(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】易開封性シーラントフィルムおよび包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20220830BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220830BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/00 H
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2018196182
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591143951
【氏名又は名称】ジェイフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】池澤 泰憲
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 記久子
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-005935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層とシール層とを有する共押出フィルムにおいて、
前記基材層は、ポリオレフィン樹脂で構成され、
前記シール層は、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(A)60~95質量%と、密度930kg/m
3以下であり、かつ、メルトフローレート1.0g/10分未満であるポリエチレン系樹脂(B)40~5質量%とを含む樹脂組成物で構成されることを特徴とする易開封性シーラントフィルム
であって、
前記ポリエチレン系樹脂(B)のメルトフローレートに対する前記ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレートの比が5以上である易開封性シーラントフィルム。
【請求項2】
少なくとも基材層とシール層とを有する共押出フィルムにおいて、
前記基材層は、ポリオレフィン樹脂で構成され、
前記シール層は、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(A)60~95質量%と、密度930kg/m
3
以下であり、かつ、メルトフローレート1.0g/10分未満であるポリエチレン系樹脂(B)40~5質量%とを含む樹脂組成物で構成されることを特徴とする易開封性シーラントフィルムであって、
前記フィルム流れ方向(MD)の剥離強度およびその垂直方向(TD)の剥離強度が共に8.0~20.0N/15mm幅である易開封性シーラントフィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂(B)のメルトフローレートが0.5g/10分未満である請求項1
又は2に記載の易開封性シーラントフィルム。
【請求項4】
前記TDの剥離強度に対する前記MDの剥離強度の比が、0.65以上1.54以下である請求項
2に記載の易開封性シーラントフィルム。
【請求項5】
請求項1~
4の何れかに記載の易開封性シーラントフィルムを用いた包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、易開封性を有するシーラントフィルムおよびそのフィルムを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック材料からなるフィルムや容器形状の成形体を用い、内容物を収容して開口部を加熱によって密封する包装体が種々開発され提供されてきている。内容物は、食品、医療品、工業部品、日用品等の広範囲にわたり、また包装体の形状は、袋、カップ、深絞り底材、ブリスターパック、スキンパックなど内容物や使用形態に合わせたものが用いられている。近年、それら包装体について、軽い力で開封できる易開封性の機能向上が進められてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、低温シール性、耐熱性、易開封性を両立するため、ポリオレフィン系樹脂からなる支持層と、ポリプロピレン系樹脂30~90重量%とポリエチレン系樹脂10~70重量%との混合物からなるシート層とからなり、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂のメルトフローレートの比を特定した包装用複合多層シートが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、密封性と易開封性のため、第1層がメルトフローレート(MFR)1~7g/10分の高圧重合法低密度ポリエチレン樹脂20~60重量部と、MFR1~15g/10分のプロピレン-エチレンのタンデムコポリマー40~80重量部からなり、第2層がシングルサイト触媒を用いて重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、高密度ポリエチレンまたはポリプロピレン系樹脂を主成分とし、第2層の面に基材フィルムを積層する蓋材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1 特開2000-272064号公報
特許文献2 特開2006-256637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討により、これら従来技術では包装体の開封方向によって剥離強度の差が大きいことが判り、開封方向によっては易開封性が不十分であったり、易開封性のためには包装体の密封シールを特定方向に限定したり、開封方向を限定したりする必要があった。
そのため本願は、開封剥離方向による剥離強度の差が小さく、等方性の優れた易開封性を有するシーラントフィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、第1の形態として、少なくとも基材層とシール層とを有する共押出フィルムにおいて、前記基材層は、ポリオレフィン樹脂で構成され、前記シール層は、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(A)60~95質量%と、密度930kg/m3以下であり、かつ、メルトフローレート1.0g/10分未満であるポリエチレン系樹脂(B)40~5質量%とを含む樹脂組成物で構成されることを特徴とする易開封性シーラントフィルムを開示する。
【0008】
第1の形態において、前記ポリエチレン系樹脂(B)のメルトフローレートが0.5g/10分未満であることが好ましい。
【0009】
第1の形態において、前記ポリエチレン系樹脂(B)のメルトフローレートに対する前記ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレートの比が5以上であることが好ましい。
【0010】
第1の形態において、フィルム流れ方向(MD)の剥離強度およびその垂直方向(TD)の剥離強度が共に8.0~20.0N/15mm幅であることが好ましい。
【0011】
第1の形態において、前記TDの剥離強度に対する前記MDの剥離強度の比が、0.65以上1.54以下であることが好ましい。
【0012】
本願は、第2の形態として、第1の形態の易開封性シーラントフィルムを用いた包装体を開示する。
【発明の効果】
【0013】
本願の易開封性シーラントフィルムによれば、開封剥離方向に係わらず剥離強度の差が小さいため、例えば、本フィルムをカップ品等の蓋材に用いた場合は、何れの方向のシール箇所においても開封始めから終わりまで一様の軽い力で開封でき、開封時に内容物の飛出しや損壊を起すことがない。また、包装体の製造においては、密封のヒートシール方向や開封方向を何れかの方向に限定する必要がなくなり、商品設計や製造条件の自由度が高くなり製造コストも低減することができる。また、特に、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体に対して良好な易開封性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願において、易開封性はイージーピール性、易剥離性と同義である。また、シーラントフィルムは、ヒートシールフィルム、ヒートシール性フィルムと呼称する場合がある。
易開封性の指標として用いる剥離強度は、シール強度と同義であり、ヒートシールした包材同士の剥離性とヒートシールの密着性を示し、開封強度と呼称する場合もある。
数値範囲を「~」で示した場合は、以上以下を意味する。
本開示の易開封性シーラントフィルム(以下、本フィルムと称する場合がある)は、少なくとも基材層とシール層とを有する共押出フィルムで構成される。
【0015】
<シール層>
本フィルムのシール層は、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(A)60~95質量%と、密度930kg/m3以下であり、かつ、メルトフローレート1.0g/10分未満であるポリエチレン系樹脂(B)40~5質量%とを少なくとも含む樹脂組成物で構成される。
【0016】
(ポリプロピレン系樹脂(A))
本フィルムのシール層を構成するポリプロピレン系樹脂(A)には、分子量分布や組成分布が狭く、引張強度、衝撃強度が高く、低温シール性に優れる特徴を有するシングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂を用いる。例えば、分子量分布は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比Mw/Mnとして、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましい。組成分布は、例えば、短鎖分岐度(SCB)40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。シングルサイト触媒の種類は特に限定しないが、代表的な例としてメタロセン触媒が挙げられる。以下、便宜的にシングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂を「m-PP」と記すことがある。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂(A)としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンとα-オレフィンとのコポリマーが挙げられ、プロピレン-エチレンコポリマーが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、2.0~15.0g/10分が好ましく、5.0~10.0g/10分がより好ましい。MFRが2.0g/10分未満の場合は、ヒートシールによる密着が強大となり、易開封性が得難い。また、低温シール性のために、ポリプロピレン系樹脂(A)の融点は120~160℃が好ましく、125~140℃がより好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂(A)の密度は、一般に880~920kg/m3が好ましく、890~910kg/m3がより好ましい。
【0018】
(ポリエチレン系樹脂(B))
本フィルムのシール層を構成するポリエチレン系樹脂(B)は、密度930kg/m3以下の低密度ポリエチレンであり、密度は900~930kg/m3が好ましく、910~930kg/m3がより好ましく、920~930kg/m3が更に好ましい。密度930kg/m3を超える場合は、シール層に用いるポリプロピレン系樹脂との分散構造を満足に形成せず、十分なイージーピール性が発現されない。一方、下限は特に限定しないが、汎用性と入手の観点から密度900kg/m3以上であることが好ましい。
【0019】
ポリエチレン系樹脂(B)としては、例えば、ホモポリエチレン、エチレンとα-オレフィンとの各種コポリマーが挙げられる。
ポリエチレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、1.0g/10分未満が好ましく、0.8g/10分未満がより好ましく、0.5g/10分未満がさらに好ましく、0.4g/10分未満が特に好ましい。下限は特に限定しないが一般的に0.1g/10分以上である。MFRが1.0g/10分以上の場合は、剥離強度の異方性が大きくなる。
【0020】
(ポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)の組成比)
シール層を構成するポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)との組成比は、両者の合計を100質量%とした場合に、(A):(B)=(60~95):(40~5)であり、好ましくは(70~90):(30~10)である。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂(A)の組成比が60質量%未満の場合は、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体、例えばカップ等の容器に対する密着性が乏しくなり十分なヒートシール強度が得られないことがある。一方、ポリエチレン系樹脂(B)の組成比が40質量%を超える場合も同様の不具合が想定されることと加えて、耐熱性が損なわれる可能性がある。また、ポリプロピレン系樹脂(A)の組成比が95質量%超の場合、または、ポリエチレン系樹脂(B)の組成比が5質量%未満の場合は、ヒートシール後の開封剥離時にシール層の凝集破壊が起きづらく易開封性を得難い。
【0022】
(ポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)のMFRの関係)
本発明において、ポリエチレン系樹脂(B)に対するポリプロピレン系樹脂(A)のMFR比(MFR(PP)/MRF(PE))は、剥離強度の等方性向上の観点から、5以上が好ましく、8以上がより好ましく、20より大が更に好ましい。シール層において、ポリプロピレン系樹脂(A)60~95質量%とポリエチレン樹脂(B)40~5質量%を配合し樹脂組成物を溶融混練すると、ポリプロピレン系樹脂(A)がマトリックス(海)、ポリエチレン系樹脂(B)がドメイン(島)となる海島状の分散構造が形成され、その樹脂組成物をフィルム製膜すると、微分散したポリエチレン系樹脂(B)のドメイン形状は、異なる縦横長さ(アスペクト比)を有するようになる。そのアスペクト比が大きくなることで、フィルムの縦方向(MD)と横方向(TD)にシールした場合のシール強度の差異が大きくなる、すなわちフィルムのヒートシール性、剥離性の異方性が大きくなるものと考えられる。
【0023】
そのため、ポリプロピレン系樹脂(A)の溶融流動性を示すメルトフローレート(MFR)が十分に高く、またポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)とのMFR比が小さくなるほど、フィルム製膜時において樹脂組成物の流れ方向の配向が強くなり、ポリエチレン系樹脂(B)のドメイン形状がより細長い構造を形成するため、ポリエチレン系樹脂(B)ドメインのシール強度への影響がフィルムの縦方向と横方向とで大きな差異で現れるものと考えられる。他方、MFRの小さいポリエチレン系樹脂(B)を用い、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)のMFR比が大きくなることで、ポリエチレン系樹脂(B)ドメインのアスペクト比は小さくなり、フィルムの縦方向と横方向とでシール強度の差異が現れにくいシール層の形成が出来ると考えられる。
【0024】
<基材層>
本フィルムの基材層は、ポリオレフィン樹脂で構成される。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が経済性、汎用性の点で好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンとα-オレフィンとのコポリマーが挙げられる。
【0025】
<フィルムの層構成>
本フィルムは、少なくとも基材層とシール層を有する共押出フィルムであればよく、他の層を1層以上有してもよい。例えば、他の層/基材層/シール層、他の層/他の層/基材層/シール層、基材層/他の層/シール層などの構成が挙げられる。他の層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン-ビニルアルコールなどが挙げられる。
【0026】
本フィルムの総厚、層厚は、特に限定しないが、総厚は経済性、汎用性の点で10~100μm程度が好ましく、20~50μm程度がより好ましい。シール層厚は、剥離強度(シール強度)の調整の点から1~20μmが好ましく、2~10μmがより好ましい。基材層厚は、例えば5~80μm程度が好ましく、10~50μm程度がより好ましい。
【0027】
本フィルムの、基材層、シール層、他の層には、本フィルムの機能・効果を損わない範囲で、公知の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、防曇剤、帯電防止剤、顔料、着色剤、滑剤、充填剤、ブロッキング防止剤、などが挙げられる。
【0028】
また、本フィルムの基材層側に他のフィルムをドライラミネート等の公知の手法で積層してもよい。他のフィルムとしては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドなどの無延伸、延伸フィルムや、塩化ビニリデンコート層、エチレンービニルアルコール層、無機酸化物蒸着層等のガスバリア性層を配設したフィルムなどが挙げられる。
【0029】
<ヒートシール性、易開封性>
本フィルムは、シール層を被着体と対向させてヒートシールし、剥離させる際の強度、すなわち剥離強度が8.0~20.0N/15mm幅であることが、軽い力で開封できる易開封性と、内容物を十分に密封するシール性とを兼備する観点で好ましい。易開封性の点で上限は18.0N/15mm幅以下がより好ましく、15.0N/15mm幅以下が更に好ましい。
【0030】
中でも、本フィルムのフィルム流れ方向(MD)、その垂直方向(TD)にそれぞれ剥離させた場合とも、剥離強度8.0~20.0N/15mm幅であることが好ましい。特に、TDの剥離強度に対するMDの剥離強度の比が0.65以上1.54以下であることが好ましく、0.70以上1.43以下がより好ましい。これらの物性を有することで、易開封性の等方性が良く、包装体を方向性の制限なく製造でき、消費者の開封の利便性が高まる。
【0031】
また、本フィルムは、被着体から剥離する際の機構が、シール層内部が凝集破壊して剥離する凝集破壊タイプであり、剥離後に現れる剥離界面が荒れることなく美麗であることが好ましい。
また、ポリオレフィン系樹脂からなる包装材を用い包装体を作製するヒートシール温度は、ヒートシール工程の短時間化、ヒートシール強度(剥離強度)の安定化、ヒートシールバーへの樹脂付着防止、包装材のシール部の美観性などの観点から、一般に140~180℃であり、それら温度範囲で上述の剥離強度および剥離強度比を得ることが好ましい。更に、例えば130℃等の140℃未満のシール温度条件で、これら剥離強度および剥離強度比により十分な密封性と易開封性が得られればより好ましく、130~180℃の温度範囲で上述の剥離強度および剥離強度比を得ることがより好ましい。
【0032】
なお、ヒートシールの被着体種類やシール条件は限定しないが、本願の評価においては、本フィルムのシール層に、被着体として300μm厚のプロピレン単独重合体からなる無延伸シートを対向させ、所定のシール温度でシール圧0.2MPa、シール時間1秒間、シール幅5mmの条件でヒートシールした試験片について、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で剥離試験を行い、評価した。
【0033】
<その他のフィルム物性>
本フィルムの各種フィルム機械物性は、シーラントフィルムとして適用できる範囲であればよく、特に限定されない。例として挙げると、破断点強度は25.0MPa以上が好ましく、28.0MPa以上がより好ましい。破断点伸度は250%以上が好ましく280%以上がより好ましい。降伏点強度は14.0MPa以上が好ましく、14.5MPa以上がより好ましい。ヤング率は200MPa以上が好ましく、250MPa以上がより好ましい。これらのフィルム機械強度は、フィルムの層構成、各層組成、厚みによって、調整することができる。
【0034】
<フィルムの製造方法>
本フィルムは、少なくとも基材層とシール層を有し、公知の共押出法で製造できる。すなわち、基材層、シール層を構成する各樹脂組成物をTダイ法やインフレーション法の共押出機でフィルム製膜するとよい。なお、各樹脂や添加剤は、所定の組成比率で各層押出機に入れて樹脂組成物としてもよいし、予め各樹脂や添加剤を溶融混練して樹脂組成物を作製してから各層押出機に入れてもよい。
【0035】
<包装体>
本フィルムを用いた包装体の構成、形状、製法は限定しないが、例えば、本フィルムのシール層同士を対向させた袋体、パウチや、本フィルムを蓋材に用い他の材で作製されたカップ、トレー、深絞り成形体を底材に用いた包装体などが挙げられ、公知の方法で製造できる。なお、底材を構成する材料としては、ポリプロピレン系樹脂を使用することが、良好な易開封性を示す観点から、好ましい。
【0036】
<測定法>
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210-1;2014に準拠して測定した。その試験条件は、JIS K6922-1、JIS K6921-1に準拠した。試験温度はポリエチレン190℃、ポリプロピレン系樹脂230℃、試験荷重はポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂ともに2.16kgである。
密度の測定は、JIS K7112:1999に準拠して測定した。
融点の測定は、JIS K7121:2012に準拠して測定した。
剥離強度の測定は、実施例に示す方法で行った。
【実施例】
【0037】
<シール層を構成する樹脂>
・PP1:メタロセン触媒を用いて製造したプロピレン-エチレンランダム共重合体、密度900kg/m3、MFR7.0g/10分、融点125℃。
・PE1:低密度ポリエチレン樹脂、密度924kg/m3、MFR0.7g/10分。
・PE2:低密度ポリエチレン樹脂、密度920kg/m3、MFR0.3g/10分。
・PE3:低密度ポリエチレン樹脂、密度923kg/m3、MFR2.2g/10分。
・PE4:低密度ポリエチレン樹脂、密度919kg/m3、MFR8.2g/10分。
【0038】
<基材層を構成する樹脂>
・PE5:メタロセン触媒を用いて製造した直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、密度922kg/m3、MFR1.5g/10分。
【0039】
<実施例1~3、比較例1~2>
表1に示す樹脂組成の基材層、シール層を有する2種2層(基材層25μm厚/シール層5μm厚)の共押出フィルム(総厚30μm)を、空冷インフレーション共押出フィルム製膜機を用いて作製した。下記評価を行い、結果を表2、表3に示す。
【0040】
<シール性、剥離性評価>
得られた共押出フィルムのシール層に、被着体として300μm厚のプロピレン単独重合体からなる無延伸シートを対向させ、表2に示した120~200℃の所定のシール温度で、シール圧0.2MPa、シール時間1秒、シール幅5mmの条件でテスター産業(株)製ヒートシールテスターを用いてヒートシールし、室温下で保管した。その後、(株)オリエンテック製引張試験機(TEN-03-S3Q)を用い、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で、得られた共押出フィルムの流れ方向(MD)とその垂直方向(TD)に沿った剥離方向で、それぞれ剥離試験を行った。
また、剥離後の剥離面を目視観察し、美麗であるか否かの良し悪し(○、×)を次の基準で評価した。
○; MDおよびTDの剥離試験とも、被着体の剥離面に糸引きがない、および白化の濃淡ムラがない
×; MDまたはTDの剥離試験の何れかで、被着体の剥離面に糸引きがある、または白化に濃淡ムラがある
【0041】
<その他物性評価>
得られた共押出フィルムについて、JIS K7127:1999に基づき、(株)オリエンテック製引張試験機(TEN-03-S3Q)を用い、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、破断点強度、破断点伸度、降伏点強度、ヤング率を測定した。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
<評価結果>
実施例1~3は、何れも安定してフィルム製膜することができ、樹脂ムラやゲル、ブツ等はなく、良好なフィルム外観であった。また、ヒートシール温度130~180℃の範囲で、MD、TDとも剥離強度8.0~20.0N/15mm幅が得られ、良好な密封性と易開封性を示し、更に剥離外観も美麗であった。また、剥離強度比MD/TDが0.65~1.54の範囲内であり、剥離強度の等方性を示した。
【0046】
比較例1は、シール温度140~180℃で、MD、TDとも好ましい剥離強度を示したが、160℃以下では剥離強度比MD/TDが0.65未満であり等方性が不十分であった。比較例2は、MD、TDの両方で好適な剥離強度を満たすヒートシール温度が130℃のみであり、しかも130℃では剥離外観が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の易開封性シーラントフィルムによれば、開封剥離方向に係わらず剥離強度の差が小さいため、例えば、本フィルムをカップ品等の蓋材に用いた場合は、何れの方向のシール箇所においても開封始めから終わりまで一様の軽い力で開封でき、消費者が開封する時に内容物の飛出しや損壊を起すことがない。また包装体の製造においては、密封のヒートシール方向や開封方向を何れかの方向に限定する必要がなくなり、商品設計や製造条件の自由度が高くなり製造コストも低減することができる。特に、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体に対して良好な易開封性を示すことから、ポリプロピレン系樹脂容器の蓋材として有用性が高い。