(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】工事桁及びカント調整方法
(51)【国際特許分類】
E01B 23/00 20060101AFI20220830BHJP
E01B 1/00 20060101ALI20220830BHJP
E01B 3/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
E01B23/00
E01B1/00
E01B3/00
(21)【出願番号】P 2018245281
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599003682
【氏名又は名称】東武谷内田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】井出 雄介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特許第3819875(JP,B2)
【文献】特開2004-068545(JP,A)
【文献】実開昭50-095800(JP,U)
【文献】特開2003-041504(JP,A)
【文献】特許第3844329(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 23/00
E01B 1/00
E01B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の主桁と、
前記一対の主桁のそれぞれの側部に固定される一対の棚板と、
前記一対の棚板のそれぞれに固定された状態で前記一対の主桁の間を掛け渡すと共に、
鉛直下方に窪む凹部を有する枕木受桁と、
前記枕木受桁の前記凹部に挿入される枕木と、
を備え、
前記枕木受桁の前記凹部の両側部の少なくともいずれかには開口部が形成されており、
前記枕木受桁に対する前記枕木の高さを調整する高さ調整部材が前記開口部から前記凹部の内側且つ前記枕木の下側に挿入され
、
前記凹部は、前記両側部と、前記両側部の下部に位置する底部とを有し、
前記開口部は、前記両側部を貫通している、
工事桁。
【請求項2】
複数の前記開口部が前記枕木の長手方向に沿って一対に形成されている、
請求項1に記載の工事桁。
【請求項3】
前記開口部は、前記凹部の両側部のそれぞれに形成されており、
前記両側部のそれぞれから複数の前記高さ調整部材のそれぞれが互いに上下に重なるように挿入される、
請求項1又は2に記載の工事桁。
【請求項4】
前記枕木には、前記高さ調整部材が入り込む凹部が形成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の工事桁。
【請求項5】
枕木の高さを調整するカント調整方法であって、
一対の主桁のそれぞれの側部に固定された一対の棚板を掛け渡す枕木受桁の凹部の両側部の少なくともいずれかに形成された開口部から、前記凹部の内側且つ枕木の下側に高さ調整部材を挿入することによって、前記枕木受桁に対する前記枕木の高さを調整する工程と、
前記枕木受桁に前記枕木を固定する工程と、
を備え
、
前記凹部は、前記両側部と、前記両側部の下部に位置する底部とを有し、
前記開口部は、前記両側部を貫通している、
カント調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道の工事桁及びカント調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、I形断面を有する一対の鋼製の主桁と、一対の主桁を掛け渡すと共にU形断面を有する鋼製の横桁と、各主桁の下側フランジの上面に固定されると共に横桁を一対の主桁に載せる一対の棚板とを備えた工事桁が記載されている。棚板は、鋼製の主桁のウェブ部に高力ボルトによって固定されたL形鋼であり、一対のL形鋼のそれぞれに横桁の両端部のそれぞれが高力ボルトによって固定されている。長手方向に直交する平面で横桁を切断したときの横桁の断面形状の少なくとも一部がU形とされており、横桁のU形とされた部分に並枕木又は橋枕木が挿入されている。
【0003】
特許文献2には軌道の支持構造として工事桁が記載されており、工事桁はI形鋼から成る一対の主桁と、一対の主桁間を掛け渡した状態で支持されたH形鋼から成る横桁とを備える。更に、工事桁は主桁の上側フランジよりも低い位置において横桁の両端部を支持する一対の支持部材を備えており、軌道は主桁の上側フランジよりも低い位置において支持されている。
【0004】
横桁は、長手方向の中央部が凹状に曲げられており、この凹状に曲げられた部分が軌道支持部として機能する。軌道は、工事桁の軌道支持部に載せられる橋梁枕木と、橋梁枕木に支持されると共に列車を走行させる一対のレールと、橋梁枕木及び軌道支持部の間に設けられる枕木固定装置とを備える。枕木固定装置は、横桁に支持された状態でカントを調整する台座を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3844329号公報
【文献】特許第3819875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、鉄道の工事桁に関する作業は一般的に夜間に行われることが多く、カントを調整する作業を限られた時間内に行わなければならない場合がある。前述した軌道の支持構造では、枕木固定装置の台座を軌道支持部と橋梁枕木との間に挟むことによってカントが調整される。しかしながら、この台座は工事桁の上面に固定され、台座の固定は軌道がない状態で行わなければならないため、枕木の高さを調整する作業に時間がかかる。
【0007】
また、線路の直線区間と曲線区間との境界部、又は緩和曲線区間では、線路の曲率半径が徐々に変化するので、カントの量(カント量)を徐々に変化させる必要がある。この場合、線路の延在方向に沿って並ぶ複数の枕木間においてカント量が互いに異なるので、枕木毎に枕木の高さ調整が必要となる場合が想定される。従って、複数の枕木のそれぞれに対して個別に高さの調整を行わなければならず、枕木の高さの調整作業をスムーズに且つ高精度に行うことが求められる。
【0008】
本発明は、前述した問題に鑑みてなされたものであり、枕木の高さの調整を効率よく且つ高精度に行うことができる工事桁及びカント調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る工事桁は、一対の主桁と、一対の主桁のそれぞれの側部に固定される一対の棚板と、一対の棚板のそれぞれに固定された状態で一対の主桁の間を掛け渡すと共に、鉛直下方に窪む凹部を有する枕木受桁と、枕木受桁の凹部に挿入される枕木と、を備え、枕木受桁の凹部の両側部の少なくともいずれかには開口部が形成されており、枕木受桁に対する枕木の高さを調整する高さ調整部材が開口部から凹部の内側且つ枕木の下側に挿入され、凹部は、両側部と、両側部の下部に位置する底部とを有し、開口部は、両側部を貫通している。
【0010】
この工事桁では、一対の主桁のそれぞれの側部に一対の棚板のそれぞれが固定されている。枕木受桁は、一対の棚板のそれぞれに固定された状態で一対の主桁の間を掛け渡すと共に、鉛直下方に窪む凹部を有する。枕木は、枕木受桁の当該凹部に挿入された状態で固定される。従って、一対の主桁、一対の棚板及び枕木受桁が枕木抱き込み桁として機能し枕木の高さを抑えることができるため、工事桁の高さを抑えて工事桁の上下に位置する高さ方向の空間を広く空けることができる。また、枕木受桁の凹部を形成する両側部の少なくともいずれかには高さ調整部材が挿入される開口部が形成されており、高さ調整部材は開口部から当該凹部の内側且つ枕木の下側に挿入される。従って、開口部から高さ調整部材を挿入することによって枕木受桁に対する枕木の高さが調整されるので、枕木の高さの調整を容易に行うことができる。すなわち、開口部に高さ調整部材を挿入することによって枕木の高さを容易に調整することができる。よって、複数の枕木間においてカント量が互いに異なる場合であっても、各枕木のカント量の調整をスムーズに且つ高精度に行うことができる。従って、複数の枕木のそれぞれに対して個別に高さの調整を行う場合であっても、枕木の高さの調整を効率よく且つ高精度に行うことができるので、限られた時間内に枕木の高さ調整作業を完了させることができる。
【0011】
また、複数の開口部が枕木の長手方向に沿って一対に形成されていてもよい。この場合、枕木の長手方向に沿って一対の開口部が形成されるので、複数の箇所において枕木の高さ調整を行うことができる。従って、枕木の高さの調整をより効率よく且つ高精度に行うことができる。
【0012】
また、開口部は、凹部の両側部のそれぞれに形成されており、両側部のそれぞれから複数の高さ調整部材のそれぞれが互いに上下に重なるように挿入されてもよい。この場合、凹部の両側部のそれぞれに開口部が形成されているので、当該両側部のそれぞれから高さ調整部材を挿入することが可能となる。また、当該両側部のそれぞれから挿入された一対の高さ調整部材は互いに上下に重なるように配置される。従って、左右両側のそれぞれから挿入される一対の高さ調整部材によって枕木の高さ調整を容易に行うことができる。また、各高さ調整部材の挿入度合を調整することにより、枕木の高さ調整を更に高精度に行うことができる。
【0013】
また、枕木には、高さ調整部材が入り込む凹部が形成されていてもよい。この場合、高さ調整部材が入り込む凹部が枕木に形成されることにより、枕木に対して高さ調整部材を挿入しやすくすることができる。従って、高さ調整部材の挿入をスムーズに行うことができるので、枕木の高さの調整を更に効率よく行うことができる。
【0014】
本発明に係るカント調整方法は、枕木の高さを調整するカント調整方法であって、一対の主桁のそれぞれの側部に固定された一対の棚板を掛け渡す枕木受桁の凹部の両側部の少なくともいずれかに形成された開口部から、凹部の内側且つ枕木の下側に高さ調整部材を挿入することによって、枕木受桁に対する枕木の高さを調整する工程と、枕木受桁に枕木を固定する工程と、を備え、凹部は、両側部と、両側部の下部に位置する底部とを有し、開口部は、両側部を貫通している。
【0015】
このカント調整方法では、一対の主桁のそれぞれの側部に固定された各棚板のそれぞれに枕木受桁が固定されており、枕木受桁の凹部には枕木が挿入されている。このカント調整方法では、枕木受桁の凹部を形成する両側部の少なくともいずれかに形成された開口部から凹部の内側に高さ調整部材を挿入し、枕木の下側に挿入される高さ調整部材によって枕木の高さを調整する。従って、開口部への高さ調整部材の挿入によって枕木受桁に対する枕木の高さを調整することができるので、枕木の高さの調整を容易に行うことができる。よって、複数の枕木間においてカント量が互いに異なる場合であっても、高さ調整部材を挿し込むことによって各枕木のカント量の調整をスムーズに且つ高精度に行うことができる。従って、複数の枕木のそれぞれに対して個別に高さの調整を行う場合であっても、枕木の高さの調整を効率よく且つ高精度に行うことができるので、限られた時間内に枕木の高さ調整作業を完了させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、枕木の高さの調整を効率よく且つ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は、実施形態に係る工事桁及びカント調整方法が適用される前の線路を模式的に示す平面図である。(b)は、実施形態に係る工事桁及びカント調整方法が適用された線路を模式的に示す平面図である。
【
図2】実施形態に係る工事桁を模式的に示す側断面図である。
【
図3】カントを調整する前の工事桁を示す断面図である。
【
図4】カントを調整した後の工事桁を示す断面図である。
【
図5】
図4の枕木、枕木受桁及び高さ調整部材のV-V線断面図である。
【
図6】
図4の枕木、枕木受桁及び高さ調整部材のVI-VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る工事桁及びカント調整方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解を容易にするため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
本実施形態に係る工事桁及びカント調整方法は、例えば、鉄道の高架化工事であって、線路の切り替え工事において用いられる。線路の切り替え工事では、線路の曲率半径が変化することがあり、線路の曲率半径の変化に合わせてカントを微調整する必要がある。カント量は、線路の曲率半径と鉄道車両の速度によって決められている。曲率半径が小さい又は鉄道車両の速度が速いほどカント量は大きくなり、曲率半径が大きい又は鉄道車両の速度が遅いほどカント量は小さくなる。
【0020】
図1(a)は、切り替え工事を行う前の線路の一例を模式的に示す平面図である。
図1(b)は、切り替え工事を行った後の線路の一例を模式的に示す平面図である。
図1(a)及び
図1(b)に示されるように、本実施形態に係る線路の切り替え工事では、曲率半径が一定である円弧状の線路L1から、曲率半径が一定でない線路L2に切り替えられる。例えば、線路L1及び線路L2は、共に、一時的に設けられる線路であり、線路L1は切り替え工事における仮線(1次仮線)であり、線路L2は切り替え工事における仮仮線(2次仮線)である。一例として、線路L1の曲率半径は800mであり、線路L2の円弧状部L22の曲率半径は400mである。なお、
図1(a)及び
図1(b)では、理解を容易にするために、線路L1及び線路L2の曲がり具合を誇張して描いている。
【0021】
線路L2は、直線部L21と、円弧状部L22と、直線部L21から円弧状部L22まで延びる緩和曲線部L23とを有する。緩和曲線部L23は、例えば、クロソイド曲線状を成している。また、緩和曲線部L23は、3次曲線又はサイン半波長逓減曲線であってもよい。本実施形態に係る切り替え工事は、夜間に1日で行われ、例えば、終電時刻から始発時刻までの間に行われる。線路L1及び線路L2は、有道床桁Yと、抱き込み桁である工事桁1とを含んでいる。工事桁1は、線路L1、及び線路L2の緩和曲線部L23に設けられる。抱き込み桁である工事桁1は、後述するように、一対のH形鋼のウェブの間を枕木受桁が掛け渡して形成されるため、有道床桁Yと比較して高さを抑えることが可能である。
【0022】
前述したように、本実施形態では、線路L1は曲率が一定とされた抱き込み桁である工事桁1を有し、線路L2は緩和曲線部L23に工事桁1を有する。また、線路L1から線路L2への切り替えを終電時刻から始発時刻までの間に行わなければならないので、工事桁1のカント量は終電時刻から始発時刻までの間に調整される。従って、工事桁1のカント量を効率よく調整することが求められる。
【0023】
図2は、工事桁1を模式的に示す側断面図である。
図1及び
図2に示されるように、工事桁1はレールの延在方向である第1方向D1に沿って配置される。工事桁1は、例えば、複数の有道床桁Yを互いに接続する高架とされている。工事桁1の下方は、例えば、車両及び歩行者が通過する通行路とされている。工事桁1は、後に詳述する複数の枕木受桁11(横桁)と複数の枕木12とを備える。枕木受桁11及び枕木12のそれぞれは、レール(第1方向D1)に直交する第2方向D2に延在している。
【0024】
図3は、第1方向D1に直交する平面で工事桁1を切断したときの工事桁1の断面図である。
図3に示されるように、工事桁1は、前述した枕木受桁11及び枕木12と、第1方向D1に延びる一対の主桁13と、一対の主桁13のそれぞれに固定される棚板14とを更に備える。枕木受桁11及び枕木12のそれぞれの上面の高さは、例えば、主桁13の上面の高さよりも低い。
【0025】
一対の主桁13は、第2方向D2に沿って並んで配置されている。各主桁13は、例えば、H形鋼である。なお、本明細書において、「H形鋼」は、若干H形とは異なる形状の形鋼も含んでおり、例えば、I形鋼も含まれる。各主桁13は、レールに沿って延在すると共に上方に向けられる上側フランジ13aと、下方に向けられる下側フランジ13bと、上側フランジ13a及び下側フランジ13bの間で高さ方向D3に延びるウェブ13cとを有する。ウェブ13cは主桁13の側部に相当する。更に、各主桁13は、上側フランジ13a、下側フランジ13b及びウェブ13cの間において第2方向D2及び高さ方向D3に延在するリブ13dを備える。
【0026】
棚板14は、枕木受桁11を主桁13に固定する部位であり、主桁13の側部であるウェブ13cに固定されている。棚板14は、一対の主桁13の各ウェブ13cから工事桁1の第2方向D2の内側に延びており、第2方向D2に延在している。一例として、棚板14は、ウェブ13cの高さ方向D3の中央よりも下部から第2方向D2に延在している。例えば、棚板14、下側フランジ13b及びウェブ13cの間において第2方向D2及び高さ方向D3に延在する台形状のリブ15が設けられる。
【0027】
枕木受桁11は、枕木12が鉛直上方から挿入されて、挿入された枕木12を保持する部材である。枕木受桁11からは枕木12の一部が露出している。枕木受桁11は、一対の棚板14の間において第2方向D2に延在する。枕木受桁11は、第2方向D2の両端のそれぞれに位置する端部11aを有し、各端部11aは棚板14の上面に固定される。
【0028】
枕木受桁11は、第1方向D1に貫通する開口部21を有する。例えば、枕木受桁11は、第2方向D2に沿って並んで配置される一対の開口部21を有し、各開口部21は第2方向D2に延びる長円状とされている。開口部21は、後述する高さ調整部材20(
図4参照)を枕木受桁11の内部に挿入するための部位である。開口部21から高さ調整部材20を枕木受桁11の内部に挿入することにより、枕木受桁11に対する枕木12の高さ(カント量)が調整される。
【0029】
工事桁1は軌きょう16を備える。軌きょう16は、レール16aと、レール16aの下方において第2方向D2に延びる枕木12と、枕木12にレール16aを固定するタイプレート16b及び板ばね16cとを備える。タイプレート16bは枕木12の上面に、例えば犬釘N1によって固定されている。レール16aは、下端に位置するフランジ部16eが一対の突出部の間に入り込んだ状態で固定されている。板ばね16cは、ボルトV1及びナットN2によってタイプレート16bに固定されている。一対の板ばね16cのそれぞれは、フランジ部16eの上面に当接している。
【0030】
枕木12には、軌きょう16と枕木受桁11とを互いに連結する連結部材17が挿通されている。例えば、連結部材17は、枕木12に挿通されるフックボルト17aを備える。フックボルト17aの下端には、枕木受桁11に掛けられるフック部17dが設けられる。枕木受桁11に連結部材17のフック部17dが掛けられると共に、枕木受桁11がフック部17dと枕木12の下面との間に挟まれることによって、軌きょう16と枕木受桁11とが互いに連結される。連結部材17は、枕木12の第2方向D2の両端側に一対に設けられる。連結部材17は、枕木受桁11の第2方向D2の両端側を強固に保持することによって軌きょう16及び枕木受桁11を互いに強固に連結する。
【0031】
図3及び
図4に示されるように、枕木受桁11の開口部21には高さ調整部材20が挿入可能とされており、開口部21に高さ調整部材20を挿入することによって枕木受桁11に対する枕木12の高さが調整される。枕木12は、高さ調整部材20が入り込む凹部12aを有する。凹部12aは、例えば、枕木12の下面12bにおける開口部21との対向箇所に設けられる。すなわち、凹部12aは開口部21から露出している。高さ調整部材20は、枕木12の下側に挿入されることによって枕木受桁11に対する枕木12の高さを調整する。
【0032】
図5は、
図4の枕木受桁11、枕木12及び高さ調整部材20を示すV-V線断面図である。
図6は、
図4の枕木受桁11、枕木12及び高さ調整部材20を示すVI-VI線断面図である。
図4、
図5及び
図6に示されるように、枕木受桁11は枕木12が上から挿入されると共に鉛直下方に窪む凹部11Aを有する。第1方向D1及び高さ方向D3の双方に延在する平面において、凹部11Aは、第1方向D1に沿って並ぶ両側部11bと、両側部11bの下部において第1方向D1に延在する底部11cとによって画成される。
【0033】
開口部21は枕木受桁11の両側部11bのそれぞれに設けられており、各開口部21は両側部11bを第1方向D1に貫通している。各開口部21からは、高さ調整部材20が凹部11Aの内側に挿入される。凹部11Aの内側に挿入された高さ調整部材20は枕木12の下面12b(凹部12a)に入り込むことによって枕木12を持ち上げ、高さ調整部材20が枕木12を持ち上げることによって枕木12の高さが調整される。
【0034】
高さ調整部材20は、例えば、キャンバー22,23,24,25を含んでいる。一例として、キャンバー22,23,24,25は木製であり、枕木受桁11は鋼製である。キャンバー22,23,24,25は、例えば、底面が直角三角形とされた三角柱状とされている。キャンバー22,23,24,25は、第1方向D1に延在する第1の面26と、第1方向D1及び高さ方向D3の双方に対して傾斜する傾斜面である第2の面27とを有する。キャンバー22及びキャンバー23は互いに上下に重なるように凹部11Aの内側に挿入され、キャンバー24及びキャンバー25は互いに上下に重なるように凹部11Aの内側に挿入される。
【0035】
キャンバー22における第1の面26からの第2の面27の傾斜角度θ1は、例えば、キャンバー23における第1の面26からの第2の面27の傾斜角度と同一である。キャンバー22は、第1の面26が上方に向けられた状態で第1方向D1の一方側(
図5では左側)から凹部11Aの内側に挿入される。キャンバー23は、第1の面26が下方に向けられた状態で第1方向D1の他方側(
図5では右側)から凹部11Aの内側に挿入される。
【0036】
凹部11Aの内側に挿入された状態において、キャンバー22の第2の面27とキャンバー23の第2の面27とは互いに面接触する。キャンバー22の第1の面26は枕木12の下面12bに入り込み、凹部11Aの内側へのキャンバー22,23の挿入に伴って枕木12が高さ方向D3に沿って持ち上げられる。キャンバー22の挿入度合又はキャンバー23の挿入度合が調整されることによって、枕木受桁11に対する枕木12の高さが調整される。
【0037】
キャンバー24における第1の面26からの第2の面27の傾斜角度θ2は、例えば、キャンバー25における第1の面26からの第2の面27の傾斜角度と同一である。一例として傾斜角度θ2は傾斜角度θ1よりも小さい。キャンバー24はキャンバー22と同様に凹部11Aの内側に挿入され、キャンバー25はキャンバー23と同様に凹部11Aの内側に挿入される。
【0038】
キャンバー22,23の場合と同様、キャンバー24,25が挿入された場合も枕木12が高さ方向D3に沿って持ち上げられる。しかしながら、傾斜角度θ2は傾斜角度θ1よりも小さいため、キャンバー24,25の挿入に伴う枕木12の高さの変化率は、キャンバー22,23の挿入に伴う枕木12の高さの変化率よりも小さい。このように、複数種類のキャンバーを備えることにより、キャンバーの挿入に伴う枕木の高さの変化率を変えることが可能である。
【0039】
次に、本実施形態に係るカント調整方法の例について説明する。例えば、
図1(a)及び
図1(b)に示されるように、一定の曲率を有する線路L1から緩和曲線部L23を有する線路L2への切り替えを一晩で行う作業について説明する。
図1(b)に示される例では、直線部L21から円弧状部L22に向かうに従って緩和曲線部L23の曲率半径が徐々に小さくなるので、直線部L21から円弧状部L22に向かうに従って緩和曲線部L23のカント量は徐々に大きくなる。
【0040】
まず、
図3に示されるように、一対の主桁13のそれぞれに固定された一対の棚板14のそれぞれに一対の棚板14を掛け渡す枕木受桁11を固定する。このとき、枕木受桁11の各端部11aを各棚板14の上面に固定する(枕木受桁を固定する工程)。次に、枕木受桁11の凹部11Aに枕木12を挿入する。具体的には、軌きょう16のレール16a、タイプレート16b及び板ばね16cが固定された枕木12を鉛直上方から枕木受桁11の凹部11Aの内側に挿入する(枕木を挿入する工程)。なお、枕木受桁を固定する工程、及び枕木を挿入する工程は、線路L1から線路L2への切り替え作業の前に事前に行っておいてもよい。
【0041】
そして、
図4~
図6に示されるように、枕木受桁11の凹部11Aの両側部11bに形成された開口部21から凹部11Aの内側且つ枕木12の下側に高さ調整部材20を挿入することによって枕木12の高さ(カント量)を調整する。このとき、キャンバー22,23,24,25の種類を変更したり、キャンバー22,23,24,25の挿入度合を変更したりすることによって枕木12の高さを緩和曲線部L23における枕木12の位置に応じて調整する(枕木の高さを調整する工程)。
【0042】
以上のように枕木12の高さを調整した後には、枕木受桁11に枕木12を固定する。このとき、例えば、連結部材17のフックボルト17aを上から枕木12に挿通しフック部17dと枕木12の間に枕木受桁11を挟み込んで固定することにより、枕木受桁11に枕木12を強固に連結する。なお、枕木受桁11への枕木12の固定手段については、連結部材17に限られず適宜変更可能である。このように、枕木受桁11に枕木12を固定した後に、カント調整方法の一連の工程が完了する。
【0043】
本実施形態に係る工事桁1及びカント調整方法の作用効果について詳細に説明する。本実施形態に係る工事桁1及びカント調整方法では、一対の主桁13のそれぞれに一対の棚板14のそれぞれが固定されている。枕木受桁11は、一対の棚板14のそれぞれに固定された状態で一対の主桁13を掛け渡すと共に、鉛直下方に窪む凹部11Aを有する。枕木12は、枕木受桁11の凹部11Aに挿入された状態で固定される。従って、一対の主桁13、一対の棚板14及び枕木受桁11が枕木抱き込み桁として機能し枕木12の高さを抑えることができるため、工事桁1の高さを抑えて工事桁1の上下に位置する高さ方向D3の空間を広く空けることができる。
【0044】
また、枕木受桁11の凹部11Aを形成する両側部11bの少なくともいずれかには高さ調整部材20が挿入される開口部21が形成されており、高さ調整部材20は開口部21から凹部11Aの内側且つ枕木12の下側に挿入される。従って、開口部21から高さ調整部材20を挿入することによって枕木受桁11に対する枕木12の高さが調整されるので、枕木12の高さの調整を容易に行うことができる。
【0045】
このように、開口部21に高さ調整部材20を挿入することによって枕木12の高さを容易に調整することができる。よって、工事桁1を構成する複数の枕木12間においてカント量が互いに異なる緩和曲線部L23に切り替える工事を行う場合であっても、各枕木12のカント量の調整をスムーズに且つ高精度に行うことができる。従って、複数の枕木12のそれぞれに対して高さの調整を個別に行う場合であっても、枕木12の高さの調整を効率よく且つ高精度に行うことができる。その結果、限られた時間内に(例えば一晩で)枕木12の高さ調整を完了させることができる。
【0046】
ところで、枕木自体の形状を変更してカントを調整する方法が知られている。しかしながら、この場合、互いに形状が異なる枕木を予め用意しなければならない。また、この方法では、破線を行うと共にタイプレートを外して枕木自体の交換を行う必要があるので限られた時間内に作業を完了させることが困難となり、更に、枕木の形状によってカント量が確定してしまうため現場で柔軟にカント量を調整することができない。
【0047】
これに対し、本実施形態に係る工事桁1及びカント調整方法では、枕木12としては通常の枕木を用いることができるので、特殊な枕木を用意する必要がない。よって、タイプレート16bを外さないでカント量を調整することができ破線を不要にすることができる。更に、キャンバー22,23,24,25の挿入によってカント量が調整されるので、キャンバー22,23,24,25の種類又は挿入度合を変更することによって現場で柔軟にカント量を調整することができる。
【0048】
また、複数の開口部21が枕木12の長手方向である第2方向D2に沿って一対に形成されている。よって、枕木12の長手方向に沿って一対の開口部21が形成されるので、複数の箇所において枕木12の高さ調整を行うことができる。従って、枕木12の高さの調整をより効率よく且つ高精度に行うことができる。
【0049】
また、開口部21は、凹部11Aの両側部11bのそれぞれに形成されており、両側部11bのそれぞれから複数の高さ調整部材20のそれぞれが互いに上下に重なるように挿入される。よって、凹部11Aの両側部11bのそれぞれに開口部21が形成されているので、両側部11bのそれぞれから挿入された一対の高さ調整部材20は互いに上下に重なるように配置される。従って、左右両側のそれぞれから挿入される一対の高さ調整部材20によって枕木12の高さ調整を行うことができるので、各高さ調整部材20の挿入度合を調整することにより、枕木12の高さ調整を更に高精度に行うことができる。
【0050】
また、枕木12には、高さ調整部材20が入り込む凹部12aが形成されている。よって、高さ調整部材20が入り込む凹部12aが形成されることにより、枕木12に対して高さ調整部材20を挿入しやすくすることができる。従って、高さ調整部材20の挿入をスムーズに行うことができるので、枕木12の高さの調整を更に効率よく行うことができる。
【0051】
以上、本発明に係る工事桁及びカント調整方法の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、工事桁の各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様、並びに、カント調整方法の各工程の内容及び順序は、上記の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0052】
例えば、前述の実施形態では、高さ調整部材20が入り込む凹部12aを有する枕木12について説明した。しかしながら、枕木は高さ調整部材が入り込む凹部を有しなくてもよい。また、前述の実施形態では、凹部11Aの両側部11bのそれぞれに開口部21が形成される例について説明した。しかしながら、凹部の両側部のいずれかのみに開口部が形成されていてもよい。このように、高さ調整部材が挿入される開口部の数、配置態様、形状及び大きさは適宜変更可能である。
【0053】
また、前述の実施形態では、キャンバー22,23,24,25を含む高さ調整部材20について説明した。しかしながら、キャンバーの形状、大きさ、材料、数及び配置態様は適宜変更可能である。更に、高さ調整部材は、キャンバー以外のものであってもよく、高さ調整部材の形状、大きさ、数、材料及び配置態様についても適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…工事桁、11…枕木受桁、11a…端部、11A…凹部、11b…両側部、11c…底部、12…枕木、12a…凹部、12b…下面、13…主桁、13a…上側フランジ、13b…下側フランジ、13c…ウェブ、13d…リブ、14…棚板、15…リブ、16a…レール、16b…タイプレート、16c…板ばね、16e…フランジ部、17…連結部材、17a…フックボルト、17d…フック部、20…高さ調整部材、21…開口部、22,23,24,25…キャンバー、26…面、27…面、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…高さ方向、L1…線路、L2…線路、L21…直線部、L22…円弧状部、L23…緩和曲線部、N1…犬釘、N2…ナット、V1…ボルト、θ1,θ2…傾斜角度。