(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法及び吸音部材
(51)【国際特許分類】
B60C 5/00 20060101AFI20220830BHJP
B29D 30/06 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B60C5/00 F
B29D30/06
(21)【出願番号】P 2018236637
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】辻 法行
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-254339(JP,A)
【文献】国際公開第2005/012007(WO,A1)
【文献】特開2008-254337(JP,A)
【文献】特開2014-091332(JP,A)
【文献】特開2009-039901(JP,A)
【文献】特開2009-034924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内面に吸音部材が取り付けられた空気入りタイヤの製造方法であって、
円筒状に形成される共に外面及び内面から内面側及び外面側にそれぞれ径方向に延びる複数の切込部が設けられて前記切込部が周方向に開口されることにより径方向に拡張可能に形成された吸音部材を準備し、
前記吸音部材を空気入りタイヤの内部に挿入し、
前記吸音部材を径方向に拡張させて前記空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付ける
空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付けられる吸音部材であって、
円筒状に形成されると共に外面及び内面から内面側及び外面側にそれぞれ径方向に延びる複数の切込部が設けられて前記切込部が周方向に開口されることにより径方向に拡張可能に形成されている
吸音部材。
【請求項3】
前記吸音部材は、前記空気入りタイヤのビード部の内径より小さい外径を有する
請求項2に記載の吸音部材。
【請求項4】
前記吸音部材は、前記空気入りタイヤの断面高さに対する前記吸音部材の拡張後の径方向高さの割合が0.15以上0.45以下であるように形成されている、
請求項2又は請求項3に記載の吸音部材。
【請求項5】
前記切込部は、前記吸音部材の径方向一方側の面から径方向他方側に、前記吸音部材の径方向他方側の面との離間距離が少なくとも5mm以上であるように延びている
請求項2から請求項4の何れか1項に記載の吸音部材。
【請求項6】
前記切込部は、平面形状である二次元形状に形成されている
請求項2から請求項5の何れか1項に記載の吸音部材。
【請求項7】
前記切込部は、曲面形状である三次元形状に形成されている
請求項2から請求項5の何れか1項に記載の吸音部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法及び吸音部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が荒れた路面を走行するときや路面の継ぎ目を通過するときなどに生じるタイヤ接地面からの振動によってタイヤ内部の空気による空洞共鳴音が発生することが知られている。空洞共鳴音は、車室内の騒音の原因となることから、空洞共鳴音を抑制することが行われている。
【0003】
空洞共鳴音を抑制するものとして、例えば特許文献1には、帯状の吸音部材に側方スリットを設けて吸音部材をドラムに巻き付けた後にドラムを拡径させることにより、側方スリットの開口によって吸音部材を伸張させて空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付けるようにした空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載のものは、タイヤ内面に取り付けられる吸音部材に側方スリットの開口が形成されることから、吸音部材による空洞共鳴音の抑制について改善の余地がある。また、前記特許文献1に記載のものは、帯状の吸音部材をドラムに巻き付けて環状に形成することから、生産性の低下を引き起こし得る。
【0006】
そこで、本発明は、空洞共鳴音を抑制すると共に生産性の向上を図ることができる空気入りタイヤの製造方法及び吸音部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タイヤ内面に吸音部材が取り付けられた空気入りタイヤの製造方法であって、円筒状に形成される共に外面及び内面から内面側及び外面側にそれぞれ径方向に延びる複数の切込部が設けられて前記切込部が周方向に開口されることにより径方向に拡張可能に形成された吸音部材を準備し、前記吸音部材を空気入りタイヤの内部に挿入し、前記吸音部材を径方向に拡張させて前記空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付ける空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、吸音部材は、切込部が周方向に開口されることにより径方向に拡張されてタイヤ内面に取り付けられるので、タイヤ内面に吸音部材が取り付けられた空気入りタイヤは、略円筒状に形成された吸音部材によってタイヤ接地面からの振動が低減されてタイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部の空気の振動による音が低減される。また、この低減されたタイヤ内部の空気の振動による音が放射状に伝播される際に、吸音部材の内面に形成された切込部が開口されることによってタイヤ周方向に形成される凹凸によっても音を低減することができ、空洞共鳴音を抑制することができる。
【0009】
また、空気入りタイヤの製造時に、円筒状に形成されると共に外面及び内面から径方向に延びる複数の切込部が設けられた吸音部材を空気入りタイヤの内部に挿入した後に、吸音部材を径方向に拡張させてタイヤ内面に取り付けるので、比較的容易に製造することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0010】
本発明はまた、空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付けられる吸音部材であって、円筒状に形成されると共に外面及び内面から内面側及び外面側にそれぞれ径方向に延びる複数の切込部が設けられて前記切込部が周方向に開口されることにより径方向に拡張可能に形成されている吸音部材を提供する。
【0011】
本発明によれば、吸音部材を空気入りタイヤの内部に挿入した後に、吸音部材を径方向に拡張させてタイヤ内面に取り付けて空気入りタイヤを製造することができる。タイヤ内面に吸音部材が取り付けられた空気入りタイヤは、略円筒状に形成された吸音部材によってタイヤ接地面からの振動が低減されてタイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部の空気の振動による音が低減される。また、この低減されたタイヤ内部の空気の振動による音が放射状に伝播される際に、吸音部材の内面に形成された切込部が開口されることによってタイヤ周方向に形成される凹凸によっても音を低減することができ、空洞共鳴音を抑制することができる。
【0012】
また、空気入りタイヤの製造時に、円筒状に形成された吸音部材を径方向に拡張可能に構成されたドラムに取り付けて空気入りタイヤの内部に挿入した後に径方向に拡張させることでタイヤ内面に取り付けることができ、比較的容易に製造することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0013】
前記吸音部材は、空気入りタイヤのビード部の内径より小さい外径を有することが好ましい。
【0014】
本構成によれば、吸音部材を空気入りタイヤの内部に吸音部材を変形することなしに挿入することができるので、吸音部材をタイヤ内面に比較的容易に取り付けることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0015】
前記吸音部材は、空気入りタイヤの断面高さに対する吸音部材の拡張後の径方向高さの割合が0.15以上0.45以下であるように形成されることが好ましい。
【0016】
本構成によれば、空気入りタイヤの断面高さに対する吸音部材の拡張後の径方向高さの割合が適度に設定されるので、空洞共鳴音の抑制と生産性の向上を有効に図ることができる。前記割合が0.15未満である場合、空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付けられた吸音部材の体積量が少なく空洞共鳴音の抑制効果が十分に得られにくい。前記割合が0.45より大きい場合、空気入りタイヤをホイールにリム組みする際にタイヤチェンジャーのアームやホイールなどに吸音部材が干渉して吸音部材の損傷や作業効率の低下などを引き起こし、空洞共鳴音の抑制効果や生産性の向上効果が十分に得られにくい。
【0017】
前記切込部は、吸音部材の径方向一方側の面から径方向他方側に、吸音部材の径方向他方側の面との離間距離が少なくとも5mm以上であるように延びていることが好ましい。
【0018】
本構成によれば、吸音部材が切込部の開口によって径方向に拡張されてタイヤ内面に取り付けられるときに、吸音部材が切込部から径方向に分断されることを抑制することができ、吸音部材の耐久性を向上させることができる。
【0019】
前記切込部は、平面形状である二次元形状に形成される。
【0020】
本構成によれば、吸音部材に切込部を比較的容易に形成することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0021】
前記切込部は、曲面形状である三次元形状に形成される。
【0022】
本構成によれば、吸音部材が切込部の開口によって径方向に拡張されてタイヤ内面に取り付けられるときに、切込部が平面形状である二次元形状に形成される場合に比して、切込部の開口表面に形成される凹凸によって吸音部材の強度を向上させることができ、吸音部材の耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法及び吸音部材によれば、空洞共鳴音を抑制すると共に生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの縦断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの横断面図である。
【
図5】空気入りタイヤの製造方法を説明するための説明図である。
【
図6】吸音部材の変形例の正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの縦断面図、
図2は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの横断面図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係るゴム製の空気入りタイヤ1は、ホイール2に組み付けられてホイール2と共に車輪を構成するものであり、環状に形成されている。空気入りタイヤ1のタイヤ内面1aとホイール2のリム部2aの外面とによってタイヤ内部(内腔)8が円環状に形成されている。
【0027】
空気入りタイヤ1は、
図2に示すように、タイヤ径方向外側に位置して路面に接するトレッド部3と、タイヤ径方向内側に位置してホイール2のリム部2aに組み付けられる両側のビード部4と、トレッド部3と両側のビード部4との間にそれぞれ位置してタイヤ径方向に延びる両側のサイドウォール部5とを備える。
【0028】
空気入りタイヤ1は、両側のビード部4間に図示しないカーカスが設けられると共に、前記カーカスのタイヤ内面側にタイヤ内面1aを構成する図示しないインナーライナが設けられている。前記インナーライナは、空気圧を保持するためのものであり、空気の透過を防ぐゴムで形成されている。
【0029】
空気入りタイヤ1のタイヤ内面1aにはタイヤ周方向に延びる吸音部材10が取り付けられている。吸音部材10は、タイヤ周方向全体に亘ってタイヤ周方向に延びるように環状に形成されている。吸音部材10は、タイヤ内面1aに、具体的にはトレッド部3のタイヤ内面1aにタイヤ周方向全体に亘って配置されている。
【0030】
図3は、吸音部材の斜視図である。
図4は、吸音部材の正面図及び側面図であり、
図4(a)は、吸音部材の正面図、
図4(b)は、吸音部材の側面図である。
図3及び
図4では、空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付けられる前の吸音部材を示している。
【0031】
図3及び
図4に示すように、吸音部材10は、所定の内径D1を有して周方向及び軸方向に延びる内面11と、所定の外径D2を有して周方向及び軸方向に延びる外面12と、軸方向と直交する方向に延びる両側の側面13とを備えて円筒状に形成されている。
【0032】
吸音部材10には、外面12及び内面11から内面側及び外面側にそれぞれ幅方向全体に亘って径方向に延びる複数の切込部22,21が設けられている。吸音部材10には具体的には、外面12から内面側に吸音部材10の幅方向全体に亘って径方向に延びる複数の外側切込部22と、内面11から外面側に吸音部材10の幅方向全体に亘って径方向に延びる複数の内側切込部21とが設けられている。
【0033】
外側切込部22は、吸音部材10の外面12から内面側に向かって径方向に直線状に延びるスリットによって構成され、平面形状である二次元形状に形成されている。外側切込部22は、吸音部材10の外面12から内面側に、径方向における吸音部材10の内面11との離間距離が少なくとも5mm以上であるように延びている。
【0034】
内側切込部21は、吸音部材10の内面11から外面側に向かって径方向に直線状に延びるスリットによって構成され、平面形状である二次元形状に形成されている。内側切込部21は、吸音部材10の内面11から外面側に、径方向における吸音部材10の外面12との離間距離が少なくとも5mm以上であるように延びている。
【0035】
吸音部材10では、複数の外側切込部22が周方向に等間隔に配置されると共に複数の内側切込部21が周方向に等間隔に配置されている。外側切込部22と内側切込部21とは、吸音部材10の周方向に交互に配置されている。外側切込部22及び内側切込部21はそれぞれ好ましくは、周方向に等間隔に配置されるが、周方向に等間隔に配置されていなくてもよい。また、外側切込部22及び内側切込部21はそれぞれ好ましくは、径方向に沿って直線状に延びるスリットによって構成されるが、径方向から傾斜して径方向に直線状に延びるスリットによって構成するようにしてもよい。
【0036】
このように、吸音部材10には複数の切込部22,21が設けられ、吸音部材10は、複数の切込部22,21がそれぞれ周方向に開口されることにより径方向に拡張可能に形成されている。吸音部材10は、
図1及び
図2に示すように、外面12に接着剤が塗布された後に径方向に拡張されて空気入りタイヤ1のタイヤ内面1aに取り付けられる。
【0037】
吸音部材10は、径方向に拡張される前に空気入りタイヤ1のタイヤ内部に挿入できるように外面12が空気入りタイヤ1のビード部4の内径より小さい外径を有している。また、吸音部材10は、
図2に示すように、空気入りタイヤ1の断面高さH0に対する吸音部材10の拡張後の径方向高さH1の割合が0.15以上0.45以下であるように形成されている。なお、空気入りタイヤ1の断面高さH0は、タイヤ幅W0に扁平率を乗じたものとして算出される。
【0038】
このように、吸音部材10は、空気入りタイヤの断面高さに対する吸音部材の拡張後の径方向高さの割合が0.15以上0.45以下であるように設定されるので、空洞共鳴音の抑制と生産性の向上を有効に図ることができる。前記割合が0.15未満である場合、空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付けられた吸音部材の体積量が少なく空洞共鳴音の抑制効果が十分に得られにくい。前記割合が0.45より大きい場合、空気入りタイヤをホイールにリム組みする際にタイヤチェンジャーのアームやホイールなどに吸音部材が干渉して吸音部材の損傷や作業効率の低下などを引き起こし、空洞共鳴音の抑制効果や生産性の向上が十分に得られにくい。
【0039】
吸音部材10は、多孔質体であるスポンジから形成され、合成樹脂等を発泡させて連続気泡又は独立気泡を含むものである。スポンジからなる吸音部材10は好ましくは、比重が0.021g/cm3以上0.027g/cm3以下のものが用いられる。吸音部材10として、例えばポリウレタン系のスポンジを用いることができるが、種々のスポンジを用いることができる。吸音部材10は、接着剤に代えて、両面テープなどの適宜の接合手段を用いてタイヤ内面1aに取り付けることも可能である。
【0040】
吸音部材10は、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向最大幅であるタイヤ幅の30%以上70%以下のタイヤ幅方向長さを有するように形成されている。吸音部材10のタイヤ幅方向長さをタイヤ幅の30%以上より小さくすると空洞共鳴音の低減効果が小さくなる一方、タイヤ幅の70%より大きくするとサイドウォール部5のタイヤ内面1aに取り付けられてタイヤ内面1aから剥離するおそれがある。
【0041】
次に、このようにして構成される空気入りタイヤの製造方法について説明する。
【0042】
図5は、空気入りタイヤの製造方法を説明するための説明図である。タイヤ内面1aに吸音部材10が取り付けられた空気入りタイヤ1を製造する際には、先ず、円筒状に形成されると共に外面12及び内面11から内面側及び外面側にそれぞれ径方向に延びる複数の切込部22,21が設けられて切込部22,21が周方向に開口されることにより径方向に拡張可能に形成された吸音部材10と、環状に形成された空気入りタイヤ1とを準備する。
【0043】
そして、
図5(a)に示すように、吸音部材10を径方向に拡張可能に構成された拡張装置としてドラム30の周囲に吸音部材10の内面11を支持させてドラム30に吸音部材10を支持させる。
【0044】
ドラム30は、外周面を構成する複数のプレート31と、外周面を径方向に拡張するように複数のプレート31をそれぞれ径方向に移動させる径方向移動機構32と、径方向移動機構32を支持する本体部33とを備え、本体部33には中心軸34が設けられている。
【0045】
ドラム30は、径方向移動機構32を駆動させることにより複数のプレート31を径方向に移動させて外周面を拡径及び縮径できるように構成されている。ドラム30はまた、図示しない軸方向移動機構によって中心軸34の軸方向に移動できるように構成されている。
【0046】
空気入りタイヤ1は、図示しない保持機構によってドラム30と軸方向が一致すると共にドラム30と軸方向に離間した位置に保持される。
【0047】
次に、ドラム30に支持された吸音部材10の外面12に接着剤が塗布され、次いで、前記軸方向移動機構を駆動させることによりドラム30を軸方向に移動させて吸音部材10を空気入りタイヤ1の内部に挿入させる。吸音部材10は、ドラム30に支持された状態で空気入りタイヤ1のビード部4の内側を通じて空気入りタイヤ1の内部に挿入される。
【0048】
吸音部材10が空気入りタイヤ1の内部に挿入されると、
図5(b)に示すように、径方向移動機構32を駆動させることにより複数のプレート31を径方向に移動させてドラム30の外周面を拡径させる。これにより、切込部21,22が周方向に開口されることにより吸音部材10が径方向に拡張されて吸音部材10が接着剤を介して空気入りタイヤ1のタイヤ内面1aに取り付けられ、タイヤ内面1aに吸音部材10が取り付けられた空気入りタイヤ1が製造される。
【0049】
なお、吸音部材10がタイヤ内面1aに取り付けられた後には、径方向移動機構32を駆動させることによりドラム30の外周面を縮径させ、次いで前記軸方向移動機構を駆動させることによりドラム30を空気入りタイヤ1の内部から外側に移動させる。
【0050】
このように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の製造方法は、円筒状に形成されると共に外面12及び内面11から内面側及び外面側にそれぞれ径方向に延びる複数の切込部22,21が設けられて切込部22,21が周方向に開口されることにより径方向に拡張可能に形成された吸音部材10を準備し、吸音部材10を空気入りタイヤ1の内部に挿入し、吸音部材10を径方向に拡張させて空気入りタイヤ1のタイヤ内面1aに取り付ける。
【0051】
これにより、吸音部材10は、切込部22,21が周方向に開口されることにより径方向に拡張されてタイヤ内面1aに取り付けられるので、タイヤ内面1aに吸音部材10が取り付けられた空気入りタイヤ1は、略円筒状に形成された吸音部材10によってタイヤ接地面からの振動が低減されてタイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部8の空気の振動による音が低減される。また、この低減されたタイヤ内部の空気の振動による音が放射状に伝播される際に、吸音部材10の内面11に形成された切込部21が開口されることによってタイヤ周方向に形成される凹凸によっても音を低減することができ、空洞共鳴音を抑制することができる。
【0052】
また、空気入りタイヤ1の製造時に、円筒状に形成されると共に外面12及び内面11から径方向に延びる複数の切込部22,21が設けられた吸音部材10を空気入りタイヤ1の内部に挿入した後に、吸音部材10を径方向に拡張させてタイヤ内面1aに取り付けるので、比較的容易に製造することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0053】
本実施形態では、吸音部材10に、外側切込部22及び内側切込部21がそれぞれ16設けられているが、2つ又はそれ以上の外側切込部及び内側切込部を設けるようにしてもよい。かかる場合においても、外側切込部22と内側切込部21とは、吸音部材10の周方向に交互に配置される。
【0054】
前述したように、本実施形態に係る吸音部材10は、円筒状に形成されると共に外面12及び内面11から内面側及び外面側にそれぞれ径方向に延びる複数の切込部22,21が設けられて切込部22,21が周方向に開口されることにより径方向に拡張可能に形成されている。
【0055】
これにより、吸音部材10を空気入りタイヤ1の内部に挿入した後に、吸音部材10を径方向に拡張させてタイヤ内面1aに取り付けて空気入りタイヤ1を製造することができる。タイヤ内面1aに吸音部材10が取り付けられた空気入りタイヤ1は、略円筒状に形成された吸音部材10によってタイヤ接地面からの振動が低減されてタイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部の空気の振動による音が低減される。また、この低減されたタイヤ内部の空気の振動による音が放射状に伝播される際に、吸音部材10の内面11に形成された切込部21が開口されることによってタイヤ周方向に形成される凹凸によっても音を低減することができ、空洞共鳴音を抑制することができる。
【0056】
また、空気入りタイヤ1の製造時に、円筒状に形成された吸音部材10を径方向に拡張可能に構成されたドラム30に取り付けて空気入りタイヤ1の内部に挿入した後に径方向に拡張させることでタイヤ内面1aに取り付けることができ、比較的容易に製造することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0057】
また、吸音部材10は、空気入りタイヤ1のビード部4の内径より小さい外径を有する。これにより、吸音部材10を空気入りタイヤ1の内部に吸音部材10を変形することなしに挿入することができるので、吸音部材10をタイヤ内面1aに比較的容易に取り付けることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0058】
また、切込部21,22は、吸音部材10の径方向一方側の面11,12から径方向他方側に、吸音部材10の径方向他方側の面12,11との離間距離が少なくとも5mm以上であるように延びている。これにより、吸音部材10が切込部21,22の開口によって径方向に拡張されてタイヤ内面1aに取り付けられるときに、吸音部材10が切込部21,22から径方向に分断されることを抑制することができ、吸音部材10の耐久性を向上させることができる。
【0059】
また、切込部21,22は、平面形状である二次元形状に形成される。これにより、吸音部材10に切込部21,22を比較的容易に形成することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0060】
図6は、吸音部材の変形例の正面図及び側面図であり、
図6(a)は、吸音部材の変形例の正面図、
図6(b)は、吸音部材の変形例の側面図である。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、タイヤ内面1aに取り付けられる吸音部材10´の切込部21´,22´を、軸方向両側では直線状に延びると共に軸方向中央側では波形状に延び、且つ径方向に同一形状を有する曲面形状である三次元形状に形成することも可能である。
【0061】
図6に示す吸音部材10´では、切込部21´,22´は径方向に同一形状を有する曲面形状である三次元形状に形成されているが、吸音部材に設けられる切込部を、軸方向及び径方向に形状が変化する曲面形状である三次元形状に形成することも可能である。
【0062】
このように、切込部21´,22´は、曲面形状である三次元形状に形成されることにより、吸音部材10´が切込部21´,22´の開口によって径方向に拡張されてタイヤ内面1aに取り付けられるときに、切込部が平面形状である二次元形状に形成される場合に比して、切込部21´,22´の開口表面に形成される凹凸によって吸音部材10´の強度を向上させることができ、吸音部材10´の耐久性を向上させることができる。
【0063】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 空気入りタイヤ
3 トレッド部
4 ビード部
10,10´ 吸音部材
11 内面
12 外面
21,21´ 内側切込部
22,22´ 外側切込部