(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】オレフィン共重合体、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 210/02 20060101AFI20220830BHJP
C08F 232/08 20060101ALI20220830BHJP
C08F 4/70 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C08F210/02
C08F232/08
C08F4/70
(21)【出願番号】P 2018204386
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2017229347
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 稔
(72)【発明者】
【氏名】満重 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】上松 正弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 芳佳
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-235286(JP,A)
【文献】特表2009-535444(JP,A)
【文献】特開2013-227529(JP,A)
【文献】特開平02-051511(JP,A)
【文献】特表2002-504172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00-4/70、6/00-246/00、301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン(a-1)に由来する構造単
位と、
下記一般式
(4)で表される含窒素置換オレフィン(b-1)に由来する構造単位(B)と、を含むことを特徴とするオレフィン共重合体。
【化1】
[一般式(4)中、X
1
~X
4
、X
9
、X
11
及びX
12
は水素原子であり、R
1
は炭素数1~20の炭化水素基、又は炭素数3~6のトリアルキルシリル基であり、R
2
は水素原子、メチル基、又はエチル基であり、Zはメチレン基、エチレン基、又はプロピレン基である。]
【請求項2】
前記一般
式(4)におけるR
1がtert-ブチル基であることを特徴とする請求項
1に記載のオレフィン共重合体。
【請求項3】
13C-NMRにより算出されるメチル分岐数が、炭素原子1,000個当たり50以下であることを特徴とする請求項1
又は2に記載のオレフィン共重合体。
【請求項4】
前記メチル分岐数が、炭素原子1,000個当たり5以下であることを特徴とする請求項
3に記載のオレフィン共重合体。
【請求項5】
エチレン(a-1
)と、
下記一般式
(4)で表される含窒素置換オレフィン(b-1)とを、
P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位(bidentate)又は多座配位(multidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性のキレート性配位子を有する周期表第
10族金属の遷移金属触媒の存在下で重合することを特徴とするオレフィン共重合体の製造方法。
【化2】
[一般式(4)中、X
1
~X
4
、X
9
、X
11
及びX
12
は水素原子であり、R
1
は炭素数1~20の炭化水素基、又は炭素数3~6のトリアルキルシリル基であり、R
2
は水素原子、メチル基、又はエチル基であり、Zはメチレン基、エチレン基、又はプロピレン基である。]
【請求項6】
前記遷移金属触媒が
ニッケル又はパラジウムの遷移金属触媒であることを特徴とする請求項
5に記載のオレフィン共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン共重合体、及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、エチレン及び/又はα-オレフィンモノマー並びに含窒素置換オレフィンモノマーを共重合させた、特異な構造を有する新規なオレフィン共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィンは、樹脂材料の中で物性や成形性等の諸性質に優れ、経済性や環境問題適合性等も高く、更に、資源再利用性も備えているので、非常に汎用されかつ重要な産業資材である。
しかしながら、ポリオレフィンは、通常は、非極性であるため、他の材料との接着性や印刷適性、或はフィラー等との相溶性の物性等は十分ではなかった。
【0003】
そこで、その物性改良手段として、ポリオレフィンへの極性官能基導入が検討され、有機過酸化物を用いて極性基含有モノマーをグラフトする方法が広く行われている。しかしながら、この方法では、グラフト化反応と並行して、オレフィン系樹脂同士の分子間架橋、及びオレフィン系樹脂の分子鎖切断等が発生するため、グラフト変性物にオレフィン系樹脂の優れた物性が維持されない。
【0004】
また、極性官能基導入手段として、オレフィンと極性基含有オレフィンモノマー(極性コモノマー)を共重合させることも行われているが、オレフィンと極性基含有オレフィンモノマー(極性コモノマー)を共重合させる手段は高圧法に限定されていた(特許文献1及び特許文献2参照)。その共重合体は多くの分岐構造を有し、低弾性率かつ機械物性の低いコポリマーしか得ることができない。
【0005】
一方、従来一般に用いられているメタロセン触媒を用いた重合方法においては、オレフィンと極性コモノマーを共重合させる際に、触媒重合活性が低下し共重合し難いとされていた。一方、メタロセン触媒を用いて、極性コモノマーを等モル以上の有機アルミニウム化合物と反応させた後に(官能基のマスク化)、オレフィンと共重合させる手法が報告されている。しかしながら、この手法では、コポリマー生成と同時に多量のアルミニウム塩が析出し、この手法は、有機アルミニウム化合物のコストの点からも普及していない。
【0006】
ところで、近年において、いわゆるポストメタロセン触媒と称される、後周期遷移金属錯体触媒を用い、有機アルミニウム化合物等のマスク化剤を使用することなく、オレフィンと極性コモノマーを共重合する試みが精力的に進められている。これまでに、極性コモノマーとして、アクリル酸エステル(特許文献3~特許文献8参照)、アクリロニトリル(非特許文献1参照)、ビニルエーテル(非特許文献2参照)等が報告されている。
【0007】
オレフィン系極性共重合体の開発状況を鑑みれば、後周期遷移金属錯体触媒を用いても、α,ω-末端官能基化オレフィンは、その重合性オレフィン部位が非共役構造であるために重合性が低く、オレフィンと共重合することは困難であった。そこで、本発明者らは、後周期遷移金属錯体触媒を用いて、エチレンやα-オレフィンとα,ω-末端官能基化オレフィンの共重合体を製造することを、試みてきた。
【0008】
その結果、特定の構造を有する、新規な後周期遷移金属錯体触媒を研究開発し、その触媒性能が大幅に向上することを見いだしてきた。かかる研究成果を踏まえて、開発した触媒を用いることで、従来においては実現が困難であった、オレフィンとα,ω-末端官能基化オレフィンが共重合可能であることを見いだした。
【0009】
そして、本発明者らは、後周期遷移金属錯体触媒を用いて、エチレンやα-オレフィンとα,ω-末端官能基化オレフィンの共重合体を製造する技術を既に報告してきた(特許文献9参照)。
【0010】
すなわち、キレート性配位子を有する第5~10族の遷移金属触媒、特に、パラジウム金属にトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒の存在下に重合されたところの、エチレン及び/又は炭素数3~10のα-オレフィンと、特定のモノマー群より選ばれる極性基含有オレフィンモノマーから構成されることを特徴とする、オレフィン系極性共重合体の発明をしてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第2792982号公報
【文献】特開平3-229713号公報
【文献】特表2002-521534号公報
【文献】特開平6-184214号公報
【文献】特開2008-223011号公報
【文献】特開2010-150246号公報
【文献】特開2010-150532号公報
【文献】特開2010-202647号公報
【文献】特開2013-213121号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】K.Nozaki et al.,J.Am.Chem.Soc.,2007,129,8948-8949.
【文献】R.Jordan et al.,J.Am.Chem.Soc.,2007,129,8946-8947.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献9に記載の技術では、ポストメタロセン触媒を用いた一例を示したに過ぎず、共重合体の応用範囲を広げるためには、新規なオレフィン系極性共重合体の開発が切望されていた。
【0014】
また、これまで直接合成が困難であった共重合体に、容易に変換可能なオレフィン系極性共重合体の開発が望まれていた。例えば、容易に分解して、アミノ基を有する共重合体に変換しうる共重合体の開発が望まれていた。
【0015】
本発明の目的は、容易に分解可能な保護基をもつ、新規なオレフィン共重合体を提供することである。また、本発明の目的は、ポストメタロセン触媒を用いた、上記新規なオレフィン共重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、特定の置換基を有する含窒素置換オレフィンを用いると、ポストメタロセン触媒を用いても、エチレン及びα-オレフィンの少なくとも一つと、上記含窒素置換オレフィンを良好に共重合することができることを見出した。本発明らは、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の第1の発明は、エチレン(a-1)に由来する構造単位、及び炭素数3~20のα-オレフィン(a-2)に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する構造単位(A)と、
下記一般式(3)で表される含窒素置換オレフィン(b-1)に由来する構造単位(B)と、を含むことを特徴とするオレフィン共重合体である。
【0018】
【0019】
[一般式(3)中、X1~X12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、下記一般式(1)で表される置換基、下記一般式(2)で表される置換基、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~20の炭化水素基であり、但し、X1~X12のうち少なくともいずれかひとつは前記一般式(1)で表される置換基又は前記一般式(2)で表される置換基である。
X9及びX10、並びに、X11及びX12は、各々一体化して2価の有機基を形成してもよく、X9又はX10と、X11又はX12とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
nは、0又は正の整数を示し、nが2以上の場合には、複数存在するX5~X8は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0020】
【0021】
[一般式(1)中、R1は、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のトリクロロアルキル基、又は炭素数3~20のトリアルキルシリル基であり、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、ベンジル基、又は炭素数3~18のトリアルキルシリル基であり、Zは、炭素数1~30の2価の有機基である。]
【0022】
【0023】
[一般式(2)中、R3は、炭素数1~10の2価の有機基であり、Zは、炭素数1~30の2価の有機基である。]
【0024】
本発明の第2の発明は、前記一般式(3)で表される含窒素置換オレフィン(b-1)が、下記一般式(4)で表される構造を有することを特徴とする第1の発明に記載のオレフィン共重合体である。
【0025】
【0026】
[一般式(4)中、X1~X4、X9、X11及びX12は、それぞれ前記一般式(3)におけるX1~X4、X9、X11及びX12と同一であり、Z、R1及びR2は、それぞれ前記一般式(1)におけるZ、R1及びR2と同一である。]
【0027】
本発明の第3の発明は、前記一般式(3)で表される含窒素置換オレフィン(b-1)が、下記一般式(5)で表される構造を有する第1の発明に記載のオレフィン共重合体である。
【0028】
【0029】
[一般式(5)中、X1~X4、X9、X11及びX12は、それぞれ前記一般式(3)におけるX1~X4、X9、X11及びX12と同一であり、Z及びR3は、それぞれ前記一般式(2)におけるZ及びR3と同一である。]
【0030】
本発明の第4の発明は、前記一般式(4)又は(5)におけるZが-(CH2)p-で表され、pは1~30の整数であることを特徴とする第2又は第3の発明に記載のオレフィン共重合体である。
【0031】
本発明の第5の発明は、前記一般式(1)又は(4)におけるR1が炭素数1~15の炭化水素基であることを特徴とする第1又は2の発明に記載のオレフィン共重合体である。
【0032】
本発明の第6の発明は、前記一般式(1)又は(4)におけるR1がtert-ブチル基であることを特徴とする第1又は2の発明に記載のオレフィン共重合体である。
【0033】
本発明の第7の発明は、13C-NMRにより算出されるメチル分岐数が、炭素原子1,000個当たり50以下であることを特徴とする第1~6の発明のいずれか1に記載のオレフィン共重合体である。
【0034】
本発明の第8の発明は、前記メチル分岐数が、炭素原子1,000個当たり5以下であることを特徴とする第7の発明に記載のオレフィン共重合体である。
【0035】
本発明の第9の発明は、エチレン(a-1)及び炭素数3~20のα-オレフィン(a-2)からなる群より選ばれる少なくとも1種と、
下記一般式(3)で表される含窒素置換オレフィン(b-1)とを、
キレート性配位子を有する周期表第5~11族金属の遷移金属触媒の存在下で重合することを特徴とするオレフィン共重合体の製造方法である。
【0036】
【0037】
[一般式(3)中、X1~X12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、下記一般式(1)で表される置換基、下記一般式(2)で表される置換基、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~20の炭化水素基であり、但し、X1~X12のうち少なくともいずれかひとつは前記一般式(1)で表される置換基又は前記一般式(2)で表される置換基である。
X9及びX10、並びに、X11及びX12は、各々一体化して2価の有機基を形成してもよく、X9又はX10と、X11又はX12とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
nは、0又は正の整数を示し、nが2以上の場合には、複数存在するX5~X8は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0038】
【0039】
[一般式(1)中、R1は、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のトリクロロアルキル基、又は炭素数3~20のトリアルキルシリル基であり、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、ベンジル基、又は炭素数3~18のトリアルキルシリル基であり、Zは、炭素数1~30の2価の有機基である。]
【0040】
【0041】
[一般式(2)中、R3は、炭素数1~10の2価の有機基であり、Zは、炭素数1~30の2価の有機基である。]
【0042】
本発明の第10の発明は、前記遷移金属触媒が周期表第10族の遷移金属触媒であることを特徴とする第9の発明に記載のオレフィン共重合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、容易に分解可能な保護基をもつ、新規なオレフィン共重合体が提供される。このオレフィン共重合体は、新規なオレフィン系極性共重合体であるため、広範囲な用途に使用できる。このオレフィン共重合体は、簡易で効率の良い重合法により製造され、容易に分解可能な保護基をもつ新規なオレフィン系極性共重合体である。
【0044】
また、本発明のオレフィン共重合体の製造方法によれば、容易に分解可能な保護基をもつ新規なオレフィン共重合体を簡易に効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1(a)は、高圧ラジカル法重合プロセスにより重合されたオレフィン共重合体の分子構造のイメージ図である。
図1(b)は、金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体で長鎖分岐を有しない場合の分子構造のイメージ図である。
図1(c)は、金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体で少量の長鎖分岐を有する場合の分子構造のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下においては、本発明のオレフィン共重合体、及びその製造方法について、項目毎に具体的かつ詳細に説明する。
【0047】
<<1.オレフィン共重合体について>>
(1)オレフィン共重合体
本発明のオレフィン共重合体は、エチレン(a-1)に由来する構造単位、及び炭素数3~20のα-オレフィン(a-2)に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する構造単位(A)と、
下記一般式(3)で表される含窒素置換オレフィン(b-1)に由来する構造単位(B)と、を有する。
【0048】
【0049】
[一般式(3)中、X1~X12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、下記一般式(1)で表される置換基、下記一般式(2)で表される置換基、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~20の炭化水素基であり、但し、X1~X12のうち少なくともいずれかひとつは前記一般式(1)で表される置換基又は前記一般式(2)で表される置換基である。
X9及びX10、並びに、X11及びX12は、各々一体化して2価の有機基を形成してもよく、X9又はX10と、X11又はX12とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
nは、0又は正の整数を示し、nが2以上の場合には、複数存在するX5~X8は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0050】
【0051】
[一般式(1)中、R1は、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のトリクロロアルキル基、又は炭素数3~20のトリアルキルシリル基であり、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、ベンジル基、又は炭素数3~18のトリアルキルシリル基であり、Zは、炭素数1~30の2価の有機基である。]
【0052】
【0053】
[一般式(2)中、R3は、炭素数1~10の2価の有機基であり、Zは、炭素数1~30の2価の有機基である。]
【0054】
(2)構造単位(A)について
(2-1)構造単位(A)
本発明のオレフィン共重合体は、エチレン(a-1)に由来する構造単位、及び炭素数3~20のα-オレフィン(a-2)に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する構造単位(A)を有することを特徴とする。
【0055】
構造単位(A)は、エチレン(a-1)に由来する構造単位、及びα-オレフィン(a-2)に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する限り特に限定されない。構造単位(A)は、好ましくは、エチレン(a-1)に由来する構造単位を必須で含み、必要に応じてα-オレフィン(a-2)に由来する構造単位をさらに含んでもよい。
【0056】
エチレン(a-1)又はα-オレフィン(a-2)は単独で用いてもよいが、2種類以上を用いてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においてならば、構造単位(A)は、その他の極性基を含有しないモノマーに由来する構造単位をさらに含有してもよい。
【0057】
エチレン(a-1)に由来する構造単位及びα-オレフィン(a-2)に由来する構造単位の含有割合は、特に限定されないが、オレフィン共重合体の全体を100mol%とした場合に、通常であれば合計80~99.999mol%、好ましくは合計85~99.99mol%、更に好ましくは合計90~99.98mol%、特に好ましくは合計95~99.97mol%の範囲から選択される。
【0058】
(2-2)α-オレフィン(a-2)
本発明に関わるα-オレフィン(a-2)は、構造式:CH2=CHR18で表される、炭素数3~20のα-オレフィンである(R18は、炭素数1~18の炭化水素基であり、直鎖構造であっても分岐を有していてもよい)。
【0059】
α-オレフィン(a-2)は、より好ましくは、炭素数3~12のα-オレフィンであり、さらに好ましくは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン及び4-メチル-1-ペンテンから選択されるα-オレフィンであり、特に好ましくは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンから選択されるα-オレフィンである。重合に供するα-オレフィン(a-2)は単独でもよいし、2種以上であっても構わない。
【0060】
(2-3)その他の極性基を含有しないモノマー
本発明の構造単位(A)として重合に供してもよいその他の極性基を含有しないモノマーは、分子構造中に炭素-炭素二重結合を1つ以上有するモノマーであり、かつ、分子を構成する元素が炭素と水素のみであれば限定されず、例えば、ジエン、トリエン、芳香族ビニルモノマー、環状オレフィン等が挙げられ、好ましくは、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、シクロヘキセン、ビニルノルボルネン、ノルボルネンである。
【0061】
(3)構造単位(B)について
(3-1)構造単位(B)
本発明のオレフィン共重合体は、下記一般式(3)で表される含窒素置換オレフィン(b-1)に由来する構造単位(B)有することを特徴とする。
【0062】
【0063】
[一般式(3)中、X1~X12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、下記一般式(1)で表される置換基、下記一般式(2)で表される置換基、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~20の炭化水素基であり、但し、X1~X12のうち少なくともいずれかひとつは前記一般式(1)で表される置換基又は前記一般式(2)で表される置換基である。
X9及びX10、並びに、X11及びX12は、各々一体化して2価の有機基を形成してもよく、X9又はX10と、X11又はX12とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
nは、0又は正の整数を示し、nが2以上の場合には、複数存在するX5~X8は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0064】
【0065】
[一般式(1)中、R1は、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のトリクロロアルキル基、又は炭素数3~20のトリアルキルシリル基であり、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、ベンジル基、又は炭素数3~18のトリアルキルシリル基であり、Zは、炭素数1~30の2価の有機基である。]
【0066】
【化14】
[一般式(2)中、R
3は、炭素数1~10の2価の有機基であり、Zは、炭素数1~30の2価の有機基である。]
【0067】
一般式(3)のX1~X12におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0068】
一般式(3)のX1~X12における炭素数1~20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、n-エイコシル基、フェニル基、ベンジル基、o-トルイル基、m-トルイル基、p-トルイル基等が挙げられる。中でも、後処理の観点から、メチル基が好ましい。
【0069】
一般式(1)のR1における炭素数1~20の炭化水素基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、n-エイコシル基、フェニル基、ベンジル基、o-トルイル基、m-トルイル基、p-トルイル基等を例示することができる。中でも、分解後の副生物の処理の点から炭素数1~15の炭化水素基が好ましく、副生物が気体であり、その処理の簡便さの点からはtert-ブチル基が好ましい。
【0070】
炭素数1~20のトリクロロアルキル基としては、特に限定されないが、トリクロロメチル基、トリクロロメチル基等を例示することができる。
【0071】
炭素数3~20のトリアルキルシリル基としては、特に限定されないが、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等を例示することができる。
【0072】
一般式(1)のR2における炭素数3~18のトリアルキルシリル基としては、特に限定されないが、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等を例示することができる。
【0073】
一般式(1)のZにおける炭素数1~30の2価の有機基としては、特に限定されないが、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニレン基〔o,m又はp-フェニレン基〕、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、ナフチレン基等)等を例示することができる。
【0074】
一般式(2)のR3における炭素数1~10の2価の有機基としては、特に限定されないが、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等)、シクロアルキレン基(例えば、シクロへキシレン基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニレン基〔o,m又はp-フェニレン基〕、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、ナフチレン基等)が例示される。
【0075】
一般式(2)のZにおける炭素数1~30の2価の有機基としては、上記一般式(1)のZにおける炭素数1~30の2価の有機基と同様のものが例示される。
【0076】
含窒素置換オレフィン(b-1)は、下記一般式(4)で表される構造を有することが好ましい。
【0077】
【0078】
[一般式(4)中、X1~X4、X9、X11及びX12は、それぞれ前記一般式(3)におけるX1~X4、X9、X11及びX12と同一であり、Z、R1及びR2は、それぞれ前記一般式(1)におけるZ、R1及びR2と同一である。]
【0079】
一般式(4)のZにおける炭素数1~30の2価の有機基としては、特に限定されないが、-(CH2)p-、-COO(CH2)p-、-OCO(CH2)m-、-O(CH2)m-又は-CO(CH2)m-が好ましい(但し、pは1~30の整数であり、mは1~30の整数である。)。
【0080】
Zにおける2価の有機基として、更に好ましい態様としては、-(CH2)p-、又は-O(CH2)m-である(但し、pは1~30の整数であり、mは1~30の整数である。)。
Zにおける2価の有機基として、特に好ましい態様としては、-(CH2)p-である(但し、pは1~30の整数である。)。
Zにおける2価の有機基として、最適な態様としては、-CH2-である。
【0081】
一般式(4)におけるR1は、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のトリクロロアルキル基、炭素数3~20のトリアルキルシリル基である。
【0082】
一般式(4)のR1における炭素数1~20の炭化水素基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、n-エイコシル基、フェニル基、ベンジル基、9-フルオレニルメチル基、アリル基等を例示することができる。
【0083】
炭素数1~20のトリクロロアルキル基としては、特に限定されないが、トリクロロメチル基、トリクロロメチル基等を例示することができる。
【0084】
炭素数3~20のトリアルキルシリル基としては、特に限定されないが、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等を例示することができる。
【0085】
一般式(4)のR1としては、分解後の副生物の処理の点から炭素数1~15の炭化水素基が好ましく、副生物が気体であり、その処理の簡便さの点からはtert-ブチル基が好ましい。
【0086】
一般式(4)におけるR2は、水素原子、メチル基、エチル基、ベンジル基、又は炭素数3~18のトリアルキルシリル基である。
【0087】
一般式(4)のR2における炭素数3~18のトリアルキルシリル基としては、特に限定されないが、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等を例示することができる。
【0088】
また、含窒素置換オレフィン(b-1)は、下記一般式(5)で表される構造を有することも好ましい。
【0089】
【0090】
[一般式(5)中、X1~X4、X9、X11及びX12は、それぞれ前記一般式(3)におけるX1~X4、X9、X11及びX12と同一であり、Z及びR3は、それぞれ前記一般式(2)におけるZ及びR3と同一である。]
【0091】
一般式(5)のZにおける炭素数1~30の2価の有機基としては、特に限定されないが、-(CH2)p-、-COO(CH2)p-、-OCO(CH2)m-、-O(CH2)m-又は-CO(CH2)m-が好ましい(但し、pは1~30の整数であり、mは1~30の整数である。)。
【0092】
Zにおける2価の有機基として、更に好ましい態様としては、-(CH2)p-、又は-O(CH2)m-である(但し、pは1~30の整数であり、mは1~30の整数である。)。
Zにおける2価の有機基として、特に好ましい態様としては、-(CH2)p-である(但し、pは1~30の整数である。)。
Zにおける2価の有機基として、最適な態様としては、-CH2-である。
【0093】
一般式(5)のR3における炭素数1~10の2価の有機基としては、特に限定されないが、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等)、シクロアルキレン基(例えば、シクロへキシレン基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニレン基〔o,m又はp-フェニレン基〕、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、ナフチレン基等)が例示される。
【0094】
(3-2)含窒素置換オレフィン(b-1)の具体例
含窒素置換オレフィン(b-1)の具体例を以下に記載する。式中、tBuとはtert-ブチル基を、Meとはメチル基をそれぞれ表す。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
(4)オレフィン共重合体の構造単位
本発明のオレフィン共重合体の構造単位と構造単位量について説明する。
エチレン(a-1)、炭素数3~20のα-オレフィン(a-2)、含窒素置換オレフィン(b-1)の、それぞれ1分子に由来する構造を、オレフィン共重合体中の1構造単位と定義する。そして、オレフィン共重合体中の各構造単位の比率をmol%で表したものが構造単位量である。
【0099】
(5)含窒素置換オレフィン(b-1)に由来する構造単位(B)の構造単位量
含窒素置換オレフィン(b-1)に由来する構造単位(B)の割合は、特に限定されないが、オレフィン共重合体の全体を100mol%とした場合に、通常20~0.001mol%の範囲、好ましくは15~0.01mol%の範囲、より好ましくは10~0.02mol%の範囲、さらに好ましくは5~0.03mol%の範囲から選択される。この範囲より構造単位(B)の構造単位量が少なければ、極性の高い異種材料との接着性が充分ではなくなるおそれがあり、この範囲より構造単位(B)の構造単位量が多ければ充分な機械物性が得られないおそれがある。
【0100】
(6)含窒素置換オレフィン(b-1)に由来する構造単位量の測定方法
本発明のオレフィン共重合体中の構造単位(B)の構造単位量は13C-NMRスペクトルを用いて求められる。13C-NMRスペクトルは以下の方法によって測定する。
【0101】
試料200~250mgをo-ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C6D5Br)=4/1(体積比)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れて窒素置換した後封管し、130℃のブロックヒーターで加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定に供する。NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400M型NMR装置を用いて120℃で行う。13C-NMRはパルス角90°、パルス間隔51.5秒、積算回数512回とし、逆ゲートデカップリング法で測定する。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチル炭素のピークを1.98ppmとして設定し、他の炭素によるピークの化学シフトはこれを基準とする。
【0102】
また、後述するオレフィン共重合体におけるメチル分岐数は、13C-NMRにより求めることができる。
【0103】
(7)オレフィン共重合体の分子構造
本発明のオレフィン共重合体は、エチレン(a-1)に由来する構造単位、及び炭素数3~20のα-オレフィン(a-2)に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する構造単位(A)と、含窒素置換オレフィン(b-1)に由来する構造単位(B)と、を有するランダム共重合体であることが好ましい。
【0104】
本発明のオレフィン共重合体の分子構造例を下記段落に示す。ランダム共重合体とは、下記に示した分子構造例の構造単位(A)と構造単位(B)の、ある任意の分子鎖中の位置においてそれぞれの構造単位を見出す確率が、その隣接する構造単位の種類と無関係な共重合体である。
【0105】
また、本発明のオレフィン共重合体の分子鎖末端は、エチレン(a-1)又は炭素数3~20のα-オレフィン(a-2)であってもよく、含窒素置換オレフィン(b-1)であってもよい。下記のように、本発明のオレフィン共重合体の分子構造例は、エチレン(a-1)又は炭素数3~20のα-オレフィン(a-2)と含窒素置換オレフィン(b-1)とが、ランダム共重合体を形成している。
【0106】
【0107】
なお、グラフト変性によるオレフィン共重合体の分子構造例も参考に掲載すると、構造単位(A)が共重合されたオレフィン共重合体の一部が、構造単位(B)でグラフト変性されている。
【0108】
【0109】
本発明のオレフィン共重合体は、遷移金属触媒の存在下で製造されることが好ましく、その分子構造は直鎖状であることが好ましい。高圧ラジカル重合法プロセスにより重合されたオレフィン共重合体の分子構造のイメージ図を
図1(a)に、金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体の分子構造のイメージ図を
図1(b)及び
図1(c)に、それぞれ例示した様に、製造方法によってその分子構造は異なる。この分子構造の違いは製造方法を選択する事によって制御が可能であるが、例えば、特開2010-150532号公報に記載されている様に、回転式レオメータで測定した複素弾性率によっても、その分子構造を推定する事ができる。
【0110】
より具体的には、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G
*=0.1MPaにおける位相角δが40度以上である場合、その分子構造は長鎖分岐を全く含まない構造(
図1(b))か、機械的強度に影響を与えない程度の少量の長鎖分岐を含む構造((
図1(c))を示す。
【0111】
また、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G
*=0.1MPaにおける位相角δが40度より低い場合、その分子構造は
図1(a)に示されるような、長鎖分岐を過多に含む構造を示し、機械的強度が劣るものとなる。
【0112】
回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δは、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)と長鎖分岐の両方の影響を受けるが、Mw/Mn≦4、より好ましくはMw/Mn≦3のものに限れば長鎖分岐の量の指標になり、長鎖分岐が多いほどδ(G*=0.1MPa)値は小さくなる。なお、Mw/Mnが1.5以上であれば、長鎖分岐をもたない場合でもδ(G*=0.1MPa)値が75度を上回ることはない。
【0113】
(8)オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)
本発明のオレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常1,000~2,000,000、好ましくは10,000~1,500,000、更に好ましくは20,000~1,000,000、より好ましくは31,000~800,000、よりさらに好ましくは33,000~800,000の範囲である。Mwが1,000未満では機械的強度や耐衝撃性等の物性が充分ではなく、極性の高い異種材料との接着性も劣るものとなるおそれがある。Mwが2,000,000を超えると溶融粘度が非常に高くなり、成形加工が困難となるおそれがある。
【0114】
本発明のオレフィン共重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、通常1.5~3.5、好ましくは1.6~3.3、更に好ましくは1.7~3.0の範囲である。Mw/Mnが1.5未満では、各種加工性が充分でなくなる傾向があり、一方、Mw/Mnが3.5を超えると、接着性等の性能発現が充分でなくなる傾向がある。
【0115】
本発明のオレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、GPCによって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比(Mw/Mn)を算出することによって求められる。
【0116】
(9)オレフィン共重合体の融点
本発明のオレフィン共重合体の融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク温度によって示される。最大ピーク温度とは、DSC測定において、縦軸に熱流(mW)、横軸に温度(℃)をとった際に得られる吸熱曲線に複数ピークが示された場合、そのうちベースラインからの高さが最大であるピークの温度を示し、ピークが1つだった場合には、そのピークの温度を示している。
【0117】
本発明のオレフィン共重合体の融点は50℃~140℃であることが好ましく、60℃~138℃であることが更に好ましく、70℃~135℃であることが最も好ましい。融点がこの範囲より低ければ耐熱性が充分ではなく、融点がこの範囲より高い場合は接着性が劣るものとなる。
【0118】
(10)オレフィン共重合体の13C-NMRにより算出されるメチル分岐数
本発明のオレフィン共重合体は、13C-NMRにより算出されるメチル分岐数が、炭素原子1,000個当たり50以下であることが好ましい。このうちで特に好ましくは、メチル分岐数が、炭素原子1,000個当たり5以下である。メチル分岐数がこの数値を満たすと弾性率が高く、成形体の機械強度も高くなる。
【0119】
このメチル分岐数は、使用する遷移金属触媒の選択や、重合温度の調節で制御することが可能である。本発明のオレフィン共重合体のメチル分岐数を低下させる具体的手段として、重合温度の低下が有効である。また、メチル分岐数を低下させるには、例えば、これらの因子を調節して、目的とするコポリマー領域に制御することが求められる。
【0120】
なお、メチル分岐数は、前記「(6)含窒素置換オレフィン(b-1)に由来する構造単位量の測定方法」の項目に記載した13C-NMR測定条件で得られたスペクトルを用いて算出する。
【0121】
13C-NMRスペクトルの20.0~19.8ppmのメチル炭素と、33.2~33.0ppmのメチン炭素と、37.5~37.3ppmのメチレン炭素と、による信号の積分強度の総和を4で割った値I(B1)を用いて、トータル1,000個の炭素原子(トータル1000C)あたりのメチル分岐数を、以下の式を用いて算出する。
【0122】
メチル分岐数(個/トータル1000C)=I(B1)×1000/I(トータル)
【0123】
ここで、I(B1)、I(トータル)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I(B1)=(I20.0~19.8+I33.2~33.0+I37.5~37.3)/4
I(トータル)=I180.0~135.0+I120.0~2.0
なお、Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI180.0~135.0は180.0ppmと135.0ppmの間に検出したシグナルの積分強度を示す。
【0124】
<<2.オレフィン共重合体の製造方法について>>
(1)オレフィン共重合体の製造方法
本発明のオレフィン共重合体の製造方法は、エチレン(a-1)、及び炭素数3~20のα-オレフィン(a-2)からなる群より選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(3)で表される含窒素置換オレフィン(b-1)とをキレート性配位子を有する周期表第5~11族金属の遷移金属触媒の存在下で共重合させることを特徴とする。
【0125】
【0126】
[一般式(3)中、X1~X12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、下記一般式(1)で表される置換基、下記一般式(2)で表される置換基、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~20の炭化水素基であり、但し、X1~X12のうち少なくともいずれかひとつは前記一般式(1)で表される置換基又は前記一般式(2)で表される置換基である。
X9及びX10、並びに、X11及びX12は、各々一体化して2価の有機基を形成してもよく、X9又はX10と、X11又はX12とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
nは、0又は正の整数を示し、nが2以上の場合には、複数存在するX5~X8は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0127】
【0128】
[一般式(1)中、R1は、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のトリクロロアルキル基、又は炭素数3~20のトリアルキルシリル基であり、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、ベンジル基、又は炭素数3~18のトリアルキルシリル基であり、Zは、炭素数1~30の2価の有機基である。]
【0129】
【0130】
[一般式(2)中、R3は、炭素数1~10の2価の有機基であり、Zは、炭素数1~30の2価の有機基である。]
【0131】
一般式(1)~(3)におけるX1~X12、n、R1~R3及びZは、<<1.オレフィン共重合体について>>の項目で説明したX1~X12、n、R1~R3及びZの説明をそのまま適用し、その記載は省略する。
【0132】
(2)オレフィン共重合体の重合触媒
本発明のオレフィン共重合体の製造方法では、キレート性配位子を有する周期表第5~11族金属の遷移金属触媒を用いる。
【0133】
好ましい遷移金属の具体例として、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子、マンガン原子、鉄原子、白金原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子、銅原子等が挙げられる。
【0134】
これらの中で好ましくは、バナジウム原子、鉄原子、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子、ロジウム原子であり、特に好ましくは、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子である。最適なものは、周期表第10族の遷移金属である白金原子、ニッケル原子、パラジウム原子である。これらの金属は、単一であっても複数を併用してもよい。
【0135】
さらに、遷移金属は、ニッケル(II)、パラジウム(II)、白金(II)、コバルト(II)及びロジウム(III)からなる群から選択される元素であることが好ましく、周期表第10族の元素であることが重合活性の観点からさらに好ましく、価格等の観点から、ニッケル(II)が特に好ましい。
【0136】
キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位(bidentate)又は多座配位(multidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Brookhartらによる総説に、その構造が例示されている(Chem.Rev.,2000,100,1169)。
【0137】
好ましいキレート性配位子としては、二座アニオン性P,O配位子及び二座アニオン性N,O配位子が挙げられる。二座アニオン性P,O配位子として例えば、リンスルホン酸、リンカルボン酸、リンフェノール、リンエノラートが挙げられる。二座アニオン性N,O配位子として例えば、サリチルアルドイミナ-トやピリジンカルボン酸が挙げられ、他に、ジイミン配位子、ジフェノキサイド配位子、ジアミド配位子が挙げられる。
【0138】
キレート性配位子から得られる金属錯体の構造は、置換基を有してもよいアリールホスフィン化合物、置換基を有してもよいアリールアルシン化合物又は置換基を有してもよいアリールアンチモン化合物が配位した下記構造式(α)及び/又は構造式(β)で表される。
【0139】
【0140】
【0141】
構造式(α)、(β)において、Mは、元素の周期表の第5~11族のいずれかに属する遷移金属、即ち前述したような種々の遷移金属を表す。X’1は、酸素原子、硫黄原子、-SO3-、又は-CO2-を表す。Y1は、炭素原子又はケイ素原子を表す。tは、0又は1を表す。E1は、リン原子、砒素原子又はアンチモン原子を表す。r3及びr4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。r5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。r6及びr7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、Or2、CO2r2、CO2M’、C(O)N(r1)2、C(O)r2、Sr2、SO2r2、SOr2、OSO2r2、P(O)(Or2)2-y(r1)y、CN、NHr2、N(r2)2、Si(Or1)3-x(r1)x、OSi(Or1)3-x(r1)x、NO2、SO3M’、PO3M’2、P(O)(Or2)2M’又はエポキシ含有基を表す。M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは、0から3までの整数を表し、yは、0から2までの整数を表す。なお、r6とr7が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。この時、環員数は5~8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。r1は、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。r2は、炭素数1~20の炭化水素基を表す。L1は、Mに配位したリガンドを表す。また、r3とL1が互いに結合して環を形成してもよい。
【0142】
キレート性配位子から得られる金属錯体は、より好ましくは、下記構造式(γ)で表される遷移金属錯体である。
【0143】
【0144】
構造式(γ)において、Mは、元素の周期表の第5~11族のいずれかに属する遷移金属、即ち前述の遷移金属を表す。X’1は、酸素原子、硫黄原子、-SO3-、又は-CO2-を表す。Y1は、炭素原子又はケイ素原子を表す。tは、0又は1を表す。E1は、リン原子、砒素原子又はアンチモン原子を表す。r3及びr4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。r5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。r8~r11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、Or2、CO2r2、CO2M’、C(O)N(r1)2、C(O)r2、Sr2、SO2r2、SOr2、OSO2r2、P(O)(Or2)2-y(r1)y、CN、NHr2、N(r2)2、Si(Or1)3-x(r1)x、OSi(Or1)3-x(r1)x、NO2、SO3M’、PO3M’2、P(O)(Or2)2M’又はエポキシ含有基を表す。M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは、0から3までの整数を表し、yは、0から2までの整数を表す。なお、r8~r11から適宜選択された複数の基が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。この時、環員数は5~8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。r1は、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。r2は、炭素数1~20の炭化水素基を表す。L1は、Mに配位したリガンドを表す。また、r3とL1が互いに結合して環を形成してもよい。
【0145】
ここで、キレート性配位子を有する周期表第5~11族遷移金属化合物の触媒としては、代表的に、いわゆる、Shop系及びDrent系と称される触媒が知られている。
Shop系触媒は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがニッケル金属に配位した触媒である(例えば、国際公開第2010/050256号を参照)。また、Drent系は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがパラジウム金属に配位した触媒である(例えば、特開2010-202647号公報を参照)。
【0146】
(3)有機金属化合物
本発明のオレフィン共重合体の製造において、上述の含窒素置換オレフィン(b-1)の少なくとも1種と、少量の有機金属化合物とを接触させた後、前記の遷移金属触媒の存在下で、エチレン(a-1)及び/又は炭素数3~20のα-オレフィン(a-2)と、含窒素置換オレフィン(b-1)とを共重合させることにより重合活性をより高められる。
【0147】
有機金属化合物は、置換基を有してもよい炭化水素基を含んだ有機金属化合物であり、下記構造式(H)で示すことができる。
R30
n’M30X30
m’-n’ 構造式(H)
(構造式(H)中、R30は、炭素原子数1~12の置換基を有してもよい、炭化水素基を示し、M30は、周期表第1族、第2族、第12族及び第13族からなる群から選択される金属、X30は、ハロゲン原子または水素原子を示し、m’は、M30の価数、n’は、1~m’である。)
【0148】
上記構造式(H)で示される有機金属化合物としては、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-デシルアルミニウム等のアルキルアルミニウム類、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド等のアルキルアルミニウムハライド類が挙げられ、好ましくはトリアルキルアルミニウムが選択される。
【0149】
より好ましくは炭素数が4以上の炭化水素基を有するトリアルキルアルミニウムが、さらに好ましくは炭素数が6以上の炭化水素基を有するトリアルキルアルミニウムが、特に好ましくはトリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-デシルアルミニウムが選択され、トリ-n-オクチルアルミニウムが最も好適に使用される。
【0150】
有機金属化合物は、重合活性やコストの観点から、極性基含有コモノマー(含窒素置換オレフィン(b-1)に相当)に対するモル比が、10-5~0.9となる量を接触させることが好ましく、10-4~0.2となる量を接触させることがより好ましく、10-4~0.1となる量を接触させることがさらに好ましい。
【0151】
(4)アルミニウム(Al)の残留量
本発明のオレフィン共重合体の1g中に残留するアルミニウム(Al)量(以下、単に「Al量」と称することがある。)は、100,000μgAl/g以下が好ましく、70,000μgAl/g以下がより好ましく、20,000μgAl/g以下が更に好ましく、10,000μgAl/g以下がより更に好ましく、5,000μgAl/g以下がことさらに好ましく、1,000μgAl/g以下が特に好ましく、500μgAl/g以下が最も好ましい。
【0152】
Al量がこれよりも多い場合、オレフィン共重合体の機械物性の低下、重合生成物の変色や劣化の促進等が起こりやすい。Al量は可能な範囲で少ない方が良く、例えば、1μgAl/g程の極少量であってもよいし、0μgAl/gであっても構わない。なお、μgAl/gは極性基含有オレフィン共重合体1g中に含まれるアルミニウム(Al)の量をμg単位で表していることを意味する。
【0153】
(5)アルミニウム(Al)量の算出
Al量は、重合に供したアルキルアルミニウム中に含有されるアルミニウム量を、得られたオレフィン共重合体の収量で除した値として算出することができる。
【0154】
また、Al量は、アルキルアルミニウムの重合仕込み量から算出しているが、蛍光X線分析や誘導結合プラズマ発光(ICP)分析により測定してもよい。蛍光X線分析やICP分析を用いる場合は、例えば、以下の方法によって測定することができる。
【0155】
(5-1)蛍光X線分析
測定試料を3~10g秤量し、加熱プレス機で加熱加圧成型して直径45mmの平板状サンプルを作製する。測定は平板状サンプルの中心部直径30mmの部分について行い、理学電気工業社製の走査型蛍光X線分析装置「ZSX100e」(Rh管球4.0kW)を用いて、以下の条件で測定する。
【0156】
・X線出力:50kV-50mA
・分光結晶:PET(ペンタエリトリトール)
・検出器:PC(プロポーショナルカウンター)
・検出線:Al-Kα線
【0157】
アルミニウム含有量は、予め作成した検量線と上記条件で測定した結果から求める事が出来る。検量線は複数のポリエチレン樹脂のアルミニウム含有量をICP分析にて測定し、それらポリエチレン樹脂を上記の条件でさらに蛍光X線分析する事で作成する事ができる。
【0158】
(5-2)誘導結合プラズマ発光(ICP)分析
測定試料、特級硝酸3ml、及び過酸化水素水(過酸化水素含量30重量%)1mlをテフロン(登録商標)製容器に入れ、マイクロウェーブ分解装置(マイルストーンゼネラル社製 MLS-1200MEGA)を用い、最大500Wで加熱分解操作を実施し、測定試料を溶液化する。溶液化した測定試料をICP発光分光分析装置(サーモジャーレルアッシュ社製 IRIS-AP)に供することによりアルミニウム含有量が測定できる。アルミニウム含有量の定量はアルミニウム元素濃度が既知の標準液を用いて作成した検量線を用いて行う。
【0159】
(6)オレフィン共重合体の重合方法
本発明のオレフィン共重合体の重合方法は限定されない。媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合等が好ましく用いられる。また、重合形式としては、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。また、リビング重合であってもよいし、連鎖移動を併発しながら重合を行ってもよい。更に、いわゆるchain shuttling agent(CSA)を併用し、chain shuttling反応や、coordinative chain transfer polymerization(CCTP)を行ってもよい。具体的な製造プロセス及び条件については、例えば、特開2010-260913号公報、特開2010-202647号公報を参照することができる。
【0160】
<<3.添加剤について>>
本発明のオレフィン共重合体には、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、架橋剤、発泡剤、核剤、難燃剤、導電材、充填材等の添加剤を配合してもよい。
【0161】
<<4.本発明のオレフィン共重合体の用途について>>
(1)接着材
本発明のオレフィン共重合体は、特定の分子構造及び樹脂物性を有することで、他の基材との高い接着性を発現し、工業的に有用な積層体の製造を可能にする。特に、各種基材との接着性能は、上述のオレフィン共重合体において、オレフィン共重合体中の含窒素置換オレフィン(b-1)に由来する構造単位量が、通常20~0.001mol%の範囲、好ましくは15~0.01mol%の範囲、より好ましくは10~0.02mol%の範囲、さらに好ましくは5~0.03mol%の範囲であると、十分に発現する。
【0162】
(2)積層体
(2-1)積層体の材料
本発明のオレフィン共重合体は、積層体に用いることができる。具体的には、積層体は、本発明のオレフィン共重合体からなる層と基材層とを含む積層体である。
【0163】
上記基材層中の基材の具体例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のビニル系重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、芳香族ポリエステル類等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、接着性フッ素樹脂、セロハン等セルロース系ポリマーのようなフィルム形成能を有する熱可塑性樹脂フィルム又はシート(及びこれらの延伸物、印刷物)、アルミニウム、鉄、銅、又はこれらを主成分とする合金等の金属箔又は金属板、シリカ蒸着プラスチックフィルム、アルミナ蒸着プラスチックフィルム等の無機酸化物の蒸着フィルム、金、銀、アルミニウム等の金属、又はこれら金属の酸化物以外の化合物等の蒸着フィルム、上質紙、クラフト紙、板紙、グラシン紙、合成紙等の紙類、セロファン、織布、不織布等を挙げることができる。
【0164】
基材層中の基材は、用途や被包装物の種類により適宜選択することができる。例えば、被包装物が腐敗し易い食品である場合には、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリエステルの如く、透明性、剛性、ガス透過抵抗性の優れた樹脂を用いることができる。また、被包装物が菓子或いは繊維等である場合には、透明性、剛性、水透過抵抗性の良好なポリプロピレン等を用いることが好ましい。自動車等の燃料タンクや、燃料が通過するチューブ、ホース、パイプ等に適応させる場合には、EVOH、ポリアミド類、フッ素樹脂のような燃料透過防止性能の優れた樹脂を用いる事が出来る。
【0165】
積層体は、バリア層をさらに含んでもよい。バリア層は、バリア性樹脂を含有する。
バリア性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、EVOH、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、延伸ポリプロピレン(OPP)、延伸ポリエステル(OPET)、延伸ポリアミド、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム等の金属、無機酸化物の蒸着フィルム、アルミ蒸着等の金属蒸着フィルム、金属箔等が挙げられる。
【0166】
(2-2)積層体の用途
積層体は、例えば、食品の容器として好適に使用される。食品の具体例としては、ポテトチップ等のスナック菓子、ビスケット、煎餅、チョコレート等の菓子類、粉スープ等の粉末調味料、削り節や薫製等の食品等が挙げられる。
【0167】
また、容器は、例えば上記積層体のエチレン系共重合体層面同士を向かい合わせ、その少なくとも一部をヒートシールすることにより形成することができる。具体的には、例えば、積層体は、水物包装、袋、液体スープ包袋、液体紙器、ラミ原反、特殊形状液体包装袋(スタンディングパウチ等)、規格袋、重袋、セミ重袋、ラップフィルム、砂糖袋、油物包装袋、食品包装用等の各種包装容器、輸液バック等に好適に使用される。
【0168】
(2-3)積層体の製造
積層体の加工方法としては、通常のプレス成形、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、高速インフレーション成形、フラットダイ成形(T-ダイ成形)、水冷インフレーション成形等の押出成形、押出ラミネート加工、サンドラミネート加工、ドライラミネート加工等のラミネート加工法、ブロー成形、圧空成形、射出成形、回転成形等、従来公知の方法が挙げられる。
【0169】
(2-4)ラミネート積層体
ラミネート積層体とは、押出ラミネート加工、サンドラミネート加工、ドライラミネート加工等、公知のラミネート加工法で製造する事が出来る積層体であり、該ラミネート積層体は本発明のオレフィン共重合体を含有してなるラミネート材料と、少なくとも1層以上の基材層とをラミネート加工することで製造する事ができる積層体である。本発明におけるラミネート材料とは、各種公知のラミネート加工法に供する事が可能な本発明のオレフィン共重合体を含む樹脂材料の事である。
【0170】
押出ラミネート加工は、T-ダイより押出した溶融樹脂膜を基材上に連続的に被覆・圧着する方法で、被覆と接着を同時に行う成形加工法である。また、サンドラミネート加工は、紙と積層するフィルムの間に溶融した樹脂を流し込んで、この溶融した樹脂が接着剤のような働きをして接着・積層する方法である。ドライラミネート加工は、基材と積層するフィルムを貼合する接着剤及び/又は接着剤の塗布ロール付近の雰囲気湿度を除湿するか、前記接着剤及び/又は接着剤の塗布ロールの温度を温熱するか、フィルムシートの貼合面を乾燥させる方法である。
【0171】
サンドラミネート加工、ドライラミネート加工においては、本発明に用いる基材の、本発明のオレフィン共重合体を含む層が形成される側で、基材と本発明のオレフィン共重合体を含む層との間に、バリア性を向上させるため、上記アルミ箔、ポリエステル系フィルム、各種バリア性フィルム等を積層させることが容易である。本発明に関わるラミネート用材料と積層する基材層中の基材としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
【0172】
(3)押出成形品
本発明のオレフィン共重合体は、押出成形品に用いることができる。ここで、押出成形品とは、本発明のオレフィン共重合体を押出成形によって成形した押出成形品である。本発明に関わる押出成形品は、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、高速インフレーション成形、水冷インフレーション成形といった各種インフレーション成形、フラットダイ成形、異形押出成形、管状品成形、カレンダー成形等、公知の押出成形によって製造する事ができる。
【0173】
また、押出成形によって得られた押出成形品が固化しきらない状態で、金型等に挟み込んだり、変形を加えたりといった、各種公知の方法によってさらに賦形してもかまわない。さらには、得られた押出成形品に曲げ、切削、再加熱後に賦形する等、各種公知の方法によって後加工を加えても構わない。
【0174】
(4)多層共押出成形品
本発明のオレフィン共重合体は、多層共押出成形品に用いることができる。ここで、多層共押出成形品とは、公知の多層共押出成形によって成形する事が可能な多層共押出成形品であり、本発明のオレフィン共重合体を含有してなる層を少なくとも含む多層共押出成形品である。
また、多層共押出成形品とは、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、種々の賦形方法によって成形することにより製造する事が可能な、多層構造を持った成形品の事である。
【0175】
多層共押出成形品の製造方法としては、多層空冷インフレーション成形、多層空冷2段冷却インフレーション成形、多層高速インフレーション成形、多層水冷インフレーション成形、多層フラットダイ成形(T-ダイ成形)、多層管状品成形、多層コルゲートパイプ成形等、公知の多層共押出成形を挙げる事ができる。
【0176】
多層共押出成形品における基材層中の基材としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。多層共押出成形品は、本発明のオレフィン共重合体を含む層と適当な基材とを、適当な成形方法によって加工することにより、多層フィルム、多層シート、多層パイプ、多層ホース、多層チューブ、多層コルゲートパイプ等の公知の多層共押出成形品として製造する事ができる。
【0177】
また、多層共押出成形によって得られた多層共押出成形品が固化しきらない状態で、金型等に挟み込んだり、変形を加えたりといった、各種公知の方法によってさらに賦形してもかまわない。さらには、得られた多層共押出成形品に曲げ、切削、再加熱後に賦形する等、各種公知の方法によって後加工を加えても構わない。
【0178】
(5)多層フィルム
本発明のオレフィン共重合体は、多層フィルムに用いることができる。ここで、多層フィルムとは、公知の多層フィルム成形法によって製造する事が可能な多層フィルムであり、本発明のオレフィン共重合体を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層フィルムである。多層フィルムの製造方法としては、多層空冷インフレーション成形、多層空冷2段冷却インフレーション成形、多層高速インフレーション成形、多層水冷インフレーション成形、多層フラットダイ成形(T-ダイ成形)等、公知の多層フィルム成形法を用いる事ができる。多層フィルムの基材層中の基材としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
【0179】
(6)多層ブロー成形品
本発明のオレフィン共重合体は、多層ブロー成形品に用いることができる。ここで、多層ブロー成形品とは、公知の多層ブロー成形によって製造する事が可能な多層ブロー成形品であり、本発明のオレフィン共重合体を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層ブロー成形品である。多層ブロー成形品の製造方法としては、多層ダイレクトブロー成形、多次元多層ブロー成形、多層ロータリーブロー成形等、公知のブロー成形法を挙げる事ができる。本発明に関わる多層ブロー成形品の基材層中の基材としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
【0180】
(7)多層管状成形品
本発明のオレフィン共重合体は、多層管状成形品に用いることができる。ここで、多層管状成形品とは、公知の多層管状成形法によって成形する事が可能な多層管状成形品であり、本発明のオレフィン共重合体を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層管状成形品である。多層管状成形法は、例えば、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、円形もしくは異形の吐出口から吐出する。そうすることによって連続的に吐出口形状に準じた形状の管状成形品が成形され、適当な賦形方法、および冷却方法によって成形、冷却固化することで管状の成形品を得る方法を挙げる事ができる。
【0181】
多層管状成形法の吐出口形状は特に限定されず、円形、楕円、多角形、その他公知の吐出口形状を選択する事ができる。また、多層管状成形法の成形方法は特に限定されず、サイジングプレート法、内圧サイジング法、内径サイジング法、真空サイジング法、押出した溶融材料を金型で挟み込み、マンドレル側からの圧空や金型側からの真空引き等で賦形しつつ冷却する方法等、公知の成形法を用いる事ができる。冷却方法も水冷、空冷、金型での挟み込み等、公知の冷却方法を適宜使用することができる。さらに、一度冷却固化させた多層管状成形品を再加熱し、さらに別の形状へと加工することもできる。多層管状成形品の基材層中の基材としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
【0182】
(8)多層シート
本発明のオレフィン共重合体は、多層シートに用いることができる。ここで、多層シートとは、公知の多層シート成形によって製造する事が可能な多層シートであり、本発明のオレフィン共重合体を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層シートである。多層シートの製造方法としては各種公知の方法を用いる事ができ、例えば、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、フラットダイやサーキュラーダイ等公知のダイから吐出させることでシート状に成形する方法を挙げる事ができる。
【0183】
また、これら方法において、必要に応じて多層シートの端部をスリットしたり、円形の多層シートを切り開く加工を加えたりしてもよい。さらに、押出成形後に冷却固化していない状態、もしくは、冷却固化した多層シートを再加熱する事により再溶融させた状態で、真空成型、圧空成形、真空圧空成形、スタンピング成形、プレス成形等、各種公知の成形方法によってさらに賦形しても構わない。本発明に関わる多層シートの基材層中の基材としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
【0184】
(9)射出成形品
本発明のオレフィン共重合体は、射出成形品に用いることができる。ここで、射出成形品とは、本発明のオレフィン共重合体を射出成形によって成形した射出成形品である。射出成形品の製造には公知の方法を用いる事ができる。
【0185】
(10)多層射出成形品
本発明のオレフィン共重合体は、多層射出成形品に用いることができる。ここで、多層射出成形品とは、本発明のオレフィン共重合体を含有してなる層を少なくとも含み、射出成形を用いて複数の層を複合化することで製造できる多層射出成形品である。多層射出成形品は2種類以上の材料が複合化されていればよく、例えば、2種の異なる本発明のオレフィン共重合体を含有してなる層が積層化されていてもよく、本発明のオレフィン共重合体を含有してなる層と基材からなる層が多層化されていてもよい。さらに、3種以上の層が多層化されていてもよい。
【0186】
多層射出成形品は、公知の射出成形法によって成形する事ができる。多層射出成形品は、本発明のオレフィン共重合体を含有してなる層の2種類以上を多層化してなる多層射出成形品であってもよいが、本発明の特徴である異種材料との高い接着性を有する点を考慮すると、本発明のオレフィン共重合体を含有してなる層と異種材料からなる層とを多層化させた複合化射出成形品であるほうが好ましい。
【0187】
多層射出成形品の製造が可能な射出成形法としては、公知の方法を挙げる事ができる。例えば、あらかじめ射出成形や押出成形、プレス成形、切削加工等公知の方法により本発明のオレフィン共重合体を部材へと加工し、該部材を射出金型内部にインサートした状態でさらに基材材料を射出することで多層化させる方法、あらかじめ基材を部材へと加工し、基材の部材を射出金型内にインサートした状態で本発明のオレフィン共重合体を射出することで多層化させる方法、複数の射出ユニットを有する多色射出成形機を用い、本発明のオレフィン共重合体と基材材料を適当な順序で順次、金型内に射出することによって多層化する方法等を挙げる事ができる。多層射出成形品において、本発明のオレフィン共重合体と複合化させる部材の種類としては、前述したような種々の各種基材を適宜使用する事ができる。
【0188】
(11)被覆金属部材
本発明のオレフィン共重合体は、被覆金属部材に用いることができる。ここで、被覆金属部材とは、金属に本発明のオレフィン共重合体を金属被覆材料として用い、金属被覆材料を金属に被覆することにより製造できる、被覆金属部材である。被覆金属部材は公知の金属被覆方法によって製造する事ができる。被覆金属部材の例としては、例えば、鋼管の外面もしくは内面に、必要に応じてアンダーコート等を介して被覆材料を被覆させた被覆鋼管、金属被覆材料で被覆された被覆金属ワイヤー、金属被覆材料で被覆された電線、紛体性状の被覆金属材料を用いて流動浸漬法によって被覆された被覆金属、紛体性状の被覆金属材料を用いて静電塗装法によって被覆された被覆金属、あらかじめシートやフィルム等に加工した金属被覆材料を金属材用に熱溶着させる事で被覆された被覆金属等を挙げる事ができる。
【0189】
(12)その他の用途
本発明のオレフィン共重合体は、上記の用途に好適に用いられるばかりでなく、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の各種樹脂の改質材、或いは、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂とポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶樹脂等のエンジニアリングプラスチックとの相溶化剤としても好適に適用される。
【実施例】
【0190】
以下において、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明し、好適な各実施例のデータ及び各実施例と各比較例の対照により、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。本発明のオレフィン共重合体の各種の評価方法は、以下の通りである。
【0191】
1.評価方法
(1)融点Tm及び融解熱量ΔH
製造されたオレフィン共重合体の融点Tm及び融解熱量ΔHは、以下のDSC測定により求めた。
セイコー電子工業株式会社製「EXSTAR6000」を使用し、40℃で1分等温、10℃/分で40~160℃までの昇温、160℃で10分等温、10℃/分で160~10℃まで降温、10℃で5分等温後、10℃/分で10~160℃までの昇温時の測定により融点Tm及び融解熱量ΔHを求めた。
【0192】
(2)分子量分布パラメーターMw/Mn
製造されたオレフィン共重合体の融点分子量分布パラメーターMw/Mnは、GPCにより測定した。
装置:日本ウォーターズ社製Alliance GPCV2000型
検出器:GPCV2000内蔵の示差屈折計検出器
試料の調製:4mLバイアル瓶に試料3mg及びオルトジクロロベンゼン(0.1mg/mLの1,2,4-トリメチルフェノールを含む)3mLを秤採し、樹脂製スクリューキャップ及びテフロン(登録商標)製セプタムで蓋をした後、温度150℃に設定したセンシュー科学製SSC-9300型高温振とう機を用いて2時間溶解を行った。溶解終了後、不溶成分がないことを目視で確認した。
カラム:昭和電工社製Shodex HT-806M×2本+同HT-G
【0193】
較正曲線の作成:4mLガラス瓶を4本用意し、それぞれに下記(i)~(iv)の組み合わせの単分散ポリスチレン標準試料又はn-アルカンを0.2mgずつ秤り採り、続いてオルトジクロロベンゼン(0.1mg/mLの1,2,4-トリメチルフェノールを含む)3mLを秤り採り、樹脂製スクリューキャップ及びテフロン(登録商標)製セプタムで蓋をした後、温度150℃に設定したセンシュー科学製SSC-9300型高温振とう機を用いて2時間溶解を行った。
【0194】
(i)Shodex S-1460、同S-66.0、n-エイコサン
(ii)Shodex S-1950、同S-152、n-テトラコンタン
(iii)Shodex S-3900、同S-565、同S-5.05
(iv)Shodex S-7500、同S-1010、同S-28.5
【0195】
試料溶液が入ったバイアル瓶を装置にセットし、前述の条件にて測定を行い、サンプリング間隔1sでクロマトグラム(保持時間と示差屈折計検出器の応答のデータセット)を記録した。得られたクロマトグラムから各ポリスチレン標準試料の保持時間(ピーク頂点)を読み取り、分子量の対数値に対してプロットした。ここで、n-エイコサン及びn-テトラコンタンの分子量は、それぞれ600及び1,200とした。このプロットに非線形最小自乗法を適用し、得られた4次曲線を較正曲線とした。
【0196】
分子量の計算:前述の条件にて測定を行い、サンプリング間隔1sでクロマトグラムを記録した。このクロマトグラムを用い、森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)第4章p.51~60に記載の方法で微分分子量分布曲線及び平均分子量値(Mn、Mw及びMz)を算出した。ただし、dn/dcの分子量依存性を補正するため、クロマトグラムにおけるベースラインからの高さHを下記式にて補正した。クロマトグラムの記録(データ取り込み)及び平均分子量計算は、Microsoft社製OS・Windows(登録商標)・XPをインストールしたPC上で自社製プログラム(Microsoft製Visual Basic6.0で作成)を用いて行った。
H’=H/[1.032+189.2/M(PE)]
ただし、H’は補正後のHを表し、M(PE)はポリエチレンの分子量(微分分子量分布のピークトップ)を表す。
【0197】
なお、ポリスチレンからポリエチレンへの分子量変換は、下記式を用いた。
M(PE)=0.468×M(PS)
ただし、M(PS)はポリスチレンの分子量(微分分子量分布のピークトップ)を表す。
【0198】
測定温度:145℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.3ml
溶媒:0.5mL-DBU/1L-オルソジクロロベンゼン
DBU:ジアザビシクロウンデセン
流速:1.0ml/分
【0199】
(3)含窒素置換オレフィン(b-1)に由来する構造単位量の含有量
13C-NMRスペクトルから以下の方法によってコモノマー含有量を求めた。
以下で合成した、含窒素置換オレフィン(b-1)である5-ノルボルネン-2-メチルアミンBoc保護体(NBCH2NHBoc)のt-ブトキシカルボニル基の四級炭素シグナルは、13C-NMRスペクトルの78.5~78.3ppmに検出される。定量は、13C-NMRのシグナル強度Iを用いて以下の式より求めた。なお、「NB」とは、ノルボルネンを意味し、「Boc」とは、t-ブトキシカルボニル基を意味する。
これらのシグナル強度を用い、以下の式からNBCH2NHBocに由来する構造単位量の含有量を算出した。
【0200】
全NBCH2NHBocに由来する構造単位量の含有量(mol%)=I(トータルNBCH2NHBoc)×100/(I(トータルNBCH2NHBoc)+I(E))
【0201】
以下、式中の記号の説明である。
I(トータルNBCH2NHBoc)=I78.5~78.3
I(E)=(I180.0~135.0+I120.0~2.0-I(トータルNBCH2NHBoc)×13)/2
Iy~x=yppmからxppmに検出したプロトンシグナルの積分強度
【0202】
(4)オレフィン共重合体の13C-NMRにより算出されるメチル分岐数
13C-NMRスペクトルの20.0~19.8ppmのメチル炭素と、33.2~33.0ppmのメチン炭素と、37.5~37.3ppmのメチレン炭素と、による信号の積分強度の総和を4で割った値I(B1)を用いて、トータル1,000個の炭素原子(トータル1000C)あたりのメチル分岐数を、以下の式を用いて算出した。
【0203】
メチル分岐数(個/トータル1000C)=I(B1)×1000/I(トータル)
【0204】
ここで、I(B1)、I(トータル)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I(B1)=(I20.0~19.8+I33.2~33.0+I37.5~37.3)/4
I(トータル)=I180.0~135.0+I120.0~2.0
なお、Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI180.0~135.0は180.0ppmと135.0ppmの間に検出したシグナルの積分強度を示す。
【0205】
(5)生産性(Vp活性)
製造されたオレフィン共重合体の生産性(Vp活性)を、下記式により算出した。
生産性(Vp活性)={製造されたオレフィン共重合体の収量(kg)}÷{触媒量(mol)×重合時間(h)}
【0206】
2.金属触媒
日本国特開2013-043871号公報に記載された合成例に従い合成し、以下の化学式で示されるリガンドB-27DMを用意した。また、国際公開第2010/050256号の実施例に準じて、ビス-1,5-シクロオクタジエンニッケル(0)(Ni(COD)2と称する)を用いて、B-27DMとNi(COD)2とが1対1で反応したニッケル錯体(B-27DM/Ni錯体)を合成した。B-27DM/Ni錯体を、以下の実施例及び比較例において、金属触媒として用いた。
なお、以下の化学式中、「Me」とはメチル基を表す。
【0207】
【0208】
3.実施例及び比較例
(5-ノルボルネン-2-メチルアミンBoc保護体の合成方法)
5-ノルボルネン-2-メチルアミン(NBCH2NH2)(3.9mL、30mmol)を水(45mL)に混ぜ、氷水で冷却した。そこに、二炭酸ジt-ブチル((Boc)2O)30%テトラヒドロフラン(THF)溶液(24.0g、33mmol)と水酸化ナトリウム(1N)(30mL)を加え、室温で16時間撹拌することで目的物を得た。反応終点はメルク株式会社製、未修飾シリカゲルTLCプレートを使用し確認した。目的物を回収するため、酢酸エチルで抽出後、濃縮することで結晶(6.68g、29.9mmol)が得られた。収率は99.7%であった。
【0209】
(実施例1)
エチレンと5-ノルボルネン-2-メチルアミンBoc保護体(NBCH2NHBoc)との共重合:
内容積2.4Lの撹拌翼付きオートクレーブに、乾燥トルエン(1.0L)と、トリn-オクチルアルミニウム(TNOA)を36.6mg(0.1mmol)及びNBCH2NHBocを4.5g(20mmol)仕込んだ。撹拌しながらオートクレーブを90℃に昇温し、窒素を0.5MPaまで供給した後、エチレンをオートクレーブにエチレン分圧2.5MPaとなるように供給し、圧力が3.0MPaになるように調整した。
【0210】
調整終了後、B-27DM/Ni触媒トルエン溶液(濃度20mmol/L)5ml(10μmol)を窒素で圧入して共重合を開始させた。10分間重合させた後、冷却、脱圧して反応を停止した。反応溶液は、1Lのアセトンに投入してポリマーを析出させた後、ろ過洗浄を行い回収し、さらに減圧下で恒量になるまで乾燥を行なった。得られたオレフィン共重合体の収量(g)を測定した。また、上記「評価方法」に記載の評価を行った。結果を表1に示す。
【0211】
なお、表1中、「コモノマー濃度」とは、例えば、実施例1においては、5-ノルボルネン-2-メチルアミンBoc保護体濃度を意味する。NMRの「含有量」とは、オレフィン共重合体の構造単位全体を100mol%とした場合のコモノマー(実施例1においては5-ノルボルネン-2-メチルアミンBoc保護体)に由来する構造単位の含有量を意味する。NMRの「Me分岐」とは、オレフィン共重合体における、炭素原子1000個当たりのメチル分岐数を意味する。
【0212】
(実施例2)
NBCH2NHBocの仕込み量を8.9g(40mmol)とし、重合時間を7分とした以外は実施例1と同様にしてエチレン-NBCH2NHBoc共重合をおこなった。得られたオレフィン共重合体の収量(g)を測定した。また、上記「評価方法」に記載の評価を行った。結果を表1に示す。
【0213】
(実施例3)
TNOAの仕込み量を183mg(0.5mmol)とし、NBCH2NHBocの仕込み量を16.9g(76mmol)とし、エチレン分圧を1.0MPaとし、触媒トルエン溶液量を240μmolとし、重合時間を60分とした以外は実施例1と同様にしてエチレン-NBCH2NHBoc共重合をおこなった。得られたオレフィン共重合体の収量(g)を測定した。また、上記「評価方法」に記載の評価を行った。結果を表1に示す。
【0214】
(実施例4)
TNOAの仕込み量を183mg(0.5mmol)とし、NBCH2NHBocの仕込み量を22.3g(100mmol)とし、エチレン分圧を1.0MPaとし、触媒トルエン溶液量を260μmolとし、重合時間を60分とした以外は実施例1と同様にしてエチレン-NBCH2NHBoc共重合をおこなった。得られたオレフィン共重合体の収量(g)を測定した。また、上記「評価方法」に記載の評価を行った。結果を表1に示す。
【0215】
(比較例1)
エチレンと5-ノルボルネン-2-メチルアミン(NBCH2NH2)との共重合:
トリn-オクチルアルミニウム(TNOA)を37mg(0.1mmol)、5-ノルボルネン-2-メチルアミン(NBCH2NH2)を12.3g(100mmol)仕込み、窒素を0.5MPaまで供給した後、エチレンをオートクレーブにエチレン分圧2.5MPaとなるように供給し、圧力が3.0MPaになるように調整した。
【0216】
調整終了後、B-27DM/Ni触媒トルエン溶液(濃度20mmol/L)25ml(500μmol)、重合時間を50分とした以外は実施例1と同様にしてエチレン-NBCH2NH2共重合をおこなった。得られたオレフィン共重合体の収量(g)を測定した。また、上記「評価方法」に記載の評価を行った。結果を表1に示す。
【0217】
(比較例2)
エチレンとN-メチルマレイミド(NMM)との共重合:
トリn-オクチルアルミニウム(TNOA)を183mg(0.5mmol)、N-メチルマレイミド(NMM)を5.6g(50mmol)仕込み、窒素を0.8MPaまで供給した後、エチレンをオートクレーブにエチレン分圧2.0MPaとなるように供給し、圧力が2.8MPaになるように調整した。
【0218】
調整終了後、B-27DM/Ni触媒トルエン溶液(濃度10mmol/L)30ml(300μmol)、重合時間を120分とした以外は実施例1と同様にしてエチレン-NMM共重合をおこなった。得られたオレフィン共重合体の収量(g)を測定した。
【0219】
比較例2ではオレフィン共重合体の収量(g)が少なかったため、DSC測定、NMR測定、GPC測定を行うことができなかった。よって、生産性(Vp活性)のみ算出した。結果を表1に示す。
【0220】
【0221】
4.評価
表1に示すように、実施例1~4では、いずれも比較例1及び2に比べて、生産性(Vp活性)が高い。また、実施例1~4では、比較例1と比べて、重量平均分子量(Mw)が高く、分子量分布(Mw/Mn)が狭い重合体が得られることがわかる。また、実施例2では、比較例1と比較し、コモノマー濃度が低いにもかかわらず、コモノマーに由来する構造単位の含量が多くなっている。
【0222】
よって、本発明のオレフィン共重合体は、効率的に製造されることが確認された。そして、このオレフィン共重合体は、メチル分岐数が少なく、優れた共重合体であることが分かった。
【0223】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0224】
本発明によれば、容易に分解可能な保護基をもつ、新規なオレフィン共重合体が提供され、このオレフィン共重合体は、新規なオレフィン系極性共重合体であるため、広範囲な用途に使用できる。このオレフィン共重合体は、簡易で効率の良い重合法により製造でき、産業上の利用可能性が高い。