(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】導電フィルム及び接続構造体
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20220830BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20220830BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20220830BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H01B1/22 B
H01B1/00 M
H01B5/16
H01R11/01 501E
(21)【出願番号】P 2018231492
(22)【出願日】2018-12-11
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山際 仁志
(72)【発明者】
【氏名】真原 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】湯川 豪
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-94529(JP,A)
【文献】特開2012-124035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01B 1/00
H01B 5/16
H01R 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む導電フィルムであり、
前記導電性粒子が、導電部を有する導電性粒子本体と、前記導電性粒子本体の表面上に配置された絶縁部とを備え、
前記導電フィルムが、前記導電性粒子を含む層と、前記導電性粒子を含まない層とを有し、
前記導電性粒子を含む層100体積%中、前記導電性粒子の含有量が、60体積%以上80体積%以下である、導電フィルム。
【請求項2】
前記導電フィルム100体積%中、前記導電性粒子の含有量が、5体積%以上80体積%以下である、請求項1に記載の導電フィルム。
【請求項3】
隣接する前記導電性粒子本体間の距離の、前記導電性粒子本体の粒子径に対する比が、1/30以上1/1以下である、請求項1又は2に記載の導電フィルム。
【請求項4】
導電フィルムを平面視したときに、導電フィルムの全面積100%に占める前記導電性粒子本体が配置されている部分の面積が、40%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電フィルム。
【請求項5】
前記絶縁部が絶縁層であり、
前記絶縁層が、前記導電性粒子本体の表面上に配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電フィルム。
【請求項6】
前記絶縁部が絶縁性粒子であり、
複数の前記絶縁性粒子が、前記導電性粒子本体の表面上に配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電フィルム。
【請求項7】
第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、
第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、
前記接続部の材料が、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電フィルムであり、
前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記導電性粒子における前記導電部により電気的に接続されている、接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子を含む導電フィルムに関する。また、本発明は、上記導電フィルムを用いた接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂中に導電性粒子が分散されている。また、導電性粒子として、導電層の表面に絶縁処理が施された導電性粒子が用いられることがある。
【0003】
上記異方性導電材料は、各種の接続構造体を得るために用いられている。上記異方性導電材料を用いる接続としては、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等が挙げられる。
【0004】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムが開示されている。上記異方導電性フィルムは、異方導電性フィルムで接続する電子部品の端子の配列領域の外形に対応して形成された導電粒子配置領域を有する。上記異方導電性フィルムでは、上記導電粒子配置領域が、異方導電性フィルムの長手方向に周期的に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記異方性導電材料により、例えば、フレキシブルプリント基板の電極とガラスエポキシ基板の電極とを電気的に接続する際には、ガラスエポキシ基板上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を配置する。次に、フレキシブルプリント基板を積層して、加熱及び加圧する。これにより、異方性導電材料を硬化させて、導電性粒子を介して電極間を電気的に接続して、接続構造体を得る。
【0007】
この接続構造体の作製において、柔軟なフレキシブルプリント基板を用いる場合に、フレキシブルプリント基板の変形を抑制するために、低圧での実装の要望が高まっている。しかし、従来の異方性導電材料では、低圧での実装を行ったときに、導電性粒子と電極とが十分に接触せず、接続抵抗が高くなり、導通信頼性が低くなることがある。
【0008】
また、近年、電子デバイスの薄型化及び小型化が進行している。このため、電子部品における導電性粒子により接続される配線において、配線が形成されたライン(L)の幅と、配線が形成されていないスペース(S)の幅とを示すL/Sが小さくなり、狭ピッチ化が進行している。このような微細な配線において、従来の異方性導電材料を用いて電極間の導電接続を行うと、ライン上に十分な個数の導電性粒子が配置されず、接続抵抗が高くなり、導通信頼性が低くなることがある。
【0009】
また、ライン上に十分な個数の導電性粒子を配置させるために導電性粒子の個数を増加させると、導電性粒子1個当たりに付与される圧力が減少するので、実装時の圧力を高くする必要があり、従来の異方性導電材料では、低圧での実装を行うことが困難である。また、ライン上に配置される導電性粒子の個数を増加させると、導電性粒子同士が近接することになり、接続されてはならない横方向に隣接する電極間の短絡が生じることがある。従来の異方性導電材料では、接続されるべき上下の電極間の導通信頼性及び接続されてはならない横方向に隣接する電極間の絶縁信頼性を十分に高めることが困難なことがある。
【0010】
また、特許文献1に記載の異方導電性フィルムでは、導電粒子配置領域が特定の領域に限られている。このため、電極と導電性粒子との位置合わせを精度よく行わなければ、導通信頼性がかなり低くなることがある。
【0011】
本発明の目的は、電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性を効果的に高めることができ、かつ、絶縁信頼性を効果的に高めることができる導電フィルムを提供することである。また、本発明の目的は、上記導電フィルムを用いた接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、複数の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む導電フィルムであり、前記導電性粒子が、導電部を有する導電性粒子本体と、前記導電性粒子本体の表面上に配置された絶縁部とを備え、前記導電フィルムが、前記導電性粒子を含む層と、前記導電性粒子を含まない層とを有し、前記導電性粒子を含む層100体積%中、前記導電性粒子の含有量が、60体積%以上80体積%以下である、導電フィルムが提供される。
【0013】
本発明に係る導電フィルムのある特定の局面では、前記導電フィルム100体積%中、前記導電性粒子の含有量が、5体積%以上80体積%以下である。
【0014】
本発明に係る導電フィルムのある特定の局面では、隣接する前記導電性粒子本体間の距離の、前記導電性粒子本体の粒子径に対する比が、1/30以上1/1以下である。
【0015】
本発明に係る導電フィルムのある特定の局面では、前記導電フィルムを平面視したときに、導電フィルムの全面積100%に占める前記導電性粒子本体が配置されている部分の面積が、40%以上である。
【0016】
本発明に係る導電フィルムのある特定の局面では、前記絶縁部が絶縁層であり、前記絶縁層が、前記導電性粒子本体の表面上に配置されている。
【0017】
本発明に係る導電フィルムのある特定の局面では、前記絶縁部が絶縁性粒子であり、複数の前記絶縁性粒子が、前記導電性粒子本体の表面上に配置されている。
【0018】
本発明の広い局面によれば、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、前記接続部の材料が、上述した導電フィルムであり、前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記導電性粒子における前記導電部により電気的に接続されている、接続構造体が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る導電フィルムは、複数の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。本発明に係る導電フィルムでは、上記導電性粒子が、導電部を有する導電性粒子本体と、上記導電性粒子本体の表面上に配置された絶縁部とを備える。本発明に係る導電フィルムは、上記導電性粒子を含む層と、上記導電性粒子を含まない層とを有する。本発明に係る導電フィルムでは、上記導電性粒子を含む層100体積%中、上記導電性粒子の含有量が、60体積%以上80体積%以である。本発明に係る導電フィルムでは、上記の構成が備えられているので、電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性を効果的に高めることができ、かつ、絶縁信頼性を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る導電フィルムを示す平面図及び断面図である。
【
図2】
図2(a)及び(b)は、本発明に係る導電フィルムの第1の変形例を示す平面図及び断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る導電フィルムに用いられる導電性粒子を示す断面図である。
【
図4】
図4は、導電性粒子の第1の変形例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、導電性粒子の第2の変形例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、導電性粒子の第3の変形例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、導電性粒子の第4の変形例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明に係る導電フィルムを用いた接続構造体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0022】
(導電フィルム)
本発明に係る導電フィルムは、複数の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。本発明に係る導電フィルムでは、上記導電性粒子が、導電部を有する導電性粒子本体と、上記導電性粒子本体の表面上に配置された絶縁部とを備える。本発明に係る導電フィルムは、上記導電性粒子を含む層と、上記導電性粒子を含まない層とを有する。本発明に係る導電フィルムでは、上記導電性粒子を含む層100体積%中、上記導電性粒子の含有量が、60体積%以上80体積%以である。本発明に係る導電フィルムでは、上記導電性粒子がかなり多く含まれている。
【0023】
本発明に係る導電フィルムでは、上記の構成が備えられているので、電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性を効果的に高めることができ、かつ、絶縁信頼性を効果的に高めることができる。
【0024】
異方性導電材料を用いて、基板上の電極間を電気的に接続することで接続構造体を得ることができる。この接続構造体の作製において、柔軟なフレキシブルプリント基板を用いる場合に、フレキシブルプリント基板の変形を抑制するために、低圧での実装の要望が高まっている。しかし、従来の異方性導電材料では、低圧での実装を行ったときに、導電性粒子と電極とが十分に接触しないことがある。特に、導電性粒子の表面上に、絶縁性粒子等の絶縁性物質が配置されることがあり、絶縁性物質が配置された導電性粒子を用いて接続構造体を得る際には、導電接続時に導電性粒子と電極との間に位置する絶縁性物質を排除するために、比較的高圧及び高温で実装する必要がある。結果として、従来の異方性導電材料では、低圧での実装を行ったときに、接続抵抗が高くなり、導通信頼性が低くなることがある。
【0025】
また、近年、電子デバイスの薄型化及び小型化が進行している。このため、電子部品における導電性粒子により接続される配線において、配線が形成されたライン(L)の幅と、配線が形成されていないスペース(S)の幅とを示すL/Sが小さくなり、狭ピッチ化が進行している。このような微細な配線において、従来の異方性導電材料を用いて電極間の導電接続を行うと、ライン上に十分な個数の導電性粒子が配置されず、接続抵抗が高くなり、導通信頼性が低くなることがある。
【0026】
また、ライン上に十分な個数の導電性粒子を配置させるために導電性粒子の個数を増加させると、導電性粒子1個当たりに付与される圧力が減少するので、実装時の圧力を高くする必要があり、従来の異方性導電材料では、低圧での実装を行うことが困難である。また、ライン上に配置される導電性粒子の個数を増加させると、導電性粒子同士が近接することになり、接続されてはならない横方向に隣接する電極間の短絡が生じることがある。従来の異方性導電材料では、接続されるべき上下の電極間の導通信頼性及び接続されてはならない横方向に隣接する電極間の絶縁信頼性をかなり高めることが困難なことがある。
【0027】
本発明者らは、特定の導電性粒子を含む導電フィルムを用いることで、低圧での実装を行うことができ、さらに、導通信頼性及び絶縁信頼性を効果的に高めることができることを見出した。本発明では、導電接続時に導電性粒子本体と電極との間に位置する絶縁部を比較的容易に排除することができるので、比較的低圧で実装することができる。また、本発明では、導電フィルム中に導電性粒子が十分に含まれているので、該導電フィルムを用いて導電接続すると、ライン上に十分な個数の導電性粒子を配置することができる。また、本発明では、導電フィルム中に含まれる導電性粒子は絶縁部を備えているので、導電性粒子同士が近接しても、接続されてはならない横方向に隣接する電極間の短絡の発生を防止することができる。結果として、接続されるべき上下の電極間の導通信頼性及び接続されてはならない横方向に隣接する電極間の絶縁信頼性を効果的に高めることができる。
【0028】
本発明では、上記のような効果を得るために、特定の導電性粒子を含む導電フィルムを用いることは大きく寄与する。
【0029】
上記導電フィルムの25℃での粘度(η25)は、好ましくは1000Pa・s以上、より好ましくは5000Pa・s以上であり、好ましくは100000Pa・s以下、より好ましくは50000Pa・s以下である。上記導電材料の25℃での粘度(η25)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができ、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。上記粘度(η25)は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0030】
上記導電フィルムの80℃での粘度(η80)は、好ましくは100Pa・s以上、より好ましくは1000Pa・s以上であり、好ましくは50000Pa・s以下、より好ましくは20000Pa・s以下である。上記導電材料の80℃での粘度(η80)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができ、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。上記粘度(η80)は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0031】
上記導電フィルムの180℃での粘度(η180)は、好ましくは50Pa・s以上、より好ましくは100Pa・s以上であり、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは10000Pa・s以下である。上記導電材料の180℃での粘度(η180)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができ、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。上記粘度(η180)は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0032】
上記粘度(η25、η80及びη180)は、STRESSTECH(REOLOGICA社製)等を用いて、歪制御1rad、周波数1Hz、昇温速度20℃/分、測定温度範囲25~200℃の条件で測定可能である。この測定において、各温度(25℃、80℃及び180℃)での粘度を読み取ることで、η25、η80及びη180を算出する。
【0033】
上記導電フィルムは、異方性導電フィルムであることが好ましい。上記導電フィルムは、電極の電気的な接続に好適に用いられる。上記導電フィルムは、回路接続材料であることが好ましい。
【0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る導電フィルムについて、具体的に説明する。
【0035】
図1(a),(b)は、本発明の一実施形態に係る導電フィルムを示す平面図及び断面図である。
図1(b)は、
図1(a)中のA-A線に沿う断面図である。
【0036】
図1(a),(b)に示す導電フィルム21は、導電性粒子1を含む層(ACF層)22と、導電性粒子1を含まない層(NCF層)23とを有する。導電性粒子1を含む層22と導電性粒子1を含まない層23とは、バインダー樹脂を含む。導電フィルム21では、導電性粒子1を含む層22の一方の表面上に、導電性粒子1を含まない層23が積層されている。導電フィルム21は、2層の構造を有する積層フィルムである。なお、
図1(a),(b)では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。
【0037】
図2(a)及び(b)は、本発明に係る導電フィルムの第1の変形例を示す平面図及び断面図である。
図2(b)は、
図1(a)中のB-B線に沿う断面図である。
【0038】
図2(a),(b)に示す導電フィルム21Aは、導電性粒子1を含む層(ACF層)22と、導電性粒子1を含まない層(NCF層)23と、導電性粒子1を含まない層24(NCF層)とを有する。導電性粒子1を含む層22と導電性粒子1を含まない層23と導電性粒子1を含まない層24とは、バインダー樹脂を含む。導電フィルム21Aでは、導電性粒子1を含まない層23と導電性粒子1を含まない層24との間に、導電性粒子1を含む層22が配置されている。導電フィルム21Aでは、導電性粒子1を含む層22の一方の表面上に、導電性粒子1を含まない層23が積層されており、導電性粒子1を含む層22の他方の表面上に、導電性粒子1を含まない層24が積層されている。導電フィルム21Aは、3層の構造を有する積層フィルムである。なお、
図2(a),(b)では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。
【0039】
上記導電性粒子を含む層(ACF層)では、上記導電性粒子が最密充填されていることが好ましい。上記ACF層では、上記導電性粒子は、導電性粒子同士が重ならず、単層の状態で配置されていることが好ましい。上記ACF層では、上記導電性粒子は、単層の状態で配置されており、かつ、最密充填されていることが好ましい。上記ACF層を平面視したときに、上記導電性粒子は、四方充填配置されていることが好ましく、六方充填配置されていることがより好ましい。
【0040】
上記導電性粒子を含まない層(NCF層)は、導電性粒子を含まないことが好ましく、バインダー樹脂のみにより形成されていることが好ましい。上記ACF層に含まれるバインダー樹脂と上記NCF層に含まれるバインダー樹脂とは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性をより一層効果的に高める観点、及び絶縁信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記ACF層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。上記ACF層の厚みは、導電フィルム中の上記ACF層が1層である場合には1層の厚みを意味し、導電フィルム中の上記ACF層が2層以上である場合には2層以上の合計の厚みを意味する。
【0042】
電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性をより一層効果的に高める観点、及び絶縁信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記NCF層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。上記NCF層の厚みは、導電フィルム中の上記NCF層が1層である場合には1層の厚みを意味し、導電フィルム中の上記NCF層が2層以上である場合には2層以上の合計の厚みを意味する。
【0043】
上記ACF層の厚み及び上記NCF層の厚みは、任意の導電フィルムの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて観察することにより算出することができる。上記ACF層の厚み及び上記NCF層の厚みは、任意の導電フィルムの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察し、任意の50ヶ所における上記ACF層の厚み及び上記NCF層の厚みを算術平均して算出することが好ましい。
【0044】
以下、上記導電フィルムに含まれる各成分を説明する。
【0045】
(導電性粒子)
上記導電フィルムは、複数の導電性粒子を含む。上記導電性粒子は、導電部を有する導電性粒子本体と、上記導電性粒子本体の表面上に配置された絶縁部とを備える。上記導電部は、単層構造であってもよく、2層以上の複層構造であってもよい。
【0046】
上記導電フィルムは、上記導電性粒子を含む層(ACF層)と、上記導電性粒子を含まない層(NCF層)とを有する。上記ACF層100体積%中、上記導電性粒子の含有量は、60体積%以上80体積%以下である。上記ACF層100体積%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは65体積%以上、より好ましくは68体積%以上であり、好ましくは75体積%以下、より好ましくは72体積%以下である。上記ACF層100体積%中の上記導電性粒子の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性をより一層効果的に高めることができ、かつ、絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0047】
上記導電性粒子が最密充填された上記ACF層において、上記ACF層100体積%中の上記導電性粒子の含有量は、60体積%以上80体積%以下であることが好ましい。
【0048】
上記導電フィルム100体積%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上であり、好ましくは80体積%以下、より好ましくは60体積%以下である。上記導電性粒子が真球状又は真球状に近い形状である場合に、上記導電フィルム100体積%中、上記導電性粒子の含有量は、55体積%以下であり、53体積%以下であることが好ましい。上記導電性粒子の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性をより一層効果的に高めることができ、かつ、絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0049】
上記導電性粒子が最密充填された上記ACF層を有する導電フィルムにおいて、上記導電フィルム100体積%中の上記導電性粒子の含有量は、5体積%以上80体積%以下であることが好ましい。
【0050】
上記ACF層において、上記導電性粒子を最密充填する方法(上記ACF層100体積%中の上記導電性粒子の含有量を、60体積%以上80体積%以下にする方法)としては、以下の方法等が挙げられる。整列させた導電性粒子にフィルム層を転着させる方法。フィルム中で上下方向に磁石等により磁場を印加することで磁性体である導電性粒子を整列させる方法。揮発溶媒中に導電性粒子を分散した後、乾燥用基材上に塗布し、振動を加えながら整列乾燥させる方法。電極間を電気的に接続した場合に、絶縁信頼性及び導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電性粒子を最密充填する方法は、フィルム中で上下方向に磁石等により磁場を印加することで磁性体である導電性粒子を整列させる方法であることが好ましい。
【0051】
上記ACF層では、隣接する上記導電性粒子本体間の距離は、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは4μm以下、より好ましくは1μm以下である。隣接する上記導電性粒子本体間の距離が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性をより一層効果的に高めることができ、かつ、絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。なお、上記導電性粒子本体間の距離は、上記導電性粒子間の距離よりも、絶縁部の厚み分大きくなる。
【0052】
上記ACF層では、隣接する上記導電性粒子本体間の距離の、上記導電性粒子本体の粒子径に対する比(隣接する導電性粒子本体間の距離/導電性粒子本体の粒子径)は、好ましくは1/30以上、より好ましくは1/10以上であり、好ましくは1/1以下、より好ましくは1/3以下である。上記比(隣接する導電性粒子本体間の距離/導電性粒子本体の粒子径)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性をより一層効果的に高めることができ、かつ、絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0053】
隣接する上記導電性粒子本体間の距離は、任意の導電フィルムを走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて観察することにより算出することができる。隣接する上記導電性粒子本体間の距離は、導電フィルム中の任意の1つの導電性粒子における導電性粒子本体の表面と、該導電性粒子に隣接する導電性粒子における導電性粒子本体の表面とを直線で結んだ距離が最小となる寸法である。
【0054】
隣接する上記導電性粒子本体間の距離は、導電フィルム中の任意の導電性粒子本体を走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察し、任意の導電性粒子本体50個における隣接する導電性粒子本体間の距離を算術平均して算出することが好ましい。
【0055】
上記導電フィルムでは、上記導電フィルムを平面視したときに、導電フィルムの全面積100%に占める上記導電性粒子が配置されている部分の面積(占有率)は、好ましくは10%以上、より好ましくは40%以上である。上記占有率が、上記下限以上であると、電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性をより一層効果的に高めることができ、かつ、絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。導電性粒子が配置されている部分は、導電性粒子の平面視において、各導電性粒子の外周により囲まれた領域内を合計することにより求められる。上記占有率は、導電性粒子の絶縁部の面積は含まれない。
【0056】
上記占有率は、上記導電フィルムを走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて観察することにより算出することができる。
【0057】
上記導電性粒子本体の表面積全体に占める上記絶縁部により被覆されている部分の面積(被覆率)は、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは70%を超え、特に好ましくは75%以上、最も好ましくは80%以上である。上記被覆率は好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下、さらに好ましくは95%以下である。上記被覆率は100%以下であってもよい。上記被覆率が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性をより一層効果的に高めることができ、かつ、絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0058】
上記被覆率は、上記導電性粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察し、導電性粒子本体の表面積全体に占める絶縁部により被覆されている部分の合計の面積(投影面積)を算出することにより求めることができる。上記被覆率は、任意の導電性粒子50個を観察し、各被覆率を算術平均して算出することが好ましい。
【0059】
具体的には、絶縁部が絶縁性粒子である場合に、上記被覆率は、導電性粒子を一方向から走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、観察画像における導電性粒子本体の表面の外周縁部分の円内の面積全体に占める、導電性粒子本体の表面の外周縁部分の円内における絶縁性粒子の合計の面積を意味する。
【0060】
上記導電性粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、より一層好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。上記導電性粒子の粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、上記導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積が十分に大きくなり、かつ導電部を形成する際に凝集した導電性粒子が形成され難くなる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電部が基材粒子の表面から剥離し難くなる。
【0061】
上記導電性粒子の粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることがより好ましい。導電性粒子の粒子径は、例えば、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各導電性粒子の粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりの導電性粒子の粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個の導電性粒子の円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。レーザー回折式粒度分布測定では、1個当たりの導電性粒子の粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。上記導電性粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定により算出することが好ましい。
【0062】
上記導電性粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。上記導電性粒子の粒子径の変動係数が、上記上限以下であると、電極間の導通信頼性及び絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0063】
上記変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0064】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:導電性粒子の粒子径の標準偏差
Dn:導電性粒子の粒子径の平均値
【0065】
上記導電性粒子の形状は特に限定されない。上記導電性粒子の形状は、球状であってもよく、扁平状等の球形状以外の形状であってもよい。
【0066】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0067】
図3は、本発明に係る導電フィルムに用いられる導電性粒子を示す断面図である。
【0068】
図3に示す導電性粒子1は、導電性粒子本体2と、複数の絶縁性粒子3とを備える。
【0069】
導電性粒子本体2は、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電部12とを有する。導電性粒子1では、導電部12は導電層である。導電部12は、基材粒子11に接している。導電部12は、基材粒子11の表面を覆っている。導電性粒子本体2は、基材粒子11の表面が導電部12により被覆された被覆粒子である。導電性粒子本体2は表面に導電部12を有する。導電性粒子1では、導電部12は単層の導電層である。
【0070】
導電性粒子1は、後述する導電性粒子1A,1B等とは異なり、芯物質を有しない。導電性粒子1は、導電性の表面に突起を有さず、導電部12の外表面に突起を有しない。導電性粒子1は球状である。
【0071】
このように、本発明に係る導電フィルムに用いられる導電性粒子は、導電性の表面に突起を有していなくてもよく、導電部の外表面も突起を有していなくてもよく、球状であってもよい。
【0072】
図4は、導電性粒子の第1の変形例を示す断面図である。
【0073】
図4に示す導電性粒子1Aは、導電性粒子本体2Aと、複数の絶縁性粒子3とを備える。
【0074】
導電性粒子本体2Aは、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電部12Aと、複数の芯物質13とを有する。導電部12Aは導電層である。導電部12Aは、基材粒子11に接している。導電部12Aは、基材粒子11の表面を覆っている。導電性粒子本体2Aは、基材粒子11の表面が導電部12Aにより被覆された被覆粒子である。導電性粒子本体2Aは表面に導電部12Aを有する。導電性粒子1Aでは、導電部12Aは単層の導電層である。
【0075】
導電性粒子1Aは、外表面に複数の突起1Aaを有する。導電性粒子1Aでは、導電部12Aは外表面に複数の突起12Aaを有する。複数の芯物質13は、導電部12Aの外表面を隆起させている。導電部12Aの外表面が複数の芯物質13によって隆起されていることで、突起1Aa及び突起12Aaが形成されている。複数の芯物質13は、導電部12A内に埋め込まれている。突起1Aa及び突起12Aaの内側に、芯物質13が配置されている。導電部12Aは、複数の芯物質13を被覆している。導電性粒子本体2Aでは、突起1Aa及び突起12Aaを形成するために、芯物質13を用いている。上記導電性粒子本体では、上記突起を形成するために、複数の上記芯物質を用いなくてもよい。上記導電性粒子本体では、複数の上記芯物質を備えていなくてもよい。上記芯物質は、上記基材粒子に接していなくてもよい。上記導電部の外表面の形状は、球状であってもよい。
【0076】
絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2Aの表面上に配置されている。複数の絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2Aの表面に接触しており、導電性粒子本体2Aの表面に付着している。複数の絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2Aにおける導電部12Aの外表面に接触しており、導電部12Aの外表面に付着している。
【0077】
図5は、導電性粒子の第1の変形例を示す断面図である。
【0078】
図5に示す導電性粒子1Bは、導電性粒子本体2Bと、複数の絶縁性粒子3とを備える。
【0079】
導電性粒子1Aと導電性粒子1Bとでは、導電性粒子本体2Aと導電性粒子本体2Bとが異なる。
【0080】
導電性粒子本体2Bは、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電部12Bと、複数の芯物質13とを有する。
【0081】
導電性粒子1Aと導電性粒子1Bとでは、導電部12Aと導電部12Bとが異なる。導電部12Bは全体で、基材粒子11側に第1の導電部12BAと、基材粒子11側とは反対側に第2の導電部12BBとを有する。導電性粒子1Aでは、1層構造の導電部12Aが形成されているのに対し、導電性粒子1Bでは、第1の導電部12BA及び第2の導電部12BBを有する2層構造の導電部12Bが形成されている。第1の導電部12BAと第2の導電部12BBとは、異なる導電部として形成されていてもよく、同一の導電部として形成されていてもよい。
【0082】
第1の導電部12BAは、基材粒子11の表面上に配置されている。基材粒子11と第2の導電部12BBとの間に、第1の導電部12BAが配置されている。第1の導電部12BAは、基材粒子11に接している。第2の導電部12BBは、第1の導電部12BAに接している。従って、基材粒子11の表面上に第1の導電部12BAが配置されており、第1の導電部12BAの外表面上に第2の導電部12BBが配置されている。
【0083】
導電性粒子1Bは、外表面に複数の突起1Baを有する。導電性粒子1Bでは、導電部12Bは外表面に複数の突起12Baを有する。導電性粒子1Bでは、第1の導電部12BAは外表面に複数の突起12BAaを有する。導電性粒子1Bでは、第2の導電部12BBは外表面に複数の突起12BBaを有する。複数の芯物質13は、導電部12Bの外表面を隆起させている。導電部12Bの外表面が複数の芯物質13によって隆起されていることで、突起1Ba、突起12Ba、突起12BAa及び突起12BBaが形成されている。複数の芯物質13は、導電部12B内に埋め込まれている。突起1Ba、突起12Ba、突起12BAa及び突起12BBaの内側に、芯物質13が配置されている。導電部12Bは、複数の芯物質13を被覆している。導電性粒子本体2Bでは、突起1Ba、突起12Ba、突起12BAa及び突起12BBaを形成するために、芯物質13を用いている。上記導電性粒子本体では、上記突起を形成するために、複数の上記芯物質を用いなくてもよい。上記導電性粒子本体では、複数の上記芯物質を備えていなくてもよい。上記芯物質は、上記基材粒子に接していなくてもよい。上記芯物質は、上記第1の導電部の外表面上に配置されていてもよい。上記第1の導電部の外表面の形状は、球状であってもよい。
【0084】
絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2Bの表面上に配置されている。複数の絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2Bの表面に接触しており、導電性粒子本体2Bの表面に付着している。複数の絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2Bにおける導電部12Bの外表面に接触しており、導電部12Bの外表面に付着している。
【0085】
図6は、導電性粒子の第2の変形例を示す断面図である。
【0086】
図6に示す導電性粒子1Cは、導電性粒子本体2Cと、複数の絶縁性粒子3とを備える。
【0087】
導電性粒子1Aと導電性粒子1Cとでは、導電性粒子本体2Aと導電性粒子本体2Cとが異なる。
【0088】
導電性粒子本体2Cは、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電部12Cとを有する。導電性粒子本体2Cは、芯物質を有しない。
【0089】
導電性粒子本体2Aと導電性粒子本体2Cとでは、芯物質の有無が異なり、結果として導電部が異なっている。導電性粒子1Aでは、芯物質13が用いられ、かつ芯物質13を被覆するように導電部12Aが形成されているのに対し、導電性粒子1Cでは、芯物質は用いられておらず、導電部12Cが形成されている。
【0090】
導電部12Cは、第1の部分と、該第1の部分よりも厚みが厚い第2の部分とを有する。導電性粒子1Cは、外表面に複数の突起1Caを有する。導電性粒子1Cでは、導電部12Cの外表面に複数の突起12Caを有する。突起1Ca及び突起12Caを除く部分が、導電部12Cの上記第1の部分である。突起1Ca及び突起12Caは、導電部12Cの厚みが厚い上記第2の部分である。
【0091】
絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2Cの表面上に配置されている。複数の絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2Cの表面に接触しており、導電性粒子本体2Cの表面に付着している。複数の絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2Cにおける導電部12Cの外表面に接触しており、導電部12Cの外表面に付着している。
【0092】
図7は、導電性粒子の第3の変形例を示す断面図である。
【0093】
図7に示す導電性粒子1Dは、導電性粒子本体2Aと、絶縁層3Dとを備える。
【0094】
導電性粒子1Aと導電性粒子1Dとでは、絶縁性粒子3と絶縁層3Dとが異なる。
【0095】
導電性粒子1Dでは、絶縁層3Dは、導電性粒子本体2Aの表面上に配置されている。絶縁層3Dは、導電性粒子本体2Aの表面に接触しており、導電性粒子本体2Aの表面を被覆している。複数の絶縁層3Dは、導電性粒子本体2Aにおける導電部12Aの外表面に接触しており、導電部12Aの外表面を被覆している。
【0096】
導電性粒子1Dは、外表面に複数の突起1Daを有する。導電性粒子1Dでは、導電部12Aは外表面に複数の突起12Aaを有する。導電性粒子1Dでは、絶縁層3Dは外表面に複数の突起3Daを有する。突起1Da、突起12Aa及び突起3Daがある部分の表面上に、絶縁層3Dが配置されている。突起1Da、突起12Aa及び突起3Daがない部分の表面上にも、絶縁層3Dが配置されている。突起1Da、突起12Aa及び突起3Daがある部分の表面上に配置された絶縁層3Dと、突起1Da、突起12Aa及び突起3Daがない部分の表面上に配置された絶縁層3Dとは、連なっている。上記絶縁層は、上記導電性粒子本体の表面の全体を覆っていてもよく、上記導電性粒子本体の表面の一部を覆っていてもよい。
【0097】
上記絶縁部は、絶縁性粒子又は絶縁層であることが好ましい。導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁部は絶縁性粒子であることが好ましく、複数の上記絶縁性粒子が上記導電性粒子本体の表面上に配置されていることが好ましい。絶縁信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁部は絶縁層であることが好ましく、上記絶縁層が上記導電性粒子本体の表面上に配置されていることが好ましい。
【0098】
以下、導電性粒子等の他の詳細を説明する。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味し「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との一方又は双方を意味する。
【0099】
(導電性粒子本体)
上記導電性粒子本体は、導電部を有する。上記導電部は、導電層であることが好ましい。上記導電性粒子本体は、基材粒子と、基材粒子の表面上に配置された導電部を有する導電性粒子であってもよく、全体が導電部である金属粒子であってもよい。コストを低減したり、導電性粒子本体の柔軟性を高くして、電極間の導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、基材粒子と、基材粒子の表面上に配置された導電部とを有する導電性粒子本体が好ましい。
【0100】
基材粒子:
上記基材粒子としては、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。上記基材粒子は、金属粒子を除く基材粒子であることが好ましく、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であることがより好ましい。上記基材粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを備えるコアシェル粒子であってもよい。上記コアが有機コアであってもよく、上記シェルが無機シェルであってもよい。
【0101】
上記樹脂粒子の材料として、種々の有機物が好適に用いられる。上記樹脂粒子の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、及びポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ジビニルベンゼン重合体、並びにジビニルベンゼン系共重合体等が挙げられる。上記ジビニルベンゼン系共重合体等としては、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体及びジビニルベンゼン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記樹脂粒子の硬度を好適な範囲に容易に制御できるので、上記樹脂粒子の材料は、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体であることが好ましい。
【0102】
上記樹脂粒子を、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を重合させて得る場合には、該エチレン性不飽和基を有する重合性単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
【0103】
上記非架橋性の単量体としては、例えば、スチレン、及びα-メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、及び無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びグリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート化合物;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、及びプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、及びステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル化合物;エチレン、プロピレン、イソプレン、及びブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、及びクロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
【0104】
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、並びに、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、及びビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
【0105】
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記樹脂粒子を得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
【0106】
上記基材粒子が金属を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である場合には、基材粒子を形成するための無機物としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム、ジルコニア及びカーボンブラック等が挙げられる。上記無機物は、金属ではないことが好ましい。上記シリカにより形成された粒子としては特に限定されないが、例えば、加水分解性のアルコキシシリル基を2つ以上有するケイ素化合物を加水分解して架橋重合体粒子を形成した後に、必要に応じて焼成を行うことにより得られる粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
【0107】
上記有機無機ハイブリッド粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを有するコアシェル型の有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。上記コアが有機コアであることが好ましい。上記シェルが無機シェルであることが好ましい。電極間の接続抵抗を効果的に低くする観点からは、上記基材粒子は、有機コアと上記有機コアの表面上に配置された無機シェルとを有する有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。
【0108】
上記有機コアの材料としては、上述した樹脂粒子の材料等が挙げられる。
【0109】
上記無機シェルの材料としては、上述した基材粒子の材料として挙げた無機物が挙げられる。上記無機シェルの材料は、シリカであることが好ましい。上記無機シェルは、上記コアの表面上で、金属アルコキシドをゾルゲル法によりシェル状物とした後、該シェル状物を焼成させることにより形成されていることが好ましい。上記金属アルコキシドはシランアルコキシドであることが好ましい。上記無機シェルはシランアルコキシドにより形成されていることが好ましい。
【0110】
上記基材粒子が金属粒子である場合に、該金属粒子の材料である金属としては、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金及びチタン等が挙げられる。
【0111】
上記基材粒子の粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。上記基材粒子の粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の間隔が小さくなり、かつ導電層の厚みを厚くしても、小さい導電性粒子が得られる。さらに基材粒子の表面に導電部を形成する際に凝集し難くなり、凝集した導電性粒子が形成され難くなる。
【0112】
上記基材粒子の粒子径は、3μm以上5μm以下であることが特に好ましい。上記基材粒子の粒子径が、3μm以上5μm以下の範囲内であると、基材粒子の表面に導電部を形成する際に凝集し難くなり、凝集した導電性粒子が形成され難くなる。
【0113】
上記基材粒子の粒子径は、基材粒子が真球状である場合には、直径を示し、基材粒子が真球状ではない場合には、最大径を示す。
【0114】
上記基材粒子の粒子径は、数平均粒子径を示す。上記基材粒子の粒子径は粒度分布測定装置等を用いて求められる。基材粒子の粒子径は、任意の基材粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。導電性粒子において、上記基材粒子の粒子径を測定する場合には、例えば、以下のようにして測定できる。
【0115】
導電性粒子の含有量が30重量%となるように、Kulzer社製「テクノビット4000」に添加し、分散させて、導電性粒子検査用埋め込み樹脂を作製する。検査用埋め込み樹脂中に分散した導電性粒子の中心付近を通るようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製「IM4000」)を用いて、導電性粒子の断面を切り出す。そして、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、画像倍率を25000倍に設定し、50個の導電性粒子を無作為に選択し、各導電性粒子の基材粒子を観察する。各導電性粒子における基材粒子の粒子径を計測し、それらを算術平均して基材粒子の粒子径とする。
【0116】
導電部:
本発明では、上記導電性粒子本体は、導電部を有する。上記導電性粒子の全体が導電部であってもよく、上記導電性粒子の表面部分のみが導電部であってもよい。上記導電部は、金属を含むことが好ましい。上記導電部を構成する金属は、特に限定されない。上記金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム、並びにこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属として、錫ドープ酸化インジウム(ITO)を用いてもよい。上記金属は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。電極間の接続抵抗をより一層低くする観点からは、錫を含む合金、ニッケル、パラジウム、銅又は金が好ましく、ニッケル又はパラジウムがより好ましい。
【0117】
また、導通信頼性を効果的に高める観点からは、上記導電部及び上記導電部の外表面部分はニッケルを含むことが好ましい。ニッケルを含む導電部100重量%中のニッケルの含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より一層好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記ニッケルを含む導電部100重量%中のニッケルの含有量は、97重量%以上であってもよく、97.5重量%以上であってもよく、98重量%以上であってもよい。
【0118】
なお、導電部の表面には、酸化により水酸基が存在することが多い。一般的に、ニッケルにより形成された導電部の表面には、酸化により水酸基が存在する。このような水酸基を有する導電部の表面(導電性粒子の表面)に、化学結合を介して、絶縁部を配置できる。
【0119】
上記導電部は、1つの層により形成されていてもよい。上記導電部は、複数の層により形成されていてもよい。すなわち、上記導電部は、2層以上の積層構造を有していてもよい。上記導電部が複数の層により形成されている場合には、最外層を構成する金属は、金、ニッケル、パラジウム、銅又は錫と銀とを含む合金であることが好ましく、金であることがより好ましい。最外層を構成する金属がこれらの好ましい金属である場合には、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、最外層を構成する金属が金である場合には、耐腐食性がより一層高くなる。
【0120】
上記基材粒子の表面上に導電部を形成する方法は特に限定されない。上記導電部を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的な衝突による方法、メカノケミカル反応による方法、物理的蒸着又は物理的吸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。上記導電部を形成する方法は、無電解めっき、電気めっき又は物理的な衝突による方法であることが好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。また、上記物理的な衝突による方法では、例えば、シーターコンポーザ(徳寿工作所社製)等が用いられる。
【0121】
上記導電部の厚みは、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下である。上記導電部の厚みが、上記下限以上及び上記上限以下であると、十分な導電性が得られ、かつ導電性粒子が硬くなりすぎずに、電極間の接続の際に導電性粒子を十分に変形させることができる。
【0122】
上記導電部が複数の層により形成されている場合に、最外層の導電部の厚みは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。上記最外層の導電部の厚みが、上記下限以上及び上記上限以下であると、最外層の導電部が均一になり、耐腐食性が十分に高くなり、かつ電極間の接続抵抗を十分に低くすることができる。
【0123】
上記導電部の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子の断面を観察することにより測定できる。
【0124】
芯物質:
上記導電性粒子本体は、上記導電部の外表面に複数の突起を有することが好ましい。導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。導電部の表面に突起を有する導電性粒子を用いた場合には、電極間に導電性粒子を配置して圧着させることにより、突起により上記酸化被膜を効果的に排除できる。このため、電極と導電部とがより一層確実に接触し、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。さらに、電極間の接続時に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の絶縁部を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0125】
上記突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより導電部を形成する方法、並びに基材粒子の表面に無電解めっきにより導電部を形成した後、芯物質を付着させ、さらに無電解めっきにより導電部を形成する方法等が挙げられる。上記突起を形成する他の方法としては、基材粒子の表面上に、第1の導電部を形成した後、該第1の導電部上に芯物質を配置し、次に第2の導電部を形成する方法、並びに基材粒子の表面上に導電部(第1の導電部又は第2の導電部等)を形成する途中段階で、芯物質を添加する方法等が挙げられる。また、突起を形成するために、上記芯物質を用いずに、基材粒子に無電解めっきにより導電部を形成した後、導電部の表面上に突起状にめっきを析出させ、さらに無電解めっきにより導電部を形成する方法等を用いてもよい。
【0126】
基材粒子の表面に芯物質を付着させる方法としては、例えば、基材粒子の分散液中に、芯物質を添加し、基材粒子の表面に芯物質を、ファンデルワールス力により集積させ、付着させる方法、並びに基材粒子を入れた容器に、芯物質を添加し、容器の回転等による機械的な作用により基材粒子の表面に芯物質を付着させる方法等が挙げられる。付着させる芯物質の量を制御する観点からは、基材粒子の表面に芯物質を付着させる方法は、分散液中の基材粒子の表面に芯物質を集積させ、付着させる方法であることが好ましい。
【0127】
上記芯物質を構成する物質としては、導電性物質及び非導電性物質が挙げられる。上記導電性物質としては、例えば、金属、金属の酸化物、黒鉛等の導電性非金属及び導電性ポリマー等が挙げられる。上記導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン等が挙げられる。上記非導電性物質としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記芯物質が金属であることが好ましい。
【0128】
上記金属は特に限定されない。上記金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム等の金属、並びに錫-鉛合金、錫-銅合金、錫-銀合金、錫-鉛-銀合金及び炭化タングステン等の2種類以上の金属で構成される合金等が挙げられる。電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記金属は、ニッケル、銅、銀又は金が好ましい。上記金属は、上記導電部(導電層)を構成する金属と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0129】
上記芯物質の形状は特に限定されない。芯物質の形状は塊状であることが好ましい。芯物質としては、例えば、粒子状の塊、複数の微小粒子が凝集した凝集塊、及び不定形の塊等が挙げられる。
【0130】
上記芯物質の平均径(平均粒子径)は、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記芯物質の平均径が、上記下限以上及び上限以下であると、電極間の接続抵抗を効果的に低くすることができる。
【0131】
上記芯物質の粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることがより好ましい。芯物質の粒子径は、例えば、任意の芯物質50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各芯物質の粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。
【0132】
(絶縁部)
上記導電性粒子は、上記導電性粒子本体の表面上に配置された絶縁部を備える。この場合には、上記導電性粒子を電極間の接続に用いると、隣接する電極間の短絡を防止できる。具体的には、複数の導電性粒子が接触したときに、複数の電極間に絶縁部が存在するので、上下の電極間ではなく横方向に隣り合う電極間の短絡を防止できる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で導電性粒子を加圧することにより、導電性粒子の導電部と電極との間の絶縁部を容易に排除できる。さらに、導電部の外表面に複数の突起を有する導電性粒子である場合には、導電性粒子の導電部と電極との間の絶縁部をより一層容易に排除できる。
【0133】
絶縁信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁部は、絶縁層であることが好ましい。絶縁信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁層は、上記導電性粒子本体の表面上に配置されていることが好ましい。
【0134】
上記絶縁層の厚みは、上記導電性粒子の粒子径及び上記導電性粒子の用途等によって適宜選択できる。上記絶縁層の厚みは、好ましくは0.1μmを以上、より好ましくは0.3μm以上あり、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。上記絶縁層の厚みが、上記下限を満足すると、上記導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されたときに、複数の上記導電性粒子における導電部同士が接触し難くなる。上記絶縁層の厚みが、上記上限を満足すると、電極間の接続の際に、電極と導電性粒子との間の絶縁層を排除するために、圧力を高くしすぎる必要がなくなり、高温に加熱する必要もなくなる。上記絶縁層の厚みが、上記下限及び上記上限を満足すると、電極間を電気的に接続した場合に、絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0135】
上記絶縁層の厚みは、平均厚みであることが好ましい。上記絶縁層の厚みは、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。上記導電性粒子において、上記絶縁層の厚みを測定する場合には、例えば、以下のようにして測定できる。
【0136】
導電性粒子を含有量が30重量%となるように、Kulzer社製「テクノビット4000」に添加し、分散させて、導電性粒子検査用埋め込み樹脂を作製する。その検査用埋め込み樹脂中の分散した導電性粒子の中心付近を通るようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製「IM4000」)を用いて、導電性粒子の断面を切り出す。そして、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、画像倍率5万倍に設定し、50個の導電性粒子を無作為に選択し、各導電性粒子の絶縁層を観察する。各導電性粒子における絶縁層の厚みを計測し、それらを算術平均して絶縁層の厚みとする。
【0137】
上記導電性粒子の粒子径の、上記絶縁層の厚みに対する比(導電性粒子の粒子径/絶縁層の厚み)は、好ましくは1以上、より好ましくは5以上であり、好ましくは40以下、より好ましくは20以下である。上記比(導電性粒子の粒子径/絶縁層の厚み)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間を電気的に接続した場合に、絶縁信頼性及び導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0138】
導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁部は、絶縁性粒子であることが好ましい。導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、複数の上記絶縁性粒子が、上記導電性粒子本体の表面上に配置されていることが好ましい。
【0139】
上記絶縁性粒子の粒子径は、上記導電性粒子の粒子径及び上記導電性粒子の用途等によって適宜選択できる。上記絶縁性粒子の粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。上記絶縁性粒子の粒子径が、上記下限を満足すると、上記導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されたときに、複数の上記導電性粒子における導電部同士が接触し難くなる。上記絶縁性粒子の粒子径が、上記上限を満足すると、電極間の接続の際に、電極と導電性粒子との間の絶縁性粒子を排除するために、圧力を高くしすぎる必要がなくなり、高温に加熱する必要もなくなる。上記絶縁性粒子の粒子径が、上記下限及び上記上限を満足すると、電極間を電気的に接続した場合に、絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0140】
上記絶縁性粒子の粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることが好ましい。上記絶縁性粒子の粒子径は粒度分布測定装置等を用いて求められる。上記絶縁性粒子の粒子径は、任意の絶縁性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。上記導電性粒子において、上記絶縁性粒子の粒子径を測定する場合には、例えば、以下のようにして測定できる。
【0141】
導電性粒子を含有量が30重量%となるように、Kulzer社製「テクノビット4000」に添加し、分散させて、導電性粒子検査用埋め込み樹脂を作製する。その検査用埋め込み樹脂中の分散した導電性粒子の中心付近を通るようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製「IM4000」)を用いて、導電性粒子の断面を切り出す。そして、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、画像倍率5万倍に設定し、50個の導電性粒子を無作為に選択し、各導電性粒子の絶縁性粒子を観察する。各導電性粒子における絶縁性粒子の粒子径を計測し、それらを算術平均して絶縁性粒子の粒子径とする。
【0142】
上記導電性粒子の粒子径の、上記絶縁性粒子の粒子径に対する比(導電性粒子の粒子径/絶縁性粒子の粒子径)は、好ましくは1以上、より好ましくは5以上であり、好ましくは40以下、より好ましくは20以下である。上記比(導電性粒子の粒子径/絶縁性粒子の粒子径)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間を電気的に接続した場合に、絶縁信頼性及び導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0143】
上記絶縁部の材料としては、絶縁性の樹脂等が挙げられる。上記絶縁性の樹脂としては、基材粒子として用いることが可能な樹脂粒子の材料等が挙げられる。
【0144】
上記絶縁部の材料である絶縁性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン化合物、(メタ)アクリレート重合体、(メタ)アクリレート共重合体、ブロックポリマー、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の架橋物、熱硬化性樹脂及び水溶性樹脂等が挙げられる。
【0145】
上記ポリオレフィン化合物としては、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリレート重合体としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート及びポリブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ブロックポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、SB型スチレン-ブタジエンブロック共重合体、及びSBS型スチレン-ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、ビニル重合体及びビニル共重合体等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド及びメチルセルロース等が挙げられる。また、重合度の調整には連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、チオールや四塩化炭素等を挙げることができる。
【0146】
上記導電部の表面上に上記絶縁性粒子を配置する方法としては、化学的方法、及び物理的もしくは機械的方法等が挙げられる。上記化学的方法としては、例えば、界面重合法、粒子存在下での懸濁重合法及び乳化重合法等が挙げられる。上記物理的もしくは機械的方法としては、スプレードライ、ハイブリダイゼーション、静電付着法、噴霧法、ディッピング及び真空蒸着による方法等が挙げられる。電極間を電気的に接続した場合に、絶縁信頼性及び導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電部の表面上に上記絶縁性粒子を配置する方法は、物理的方法であることが好ましい。
【0147】
上記導電部の外表面、及び上記絶縁性粒子の外表面はそれぞれ、反応性官能基を有する化合物によって被覆されていてもよい。上記導電部の外表面と上記絶縁性粒子の外表面とは、直接化学結合していなくてもよく、反応性官能基を有する化合物によって間接的に化学結合していてもよい。上記導電部の外表面にカルボキシル基を導入した後、該カルボキシル基がポリエチレンイミン等の高分子電解質を介して絶縁性粒子の外表面の官能基と化学結合していても構わない。
【0148】
上記絶縁部として上記絶縁性粒子を用いる場合には、粒子径の異なる2種以上の絶縁性粒子を併用してもよい。粒子径の異なる2種以上の絶縁性粒子を併用することにより、粒子径の大きい絶縁性粒子により被覆された隙間に、粒子径の小さい絶縁性粒子が入り込み、導電性粒子の表面上に絶縁性粒子をより一層効率的に配置することができる。上記絶縁部として上記絶縁性粒子を用いる場合には、上記絶縁性粒子は、粒子径が0.1μm以上0.3μm以下の第1の絶縁性粒子と、粒子径が0.3μm以上3μm以下の第2の絶縁性粒子とを含むことが好ましい。上記第1の絶縁性粒子の粒度分布は、上記第2の絶縁性粒子の粒度分布と重複する部分がないことが好ましい。上記第1の絶縁性粒子の平均粒子径と上記第2の絶縁性粒子の平均粒子径とは、異なることが好ましい。
【0149】
上記絶縁性粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、20%以下であることが好ましい。上記絶縁性粒子の粒子径の変動係数が、上記上限以下であると、得られる絶縁性粒子付き導電性粒子の絶縁性粒子の厚みがより一層均一となり、導電接続の際に均一に圧力をより一層容易に付与することができ、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。
【0150】
上記変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0151】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:絶縁性粒子の粒子径の標準偏差
Dn:絶縁性粒子の粒子径の平均値
【0152】
上記絶縁性粒子の形状は特に限定されない。上記絶縁性粒子の形状は、球状であってもよく、扁平状等の球形状以外の形状であってもよい。
【0153】
(バインダー樹脂)
上記導電フィルムは、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。上記導電性粒子を含む層(ACF層)は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とにより形成されていることが好ましい。上記導電性粒子を含まない層(NCF層)は、バインダー樹脂のみにより形成されていることが好ましい。上記ACF層に用いられるバインダー樹脂と上記NCF層に用いられるバインダー樹脂とは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0154】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダー樹脂は、熱可塑性成分(熱可塑性化合物)又は硬化性成分を含むことが好ましく、硬化性成分を含むことがより好ましい。上記硬化性成分としては、光硬化性成分及び熱硬化性成分が挙げられる。上記光硬化性成分は、光硬化性化合物及び光重合開始剤を含むことが好ましい。上記熱硬化性成分は、熱硬化性化合物及び熱硬化剤を含むことが好ましい。上記導電フィルムでは、上記バインダー樹脂は完全に硬化していないことが好ましい。上記バインダー樹脂は加熱等によりBステージ化していてもよい。
【0155】
上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0156】
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル-スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0157】
上記導電フィルムは、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0158】
上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ、特に限定されない。上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法。上記導電性粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、上記バインダー樹脂中に添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法。上記バインダー樹脂を水又は有機溶剤等で希釈した後、上記導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法。
【0159】
上記導電フィルム100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上であり、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に導電性粒子が効率的に配置され、導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性をより一層高めることができる。
【0160】
(接続構造体)
本発明に係る接続構造体は、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、上記第1の接続対象部材と、上記第2の接続対象部材を接続している接続部とを備える。本発明に係る接続構造体では、上記接続部の材料が、上述した導電フィルムである。本発明に係る接続構造体では、上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記導電性粒子における上記導電部により電気的に接続されている。
【0161】
上記接続構造体は、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材との間に、上記導電フィルムを配置する工程と、熱圧着することにより、導電接続する工程とを経て、得ることができる。上記熱圧着時に、上記絶縁部が上記導電性粒子から脱離することが好ましい。
【0162】
図8は、本発明に係る導電フィルムを用いた接続構造体の一例を示す断面図である。
【0163】
図8に示す接続構造体51は、第1の接続対象部材52と、第2の接続対象部材53と、第1の接続対象部材52及び第2の接続対象部材53を接続している接続部54とを備える。接続部54は、導電性粒子1を含む導電フィルムにより形成されている。上記導電フィルムが熱硬化性を有し、接続部54が導電フィルムを熱硬化させることにより形成されていることが好ましい。なお、
図8では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。導電性粒子1に代えて、導電性粒子1A,1B,1C,1Dを用いてもよい。
【0164】
第1の接続対象部材52は表面(上面)に、複数の第1の電極52aを有する。第2の接続対象部材53は表面(下面)に、複数の第2の電極53aを有する。第1の電極52aと第2の電極53aとが、複数の導電性粒子1における導電部12(
図8では符号を示さず)により電気的に接続されている。従って、第1の接続対象部材52及び第2の接続対象部材53が導電性粒子1における導電部12(
図8では符号を示さず)により電気的に接続されている。
【0165】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例としては、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記導電フィルムを配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記加圧時の圧力は好ましくは40MPa以上、より好ましくは60MPa以上であり、好ましくは90MPa以下、より好ましくは70MPa以下である。上記加熱時の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下である。上記加圧時の圧力及び加熱時の温度が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電接続時に導電性粒子本体の表面から絶縁部が容易に脱離でき、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。
【0166】
上記積層体を加熱及び加圧する際に、上記導電性粒子本体と、上記第1の電極及び上記第2の電極との間に存在している上記絶縁部を排除することができる。例えば、上記加熱及び加圧の際には、上記導電性粒子本体と、上記第1の電極及び上記第2の電極との間に存在している上記絶縁部が、上記導電性粒子本体の表面から容易に脱離する。なお、上記加熱及び加圧の際には、上記導電性粒子本体の表面から一部の上記絶縁部が脱離して、上記導電部の表面が部分的に露出することがある。上記導電部の表面が露出した部分が、上記第1の電極及び上記第2の電極に接触することにより、上記導電性粒子本体における導電部を介して第1の電極と第2の電極とを電気的に接続することができる。
【0167】
上記第1の接続対象部材及び第2の接続対象部材は、特に限定されない。上記第1の接続対象部材及び第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、半導体パッケージ、LEDチップ、LEDパッケージ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びに樹脂フィルム、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル、リジッドフレキシブル基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板等の電子部品等が挙げられる。上記第1の接続対象部材及び第2の接続対象部材は、電子部品であることが好ましい。
【0168】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極、SUS電極、及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極、銀電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0169】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0170】
(実施例1)
(1)導電性粒子本体の作製
粒子径が3μmのテトラメチロールメタンテトラアクリレートとジビニルベンゼンとの共重合樹脂により形成された樹脂粒子(基材粒子)を用意した。パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、基材粒子10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、基材粒子を取り出した。次いで、基材粒子をジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、基材粒子の表面を活性化させた。表面が活性化された基材粒子を十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、分散液を得た。次に、ニッケル粒子スラリー(平均粒子径0.15μm)1gを3分間かけて上記分散液に添加し、芯物質が付着された基材粒子を含む懸濁液を得た。
【0171】
また、硫酸ニッケル0.35mol/L、ジメチルアミンボラン1.38mol/L及びクエン酸ナトリウム0.5mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。
【0172】
得られた懸濁液を70℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。その後、懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、基材粒子の表面に導電部(ニッケル-ボロン層、厚み0.15μm)が形成された導電性粒子本体を得た。
【0173】
(2)導電性粒子の作製
得られた導電性粒子本体10gを、4つ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、温度プローブを取り付けた2000mLセパラブルフラスコに入れ、イソプロピルアルコール1000mL、及び蒸留水50mLを入れた。さらにチタンアルコキシドを0.5mol/Lとなるように入れた後、250rpmで攪拌し、窒素雰囲気下で25℃で1時間重合を行うことにより、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子では、導電性粒子本体の表面上に絶縁層(厚み0.1μm)が配置されていた。
【0174】
(3)導電フィルム(異方性導電フィルム)の作製
得られた導電性粒子60重量部と、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂8重量部と、フルオレン型エポキシ樹脂1重量部と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂10重量部と、SI-60L(三新化学工業社製)0.06重量部とを配合して、導電性粒子を含む層(ACF層)を得た。具体的には、固形分が40重量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)に上記の配合物を溶解させて、溶解液を得た。遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌した後、バーコーターを用いて乾燥後の厚みが3.5μmになるよう離型PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗工した。室温で真空乾燥することで、MEKを除去することにより、導電性粒子を含む層(ACF層)を得た。得られた導電性粒子を含む層(ACF層)100体積%中の導電性粒子の含有量は62体積%であった。
【0175】
また、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂8重量部と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂10重量部と、SI-60L(三新化学工業社製)0.06重量部とを配合し、導電性粒子を含まない層(NCF層)を得た。具体的には、固形分が40重量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)に上記の配合物を溶解させて、溶解液を得た。バーコーターを用いて乾燥後の厚みが3.5μmになるよう離型PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗工した。室温で真空乾燥することで、MEKを除去することにより、導電性粒子を含まない層(NCF層)を得た。
【0176】
上記ACF層と上記NCF層とを温度40℃及び圧力5MPaの条件でラミネート加工することにより、導電フィルムを得た。
【0177】
(4)接続構造体の作製
L/Sが10μm/10μmであるIZO電極パターン(第1の電極、電極表面の金属のビッカース硬度100Hv)が上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが10μm/10μmであるAu電極パターン(第2の電極、電極表面の金属のビッカース硬度50Hv)が下面に形成された半導体チップを用意した。
【0178】
上記透明ガラス基板上に、得られた導電フィルムを積層した。次に、導電フィルムの上面に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、導電フィルムの温度が140℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、電極面積に対して60MPaの圧力をかけて導電フィルムを140℃で硬化させ、接続構造体を得た。
【0179】
(実施例2~6,8~18,20~25)
絶縁層の厚み、導電性粒子を含む層(ACF層)100体積%中の導電性粒子の含有量、導電フィルム100体積%中の導電性粒子の含有量、導電部の厚み、基材粒子の粒子径、芯物質の粒子径、及び芯物質の材料を、下記の表1~4に示すように変更した。上記の変更以外は実施例1と同様にして、導電性粒子本体、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0180】
(実施例7)
(1)導電性粒子本体の作製
実施例1と同様にして、導電性粒子本体を得た。
【0181】
(2)絶縁性粒子の作製
4つ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブを取り付けた1000mLセパラブルフラスコに、下記の組成物を入れた後、上記組成物を固形分が10重量%となるように蒸留水を添加して、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下50℃で5時間重合を行った。上記組成物は、メタクリル酸グリシジル45mmol、メタクリル酸メチル380mmol、ジメタクリル酸エチレングリコール13mmol、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールメタクリレート0.5mmol、及び2,2’-アゾビス{2-[N-(2-カルボキシエチル)アミジノ]プロパン}1mmolを含む。反応終了後、凍結乾燥して、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールメタクリレートに由来するP-OH基を表面に有する絶縁性粒子(粒子径0.36μm)を得た。
【0182】
(3)導電性粒子の作製
上記で得られた絶縁性粒子を超音波照射下で蒸留水に分散させ、絶縁性粒子の10重量%水分散液を得た。得られた導電性粒子10gを蒸留水500mLに分散させ、絶縁性粒子の10重量%水分散液1gを添加し、室温で8時間攪拌した。3μmのメッシュフィルターで濾過した後、さらにメタノールで洗浄、乾燥し、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子では、導電性粒子本体の表面上に絶縁性粒子が配置されていた。
【0183】
(4)導電フィルム(異方性導電フィルム)の作製
得られた導電性粒子を45重量部用いたこと、導電性粒子を含む層(ACF層)100体積%中の導電性粒子の含有量が68体積%であること以外は、実施例1と同様にして、導電フィルムを得た。
【0184】
(5)接続構造体の作製
得られた導電フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0185】
(実施例19)
(1)導電性粒子本体の作製
芯物質を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、導電性粒子本体を得た。
【0186】
(2)絶縁性粒子の作製
絶縁性粒子の粒子径を0.5μmとしたこと以外は、実施例7と同様にして、絶縁性粒子を得た。
【0187】
(3)導電性粒子の作製
実施例7と同様にして、導電性粒子を得た。
【0188】
(4)導電フィルム(異方性導電フィルム)の作製
実施例1と同様にして、導電フィルムを得た。
【0189】
(5)接続構造体の作製
得られた導電フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0190】
(比較例1)
導電フィルムの作製の際に、導電性粒子を含む層(ACF層)100体積%中の導電性粒子の含有量が56体積%であること以外は、実施例4と同様にして、導電フィルムを得た。
【0191】
(比較例2)
導電フィルムの作製の際に、導電性粒子を含む層(ACF層)100体積%中の導電性粒子の含有量が83体積%であること以外は、実施例4と同様にして、導電フィルムを得た。
【0192】
(比較例3)
導電フィルムの作製の際に、導電性粒子を含む層(ACF層)100体積%中の導電性粒子の含有量が57体積%であること、及び導電フィルム100体積%中の導電性粒子の含有量が3体積%であること以外は、実施例4と同様にして、導電フィルムを得た。
【0193】
(比較例4)
導電フィルムの作製の際に、導電性粒子を含む層(ACF層)100体積%中の導電性粒子の含有量が92体積%であること、及び導電フィルム100体積%中の導電性粒子の含有量が82体積%であること以外は、実施例4と同様にして、導電フィルムを得た。
【0194】
(比較例5)
導電フィルムの作製の際に、導電性粒子を含む層(ACF層)100体積%中の導電性粒子の含有量が49体積%であること以外は、実施例4と同様にして、導電フィルムを得た。
【0195】
(比較例6)
導電フィルムの作製の際に、導電性粒子を含む層(ACF層)100体積%中の導電性粒子の含有量が32体積%であること以外は、実施例4と同様にして、導電フィルムを得た。
【0196】
(評価)
(1)隣接する導電性粒子本体間の距離(距離R)
隣接する上記導電性粒子本体間の距離を、得られた導電フィルム中の任意の導電性粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、任意の導電性粒子50個における距離Rを算術平均して算出した。
【0197】
(2)導電フィルムを平面視したときの導電フィルムの全面積100%に占める導電性粒子本体が配置されている部分の面積(占有率)
占有率を、得られた導電フィルムの任意の場所を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、導電フィルムの全面積100%に対する導電性粒子本体の投影面積の百分率を算術平均して算出した。
【0198】
(3)導通信頼性(上下の電極間)
得られた20個の接続構造体の上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。導通信頼性を下記の基準で判定した。
【0199】
[導通信頼性の判定基準]
○○○:接続抵抗が、1.5Ω以下
○○:接続抵抗が、1.5Ωを超え2Ω以下
○:接続抵抗が、2Ωを超え5Ω以下
△:接続抵抗が、5Ωを超え10Ω以下
×:接続抵抗が、10Ωを超え15Ω以下
××:接続抵抗が、15Ωを超える
【0200】
(4)絶縁信頼性(横方向に隣り合う電極間)
上記(3)導通信頼性の評価で得られた20個の接続構造体において、隣接する電極間のリークの有無を、テスターで抵抗値を測定することにより評価した。絶縁信頼性を下記の基準で評価した。
【0201】
[絶縁信頼性の判定基準]
○○○:抵抗値が108Ω以上の接続構造体の個数が、20個
○○:抵抗値が108Ω以上の接続構造体の個数が、18個以上20個未満
○:抵抗値が108Ω以上の接続構造体の個数が、15個以上18個未満
△:抵抗値が108Ω以上の接続構造体の個数が、10個以上15個未満
×:抵抗値が108Ω以上の接続構造体の個数が、10個未満
【0202】
結果を下記の表1~4に示す。
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【符号の説明】
【0207】
1,1A,1B,1C,1D…導電性粒子
1Aa,1Ba,1Ca,1Da…突起
2,2A,2B,2C…導電性粒子本体
3…絶縁性粒子
3D…絶縁層
3Da…突起
11…基材粒子
12,12A,12B…導電部
12Aa,12Ba,12Ca…突起
12BA…第1の導電部
12BB…第2の導電部
12BAa,12BBa…突起
13…芯物質
21,21A…導電フィルム
22…導電性粒子を含む層
23,24…導電性粒子を含まない層
51…接続構造体
52…第1の接続対象部材
52a…第1の電極
53…第2の接続対象部材
53a…第2の電極
54…接続部