(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/18 20060101AFI20220830BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20220830BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20220830BHJP
B60C 15/00 20060101ALI20220830BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20220830BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B60C9/18 K
B60C9/22 G
B60C9/00 A
B60C15/00 K
B60C15/06 B
B60C11/00 D
(21)【出願番号】P 2018234252
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 敬士
(72)【発明者】
【氏名】本田 真悟
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-190706(JP,A)
【文献】特開2017-218042(JP,A)
【文献】特開2017-193222(JP,A)
【文献】特開2018-118570(JP,A)
【文献】特開2018-103965(JP,A)
【文献】特開2014-226945(JP,A)
【文献】特開平9-240215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に接するトレッド部と、
前記トレッド部に連なり、前記トレッド部のタイヤ径方向内側に位置するタイヤサイド部と、
前記タイヤサイド部に連なり、前記タイヤサイド部のタイヤ径方向内側に位置するビード部と
、
前記トレッド部のタイヤ径方向内側に設けられるベルト層と
を備えるタイヤであって、
前記ベルト層は、
タイヤ幅方向に対して傾斜する傾斜コードを有する1枚の傾斜ベルトと、
前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ周方向に沿って巻き回される周方向コードを有する周方向ベルトと
を含み、
前記傾斜コード
は、繊度が1500dtex以下のナイロン繊維によって形成され、
前記周方向コードは、
繊度が2500dtex以下のアラミド繊維によって形成され、
タイヤ赤道線の位置における前記トレッド部を構成するゴムのタイヤ径方向に沿ったトレッド厚さは、5mm以下であるタイヤ。
【請求項2】
前記トレッド厚さは、1.5mm以上、3.5mm以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記傾斜コードのタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、35度以上、55度以
下である請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤサイド部を構成するゴムの最大厚さは、3mm以下であり、
前記ビード部を構成するゴムの最大厚さは、13mm以下である請求項1乃至3の何れか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記タイヤの骨格を形成するカーカスを備え、
前記カーカスは、
本体部と、
前記本体部に連なり、ビードコアを介してタイヤ幅方向外側に折り返された折り返し部と
を有し、
前記ビード部は、前記本体部と前記折り返し部との間へのビードフィラーの配置が省略されたビードフィラーレス構造である請求項1乃至4の何れか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記トレッド部を構成するゴムの30℃におけるtanδは、0.08以上、0.2以下である請求項1乃至5の何れか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーカーなどに好適に装着され、低転がり抵抗と、軽量であることとが要求されるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池を電源として利用し、電気モーターによって走行する車両であるソーラーカーに好適に用い得る空気入りタイヤ(以下、タイヤと適宜省略する)が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されているタイヤは、交錯ベルト層を2枚以下のベルトによって構成するとともに、交錯ベルトのタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に沿って巻き回されたコードを有するスパイラルベルト(周方向ベルト)を備える。
【0004】
このような構成によって、転がり抵抗の低減と軽量化とを両立している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したようなタイヤによれば、転がり抵抗との低減と軽量化とを両立し得るが、さらなる改善が求められていた。
【0007】
また、軽量化を図るため、交錯ベルト層などの内部構造を簡素化すると、パンクし易くなり、耐久性が低下する。
【0008】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、転がり抵抗との低減と軽量化とを図りつつ、パンクに対する耐久性を向上させたタイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、路面に接するトレッド部(トレッド部20)と、前記トレッド部に連なり、前記トレッド部のタイヤ径方向内側に位置するタイヤサイド部(タイヤサイド部30)と、前記タイヤサイド部に連なり、前記タイヤサイド部のタイヤ径方向内側に位置するビード部(ビード部60)と前記トレッド部のタイヤ径方向内側に設けられるベルト層(ベルト層50)とを備えるタイヤ(空気入りタイヤ10)であって、前記ベルト層は、タイヤ幅方向に対して傾斜する傾斜コード(傾斜コード51)を有する1枚の傾斜ベルト(傾斜ベルト50A)と、前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ周方向に沿って巻き回される周方向コード(周方向コード52)を有する周方向ベルト(周方向ベルト50B)とを含み、前記傾斜コード及び前記周方向コードは、所定の有機繊維によって形成され、タイヤ赤道線の位置における前記トレッド部を構成するゴムのタイヤ径方向に沿ったトレッド厚さ(トレッド厚さT1)は、5mm以下である。
【発明の効果】
【0010】
上述したタイヤによれば、転がり抵抗との低減と軽量化とを図りつつ、パンクに対する耐久性を向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。
【
図2】
図2は、カーカス40及びベルト層50の一部を示す上面図(トレッド面視)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0013】
(1)タイヤの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10に一部断面図である。具体的には、
図1は、空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。なお、
図1では、タイヤ赤道線CLを基準とした空気入りタイヤ10の片側のみが図示されている。また、
図1では、図面のハッチングが一部省略されている。
【0014】
空気入りタイヤ10は、太陽電池を電源として利用し、電気モーターによって走行する車両であるソーラーカーなどの軽車両に用いられる。特に、レース用ソーラーカーに好適に用い得る。
【0015】
本実施形態では、空気入りタイヤ10の径サイズは、16インチであり、トレッド幅は、100mm以下(例えば、75, 95サイズ)である。また、設定内圧(空気圧)は、500~600kPa程度である。
【0016】
図1に示すように、空気入りタイヤ10は、トレッド部20、タイヤサイド部30、カーカス40、ベルト層50、ビード部60及びチェーファー70を備える。
【0017】
トレッド部20は、路面と接する部分である。トレッド部20は、空気入りタイヤ10が装着されるソーラーカーなどの軽車両の特性及び走行条件に基づいて、適切な配合のゴムが用いられるとともに、トレッドパターン(不図示)が形成される。
【0018】
なお、ソーラーカー(特に、レース用ソーラーカー)は、一般的な乗用自動車よりも大幅に軽量であるとともに、直進走行が主体である。
【0019】
トレッド部20を構成するゴムの厚さは、一般的な乗用自動車用タイヤよりも薄い。本実施形態では、タイヤ赤道線CLの位置におけるトレッド部20を構成するゴムのタイヤ径方向に沿ったトレッド厚さT1)は、5mm以下である。なお、トレッド厚さT1は、1.5mm以上、3.5mm以下であることが好ましい。
【0020】
また、トレッド部20を構成するゴムの30℃における歪エネルギーロス(tanδ)は、0.08以上、0.2以下であることが好ましい。
【0021】
タイヤサイド部30は、トレッド部20に連なり、トレッド部20のタイヤ径方向内側に位置する。タイヤサイド部30は、トレッド部20のタイヤ幅方向外側端からビード部60の上端までの領域である。タイヤサイド部30は、サイドウォールなどと呼ばれることもある。
【0022】
本実施形態では、タイヤサイド部30を構成するゴムの厚さも、一般的な乗用自動車用タイヤよりも薄い。具体的には、タイヤサイド部30を構成するゴムの最大厚さT2は、3mm以下である。
【0023】
なお、最大厚さT2は、
図1に示すような空気入りタイヤ10の断面視において、タイヤサイド部30の内側面に対して略垂直に交わるような直線に沿った厚さを意味する。
【0024】
カーカス40は、空気入りタイヤ10の骨格を形成する。カーカス40は、タイヤ径方向に沿って放射状に配置されたカーカスコード43(
図1において不図示、
図2参照)を有するラジアル構造である。カーカス40は、1枚(1層)のみで形成されている。
【0025】
但し、カーカス40は、ラジアル構造に限定されず、カーカスコードがタイヤ径方向に交錯するように配置されたバイアス構造でも構わない。
【0026】
カーカス40は、本体部41と、折り返し部42とを有する。本体部41は、トレッド部20、タイヤサイド部30及びビード部60に亘って設けられ、ビードコア61において折り返されるまでの部分である。
【0027】
折り返し部42は、本体部41に連なり、ビードコア61を介してタイヤ幅方向外側に折り返された部分である。
【0028】
ベルト層50は、トレッド部20のタイヤ径方向内側に設けられる。ベルト層50は、カーカス40のタイヤ径方向外側において、タイヤ周方向に沿って円環状に設けられる。
【0029】
本実施形態では、ベルト層50は、傾斜ベルト50Aと周方向ベルト50Bとによって構成される。
【0030】
傾斜ベルト50Aは、カーカス40の本体部41と隣接し、本体部41のタイヤ径方向外側に設けられる。傾斜ベルト50Aは、ラジアル構造を有するタイヤ(ラジアルタイヤ)に一般的に設けられる交錯ベルト層と類似しているが、傾斜ベルト50Aは、1枚のみ設けられる。つまり、傾斜ベルト50Aは、コードが交錯するような交錯ベルトではなく、後述するように、タイヤ幅方向(或いはタイヤ径方向基準でもよい)に対してコードが一方向に傾斜して配置されている。
【0031】
周方向ベルト50Bは、傾斜ベルト50Aと隣接し、傾斜ベルト50Aのタイヤ径方向外側に設けられる。周方向ベルト50Bは、タイヤ周方向に沿ってコードが巻き回されたスパイラルベルトの一種である。
【0032】
ビード部60は、タイヤサイド部30に連なり、タイヤサイド部30のタイヤ径方向内側に位置する。ビード部60は、円環状であり、リムホイール(不図示)に係止される。
【0033】
ビード部60は、ビードコア61を有する。ビードコア61は、タイヤ周方向に延びる円環(リング)状の部材であり、金属(スチール)のコードによって形成される。
【0034】
ビード部60は、カーカス40の本体部41と折り返し部42との間へのビードフィラーの配置が省略されたビードフィラーレス構造である。つまり、一般的な乗用自動車用タイヤなどでは、カーカス40の本体部41と折り返し部42との間に形成されるビードコア61よりもタイヤ径方向外側の楔型の空間60sには、空間60sを埋める剛性部材であるビードフィラーが広く設けられるが、空気入りタイヤ10では、このようなビードフィラーが設けられていない。
【0035】
空間60sは、単に空隙である場合もあれば、生タイヤの状態である空気入りタイヤ10の加硫時に周囲から流れ出たゴムによって埋められている場合もある。
【0036】
また、本実施形態では、ビード部60を構成するゴムの厚さも、一般的な乗用自動車用タイヤよりも薄い。具体的には、ビード部60を構成するゴムの最大厚さT3は、13mm以下である。
【0037】
なお、最大厚さT3は、最大厚さT2と同様に、
図1に示すような空気入りタイヤ10の断面視において、ビード部60の内側面に対して略垂直に交わるような直線に沿った厚さを意味する。
【0038】
チェーファー70は、ビード部60の外周面に設けられる。チェーファー70は、ビード部60がリムホイールと擦れて摩耗することを防止する。チェーファー70は、有機繊維の補強コードなどによって形成される。
【0039】
(2)ベルト層の具体的構成
図2は、カーカス40及びベルト層50の一部を示す上面図(トレッド面視)である。
図2に示すように、カーカス40は、ラジアル方向に沿って配置された複数のカーカスコード43を有する。
【0040】
カーカスコード43は、ゴム部材によって被覆されている。本実施形態では、カーカスコード43は、2本のポリエステル繊維が撚られて形成される。カーカスコード43の繊度は、2500dtex以下であることが好ましい。
【0041】
ベルト層50は、上述したように、傾斜ベルト50Aと周方向ベルト50Bとによって構成されている。つまり、ベルト層50は、1枚の傾斜ベルトと、1枚の周方向ベルトのみによって構成されている。
【0042】
傾斜ベルト50Aは、タイヤ幅方向に対して傾斜する傾斜コード51を有する。具体的には、傾斜ベルト50Aは、タイヤ幅方向(タイヤ径方向を基準としてもよい)に対して傾斜する複数の傾斜コード51を有する。
【0043】
傾斜コード51は、ゴム部材によって被覆されており、傾斜コード51は、隣接する傾斜コード51と概ね等間隔で配置される。本実施形態では、傾斜コード51は、ナイロン繊維によって形成される。つまり、傾斜コード51は、所定の有機繊維によって形成される。傾斜コード51の繊度は、1500dtex以下であることが好ましい。
【0044】
傾斜コード51のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θは、35度以上、55度以下である。なお、傾斜角度θは、40度以上、50度以下であることが好ましい。
【0045】
周方向ベルト50Bは、傾斜ベルト50Aのタイヤ径方向外側に設けられる。周方向ベルト50Bは、タイヤ周方向に沿って巻き回される周方向コード52を有する。
【0046】
周方向コード52は、タイヤ周方向に沿って、タイヤ幅方向における一端側から他端側に亘って複数回巻き回されている。周方向コード52も、ゴム部材によって被覆されている。
【0047】
本実施形態では、周方向コード52は、アラミド繊維によって形成される。つまり、周方向コード52は、所定の有機繊維によって形成される。周方向コード52の繊度は、2500dtex以下であることが好ましい。
【0048】
また、周方向ベルト50Bの初期弾性係数は、1000cN/tex以上であることが好ましい。初期弾性係数とは、空気入りタイヤ10の新品時における弾性係数を意味する。
【0049】
(3)作用・効果
次に、上述した空気入りタイヤ10の作用・効果について説明する。上述した構成を有する空気入りタイヤ10を製造し、転がり抵抗及びパンクに対する耐久性を評価した。
【0050】
評価の条件などは、以下のとおりである。
【0051】
・タイヤサイズ:95/80R16
・適合リムサイズ: 3J
転がり抵抗の試験では、内圧を500kPa及び600kPaに設定し、速度120km/hから惰行させた場合における走行距に基づいて、転がり抵抗の値を評価した。なお、車両のスリップ角及びキャンバー角は、0度とし、タイヤには、5kNの荷重を負荷した。
【0052】
パンクに対する耐久性の試験では、内圧を500kPaに設定し、鋭角な円錐状の突起にタイヤのトレッド面に押し付ける際に生じたエネルギー値を評価した。
【0053】
この結果、空気入りタイヤ10では、従来の同種の空気入りタイヤと同等または同等以上の低い転がり抵抗を有していること、及び高いパンクに対する耐久性を有していることが確認できた。
【0054】
上述したように、空気入りタイヤ10では、タイヤ幅方向に対して傾斜する傾斜コード51を有する1枚の傾斜ベルト50Aと、タイヤ周方向に沿って巻き回される周方向コード52を有する1枚の周方向ベルト50Bが備えられている。また、傾斜コード51及び周方向コード52は、有機繊維によって形成されている。
【0055】
さらに、トレッド厚さT1は、5mm以下である。
【0056】
このように、薄いトレッド部20構成が簡素化されたベルト層50、及び有機繊維のコードを用いることによって、転がり抵抗との低減と軽量化とを両立し得る。
【0057】
さらに、カーカス40と周方向ベルト50Bとの間に、傾斜コード51を有する1枚の傾斜ベルト50Aのみを介在させることによって、パンクに対する耐久性が飛躍的に向上する。具体的には、異物などを踏むことによってトレッド部20の表面に生じた亀裂の進展は、傾斜ベルト50Aによって阻止され、カーカス40に到達しない。これにより、リムホイールに組み付けられた空気入りタイヤ10に充填された空気が漏れる状態を回避し得る。さらに、傾斜ベルト50Aは、1枚のみであるため、重量増も抑制し得る。
【0058】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、転がり抵抗との低減と軽量化とを図りつつ、パンクに対する耐久性が向上する。
【0059】
また、トレッド部20の厚さ(ゲージ)が薄いため、走行時における空気入りタイヤ10の径方向における成長(径成長)が抑えられる。一方、径成長が大きいと、空気入りタイヤ10の接地面積が小さくなり、接地圧が高くなる。このため、路面上の異物などを踏んだ場合におけるダメージが大きい。また、接地圧の上昇は、耐摩耗性の観点からも好ましくない。
【0060】
つまり、トレッド厚さT1が薄いことは、パンクを含む耐久性の向上にも寄与している。
【0061】
空気入りタイヤ10は、ソーラーカーなどの軽車両に装着されることを前提としたタイヤであり、極めて低い転がり抵抗が求められる。
【0062】
タイヤの転がり抵抗を極限まで低減するためには、ゴム部材から発生する歪エネルギーロスを最小限にすることが重要である。ゴム部材の使用量をできる限り抑え、ゲージを薄くする必要がある。
【0063】
また、このようなタイヤを使用する際にはできるだけ高内圧で使用することによって転がり抵抗をさらに低くすることが可能となる。このため、転がり抵抗を抑制することに特化したタイヤにおいては、一層のカーカスに、一層のスパイラルベルト(補強層)を備える構造が広く用いられてきた。
【0064】
一方で、高内圧でタイヤを使用した場合、トレッドなどのタイヤ表面のゴム層に大きな張力(テンション)が掛かった状態となる。このため、路面上の凹凸によりタイヤ表面に微小な傷が付いた際に亀裂を起点に歪が集中し、容易にゴム内を亀裂が進展する状況が発生する。
【0065】
この際、ゴム厚さ(ゴムゲージ)が厚ければ張力が解放される方向となり、当該ゴム内で亀裂の進展が緩和される。しかしながら、ゴムゲージを薄くした場合、亀裂がゴム層を貫通してタイヤ内面まで達し、空気漏れ(パンク)が発生する。
【0066】
空気入りタイヤ10によれば、1枚の傾斜ベルト50Aを備えることによって、このような亀裂の進展を効果的に抑制し、他の性能を殆ど犠牲にすることなく、パンクに対する耐久性を高めている。
【0067】
また、トレッド厚さT1は、1.5mm以上、3.5mm以下とすれば、パンクに対する耐久性を確保しつつ、さらに転がり抵抗を低減し得る。また、タイヤサイド部30の最大厚さT2は3mm以下であり、ビード部60の最大厚さT3は13mm以下である。これにより、転がり抵抗のさらなる低減に寄与し得る。
【0068】
本実施形態では、傾斜コード51の傾斜角度θは、35度以上、55度以下、好ましくは、40度以上、50度以下である。これにより、ベルト層50における亀裂の進展、具体的には、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向における亀裂の進展を効果的に阻止し得る。これにより、パンクに対する耐久性をさらに向上し得る。
【0069】
本実施形態では、ビードフィラーレス構造が採用されている。これにより、空気入りタイヤ10のさらなる軽量化を図り得る。なお、空気入りタイヤ10が装着される車両の特性を考慮すると、ビード部60の剛性部材であるビードフィラーを設けなくても要求される性能を発揮し得る。
【0070】
本実施形態では、トレッド部20を構成するゴムの30℃におけるtanδは、0.08以上、0.2以下である。これにより、さらに転がり抵抗を低減し得る。
【0071】
(4)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0072】
例えば、上述した実施形態では、空気入りタイヤ10は、ソーラーカーに好適に用い得るものとして説明したが、空気入りタイヤ10は、ソーラーカー以外の軽車両、例えば、高速走行を主体とした二輪自動車、三輪自動車、或いは自転車などに装着されても構わない。
【0073】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0074】
10 空気入りタイヤ
20 トレッド部
30 タイヤサイド部
40 カーカス
41 本体部
42 折り返し部
43 カーカスコード
50 ベルト層
50A 傾斜ベルト
50B 周方向ベルト
51 傾斜コード
52 周方向コード
60 ビード部
60s 空間
61 ビードコア
70 チェーファー