(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ワーク保持治具及び電気めっき装置
(51)【国際特許分類】
C25D 17/08 20060101AFI20220830BHJP
C25D 21/00 20060101ALI20220830BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C25D17/08 S
C25D17/08 R
C25D17/08 G
C25D21/00 J
C25D17/06 A
(21)【出願番号】P 2019009644
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000189327
【氏名又は名称】上村工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【氏名又は名称】大畠 康
(72)【発明者】
【氏名】村越 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】奥田 朋士
(72)【発明者】
【氏名】西元 一善
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119219(JP,A)
【文献】特開2004-076022(JP,A)
【文献】特開2006-233296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 13/00-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気めっき処理の被処理物である板状ワークを保持するためのワーク保持治具において、
第1部材及び第2部材を備えており、前記両部材の間で前記ワークを保持するようになっており、
前記第1部材は、前記第2部材との間で前記ワークの周縁部を保持するように前記第2部材に取り付けられるようになっており、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方が、フレーム体であり、
前記フレーム体は、環状の本体と、導電部材と、前記ワークの前記周縁部に電気的接触できるように前記導電部材に電気的接続して設けられた接触部材と、前記接触部材より内側において前記本体の全周に渡って設けられた内周シール部材と、を有しており、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記内周シール部材及び前記接触部材が前記ワークの前記周縁部に当接した状態で、前記ワークの前記周縁部と、前記導電部材と、前記接触部材と、を収容する、密封空間を、構成するようになっており、
前記内周シール部材は、接触凸部を有しており、
前記接触凸部の内側面は、外向きに傾斜している、
ことを特徴とするワーク保持治具。
【請求項2】
前記内周シール部材は、平面部を有しており、
前記平面部は、前記接触部材の先端部によって前記本体に向けて押さえ付けられており、
前記接触凸部は、前記接触部材の前記先端部より内側において、前記平面部を越えて、突出している、
請求項1記載のワーク保持治具。
【請求項3】
前記内周シール部材は、差し込み凸部を有しており、
前記差し込み凸部は、前記本体に形成された溝部に差し込まれている、
請求項1又は2に記載のワーク保持治具。
【請求項4】
前記第1部材及び前記第2部材の両方が、フレーム体であり、
前記両フレーム体は、それぞれ、前記本体と、前記導電部材と、前記接触部材と、前記内周シール部材と、を有しており、
前記両フレーム体は、各々の前記内周シール部材及び前記接触部材が前記ワークの前記周縁部に両側から当接した状態で、前記ワークの前記周縁部と、前記両フレーム体の前記導電部材と、前記両フレーム体の前記接触部材と、を収容する、密封空間を、構成するようになっている、
請求項1~3の何れか一つに記載にワーク保持治具。
【請求項5】
前記導電部材は、全周における任意の点において略均等な抵抗値を示すような、幅広且つ肉厚の形態を、有している、
請求項1~4の何れか一つに記載にワーク保持治具。
【請求項6】
前記第1部材及
び前記第2部材は、前記密封空間に液体を充填するための液注入口を、有しており、
前記液注入口は、前記第1部材の第1凹部と前記第2部材の第1凹部とが合わさって構成されており、
前記第1部材及
び前記第2部材は、前記液注入口を上に向けた状態において前記液注入口よりも高い位置に、前記密封空間内の空気を排気するための排気口を、有して
おり、前記排気口は、前記第1部材の第2凹部と前記第2部材の第2凹部とが合わさって構成されている、
請求項1~5の何れか一つに記載にワーク保持治具。
【請求項7】
前記第1部材又は前記第2部材は、前記密封空間に液体を充填するための液注入口を、有しており、
前記第1部材又は前記第2部材は、前記密封空間内の空気を排気するための排気口を、有している、
請求項1~5の何れか一つに記載にワーク保持治具。
【請求項8】
前記接触部材は、前記ワークの前記周縁部に電気的接触するための多数の並設された板バネ状接触端子を有する、櫛状接触部材である、
請求項1~
7の何れか一つに記載にワーク保持治具。
【請求項9】
前記本体は、矩形を有しており、
前記櫛状接触部材は、前記本体の各辺において、連続して、又は、分割されて、設けられている、
請求項
8記載のワーク保持治具。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか一つに記載のワーク保持治具を備えており、前記ワークを前記ワーク保持治具によって保持して、保持された前記ワークに対して電気めっき処理を施す、電気めっき装置であって、
めっき液を収容しており、前記ワークに対して電気めっき処理を行う、めっき処理槽と、
前記ワークを保持した前記ワーク保持治具を、前記めっき処理槽に対して搬入搬出する、搬送機構と、
を備えており、
前記ワーク保持治具の前記密封空間には、金属塩を含んでいない液体が、充填されている、
ことを特徴とする電気めっき装置。
【請求項11】
前記液体は、水道水、天然水、又は純水であり、
前記純水は、脱イオン水、蒸留水、精製水、又はRO水である、
請求項
10記載の電気めっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気めっき処理の被処理物である矩形の板状ワークを保持するためのワーク保持治具、及び、該ワーク保持治具を備えた電気めっき装置、に関する。前記ワークとしては、例えば、プリント基板、ウエハ、半導体基板(特に、Fan-Out Panel Level Package)が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
矩形の板状ワークを保持するためのワーク保持治具及び該ワーク保持治具を備えた電気めっき装置は、特許文献1~9に示されるように、公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5898540号公報
【文献】特開2016-180148号公報
【文献】特開2016-156084号公報
【文献】特開平11-172492号公報
【文献】特開平11-140694号公報
【文献】特開平6-108285号公報
【文献】特開平5-247692号公報
【文献】特開平5-222590号公報
【文献】特開平5-218048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、従来の電気めっき装置においては、ワーク保持治具におけるワークと電気的接触端子との接続部にめっき液が浸入し、接続部に金属が析出し、ワークと電気的接触端子とが癒着し、ワークをワーク保持治具から取り外すのが困難になる、という不具合があった。
【0005】
また、従来の電気めっき装置においては、ワークの全面に対して均等にめっき処理を施すために、全ての電気的接触端子までの配線の長さを等しくするという構成等を、採用しており、装置構成が複雑化するという不具合があった。
【0006】
更に、従来の電気めっき装置においては、板状ワークがワーク保持治具によって撓んだ状態で保持されるために、板状ワークに対して均一なめっきを施すのが困難になる、という不具合があった。
【0007】
本発明は、上述の不具合の少なくとも一つを解消できる、ワーク保持治具及び電気めっき装置を提供することを、目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、電気めっき処理の被処理物である板状ワークを保持するためのワーク保持治具において、
第1部材及び第2部材を備えており、前記両部材の間で前記ワークを保持するようになっており、
前記第1部材は、前記第2部材との間で前記ワークの周縁部を保持するように前記第2部材に取り付けられるようになっており、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方が、フレーム体であり、
前記フレーム体は、環状の本体と、導電部材と、前記ワークの前記周縁部に電気的接触できるように前記導電部材に電気的接続して設けられた接触部材と、前記接触部材より内側において前記本体の全周に渡って設けられた内周シール部材と、を有しており、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記内周シール部材及び前記接触部材が前記ワークの前記周縁部に当接した状態で、前記ワークの前記周縁部と、前記導電部材と、前記接触部材と、を収容する、密封空間を、構成するようになっており、
前記内周シール部材は、接触凸部を有しており、
前記接触凸部の内側面は、外向きに傾斜している、
ことを特徴としている。
【0009】
本発明の第2態様は、本発明の第1態様のワーク保持治具を備えており、前記ワークを前記ワーク保持治具によって保持して、保持された前記ワークに対して電気めっき処理を施す、電気めっき装置であって、
めっき液を収容しており、前記ワークに対して電気めっき処理を行う、めっき処理槽と、
前記ワークを保持した前記ワーク保持治具を、前記めっき処理槽に対して搬入搬出する、搬送機構と、
を備えており、
前記ワーク保持治具の前記密封空間には、金属塩を含んでいない液体が、充填されている、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1態様によれば、板状ワークを外向きに引っ張った状態で保持できるので、ワークを保持する際に、ワークが撓むのを、防止できる。
【0011】
本発明の第2態様によれば、板状ワークに対して片面めっき処理又は両面めっき処理を施す際に、密封空間へめっき液が侵入するのを防止でき、それ故、めっき液に起因した金属がワークの周縁部や接触部材に析出するのを、防止できる。その結果、めっき処理後のワークをワーク保持治具から取り外す際に、ワークや接触部材が損傷するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態の電気めっき装置の平面図である。
【
図3】第1実施形態のワーク保持治具及びワークの分解斜視図である。
【
図5】
図3のV-V断面に相当する斜視部分図であり、第2フレーム体が第1フレーム体に取り付けられる前の状態を示している。
【
図6】
図3のV-V断面に相当する部分図であり、第2フレーム体が第1フレーム体に取り付けられる前の状態を示している。
【
図7】
図3のV-V断面に相当する部分図であり、第2フレーム体が第1フレーム体に取り付けられた後の状態を示している。
【
図8】
図3の両フレーム体をVIII方向に見た図である。
【
図10】
図8に相当する図であり、第2フレーム体が第1フレーム体に取り付けられた状態を示す。
【
図12】ワーク保持治具に液体を注入する様子を示す図である。
【
図13】ワーク保持治具がワークを保持する前の状態を示す断面図である。
【
図14】ワーク保持治具がワークを保持した状態を示す断面図である。
【
図15】IV矢視図に相当する図であり、第1実施形態の変形例の一つである第1フレーム体を示す。
【
図16】第1実施形態の変形例の一つである内周シール部材を示す断面部分図である。
【
図17】第1実施形態の変形例の別の一つである内周シール部材を示す断面部分図である。
【
図18】第1実施形態の変形例の一つである、配線を用いたワーク保持治具が、ワークを保持する前の状態を示す断面部分図である。
【
図19】
図18のワーク保持治具がワークを保持した状態を示す断面部分図である。
【
図20】第2実施形態のワーク保持治具及びワークの分解斜視図である。
【
図21】
図20のXXI-XXI断面に相当する部分図であり、第1フレーム体がバックパネルに取り付けられる前の状態を示す。
【
図22】
図20のXXI-XXI断面に相当する部分図であり、第1フレーム体がバックパネルに取り付けられた後の状態を示す。
【
図23】ワーク保持治具がワークを保持する前の状態を示す断面図である。
【
図24】ワーク保持治具がワークを保持した状態を示す断面図である。
【
図25】第2実施形態の変形例の一つである、配線を用いたワーク保持治具が、ワークを保持する前の状態を示す断面部分図である。
【
図26】本発明の第3実施形態の電気めっき装置の平面図である。
【
図28】第3実施形態のワーク保持治具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
(全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態の電気めっき装置の平面図である。
図2は、
図1のII-II断面略図である。この電気めっき装置9Aは、ワーク保持治具1Aと、めっき処理槽2Aと、搬送機構3Aと、を備えている。ワーク保持治具1Aは、矩形の板状ワーク10を保持するように、構成されている。めっき処理槽2Aは、ワーク保持治具1Aに保持されたワーク10に対してめっき処理を施すように、構成されている。本実施形態では、2台のめっき処理槽2Aが一列に並んで配置されている。搬送機構3Aは、ワーク10を保持したワーク保持治具1Aを、めっき処理槽2Aに対して垂直方向から搬入搬出するように、構成されている。
【0014】
(ワーク保持治具)
図3は、ワーク保持治具1Aの分解斜視図である。ワーク保持治具1Aは、矩形の、第1フレーム体(第1部材)11及び第2フレーム体(第2部材)12を、備えており、両者の間で板状のワーク10を保持するようになっている。第2フレーム体12は、第1フレーム体11との間でワーク10の周縁部101を保持するように第1フレーム体11に取り付けられるようになっている。第1フレーム体11及び第2フレーム体12は、例えば塩化ビニル樹脂で構成されている。
【0015】
図4は、
図3の第1フレーム体11のIV矢視図である。
図5は、
図3のV-V断面に相当する部分矢視図であり、第2フレーム体12が第1フレーム体11に取り付けられる前の状態を示している。
図6は、
図5のVI矢視図である。
図7は、第2フレーム体12が第1フレーム体11に取り付けられた後の状態を示しており、
図6に相当する図である。すなわち、
図7は、ワーク保持治具1Aがワーク10を保持した状態を示している。
【0016】
第1フレーム体11は、矩形環状の本体13と、本体13の全周に渡って設けられた導電部材15と、ワーク10の周縁部101に電気的接触できるように導電部材15に電気的接続して導電部材15に沿って設けられた接触部材16と、接触部材16より内側において本体13の全周に渡って設けられた内周シール部材17と、を有している。接触部材16は、本体13の各辺に沿って設けられている。
【0017】
導電部材15は、
図4に示されるように、本体13の全周に渡って形成された凹部131内に位置している。導電部材15は、
図6に示されるように、幅W及び厚さTを有しており、従来に比して幅広且つ肉厚の形態を有している。それ故、導電部材15は、全周における任意の点において略均等な抵抗値を示すという特性を有している。具体的には、導電部材15は、50~900mm
2の断面積(W×T)を有している。導電部材15は、50mm
2未満の場合には、前記のような特性を殆ど示すことができず、900mm
2を越える場合には、重くなりすぎて取扱いが困難となる。導電部材15は、例えば、銅又はチタンの表面に塩化ビニル樹脂をコーティングして構成されている。導電部材15は、「ブスバー」とも称される。
【0018】
図8は、
図3の両フレーム体11、12をVIII方向に見た図である。導電部材15は、外部に突出した、第1接続端子151及び第2接続端子152を、有している。本体13は、上辺13Aの左端に、上方延在部13Eを有している。
図4に示されるように、凹部131は、外部に通じる、第1凹部1311及び第2凹部1312を、有している。第1凹部1311は、本体13の上辺13Aの右端に形成されている。第2凹部1312は、上方延在部13Eに沿って形成されている。そして、接続端子151は、第1凹部1311を通って上方に延びており、接続端子152は、第2凹部1312を通って上方に延びている。
【0019】
接触部材16は、ワーク10の周縁部101に電気的接触するための多数の並設された板バネ状接触端子161を有する、櫛状接触部材である。本実施形態では、櫛状接触部材16は、本体13の各辺において6個に分割されて設けられている。接触部材16は、導電部材15にボルト165で固定されている。ボルト165は、第1フレーム体11の一面側に現れているので、接触部材16の交換作業を容易に行うことができる。なお、接触部材16は、接触端子161の復元力が弱くなった時に交換される。接触端子161は、例えば、銅に金をコーティングして構成されている。
【0020】
図9は、
図6の一部拡大分解図である。内周シール部材17は、例えば、スポンジゴムで構成されている。内周シール部材17は、接触凸部171と差し込み凸部172と平面部173とを、有している。差し込み凸部172は、本体13に形成された溝部132に差し込まれている。平面部173は、接触部材16の接触端子161によって本体13に向けて押さえ付けられている。接触凸部171は、接触部材16の接触端子161より内側において、差し込み凸部172とは反対向きに且つ平面部173を越えて、突出している。そして、接触凸部171の内側面1711は、外向きに傾斜している。内周シール部材17は、本体13に対して着脱自在となっている。
【0021】
第2フレーム体12は、上述した第1フレーム体11と同じ構成を有しているが、第1フレーム体11に対して鏡像関係の構成を有している。但し、第1フレーム体11は、第2フレーム体12とは異なる次の構成(a)~(c)を、有している。
(a)本体13の上辺13Aの上面に、上方に延びた2本の持ち手122を、有している。
(b)本体13の右辺13Bの側面に、横方向に突出し且つ右辺13Bに沿って延びた右ガイドバー126を、有しており、本体13の左辺13Cの側面に、横方向に突出し且つ左辺13Cに沿って延びた左ガイドバー127を、有している。
(c)導電部材15より外側において本体13の全周に渡って、外周パッキン170を有している。
【0022】
よって、第1フレーム体11及び第2フレーム体12は、
図7に示されるように、内周シール部材17及び接触部材16の接触端子161がワーク10の周縁部101に当接した状態で、周縁部101、導電部材15、及び接触部材16を収容する、密封空間5を、構成するようになっている。密封空間5は、凹部131を含んでいる。なお、内周シール部材17は、ワーク10の周縁部101に、圧縮されて密着する。第2フレーム体12は、ボルト18によって固定されることにより、第1フレーム体11に取り付けられている。
【0023】
また、第2フレーム体12が第1フレーム体11に取り付けられると、
図10に示されるように、密封空間5に液体を充填するための液注入口124と、密封空間5内の空気を排気するための排気口125とが、構成される。液注入口124は、第1フレーム体11の第1凹部1311と第2フレーム体12の第1凹部1311とが合わさって構成されている。排気口125は、第1フレーム体11の第2凹部1312と第2フレーム体12の第2凹部1312とが合わさって構成されている。
図3及び
図4から明らかなように、排気口125は、上方延在部13Eに構成されているので、液注入口124を上に向けた状態において液注入口124よりも高い位置に存在している。
【0024】
(めっき処理槽)
図11は、
図2のXI-XI断面略図である。めっき処理槽2Aは、めっき液20で満たされており、槽内の前側に、第1陽極211及び第1噴流機構221を備えており、槽内の後側に、第2陽極212及び第2噴流機構222を備えている。めっき処理槽2Aは、第1陽極211からワーク10に電気を流すことによって、ワーク10の前面102に対してめっき処理を施すようになっており、また、第2陽極212からワーク10に電気を流すことによって、ワーク10の後面103に対してめっき処理を施すようになっている。すなわち、めっき処理槽2Aは、片面めっき処理だけでなく、両面めっき処理も実行できるようになっている。なお、めっき処理槽2Aにおいては、めっき処理の際、めっき液20が第1噴流機構221によってワーク10の前面102に対して吹き付けられるので、常に新鮮なめっき液20が前面102に接触することとなり、前面102に対するめっき処理が効果的に施され、及び/又は、めっき液20が第2噴流機構222によってワーク10の後面103に対して吹き付けられるので、常に新鮮なめっき液20が後面103に接触することとなり、後面103に対するめっき処理が効果的に施される。
【0025】
更に、めっき処理槽2Aは、
図2に示されるように、ワーク保持治具1Aが槽内に搬入される際にワーク保持治具1Aをガイドするガイド部材を、備えている。具体的には、ガイド部材は、ワーク保持治具1Aの右ガイドバー126を案内する右ガイドレール231と、左ガイドバー127を案内する左ガイドレール232と、を有している。ガイドレールは、ガイドバーが垂直方向にスライドする縦溝からなっている。なお、このガイド部材は、ワーク保持治具1Aを垂直状態に支持する支持部材としても機能している。
【0026】
(搬送機構)
搬送機構3Aは、ワーク保持治具1Aをめっき処理槽2Aに対して垂直方向から搬入搬出する垂直搬送機構31と、ワーク保持治具1Aをめっき処理槽2Aに対する搬入搬出位置まで運搬する第1運搬機構32と、を有している。
【0027】
垂直搬送機構31は、キャリアバー311と、昇降バー312と、左右一対の昇降レール313と、を備えている。キャリアバー311は、2個の把持部315を介して昇降バー312に、把持されている。キャリアバー311の中央には、ワーク保持治具1Aが2本の持ち手122を介して、引っ掛けられるようになっている。そして、垂直搬送機構31は、ワーク保持治具1Aが引っ掛けられたキャリアバー311を把持した昇降バー312を、昇降レール313に沿わせて、昇降させることにより、ワーク保持治具1Aをめっき処理槽2Aに対して搬入搬出するようになっている。
【0028】
第1運搬機構32は、左右一対の水平レール321を有しており、昇降バー312を支持している昇降レール313を、一列に並んだ2台のめっき処理槽2Aの上方において、めっき処理槽2Aに対する搬入搬出位置まで、水平レール321に沿って、水平に移動させるようになっている。よって、第1運搬機構32は、昇降バー312に把持されたキャリアバー311に引っ掛けられているワーク保持治具1Aを、任意のめっき処理槽2Aに対する搬入搬出位置まで、運搬できる。
【0029】
(作動)
前記構成の電気めっき装置9Aは、次のように作動する。
(1)ワーク保持
まず、第1フレーム体11を床面に水平に置く。次に、第1フレーム体11上に、ワーク10を載せる。次に、第2フレーム体12を、上方から、第1フレーム体11に重ねていき、ボルト18によって固定する。これにより、ワーク10がワーク保持治具1Aによって保持され、ワーク10の周縁部101には、
図7に示されるような密封空間5が構成される。
【0030】
(2)液注入
ワーク10を保持したワーク保持治具1Aを、垂直状態に起こす。次に、
図12に示されるように、ワーク保持治具1Aを、容器200の液体201中に浸漬させる。このとき、ワーク保持治具1Aは、排気口125が液注入口124よりも高い位置に存在しているので、液注入口124を液体201の液面202より下に位置させ且つ排気口125を液面202より上に位置させた状態で、傾けることができる。その結果、密封空間5内の空気は、矢印で示されるように進んで、確実に排気口125から排気され、液体201は、液注入口124から密封空間5内に確実に充填される。
【0031】
なお、密封空間5へ注入する液体201としては、金属塩を含んでいない液体を用いる。「金属塩を含んでいない」とは、「含まれている全ての金属塩の濃度が5g/L以下である」ことを意味している。そのような液体としては、具体的には、水道水、天然水、又は純水を、使用する。純水としては、脱イオン水、蒸留水、精製水、又はRO水を、使用する。
【0032】
(3)運搬
第1運搬機構32を作動させて、ワーク保持治具1Aを、めっき処理槽2Aに対する搬入搬出位置まで、運搬する。
図1では、奥のめっき処理槽2Aまで運搬している。
【0033】
(4)搬入
垂直搬送機構31を作動させて、ワーク保持治具1Aを、めっき処理槽2Aへ搬入する。ところで、めっき処理槽2Aの両側には、搬送機構3Aの支持台30が配置されており、支持台30上には、バー載置台318が設けられている。垂直搬送機構31は、キャリアバー311がバー載置台318に載る位置まで、昇降バー312を下降させ、キャリアバー311がバー載置台318に載ると、把持部315を解除してキャリアバー311を離し、昇降バー312を上昇させる。これにより、ワーク保持治具1Aが、キャリアバー311に引っ掛かった状態で、めっき処理槽2Aへ搬入される。なお、この際、ワーク保持治具1Aは、左右のガイドバー126、127が左右のガイドレール231、232によって案内されるので、垂直状態を維持したまま円滑に搬入される。
【0034】
(5)めっき処理
電源スイッチ(図示せず)をオンして、ワーク10への通電を行う。これにより、ワーク10に対して、片面めっき処理又は両面めっき処理が行われる。ワーク10への通電は、電源(図示せず)から、通電路(図示せず)、バー載置台318、キャリアバー311、第1接続端子151、導電部材15、及び接触部材16を経ることにより、行われる。この際、密封空間5には液体201が充填されているので、密封空間5へのめっき液20の侵入を確実に防ぐことができる。
【0035】
(6)搬出
垂直搬送機構31を作動させて、昇降バー312を下降させ、把持部315を作動させてキャリアバー311を把持し、昇降バー312を上昇させる。これにより、キャリアバー311と共にワーク保持治具1Aが上昇し、ワーク保持治具1Aがめっき処理槽2Aから上方へ搬出される。
【0036】
(効果)
(a)前記構成のワーク保持治具1Aによれば、ワーク10の周縁部101、導電部材15、及び接触部材16を収容する、密封空間5を、構成でき、液注入口124から、密封空間5に液体を注入できる。したがって、密封空間5に液体を注入することによって、次のような効果を発揮できる。
【0037】
(a1)ワーク10に対してめっき処理を施す際に、密封空間5へめっき液20が侵入するのを防止でき、それ故、めっき液20に起因した金属がワーク10の周縁部101や接触部材16に析出するのを、防止できる。その結果、めっき処理後のワーク10をワーク保持治具1Aから取り外す際に、ワーク10や接触部材16が損傷するのを防止できる。
【0038】
(a2)ワーク10の周縁部101と接触部材16との間で通電によって生じる発熱を、密封空間5の液体によって冷却でき、したがって、両者の損傷や固着を防止できる。
【0039】
(b)前記構成のワーク保持治具1Aによれば、導電部材15が従来に比して幅広且つ肉厚の形態を有しているので、全周における任意の点において略均等な抵抗値を示すことができ、したがって、ワーク10の全周に渡って均一な通電を行うことができ、それ故、ワーク10の前面102のみ又は後面103のみ又は両面102、103の、全面に渡って、均一なめっき処理を施すことができる。
【0040】
(c)前記構成のワーク保持治具1Aによれば、接触部材16が櫛状接触部材であるので、導電部材15が幅広且つ肉厚の形態を有していても、ワーク10に対して良好な通電を行うことができる。
【0041】
(d)前記構成のワーク保持治具1Aによれば、櫛状接触部材16が本体13の各辺において6個に分割されているので、故障した部材16のみを容易に交換できる。
【0042】
(e)前記構成のワーク保持治具1Aによれば、内周シール部材17が、接触凸部171と差し込み凸部172と平面部173とを、有しており、更に、接触凸部171の内側面1711が、外向きに傾斜しているので、次のような効果を発揮できる。
【0043】
(e-1) 内側面1711が外向きに傾斜しているので、ワーク保持治具1Aによってワーク10を保持する際に、
図13に示されるように、接触凸部171が矢印方向(外側)へ向けて潰れていく。その結果、ワーク10は、
図14に示されるように、外向きに引っ張られた状態で保持される。したがって、ワーク保持治具1Aによってワーク10を保持する際に、ワーク10が撓むのを、防止できる。
【0044】
(e-2) 内周シール部材17は、差し込み凸部172を本体13の溝部132に差し込み、接触部材16をボルト165によって導電部材15に固定する際に、接触端子161によって平面部173を押さえ付けることにより、本体13に取り付けることができる。また、その逆に、内周シール部材17は、ボルト165を外すことによって接触部材16を導電部材15から取り外して、差し込み凸部172を溝部132から引き出すことにより、本体13から取り外すことができる。したがって、内周シール部材17を簡単に着脱でき、よって、内周シール部材17の交換を容易に行うことができる。ちなみに、内周シール部材17は、繰り返し使用によって劣化又は変形が生じやすいので、容易に交換できることは、大きな利点である。
【0045】
(e-3) 接触端子161が、通電の役割と内周シール部材17を固定する役割との2つの役割を兼務しているので、部品点数の削減を図ることができる。
【0046】
(f)前記構成のワーク保持治具1Aによれば、排気口125が液注入口124よりも高い位置に存在しているので、ワーク保持治具1Aを容器200の液体201中に浸漬させる際に、液注入口124を液体201の液面202より下に位置させ且つ排気口125を液面202より上に位置させた状態で、傾けることができる。その結果、密封空間5内の空気を確実に排気口125から排気しながら、液体201を、液注入口124から密封空間5内に確実に充填できる。
【0047】
(g)前記構成のワーク保持治具1Aによれば、第1フレーム体11及び第2フレーム体12が、それぞれ、導電部材15、第1接続端子151、第2接続端子152、及び接触部材16を有しているので、ワーク10の前面102と後面103とに異なる通電量を設定することができ、それ故、両面めっき処理を精密に制御することができる。
【0048】
(h)前記構成の電気めっき装置9Aによれば、ワーク保持治具1Aの密封空間5に液体が充填されているので、次のような効果を発揮できる。
【0049】
(h1)ワーク10に対してめっき処理を施す際に、密封空間5へめっき液20が侵入するのを防止でき、それ故、めっき液20に起因した金属がワーク10の周縁部101や接触部材16に析出するのを、防止できる。その結果、めっき処理後のワーク10をワーク保持治具1Aから取り外す際に、ワーク10や接触部材16が損傷するのを防止できる。
【0050】
(h2)ワーク10の周縁部101と接触部材16との間で通電によって生じる発熱を、密封空間5の液体によって冷却でき、したがって、両者の損傷や固着を防止できる。
【0051】
(i)前記構成の電気めっき装置9Aによれば、ワーク保持治具1Aをめっき処理槽2Aに対して垂直方向から搬入搬出するので、装置の設置面積を小さくできる。
【0052】
(j)前記構成の電気めっき装置9Aによれば、ワーク保持治具1Aをめっき処理槽2Aに対して搬入する際、左右のガイドバー126、127が左右のガイドレール231、232によって案内されるので、ワーク保持治具1Aを、垂直状態を維持したまま円滑に搬入できる。
【0053】
[第1実施形態の変形例]
上述した第1実施形態は、次の構成(1)~(10)を任意に1つ以上採用してもよい。
【0054】
(1)
図15に示されるように、櫛状接触部材16が、本体13の各辺において、各辺の全長に渡って連続して、設けられている。この構成によれば、両フレーム体11、12の組立作業を簡素化できる。
【0055】
(2)接触部材16が、櫛状以外の形状、例えば単なる平板状を、有している。更に、この場合においても、接触部材16は、本体13の各辺において、分割して設けられてもよく、又は、各辺の全長に渡って連続して設けられてもよい。
【0056】
(3)排気口125を備えていない。この場合は、液注入口124から密封空間5に液体を注入しながら、密封空間5内の空気を液注入口124から排気する。すなわち、液注入口124が、液体の注入と共に空気抜きを行う構造を有している。これによれば、空気抜き口125を省略できるので、装置構成を簡素化できる。
【0057】
(4)液注入口124及び排気口125を備えていない。よって、密封空間5に液体は充填されない。この構成によっても、第1実施形態の(a)及び(g)以外の効果を発揮できる。
【0058】
(5)内周シール部材17が、
図16に示されるように、接触凸部171のみを有している。なお、内側面1711は、外向きに傾斜している。この場合、内周シール部材17は、接着剤又はビス止めによって、本体13に接合されている。この構成によっても、第1実施形態の(e)以外の効果を発揮できる。
【0059】
(6)内周シール部材17が、
図17に示されるように、内側面1711が外向きに傾斜している接触凸部171及び平面部173のみを有している。この場合、内周シール部材17は、接触部材16の接触端子161によって平面部173が本体13に向けて押さえ付けられているので、接着剤又はビス止めを用いることなく、本体13に接合されている。この構成によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮できる。
【0060】
(7)
図18及び
図19に示されるように、接触部材16が、導電部材15ではなく配線19に電気的接続している。配線19は、複数設けられており、各接触部材16には、それぞれ、同じ長さの配線19が接続されている。なお、導電部材15は、本体13の全周に渡って設けられているが、配線19は、全ての接触部材16に通電できるならば、本体13の全周に渡って設けられなくてもよい。この構成によっても、ワーク10の全周に渡って均一な通電を行うことができ、それ故、ワーク10の前面102及び/又は後面103の全面に渡って、均一なめっき処理を施すことができる。なお、
図18及び
図19に示される例では、内周シール部材17は、
図16に示される構成を有しているが、
図9に示される構成を有してもよい。
【0061】
(8)排気口125が、液注入口124を上に向けた状態において液注入口124よりも高い位置に存在していない。例えば、排気口125が、液注入口124を上に向けた状態において液注入口124と同じ高さ位置に存在している。この構成によれば、本体13に上方延在部13Eを形成する必要がないので、本体13の構成を簡素化でき、よって、本体13の生産性を向上できる。
【0062】
(9)第1接続端子151と第2接続端子152とに同時に通電するように設定する。これによれば、ワーク10の右辺105への通電経路の抵抗値と、左辺106への通電経路の抵抗値とを、略同じにすることができ、それ故、ワーク10の前面102及び/又は後面103の全面に渡って、均一なめっき処理を施すことができる。
【0063】
(10)電気めっき装置9Aに、第1フレーム体11の第1接続端子151及び第2接続端子152と第2フレーム体12の第1接続端子151及び第2接続端子152とに通電するための、4箇所の通電部を設ける。これによれば、ワーク10の右辺105への通電経路の抵抗値と、左辺106への通電経路の抵抗値とを、略同じにして、均一なめっき処理を施すことができ、更に、ワーク10の前面102と後面103とに異なる通電量を設定して、両面めっき処理を精密に制御することができる。
【0064】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態は、第1実施形態のワーク保持治具1Aとは異なるワーク保持治具1Bに関する。ワーク保持治具1Bは、
図20に示されるように、ワーク保持治具1Aに対して、第2フレーム体12の代わりにバックパネル(第2部材)12Aを用いた点のみが異なっている。すなわち、ワーク保持治具1Bは、矩形の第1フレーム体11と矩形のバックパネル12Aとを備えており、両者の間で板状のワーク10を保持するようになっており、両面めっき処理ではなく片面めっき処理を実行するようになっている。
【0065】
バックパネル12Aには、ワーク10が重ねられるようになっている。第1フレーム体11は、バックパネル12Aとの間でワーク10の周縁部101を保持するようにバックパネル12Aに取り付けられるようになっている。バックパネル12Aも、例えば塩化ビニル樹脂で構成されている。
【0066】
図21及び
図22は、
図20のXXI-XXI断面に相当する部分図であり、
図21は第1フレーム体11がバックパネル12Aに取り付けられる前の状態を示しており、
図22は第1フレーム体11がバックパネル12Aに取り付けられた後の状態を示している。すなわち、
図22は、ワーク保持治具1Aがワーク10を保持した状態を示している。バックパネル12Aは、本体13の後側開口130に嵌まり込む凸部111を、有しており、ワーク10は、凸部111の端面112に形成されている浅い凹部113に嵌め込まれるようになっている。また、第1フレーム体11は、
図22の状態で、すなわち、シール部材17及び接触部材16の接触端子161がワーク10の周縁部101に当接した状態で、周縁部101、導電部材15、及び接触部材16を収容する、密封空間5を、構成するようになっている。なお、第1フレーム体11は、バックパネル12Aの周縁部119にボルト18によって固定されることにより、バックパネル12Aに取り付けられている。
【0067】
この構成によっても、第1実施形態のワーク保持治具1Aと同様の効果を発揮できる。例えば、内周シール部材17の内側面1711が外向きに傾斜しているので、ワーク保持治具1Aによってワーク10を保持する際に、
図23に示されるように、接触凸部171が矢印方向(外側)へ向けて潰れていき、その結果、ワーク10は、
図24に示されるように、外向きに引っ張られた状態で保持される。したがって、ワーク保持治具1Aによってワーク10を保持する際に、ワーク10が撓むのを、防止できる。
【0068】
[第2実施形態の変形例]
第1実施形態の場合と同じ変形構成(1)~(5)、及び変形構成(11)を、任意に1つ以上採用してもよい。例えば、
図25に示される変形例では、第1フレーム体11が、
図16と同じ構成の内周シール部材17を示しており、また、
図17と同じ構成の配線19を有しており、ボルト18の貫通孔を有しており、バックパネル12Aが、外周パッキン170を有している。
【0069】
(11)液注入口124及び/又は排気口125が、バックパネル12Aに設けられている。
【0070】
[第3実施形態]
(全体構成)
図26は、本発明の第3実施形態の電気めっき装置9Bの平面図である。
図27は、
図26のXXVII-XXVII断面略図である。この電気めっき装置9Bは、ワーク保持治具1Bと、めっき処理槽2B及び干満槽4と、搬送機構3Bと、を備えている。ワーク保持治具1Bは、矩形の板状ワークを保持するように構成されている。めっき処理槽2Bは、ワーク保持治具1Bに保持されたワークに対してめっき処理を施すように、構成されている。本実施形態では、3台のめっき処理槽2Bが一列に並んで配置されており、各めっき処理槽2Bには干満槽4が前置されている。搬送機構3Bは、ワークを保持したワーク保持治具1Bを、めっき処理槽2Bに対して水平方向から搬入搬出するように、構成されている。
【0071】
(ワーク保持治具)
図28は、ワーク保持治具1Bの分解斜視図である。ワーク保持治具1Bは、第1実施形態のワーク保持治具1Aに比して、次の点のみが異なっており、その他の構成、すなわち、液注入口124、空気抜き口125、本体13、導電部材15、及び接触部材16等の構成は、同じである。
【0072】
(i)第1フレーム体11の本体13の上辺13Aに、持ち手122に代えて、把持部123を有している。
【0073】
(ii)左右のガイドバー126、127に代えて、上下のガイドバー128、129を有している。上ガイドバー128は、本体13の上辺13Aに沿って設けられており、第1フレーム体11の上辺13Aの前面において前方向に突出した上前ガイドバー1281と、第2フレーム体12の上辺13Aの後面において後方向に突出した上後ガイドバー1282と、を有している。下ガイドバー129は、第1フレーム体11の本体13の下辺13Dに沿って設けられており、下辺13Dの下面において下方向に突出している。
【0074】
(めっき処理槽)
図29は、
図27のXXIX-XXIX断面略図である。めっき処理槽2Bは、第1実施形態のめっき処理槽2Aに比して、次の点のみが異なっており、その他の構成、すなわち、めっき液20、第1陽極211、第2陽極212、第1噴流機構221、及び第2噴流機構222等の構成は、同じである。
【0075】
(i)通電部24を有している。通電部24は、ワーク保持治具1Bがめっき処理槽2Bに搬入された際に、第1接続端子151に当接するように設けられている。
【0076】
(ii)左右のガイドレール231、232に代えて、ワーク保持治具1Bがめっき処理槽2Bに対して水平方向から搬入搬出される際に上下のガイドバー128、129を案内する上下のガイドレール251、252を、有している。上ガイドレール251は、上前ガイドバー1281を案内する上前ガイドレール2511と、上後ガイドバー1282を案内する上後ガイドレール2512と、を有している。なお、ガイドレールは、ガイドバーが水平方向にスライドできる横溝を、有している。
【0077】
(iii)前段に、干満槽4を備えている。すなわち、めっき処理槽2Bには干満槽4が前置されており、両槽の間は、第1開閉ゲート41で仕切られている。干満槽4は、ワーク保持治具1Bが干満槽4に対して水平方向から搬入搬出される際に上下のガイドバー128、129を案内する上下のガイドレール421、422を、有している。上下のガイドレール421、422は、めっき処理槽2Bの上下のガイドレール251、252と同じ構成を有している。更に、干満槽4は、第1開閉ゲート41に対向する側に、第2開閉ゲート43を有している。両開閉ゲート41、43は、左右方向に開閉するようになっている。
【0078】
(搬送機構)
搬送機構3Bは、ワーク保持治具1Bをめっき処理槽2Bに対して水平方向から搬入搬出する水平搬送機構34と、ワーク保持治具1Bをめっき処理槽2Bに対する搬入搬出位置まで運搬する第2運搬機構35と、を有している。
【0079】
水平搬送機構34は、搬送レール341と、搬送部342と、を備えている。搬送レール341は、干満槽4及びめっき処理槽2Bの上方において両槽を横切って延びるように、設けられている。搬送部342は、垂直状態のワーク保持治具1Bを把持部123を介して把持し、ワーク保持治具1Bを伴って、搬送レール341に沿って移動するように、設けられている。
【0080】
第2運搬機構35は、左右一対の水平レール351と、運搬台352と、を有している。水平レール351は、一列に並んで配置されている3台の干満槽4に沿って、延びている。運搬台352上には、めっき処理槽2Bの上ガイドレール251及び干満槽4の上ガイドレール421と同じ上ガイドレール353と、めっき処理槽2Bの下ガイドレール252及び干満槽4の下ガイドレール422と同じ下ガイドレール354とが、設けられている。運搬台352は、搬送部342に把持され且つ上ガイドレール353及び下ガイドレール353に支持されたワーク保持治具1Bを、搬送レール341と共に、水平レール351に沿って、運搬するようになっている。よって、第2運搬機構35は、搬送部342に把持されたワーク保持治具1Bを、任意のめっき処理槽2Bに対する搬入搬出位置まで、運搬できる。
【0081】
(作動)
前記構成の電気めっき装置9Bは、次のように作動する。
(1)ワーク保持
第1実施形態と同様に行うことにより、ワーク保持治具1Bによってワーク10を保持する。これにより、ワーク10の周縁部101には、
図7に示されるような密封空間5が構成される。
【0082】
(2)液注入
第1実施形態と同様に行うことにより、液体を、液注入口124から、密封空間5へ注入する。その際、密封空間5内の空気は、空気抜き口125から確実に抜けていくので、液体の注入は、円滑に行われる。
【0083】
(3)運搬
第2運搬機構35を作動させて、ワーク保持治具1Bを、めっき処理槽2Bに対する搬入搬出位置まで、運搬する。
図26では、最奥のめっき処理槽2Bまで運搬している。
【0084】
(4)搬入
まず、第2開閉ゲート43を開ける。このとき、第1開閉ゲート41は閉じており、めっき処理槽2Bにはめっき液20が満たされている。次に、水平搬送機構34を作動させて、搬送部342をワーク保持治具1Bと共に搬送レール341に沿って移動させ、ワーク保持治具1Bを、干満槽4へ搬入する。次に、第2開閉ゲート43を閉じる。次に、干満槽4へめっき液20を注入し、干満槽4をめっき液20で満たす。次に、第1開閉ゲート41を開く。次に、水平搬送機構34を作動させて、搬送部342をワーク保持治具1Bと共に搬送レール341に沿って移動させ、ワーク保持治具1Bを、干満槽4からめっき処理槽2Bへ搬入する。次に、第1開閉ゲート41を閉じる。これにより、ワーク保持治具1Bが、めっき処理槽2Bへ搬入される。なお、この際、ワーク保持治具1Bは、下ガイドバー129が、運搬台352の下ガイドレール354、干満槽4の下ガイドレール422、及びめっき処理槽2Bの下ガイドレール252によって、案内され、上ガイドバー128が、干満槽4の上ガイドレール421及びめっき処理槽2Bの上ガイドレール251によって案内されるので、垂直状態を維持したまま、干満槽4、更にはめっき処理槽2Bに円滑に搬入される。
【0085】
(5)めっき処理
電源スイッチ(図示せず)をオンして、ワーク10への通電を行う。これにより、ワーク10に対して、片面めっき処理又は両面めっき処理が行われる。ワーク10への通電は、電源(図示せず)から、通電路(図示せず)、通電部24、第1接続端子151、導電部材15、及び接触部材16を経ることにより、行われる。この際、密封空間5には液体が充填されているので、密封空間5へのめっき液20の侵入を防ぐことができる。
【0086】
(6)搬出
まず、第1開閉ゲート41を開く。次に、水平搬送機構34を作動させて、搬送部342をワーク保持治具1Bと共に搬送レール341に沿って移動させ、ワーク保持治具1Bを、めっき処理槽2Bから干満槽4へ搬出する。次に、第1開閉ゲート41を閉じる。次に、干満槽4内のめっき液20を干満槽4から排出する。次に、第2開閉ゲート43を開ける。そして、水平搬送機構34を作動させて、搬送部342をワーク保持治具1Bと共に搬送レール341に沿って移動させ、ワーク保持治具1Bを、干満槽4から搬出する。
【0087】
(効果)
前記構成のワーク保持治具1B及び電気めっき装置9Bによれば、第1実施形態と同じ(a)~(j)の効果を発揮できる。更に、次の効果を発揮できる。
【0088】
(k)前記構成の電気めっき装置9Bによれば、ワーク保持治具1Bをめっき処理槽2Bに対して水平方向から搬入搬出するので、装置の設置空間を低くできる。
【0089】
(l)前記構成の電気めっき装置9Bによれば、ワーク保持治具1Bをめっき処理槽2Bに対して搬入する際、上下のガイドバー128、129が上下のガイドレール251、252;421、422によって案内されるので、ワーク保持治具1Bを、垂直状態を維持したまま円滑に搬入できる。
【0090】
[第3実施形態の変形例]
上述した第3実施形態も、第1実施形態と同様の変形構成を採用してもよい。
【0091】
[別の実施形態]
本発明は、下記のような別の構成を採用してもよい。
【0092】
(i)ワーク保持治具が、ワーク10を、垂直ではなく、傾斜して又は水平に、保持するようになっている。
【0093】
(ii)第1フレーム体11と第2フレーム体12(又はバックパネル12A)とが、ボルト18ではなく、パッチン錠、例えばトグルラッチを用いて、固定されている。
【0094】
(iii)板状ワーク10が、矩形ではなく、円形又は多角形又はその他の形状を有している。また、それに対応して、第1フレーム体11及び第2フレーム体12(又はバックパネル12A)も、矩形ではなく、円形又は多角形又はその他の形状を有している。
【0095】
(iv)液注入口124及び/又は排気口125が、第1フレーム体11のみに設けられており、又は、第2フレーム体12のみに設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のワーク保持治具は、めっき処理後のワークをワーク保持治具から取り外す際にワークや接触部材が損傷するのを、防止できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0097】
1A、1B ワーク保持治具
10 ワーク
101 周縁部
11 第1フレーム体(第1部材)
12 第2フレーム体(第2部材)
124 液注入口
125 排気口
13 本体
132 溝部
15 導電部材
16 接触部材
161 接触端子(先端部)
17 内周シール部材
171 接触凸部
1711 内側面
172 差し込み凸部
173 平面部
2A、2B めっき処理槽
3A、3B 搬送機構
20 めっき液
5 密封空間
9A、9B 電気めっき装置