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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】乗り物用窓ガラス、及び警告表示方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20220830BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20220830BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20220830BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20220830BHJP
   B60Q 1/00 20060101ALI20220830BHJP
   B60Q 3/00 20170101ALI20220830BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
B60J1/00 H
H01L33/50
G02B27/01
B60Q1/00 C
B60Q3/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018555708
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(86)【国際出願番号】 JP2018037626
(87)【国際公開番号】W WO2019073983
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2017197214
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】太田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】野原 敦
(72)【発明者】
【氏名】柳井 正史
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-176022(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0138816(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0020102(US,A1)
【文献】特開平06-193350(JP,A)
【文献】特開平10-194040(JP,A)
【文献】実開平02-012941(JP,U)
【文献】実開平03-091833(JP,U)
【文献】特開2013-159172(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0353003(US,A1)
【文献】国際公開第2016/156720(WO,A1)
【文献】特開2011-42308(JP,A)
【文献】特開2006-298061(JP,A)
【文献】特開2002-274216(JP,A)
【文献】特開2009-145540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
B60J 1/00
H01L 33/50
G02B 27/01
B60Q 1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射された励起光が入射されることによって可視光を放射する乗り物用窓ガラスであって、
前記乗り物用窓ガラスは、2枚の透明板の間に、中間膜が設けられ、前記中間膜を介して前記2枚の透明板が接着された合わせガラス構造を有し、
前記中間膜は樹脂と蛍光材料を有する発光層を含み、
前記励起光の照射により前記乗り物用窓ガラスの端部を発光させる乗り物用窓ガラス。
【請求項2】
前記乗り物用窓ガラスが、自動車のフロントガラス及びサイドガラスのいずれかである請求項1に記載の乗り物用窓ガラス。
【請求項3】
人及び物の少なくともいずれかが乗り物に近づいたと検知されると、前記端部を発光させる請求項1又は2に記載の乗り物用窓ガラス。
【請求項4】
前記検知される内容に応じて、発光のさせ方を変更させる、請求項に記載の乗り物用窓ガラス。
【請求項5】
接近物との距離に応じて、発光の強度、発光面積、及び発光位置の少なくとも1つを変更させる、請求項に記載の乗り物用窓ガラス。
【請求項6】
光源から照射された励起光を入射することによって可視光を放射する乗り物用窓ガラスを利用した警告表示方法であって、
前記乗り物用窓ガラスは、2枚の透明板の間に、中間膜が設けられ、前記中間膜を介して前記2枚の透明板が接着された合わせガラス構造を有し、
前記中間膜は樹脂と蛍光材料を有する発光層を含み、
前記励起光の照射により前記乗り物用窓ガラスの端部を発光させ、乗員に注意喚起する警告表示方法。
【請求項7】
前記乗り物用窓ガラスが、自動車のフロントガラス及びサイドガラスのいずれかである請求項に記載の警告表示方法。
【請求項8】
人及び物の少なくともいずれかが乗り物に近づいたと検知されると、前記端部を発光させる請求項6又は7に記載の警告表示方法。
【請求項9】
前記検知される内容に応じて、発光のさせ方を変更させる、請求項に記載の警告表示方法。
【請求項10】
接近物との距離に応じて、発光の強度、発光面積、及び発光位置の少なくとも1つを変更させる、請求項に記載の警告表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの乗り物用窓ガラス、及び乗り物用窓ガラスを利用した警告表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の衝突回避のために、歩行者の飛び出し、障害物の接近などを、ステレオカメラや、その他のセンサを用いて検出して、その検出結果に基づいて、運転手に様々な警告を発することが行われている(例えば、特許文献1参照)。警告としては、インジケーター、サイドミラーなどに警告を表示するのが一般的である。また、自動車では、ヘッドアップディプレイによって、インジケーターの代わりに、速度や警告表示などを、虚像としてフロントガラスに映し出す技術も実用化されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平8-23587号公報
【文献】特開2000-25488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のインジケーターやサイドミラーへの警告表示は、運転手によって確認しづらく、警告を見落とすことがある。また、ヘッドアップディプレイによってフロントガラスに警告を映し出す場合にも、運転手の視界を妨げることなく、警告表示を行う必要があるため、従来のインジケーターと同様に、警告表示が確認しづらいという問題がある。さらに、ヘッドアップディプレイは、装置サイズが大きく、自動車の室内空間を狭くする問題もある。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、自動車などの乗り物において、室内空間を狭くしたり、視界を妨げたりすることなく、運転手によって警告表示を容易に確認できる乗り物用窓ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、乗り物用窓ガラスの端部を、励起光の入射により可視光を発光できるようにすることで上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[14]を提供する。
[1]光源から照射された励起光が入射されることによって可視光を放射する乗り物用窓ガラスであって、前記励起光の照射により前記乗り物用窓ガラスの端部を発光させる乗り物用窓ガラス。
[2]前記乗り物用窓ガラスが、透明板を含む上記[1]に記載の乗り物用窓ガラス。
[3]前記乗り物用窓ガラスが、少なくとも1枚の透明板と樹脂膜が積層されてなる多層構造を有し、前記樹脂膜が、樹脂と、励起光の入射によって可視光を放射する蛍光材料とを含む上記[2]に記載の乗り物用窓ガラス。
[4]前記乗り物用窓ガラスが、自動車のフロントガラス及びサイドガラスのいずれかである上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の乗り物用窓ガラス。
[5]人及び物の少なくともいずれかが乗り物に近づいたと検知されると、前記端部を発光させる上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の乗り物用窓ガラス。
[6]前記検知される内容に応じて、発光のさせ方を変更させる、上記[5]に記載の乗り物用窓ガラス。
[7]接近物との距離に応じて、発光の強度、発光面積、及び発光位置の少なくとも1つを変更させる、上記[6]に記載の乗り物用窓ガラス。
[8]光源から照射された励起光を入射することによって可視光を放射する乗り物用窓ガラスを利用した警告表示方法であって、前記励起光の照射により前記乗り物用窓ガラスの端部を発光させ、乗員に注意喚起する警告表示方法。
[9]前記乗り物用窓ガラスが、透明板を含む上記[8]に記載の警告表示方法。
[10]前記乗り物用窓ガラスが、少なくとも1枚の透明板と樹脂膜が積層されてなる多層構造を有し、
前記樹脂膜が、樹脂と、励起光の入射によって可視光を放射する蛍光材料とを含む上記[8]又は[9]に記載の警告表示方法。
[11]前記乗り物用窓ガラスが、自動車のフロントガラス及びサイドガラスのいずれかである上記[8]~[10]のいずれか1項に記載の警告表示方法。
[12]人及び物の少なくともいずれかが乗り物に近づいたと検知されると、前記端部を発光させる上記[8]~[11]のいずれか1項に記載の警告表示方法。
[13]前記検知される内容に応じて、発光のさせ方を変更させる、上記[12]に記載の警告表示方法。
[14]接近物との距離に応じて、発光の強度、発光面積、及び発光位置の少なくとも1つを変更させる、上記[13]に記載の警告表示方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、自動車などの乗り物において、室内空間を狭くしたり、視界を妨げたりすることなく、運転手によって警告表示を容易に確認できる乗り物用窓ガラスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る乗り物用窓ガラスを備えた自動車の室内空間を示す。
図2】第1の実施形態において、フロントガラスの周囲に設けられる光源の配置位置を示す模式図である。
図3】第1の実施形態におけるフロントガラスの詳細を示す斜視図である。
図4】第1の実施形態における発光システムを示すブロック図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るフロントガラスの詳細を示す斜視図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る乗り物用窓ガラスを備えた自動車の室内空間を示す。
図7】本発明の第4の実施形態に係る乗り物用窓ガラスを備えた自動車の室内空間を示す。
図8】本発明の第5の実施形態における発光システムの全体図を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の乗り物用窓ガラス、及び乗り物用窓ガラスを用いた警告表示方法の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る乗り物用窓ガラスを備えた自動車の室内空間を示す。第1の実施形態に係る乗り物用窓ガラスは、自動車のフロントガラス10である。フロントガラス10は、図1に示すように、両側のピラー21、22、ボンネット(図示せず)、及びルーフ23に設けられた支持部材により四方が支持されている。フロントガラス10は、下記で詳述するように、蛍光材料などを含有することで、励起光の入射によって可視光を放射することができる。
本実施形態では、図1に示すように、励起光の入射により、フロントガラス10の端部10Eを発光させるものである。端部10Eを発光させることで、後述するように車外の状況に応じて、自車の運転手などの乗員に注意喚起する警告を発することになる。
【0010】
図2に示すように、フロントガラス10には、その周囲に光源11が設けられる。光源11は、励起光を照射するものであり、レーザー光源、LED光源、キセノンランプなどが使用される。光源11から照射される励起光は、フロントガラス10に入射されることでフロントガラス10が可視光を発光できるものであればよい。
光源11が照射する光の最大発光波長は、特に限定されないが、420nm以下が好ましく、410nm以下がより好ましく、408nm以下がさらに好ましい。また、300nm以上が好ましく、350nm以上がより好ましく、380nm以上がさらに好ましい。
光源11が照射する光の最大発光波長を上記下限値以上及び上限値以下とすることで、フロントガラス10が、光源11からの励起光により効率よく可視光を発光することが可能である。
【0011】
フロントガラス10の周囲に設けられた光源11は、フロントガラス10の外周面10X側からフロントガラス10に励起光を入射する。ここで、光源11は複数設けられており、それぞれ、例えば、ボンネット内部、及びピラー21、22内部などに設けられる。複数の光源11は、フロントガラス10の発光する端部10Eの外側の外周面10X側から励起光を入射させるように配置される。具体的には、図2に示すように、複数の光源11は、フロントガラス10の右下部分及び左下部分の外周面10X側から励起光を入射させるように配置される。
【0012】
図3は、本実施形態におけるフロントガラスをより詳細に示す模式的な斜視図である。図3に示すように、フロントガラス10は、例えば、2枚の透明板10A、10Bと、これらの間に配置された中間膜10Cを備え、中間膜10Cにより透明板10A,10Bが接着された合わせガラスである。フロントガラス10において、中間膜10Cは、蛍光材料を含有する樹脂膜(発光層)からなるものでもよいし、2以上の樹脂膜を備え、少なくとも1つの樹脂膜が蛍光材料を含有する樹脂膜(発光層)であってもよい。ただし、フロントガラス10は、このような構成に限定されず、下記で詳述するように、少なくとも1つの層が発光する発光層であればいかなる構成でもよい。
【0013】
光源11は、図3に示すように、その出射端11Aがフロントガラス10の外周面10Xに対向するように設けられるとよい。また、光源11の出射端11Aは、フロントガラス10における発光効率を高めるために、フロントガラス10の発光層(図3では、中間膜10C)に対向し、又は接触するように配置されることが好ましい。
さらに、光源11の光軸は、通常、フロントガラス10の面方向に対して平行であるが、面方向に対して適宜傾斜させてもよい。光軸を傾けることで、光源11からの励起光は、内部に進入しにくくなるので端部10Eのみを発光させやすくなる。
【0014】
また、2枚の透明板10A,10Bの間に、発光層を有する中間膜10Cが設けられる場合には、複数の光源11は、例えばLEDチップからなり、外周面10X、又は外周面10X近傍において、透明板10A,10Bの間に配置されてもよい。この場合、光源11は、例えば、透明板10A,10Bに貼り付けられてもよいし、樹脂膜11Cの内部に埋め込まれてもよい。また、光源11の出射端11Aには、拡散レンズなどが設けられ、光源11からの励起光は、拡散されたうえでフロントガラス10に入射されてもよい。
【0015】
光源11から照射される励起光は、外周面10X側から入射されることで、光量を減衰させながらフロントガラス10の内部に進入する。したがって、乗り物用ガラス12の中央まで進入しない程度に光量を調整することで、図1に示すように、フロントガラス10の端部10Eだけに警告を発光表示させることが可能になる。
【0016】
ここで、フロントガラス(乗り物用ガラス)の端部とは、フロントガラス(乗り物用窓ガラス)の縁部から、ガラス寸法に対して30%以下の長さとなる領域を意味する。30%より大きくなると、発光が運転手の視界を妨げるおそれがある。また、運転手の視界をより妨げないようにするために、上記長さは、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、上記長さは、フロントガラス10が発光していることを運転手に認識させるために、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましい。なお、縁部とは、フロントガラス(乗り物用窓ガラス)の車内(乗り物内部)側のガラス面の露出している部分の最外部を意味する。また、ガラス寸法は、車内側で露出している乗り物用窓ガラスのガラス面において、水平方向における最大長さと、鉛直方向における最大長さの平均をいう。なお、後述するサイドガラスのように、乗り物用窓ガラスが開閉可能であるときには、ガラス寸法とは、車内側における窓ガラスに閉じられる開口の大きさと同じであり、また、縁部とはその開口の縁部を意味する。
【0017】
また、フロントガラス10(乗り物用ガラス)の発光する部分とは、乗り物用ガラス12の輝度を発光面から垂直に35cmの距離で色彩輝度計(コニカミノルタ社製、「CS-150))により測定したとき、輝度が100cd/m2以上となる部分を意味する。したがって、本明細書においては、励起光の照射により、わずかに発光するような部位は発光する部分とは扱わない。
【0018】
本実施形態では、人又は物(以下、「接近物」)が自動車に近づいたと検知されると、乗り物用窓ガラス(フロントガラス10)の端部10Eを発光させることで警告表示するものである。以下、図4を用いて、その構成についてさらに詳細に説明する。なお、ここでいう物とは、人以外のいかなるものも含まれ、例えば動物等も含まれる概念である。
図4は、本実施形態において自動車に設けられる発光システムを説明する。本実施形態において、発光システム30は、上記したフロントガラス10、光源11に加えて、制御手段15及び検知手段16を備える。制御手段15は、発光システム30の全体を制御するものであり、自動車に設けられるCPUなどにより構成されるが、特に限定されない。
【0019】
検知手段16は、自動車の車外の状況を把握するための手段であり、接近物が近づいてきたときに、その接近物との距離、方向などを検知する。
検知手段16は、具体的には、自動車に設けられた人感センサ、ステレオカメラ、対物センサなどである。人感センサは、自動車に人が近づいたことを検知するセンサである。対物センサは、自動車に移動体が近づいたことを検知するセンサである。さらに、ステレオカメラは、車外を撮影して画像解析により、人、物体などが自動車に近づいたことを検知する。
【0020】
検知手段16によって、接近物が自動車に近づいたことが検知されると、その検知情報が制御手段15に送られる。検知情報としては、接近物の方向、接近物と自車の距離などの情報が含まれる。制御手段15では、検知情報に基づき光源11を制御する。具体的には、接近物の距離が規定値以内と検知されると、光源11をオンにして励起光をフロントガラス10に入射してフロントガラス10の端部10Eを発光させる。フロントガラス10の端部10Eの発光は、運転手によって警告表示として認識される。
【0021】
ここで、フロントガラス10の発光させる位置は、接近物の方向などに応じて変更すればよい。具体的には、接近物が自車の右側から近づいている場合には、図1に示すように、フロントガラス10の右側の端部10E、より具体的には右下の端部10Eを発光させればよい。一方で、接近物が自車の左側から近づいている場合には、フロントガラス10の左側の端部10E、より具体的には左下の端部10Eを発光させればよい。このように、本実施形態では、接近物と同じ方向の端部10Eを発光させることで、運転手に瞬時に接近物の方向を認識させることができ、接近物との衝突を回避しやすくなる。
【0022】
また、本実施形態では、接近物が自動車に近づいたと検知されると、その検知される距離、方向等の内容に応じて、発光のさせ方を変更させることができる。例えば、接近物との距離に応じて、発光の強度、発光面積、及び発光位置の少なくとも一つを変更させてもよい。具体的には、接近物との距離が近くなると、光源11から出射される励起光の強度を高くしたり、励起光を放射する光源11の数を増やしたりして、フロントガラス10の端部10Eの発光強度及び発光面積の少なくとも一方を大きくすればよい。ここで、発光面積は、接近物の距離が近づくにつれて、例えば、発光する部分を中央側に広げていくとよい。また、発光面積を同じにしつつ、接近物との距離が近づくほど発光する部分を中央側に移動させていってもよい。発光する部分が、中央側に広がり、また、中央側に移動することで、発光する部分が運転手の視野に入りやすく、運転手に視覚的に危険が高いことを認識させることが可能になる。
【0023】
さらには、例えば、接近物の距離が遠い場合には、複数の箇所の発光強度を同じにする一方で、接近物の距離が近い場合には中央に近い位置の発光強度を相対的に高く、中央から離れる位置の発光強度を相対的に低くしてもよい。このような態様によれば、接近物が近い場合、発光がグラデーションを有することになり、運転手は視覚的に危険が高いことを認識しやすくなる。
【0024】
以上のように、本実施形態では、励起光の照射により、フロントガラスの端部を発光させることで、運転手の視界を妨げることなく、運転手によって容易に確認できる警告を発光表示させることが可能である。また、発光が、窓ガラスを使用して行われるので、自動車内部の室内空間を殆ど狭くすることなく警告表示を行うことが可能になる。さらには、接近物の距離、方向に応じて、発光強度、発光面積、発光位置などを適宜変更することで、警告内容などを運転手に視覚的に認識させやすくなる。
【0025】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る乗り物用窓ガラスを示す概略斜視図である。以下、第2の実施形態に関して第1の実施形態との相違点のみを説明する。
【0026】
第2の実施形態では、自動車にさらにライトガイド24が設けられるものである。ライトガイ24は、例えば、図5に示すように、フロントガラス10の外周面10Xに沿って延在するように配置される。ライトガイド24は、その端部24Aに光源11の出射端11Aが対向するように設けられ、光源11から出射された励起光が端部24Aから入射される。なお、光源11は、第1の実施形態と同様に、ボンネット内部、及びピラー21、22内部などに設けられる。
【0027】
ライトガイド24は、端部24Aから入射された励起光を、ライトガイド24の側面24Xから放射できるものであればよい。具体的には、側面発光型光ファイバを使用すればよい。側面発光型光ファイバは、コアとクラッドを有する光ファイバに光散乱体などを分散したものが挙げられる。ライドガイド24の側面24Xから放射した光は、フロントガラス10の外周面10Xからフロントガラス10の内部に入射される。フロントガラス10は、入射された励起光により可視光を発光する。
なお、ライトガイド24の側面24Xにおいて、フロントガラス10に対向していない部分は、励起光を放射する必要がないので、励起光を吸収又は反射する皮膜が形成されていてもよい。具体的には、紫外線吸収剤を含有する皮膜などが形成されていてもよい。
【0028】
ライトガイド24は、フロントガラス10への励起光の入射効率を高めるために、図5に示すように、側面24Xがフロントガラス10の発光層(図5では、中間膜10C)に対向し又は接触させるとよい。さらに、2枚の透明板10A,10Bの間に設けられた中間膜10Cが発光層からなる樹脂膜を有する場合には、ライトガイド24は、外周面10X又は外周面10X近傍において、2枚の透明板10A、10Bの間に配置されてもよい。この場合、ライトガイド24は、例えば、中間膜10Cの内部に埋め込まれるように配置されるとよい。
【0029】
なお、ライトガイド24の配置位置は、フロントガラスの発光させる位置に応じて決めればよい。すなわち、図1に示すように、右下の端部10E及び左下の端部10Eを発光させる場合には、ライトガイド24は、フロントガラス10の右下及び左下それぞれの外周面10Xに沿って配置させればよい。
また、ライトガイド24は、少なくとも1本設けられればよいが、複数本設けられて、それぞれがフロントガラス10の周方向における異なる位置の外周面10Xに配置されることで、第1の実施形態と同様に、発光位置や発光面積を変更したり、発光位置ごとに発光強度を変更したりすることも可能になる。
【0030】
以上の構成によれば、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、自動車内部の室内空間を殆ど狭くすることなく、フロントガラスの端部を発光させて警告表示を行うことが可能になる。また、第2の実施形態でも第1の実施形態と同様に、接近物が自動車に近づいたと検知されると、その検知される距離、方向等の内容に応じて、発光のさせ方を変更させることができる。例えば、接近物の距離、方向などに応じて発光強度、発光面積、及び発光位置の少なくとも一つを適宜変更することで、警告内容を運転手に視覚的に認識させやすくなる。
【0031】
図6は、本発明の第3の実施形態を示す概略図である。上記第1及び第2の実施形態では、発光する乗り物用窓ガラスは、フロントガラス10であったが、第3の実施形態では、フロントガラス10及びフロントサイドガラス12である。
すなわち、本実施形態では、上記したフロントガラス10と同様に、フロントサイドガラス12の周囲に光源11又はライトガイド24が設けられ、フロントサイドガラス12の端部12Eも発光可能なものとする。ここで、発光させるフロントサイドガラス12の端部12Eは、図6に示すように前方側の端部であってもよいが、下端部の端部であってもよいし、上端部であってもよい。また、これらの2箇所以上の組み合わせでもよい。
【0032】
本実施形態では、フロントガラス10に加えてフロントサイドガラス12も発光させることで警告表示の発光パターンをよりバリエーションに富んだものとすることができる。例えば、接近物の距離が相対的に遠いときにはフロントサイドガラス12の端部12Eを発光させ、距離が相対的に近いときにはフロントガラス10の端部10E、又はフロントガラス10及びフロントサイドガラス12の両方の端部10E、12Eを発光させればよい。
より具体的には、例えば接近物が右側から近づいた場合、距離が遠い間は、右側のフロントサイドガラス12の端部12Eのみを発光させる一方で、接近物の距離が近づいた場合には、フロントガラス10の右側の端部10E、又はフロントガラス10の右側の端部10E及び右側のフロントサイドガラス12の端部12Eの両方を発光させるとよい。接近物が左側から近づいた場合も同様に、フロンガラス10の左側の端部10E、左側のフロントサイドガラス12の端部12Eなどを発光させるとよい。
【0033】
また、別の態様として、例えば、接近物が後方又は側方に存在する場合には、フロントサイドガラス12の端部12Eを発光させる一方で、接近物が前方に存在する場合には、フロントガラス10の端部10Eを発光させてもよい。この場合も、接近物が右側に存在する場合には、フロントガラス10の右側の端部10Eや、右側のフロントサイドガラス12の端部12Eを発光させればよい。接近物が左側に存在する場合も同様に、フロンガラス10の左側の端部10E、左側のフロントサイドガラス12の端部12Eなどを発光させるとよい。
さらには、第1の実施形態と同様に、接近物が自動車に近づいたと検知されると、その検知される距離、方向等の内容に応じて、発光のさせ方を変更させることができる。例えば、接近物の距離に応じてフロントガラス10、及びフロントサイドガラス12の発光の強度、発光面積、及び発光位置の少なくとも一つを適宜変更してもよい。
【0034】
なお、本実施形態でも、フロントガラス10と同様に、フロントサイドガラス12の周囲に光源及びライトガイドのいずれかを配置して、例えば、フロントサイドガラス12の外周面側から励起光を入射させるとよい。
【0035】
図7は、本発明の第4の実施形態を示す概略図である。第4の実施形態では、フロントガラス10及びフロントサイドガラス12に加えて、デルタウィンドウガラス13も発光可能とするものである。なお、デルタウィンドウガラス13とは、自動車の側部においてフロントサイドガラス12のさらに前方にある窓であり、一般的には開閉されないガラス窓である。
【0036】
本実施形態では、第1~第3の実施形態のフロントガラス10及びフロントサイドガラス12と同様に、デルタウィンドウガラス13の周囲にも光源又はライトガイドが設けられる。デルタウィンドウガラス13は、その外周面側から励起光が入射されることで発光するものである。なお、デルタウィンドウガラス13は一般的に小窓であり、端部のみを発光させても、運転手に十分に注意喚起できないため、端部のみならず、デルタウィンドウガラス13の端部に加えて端部以外の部分も発光させてもよく、その全体を発光させてもよい。
【0037】
本実施形態では、フロントガラス10及びフロントサイドガラス12に加えて、デルタウィンドウガラス13も発光可能とすることで、警告表示の発光パターンをよりバリエーションに富んだものとすることができる。
例えば、距離が相対的に遠いときにはフロントサイドガラス12の端部12Eを発光させるともに、距離が中位であるときにはデルタウィンドウガラス13、又はフロントサイドガラス12の端部12E及びデルタウィンドウガラス13を発光させるとよい。そして、距離が相対的に近いときにはフロントガラス10の端部10E、又はフロントガラス10の端部10E及びフロントサイドガラスの端部12E若しくはデルタウィンドウガラス13の少なくとも一方を発光させればよい。
【0038】
また、別の態様として、例えば、接近物が後方に存在する場合には、フロントサイドガラス12の端部12Eを発光させる一方で、接近物が側方に存在する場合にはデルタウィンドウ13を発光させ、接近物が前方に存在する場合には、フロントガラス10の端部10Eを発光させればよい。この場合も、接近物が右側に存在する場合には、フロントガラス10の右下の端部10E、右側のフロントサイドガラス12の端部12E、及び右側のデルタウィンドウ13を発光させればよい。接近物が左側に存在する場合も同様である。
【0039】
さらには、上記各実施形態と同様に、接近物が自動車に近づいたと検知されると、その検知される距離、方向等の内容に応じて、発光のさせ方を変更させることができる。例えば、接近物の距離に応じてフロントガラス10、デルタウィンドウガラス13、及びフロントサイドガラス12の発光の強度、発光面積、及び発光位置の少なくとも一つを変更させてもよい。
【0040】
次に本発明の第5の実施形態について、図8を用いて説明する。以上説明した第1~第4の実施形態では、フロントガラスなどの乗り物用窓ガラスは、外周面側から励起光が入射されて発光する態様を示したが、本実施形態では、フロントガラスなどの乗り物用窓ガラスが、車内側の表面から入射される励起光によって発光させられる。以下、第5の実施形態について、上記各実施形態との相違点について説明する。
【0041】
本実施形態では、励起光を出射する光源11に加えて、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー33を備える光源ユニット31を使用する。光源ユニット31は、自動車内部において、各乗り物用窓ガラスに励起光を照射できる位置であれば特に限定されない。例えば、フロントガラス10を発光する場合には、ダッシュボードの上、又はルーフの前方側に設けられればよい。また、フロントサイドガラス12やデルタウィンドウガラスを発光させる場合には、例えば、フロントサイドドアのドアボディの内面などに設ければよい。
【0042】
MEMSミラー33は、例えば2軸中心に揺動可能なものであり、光源11からの光を走査させながら乗り物用ガラスの車内側の表面(図8では、フロントガラス10の表面10Y)に照射する。ここで、光源11からの励起光は、駆動が制御されたMEMSミラー33を介して乗り物窓ガラスに照射されることで、走査光として乗り物窓ガラスに照射される。本実施形態では、MEMSミラー33を適宜制御することにより、乗り物用ガラスの所望の部分を発光させることができる。したがって、本実施形態でも、上記各実施形態と同様に、フロントガラス10、フロントサイドガラス12の端部10E、12Eを発光させることが可能になる。また、MEMSミラーは一般的に小型であるため、MEMSミラーを使用することで自動車内部の室内空間を殆ど狭くすることなく、窓ガラスの端部を発光させることが可能になる。
【0043】
なお、本実施形態における光源ユニットとしては、乗り物用窓ガラスの表面から励起光を照射できる限り、MEMSミラー33を有する光源ユニット以外のものを使用してもよい。そのような光源ユニットとしては、MEMSミラー33を有する光源ユニット以外の走査光を照射するものでもよい。走査光を照射する光源ユニットは、一般的に小型であるので、MEMSミラーを有する光源ユニットと同様に、自動車内部の大きなスペースを占有することなく窓ガラスを発光表示できる。
また、光源ユニットとしては、励起光を乗り物用窓ガラスにビーム光として照射することが可能な光源ユニットであってもよい。ビーム光は、窓ガラスの発光される部分の全てを同じタイミングで照射するものであり、走査光を使用する場合のように走査ずれなどが生じることがない。
なお、MEMSミラーを有する光源ユニット以外のものとしては、DLP(Digital Light Processing)を用いたDMD(Digital Micromirror Device)方式やLCOS(Liquid crystal on silicon)などを利用した光源ユニットが挙げられる。
【0044】
以上の説明では、フロントガラス10の端部10E、又はフロントガラス10及びサイドガラス12の両方の端部10E、12Eが発光する実施形態が示されたが、自動車の窓ガラスのうち、1枚以上が発光されれば上記構成に限定されない。例えば、リアガラスの端部が発光する構成であってもよいし、サイドガラスのいずれか1枚の端部が発光する構成であってもよい。また、上記では、サイドガラスは、フロントサイドガラス12の端部12Eが発光する構成であったが、もちろん、リアサイドガラスの端部が発光する構成としてもよい。
【0045】
また、上記各実施形態では、フロントガラス10を発光させる場合、フロントガラスの左下、右下の端部10Eが発光する構成が示されたが、フロントガラス10のいずれかの端部を発光させればよく、例えば、下端部を発光させてよいし、両側端部を発光させてもよい。また、上端部や、左上、右上の端部を発光させてもよいし、これらの2つ以上の位置を発光できるようにしてもよい。
さらに、上記第1~第4の実施形態において、乗り物用窓ガラスは、外周面側から励起光が入射されて発光する態様を示すとともに、第5の実施形態では、車内側の表面から励起光が入射されて発光する態様を示したが、これらは組み合わせて使用してもよい。例えば、フロントガラスは、車内側の表面から励起光が入射されて発光する一方、サイドガラスは、ガラスの外周面側から励起光が入射されて発光してもよい。
【0046】
また、上各実施形態では、乗り物用ガラスは、自動車用の窓ガラスに使用されたが、他の乗り物の窓ガラスに使用されてもよい。そのような乗り物としては、電車、汽車、列車等の鉄道車輌、フォークリフト、ショベルカーなどの土木用重機、カート、遊園地車輌などの各種車輌が挙げられる。また、車輌以外でも、船舶、飛行機などでもよい。ただし、いずれの乗り物においても、運転中の運転手の視界に入る窓ガラスを本発明の乗り物用ガラスとすることが好ましい。
【0047】
[乗り物用窓ガラスの構造]
次に、本発明に使用される乗り物用窓ガラスの構造についてより詳細に説明する。本発明で使用する乗り物用窓ガラスは、1層単体からなってもよいし、2以上の層を有する多層構造であってもよい。また、乗り物用窓ガラスは、少なくとも1層が透明板であることが好ましい。透明板は、無機ガラス、及び有機ガラスのいずれかからなるものである。有機ガラスは、いわゆる樹脂ガラスともいわれるものである。多層構造の乗り物用窓ガラスにおいては、透明板は1枚でもよいし、2枚以上であってもよい。また、乗り物用窓ガラスは、透明板が、蛍光材料を含有し、励起光が入射されることで発光する発光層となってよいが、透明板以外の層が蛍光材料を含有して発光層となってもよい。
また、乗り物用窓ガラスにおいては、少なくとも1枚の透明板と樹脂膜が積層されてなる多層構造を有することが好ましく、この多層構造においては、樹脂膜が、樹脂と、蛍光材料とを含有し、発光層となることがより好ましい。
また、発光層は、上記した樹脂膜や、透明板に限定されず、蛍光材料を真空蒸着、スパッタリングなどすることで形成される蛍光材料皮膜であってもよい。蛍光材料皮膜は、例えば、透明板の少なくとも一方の表面上に形成されるとよい。
【0048】
(蛍光材料)
蛍光材料は、励起光の入射によって可視光を放射するものであり、より具体的には上記光源から出射される励起光を吸収して、励起光より長波長である可視光を発光するものである。また、蛍光材料は、励起光が照射されることでいわゆるリン光を発する材料であってもよい。
上記蛍光材料としては、具体的には例えば、高い発光性を発揮できることから、ハロゲン原子を含む配位子を有するランタノイド錯体が挙げられる。ランタノイド錯体のなかでも、ハロゲン原子を含む配位子を有するランタノイド錯体は光線を照射することにより高い発光強度で発光する。上記ハロゲン原子を含む配位子を有するランタノイド錯体としては、ハロゲン原子を含む単座配位子を有するランタノイド錯体や、ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体、ハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体、ハロゲン原子を含む四座配位子を有するランタノイド錯体、ハロゲン原子を含む五座配位子を有するランタノイド錯体、ハロゲン原子を含む六座配位子を有するランタノイド錯体等のハロゲン原子を含む多座配位子を有するランタノイド錯体が挙げられる。
【0049】
なかでも、ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体は、300~410nmの波長の光を照射することにより、可視光線を高い発光強度で発光することが可能である。
しかも、上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体は、耐熱性にも優れる。乗り物用窓ガラスは太陽光の赤外線が照射されることにより、高温環境下で使用されることが多いため、上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体を用いることにより、蛍光材料の劣化が防止できる。
【0050】
本明細書においてランタノイドとは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム又はルテチウムを含む。より一層高い発光強度が得られることから、ランタノイドは、ネオジム、ユーロピウム又はテルビウムが好ましく、ユーロピウム又はテルビウムがより好ましく、ユーロピウムが更に好ましい。
【0051】
上記ハロゲン原子を含む二座配位子としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有する配位子、下記一般式(2)で表される構造を有する配位子などが挙げられる。
【0052】
【化1】
【0053】
上記一般式(1)において、R及びRは有機基を表し、R及びRの少なくとも一方はハロゲン原子を含む有機基であり、Rは、炭素数1以上の直鎖状の有機基を表す。上記R及びRは炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1~10の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1~5の炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数が1~3の炭化水素基であることが特に好ましい。上記炭化水素基は水素原子の一部が、水素原子以外の原子及び官能基と置換されていても良い。上記炭素数が1~3の炭化水素基としては、水素原子が置換されていないメチル基、エチル基、プロピル基や、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたメチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。上記水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたメチル基、エチル基、プロピル基のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を用いることができる。上記炭素数が1~3の炭化水素基としては、高い発光強度で発光することから、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたメチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましく、トリフルオロメチル基であることがより好ましい。
上記Rは、炭素数1以上のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~5のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1のメチレン基であることが最も好ましい。上記炭素数1以上のアルキレン基は水素原子の一部が、水素原子以外の原子及び官能基と置換されていても良い。
【0054】
上記ハロゲン原子を含む配位子を有するランタノイド錯体は、ハロゲン原子を含む配位子を少なくとも1つ有すればよく、ハロゲン原子を含まない配位子を有していても良い。上記ハロゲン原子を含まない配位子としては、ハロゲン原子を含まないこと以外は上記一般式(1)と同一である配位子、下記一般式(2)~(8)で表される構造を有する配位子などが挙げられる。下記一般式(2)~(8)で表される構造を有する配位子は、一部または全ての水素原子が、-COOR、-SO、-NO、-OH、アルキル基、-NHなどに置換されていてもよい。
【0055】
【化2】

なお、上記式(2)において、2つのNはビピリジン骨格のどこにあってもよい。例えば、ビピリジン骨格の2,2’位、3,3’位、4,4’位、2,3’位、2,4’位、3,4’位に2つのNがあることが挙げられる。なかでも、2,2’位に2つのNがあることが好ましい。
【0056】
【化3】

なお、上記式(3)において、2つのNはビピリジン骨格のどこにあってもよい。なかでも、1,10位に2つのNがあることが好ましい。
【0057】
【化4】

なお、上記式(4)において、2つのNはビピリジン骨格のどこにあってもよい。なかでも、1,10位に2つのNがあることが好ましい。
【0058】
【化5】

なお、上記式(5)において、3つのNはターピリジン骨格のどこにあってもよい。
【0059】
【化6】

上記式(6)において、中央のRは、炭素数1以上の直鎖状の有機基を表す。
【0060】
【化7】

上記式(7)において、2つのRは、炭素数1以上の直鎖状の有機基を表す。
【0061】
【化8】

上記式(8)において、nは、1又は2の整数を表す。
【0062】
上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体は、例えば、トリス(トリフルオロアセチルアセトン)フェナントロリンユーロピウム(Eu(TFA)phen)、トリス(トリフルオロアセチルアセトン)ジフェニルフェナントロリンユーロピウム(Eu(TFA)dpphen)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトン)ジフェニルフェナントロリンユーロピウム、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトン)ビス(トリフェニルホスフィン)ユーロピウム、トリス(トリフルオロアセチルアセトン)2,2’-ビピリジンユーロピウム、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトン)2,2’-ビピリジンユーロピウム、トリス(5,5,6,6,7,7,7-ヘプタフルオロ-2,4-ペンタンジオネート)2,2’-ビピリジンユーロピウム([Eu(FPD)]bpy)、トリス(トリフルオロアセチルアセトン)3,4,7,8-テトラメチル-1,10フェナントロリンユーロピウム([Eu(TFA)]tmphen)、トリス(5,5,6,6,7,7,7-ヘプタフルオロ-2,4-ペンタンジオネート)フェナントロリンユーロピウム([Eu(FPD)]phen)、ターピリジントリフルオロアセチルアセトンユーロピウム、ターピリジンヘキサフルオロアセチルアセトンユーロピウム等が挙げられる。
【0063】
上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体は、他にも例えば、トリス(トリフルオロアセチルアセトン)フェナントロリンテルビウム(Tb(TFA)phen)、トリス(トリフルオロアセチルアセトン)ジフェニルフェナントロリンテルビウム(Tb(TFA)dpphen)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトン)ジフェニルフェナントロリンテルビウム、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトン)ビス(トリフェニルホスフィン)テルビウム、トリス(トリフルオロアセチルアセトン)2,2’-ビピリジンテルビウム、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトン)2,2’-ビピリジンテルビウム、トリス(5,5,6,6,7,7,7-ヘプタフルオロ-2,4-ペンタンジオネート)2,2’-ビピリジンテルビウム([Tb(FPD)]bpy)、トリス(トリフルオロアセチルアセトン)3,4,7,8-テトラメチル-1,10フェナントロリンテルビウム([Tb(TFA)]tmphen)、トリス(5,5,6,6,7,7,7-ヘプタフルオロ-2,4-ペンタンジオネート)フェナントロリンテルビウム([Tb(FPD)]phen)、ターピリジントリフルオロアセチルアセトンテルビウム、ターピリジンヘキサフルオロアセチルアセトンテルビウム等が挙げられる。
【0064】
上記ハロゲン原子を含む配位子を有するランタノイド錯体のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を用いることができる。なかでも、配位子の構造を安定化させることから、フッ素原子が好適である。
【0065】
上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体のなかでも、特に初期発光性に優れることから、ハロゲン原子を含むアセチルアセトン骨格を有する二座配位子を有するランタノイド錯体が好適である。
上記ハロゲン原子を含むアセチルアセトン骨格を有する二座配位子を有するランタノイド錯体は、例えば、Eu(TFA)phen、Eu(TFA)dpphen、Eu(HFA)phen、[Eu(FPD)]bpy、[Eu(TFA)]tmphen、[Eu(FPD)]phen等が挙げられる。これらのハロゲン原子を含むアセチルアセトン骨格を有する二座配位子を有するランタノイド錯体の構造を示す。
【0066】
【化9】
【0067】
上記ハロゲン原子を含むアセチルアセトン骨格を有する二座配位子を有するランタノイド錯体は、他にも例えば、Tb(TFA)phen、Tb(TFA)dpphen、Tb(HFA)phen、[Tb(FPD)]bpy、[Tb(TFA)]tmphen、[Tb(FPD)]phen等が挙げられる。
【0068】
上記ハロゲン原子を含む配位子を有するランタノイド錯体は、粒子状であることが好ましい。粒子状であることにより、上記ハロゲン原子を含む配位子を有するランタノイド錯体を発光層中に微分散させることがより容易となる。
上記ハロゲン原子を含む配位子を有するランタノイド錯体が粒子状である場合、ランタノイド錯体の平均粒子径の好ましい下限は0.01μm、好ましい上限は10μmであり、より好ましい下限は0.03μm、より好ましい上限は1μmである。
【0069】
上記蛍光材料としては、テレフタル酸エステル構造を有する蛍光材料も用いることができる。上記テレフタル酸エステル構造を有する蛍光材料は、光線が照射されることにより発光する。
上記テレフタル酸エステル構造を有する蛍光材料は、例えば、下記一般式(9)で表される構造を有する化合物や下記一般式(10)で表される構造を有する化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0070】
【化10】
【0071】
上記一般式(9)中、Rは有機基を表し、xは1、2、3又は4である。
乗り物用窓ガラスの可視光線透過率がより一層高くなることから、xは1又は2であることが好ましく、ベンゼン環の2位又は5位に水酸基を有することがより好ましく、ベンゼン環の2位及び5位に水酸基を有することが更に好ましい。
上記Rの有機基は炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1~10の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1~5の炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数が1~3の炭化水素基であることが特に好ましい。上記炭化水素基の炭素数が10以下であると、上記テレフタル酸エステル構造を有する蛍光材料を発光層に容易に分散させることができる。上記炭化水素基はアルキル基であることが好ましい。
【0072】
上記一般式(9)で表される構造を有する化合物として、例えば、ジエチル-2,5-ジヒドロキシテレフタレート、ジメチル-2,5-ジヒドロキシテレフタレート等が挙げられる。なかでも、上記一般式(9)で表される構造を有する化合物はジエチル-2,5-ジヒドロキシルテレフタレート(Aldrich社製「2,5-ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル」)であることが好ましい。
【0073】
上記一般式(10)中、Rは有機基を表し、R及びRは水素原子又は有機基を表し、yは1、2、3又は4である。
上記Rの有機基は炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1~10の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1~5の炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数が1~3の炭化水素基であることが特に好ましい。上記炭化水素基の炭素数が上記上限以下であると、上記テレフタル酸エステル構造を有する蛍光材料を発光層中に容易に分散させることができる。上記炭化水素基はアルキル基であることが好ましい。
上記一般式(10)中、NRはアミノ基である。R及びRは、水素原子であることが好ましい。上記一般式(10)で表される構造を有する化合物のベンゼン環の水素原子のうち、一つの水素原子が上記アミノ基であってもよく、二つの水素原子が上記アミノ基であってもよく、三つの水素原子が上記アミノ基であってもよく、四つの水素原子が上記アミノ基であってもよい。
上記一般式(10)で表される構造を有する化合物として、ジエチル-2,5-ジアミノテレフタレート(例えば、Aldrich社製)が好ましい。
【0074】
(樹脂膜)
乗り物用窓ガラスにおいては、上記したように、発光層となる樹脂膜が設けられることが好ましい。また、乗り物用窓ガラスは、2枚の透明板の間に、中間膜が設けられ、その中間膜を介して2枚の透明板が接着された合わせガラス構造を有することが好ましい。
合わせガラス構造において、中間膜は、1層の樹脂膜からなり、その樹脂膜が発光層となることが好ましい。また、中間膜には、2層以上の樹脂膜が設けられ、複数の樹脂膜のうち、少なくとも1層の樹脂膜が発光層となってもよい。
【0075】
また、発光層となる樹脂膜は、必ずしも中間膜を構成する必要はなく、例えば、合わせガラス構造において、いずれか一方の透明板の中間膜側の面とは反対側の面に設けられてもよい。また、乗り物用窓ガラスに設けられる透明板が1枚である場合には、その単層の透明板のいずれか一方の面に設けられたものであってもよい。
合わせガラス構造の上記反対側の面や、単層の透明板のいずれか一方の面に、発光層となる樹脂膜が設けられる場合、発光層(樹脂膜)を有するシート状部材が、接着剤、粘着剤などを介して単層ガラスや合わせガラス構造の表面に接着されてもよい。これにより、既存の窓ガラスにいわゆる後貼りによりシート状部材を貼り合せることで、乗り物用窓ガラスに発光層を設けることができる。
【0076】
発光層となる樹脂膜は、樹脂と蛍光材料を含有するものであり、通常、樹脂中に蛍光材料が分散されたものである。蛍光材料は、発光層全体にわたって分散しているとよい。樹脂膜で使用する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂を使用することで、樹脂膜は、接着層としての機能を果たしやすくなり、上記したように、中間膜を構成する場合において透明板などに接着しやすくなる。
樹脂膜に蛍光材料を含有させる場合、蛍光材料の含有量は、樹脂100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましい。蛍光材料の含有量をこれら下限値以上とすることで、乗り物用窓ガラスが十分に発光することが可能になる。また、上記蛍光材料の含有量は、10質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、1.5質量部以下がさらに好ましい。これら上限値以下とすることで、乗り物用窓ガラスの透明性を確保しやすくなる。
【0077】
樹脂膜の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1~2mm、好ましくは0.2~1mmである。樹脂膜の厚さをこの範囲とすると、乗り物用窓ガラスの透明性を損なうことなく、十分な発光輝度を確保することが可能になる。
また、中間膜の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1~3mm、好ましくは0.2~2mmである。
【0078】
上記したように、樹脂膜に使用される樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。また、樹脂膜に使用する熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、及び熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これら樹脂を使用することで、樹脂膜の透明板に対する接着性を確保しやすくなり、樹脂膜によって中間膜を構成する場合に特に好適である。
樹脂膜において熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの中では、樹脂膜に可塑剤を含有させた場合に、無機ガラスに対して優れた接着性を発揮する点から、ポリビニルアセタール樹脂が特に好適である。
【0079】
樹脂膜が熱可塑性樹脂を含有する場合、樹脂膜にはさらに可塑剤を含有させてもよい。樹脂膜に可塑剤を含有させることにより、樹脂膜が柔軟となり、その結果、乗り物用窓ガラスが柔軟になる。さらには、透明板、特に透明板が無機ガラスである場合に、透明板との接着性を高くすることも可能になる。可塑剤は、熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を使用する場合に、その層に含有させると特に効果的である。
可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましく、特にトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)が好適である。
可塑剤の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましい下限は30質量部であり、好ましい上限は70質量部である。可塑剤の含有量を30質量部以上とすると、乗り物用窓ガラスが適度に柔軟になり、取り扱い性等が良好になる。また、可塑剤の含有量を70質量部以下とすると、樹脂膜から可塑剤が分離することが防止される。可塑剤の含有量のより好ましい下限は35質量部、より好ましい上限は63質量部である。
また、本発明の樹脂膜は、熱可塑性樹脂を含有する場合、熱可塑性樹脂、又は熱可塑性樹脂及び可塑剤が主成分となるものであり、熱可塑性樹脂及び可塑剤の合計量が、樹脂膜全量基準で、通常70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0080】
また、樹脂膜は、必要に応じて、酸化防止剤、接着力調整剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤等の添加剤を含有してもよい。
【0081】
(透明板)
透明板としては、乗り物用窓ガラスに使用できるものであれば特に限定なく使用でき、無機ガラス、有機ガラスが使用できる。無機ガラスとしては、特に限定されないが、クリアガラス、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、グリーンガラス等が挙げられる。
また、有機ガラスとしては、一般的に樹脂ガラスと呼ばれるものが使用され、特に限定されないが、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリル共重合体樹脂、ポリエステルなどの樹脂から構成される透明有機ガラスが挙げられる。
【0082】
乗り物用窓ガラスが、2以上の透明板を有する場合、複数の透明板は、互いに同種の材質から構成されてもよいし、別の材質から構成されてもよい。例えば、透明板を2つ有する場合、一方が無機ガラスで、他方が有機ガラスであってもよい。ただし、透明板を複数有する場合、複数の透明板は全て無機ガラスであるか、又はすべて有機ガラスであることが好ましい。
また、各透明板の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1~15mm程度、好ましくは0.5~5mmである。乗り物用窓ガラスが複数の透明板を有する場合、各透明板の厚さは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0083】
上記したように、乗り物用窓ガラスにおいては透明板が可視光を発光する発光層となってもよい。透明板が発光層となる場合、透明板自体が蛍光材料を含有することになる。このとき、蛍光材料は、透明板の無機ガラスを構成する無機材料、又は、有機ガラスを構成する有機材料(樹脂)中に分散されればよい。ここで、蛍光材料は、透明板の全体にわたって分散しているとよい。透明板自体に蛍光材料が含有される場合、蛍光材料の含有量は、無機ガラスを構成する無機材料100質量部、又は有機ガラスを構成する樹脂100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましい。蛍光材料の含有量をこれら下限値以上とすることで、乗り物用窓ガラスが十分に発光することが可能になる。また、上記蛍光材料の含有量は、10質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、1.5質量部以下がさらに好ましい。無機材料の含有量がこれら上限値以下とすることで、蛍光材料によって乗り物用窓ガラスの透明性が損なわれたりすることが防止される。
透明板が、蛍光材料を含有し発光層となる場合、乗り物用窓ガラスは、上記したような合わせガラス構造を有していてもよいし、透明板が単層からなるものであってもよい。合わせガラス構造を有する場合には、少なくとも1枚の透明板が発光層となるとよい。
【0084】
乗り物用窓ガラスは、可視光線を透過するものであってもよいし、可視光線を透過しないものであってもよいが、可視光線を透過するものが好ましい。可視光線を透過するとは、例えば、可視光線透過率が30%以上、好ましくは50%以上となるものである。
乗り物用窓ガラスが、例えば自動車のフロントガラスやフロントサイドガラスに使用される場合には、可視光線透過率は、乗り物用窓ガラスの透明性を高める観点、及び自動車の安全性を確保する観点から、70%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。また、可視光線透過率は、その上限は特に限定されず、高ければ高いほどよいが、実用的には99%以下が好ましく、95%以下がより好ましい。なお、可視光線透過率とは、400~780nmにおける可視光線透過率の平均値を意味し、例えばJISR3212に準拠した、紫外可視赤外分光光度計(日立ハイテク社製、 UH4150)により測定可能である。
【0085】
また、乗り物用窓ガラスは、上記したように、光源からの励起光が入射されることで、可視光を発光するものである。可視光は、一般的に400~780nmの波長を有する光である。また、乗り物用窓ガラスは、青色、緑色、赤色などの光を放射してもよいし、2以上の色の光が混合されて、白色光などを放射してもよい。なお、2以上の色の光が混色される場合には、例えば、発光層が2以上設けられ、各層が別々の光を照射して、混色されてもよいが、1つの発光層に2種類以上の蛍光材料が含有されてもよい。
乗り物用窓ガラスは、自車の運転手に注意を喚起するために、赤色光を放射することが好ましい。具体的には、乗り物用窓ガラスは、好ましくは最大発光波長が590~780nm、より好ましくは最大発光波長が600~750nm、さらに好ましくは620~700nmの光を放射するとよい。なお、赤色光を放射するためには、蛍光材料として、例えば、ハロゲン原子を含む配位子を有するランタノイド錯体を使用し、かつランタノイドとしてユーロピウムを使用すればよい。
【0086】
また、乗り物用窓ガラスは、可視光線又は励起光を反射する反射膜が設けられてもよい。反射膜は、好ましくは発光層よりも車外側(すなわち、車輌外側)に設けられることが好ましい。反射膜は、可視光線を反射するものでもよいし、励起光を反射するものでもよい。反射膜としては、金属膜、可視光反射フィルムなど公知のものを使用すればよい。反射膜が設けられることで、発光層により発光した可視光線などが反射膜で反射されるので、乗り物用窓ガラスの発光強度をより高くすることが可能になる。
なお、反射膜は、運転手の視界を妨げない観点から、乗り物用窓ガラスが、サイドガラス又はリアガラスであるときに設けられることが好ましい。
【符号の説明】
【0087】
10 フロントガラス(乗り物用窓ガラス)
10A、10B 透明板
10C 中間膜
10E 端部
10X 外周面
11 光源
11A 出射端
12 フロントサイドガラス(乗り物用窓ガラス)
12E 端部
13 デルタウィンドウガラス(乗り物用窓ガラス)
15 制御手段
16 検知手段
21、22 ピラー
23 ルーフ
24 ライトガイド
24A 端部
24X 側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8