(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】移動通信ネットワークの制御装置、近接情報サーバ、移動通信ネットワーク、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 76/14 20180101AFI20220830BHJP
H04W 88/18 20090101ALI20220830BHJP
H04W 88/04 20090101ALI20220830BHJP
H04W 8/00 20090101ALI20220830BHJP
【FI】
H04W76/14
H04W88/18
H04W88/04
H04W8/00 110
(21)【出願番号】P 2018230721
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-01-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度総務省「第5世代移動通信システム実現に向けた研究開発~複数移動通信網の最適利用を実現する制御基盤技術に関する研究開発~」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】趙 兵選
(72)【発明者】
【氏名】北川 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】新保 宏之
(72)【発明者】
【氏名】山口 明
(72)【発明者】
【氏名】堅岡 良知
【審査官】田部井 和彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0054237(US,A1)
【文献】国際公開第2016/208098(WO,A1)
【文献】北川 幸一郎,5G端末間リレー通信における信号量削減手段に関する検討,情報処理学会 シンポジウム マルチメディア通信と分散処理ワークショップ 2018 [online] ,日本,情報処理学会,2018年10月31日,第8-14頁
【文献】ZTE, Ericsson, Interdigital, Telecom Italia,Discussion on Remote UE's Relay discovery, selection and reselection [online],3GPP TSG RAN WG2 #91 R2-153766, [検索日: 2021年12月24日],インターネット <URL: https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_91/Docs/R2-153766.zip>,2015年08月15日,p.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
DB名 3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基地局に接続する第1ユーザ装置と、第2基地局に接続する第2ユーザ装置との間のリレー通信を提供するよう制御する移動通信ネットワークの制御装置であって、
前記第1ユーザ装置からリレー通信の確立要求を受付ける受付手段と、
前記確立要求を受付けると、近接情報サーバから、前記第1ユーザ装置から所定の範囲に位置する1つ以上の第2ユーザ装置に関する情報を含む第1近接情報を取得する第1取得手段と、
前記第1近接情報に基づいて1つ以上の前記第2ユーザ装置から、前記第1ユーザ装置と前記第2ユーザ装置との間の無線品質情報を取得する第2の取得手段と、
前記第2の取得手段で取得した前記無線品質情報に基づいて1つ以上の前記第2ユーザ装置の中から前記リレー通信を提供するリレー端末を選択する選択手段と、
前記選択手段で前記リレー通信を提供する前記リレー端末が選択できない場合に、前記近接情報サーバに、前記第1近接情報とは異なる近接情報を要求する要求手段と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
第1基地局に接続する第1ユーザ装置と第2基地局に接続する第2ユーザ装置との間のリレー通信を提供するよう制御する移動通信ネットワークの制御装置と通信する近接情報サーバであって、
前記第1ユーザ装置と前記第2ユーザ装置との間の近接度に関する情報を記憶する記憶手段と、
前記制御装置から前記第1ユーザ装置から所定の範囲に位置する1つ以上の第2ユーザ装置に関する情報の要求に応じて、第1近接情報を提供する提供手段と、
前記制御装置から第1近接情報を提供した後に、前記第1近接情報とは異なる第2近接情報の要求を受信する受信手段と、
前記受信手段で前記第2近接情報の要求を受信すると、前記近接度に関する情報を更新する必要があるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じて近接度の測定要求を送信する測定要求手段と、
を備えることを特徴とする近接情報サーバ。
【請求項3】
前記近接度は、前記第1ユーザ装置と前記第2ユーザ装置との間の距離、および前記第1ユーザ装置が送信した報知信号の受信強度の少なくとも何れかに基づいて前記近接情報サーバが作成することを特徴とする請求項2に記載の近接情報サーバ。
【請求項4】
前記受信手段で前記第2近接情報の要求を受信すると、第2近接情報を提供するか否かを判定する第2の判定手段と、
前記第2近接情報を提供しないと判定すると、更新中断信号を
前記第1ユーザ装置に送信する送信手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項2
または3に記載の近接情報サーバ。
【請求項5】
前記受信手段で前記第2近接情報の要求を受信すると、前記第1近接情報に含まれる第2ユーザ装置より、低い近接度を有する第2ユーザ装置に関する情報を含む第2近接情報を提供する提供手段をさらに有することを特徴とする請求項2乃至
4の何れか1項に記載の近接情報サーバ。
【請求項6】
第1基地局に接続する第1ユーザ装置と、第2基地局に接続する第2ユーザ装置との間のリレー通信を提供する移動通信
システムであって、
前記第1ユーザ装置と前記第2ユーザ装置との間の近接度に関する情報を記憶する記憶手段と、
前記第1ユーザ装置から前記リレー通信の確立要求を受付ける受付手段と、
前記受付手段で前記確立要求を受付けた場合に、前記記憶手段から、前記第1ユーザ装置から所定の範囲に位置する前記第2ユーザ装置に関する情報を含む第1近接情報を取得する第1取得手段と、
前記第1近接情報に基づいて前記第2ユーザ装置から、前記第1ユーザ装置と前記第2ユーザ装置との間の無線品質に関する無線品質情報を取得する第2取得手段と、
前記第2取得手段で取得した前記無線品質情報に基づいて1つ以上の前記第2ユーザ装置の中から前記リレー通信を提供するリレー端末を選択する選択手段と、
前記選択手段で前記リレー通信を提供する前記リレー端末が選択できない場合に、前記第1近接情報とは異なる第2近接情報を要求する要求手段と、
を備えることを特徴とする移動通信
システム。
【請求項7】
請求項1に記載の制御装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項2に記載の近接情報サーバとしてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信ネットワークにおけるユーザ装置を利用したリレー通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第五世代移動通信システム(5G)では、マクロセル基地局(大セル局)の制御のもとで、大容量通信が可能なスモールセル基地局(小セル局)に端末を収容する、Non-StandAlone(NSA)構成が想定されている。NSA構成においては、小セル局の通信範囲外の端末のトラフィックを小セル局に収容するために、リレー通信が用いられる。リレー通信は、小セル局が提供するスモールセルには在圏していないが、大セル局が提供するマクロセルには在圏する端末(リモートユーザ装置)が、スモールセルに在圏する端末(候補ユーザ装置)のうちの少なくとも1つ(リレー端末)を介して小セル局にリレー接続することで実現される。これによって、大セル局が収容する端末の数を向上することができる。また、端末間の無線品質情報を考慮して、スモールセルに在圏する候補ユーザ装置の中からリレー端末を選択することで、リレー通信による小セル局へのトラフィック収容効果を高めることができる。
【0003】
これまで、無線品質情報を考慮したリレー通信のためのリレー端末の選択方法として、リモートユーザ装置が報知信号を送信し、報知信号を受信した候補ユーザ装置からのフィードバック信号を受信し、リレー通信を確立するためのリレー端末を選択する方法が提案されている。しかしながら、都市部の混雑環境では、リモートユーザ装置が送信する報知信号や候補ユーザ装置からのフィードバック信号が衝突する確率が高くなり、リモートユーザ装置が効率的に無線品質情報を収集し、リレー端末を選択することが困難になる。
【0004】
これに対して、無線品質情報を考慮したリレー通信のためのリレー端末の別の選択方法として、大セル局を含む移動通信ネットワークが、リモートユーザ装置が送信する報知信号や候補ユーザ装置が送信するフィードバック信号のための無線リソースを制御する中央制御が提案されている。これによって、報知信号やフィードバック信号の衝突を避けることが可能になるため、混雑環境でも無線品質情報を効率的に収集することができる。しかしながら、大セル局による無線品質情報収集のための無線リソース制御信号の送信は、大セル局の他の通信のためのリソースを共用するため、端末数によっては大セル局の通信リソースの大半を無線リソース制御信号が占有し、大セル局の通信性能を劣化させる可能性がある。
【0005】
例えば非特許文献2では、LTEにおいて規定された近接情報(非特許文献1)を利用し、無線リソース制御信号の送信先をリモートユーザ装置の近接エリアに存在する候補ユーザ装置に限定することで、無線リソース制御信号の量を削減する手法が提案されている。これによれば、候補ユーザ装置にリモートユーザ装置の報知信号の測定を指示するRadio Resource Control Reconfiguration(RRC Reconf)および候補ユーザ装置から当該測定結果を報告するDevice-to-device Measurement Report(D2D MR)のためのシグナリングを減少させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】3GPP TS23.303;Technical Specification Group Services and System Aspects;Proximity-based services(ProSe);Stage 2 (Release 15)
【文献】北川 幸一郎、他、"5G端末間リレー通信における信号量削減手段に関する検討"、第26回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集、90-96、2018年10月31日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、リモートユーザ装置と候補ユーザ装置との位置に関する情報(近接度)の更新が遅い場合などには、移動通信ネットワークが保有している近接度と、実際のリモートユーザ装置と候補ユーザ装置との近接度が異なることがある。このような場合には、不正確な近接情報に含まれる候補ユーザ装置リストの中からリレー端末を選択することとなり、適切なリレー端末を選択できない場合がある。
【0008】
本発明は、近接情報の更新を適切に行わせる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、第1基地局に接続する第1ユーザ装置と、第2基地局に接続する第2ユーザ装置との間のリレー通信を提供するよう制御する移動通信ネットワークの制御装置は、前記第1ユーザ装置からリレー通信の確立要求を受付ける受付手段と、前記確立要求を受付けると、近接情報サーバから、前記第1ユーザ装置から所定の範囲に位置する1つ以上の第2ユーザ装置に関する情報を含む第1近接情報を取得する第1取得手段と、前記第1近接情報に基づいて1つ以上の前記第2ユーザ装置から、前記第1ユーザ装置と前記第2ユーザ装置との間の無線品質情報を取得する第2の取得手段と、前記第2の取得手段で取得した前記無線品質情報に基づいて1つ以上の前記第2ユーザ装置の中から前記リレー通信を提供するリレー端末を選択する選択手段と、前記選択手段で前記リレー通信を提供する前記リレー端末が選択できない場合に、前記近接情報サーバに、前記第1近接情報とは異なる近接情報を要求する要求手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、近接情報の更新を適切に行わせる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る移動通信ネットワークを示す図。
【
図2】一実施形態に係る近接度ベースのシグナリングを示すシーケンス図。
【
図3】一実施形態に係る近接度ベースのシグナリングを示すシーケンス図。
【
図4】第1の実施形態に係る近接情報更新処理のシーケンス図。
【
図5】第2の実施形態に係る近接情報更新処理のシーケンス図。
【
図6】第3の実施形態に係るマルチレイヤ近接度を示す図。
【
図7】第3の実施形態に係る近接情報更新処理のシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0013】
<PFベース通信制御>
図1は、本実施形態を説明するための移動通信ネットワークの構成図である。移動通信ネットワークは、構成要素として大セル局101、小セル局111および112、ネットワーク装置121、ならびにProximity-based Service(ProSe) Function Server(PFS)122を含む。
【0014】
大セル局101は、カバレッジ(マクロセル)102を有し、小セル局111または112を介してPFベース通信を制御するマクロ基地局である。小セル局111および112は、大セル局101と比較して小さいカバレッジ(スモールセル)113および114を有し、リレー通信を収容することが可能な5G対応のスモール基地局である。
【0015】
ネットワーク装置121は、例えば大セル局101ならびに小セル局111および112に収容されるユーザ端末(UE)のモビリティ管理を司るAccess and Mobility Function(AMF)の機能を有する制御装置である。一例では、ネットワーク装置121は、セッション管理を司るSession Management Function(SMF)などの他の機能を有してもよい。PFS122は、UE同士の近接度またはカバレッジエリア内のUEの位置を管理する近接情報サーバである。また、PFS122は、UE同士の近接度に関する情報を記憶する記憶装置を備える。
【0016】
ここで、UE141がリレー通信を行うために、移動通信ネットワークが、候補ユーザ装置であるUE131および132からリレー端末を選択する動作を説明する。本明細書では、スモールセルの外に位置し、リレー通信を要求するUEをリモートユーザ装置(リモートUE)、スモールセルに在圏し、リモートユーザ装置から所定の範囲に位置するUEを候補ユーザ装置(候補UE)と称する。また、リモートユーザ装置にリレー通信を提供するUEをリレー端末と称する。
【0017】
UE131および133は、小セル局111のカバレッジ113内に位置するUEであり、UE132および134は、小セル局112のカバレッジ114内に位置するUEである。UE131および132は、リモートUE141の近接範囲142内に位置する。すなわち、UE131は小セル局111が提供するスモールセル113に、UE132は小セル局112が提供するスモールセル114に在圏する候補ユーザ装置である。
【0018】
UE141は、大セル局101のマクロセル102内には位置するが、スモールセル113および114内には位置しないリモートユーザ装置である。
【0019】
図2において、大セル局101、小セル局111および112、ならびにネットワーク装置121を結ぶ実線と、ネットワーク装置121およびPFS122を結ぶ実線とは、移動通信ネットワークの構成要素間を接続する通信線を示している。なお、
図2においては、図の簡略化のため、その他の通信線または構成要素は示していない。例えば、小セル局は2つより多くてもよいし、1つのネットワーク装置121が2つ以上の大セル局101に接続されてもよい。
【0020】
また、ネットワーク装置14は、1つの装置ではなく、複数の場所に分散配置される、複数の装置により実現することもできる。なお、本発明は、5Gシステムに限定されるものではなく、任意の規格による移動通信システムに適用することができる。
【0021】
ここで、
図2を参照して、移動通信ネットワークがリレー通信を制御するシーケンスについて説明する。
【0022】
まず、S201で、リモートUE141は、大セル局101にリレー通信セッションの確立または切替を依頼する確立要求(セッションリクエスト)を送信する。確立要求を受付けた大セル局101は、S202でネットワーク装置121に、当該リクエストを転送する。
【0023】
S203で、セッションリクエストを受信したネットワーク装置121は、PFS122に近接情報リクエスト(Proximity Information Request)を送信する。近接情報リクエストを受信したPFS122は、S204で、近接情報応答(Proximity Information Response)として、セッションリクエストを送信したリモートUE141から所定の範囲(例えば
図1の近接範囲145)内に位置する候補ユーザ装置に関する情報をネットワーク装置121に送信する。
【0024】
つづいて、S205で、ネットワーク装置121は、大セル局101にS204で受信した近接情報応答に含まれる候補ユーザ装置にRadio Resource Control Reconfiguration(RRC Reconf)信号を送信するよう指示する。RRC Reconf信号の送信指示を受信した大セル局101は、S206で、候補ユーザ装置131および132に、直接または小セル局111および112を介して、RRC Reconf信号を送信する。RRC Reconf信号には、リモートUE141から報知信号が送信される無線リソース、および候補ユーザ装置から大セル局101に無線品質情報を送信するための無線リソースの少なくとも何れかを示す情報が含まれる。RRC Reconf信号を受信した候補ユーザ装置131および132は、リモートUE141から送信される報知信号をS207で受信する。すなわち、S206で送信されるRRC Reconf信号は、候補ユーザ装置に対するリモートユーザ装置と候補ユーザ装置との間の無線品質の測定要求である。続いてS208で候補ユーザ装置131、132は大セル局101に、リモートUE141と候補ユーザ装置131および132のそれぞれとの間の無線品質に関する情報を含むDevice-to-device Measurement Report(D2D MR)信号を送信する。RRC Reconf信号とD2D MR信号は、データ送信を行う無線リソース領域(Shared channel)において端末単位で送信される。
【0025】
D2D MR信号を受信した大セル局101は、S208で受信したD2D MRに基づいて、S209でD2D MRを含むRelay UE Reportをネットワーク装置121に送信する。
【0026】
以降、ネットワーク装置121は、受信したRelay UE Reportに基づいてリレー通信を提供するためのリレー端末を選択し、大セル局101にリレー端末に関する情報をS210で送信する。大セル局101は、選択されたリレー端末に対してRelay UE Configuration信号をS211で送信する。リレー端末は、リモートUE141とS212で通信を確立し、S213でリレー通信を行う。
【0027】
以上説明したように、近接度に基づいて、限られた数の候補ユーザ装置とRRC Reconf信号およびD2D MR信号を送受信することで、移動通信ネットワークはシグナリングを削減しつつ、候補ユーザ装置の中からリレー端末を選択し、リモートユーザ装置に対してリレー通信を提供することができる。
【0028】
ここで、PFS122がネットワーク装置121に提供する近接情報が古い場合、リモートUE141が移動してリモートUE141と候補ユーザ装置との間の無線品質が大きく変化し、移動通信ネットワークはリモートUE141にリレー通信を提供するためのリレー端末を選択できないことがある。ここで、
図3を参照して、PFS122が
図2のS204で提供する近接情報応答に含まれる候補ユーザ装置とリモートUE141との間の無線品質が変化し、大セル局101がリレー端末を選択できない場合に生じうる処理について説明する。なお、
図2と同様の処理については説明を省略する。
【0029】
S204で、PFS122が提供する近接情報応答に含まれる候補ユーザ装置と、リモートUE141との間の無線環境が大きく変化した場合、S207で、候補ユーザ装置はリモートUE141からの報知信号を受信できなくてもよい。このような場合、候補ユーザ装置は、報知信号を検出するまで待機するため、S208でのD2D MR信号を送信しない。あるいは、候補ユーザ装置は、S206で指示されたRRC Reconfで報知信号を検出しなかったことを通知するD2D MR信号を送信する。
【0030】
続いて、大セル局101は、リレー端末を選択するため必要な情報が集まらなかったことを示す通知をネットワーク装置121に送信する。あるいは、大セル局101は、全ての候補ユーザ装置からD2D MRを受信するまでS309の通知を保留する。
【0031】
ネットワーク装置121は、S205でRRC Reconfを送信して所定期間内にリレー通信を提供するためのリレー端末を選択可能な情報を大セル局101から受信しない場合、あるいは、候補ユーザ装置から無線品質情報が集まらなかったことを示す通知をS309で受信した場合、S310で大セル局101に、セッションリクエストを却下するSession establishment failure(セッション確立失敗)信号を送信する。セッション確立失敗信号を受信した大セル局101は、S311で、リモートUE141にリレー通信の確立処理を停止することを通知する。
【0032】
<第1の実施形態>
図4を参照し、リレー通信を提供できないと判断したネットワーク装置121がリモートユーザ装置121の近接情報の更新をトリガするためのリカバリ信号を送信する第1の実施形態を説明する。なお、
図2および
図3と同様の処理については同じ参照符号を使用し、説明を省略する。
【0033】
S201で、リモートUE141がセッションリクエストを送信したが、S204でPFS122が不正確な近接情報を提供したため、S309で大セル局からネットワーク装置に、候補ユーザ装置から無線品質情報が集まらなかったことを示す通知が送信された場合について説明する。
【0034】
この場合、本実施形態に係るネットワーク装置121は、S410で、PFS122にリカバリ信号を送信する。PFS122は、リカバリ信号を受信することで、リレー端末を選択するために異なる近接情報を要求されていると判定する。この場合、PFS122は、近接情報を更新する必要があると判定する。
【0035】
リカバリ信号を受信したPFS122は、S411で大セル局101に、近接度測定リクエストを送信する。大セル局101は、S412で、リモートUE141を少なくとも含むマクロセル内のUEに、近接度の測定を指示する。続いて、大セル局101は、S413で近接度の測定を指示したUEからD2D MRを受信し、S414でPFS122に最新の近接情報を送信する。S414で大セル局101から受信したPFS122は近接情報を更新し、S204と同様にネットワーク装置121に更新後の近接情報を提供し、リレー通信を提供するためのリレー端末を選択するためのS205~S208の処理を実行させる。なお、S414で大セル局101はPFS122に最新の近接情報を作成するために必要な情報を送信し、PFS122は、受信した情報に基づいて近接情報を生成してもよい。
【0036】
以上説明したように、ネットワーク装置121は、リレー端末の選択が失敗した場合、PFS122が近接情報を取得した後にUEが移動し、無線環境が変化したと判定し、PFS122にリカバリ信号を送信する。FS122に近接情報を更新させ、更新後の近接情報を提供させることで、リレー通信を提供するリレー端末を選択することができる。
【0037】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、PFS122は、ネットワーク装置121から、リレー端末の選択が失敗したため異なる近接情報を要求することを示すリカバリ信号を受信することで近接情報を更新することができる。第2の実施形態では、
図5を参照し、ネットワーク装置121からリカバリ信号を受信し、近接情報を更新するか否かを判定するPFS122について説明する。なお、
図2~
図4と同様の処理については同じ参照符号を使用し、説明を省略する。
【0038】
S410で、ネットワーク装置121からリカバリ信号を受信したPFS122は、S511に処理を進め、近接情報の更新が必要であるかを判定する処理(更新判定処理)を行う。
【0039】
一例では、更新判定処理は、所定の時間内であるか否かに基づいて、更新判定処理を行う。例えば、PFS122は、直前に近接情報を更新してから1秒以上経過している場合、PFS122は近接情報の更新が必要であると判定してもよい。また、直前に近接情報を更新してから1秒以上が経過していない場合は、近接度には変化がなく、雑音強度などのUEの周辺の無線環境に由来してリレー端末の選択が失敗したと判断し、近接情報の更新は不要であると判定してもよい。
【0040】
また、一例では、更新判定処理は、リモートUE141ならびに候補ユーザ装置131および132の速度または相対速度に基づいて行われる。例えば、UEは、D2D MRに自身の速度を含めて大セル局101に送信してもよい。このような場合、大セル局101は、リカバリ信号に含めて、マクロセル内のUEのいずれかの速度に関する情報をPFS122に送信してもよい。PFS122は、受信した速度に関する情報に基づいて、もしマクロセル内のリモートユーザ装置が所定の速度以上である場合には、近接情報の更新は不要であると判定し、所定の速度未満である場合には、近接情報の更新が必要であると判定してもよい。また、PFS122は、マクロセル内の候補ユーザ装置が所定の速度以上である場合には、当該候補ユーザ装置にRRC Reconf信号が送信され、所定の速度未満である場合には、RRC Reconf信号が送信されないよう近接情報応答を変更してもよい。すなわち、S511では、それぞれのUEについて近接情報の更新の必要性が判定されてもよい。
【0041】
S511で、PFS122が、近接情報の更新が可能であると判定した場合、
図4のS411~S414を参照して説明した処理と同様の処理によって、PFS122は近接情報を更新する。一方、S511で、PFS122が近接情報の更新が不要であると判定した場合、S512で、PFS122は大セル局101に近接情報の更新の却下を通知する更新中断信号を送信する。S512で更新中断信号を受信した大セル局101は、リモートUE141に更新中断信号を送信する。
【0042】
<第3の実施形態>
第1および第2の実施形態では、リレー通信を提供するために、近接範囲内に位置するリレー端末を選択できない場合には、近接情報を更新することができる。一例では、リレー通信を提供するためのリレー端末を選択できない場合、近接範囲を変更して、変更した近接範囲内に位置する候補ユーザ装置のうちからリレー端末を選択できるか判定してもよい。第3の実施形態では、リレー端末を選択するまで近接範囲を広げることで、候補ユーザ装置の数を増減させることが可能な移動通信ネットワークの動作について説明する。
【0043】
図6を参照して、複数レイヤからなる近接範囲について説明する。
図6では、リモートUE141からの近接度として、レイヤ601~604に示す4つのレイヤが設定される。レイヤ601がリモートUE141に最も近く、レイヤ602、603、604の順番でリモートUE141から離れる。なお、リモートUE141との近さとは、物理的な距離に限らず、電波損失またはRSSIなどにしたがって決められてもよく、したがってレイヤ601~604は円状ではなくてもよい。
【0044】
例えば、リモートUE141が送信する報知信号の受信強度が、-30 dBmより大きいUEはレイヤ601に属し、-30 dBm以下かつ-40 dBmより大きいUEはレイヤ602に属する候補ユーザ装置である。また、報知信号の受信強度が、-40 dBm以下かつ-50 dBmより大きいUEはレイヤ603に属し、-50 dBm以下かつ-60 dBmより大きいUEはレイヤ604に属する候補ユーザ装置である。-60 dBm以下のUEは候補ユーザ装置ではない。
【0045】
次に、
図7を参照して、複数レイヤを有する近接範囲からリレー端末を選択するための処理を説明する。なお、
図2~
図5と同様の処理については、同じ参照符号を使用し、説明を省略する。
【0046】
まず、S203で近接情報リクエストを受信したPFS122は、S704で、最も狭いレイヤ(例えば
図6のレイヤ601)内に存在する候補ユーザ装置に関する近接情報を大セル局101に送信する。
【0047】
その後、S309でリレー端末の選択が失敗したことの通知を受けたネットワーク装置は、S410でリレー端末の選択が失敗したことを通知するリカバリ信号をPFS122に送信する。S711で、PFS122は、2番目に狭いレイヤ(例えば
図6のレイヤ602)内に存在する候補ユーザ装置に関する近接情報を大セル局101に送信する。S712~S715の処理は、S205~S208と同様であるため説明を省略する。
【0048】
なお、
図6に示すように、レイヤ602に候補ユーザ装置が存在しない場合には、PFS122は、レイヤ602の近接情報を送信することなく、レイヤ603に属する候補ユーザ装置の近接情報を送信してもよい。
【0049】
また、一例では、候補ユーザ装置の台数の観点から、PFS122はレイヤを設定してもよい。例えば、S203で近接情報要求を受信したPFS122は、大セル局がRRC Reconf信号を送信する候補ユーザ装置の数が10以下となるよう、例えばリモートUE141への近接度が高い順に、10個の候補ユーザ装置についての近接情報応答をS704で送信してもよい。その後、S410でネットワーク装置121からリカバリ信号を受信したPFS122は、リモートUE141への近接度が高い順に、20個の候補ユーザ装置の近接情報応答をS711で送信してもよい。
【0050】
これによって、RRC Reconf信号を送信する候補ユーザ装置の数を制限することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、リレー通信を提供するためのリレー端末が選択できなかった場合には、近接範囲を変化させることで候補ユーザ装置の数を増減させることができる。
【0052】
<その他の実施形態>
第1~第3の実施形態は、任意に組み合わせることができる。例えば、リカバリ信号を受信したPFS122は、近接情報を更新するか、リレー端末を選択するための近接範囲を変化させるかを判定してもよい。
【0053】
なお、本発明によるネットワーク装置121およびPFS122の少なくとも何れかは、1つの装置として実現することも、ネットワークを介して相互に通信できる複数の装置により実現することもできる。また、ネットワーク装置121およびPFS122の少なくとも何れかは、コンピュータを上記ネットワーク装置121およびPFS122の少なくとも何れかとして動作させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【符号の説明】
【0054】
101:大セル局、102:マクロセル、111,112:小セル局、113,114:スモールセル、121:ネットワーク装置、122:PFS、131,132,133,134,141:UE、142:近接範囲