(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】導電性粒子、導電性粒子の製造方法、導電材料及び接続構造体
(51)【国際特許分類】
H01B 5/00 20060101AFI20220830BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20220830BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20220830BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20220830BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H01B5/00 C
H01B1/00 C
H01B1/22 A
H01B1/22 B
H01B1/22 D
H01B5/16
H01R11/01 501E
(21)【出願番号】P 2018535199
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2018023660
(87)【国際公開番号】W WO2018235909
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-01-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2017122388
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大秦 嘉代
(72)【発明者】
【氏名】真原 茂雄
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】河本 充雄
【審判官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-006764(JP,A)
【文献】特開2016-015312(JP,A)
【文献】特開2011-175951(JP,A)
【文献】特開2014-241280(JP,A)
【文献】特開2015-160958(JP,A)
【文献】特開2014-132542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00- 1/24
H01B 5/00- 5/16
H01R11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子と、
前記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部と、
前記第1の導電部の外表面上に配置された第2の導電部とを備え、
25℃における10%K値が、4500N/mm
2以下であり、
前記第1の導電部がニッケル及びリンを含み、
前記第1の導電部100重量%中のリンの含有量が、0.5重量%以上であり、
前記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが存在しないか、又は、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが1個/μm
2以下で存在する、導電性粒子。
【請求項2】
基材粒子と、
前記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部と、
前記第1の導電部の外表面上に配置された第2の導電部とを備え、
25℃における10%K値が、4500N/mm
2以下であり、
前記第1の導電部がニッケル及びリンを含み、
前記第1の導電部100重量%中のリンの含有量が、0.5重量%以上であり、
前記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが存在しないか、又は、最大長さ方向の寸法が50nm以上200nm以下であるピンホールが1個/μm
2以下で存在しかつ最大長さ方向の寸法が200nmを超えるピンホールが存在しない、導電性粒子。
【請求項3】
下記式(1)の関係を満足し、かつ、25℃における圧縮回復率が、10%以下である、請求項1又は2に記載の導電性粒子。
A≦5500-B×100 式(1)
前記式(1)中、Aは前記導電性粒子の10%K値(N/mm
2)であり、Bは前記導電性粒子の平均粒子径(μm)である。
【請求項4】
平均粒子径が、3μm以上30μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項5】
前記第2の導電部が、金、銀、パラジウム、白金、銅、コバルト、ルテニウム、インジウム、又はスズを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項6】
前記第1の導電部に含まれる金属のイオン化傾向が、前記第2の導電部に含まれる金属のイオン化傾向よりも大きい、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項7】
前記第1の導電部の厚み方向において、前記第1の導電部における前記第2の導電部側のリンの含有量が、前記第1の導電部における前記基材粒子側のリンの含有量よりも多い、請求項1~
6のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項8】
基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部とを備える導電性粒子を用いて、
前記第1の導電部の外表面上に、めっき処理により第2の導電部を配置し、25℃における10%K値が、4500N/mm
2以下である導電性粒子を得る工程を備え、
得られる導電性粒子において、前記第1の導電部がニッケル及びリンを含み、前記第1の導電部100重量%中のリンの含有量が、0.5重量%以上であり、
前記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが存在しないか、又は、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが1個/μm
2以下で存在するように、前記第2の導電部を形成する、導電性粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、導電材料。
【請求項10】
第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、
第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、
前記接続部の材料が、請求項1~
7のいずれか1項に記載の導電性粒子であるか、又は前記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料であり、
前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記導電性粒子により電気的に接続されている、接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電極間の電気的な接続に用いることができる導電性粒子に関する。また、本発明は、上記導電性粒子の製造方法、上記導電性粒子を用いた導電材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂中に導電性粒子が分散されている。また、導電性粒子として、導電層の表面が絶縁処理された導電性粒子が用いられることがある。
【0003】
上記異方性導電材料は、各種の接続構造体を得るために使用されている。上記異方性導電材料による接続としては、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等が挙げられる。
【0004】
上記導電性粒子の一例として、下記の特許文献1には、基材粒子と該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを備える導電性粒子が開示されている。上記基材粒子は、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上100℃以下の重合体粒子である。上記導電性金属層の厚みは、0.01μm~0.15μmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、種々の電子デバイスの開発が進行しており、基板の素材も多様化している。例えば、曲面パネルや、自由に折り曲げることができるフレキシブルパネル等が開発されている。上記の曲面パネル等には柔軟性が要求されることから、曲面パネル等に用いられるフレキシブル部材として、従来のガラス基板の代わりにポリイミド基板等のプラスチック基板が検討されている。
【0007】
プラスチック基板に半導体チップ等を直接実装する場合には、実装時の温度又は圧力によってプラスチック基板が容易に変形又は破壊等するため、実装時の温度又は圧力を極力低くする必要がある。実装時の温度又は圧力を低くすると、電極間の導電接続時に、導電性粒子を十分に変形させることができない。結果として、導電性粒子と電極との接触面積を十分に確保することが困難なことがある。また、圧縮された導電性粒子が元の形状に戻ろうとする作用が働いて、スプリングバックと呼ばれる現象が生じることがある。スプリングバックが生じると、導電性粒子と電極との接触面積を十分に維持することが困難なことがある。結果として、電極間の導通信頼性が低下することがある。
【0008】
また、特許文献1に記載のような従来の導電性粒子を用いることで、実装時の温度又は圧力が低い場合でも、高い接続信頼性をある程度発揮させることができる。しかしながら、このような導電性粒子では、基材粒子が比較的柔軟であるために、外部衝撃によって、容易に導電性金属層に割れ(導電部の割れ)が生じることがある。従来の導電性粒子では、外部衝撃による導電部の割れを防止することは困難である。
【0009】
本発明の目的は、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、外部衝撃による導電部の割れを効果的に防止することができる導電性粒子を提供することである。また、本発明は、上記導電性粒子の製造方法、上記導電性粒子を用いた導電材料及び接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部と、前記第1の導電部の外表面上に配置された第2の導電部とを備え、前記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが存在しないか、又は、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが1個/μm2以下で存在する、導電性粒子が提供される。
【0011】
本発明の広い局面によれば、基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部と、前記第1の導電部の外表面上に配置された第2の導電部とを備え、前記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが存在しないか、又は、最大長さ方向の寸法が50nm以上200nm以下であるピンホールが1個/μm2以下で存在する、導電性粒子が提供される。
【0012】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記導電性粒子が、下記式(1)の関係を満足し、かつ、25℃における圧縮回復率が、10%以下である。
【0013】
A≦5500-B×100 式(1)
【0014】
前記式(1)中、Aは前記導電性粒子の10%K値(N/mm2)であり、Bは前記導電性粒子の平均粒子径(μm)である。
【0015】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、平均粒子径が、3μm以上30μm以下である。
【0016】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第2の導電部が、金、銀、パラジウム、白金、銅、コバルト、ルテニウム、インジウム、又はスズを含む。
【0017】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第1の導電部に含まれる金属のイオン化傾向が、前記第2の導電部に含まれる金属のイオン化傾向よりも大きい。
【0018】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第1の導電部が、ニッケル及びリンを含む。
【0019】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第1の導電部の厚み方向において、前記第1の導電部における前記第2の導電部側のリンの含有量が、前記第1の導電部における前記基材粒子側のリンの含有量よりも多い。
【0020】
本発明の広い局面によれば、基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部とを備える導電性粒子を用いて、前記第1の導電部の外表面上に、めっき処理により第2の導電部を配置する工程を備え、前記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが存在しないか、又は、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが1個/μm2以下で存在するように、前記第2の導電部を形成する、導電性粒子の製造方法が提供される。
【0021】
本発明の広い局面によれば、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、導電材料が提供される。
【0022】
本発明の広い局面によれば、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、前記接続部の材料が、上述した導電性粒子であるか、又は前記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料であり、前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記導電性粒子により電気的に接続されている、接続構造体が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の係る導電性粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部と、上記第1の導電部の外表面上に配置された第2の導電部とを備える。本発明に係る導電性粒子では、上記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが存在しないか、又は、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが1個/μm2以下で存在する。本発明に係る導電性粒子は、上記の構成を備えているので、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、外部衝撃による導電部の割れを効果的に防止することができる。
【0024】
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部と、上記第1の導電部の外表面上に配置された第2の導電部とを備える。本発明に係る導電性粒子では、上記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが存在しないか、又は、最大長さ方向の寸法が50nm以上200nm以下であるピンホールが1個/μm2以下で存在する。本発明に係る導電性粒子は、上記の構成を備えているので、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、外部衝撃による導電部の割れを効果的に防止することができる。
【0025】
本発明に係る導電性粒子の製造方法は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部とを備える導電性粒子を用いて、上記第1の導電部の外表面上に、めっき処理により第2の導電部を配置する工程を備える。本発明に係る導電性粒子の製造方法では、上記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが存在しないか、又は、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが1個/μm2以下で存在するように、上記第2の導電部を形成する。本発明に係る導電性粒子の製造方法は、上記の構成を備えているので、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、外部衝撃による導電部の割れを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1で作製された導電性粒子の表面の画像を示す図である。
【
図5】
図5は、比較例1で作製された導電性粒子の表面の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0028】
(導電性粒子)
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部と、上記第1の導電部の表面上に配置された第2の導電部とを備える。本発明に係る導電性粒子では、上記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが存在しないか、又は、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが1個/μm2以下で存在することが好ましい。この場合に、本発明に係る導電性粒子では、上記ピンホールが存在する場合に、1μm2あたりのカウントされる上記ピンホールの個数が1個以下である。本発明に係る導電性粒子では、カウントされる上記ピンホールの最大長さ方向の寸法が50nm以上である。
【0029】
本発明に係る導電性粒子では、上記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが存在しないか、又は、最大長さ方向の寸法が50nm以上200nm以下であるピンホールが1個/μm2以下で存在することが好ましい。この場合に、本発明に係る導電性粒子では、1μm2あたりのカウントされる上記ピンホールの個数が1個以下である。本発明に係る導電性粒子では、上記ピンホールの最大長さ方向の寸法が50nm以上200nm以下である。
【0030】
本発明では、上記の構成が備えられているので、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、外部衝撃による導電部の割れを効果的に防止することができる。
【0031】
実装時の温度又は圧力が低い条件でも、高い接続信頼性を有する接続構造体を得るためには、比較的柔軟な基材粒子を有する導電性粒子を用いる必要がある。しかしながら、比較的柔軟な基材粒子を有する導電性粒子は、外部衝撃によって容易に導電部に割れが生じる。本発明者らは、外部衝撃による導電部の割れを抑制するために鋭意検討した結果、外部衝撃による導電部の割れは、導電性粒子の導電部を形成する置換金めっき処理により発生するピンホールが原因であることを見出した。本発明者らは、比較的柔軟な基材粒子を有する導電性粒子では、ピンホールを起点として、外部衝撃による導電部の割れが発生することを見出した。本発明では、上記の構成が備えられているので、外部衝撃による導電部の割れを効果的に防止することができる。
【0032】
上記ピンホールは、例えば、ニッケルめっきにより形成された第1の導電部の表面上に、置換金めっき処理により第2の導電部を形成する際に、ニッケルがイオンとして溶出することで形成される。例えば、上記第1の導電部中の金属が溶出することで、上記第1の導電部の欠けた部分がピンホールである。
【0033】
本発明に係る導電性粒子では、上記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが存在しないことが好ましい。
【0034】
本発明に係る導電性粒子では、上記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、上記ピンホールが存在する場合に、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが1個/μm2以下で存在する。上記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールの個数が0.1個/μm2以下で存在することが好ましい。上記ピンホールの個数が上記の好ましい範囲である場合には、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができ、外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止することができる。
【0035】
本発明に係る導電性粒子では、上記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上200nm以下であるピンホールが存在しないことが好ましい。
【0036】
本発明に係る導電性粒子では、上記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、上記ピンホールが存在する場合に、最大長さ方向の寸法が50nm以上200nm以下であるピンホールが1個/μm2以下で存在する。電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点、及び外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止する観点からは、最大長さ方向の寸法が50nm以上である上記ピンホールの最大長さ方向の寸法は、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。上記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上200nm以下であるピンホールの個数が0.1個/μm2以下で存在することが好ましい。上記ピンホールの個数が上記の好ましい範囲である場合には、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができ、外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止することができる。
【0037】
上記ピンホールの有無については、例えば、任意の導電性粒子を電子顕微鏡にて観察することにより確認することができる。具体的には、任意の導電性粒子の外周から内側に向かって0.5μmの部分を除外した部分について、任意の5箇所を電子顕微鏡にて観察することにより、上記ピンホールの有無を確認することができる。
【0038】
上記ピンホールの最大長さ方向の寸法は、例えば、任意の導電性粒子を電子顕微鏡にて観察することにより算出することができる。上記ピンホールの最大長さ方向の寸法は、ピンホールの外周の2点を直線で結んだ距離であり、該ピンホールの外周の2点を直線で結んだ距離が最大となる寸法である。
【0039】
上記ピンホールの形状は特に限定されない。上記ピンホールの形状は、円形状であってもよく、円形状以外の形状であってもよい。上記ピンホールの形状が円形状である場合には、上記ピンホールの最大長さ方向の寸法は最大径に相当する。
【0040】
一般に、無電解めっき等により導電部を形成した場合に、導電部が形成されていない微小な領域が形成される場合がある。このような領域の最大長さ方向寸法は、一般に50nm未満であり、本発明では、このような小さな領域は上記ピンホールには含まれない。
【0041】
電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電性粒子は、下記式(1)の関係を満足することが好ましい。
【0042】
A≦5500-B×100 式(1)
【0043】
上記式(1)中、Aは上記導電性粒子の10%K値(N/mm2)であり、Bは上記導電性粒子の平均粒子径(μm)である。
【0044】
電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電性粒子の10%K値は、好ましくは500N/mm2以上、より好ましくは1000N/mm2以上であり、好ましくは4500N/mm2以下、より好ましくは4000N/mm2以下である。
【0045】
上記導電性粒子の10%K値(導電性粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率)は、以下のようにして測定できる。
【0046】
微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径100μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃において、圧縮速度0.33mN/秒、及び最大試験荷重20mNの条件下で導電性粒子1個を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、25℃における10%K値(10%圧縮弾性率)を下記式により求めることができる。上記微小圧縮試験機として、例えば、島津製作所社製「微小圧縮試験機MCT-W200」、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。上記導電性粒子の25℃における10%K値は、任意に選択された50個の導電性粒子の25℃における10%K値を平均することにより、算出することが好ましい。
【0047】
10%K値(N/mm2)=(3/21/2)・F・S-3/2・R-1/2
F:導電性粒子が10%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:導電性粒子が10%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:導電性粒子の半径(mm)
【0048】
上記K値は、導電性粒子の硬さを普遍的かつ定量的に表す。上記K値を用いることにより、導電性粒子の硬さを定量的かつ一義的に表すことができる。
【0049】
電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電性粒子の25℃における圧縮回復率は、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下である。上記導電性粒子の25℃における圧縮回復率の下限は特に限定されない。上記導電性粒子の25℃における圧縮回復率は、3%以上であってもよい。
【0050】
上記導電性粒子の25℃における圧縮回復率は、以下のようにして測定できる。
【0051】
試料台上に導電性粒子を散布する。散布された導電性粒子1個について、微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径100μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃において、導電性粒子の中心方向に、粒子径が10μm以上の場合は50mN、粒子径が10μm未満の場合は10mNまで負荷(反転荷重値)を与える。その後、原点用荷重値(0.40mN)まで除荷を行う。この間の荷重-圧縮変位を測定し、下記式から25℃における圧縮回復率を求めることができる。なお、負荷速度は0.33mN/秒とする。上記微小圧縮試験機として、例えば、島津製作所社製「微小圧縮試験機MCT-W200」、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。
【0052】
圧縮回復率(%)=[L2/L1]×100
L1:負荷を与えるときの原点用荷重値から反転荷重値に至るまでの圧縮変位
L2:負荷を解放するときの反転荷重値から原点用荷重値に至るまでの除荷変位
【0053】
上記導電性粒子は、上述した圧縮特性を備えているので、導電性粒子を湾曲部における導電接続用途に好適に用いることができる。上記導電性粒子を湾曲部における導電接続用途に用いた場合には、特に優れた導通信頼性が効果的に発揮される。
【0054】
上記導電性粒子は、上述した圧縮特性を備えているので、フレキシブル部材の電極の導電接続用途に好適に用いることができ、湾曲した状態のフレキシブル部材の電極の導電接続用途により好適に用いることができる。上記導電性粒子の使用により、高い導通信頼性を発揮しつつ、フレキシブル部材を湾曲した状態で用いることができる。
【0055】
フレキシブル部材を用いた接続構造体としては、フレキシブルパネル等が挙げられる。フレキブルパネルは、曲面パネルとして用いることが可能である。上記導電性粒子は、フレキシブルパネルの接続部を形成するために用いられることが好ましく、曲面パネルの接続部を形成するために用いられることが好ましい。
【0056】
上記導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは7μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは25μm以下、最も好ましくは20μm以下である。上記導電性粒子の平均粒子径が、3μm以上30μm以下であると、導電性粒子を導電接続用途に好適に用いることができる。上記導電性粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くすることができ、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0057】
上記導電性粒子の平均粒子径は、数平均粒子径であることがより好ましい。上記導電性粒子の平均粒子径は、例えば、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することや、複数回のレーザー回折式粒度分布測定装置による測定結果の平均値を算出することにより求められる。
【0058】
上記導電性粒子の粒子径の変動係数は、低いほど好ましいが、通常は0.1%以上であり、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である。上記導電性粒子の粒子径の変動係数が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導通信頼性をより一層高めることができる。但し、上記導電性粒子の粒子径の変動係数は、5%未満であってもよい。
【0059】
上記変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0060】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:導電性粒子の粒子径の標準偏差
Dn:導電性粒子の粒子径の平均値
【0061】
上記導電性粒子の形状は特に限定されない。上記導電性粒子の形状は、球状であってもよく、扁平状等の球形状以外の形状であってもよい。
【0062】
次に、図面を参照しつつ、本発明を具体的な実施形態を説明する。本発明は以下の実施形態のみに限定されず、本発明の特徴を損なわない程度に、以下の実施形態は適宜変更、改良等されてもよい。なお、参照した図面では、大きさ及び厚みなどは、図示の便宜上、実際の大きさ及び厚みから適宜変更している。
【0063】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0064】
図1に示す導電性粒子1は、基材粒子2と、第1の導電部3と、第2の導電部4とを備える。第1の導電部3は、基材粒子2の表面上に配置されている。第2の導電部4は、第1の導電部3の表面上に配置されている。基材粒子2と第2の導電部4との間に、第1の導電部3が配置されている。第1の導電部3は、基材粒子2の表面に接している。第1の導電部3は、基材粒子2の表面を覆っている。第2の導電部4は、第1の導電部3の表面に接している。第2の導電部4は、第1の導電部3の表面を覆っている。導電性粒子1は、基材粒子2の表面が第1の導電部3及び第2の導電部4により被覆された被覆粒子である。第2の導電部4は、導電部における最表面に位置し、最外層である。導電性粒子1では、多層の導電部が形成されている。
【0065】
図1に示す導電性粒子1は、ピンホールの存在状態が、上述した構成を満足する。
【0066】
導電性粒子1では、第1の導電部3は、基材粒子2の表面全体を覆っており、導電層を形成している。上記第1の導電部は、上記基材粒子の表面全体を覆っていてもよく、上記基材粒子の表面全体を覆っていなくてもよい。上記第1の導電部は、上記基材粒子の表面全体を覆う導電層を形成していてもよく、上記基材粒子の表面全体を覆う導電層を形成していなくてもよい。上記第1の導電部は、導電層であってもよい。上記導電性粒子は、上記基材粒子が上記第1の導電部により被覆されていない領域を有していてもよい。
【0067】
導電性粒子1では、第2の導電部4は、第1の導電部3の表面全体を覆っており、導電層を形成している。上記第2の導電部は、上記第1の導電部の表面全体を覆っていてもよく、上記第1の導電部の表面全体を覆っていなくてもよい。上記第2の導電部は、上記第1の導電部の表面全体を覆う導電層を形成していてもよく、上記第1の導電部の表面全体を覆う導電層を形成していなくてもよい。上記第2の導電部は、導電層であってもよい。上記導電性粒子は、上記第1の導電部が上記第2の導電部により被覆されていない領域を有していてもよい。
【0068】
導電性粒子1は、芯物質を有さない。導電性粒子1は、導電部の外表面に突起を有さない。導電性粒子1は球状である。第1の導電部3及び第2の導電部4は外表面に突起を有さない。このように、本発明に係る導電性粒子は導電部の表面に突起を有していなくてもよく、球状であってもよい。また、導電性粒子1は、絶縁物質を有さない。但し、導電性粒子1は、第2の導電部4の外表面上に配置された絶縁物質を有していてもよい。
【0069】
また、導電性粒子1では、第1の導電部3は、基材粒子2の表面上に直接積層されている。上記導電性粒子では、上記基材粒子と上記第1の導電部との間に他の導電部が配置されていてもよい。上記導電性粒子では、上記基材粒子の表面上に、他の導電部を介して、上記第1の導電部が配置されていてもよい。
【0070】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0071】
図2に示す導電性粒子21は、基材粒子2と、第1の導電部22と、第2の導電部23と、複数の芯物質24と、絶縁性物質25とを備える。第1の導電部22は、基材粒子2の表面上に配置されている。第2の導電部23は、第1の導電部22の表面上に配置されている。複数の芯物質24は、基材粒子2の表面上に配置されている。第1の導電部22及び第2の導電部23は、基材粒子2と、複数の芯物質24とを覆っている。導電性粒子21は、基材粒子2及び芯物質24の表面が第1の導電部22及び第2の導電部23により被覆された被覆粒子である。
【0072】
導電性粒子21は、導電部の外表面に複数の突起21aを有する。第1の導電部22及び第2の導電部23は、外表面に複数の突起22a及び23aを有する。複数の芯物質24は、第1の導電部22及び第2の導電部23内に埋め込まれている。芯物質24は、突起21a、22a及び23aの内側に配置されている。複数の芯物質24によって第1の導電部22及び第2の導電部23の外表面が隆起されており、突起21a、22a及び23aが形成されている。このように、上記導電性粒子は導電部の外表面に突起を有していてもよい。また、上記導電性粒子は、第1の導電部の外表面に突起を有さず、かつ第2の導電部の外表面に突起を有していてもよい。上記導電性粒子は、第2の導電部の内部又は内側において、複数の突起を形成するように、第2の導電部の表面を隆起させている複数の芯物質を備えていてもよい。上記芯物質は、第1の導電部の内側に位置していてもよく、第1の導電部の内部に位置してもよく、第1の導電部の外側に位置していてもよい。
【0073】
導電性粒子21では、突起21a、22a及び23aを形成するために、複数の芯物質24を用いている。上記導電性粒子では、上記突起を形成するために、複数の上記芯物質を用いなくてもよい。上記導電性粒子では、複数の上記芯物質を備えていなくてもよい。
【0074】
導電性粒子21は、第2の導電部23の外表面上に配置された絶縁性物質25を有する。第2の導電部23の外表面の少なくとも一部の領域が、絶縁性物質25により被覆されている。絶縁性物質25は絶縁性を有する材料により形成されており、絶縁性粒子である。このように、上記導電性粒子は、導電部の外表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。但し、上記導電性粒子は、絶縁性物質を必ずしも有していなくてもよい。
【0075】
以下、導電性粒子の他の詳細を説明する。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との一方又は双方を意味する。
【0076】
(基材粒子)
上記基材粒子としては、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。上記基材粒子は、金属粒子を除く基材粒子であることが好ましく、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であることがより好ましい。上記基材粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを備えるコアシェル粒子であってもよい。
【0077】
上記基材粒子は、樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であることがさらに好ましく、樹脂粒子であってもよく、有機無機ハイブリッド粒子であってもよい。これらの好ましい基材粒子の使用により、本発明の効果がより一層効果的に発揮され、電極間の電気的な接続により一層適した導電性粒子が得られる。
【0078】
上記導電性粒子を用いて電極間を接続する際には、上記導電性粒子を電極間に配置した後、圧着することにより上記導電性粒子を圧縮させる。基材粒子が樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であると、上記圧着の際に上記導電性粒子が変形しやすく、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなる。このため、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0079】
上記樹脂粒子の材料として、種々の樹脂が好適に用いられる。上記樹脂粒子の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、及び、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させて得られる重合体等が挙げられる。
【0080】
導電材料に適した任意の圧縮時の物性を有する樹脂粒子を設計及び合成することができ、かつ基材粒子の硬度を好適な範囲に容易に制御できるので、上記樹脂粒子の材料は、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体であることが好ましい。
【0081】
上記樹脂粒子を、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を重合させて得る場合には、上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
【0082】
上記非架橋性の単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート化合物;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル化合物;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
【0083】
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
【0084】
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記樹脂粒子を得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
【0085】
上記基材粒子が金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である場合に、上記基材粒子の材料である無機物としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム、ジルコニア及びカーボンブラック等が挙げられる。上記無機物は金属ではないことが好ましい。上記シリカにより形成された粒子としては特に限定されないが、例えば、加水分解性のアルコキシシリル基を2つ以上持つケイ素化合物を加水分解して架橋重合体粒子を形成した後に、必要に応じて焼成を行うことにより得られる粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
【0086】
上記有機無機ハイブリッド粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを有するコアシェル型の有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。上記コアが有機コアであることが好ましい。上記シェルが無機シェルであることが好ましい。電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記基材粒子は、有機コアと上記有機コアの表面上に配置された無機シェルとを有する有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。
【0087】
上記有機コアの材料としては、上述した樹脂粒子の材料等が挙げられる。
【0088】
上記無機シェルの材料としては、上述した基材粒子の材料として挙げた無機物が挙げられる。上記無機シェルの材料は、シリカであることが好ましい。上記無機シェルは、上記コアの表面上で、金属アルコキシドをゾルゲル法によりシェル状物とした後、該シェル状物を焼成させることにより形成されていることが好ましい。上記金属アルコキシドはシランアルコキシドであることが好ましい。上記無機シェルはシランアルコキシドにより形成されていることが好ましい。
【0089】
上記基材粒子が金属粒子である場合に、該金属粒子の材料である金属としては、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金及びチタン等が挙げられる。但し、上記基材粒子は金属粒子ではないことが好ましい。
【0090】
上記基材粒子の粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは2.5μmを超え、特に好ましくは3μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは5μm以下である。上記基材粒子の粒子径が、上記下限以上又は上記下限を超えると、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなるため、電極間の導通信頼性がより一層高くなり、導電性粒子を介して接続された電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くすることができる。さらに基材粒子の表面に導電部を形成する際に凝集し難くなり、凝集した導電性粒子が形成され難くなる。上記基材粒子の粒子径が、上記上限以下であると、導電性粒子が十分に圧縮されやすく、導電性粒子を介して接続された電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くすることができる。また、電極間の間隔が小さくなり、かつ導電部の厚みを厚くしても、小さい導電性粒子が得られる。
【0091】
上記基材粒子の粒子径は、基材粒子が真球状である場合には、直径を示し、基材粒子が真球状ではない場合には、最大径を示す。
【0092】
上記基材粒子の粒子径は、数平均粒子径を示す。上記基材粒子の粒子径は粒度分布測定装置等を用いて求められる。基材粒子の粒子径は、任意の基材粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。導電性粒子において、上記基材粒子の粒子径を測定する場合には、例えば、以下のようにして測定できる。
【0093】
導電性粒子の含有量が30重量%となるように、Kulzer社製「テクノビット4000」に添加し、分散させて、導電性粒子検査用埋め込み樹脂を作製する。検査用埋め込み樹脂中に分散した導電性粒子の中心付近を通るようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製「IM4000」)を用いて、導電性粒子の断面を切り出す。そして、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、画像倍率を25000倍に設定し、50個の導電性粒子を無作為に選択し、各導電性粒子の基材粒子を観察する。各導電性粒子における基材粒子の粒子径を計測し、それらを平均して基材粒子の粒子径とする。
【0094】
(第1の導電部及び第2の導電部)
上記導電性粒子は、第1の導電部を有する。上記第1の導電部の材料である金属は特に限定されない。上記金属としては、例えば、金、銀、パラジウム、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素及びこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。上記第1の導電部の材料である金属は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0095】
電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記第1の導電部の材料である金属は、錫を含む合金、ニッケル、パラジウム、銅又は金であることが好ましく、ニッケル又はパラジウムであることがより好ましい。
【0096】
電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記第1の導電部は、ニッケル及びリンを含むことが好ましい。上記第1の導電部は、ニッケルを含む導電部であることが好ましく、ニッケルを主金属として含むことが好ましい。上記第1の導電部100重量%中のニッケルの含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より一層好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記第1の導電部100重量%中のニッケルの含有量は、97重量%以上であってもよく、97.5重量%以上であってもよく、98重量%以上であってもよい。上記第1の導電部のニッケルの含有量が、上記下限以上であると、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0097】
上記第1の導電部100重量%中のリンの含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記第1の導電部のリンの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗がより一層効果的に低くなる。
【0098】
電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点、及び外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止する観点からは、上記第1の導電部の厚み方向において、上記第1の導電部における上記第2の導電部側のリンの含有量は、上記第1の導電部における上記基材粒子側のリンの含有量よりも多いことが好ましい。
【0099】
第1の導電部の第2の導電部側から内側に向かって厚み1/2までの領域(外表面側の厚み50%の領域)100重量%中のリンの含有量は、第1の導電部の基材粒子側から外側に向かって厚み1/2までの領域(内表面側の厚み50%の領域)100重量%中のリンの含有量よりも多いことが好ましい。上記外表面側の厚み50%の領域100重量%中のリンの含有量が上記内表面側の厚み50%の領域100重量%中のリンの含有量よりも多いことで、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができ、外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止することができる。
【0100】
第1の導電部の第2の導電部側から内側に向かって厚み1/2までの領域(外表面側の厚み50%の領域)100重量%中のリンの含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記外表面側の厚み50%の領域100重量%中のリンの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができ、外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止することができる。
【0101】
第1の導電部の基材粒子側から外側に向かって厚み1/2までの領域(内表面側の厚み50%の領域)100重量%中のリンの含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。上記内表面側の厚み50%の領域100重量%中のリンの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができ、外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止することができる。
【0102】
上記リンの含有量は、集束イオンビームを用いて、導電性粒子の薄膜切片を作製し、電界放射型透過電子顕微鏡(日本電子社製「JEM-2010FEF」)を用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により測定することができる。
【0103】
上記第1の導電部の厚みは、好ましくは100nm以上、より好ましくは150nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下である。上記第1の導電部の厚みが、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗がより一層効果的に低くなる。上記第1の導電部の厚みは、上記第1の導電部が形成されている部分の厚みを意味し、上記第1の導電部が形成されていない部分は含まれない。上記第1の導電部の厚みは、導電性粒子における第1の導電部の平均厚みを示す。
【0104】
上記第1の導電部の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子の断面を観察することにより測定できる。
【0105】
上記導電性粒子は、第2の導電部を有する。上記第2の導電部は、金、銀、パラジウム、白金、銅、コバルト、ルテニウム、インジウム、又はスズを含むことが好ましく、金又は銀を含むことがより好ましく、金を含むことがさらに好ましい。
【0106】
上記第2の導電部に用いることができる金属としては、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素、タングステン、モリブデン及び錫ドープ酸化インジウム(ITO)等が挙げられる。これらの金属は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0107】
上記第2の導電部は、金を含む導電部であることが好ましく、金を主金属として含むことが好ましい。上記第2の導電部100重量%中の金の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より一層好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記第2の導電部100重量%中の金の含有量は、97重量%以上であってもよく、97.5重量%以上であってもよく、98重量%以上であってもよい。上記第2の導電部の金の含有量が、上記下限以上であると、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くすることができる。
【0108】
電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点、及び外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止する観点からは、上記第1の導電部に含まれる金属のイオン化傾向は、上記第2の導電部に含まれる金属のイオン化傾向よりも大きいことが好ましい。
【0109】
上記第2の導電部の厚みは、好ましくは20nm以上、より好ましくは25nm以上であり、好ましくは40nm以下、より好ましくは35nm以下である。上記第2の導電部の厚みが、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗がより一層効果的に低くなる。上記第2の導電部の厚みは、上記第2の導電部が形成されている部分の厚みを意味し、上記第2の導電部が形成されていない部分は含まれない。上記第2の導電部の厚みは、導電性粒子における第2の導電部の平均厚みを示す。
【0110】
上記第2の導電部の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子の断面を観察することにより測定できる。
【0111】
上記第1の導電部及び上記第2の導電部を形成する方法は特に限定されない。上記第1の導電部及び上記第2の導電部を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。導電部の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
【0112】
上記第1の導電部におけるニッケル及びリンの含有量を制御する方法としては、以下の方法等が挙げられる。無電解ニッケルめっきにより第1の導電部を形成する際に、ニッケルめっき液のpHを制御する方法。無電解ニッケルめっきにより第1の導電部を形成する際に、リン含有還元剤の濃度を調整する方法。ニッケルめっき液中のニッケル濃度を調整する方法。
【0113】
上記導電性粒子の製造方法は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部とを備える導電性粒子を用いて、上記第1の導電部の外表面上に、めっき処理により第2の導電部を配置する工程を備える。この工程により、上記第1の導電部の外表面上に上記第2の導電部を備える導電性粒子が得られる。
【0114】
上記第1の導電部を形成する際には、上記第1の導電部の厚み方向において、上記第1の導電部における上記第2の導電部側のリンの含有量を、上記第1の導電部における上記基材粒子側のリンの含有量よりも多くすることが好ましい。上記第1の導電部を上記の好ましい態様により形成することで、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができ、外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止することができる。上記第1の導電部の厚み方向において、上記第1の導電部における上記第2の導電部側のリンの含有量を、上記第1の導電部における上記基材粒子側のリンの含有量よりも多くすることで、上記第1の導電部の材料である金属(例えば、ニッケル等)の溶出を抑制することができる。結果として、上記第1の導電部におけるピンホールの発生をより一層効果的に抑制することができ、外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止することができる。
【0115】
電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点、及び外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止する観点からは、上記第2の導電部を形成するめっき処理では、置換金めっきと還元金めっきとを併用することが好ましい。上記第2の導電部を形成する際に、置換金めっきと還元金めっきとを併用することで、上記第1の導電部の材料である金属(例えば、ニッケル等)の溶出を抑制することができる。結果として、上記第1の導電部におけるピンホールの発生をより一層効果的に抑制することができ、外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止することができる。
【0116】
また、上記第1の導電部の材料である金属(例えば、ニッケル等)の溶出を抑制する他の方法としては、上記第2の導電部を形成するめっき処理を行う前に、予めニッケルめっきを行う方法が挙げられる。予めニッケルめっきを行うことで、上記第2の導電部を形成するめっき処理(置換金めっき及び還元金めっき)により溶出する溶出用のニッケルを、上記第1の導電部の表面上に予め配置しておくことができる。上記第2の導電部を形成するめっき処理(置換金めっき及び還元金めっき)時には、溶出用のニッケルが溶出することで、上記第1の導電部の材料である金属(例えば、ニッケル等)の溶出を抑制することができる。結果として、上記第1の導電部におけるピンホールの発生をより一層効果的に抑制することができ、外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止することができる。
【0117】
電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点、及び外部衝撃による導電部の割れをより一層効果的に防止する観点からは、上記導電性粒子の製造方法は、上述した方法を組み合わせることが好ましい。具体的には、下記の(第1の構成)、(第2の構成)、及び(第3の構成)を組み合わせることが好ましい。(第1の構成)上記導電性粒子の製造方法は、上記第1の導電部の厚み方向において、上記第1の導電部における上記第2の導電部側のリンの含有量を、上記第1の導電部における上記基材粒子側のリンの含有量よりも多くする。(第2の構成)上記第2の導電部を形成するめっき処理は、置換金めっきと還元金めっきとを併用する。(第3の構成)上記第2の導電部を形成するめっき処理を行う前に、予めニッケルめっきを行う。上記の全ての構成を組み合わせることにより、上記第2の導電部の外表面を電子顕微鏡で観察したときに、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが存在しないか、又は、最大長さ方向の寸法が50nm以上であるピンホールが1個/μm2以下で存在するように、上記第2の導電部を形成することができる。
【0118】
(芯物質)
上記導電性粒子は、上記第1の導電部及び上記第2の導電部の外表面に複数の突起を有することが好ましい。上記導電性粒子が、上記第1の導電部及び上記第2の導電部の外表面に複数の突起を有していることで、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。上記導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。さらに、上記導電性粒子の上記第1の導電部及び上記第2の導電部の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。上記突起を有する導電性粒子を用いることで、電極間に導電性粒子を配置した後、圧着させることにより、突起により酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くすることができる。さらに、上記導電性粒子が表面に絶縁性物質を有する場合、又は導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されて導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の樹脂が効果的に排除される。このため、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0119】
上記芯物質が上記第1の導電部及び上記第2の導電部中に埋め込まれていることによって、上記第1の導電部及び上記第2の導電部の外表面に複数の突起を容易に形成することができる。但し、上記第1の導電部及び上記第2の導電部の表面に突起を形成するために、芯物質を必ずしも用いなくてもよい。
【0120】
上記突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより第1の導電部及び第2の導電部を形成する方法、並びに基材粒子の表面に無電解めっきにより第1の導電部を形成した後、芯物質を付着させ、さらに無電解めっきにより第2の導電部を形成する方法等が挙げられる。上記突起を形成する他の方法としては、基材粒子の表面上に、第1の導電部を形成した後、該第1の導電部上に芯物質を配置し、次に第2の導電部を形成する方法、並びに基材粒子の表面上に導電部(第1の導電部又は第2の導電部等)を形成する途中段階で、芯物質を添加する方法等が挙げられる。また、突起を形成するために、上記芯物質を用いずに、基材粒子に無電解めっきにより第1の導電部を形成した後、第1の導電部の表面上に突起状にめっきを析出させ、さらに無電解めっきにより第2の導電部を形成する方法等を用いてもよい。
【0121】
上記基材粒子の外表面上に芯物質を配置する方法としては、例えば、基材粒子の分散液中に、芯物質を添加し、基材粒子の表面に芯物質を、ファンデルワールス力等により集積させ、付着させる方法、並びに基材粒子を入れた容器に、芯物質を添加し、容器の回転等による機械的な作用により基材粒子の表面に芯物質を付着させる方法等が挙げられる。付着させる芯物質の量を制御しやすいため、分散液中の基材粒子の表面に芯物質を集積させ、付着させる方法が好ましい。
【0122】
上記芯物質の材料は特に限定されない。上記芯物質の材料としては、例えば、導電性物質及び非導電性物質が挙げられる。上記導電性物質としては、金属、金属の酸化物、黒鉛等の導電性非金属及び導電性ポリマー等が挙げられる。上記導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン等が挙げられる。上記非導電性物質としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム及びジルコニア等が挙げられる。導電性を高めることができ、さらに接続抵抗を効果的に低くすることができるので、上記芯物質は金属であることが好ましい。上記芯物質は金属粒子であることが好ましい。上記芯物質の材料である金属としては、上記導電材料の材料として挙げた金属を適宜使用可能である。
【0123】
上記芯物質の材料のモース硬度は高いことが好ましい。モース硬度が高い材料としては、チタン酸バリウム(モース硬度4.5)、ニッケル(モース硬度5)、シリカ(二酸化珪素、モース硬度6~7)、酸化チタン(モース硬度7)、ジルコニア(モース硬度8~9)、アルミナ(モース硬度9)、炭化タングステン(モース硬度9)及びダイヤモンド(モース硬度10)等が挙げられる。上記芯物質は、ニッケル、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが好ましく、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることがより好ましい。上記芯物質は、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることがさらに好ましく、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが特に好ましい。上記芯物質の材料のモース硬度は、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、より一層好ましくは6以上、さらに好ましくは7以上、特に好ましくは7.5以上である。
【0124】
上記芯物質の形状は特に限定されない。芯物質の形状は塊状であることが好ましい。芯物質としては、粒子状の塊、複数の微小粒子が凝集した凝集塊、及び不定形の塊等が挙げられる。
【0125】
上記芯物質の粒子径は、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記芯物質の粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。
【0126】
上記芯物質の粒子径は、数平均粒子径を示す。芯物質の粒子径は、任意の芯物質50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0127】
上記導電性粒子1個当たりの上記突起の数は、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上である。上記突起の数の上限は特に限定されない。上記突起の数の上限は導電性粒子の粒子径及び導電性粒子の用途等を考慮して適宜選択できる。
【0128】
上記導電性粒子1個当たりの上記突起の数は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0129】
複数の上記突起の高さは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記突起の高さが、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。
【0130】
複数の上記突起の高さは、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0131】
(絶縁性物質)
上記導電性粒子は、上記導電部の表面上に配置された絶縁性物質を備えることが好ましい。この場合には、上記導電性粒子を電極間の接続に用いると、隣接する電極間の短絡をより一層防止できる。具体的には、複数の導電性粒子が接触したときに、複数の電極間に絶縁性物質が存在するので、上下の電極間ではなく横方向に隣り合う電極間の短絡を防止できる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で導電性粒子を加圧することにより、導電性粒子の導電部と電極との間の絶縁性物質を容易に排除できる。上記導電性粒子が導電部の外表面に複数の突起を有する場合には、導電性粒子の導電部と電極との間の絶縁性物質をより一層容易に排除できる。
【0132】
電極間の圧着時に上記絶縁性物質をより一層容易に排除できることから、上記絶縁性物質は、絶縁性粒子であることが好ましい。
【0133】
上記絶縁性物質の材料としては、上述した樹脂粒子の材料、及び上述した基材粒子の材料として挙げた無機物等が挙げられる。上記絶縁性物質の材料は、上述した樹脂粒子の材料であることが好ましい。上記絶縁性物質は、上述した樹脂粒子又は上述した有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましく、樹脂粒子であってもよく、有機無機ハイブリッド粒子であってもよい。
【0134】
上記絶縁性物質の他の材料としては、ポリオレフィン化合物、(メタ)アクリレート重合体、(メタ)アクリレート共重合体、ブロックポリマー、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の架橋物、熱硬化性樹脂及び水溶性樹脂等が挙げられる。上記絶縁性物質の材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0135】
上記ポリオレフィン化合物としては、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリレート重合体としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリドデシル(メタ)アクリレート及びポリステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ブロックポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、SB型スチレン-ブタジエンブロック共重合体、及びSBS型スチレン-ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、ビニル重合体及びビニル共重合体等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂の架橋物としては、ポリエチレングリコールメタクリレート、アルコキシ化トリメチロールプロパンメタクリレートやアルコキシ化ペンタエリスリトールメタクリレート等の導入が挙げられる。上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド及びメチルセルロース等が挙げられる。また、重合度の調整に、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、チオールや四塩化炭素等が挙げられる。
【0136】
上記導電部(第2の導電部)の表面上に絶縁性物質を配置する方法としては、化学的方法、及び物理的もしくは機械的方法等が挙げられる。上記化学的方法としては、例えば、界面重合法、粒子存在下での懸濁重合法及び乳化重合法等が挙げられる。上記物理的もしくは機械的方法としては、スプレードライ、ハイブリダイゼーション、静電付着法、噴霧法、ディッピング及び真空蒸着による方法等が挙げられる。絶縁性物質が脱離し難いことから、上記第2の導電部の表面に、化学結合を介して上記絶縁性物質を配置する方法が好ましい。
【0137】
上記導電部(第2の導電部)の外表面、及び絶縁性物質の表面はそれぞれ、反応性官能基を有する化合物によって被覆されていてもよい。導電部(第2の導電部)の外表面と絶縁性物質の表面とは、直接化学結合していなくてもよく、反応性官能基を有する化合物によって間接的に化学結合していてもよい。導電部(第2の導電部)の外表面にカルボキシル基を導入した後、該カルボキシル基がポリエチレンイミン等の高分子電解質を介して絶縁性物質の表面の官能基と化学結合していても構わない。
【0138】
上記絶縁性物質の粒子径は、導電性粒子の粒子径及び導電性粒子の用途等によって適宜選択できる。上記絶縁性物質の粒子径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは100nm以上であり、好ましくは4000nm以下、より好ましくは2000nm以下である。絶縁性物質の粒子径が、上記下限以上であると、導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されたときに、複数の導電性粒子における導電部同士が接触し難くなる。絶縁性物質の粒子径が、上記上限以下であると、電極間の接続の際に、電極と導電性粒子との間の絶縁性物質を排除するために、圧力を高くしすぎる必要がなくなり、高温に加熱する必要もなくなる。
【0139】
上記絶縁性物質の粒子径は、数平均粒子径を示す。上記絶縁性物質の粒子径は粒度分布測定装置等を用いて求められる。絶縁性物質の粒子径は、任意の絶縁性物質50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。導電性粒子において、絶縁性物質の粒子径を測定する場合には、例えば、以下のようにして測定できる。
【0140】
導電性粒子を含有量が30重量%となるように、Kulzer社製「テクノビット4000」に添加し、分散させて、導電性粒子検査用埋め込み樹脂を作製する。その検査用埋め込み樹脂中の分散した導電性粒子の中心付近を通るようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製「IM4000」)を用いて、導電性粒子の断面を切り出す。そして、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、画像倍率5万倍に設定し、50個の導電性粒子を無作為に選択し、各導電性粒子の絶縁性物質を観察する。各導電性粒子における絶縁性物質の粒子径を計測し、それらを算術平均して絶縁性物質の粒子径とする。
【0141】
(導電材料)
本発明に係る導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。上記導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散されて用いられることが好ましく、バインダー樹脂中に分散されて導電材料として用いられることが好ましい。上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。上記導電材料は、電極間の電気的な接続に用いられることが好ましい。上記導電材料は回路接続用導電材料であることが好ましい。
【0142】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダー樹脂は、熱可塑性成分(熱可塑性化合物)又は硬化性成分を含むことが好ましく、硬化性成分を含むことがより好ましい。上記硬化性成分としては、光硬化性成分及び熱硬化性成分が挙げられる。上記光硬化性成分は、光硬化性化合物及び光重合開始剤を含むことが好ましい。上記熱硬化性成分は、熱硬化性化合物及び熱硬化剤を含むことが好ましい。
【0143】
上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0144】
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル-スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0145】
上記導電材料は、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0146】
電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くする観点、及び電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記導電材料の25℃での粘度(η25)は、好ましくは20Pa・s以上、より好ましくは30Pa・s以上であり、好ましくは400Pa・s以下、より好ましくは300Pa・s以下である。上記粘度(η25)は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0147】
上記粘度は、例えば、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)等を用いて、25℃及び5rpmの条件で測定可能である。
【0148】
上記導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。上記導電材料が、導電フィルムである場合には、導電性粒子を含む導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。上記導電ペーストは、異方性導電ペーストであることが好ましい。上記導電フィルムは、異方性導電フィルムであることが好ましい。
【0149】
上記導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上であり、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に導電性粒子が効率的に配置され、導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性がより一層高くなる。
【0150】
上記導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0151】
(接続構造体)
上記導電性粒子を用いて、又は上記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
【0152】
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1の接続対象部材及び第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、上記接続部の材料が、上述した導電性粒子であるか、又は上述した導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料であることが好ましい。上記接続部が、上述した導電性粒子により形成されているか、又は上述した導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されていることが好ましい。導電性粒子が用いられた場合には、接続部自体が導電性粒子である。
【0153】
上記第1の接続対象部材は、第1の電極を表面に有することが好ましい。上記第2の接続対象部材は、第2の電極を表面に有することが好ましい。上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記導電性粒子により電気的に接続されていることが好ましい。
【0154】
上記接続構造体は、上記第1の接続対象部材又は上記第2の接続対象部材として、フレキシブル部材を備えることが好ましい。この場合に、上記第1の接続対象部材及び上記第2の接続対象部材の少なくとも一方がフレキシブル部材であればよく、上記第1の接続対象部材及び上記第2の接続対象部材の双方がフレキシブル部材であってもよい。上記フレキシブル部材が湾曲した状態で、上記接続構造体が用いられることが好ましい。上記接続部が湾曲した状態で、上記接続構造体が用いられることが好ましい。
【0155】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に示す断面図である。
【0156】
図3に示す接続構造体51は、第1の接続対象部材52と、第2の接続対象部材53と、第1の接続対象部材52及び第2の接続対象部材53を接続している接続部54とを備える。接続部54は、導電性粒子1を含む導電材料により形成されている。上記導電材料が熱硬化性を有し、接続部54が導電材料を熱硬化させることにより形成されていることが好ましい。なお、
図3では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。導電性粒子1に代えて、導電性粒子21等を用いてもよい。
【0157】
第1の接続対象部材52は表面(上面)に、複数の第1の電極52aを有する。第2の接続対象部材53は表面(下面)に、複数の第2の電極53aを有する。第1の電極52aと第2の電極53aとが、1つ又は複数の導電性粒子1により電気的に接続されている。従って、第1の接続対象部材52及び第2の接続対象部材53が導電性粒子1により電気的に接続されている。
【0158】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例としては、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記熱圧着の圧力は圧着する面積に対して0.5×106Pa~5×106Pa程度である。上記熱圧着の加熱の温度は、70℃~230℃程度である。上記熱圧着の加熱の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。上記熱圧着の圧力は、好ましくは0.5×106Pa以上、より好ましくは1×106Pa以上であり、好ましくは5×106Pa以下、より好ましくは3×106Pa以下である。上記熱圧着の圧力及び温度が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0159】
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板等の電子部品等が挙げられる。上記接続対象部材は電子部品であることが好ましい。上記導電性粒子は、電子部品における電極の電気的な接続に用いられることが好ましい。
【0160】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銀電極、SUS電極、銅電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0161】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0162】
基材粒子:
基材粒子A:樹脂粒子、ジビニルベンゼンとイソボルニルアクリレートとの共重合体樹脂粒子、粒子径:10μm
基材粒子B:樹脂粒子、ジビニルベンゼンとイソボルニルアクリレートとの共重合体樹脂粒子、粒子径:5μm
基材粒子C:樹脂粒子、ジビニルベンゼンとイソボルニルアクリレートとの共重合体樹脂粒子、粒子径:20μm
【0163】
(実施例1)
(1)第1の導電部(ニッケル層)の形成
パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、基材粒子A10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、基材粒子Aを取り出した。次いで、基材粒子Aをジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、基材粒子Aの表面を活性化させた。表面が活性化された基材粒子Aを十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
【0164】
また、硫酸ニッケル0.25mol/L、次亜リン酸ナトリウム0.25mol/L、及びクエン酸ナトリウム0.15mol/Lを含むニッケルめっき液(pH9.0)を用意した。
【0165】
得られた懸濁液を70℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。その後、懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、基材粒子Aの表面に第1の導電部(ニッケル-リン層、厚み200nm)が配置された粒子を得た。導電層100重量%中のニッケルの含有量は94.5重量%、リンの含有量は5.5重量%であった。
【0166】
(2)第2の導電部(金層)の形成
基材粒子Aの表面に第1の導電部が配置された粒子10重量部を、蒸留水100重量部に添加し、分散させることにより、懸濁液を得た。また、シアン化金0.03mol/Lと、還元剤としてヒドロキノン0.1mol/Lとを含む還元金めっき液を用意した。得られた懸濁液を70℃にて攪拌しながら、上記還元金めっき液を懸濁液に徐々に滴下し、還元金めっきを行った。その後、懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子では、上記第1の導電部の外表面上に第2の導電部(金層、厚み31nm)が配置されていた。
図4に、実施例1で作製された導電性粒子の表面の画像を示した。
【0167】
(参考例2)
(1)第1の導電部(ニッケル層)の形成
パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、基材粒子B10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、基材粒子Bを取り出した。次いで、基材粒子Bをジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、基材粒子Bの表面を活性化させた。表面が活性化された基材粒子Bを十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
【0168】
また、硫酸ニッケル0.25mol/L、次亜リン酸ナトリウム0.25mol/L、及びクエン酸ナトリウム0.15mol/Lを含むニッケルめっき液(pH9.0)を用意した。
【0169】
得られた懸濁液を70℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。その後、懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、基材粒子Bの表面に第1の導電部(ニッケル-リン層、厚み210nm)が配置された粒子を得た。導電層100重量%中のニッケルの含有量は94.5重量%、リンの含有量は5.5重量%であった。
【0170】
(2)ニッケルめっき層の形成
基材粒子Bの表面に第1の導電部が配置された粒子10重量部を、蒸留水100重量部に添加し、分散させることにより、懸濁液を得た。また、硫酸ニッケル10重量%、次亜リン酸ナトリウム10重量%、水酸化ナトリウム4重量%及びコハク酸ナトリウム20重量%を含むニッケル液52mLを調製した。得られた懸濁液を80℃にて攪拌しながら、上記ニッケル液を5mL/分で連続的に滴下し、20分間攪拌することによりめっき反応を進行させた。水素の発生がなくなることを確認して、めっき反応を終了させた。その後、懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、基材粒子Bの表面に第1の導電部及びニッケルめっき層が配置された粒子を得た。
【0171】
(3)第2の導電部(金層)の形成
基材粒子Bの表面に第1の導電部及びニッケルめっき層が配置された粒子10重量部を、蒸留水100重量部に添加し、分散させることにより、懸濁液を得た。また、シアン化金0.03mol/Lと、還元剤としてヒドロキノン0.1mol/Lとを含む還元金めっき液を用意した。得られた懸濁液を70℃にて攪拌しながら、上記還元金めっき液を懸濁液に徐々に滴下し、還元金めっきを行った。その後、懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子では、上記第1の導電部の外表面上に第2の導電部(金層、厚み30nm)が配置されていた。
【0172】
(実施例3)
第1の導電部を形成する際に、基材粒子Bを基材粒子Cに変更したこと、及び第2の導電部の厚みを35nmに変更したこと以外は、参考例2と同様にして、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子では、第1の導電部の外表面上に第2の導電部(金層、厚み35nm)が配置されていた。
【0173】
(実施例4)
第1の導電部を形成する際に、基材粒子Bを基材粒子Aに変更したこと、得られた懸濁液に金属ニッケル粒子(平均粒子径150nm)1重量部を添加して、芯物質が付着した基材粒子Aを含む懸濁液を用いたこと、及び第2の導電部の厚みを29nmに変更したこと以外は、参考例2と同様にして、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子では、第1の導電部の外表面上に第2の導電部(金層、厚み29nm)が配置されていた。得られた導電性粒子は、第1の導電部及び第2の導電部の外表面に複数の突起を有していた。
【0174】
(実施例5)
第2の導電部を形成する際に、基材粒子Bを基材粒子Aに変更したこと、第1の導電部の厚みを230nmに変更したこと、シアン化金0.03mol/Lをシアン化金0.015mol/Lに変更したこと、及び第2の導電部の厚みを15nmに変更したこと以外は、参考例2と同様にして、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子では、第1の導電部の外表面上に第2の導電部(金層、厚み15nm)が配置されていた。
【0175】
(実施例6)
第2の導電部を形成する際に、シアン化金を硫酸パラジウムに変更したこと、及び第2の導電部の厚みを30nmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子では、第1の導電部の外表面上に第2の導電部(パラジウム層、厚み30nm)が配置されていた。
【0176】
(実施例7)
第1の導電部を形成する際に、基材粒子Bを基材粒子Aに変更したこと、及び第2の導電部の厚みを32nmに変更したこと以外は、参考例2と同様にして、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子では、第1の導電部の外表面上に第2の導電部(金層、厚み32nm)が配置されていた。
【0177】
(比較例1)
還元剤としてのヒドロキノンを含まない置換金めっき液を用意した。第2の導電部を形成する際に、還元金めっき液を置換金めっき液に変更することで、還元金めっきの代わりに置換金めっきにより第2の導電部を形成したこと、及び第2の導電部の厚みを32nmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子では、第1の導電部の外表面上に第2の導電部(金層、厚み32nm)が配置されていた。なお、
図5に、比較例1で作製された導電性粒子の表面の画像を示した。
【0178】
(評価)
(1)ピンホールの存在状態
得られた導電性粒子の第2の導電部の表面を電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製「FE-SEM SU8010」)で観察し、最大長さ方向の寸法が50nm以上である第1のピンホールが存在するか否かを評価した。具体的には、得られた導電性粒子の外周から内側に向かって0.5μmの部分を除外した部分について、任意の5箇所を電子顕微鏡にて観察することにより、上記ピンホールが存在するか否かを評価した。最大長さ方向の寸法が50nm以上である第1のピンホールが存在する場合に、1μm2あたりの最大長さ方向の寸法が50nm以上である第1のピンホールの個数を測定した。また、同様にして、最大長さ方向の寸法が50nm以上200nm以下である第2のピンホールが存在するか否かを評価した。最大長さ方向の寸法が50nm以上200nm以下である第2のピンホールが存在する場合に、1μm2あたりの最大長さ方向の寸法が50nm以上200nm以下である第2のピンホールの個数を測定した。
【0179】
(2)10%K値
得られた導電性粒子の10%K値を上述した方法で測定した。
【0180】
(3)25℃における圧縮回復率
得られた導電性粒子の25℃における圧縮回復率を上述した方法で測定した。
【0181】
(4)平均粒子径
得られた導電性粒子の平均粒子径を、堀場製作所社製「レーザー回折式粒度分布測定装置」を用いて測定した。また、導電性粒子の平均粒子径は、20回の測定結果を平均することにより算出した。
【0182】
(5)第1の導電部の厚み方向におけるリンの含有量
集束イオンビームを用いて、得られた導電性粒子の薄膜切片を作製した。電界放射型透過電子顕微鏡(日本電子社製「JEM-2010FEF」)を用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により、第1の導電部の厚み方向におけるリンの含有量を測定した。この結果から、第1の導電部の基材粒子側から外側に向かって厚み1/2までの領域(内表面側の厚み50%の領域)100重量%中のリンの含有量、及び第1の導電部の第2の導電部側から内側に向かって厚み1/2までの領域(外表面側の厚み50%の領域)100重量%中のリンの含有量を求めた。
【0183】
(6)導電部の割れ
得られた導電性粒子を用いて、導電部の割れを評価した。導電部の割れを以下のようにして評価した。導電部の割れを以下の基準で判定した。
【0184】
導電部の割れの評価方法:
電子顕微鏡を用いて1000個の導電性粒子の写真を、1枚あたり約100個の導電性粒子が写る倍率で撮影した。得られた1000個の導電性粒子の写真を観察し、導電性粒子の直径の半分以上の長さを有する割れが存在する導電性粒子の個数を測定した。
【0185】
[導電部の割れの判定基準]
○:割れが存在する導電性粒子の個数が100個未満
×:割れが存在する導電性粒子の個数が100個以上
【0186】
(7)初期の接続抵抗
接続構造体Xの作製:
得られた導電性粒子を含有量が10重量%となるように、三井化学社製「ストラクトボンドXN-5A」に添加し、分散させて、異方性導電ペーストを作製した。
【0187】
L/Sが20μm/20μmであるITO電極パターンを上面に有する透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが20μm/20μmである金電極パターンを下面に有する半導体チップを用意した。
【0188】
上記透明ガラス基板上に、作製直後の異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が120℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、圧着面積から算出される1MPaの低圧力を付与しつつ、異方性導電ペースト層を100℃で硬化させて、接続構造体Xを得た。
【0189】
接続構造体Yの作製:
異方性導電材料層を硬化させる際の温度を150℃に変更したこと以外は接続構造体Xと同様にして、接続構造体Yを作製した。
【0190】
接続構造体Zの作製:
異方性導電材料層を硬化させる際の温度を200℃に変更したこと以外は接続構造体Xと同様にして、接続構造体Zを作製した。
【0191】
得られた接続構造体X,Y,Zの上下の電極間の接続抵抗Aをそれぞれ、4端子法により測定した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗Aを求めることができる。接続抵抗Aから初期の接続抵抗を以下の基準で判定した。
【0192】
[初期の接続抵抗の判定基準]
○○○:接続抵抗Aが2.0Ω以下
○○:接続抵抗Aが2.0Ωを超え3.0Ω以下
○:接続抵抗Aが3.0Ωを超え5.0Ω以下
△:接続抵抗Aが5.0Ωを超え10Ω以下
×:接続抵抗Aが10Ωを超える
【0193】
(8)高温高湿放置後の接続抵抗(導通信頼性)
上記の(7)初期の接続抵抗の評価後の接続構造体X,Y,Zを85℃及び湿度85%の条件下で500時間放置した。500時間放置後の接続構造体X,Y,Zにおいて、上下の電極間の接続抵抗Bをそれぞれ、4端子法により測定した。接続抵抗A,Bから高温高湿放置後の接続抵抗(導通信頼性)を以下の基準で判定した。
【0194】
[高温高湿放置後の接続抵抗(導通信頼性)の判定基準]
○○○:接続抵抗Bが接続抵抗Aの1.25倍未満
○○:接続抵抗Bが接続抵抗Aの1.25倍以上1.5倍未満
○:接続抵抗Bが接続抵抗Aの1.5倍以上2倍未満
△:接続抵抗Bが接続抵抗Aの2倍以上5倍未満
×:接続抵抗Bが接続抵抗Aの5倍以上
【0195】
結果を下記の表1,2に示す。
【0196】
【0197】
【符号の説明】
【0198】
1…導電性粒子
2…基材粒子
3…第1の導電部
4…第2の導電部
21…導電性粒子
21a…突起
22…第1の導電部
22a…突起
23…第2の導電部
23a…突起
24…芯物質
25…絶縁性物質
51…接続構造体
52…第1の接続対象部材
52a…第1の電極
53…第2の接続対象部材
53a…第2の電極
54…接続部