(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】スイッチ制御装置、絶縁型DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータ、電源アダプタ及び電気機器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20220830BHJP
H02M 7/06 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H02M3/28 C
H02M3/28 Y
H02M7/06 A
(21)【出願番号】P 2018190207
(22)【出願日】2018-10-05
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 英夫
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-150456(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0191254(US,A1)
【文献】特開2009-240067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
H02M 7/00-7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側巻線及び二次側巻線を有するトランスと、
前記一次側巻線に接続されたスイッチングトランジスタと、
前記スイッチングトランジスタに対して直列接続されたセンス抵抗と、
前記スイッチングトランジスタのオン、オフを制御する一次側制御装置と、を備えて、前記一次側巻線に加わる入力電圧から前記トランスの二次側において出力電圧を生成する絶縁型DC/DCコンバータであって、
前記出力電圧に応じたフィードバック信号を生成して前記一次側制御装置に供給するフィードバック信号生成回路が設けられ、
前記一次側制御装置は、
前記スイッチングトランジスタの制御電極に接続される出力端子と、
前記センス抵抗の発生電圧をセンス電圧として受ける電圧入力端子と、
前記フィードバック信号及び前記センス電圧に基づき駆動制御信号を生成する制御回路と、
前記駆動制御信号に基づき、前記出力端子を通じて前記スイッチングトランジスタをオン又はオフとするドライブ回路と、備え、
前記一次側巻線、前記スイッチングトランジスタ及び前記センス抵抗の直列回路に対して前記入力電圧が印加され、前記スイッチングトランジスタのオン区間において、前記スイッチングトランジスタがターンオンしてからの経過時間の増大に伴い前記スイッチングトランジスタに流れる電流が増加し、
前記制御回路は、前記スイッチングトランジスタをターンオンさせた後、前記センス電圧
が所定のターンオフ基準電圧に達したことを受けて前記スイッチングトランジスタをターンオフさせる電流制御を実行可能に構成され、前記電流制御の実行中において、前記スイッチングトランジスタをターンオンさせてから所定時間が経過しても前記センス電圧が
前記ターンオフ基準電圧以下の判定電圧に達さないとき、前記スイッチングトランジスタをターンオフさせ
、
前記制御回路は、前記フィードバック信号として前記一次側制御装置に対し特定のフィードバック信号が供給されたときに前記電流制御を実行し、前記一次側制御装置に対し前記特定のフィードバック信号が非供給であるときには前記スイッチングトランジスタをオフ状態に維持し、
前記フィードバック信号生成回路は、前記出力電圧が所定の目標電圧未満であるときに前記特定のフィードバック信号を前記一次側制御装置に供給する、又は、前記出力電圧が前記目標電圧より所定電圧だけ低い電圧以下になった後、前記出力電圧が前記目標電圧に達するまでの間において前記特定のフィードバック信号を前記一次側制御装置に供給する
、絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項2】
交流電圧を全波整流する整流回路と、
全波整流された電圧を平滑化することで直流電圧を生成する平滑コンデンサと、
前記直流電圧としての入力電圧から直流の出力電圧を生成する、請求項1に記載の絶縁型DC/DCコンバータと、を備えた
、AC/DCコンバータ。
【請求項3】
交流電圧を受けるプラグと、
請求項2に記載のAC/DCコンバータと、
前記AC/DCコンバータを収容する筐体と、を備えた
、電源アダプタ。
【請求項4】
請求項2に記載のAC/DCコンバータと、
前記AC/DCコンバータの出力電圧に基づき駆動される負荷と、を備えた
、電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ制御装置、並びに、それを利用した絶縁型DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータ、電源アダプタ及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチ制御装置は、コイルに直列接続されたスイッチング素子をスイッチング駆動する用途に利用されることがある(下記特許文献1参照)。この場合、センス抵抗を用いてスイッチング素子に流れる電流を検出する構成を採用し、スイッチング素子をターンした後、センス抵抗の発生電圧に基づきスイッチング素子のターンオフタイミングを決定するという電流制御方式が用いられることがある。
【0003】
典型的な例として、トランスの一次側巻線(コイル)にスイッチング素子を直列接続して、当該スイッチング素子に対し電流制御方式を適用するといった利用形態がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような電流制御方式を用いる場合において、仮にセンス抵抗が短絡しているとセンス抵抗の発生電圧がスイッチング素子に流れる電流を示さなくなるため、スイッチング素子のターンオフの機会が失われてスイッチング素子の破損等が生じるおそれがある。スイッチング素子を破損等から保護することは重要である。
【0006】
本発明は、センス抵抗の短絡等に関わる保護機能を備えたスイッチ制御装置、並びに、それを利用した絶縁型DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータ、電源アダプタ及び電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスイッチ制御装置は、スイッチング素子の制御電極に接続される出力端子と、前記スイッチング素子に直列接続されるべきセンス抵抗の発生電圧をセンス電圧として受ける電圧入力端子と、駆動制御信号を生成する制御回路と、前記駆動制御信号に基づき、前記出力端子を通じて前記スイッチング素子をオン又はオフとするドライブ回路と、備え、前記制御回路は、前記スイッチング素子をターンオンさせた後、前記センス電圧に基づき前記スイッチング素子のターンオフタイミングを決定する電流制御を実行可能に構成され、前記電流制御の実行中において、前記スイッチング素子をターンオンさせてから所定時間が経過しても前記センス電圧が所定の判定電圧に達さないとき、前記スイッチング素子をターンオフさせることを特徴とする。
【0008】
具体的には例えば、前記スイッチ制御装置において、前記スイッチング素子及び前記センス抵抗とコイルとの直列回路に対して所定の直流電圧が印加され、前記スイッチング素子のオン区間において、前記スイッチング素子がターンオンしてからの経過時間の増大に伴い前記スイッチング素子に流れる電流が増加するものであって良い。
【0009】
また具体的には例えば、前記スイッチ制御装置において、前記制御回路は、前記電流制御において、前記スイッチング素子をターンオンさせた後、前記センス電圧が所定のターンオフ基準電圧に達したことを受けて前記スイッチング素子をターンオフさせ、前記判定電圧は前記ターンオフ基準電圧より低くて良い。
【0010】
或いは例えば、前記スイッチ制御装置において、前記制御回路は、前記電流制御において、前記スイッチング素子をターンオンさせた後、前記センス電圧が所定のターンオフ基準電圧に達したことを受けて前記スイッチング素子をターンオフさせ、前記判定電圧は前記ターンオフ基準電圧と同じ電圧値を有していても良い。
【0011】
また例えば、前記スイッチ制御装置は半導体集積回路にて形成されると良い。
【0012】
本発明に係る絶縁型DC/DCコンバータは、一次側巻線及び二次側巻線を有するトランスと、前記一次側巻線に接続されたスイッチング素子としてのスイッチングトランジスタと、前記スイッチングトランジスタに対して直列接続されたセンス抵抗と、前記スイッチングトランジスタのオン、オフを制御する一次側制御回路と、を備えて、前記一次側巻線に加わる入力電圧から前記トランスの二次側において出力電圧を生成する絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記一次側制御回路として前記スイッチ制御装置が用いられ、前記スイッチングトランジスタの制御電極は前記スイッチ制御装置の出力端子に接続されて、前記スイッチ制御装置により前記スイッチングトランジスタがスイッチング駆動されることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るAC/DCコンバータは、交流電圧を全波整流する整流回路と、全波整流された電圧を平滑化することで直流電圧を生成する平滑コンデンサと、前記直流電圧としての入力電圧から直流の出力電圧を生成する前記絶縁型DC/DCコンバータと、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る電源アダプタは、交流電圧を受けるプラグと、前記AC/DCコンバータと、前記AC/DCコンバータを収容する筐体と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る電気機器は、前記AC/DCコンバータと、前記AC/DCコンバータの出力電圧に基づき駆動される負荷と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、センス抵抗の短絡等に関わる保護機能を備えたスイッチ制御装置、並びに、それを利用した絶縁型DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータ、電源アダプタ及び電気機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータの全体構成図である。
【
図2】
図1に示される一次側制御ICの外観斜視図である。
【
図3】
図1に示される一次側制御ICの概略ブロック図である。
【
図4】
図3に示されるドライブ回路の内部構成図である。
【
図5】一次側制御ICの起動時周辺のスイッチングトランジスタの状態及び出力電圧の様子を示す図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る電流制御の説明図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係り、センス抵抗の短絡時における電圧及び電流の波形等を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係り、センス抵抗の短絡時における保護動作の説明図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係るAC/DCコンバータの構成を示す図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る電源アダプタの構成を示す図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る電気機器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“M1”によって参照されるスイッチングトランジスタは(
図1参照)、スイッチングトランジスタM1と表記されることもあるし、トランジスタM1と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0019】
まず、本実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。周期的にレベルがローレベルとハイレベルとの間で切り替わる任意の信号又は電圧について、当該信号又は電圧の1周期分の区間の長さに対する、当該信号又は電圧のレベルがハイレベルとなる区間の長さの割合を、デューティと称する。
【0020】
FET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタ(スイッチング素子)について、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。以下、任意のトランジスタについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。また、任意のトランジスタについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。
【0021】
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る絶縁同期整流型DC/DCコンバータ1(以下、DC/DCコンバータ1と略記され得る)の全体構成図である。DC/DCコンバータ1は、フライバック方式のDC/DCコンバータであり、入力端子P1に加わる直流の入力電圧V
INから、所望の目標電圧V
TGに安定化された直流の出力電圧V
OUTを生成する。
【0022】
DC/DCコンバータ1は、互いに電気的に絶縁された一次側回路と二次側回路とから成り、一次側回路におけるグランドは“GND1”にて参照され、二次側回路におけるグランドは“GND2”にて参照される。一次側回路及び二次側回路の夫々において、グランドは0V(ゼロボルト)の基準電位を有する導電部(所定電位点)を指す又は基準電位そのものを指す。但し、グランドGND1とグランドGND2は互いに絶縁されているため、互いに異なる電位を有し得る。
【0023】
DC/DCコンバータ1における一対の出力端子P2及びP3の内、出力端子P3はグランドGND2に接続され、出力端子P3の電位(即ちグランドGND2の電位)から見て出力端子P2に出力電圧VOUTが加わる。DC/DCコンバータ1は、出力端子P2及びP3間に接続された任意の負荷(不図示)に出力電圧VOUTを供給することができる。
【0024】
DC/DCコンバータ1は、一次側巻線W1及び二次側巻線W2を有するトランスTRを備える。トランスTRにおいて、一次側巻線W1と二次側巻線W2とは電気的に絶縁されつつ互いに逆極性にて磁気結合されている。
【0025】
DC/DCコンバータ1の一次側回路には、一次側巻線W1に加えて、一次側制御回路としての一次側制御IC10と、一次側電源回路11と、入力コンデンサCINと、スイッチングトランジスタM1と、センス抵抗RCSと、が設けられる。スイッチングトランジスタM1はNチャネル型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)として構成されている。一次側制御IC10は半導体集積回路により形成される。一次側巻線W1の一端は入力端子P1に接続されて直流の入力電圧VINを受ける。一次側巻線W1の他端はスイッチングトランジスタM1のドレインに接続され、スイッチングトランジスタM1のソースはセンス抵抗RCSを介してグランドGND1に接続される。入力端子P1とグランドGND1との間に入力コンデンサCINが設けられ、入力コンデンサCINの両端間に入力電圧VINが加わる。一次側電源回路11は、入力電圧VINを直流―直流変換することで所望の電圧値を有する電源電圧VCCを生成して一次側制御IC10に供給する。一次側制御IC10は電源電圧VCCに基づいて駆動する。
【0026】
DC/DCコンバータ1の二次側回路には、二次側巻線W2に加えて、二次側制御回路としての二次側制御IC20と、フィードバック回路30と、同期整流トランジスタM2と、ダイオードD2と、分圧抵抗R1~R4と、出力コンデンサCOUTと、が設けられる。二次側制御IC20は半導体集積回路により形成される。分圧抵抗R1及びR2により分圧回路DVAが構成され、分圧抵抗R3及びR4により分圧回路DVBが構成される。同期整流トランジスタM2(以下、SRトランジスタM2と称され得る)はNチャネル型のMOSFETとして構成されている。ダイオードD2はSRトランジスタM2の寄生ダイオードである。故に、SRトランジスタM2のソースからドレインに向かう方向を順方向としてダイオードD2がSRトランジスタM2に並列接続されることになる。ダイオードD2は寄生ダイオードとは別に設けられたダイオードであっても良い。
【0027】
二次側巻線W2の一端は出力端子P2に接続され、故に二次側巻線W2の一端には出力電圧VOUTが加わる。二次側巻線W2の他端はSRトランジスタM2のドレインに接続される。二次側巻線W2の他端での電圧(換言すればSRトランジスタM2のドレイン電圧)を“VDR”にて表す。二次側巻線W2の他端及びSRトランジスタM2のドレイン間の接続ノードは分圧抵抗R1の一端に接続され、分圧抵抗R1の他端は分圧抵抗R2を介してグランドGND2に接続される。このため、分圧抵抗R1及びR2間の接続ノードND1には、分圧回路DVAによる電圧VDRの分圧VAが加わる。一方、出力電圧VOUTが加わる出力端子P2は分圧抵抗R3の一端に接続され、分圧抵抗R3の他端は分圧抵抗R4を介してグランドGND2に接続される。このため、分圧抵抗R3及びR4間の接続ノードND2には、分圧回路DVBによる出力電圧VOUTの分圧VBが加わる。
【0028】
SRトランジスタM2のソースはグランドGND2に接続される。また、出力端子P2及びP3間に出力コンデンサCOUTが設けられ、出力コンデンサCOUTの両端間に出力電圧VOUTが加わる。出力コンデンサCOUTとDC/DCコンバータ1の負荷(不図示)との間に、過電流の発生を検知するための抵抗が挿入されても良い。
【0029】
二次側制御IC20は、出力電圧VOUTを駆動電圧として用い、電圧VAに基づき、又は、電圧VA及びVBに基づき、SRトランジスタM2のゲート電圧を制御することによりSRトランジスタM2のオン、オフを制御する。この際、トランジスタM1及びM2が同時にオンとならないようにSRトランジスタM2のゲート電圧が制御される。SRトランジスタM2の制御方法として公知の方法を含む任意の方法を利用できる。例えば、SRトランジスタM2がオフ状態であることを起点に考えると、二次側制御IC20は、電圧VAが所定の負のターンオン判定電圧(例えば-100mV)以下となったことを受けてSRトランジスタM2をターンオンし、その後、電圧VAが所定の負のターンオフ判定電圧(例えば-10mV)以上となったことを受けてSRトランジスタM2をターンオフする。ターンオフ判定電圧はターンオン判定電圧よりも高い。
【0030】
DC/DCコンバータ1において、一次側回路と二次側回路とに亘ってフォトカプラ31が設けられている。フォトカプラ31は、二次側回路に配置された発光素子と、一次側回路に配置された受光素子と、を有する。フォトカプラ31の発光素子は、出力電圧V
OUTにて、又は、出力電圧V
OUTの分圧にてバイアスされており、フィードバック回路30は、出力電圧V
OUTが所望の目標電圧V
TGに追従するようにフォトカプラ31の発光素子を駆動する。例えば、フィードバック回路30は、
図1に示す如くノードND2に接続され、出力電圧V
OUTの分圧V
Bに基づき、出力電圧V
OUT及び目標電圧V
TG間の誤差に応じた電流をフォトカプラ31の発光素子に供給する。フィードバック回路30はシャントレギュレータやエラーアンプ等にて構成される。
【0031】
一次側制御IC10はフォトカプラ31の受光素子に接続され、フォトカプラ31の受光素子に流れるフィードバック電流IFBに応じたフィードバック信号VFBが一次側制御IC10に入力される。また、センス抵抗RCSでの電圧降下に相当する電流検出信号VCSも一次側制御IC10に入力される。
【0032】
一次側制御IC10はスイッチングトランジスタM1のゲートに接続され、スイッチングトランジスタM1のゲートにパルス信号を供給することでスイッチングトランジスタM1をスイッチング駆動する。パルス信号は、信号レベルがローレベル及びハイレベル間で切り替わる矩形波状の信号である。トランジスタM1のゲートにローレベル、ハイレベルの信号が供給されているとき、トランジスタM1は、夫々、オフ状態、オン状態となる。一次側制御IC10の構成及び制御方式は特に限定されない。例えば、一次側制御IC10は、PWM変調(パルス幅変調)を利用してフィードバック信号VFBに応じたデューティを有するパルス信号をスイッチングトランジスタM1のゲートに供給しても良いし、PFM変調(パルス周波数変調)を利用してフィードバック信号VFBに応じた周波数を有するパルス信号をスイッチングトランジスタM1のゲートに供給しても良い。また例えば、一次側制御IC10は電流モードの変調器であっても良い。この場合例えば、スイッチングトランジスタM1のゲートに供給されるパルス信号のデューティが電流検出信号VCSに応じて調節される。
【0033】
図2に一次側制御IC10の外観の例を示す。一次側制御IC10は、半導体集積回路を樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品(半導体装置)であり、一次側制御IC10を構成する各回路が半導体にて集積化されている。一次側制御IC10としての電子部品の筐体には、IC10の外部に対して露出した外部端子が複数設けられている。尚、
図2に示される外部端子の数は例示に過ぎない。二次側制御IC20も、
図2の一次側制御IC10と同様の構造を有する。
【0034】
一次側制御IC10に設けられる複数の外部端子の一部として、
図1には外部端子TM1~TM5が示されている。外部端子TM1は、出力端子であり、スイッチングトランジスタM1のゲートに接続される。外部端子TM2は、電源端子であり、一次側電源回路11からの電源電圧VCCの入力を受ける。外部端子TM3は、グランド端子であり、グランドGND1に接続される。外部端子TM4、TM5は、夫々、フィードバック信号V
FB、電流検出信号V
CSの入力を受ける。
【0035】
以下、一次側回路に注目し、一次側回路の一部の構成及び動作について更なる説明を設ける。尚、本実施形態において、以下では、特に基準を設けずに示される電圧はグランドGND1の電位から見た電圧であるものとし、特に断りなき限り0V(ゼロボルト)はグランドGND1の電位を指すものとする。
【0036】
図3に一次側制御IC10の概略的な内部構成を示す。一次側制御IC10は、内部電源回路110、制御回路120及びドライブ回路130を備える。
【0037】
内部電源回路110は電源端子TM2に入力された電源電圧VCCを直流-直流変換することにより、1以上の他の直流電圧を生成する。ここでは、内部電源回路110により生成される直流電圧に、内部電源電圧Vreg及び駆動用電圧VDRVが含まれると考える。内部電源電圧Vreg及び駆動用電圧VDRVは所定の電圧値を有した正の直流電圧である。例えば、電源電圧VCCは14V以上の電圧である一方で、電圧Vreg及びVDRVは、夫々、4V、12Vである。
【0038】
制御回路120は内部電源電圧Vregに基づき駆動する。制御回路120は、ロジック回路にて構成される、又は、アナログ回路及びロジック回路にて構成される。制御回路120は、フィードバック信号VFB及び電流検出信号VCSの少なくとも一方に基づき、スイッチングトランジスタM1をスイッチングさせるための駆動制御信号SCNTを生成してドライブ回路130に供給する。駆動制御信号SCNTは、例えばPWM変調又はPFM変調された信号であって良い。
【0039】
ドライブ回路130は駆動用電圧V
DRVに基づき駆動する。ドライブ回路130は出力端子TM1に接続され、駆動制御信号S
CNTに従ってスイッチングトランジスタM1のゲート電圧を制御する。換言すれば、ドライブ回路130は、制御回路120の制御の下で出力端子TM1の電圧レベルを調整する。出力端子TM1はIC10の外部においてスイッチングトランジスタM1のゲートに接続される。出力端子TM1における電圧を記号“V
G”にて表し、以下、出力端子電圧V
Gと称することがある。DC/DCコンバータ1において、出力端子電圧V
GはスイッチングトランジスタM1のゲート電圧に等しい。また、スイッチングトランジスタM1のチャネルに流れる電流(即ち、スイッチングトランジスタM1のドレイン及びソース間に流れる電流)を“I
M1”にて参照する。
図1のDC/DCコンバータ1において、電流I
M1は一次側巻線W1に流れる電流に等しい。
【0040】
図4にドライブ回路130の内部構成例を示す。
図4のドライブ回路130は、互いに直列接続されたトランジスタ131及び132と、プリドライバ133と、を備える。トランジスタ131はPチャネル型のMOSFETとして構成され、トランジスタ132はNチャネル型のMOSFETとして構成されている。但し、トランジスタ131をNチャネル型のMOSFETとして構成する変形も可能である。トランジスタ131及び132の直列回路に対して駆動用電圧V
DRVが印加される。より具体的には、トランジスタ131のソースに駆動用電圧V
DRVが加えられ、トランジスタ131及び132のドレイン同士が共通接続され、トランジスタ132のソースはグランドGND1に接続される。トランジスタ131及び132のドレイン同士の接続ノードが出力端子TM1に接続される。プリドライバ133は制御回路120からの駆動制御信号S
CNTに従って、トランジスタ131及び132のオン、オフを制御する。駆動制御信号S
CNTはハイレベル又はローレベルをとる二値信号である。
【0041】
駆動制御信号SCNTがハイレベルであるとき、プリドライバ133は、トランジスタ131及び132のゲートにローレベル信号を供給することで、トランジスタ131、132の状態を、夫々、オン状態、オフ状態とする。トランジスタ131、132の状態が、夫々、オン状態、オフ状態であるとき、過渡状態を経て出力端子電圧VGはハイレベル(駆動用電圧VDRVのレベル)となり、結果、スイッチングトランジスタM1はオン状態となる。
【0042】
駆動制御信号SCNTがローレベルであるとき、プリドライバ133は、トランジスタ131及び132のゲートにハイレベル信号を供給することで、トランジスタ131、132の状態を、夫々、オフ状態、オン状態とする。トランジスタ131、132の状態が、夫々、オフ状態、オン状態であるとき、過渡状態を経て出力端子電圧VGはローレベル(グランドGND1のレベル)となり、結果、スイッチングトランジスタM1はオフ状態となる。
【0043】
尚、プリドライバ133は、トランジスタ131及び132が同時にオン状態となることを防止するべく、トランジスタ131及び132を共にオフ状態とするデッドタイムを適宜挿入して良い。
【0044】
制御回路120は、信号レベルがハイレベル及びローレベル間で切り替わる駆動制御信号SCNTをドライブ回路130に供給することで、スイッチングトランジスタM1をスイッチングさせる(即ちスイッチングトランジスタM1をオン状態とオフ状態との間で切り替える)ことができる。
【0045】
フィードバック回路30を利用した上述の動作は、フィードバック制御の実行中における動作である。フィードバック制御とは、二次側回路における出力電圧VOUTが目標電圧VTGにて安定化され又は目標電圧VTGに近い電圧にまで上昇していてフィードバック回路30が有効に動作しているときに限り実行可能な制御である。フィードバック制御では、出力電圧VOUTに応じたフィードバック信号VFBに基づき駆動制御信号SCNTが生成される。
【0046】
図5に示す如く、二次側回路の出力電圧V
OUTがグランドGND2と同じ電位(二次側回路の0Vの電位)を有しているときを起点にして、電源電圧VCCの入力を受けて一次側制御IC10がタイミングt1にて起動したとする。タイミングt1直後では出力電圧V
OUTがゼロ又は十分に低いため、フィードバック回路30が起動しておらず有効なフィードバック信号V
FBが一次側制御IC10に入力されていない。そこで、一次側制御IC10は、自身の起動直後において、フィードバック信号V
FBに頼らない、自走制御とも称される電流制御を実行する。ここでは、タイミングt1から、その後のタイミングt2までの区間において、フィードバック信号V
FBに頼らない電流制御が実行されているものとする。タイミングt2を境にフィードバック回路30からの有効なフィードバック信号V
FBが一次側制御IC10に入力され始めて、タイミングt2以降ではフィードバック制御が実行される。
【0047】
図6を参照し、電流制御(自走制御)について説明する。尚、以下では、説明の便宜上、電流検出信号V
CSにて示される電圧をセンス電圧と称して、センス電圧も記号“V
CS”により参照する。センス電圧V
CSは、外部端子TM5に加わる電圧であって、センス抵抗R
CSでの発生電圧(即ちセンス抵抗R
CSでの電圧降下)に等しい。また、スイッチングトランジスタM1がオン状態となる区間をオン区間と称し、スイッチングトランジスタM1がオフ状態となる区間をオフ区間と称する。出力端子電圧V
Gがハイレベル、ローレベルとなる区間が、夫々、オン区間、オフ区間に相当する。そして、スイッチングトランジスタM1がスイッチング駆動されるときの1つのオン区間の長さをオン時間T
ONと称し且つ1つのオフ区間の長さをオフ時間T
OFFと称する。
【0048】
電流制御は、スイッチングトランジスタM1をターンオンした後、電流IM1に応じたセンス電圧VCSに基づきスイッチングトランジスタM1のターンオフタイミングを決定する制御である。具体的には、電流制御において、制御回路120は、スイッチングトランジスタM1がターンオンするように(即ち出力端子電圧VGがローレベルからハイレベルに切り替わるように)ドライブ回路130を制御した後、センス電圧VCSが所定のターンオフ基準電圧VOFFに達したか否かを監視し、センス電圧VCSがターンオフ基準電圧VOFFに達したことに応答してスイッチングトランジスタM1がターンオフするように(即ち出力端子電圧VGがハイレベルからローレベルに切り替わるように)ドライブ回路130を制御する。この後、所定の時間の経過を待ってから、制御回路120は、再びスイッチングトランジスタM1がターンオンするようにドライブ回路130を制御する。以後、同様の動作が繰り返される。上述したように、制御回路120は、駆動制御信号SCNTをハイレベル、ローレベルとすることで、ドライブ回路130を通じ、スイッチングトランジスタM1をオン状態、オフ状態にすることができる。ターンオフ基準電圧VOFFは所定の正の直流電圧値を有する。
【0049】
電流制御において、オフ時間TOFFは固定時間であって良い。この場合、オン時間TONに応じてスイッチングトランジスタM1のスイッチング周期は変動しうる。スイッチングトランジスタM1のスイッチング周期は、互いに隣接する1つのオン時間TONとオフ時間TOFFとの和で表される。
【0050】
或いは、電流制御において、スイッチングトランジスタM1のスイッチング周期を一定としても良い。電流制御において、スイッチングトランジスタM1のスイッチング周期が一定とされる場合、周期ごとに、スイッチングトランジスタM1のオン時間TONに応じてオフ時間TOFFが決定されることになる。尚、スイッチングトランジスタM1のスイッチング周期は駆動制御信号SCNTの周期及び出力端子電圧VGの周期に相当するので、当該スイッチング周期が一定であることは駆動制御信号SCNTの周期及び出力端子電圧VGの周期が一定であることを意味する。駆動制御信号SCNTの周期とは、駆動制御信号SCNTのレベルがローレベルからハイレベルに切り替えられた後、駆動制御信号SCNTのレベルが次回にローレベルからハイレベルに切り替えられるまでの区間の長さを指す。同様に、出力端子電圧VGの周期とは、出力端子電圧VGのレベルがローレベルからハイレベルに切り替えられた後、出力端子電圧VGのレベルが次回にローレベルからハイレベルに切り替えられるまでの区間の長さを指す。
【0051】
一次側巻線W1とスイッチングトランジスタM1とセンス抵抗RCSとの直列回路に対し、所定の直流電圧である入力電圧VINが印加されているため、スイッチングトランジスタM1のオン区間では、スイッチングトランジスタM1がターンオンしてからの経過時間の増大に伴いスイッチングトランジスタM1に流れる電流IM1が増大する。電流制御では、スイッチングトランジスタM1をターンオンさせた後、電流IM1がターンオフ基準電圧VOFFに対応する電流値に達したことを受けてスイッチングトランジスタM1をターンオフさせるという動作を繰り返すことになる。
【0052】
上述の如く、本来、外部端子TM5には電流I
M1に比例するセンス電圧V
CSが入力されるのであるが、センス抵抗R
CSが短絡する不具合が発生すると、
図7に示すように外部端子TM5へ入力されるセンス電圧V
CSは電流I
M1に関係なく0Vとなる。センス電圧V
CSが電流I
M1に関係なく0Vに維持された状態で上述の電流制御を行うと、過大な電流I
M1が流れて電流I
M1の流路上の部品(特に例えばスイッチングトランジスタM1)が破損又は劣化するおそれがあり、当該部品の周辺にも温度上昇に伴う悪影響が生じ得る。センス抵抗R
CSの抵抗値が異常に低い場合にも同様のことが生じ得る。
【0053】
制御回路120は、センス抵抗R
CSの短絡等に関わる保護機能を備える。具体的には、電流制御の実行時において、以下のような動作を行う。即ち、
図8に示す如く、電流制御において、制御回路120は、ドライブ回路130を通じてスイッチングトランジスタM1をターンオンさせた後、自身に備えられたタイマ(不図示)を用いてスイッチングトランジスタM1をターンオンさせたタイミングからの経過時間T
TIMERを計測し、当該経過時間T
TIMERが所定の上限時間T
THに達してもセンス電圧V
CSが所定の短絡判定電圧V
THに達さないとき、短絡異常が発生していると判断して、ドライブ回路130を通じスイッチングトランジスタM1をターンオフさせる。
【0054】
制御回路120は、短絡異常が発生していると判断した場合、以後、一次側制御IC10に対し所定のリセット信号が入力されるまで、駆動制御信号SCNTをローレベルに維持することによりスイッチングトランジスタM1のオフ状態を維持する。或いは、短絡異常が発生していると判断した後、制御回路120は、所定のクールダウン時間の経過を待って上述の電流制御を再開するようにしても良い。また、一次側制御IC10への電源電圧VCCの入力の遮断により、短絡異常が発生したとの判断は破棄されて良い。
【0055】
このような動作により、センス抵抗RCSが短絡する不具合が発生していたとしても、スイッチングトランジスタM1の破損等を回避することができる。
【0056】
短絡判定電圧VTHは所定の正の直流電圧値を有する。短絡判定電圧VTHはターンオフ基準電圧VOFFよりも低い電圧に設定されても良い。或いは、短絡判定電圧VTHはターンオフ基準電圧VOFFと一致していても良い(即ち、短絡判定電圧VTH及びターンオフ基準電圧VOFFは互いに同じ電圧値を有していても良い)。
【0057】
短絡判定電圧VTHをターンオフ基準電圧VOFFと一致させる場合、電圧VTH及びVOFFとして兼用される単一の所定電圧をセンス電圧VCSと比較する単一の比較器を用意するだけで、センス電圧VCSが短絡判定電圧VTH又はターンオフ基準電圧VOFFに達したか否かを判断できる。
【0058】
一方、短絡判定電圧VTHをターンオフ基準電圧VOFFよりも低い電圧に設定すれば、短絡判定電圧VTHをターンオフ基準電圧VOFFと一致させる場合よりも上限時間TTHを短く設定できるというメリットがある。
【0059】
例えば、ターンオフ基準電圧VOFF及び短絡判定電圧VTHが共に1Vであり、且つ、適正なセンス抵抗RCSが短絡無く設けられているケースでの電流制御におけるオン時間TONの標準値が10μ秒であったとしたならば、センス電圧VCSがターンオフ基準電圧VOFF(1V)に達したことを受けてスイッチングトランジスタM1のターンオフを行うという動作を担保すべく、上限時間TTHは10μ秒よりも大きな時間、例えば20μ秒に設定される。この場合、センス抵抗RCSの短絡時には、20μ秒分、一次側巻線W1及びスイッチングトランジスタM1に電流IM1が流れ続け、一次側巻線W1のインダクタンス値によっては電流IM1が非常に大きな電流値に達するおそれがある。
これに対し、ターンオフ基準電圧VOFF、短絡判定電圧VTHを、例えば、夫々、1V、0.3Vに設定した場合には、上限時間TTHを6μ秒(=20μ秒×3/10)に設定するといったことが可能となる。スイッチングトランジスタM1をターンオンさせたタイミングからの経過時間TTIMERが6μ秒に達した時点でセンス電圧VCSが0.3V(短絡判定電圧VTH)に達していなければ、センス抵抗RCSに短絡が生じていると推定され、その時点でスイッチングトランジスタM1をターンオフすれば、電流IM1が小さい状態で電流制御を停止することが可能となる。
【0060】
尚、
図5のタイミングt2以降のフィードバック制御においても、電流制御が利用されるようにしても良い。この場合、以下のように動作させれば良い。
即ち例えば、出力電圧V
OUTが目標電圧V
TG未満であるときに限りフィードバック信号V
FBとして特定のフィードバック信号V
FBが一次側制御回路IC10に供給されるようにフィードバック回路30を構成しておく。或いは、出力電圧V
OUTが目標電圧V
TGより所定電圧ΔVだけ低い電圧(V
TG-ΔV)以下となった後、出力電圧V
OUTが目標電圧V
TGに達するまでの間において、特定のフィードバック信号V
FBが一次側制御回路IC10に供給されるようにフィードバック回路30を構成しておいても良い。そして、制御回路120は、特定のフィードバック信号V
FBが入力されているときに上記電流制御を実行し、特定のフィードバック信号V
FBが入力されていないときにはスイッチングトランジスタM1をオフ状態に維持する。これにより、スイッチングトランジスタM1が間欠的にスイッチング駆動されて、出力電圧V
OUTが目標電圧V
TG近辺に保持される。タイミングt2以降の電流制御においても、上述したように、制御回路120は、スイッチングトランジスタM1をターンオンさせたタイミングからの経過時間T
TIMERが所定の上限時間T
THに達してもセンス電圧V
CSが所定の短絡判定電圧V
THに達さないとき、短絡異常が発生していると判断して、ドライブ回路130を通じスイッチングトランジスタM1をターンオフさせると良い。
【0061】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態並びに後述の第3及び第4実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2~第4実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2~第4実施形態にも適用される。第2実施形態において、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3及び第4実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1~第4実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
【0062】
第1実施形態では、DC/DCコンバータ1が絶縁同期整流型DC/DCコンバータであるとしたが、DC/DCコンバータ1は、一次側巻線W1に加わる入力電圧VINからトランスTRの二次側において(即ち二次側回路において)出力電圧VOUTを生成するものであれば任意である。
【0063】
例えば、
図1に示したDC/DCコンバータ1では、いわゆるローサイドアプリケーションが採用されているが、ハイサイドアプリケーションが採用されても良い。ハイサイドアプリケーションが採用されたDC/DCコンバータ1では、SRトランジスタM2が出力端子P2側に設けられ、出力電圧V
OUTが加わる出力端子P2とトランスTRの二次側巻線W2との間にSRトランジスタM2が直列に挿入される。この他、本発明の主旨を損なわない形態で、二次側回路におけるSRトランジスタM2の配置位置を変更することが可能である。
【0064】
また例えば、DC/DCコンバータ1は、整流ダイオードを用いたDC/DCコンバータ(絶縁ダイオード整流型DC/DCコンバータ)であっても良い。この場合、DC/DCコンバータ1において、
図1のSRトランジスタM2及び寄生ダイオードD2の代わりに、整流ダイオードを二次側回路に設ける。整流ダイオードは二次側巻線W2と出力コンデンサC
OUTと間に挿入され、一次側巻線W1から二次側巻線W2に伝搬された電力を整流する。
【0065】
また例えば、DC/DCコンバータ1を、フォワード方式の絶縁型DC/DCコンバータとして構成しても良く、この場合にも、同期整流方式及び整流ダイオード方式の何れが採用されても良い。
【0066】
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態では、本発明に係る絶縁型DC/DCコンバータの用途を説明する。
【0067】
図9に示す如く、本発明に係る絶縁型DC/DCコンバータを用いたAC/DCコンバータ300を構成して良い。AC/DCコンバータ300は、フィルタ301、整流回路302、平滑コンデンサ303及び絶縁型DC/DCコンバータ304を備える。フィルタ301は、AC/DCコンバータ300に入力された交流電圧V
ACのノイズを除去する。交流電圧V
ACは商用交流電圧であって良い。整流回路302は、フィルタ301を通じて供給された交流電圧V
ACを全波整流するダイオードブリッジ回路である。平滑コンデンサ303は全波整流された電圧を平滑化することで直流電圧を生成する。絶縁型DC/DCコンバータ304は、平滑コンデンサ303にて生成された直流電圧を入力電圧V
INとして受け、入力電圧V
INを電力変換(直流-直流変換)することで出力電圧V
OUTを生成する。第1又は第2実施形態に示されたDC/DCコンバータ1を絶縁型DC/DCコンバータ304として用いることができる。この場合、
図1の入力コンデンサC
INは平滑コンデンサ303に相当する。
【0068】
AC/DCコンバータ300を用いて電源アダプタを構成しても良い。
図10は、AC/DCコンバータ300を備える電源アダプタ320を示す図である。電源アダプタ320は、AC/DCコンバータ300、プラグ321、筐体322及び出力コネクタ323を備え、筐体322内にAC/DCコンバータ300が収容及び配置される。プラグ321は図示されないコンセントから商用交流電圧V
ACを受け、AC/DCコンバータ300はプラグ321を通じて入力された商用交流電圧V
ACから直流の出力電圧V
OUTを生成する。出力電圧V
OUTが、出力コネクタ323を通じ、図示されない任意の電気機器に供給される。電気機器としては、ノート型パーソナルコンピュータ、情報端末機、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話機(スマートフォンに分類されるものを含む)、携帯オーディオプレイヤなどが例示される。
【0069】
AC/DCコンバータ300を備える電気機器を構成しても良い。
図11(a)及び(b)は、AC/DCコンバータ300を備える電気機器340を示す図である。
図11(a)及び(b)に示される電気機器340はディスプレイ装置であるが、電気機器340の種類は特に限定されず、オーディオ機器、冷蔵庫、洗濯機、掃除機など、AC/DCコンバータを内蔵する機器であれば任意である。電気機器340は、AC/DCコンバータ300、プラグ341、筐体342及び負荷343を備え、筐体322内にAC/DCコンバータ300及び負荷343が収容及び配置される。プラグ341は図示されないコンセントから商用交流電圧V
ACを受け、AC/DCコンバータ300はプラグ341を通じて入力された商用交流電圧V
ACから直流の出力電圧V
OUTを生成する。生成された出力電圧V
OUTは負荷343に供給される。負荷343は、出力電圧V
OUTに基づいて駆動する任意の負荷であって良く、例えば、マイコンコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、電源回路、照明機器、アナログ回路又はデジタル回路である。
【0070】
<<第4実施形態>>
本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態では、第1~第3実施形態に対する幾つかの変形技術等を説明する。
【0071】
上述したように、一次側制御IC10の各回路素子は半導体集積回路の形態で形成され、当該半導体集積回路を樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置が構成される。但し、複数のディスクリート部品を用いて一次側制御IC10内の回路と同等の回路を構成するようにしても良い。一次側制御IC10内に含まれるものとして上述した任意の幾つかの回路素子は、一次側制御IC10外に設けられて一次側制御IC10に外付け接続されても良い。逆に、一次側制御IC10外に設けられるものとして上述した幾つかの回路素子を、一次側制御IC10内に設けるようにしても良い。
【0072】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。
【0073】
FETの型をNチャネル型及びPチャネル型間で入れ替える変形も可能である。
【0074】
図3に示される一次側制御IC10は、対象スイッチング素子のオン、オフを制御する任意のスイッチ制御装置として機能する。但し、対象スイッチング素子は対象コイル及びセンス抵抗と直列接続され、対象スイッチング素子と対象コイル及びセンス抵抗との直列回路に対して所定の直流電圧が印加されるものとする。故に、対象スイッチング素子のオン区間では、対象スイッチング素子がターンオンしてからの経過時間の増大に伴い対象スイッチング素子に流れる電流が増大することになる。
図1の一次側制御IC10にとっての対象スイッチング素子及び対象コイルはスイッチングトランジスタM1及び一次側巻線W1であるが、本発明において、対象スイッチング素子及び対象コイルは、これに限定されず、対象スイッチング素子のスイッチング駆動により対象コイルに流れる電流を制御する用途に、本発明を広く適用可能である。
【0075】
上述の各トランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述されたトランジスタを、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0076】
本発明のスイッチ制御装置の制御対象となるスイッチング素子(対象スイッチング素子)として、MOSFETを含むFET又はIGBTなどの電圧制御型のトランジスタ(即ち、制御電極における電圧に応じて第1及び第2電極間に流れる電流が制御されるトランジスタ)が主として想定されるが、バイポーラトランジスタを当該スイッチング素子(対象スイッチング素子)として用いるようにしても良い。
【0077】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 絶縁同期整流型DC/DCコンバータ
10 一次側制御IC(スイッチ制御装置)
20 二次側制御IC
TR トランス
W1 一次側巻線
W2 二次側巻線
M1 スイッチングトランジスタ(スイッチング素子)
M2 同期整流トランジスタ
RCS センス抵抗
110 内部電源回路
120 制御回路
130 ドライブ回路
TM1 外部端子(出力端子)
TM5 外部端子(電圧入力端子)