Xの車内側に装着されている。
ドアウェザーストリップ30の断面形状は、上部押出成形部31では、
図12に示すように、型成形部33では、
図13に示すようになっていて、ドアウェザーストリップ30は、ドアルーフサッシュ10に取付けられる取付基部31A,33Aと、取付基部31A,33Aに一体成形され、ボディ3のドア開口縁の車内側と車外側にそれぞれ弾接する中空シール部31B,33Bとシールリップ部31C,33Cを有し、さらに取付基部31A,33Aとシールリップ部31C,33Cの間から車外側に突出する背面リップ部31D,33Dを有している。なお、下部押出成形部32では、ドアウェザーストリップ30は、上部押出成形部31と同様に、取付基部と中空シール部と背面リップ部を有しているが、シールリップ部は有していない。
【0004】
ここで、ロールサッシュ11とプレスサッシュ12の接合部分には、
図10に示すように、車内外方向に段差Zが生じている。すなわち、
図12に示すようなロールサッシュ11の上端縁部11aの車内外方向の幅に対して、
図13に示すようなプレスサッシュ12の立ち上がり面12aの車内外方向の幅の方が小さいので両者の間に段差Zが生じ、その接合段差部Zから水Wが車内側に進入するといった問題がある。
【0005】
この問題に対して、従来は、
図12及び
図13に示すように、上部押出成形部31から延びるドアウェザーストリップ30の背面リップ部31Dに連設された型成形部33の背面リップ部33Dを接合段差部Zに弾接させるようにしていた。このときの背面リップ部31D,33Dの弾接によるシールラインを、
図9に点線L1で示した。
【0006】
しかしながら、水Wの量が多いと、
図13に示すように、水Wが背面リップ部33Dとプレスサッシュ12の立ち上がり面12aの間から取付基部33A側に入り込み、さらには取付基部33Aとプレスサッシュ12の取付面12bの間から車内側に進入する場合があった。
【0007】
これに対して、ベルトラインにおいて、ドアフレームとドアパネル間に生じる段差を接続部で吸収するためにカバー部を設けるとともに水抜き溝を設けたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この特許文献1に記載の発明は、ベルトラインにおける段差に関するものであり、
図8及び
図10に示したように、車両ドアのルーフ側においてロールサッシュ11とプレスサッシュ12が接合された部分に生じる段差部Zから水Wが進入することを防止するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的とするところは、ロールサッシュとプレスサッシュの接合段差部からの水の進入を効果的に防止することのできるドアウェザーストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のドアウェザーストリップは、自動車ドア(2)のルーフ側に設けられたドアルーフサッシュ(10)が、
ロール成形されるとともに、底面部(11b3)とその両端に形成され車内側に向けて突出する車外側突出部(11b1)と車外側に向けて突出する車内側突出部(11b2)からなる断面略C字状で上方に開口したガイドレール部(11b)と、前記車外側突出部(11b1)の端部が車外側に折り返されて上方に延びさらに車外側に折り返されて下方に延びる上端縁部(11a)が形成されたロールサッシュ(11)と、
プレス成形されるとともに立ち上がり面(12a)が形成されたプレスサッシュ(12)が接合されてなり、
前記上端縁部(11a)に前記立ち上がり面(12a)が接合されることで生じた接合段差部分(Z)に、前記ルーフ側に沿って直線状に延びる上部押出成形部(51)の端部と下降する下部押出成形部(52)の端部を接続する型成形部(53)が装着されるとともに、
前記上部押出成形部(51),及び前記型成形部(53)の一部分は、前記ロールサッシュ(11)に嵌め込まれ、車外側端部と車内側端部に車外側突部(51A1,53A1)と車内側突部(51A2,53A2)が形成された取付基部(51A,53A)と、ドア(2)閉時にボディ(3)のドア開口縁に弾接する中空シール部(51B,52B,53B)をそれぞれ備えるドアウェザーストリップ(50)であって、
前記上部押出成形部(51)の取付基部(51A)に形成された車外側突部(51A1)から上方に離間した位置から前記型成形部(53)側に延びて、前記ロールサッシュ(11)のガイドレール部(11b)の車外側突出部(11b1)よりも上方に位置する上端縁部(11a)の車内側面に弾接しつつ、前記接合段差部分(Z)を跨ぐように連設された背面リップ部(51D,53D)と、
前記上部押出成形部(51)の取付基部(51A)に形成された車外側突部(51A1)に連設された、前記型成形部(53)の取付基部(53A)の車外側突部(53A1)の車外側面から前記接合段差部分(Z)側に延びて、前記ロールサッシュ(11)のガイドレール部(11b)の車外側凹部立ち上がり面(11b4)に弾接しつつ、前記接合段差部分(Z)を跨いで、前記プレスサッシュ(12)の立ち上がり面(12a)の車内側面に弾接するように連設された第一ビード部(70)を備えることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記上部押出成形部(51)の取付基部(51A)に形成された車外側突部(51A1)に連設された、前記型成形部(53)の取付基部(53A)の車外側突部(53A1)の下面から前記接合段差部分(Z)側に延びて、前記ロールサッシュ(11)のガイドレール部(11b)の底面部(11b3)に弾接しつつ、前記接合段差部分(Z)を跨いで、前記プレスサッシュ(12)の立ち上がり面(12a)の下方から車内側に設けられ前記型成形部(53)の取付基部(53A)が取付けられる、前記プレスサッシュ(12)の取付面(12b)の上面に弾接するように連設された第二ビード部(80)を備えることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記背面リップ部(53D)を、前記型成形部(53)の上部において、前記上部押出成形部(51)からそのまま直線状に延びる背面水平延長部(53D1)と、前記第一ビード部(70)より上方で下降して延びる背面下降延長部(53D2)に分岐させたことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記第一ビード部(70)を、前記型成形部(53)内において下降するにしたがい車外側に徐々に寄せて設けたことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記第二ビード部(80)の連設位置よりも車内側に高発泡スポンジ材(90)を設けたことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記高発泡スポンジ材(90)を、前記型成形部(53)から前記下部押出成形部(52)側に下降するにしたがい車外側に徐々に寄せて設けたことを特徴とする。
【0016】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0017】
本発明のドアウェザーストリップによれば、ロールサッシュとプレスサッシュの接合段差部分を跨ぐように、ロールサッシュのガイドレール部の車外側突出部よりも上方に位置する上端縁部の車内側面に背面リップ部を弾接させるとともに、ガイドレール部の車外側凹部立ち上がり面には第一ビード部を弾接させようにしたので、接合段差部分を通して水が車外側から車内側に進入することを二重のシール部によって抑制することができる。このとき接合段差部分からの水を、背面リップ部及び第一ビード部の車外側に沿わせてとひ状に下降させるのでこれによっても車内側に水が進入することを抑制することができる。
このように、背面リップ部及び第一ビード部を設けることによって止水機能と排水機能に優れ、水の進入を効果的に抑制することのできるドアウェザーストリップが得られる。
また、背面リップ部は、上部押出成形部の取付基部に形成された車外側突部から上方に離間した位置から型成形部側に切れ目なく連続的に延びるもので、かつ第一ビード部も、上部押出成形部の取付基部に連設された型成形部の取付基部の車外側突部の車外側面から接合段差部分を跨ぐように切れ目なく連続的に延びるものであるので、切れ目から水が車内側に進入することもない。
【0018】
また本発明によれば、上部押出成形部の取付基部に形成された車外側突部に連設された、型成形部の取付基部の車外側突部の下面から接合段差部分側に延びて、ロールサッシュのガイドレール部の底面部に弾接しつつ、接合段差部分を跨いで、プレスサッシュの立ち上がり面の下方から車内側に設けられプレスサッシュの取付面の上面に弾接する第二ビード部をさらに備えるので、万一、第一ビード部を越えて車内側に侵水しようとしても第二ビード部によって水は堰き止められるのでさらに止水機能と排水機能に優れる。
【0019】
また本発明によれば、背面リップ部は、型成形部の上部において、上部押出成形部からそのまま直線状に延びる背面水平延長部と、第一ビード部より上方で下降して延びる背面下降延長部に分岐させているので背面リップ部にかかる水の量を二手に分散させることができる。
【0020】
また本発明によれば、第一ビード部を、型成形部内において下降するにしたがい車外側に徐々に寄せて設けたので、第一ビード部まで進入した水をより車外側に導くことができる。
【0021】
また本発明によれば、第二ビード部の連設位置よりも車内側に高発泡スポンジ材を設けたので、第二ビード部を越えて車内側に進水するようなことがあったとしても高発泡スポンジ材によって水は堰き止められるのでさらに一層止水機能と排水機能に優れる。
【0022】
また本発明によれば、高発泡スポンジ材を、型成形部から下部押出成形部側に下降するにしたがい車外側に徐々に寄せて設けたので、高発泡スポンジ材まで進入した水をより車外側に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図8に示すドアのX部に本発明の実施形態に係るドアウェザーストリップが取付けられた状態を示す拡大斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るドアウェザーストリップの要部を示す拡大斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るドアウェザーストリップがロールサッシュに取付けられた状態を示す、
図2のA-A線拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るドアウェザーストリップがロールサッシュに取付けられた状態を示す、
図2のB-B線拡大断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るドアウェザーストリップがプレスサッシュに取付けられた状態を示す、
図2のC-C線拡大断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るドアウェザーストリップがプレスサッシュに取付けられた状態を示す、
図2のD-D線拡大断面図である。
【
図7】ロールサッシュとプレスサッシュの接合段差部に、本発明の実施形態に係るドアウェザーストリップの第一ビード部が弾接した状態を示す、
図1のH-H線拡大断面図である。
【
図9】
図8に示すドアのX部に従来例に係るドアウェザーストリップが取付けられた状態を示す拡大斜視図である。(
図1相当図)
【
図10】ロールサッシュとプレスサッシュの接合段差部を示す
図9のG-G線拡大断面図である。
【
図11】
図8に記載のドアウェザーストリップを示す拡大側面図である。
【
図12】
図11に記載のドアウェザーストリップの上部押出成形部がロールサッシュに取付けられた状態を示す拡大断面図である。(
図3相当図)
【
図13】
図11に記載のドアウェザーストリップの、従来例に係る型成形部が接合段差部においてプレスサッシュに取付けられた状態を示す拡大断面図である。(
図5相当図)
【
図14】本発明の実施形態に係るドアウェザーストリップがプレスサッシュに取付けられた状態を示す、
図2のK-K線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るドアウェザーストリップ50について説明する。なお、従来例で示したものと同一部分には同一記号を付した。
【0025】
本発明の実施形態に係るドアウェザーストリップ50は、
図1及び
図8に示すように、自動車の前方向に対して左側のリヤドア2のルーフ側に設けられたドアルーフサッシュ10に取付けられたものであり、特にドアルーフサッシュ10がロールサッシュ11とプレスサッシュ12が溶接によって接合されてなるタイプのものに適用される。ドアルーフサッシュ10は、その車外側から装飾用モール20で覆われてなり、その装飾用モール20の後端部にはエンドキャップ25が嵌め込まれている。
【0026】
ドアウェザーストリップ50は、
図11に示すように、自動車のルーフに対向するドアルーフサッシュ10に沿って取付けられ直線状に延びる上部押出成形部51の端部と、リヤピラーに対向するドアサッシュに沿って取付けられ下降する下部押出成形部52の端部がコーナー部において型成形接続されたものであり、型成形部53が、車両リヤドア2のドアルーフサッシュ10の後方上縁のコーナー部Xにおいて装着される。
【0027】
ドアウェザーストリップ50の要部を
図2に示すとともに、
図3から
図6に、ドアルーフサッシュ10に取付けられたドアウェザーストリップ50の各断面を示す。なお、
図2は、ドアルーフサッシュ10に取付けられる側となる、ドアウェザーストリップ50の車外側面を主に示したものである。なお、
図2においては、それに記載した二つの白黒三角印の黒側を型成形部53、白側を押出成形部(上部押出成形部51及び下部押出成形部52)としている。
また、ドアウェザーストリップ50の適用可能な材料としては、ゴム様弾性体であれば、特に限定されないが、ゴムの場合はEPDMスポンジゴムが、熱可塑性樹脂の場合は発泡または軟質TPOが好ましい。
【0028】
ロールサッシュ11は、
図3に示すように、ロール成形によって上端縁部11aとガイドレール部11bが形成されている。ガイドレール部11bは、底面部11b3とその両端に形成され車内側に向けて突出する車外側突出部11b1と車外側に向けて突出する車内側突出部11b2からなる断面C字状で上方に開口している。上端縁部11aは、車外側突出部11b1の端部が車外側に折り返されて上方に延びさらに車外側に折り返されて下方に延びている。
また、プレスサッシュ12は、
図5に示すように、プレス成形によって車内外方向に延びる取付面12bの車外側端部から上方に延びる立ち上がり面12aが形成されている。なお、立ち上がり面12aは平担状であり、ロールサッシュ11の車外側突出部11b1のような突出部は形成されていない。
【0029】
そして、ロールサッシュ11とプレスサッシュ12の接合部分には、
図7に示すような、接合段差部分Z(従来例、
図10で示したものと同じ)が生じている。
ドアウェザーストリップ50がドアルーフサッシュ10に取付けられたとき、この接合段差部分Zにおけるロールサッシュ11側の断面を示したものが
図4であり、同じく接合段差部分Zにおけるプレスサッシュ12側の断面を示したものが
図5である。
【0030】
ドアウェザーストリップ50の上部押出成形部51,下部押出成形部52及び型成形部53は、取付基部51A,52A,53Aと、それに一体成形された中空シール部51B,52B,53Bをそれぞれ備えている。取付基部51A,52A,53Aは、断面板状で車外側端部と車内側端部に車外側突部51A1,52A1,53A1と車内側突部51A2,52A2,53A2が形成されている。なお、型成形部53の取付基部53Aは、
図4から
図6に示すように、型成形時に使用する中子を抜くための穴が設けられている。中空シール部51B,52B,53Bは、リヤドア2の閉時にボディ3のドア開口縁に弾接するもので、取付基部51A,52A,53Aに一体成形されている。
【0031】
また、上部押出成形部51では、
図2,
図3に示すように、取付基部51Aに対して中空シール部51Bの車外側に中空シール部51Bとともにボディ3のドア開口縁に弾接するシールリップ部51Cが一体成形され、型成形部53では、同じく、
図4から
図6に示すように、取付基部53Aに対して中空シール部53Bの車外側に中空シール部53Bとともにボディ3のドア開口縁に弾接するシールリップ部53Cが一体成形されているが、下部押出成形部52では、
図2に示すように、シールリップ部は特に設けられていない。
また、上部押出成形部51及び、型成形部53においてロールサッシュ11の存在するところ(
図3および
図4)では、ガイドレール部11bに、取付基部51A,53Aの車外側突部51A1,53A1と車内側突部51A2,53A2が嵌め込まれる。
【0032】
そして、上部押出成形部51の取付基部51Aに形成された車外側突部51A1から上方に離間した位置、すなわち、取付基部51Aとシールリップ部51Cの付け根との間には、車外側に延びて、ロールサッシュ11のガイドレール部11bの車外側突出部11b1よりも上方に位置する上端縁部11aの車内側面に弾接する背面リップ部51Dが設けられている。
上部押出成形部51に設けられた背面リップ部51Dは、
図4に示すように、型成形部53側に延びて、そこでも、背面リップ部53Dは、ロールサッシュ11のガイドレール部11bの車外側突出部11b1よりも上方に位置する上端縁部11aの車内側面に弾接しつつ、さらに、接合段差部分Zを跨いで、
図5に示すように、プレスサッシュ12の立ち上がり面12aの車内側面の上方に弾接するように連設されている。
【0033】
それに加えて、上部押出成形部51の取付基部51Aに形成された車外側突部51A1に連設された、型成形部53の取付基部53Aの車外側突部53A1の車外側面から接合段差部分Z側に延びて、
図4に示すように、ロールサッシュ11のガイドレール部11bの車外側凹部立ち上がり面11b4に弾接しつつ、接合段差部分Zを跨いで、
図5に示すように、プレスサッシュ12の立ち上がり面12aの車内側面の下方に弾接するように第一ビード部70が連設されている。
第一ビード部70は、型成形部53中において、取付基部53Aの車外側突部53A1の車外側面が、上部押出成形部51側から接合段差部分Zを介して下部押出成形部53側にかけて、徐々に突出量が大きくなるように形状が変化して、接合段差部分Zでは、
図7に示すように、ロールサッシュ11の上端縁部11aの車内側面とプレスサッシュ12の立ち上がり面12aの車内側面に弾接するようになっている。すなわち、第一ビード部70の車外側に向けての突出量は、接合段差部分Zではロールサッシュ11側よりもプレスサッシュ12側の方が大きい。
【0034】
さらにまた、上部押出成形部51の取付基部51Aに形成された車外側突部51A1に連設された、型成形部53の取付基部53Aの車外側突部53A1の下面から接合段差部分Z側に延びて、
図4に示すように、ロールサッシュ11のガイドレール部11bの底面部11b3に弾接しつつ、接合段差部分Zを跨いで、
図5に示すように、プレスサッシュ12の立ち上がり面12aの下方から車内側に設けられ型成形部53の取付基部53Aが取付けられる、プレスサッシュ12の取付面12bの上面に弾接するように第二ビード部80が連設されている。
この第二ビード部80も、型成形部53中において、取付基部53Aの車外側突部53A1の下面の一部が、上部押出成形部51側から接合段差部分Zを介して下部押出成形部53側にかけて、徐々に突出量が大きくなるように形状が変化している。
【0035】
なお、背面リップ部53Dは、
図2に示すように、型成形部53の上部において、上部押出成形部51からそのまま直線状に延びる背面水平延長部53D1と、第一ビード部70より上方で下降して延びる背面下降延長部53D2に分岐されている。
【0036】
また、第一ビード部70は、
図2に示すように、型成形部53内において下降するにしたがい車外側に徐々に寄せて設けられ、型成形部53に設けられたクリップ穴40の車外側を通った後、さらに下降した位置で消失するようにしている。また、車外側に寄せられる前の位置Pからは真っ直ぐに下降して延びる型成形下部リップ部53Eが形成され、型成形下部リップ部53Eはその下部が車外側に徐々に寄せて設けられ、下部押出形部52に形成された背面リップ部52Dに連設されている。型成形下部リップ部53Eは、図示は省略するが、ドアウェザーストリップ50の取付け時にはプレスサッシュ12の立ち上がり面12aの車内側面に弾接するようにされている。
【0037】
また第二ビード部80の連設位置よりも車内側には、
図3から
図6に示すように、比重0.05~0.4の高発泡スポンジ材90が設けられている。
高発泡スポンジ材90は、
図2から
図5に示すように、上部押出成形部51の取付基部51Aの下部から型成形部53の取付基部53Aの下部まで延びるように設けられ、ロールサッシュ11のガイドレール部11bの底面部11b3の上面と、プレスサッシュ12の取付面12bの上面に弾接するようにされている。
また、高発泡スポンジ材90は、
図2に示すように、型成形部53から下部押出成形部52側に下降するにしたがい車外側に徐々に寄せて設けられている。
【0038】
このように構成されたドアウェザーストリップ50によれば、ロールサッシュ11とプレスサッシュ12の接合段差部分Zを跨ぐように、ロールサッシュ11のガイドレール部11bの車外側突出部11b1よりも上方に位置する上端縁部11aの車内側面に背面リップ部53Dを弾接させるとともに、ガイドレール部11bの車外側凹部立ち上がり面11b4には第一ビード部70を弾接させようにしたので、接合段差部分Zを通して水Wが車外側から車内側に進入することを二重のシール部(背面リップ部53D,第一ビード部70)によって防止することができる。
このときの背面リップ部53Dの弾接によるシールラインを、
図1に点線L2で,第一ビード部70によるシールラインを、
図1に点線L3で示した。
【0039】
このとき接合段差部分Zからの水Wを、背面リップ部53D及び第一ビード部70の車外側に沿わせて下降させるのでこれによっても車内側に水Wが進入することを防止することができる。
【0040】
また、背面リップ部51D,53Dは、上部押出成形部51の取付基部51Aに形成された車外側突部51A1から上方に離間した位置から型成形部53側に切れ目なく連続的に延びるもので、かつ第一ビード部70も、上部押出成形部51の取付基部51Aに連設された型成形部53の取付基部53Aの車外側突部53A1の車外側面から接合段差部分Zを跨ぐように切れ目なく連続的に延びるものであるので、切れ目から水Wが車内側に進入することもない。
【0041】
また、上部押出成形部51の取付基部51Aに形成された車外側突部51A1に連設された、型成形部53の取付基部53Aの車外側突部53A1の下面から接合段差部分Z側に延びて、ロールサッシュ11のガイドレール部11bの底面部11b3に弾接しつつ、接合段差部分Zを跨いで、プレスサッシュ12の取付面12bの上面に弾接する第二ビード部80をさらに備えるので、万一、第一ビード部70を越えて車内側に進水しようとしても第二ビード部80によって水Wは堰き止められるのでさらに止水機能と排水機能に優れる。
このときの第二ビード部80によるシールラインを、
図1に点線L4で示した。
【0042】
また、
図2に示すように、背面リップ部53Dを、型成形部53の上部において、上部押出成形部51からそのまま直線状に延びる背面水平延長部53D1と、第一ビード部70より上方で下降して延びる背面下降延長部53D2に分岐させているので背面リップ部53Dにかかる水の量を二手に分散させることができる。なお、背面リップ部53Dを特に分岐させることなく、型成形下部リップ部53Eに繋いでそして下部押出形部52に形成された背面リップ部52Dに連設させることもできる。
【0043】
また、第一ビード部70を、型成形部53内において下降するにしたがい車外側に徐々に寄せて設けたので、第一ビード部70まで進入した水をより車外側に導くことができる。特にクリップ穴40の車外側に寄せることでクリップ穴40から水Wが車内側に進入することを効果的に防止することができる。
また、その際、
図2に示すように、第一ビード部70が背面下降延長部53D2に接近することになるが、両者の高さを維持したまま接続させてしまうと、第一ビード部70によって導かれてきた水Wが排水できなくなる。そのため、背面下降延長部53D2の下降部Qは、第一ビード部70に接近しすぎないように、手前で消滅させるのが好ましい。しかし、
図2のK-K線拡大断面である
図14に示すように両者が接近している場合に、型成形時の型割容易化の観点から、両者の接続部分Sを設定するのであれば、接続部分Sの高さは、プレスサッシュ12の立ち上がり面12aに弾接しない程度の高さにするのが好ましく、そうすれば、排水機能を維持することは可能である。
【0044】
また、第二ビード部80の連設位置よりも車内側に高発泡スポンジ材90を設けたので、第二ビード部80を越えて車内側に進水するようなことがあったとしても高発泡スポンジ材90によって水Wは堰き止められるのでさらに一層止水機能と排水機能に優れる。
そして、高発泡スポンジ材90を、型成形部53から下部押出成形部52側に下降するにしたがい車外側に徐々に寄せて設けたので、高発泡スポンジ材90まで進入した水Wをより車外側に導くことができる。
【0045】
なお、本実施形態では、第一ビード部70,第二ビード部80及び高発泡スポンジ材90を設けることによって接合段差部Zから水Wが進入することを防止する効果を大きいものにしたが、第二ビード部80を省略したり、あるいは高発泡スポンジ材90についても省略したりしても高い止水,排水機能は得られる。
【0046】
また、本実施形態では、リヤドア2を例にして説明したが、フロントドア1のルーフ側に設けられたドアルーフサッシュが、前方上縁のコーナー部において、ロールサッシュにプレスサッシュが溶接によって接合されてなるタイプのものに、ドアウェザーストリップの型成形部が装着されるものについても適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 フロントドア
2 リヤドア
3 ボディ
10 ドアルーフサッシュ
11 ロールサッシュ
11a 上端縁部
11b ガイドレール部
11b1 車外側突出部
11b2 車内側突出部
11b3 底面部
11b4 車外側凹部立ち上がり面
12 プレスサッシュ
12a 立ち上がり面
12b 取付面
20 装飾用モール
25 エンドキャップ
30 ドアウェザーストリップ
31 上部押出成形部
31A 取付基部
31B 中空シール部
31C シールリップ部
31D 背面リップ部
32 下部押出成形部
33 型成形部
33A 取付基部
33B 中空シール部
33C シールリップ部
33D 背面リップ部
40 クリップ穴
50 ドアウェザーストリップ
51 上部押出成形部
51A 取付基部
51A1 車外側突部
51A2 車内側突部
51B 中空シール部
51C シールリップ部
51D 背面リップ部
52 下部押出成形部
52A 取付基部
52A1 車外側突部
52A2 車内側突部
52B 中空シール部
52D 背面リップ部
53 型成形部
53A 取付基部
53A1 車外側突部
53A2 車内側突部
53B 中空シール部
53C シールリップ部
53D 背面リップ部
53D1 背面水平延長部
53D2 背面下降延長部
53E 型成形下部リップ部
70 第一ビード部
80 第二ビード部
90 高発泡スポンジ材
W 水
X コーナー部
Z 接合段差部