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特許7132143ロータコアの製造装置及びロータコアの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ロータコアの製造装置及びロータコアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20220830BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20220830BHJP
   H02K 1/278 20220101ALI20220830BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K1/276
H02K1/278
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019018605
(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公開番号】P2020127294
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2020-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】李 昇▲峻▼
(72)【発明者】
【氏名】植松 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】舟久保 誠
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/026003(WO,A1)
【文献】特開2017-022886(JP,A)
【文献】特開2013-009452(JP,A)
【文献】特開2001-157394(JP,A)
【文献】国際公開第2012/169043(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/147211(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0099617(US,A1)
【文献】特開2017-93188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/276
H02K 1/278
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石挿入孔に磁石を挿入した積層鉄心、又は外周側に磁石と外装部材を取り付けた積層鉄心を嵌合させて保持する嵌合凹部を有する第1金型と、
前記第1金型に係合し、前記第1金型とともに前記積層鉄心を型締めして封止する第2金型と、
前記第2金型に設けられ、成形機を用いて前記磁石挿入孔、又は前記外装部材と前記積層鉄心の間に樹脂材を注入する樹脂注入部と、
前記積層鉄心が前記第1金型の嵌合凹部に嵌合した状態で、前記磁石挿入孔に挿入した前記磁石を位置決め保持する磁石位置決め保持機構とを備え、
前記磁石位置決め保持機構が、前記磁石を、前記樹脂注入部側に引き寄せ、前記第1金型の前記嵌合凹部を形成する金型面から前記磁石の端部を離間した状態で、位置決め保持するように構成されている、ロータコアの製造装置。
【請求項2】
前記磁石位置決め保持機構が、電磁石、永久磁石、エア吸引機構のいずれかを備える、請求項1に記載のロータコアの製造装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のロータコアの製造装置を用い、前記磁石を前記磁石位置決め保持機構で位置決め保持した状態で、前記磁石挿入孔、又は前記外装部材と前記積層鉄心の間に樹脂材を注入する、ロータコアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータコアの製造装置及びロータコアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IPM型ロータコア(埋込磁石型ロータコア)1は、例えば、図1に示すように、電磁鋼板を打ち抜き加工して形成した複数のコア部材(薄板状部材)を積層した積層鉄心2と、積層鉄心2の軸線O1方向一端部2aから他端部2bまで貫通形成された磁石挿入孔2cに挿入して収容される永久磁石3と、磁石挿入孔2cに注入して永久磁石3を埋設固定する樹脂材4とを備えて構成されている。
【0003】
SPM型ロータコア(表面磁石型ロータコア)5は、例えば、図2に示すように、積層鉄心2と、積層鉄心2の外周面側に周方向に等間隔で配設される永久磁石3と、永久磁石3とともに積層鉄心2を囲繞して被覆する円筒状の外装部材6と、外装部材6と積層鉄心2の間に注入して永久磁石3を埋設固定する樹脂材4とを備えて構成されている。
【0004】
また、積層鉄心2には、その軸線O1上の一端部2aから他端部2bに貫通形成され、ロータのシャフトを嵌め込むための中心孔(シャフト孔)2dが設けられている。
【0005】
一方、ロータコア1、5の製造装置としては、例えば、図8に示すように、永久磁石3を磁石挿入孔2cに挿入して取り付けた積層鉄心2(又は永久磁石3と外装部材6を取り付けた積層鉄心5)を軸線O1方向に嵌合させて保持する嵌合凹部7aを有する第1金型7と、第1金型7に係合し、第1金型7とともに金型キャビティ内に積層鉄心2を型締め/封止する第2金型8と、第2金型8(又は第1金型7)に設けられ、金型キャビティ内の積層鉄心2の磁石挿入孔2c(又は外装部材6と積層鉄心2の間)に樹脂材4を注入するための樹脂注入部9とを備えて構成されている(例えば、特許文献1参照)。第1金型7には、嵌合凹部7aに積層鉄心2を嵌合させる際に、積層鉄心2の中心孔(シャフト孔)2dに嵌め込んで位置決め保持するための芯棒10が一体に具備されている。
【0006】
ロータコア1、5を製造する際には、図8図9に示すように、第1金型7と第2金型8を型締めして積層鉄心2を封止した後、図10に示すように、射出成形機を用い、樹脂注入部9から磁石挿入孔2c(又は外装部材6と積層鉄心2の間)に樹脂材4を注入する。図11に示すように、適宜タイミングで金型7、8を型開きし、ロータコア1(5)を脱型して取り外す。これにより、永久磁石3を樹脂材4によって埋設固定したロータコア1(5)が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】再公表WO2016/147211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、上記従来のロータコアの製造装置及び製造方法においては、図12に示すように、磁石挿入孔2cの内部に樹脂材4を射出した際に、射出圧によって磁石3が動き、磁石3の一端部3aが金型面7bに当たって(衝突し)、磁石3に割れなどの損傷が生じるおそれがあった。
【0009】
このため、樹脂材4の射出圧で金型面7bに衝突して磁石3に損傷が生じることを防止する手法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のロータコアの製造装置の一態様としては、磁石挿入孔に磁石を挿入した積層鉄心、又は外周側に磁石と外装部材を取り付けた積層鉄心を嵌合させて保持する嵌合凹部を有する第1金型と、前記第1金型に係合し、前記第1金型とともに前記積層鉄心を型締めして封止する第2金型と、前記第1金型又は前記第2金型に設けられ、成形機を用いて前記磁石挿入孔、又は前記外装部材と前記積層鉄心の間に樹脂材を注入する樹脂注入部と、前記第1金型の嵌合凹部に嵌合した状態で、前記磁石を位置決め保持する磁石位置決め保持機構とを備える。
【0011】
本開示のロータコアの製造方法の一態様としては、上記のロータコアの製造装置を用い、前記磁石を前記磁石位置決め保持機構で位置決め保持した状態で、前記磁石挿入孔、又は前記外装部材と前記積層鉄心の間に樹脂材を注入する。
【発明の効果】
【0012】
上記の一態様によれば、磁石挿入孔に挿入した磁石を、予め、その端部が金型面から利端した状態や端部を当接させた状態で位置決め保持し、樹脂材の射出圧(注入圧)で磁石が移動することがないようにすることができる。これにより、樹脂材の射出圧で磁石の端部が金型面に衝突し、磁石に損傷が生じることを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態のロータ(ロータ構造)を示す断面図である。
図2】一実施形態のロータコア(IPM型ロータコア)を示す斜視図である。
図3】一実施形態のロータコア(IPM型ロータコア)の製造装置、製造方法を示す断面図である。
図4】第1実施形態のロータコア(IPM型ロータコア)の製造装置、製造方法を示す断面図である。
図5】第1実施形態のロータコア(IPM型ロータコア)の製造装置、製造方法を示す断面図である。
図6】第2実施形態のロータコア(IPM型ロータコア)の製造装置のガイド板、突起部を示す拡大図である。
図7】第2実施形態のロータコア(IPM型ロータコア)の製造装置、製造方法を示す断面図である。
図8】従来のロータコア(IPM型ロータコア)の製造装置、製造方法を示す断面図である。
図9】従来のロータコア(IPM型ロータコア)の製造装置、製造方法を示す断面図である。
図10】従来のロータコア(IPM型ロータコア)の製造装置、製造方法を示す断面図である。
図11】従来のロータ(ロータ構造)を示す断面図である。
図12】従来のロータコア(IPM型ロータコア)の製造装置、製造方法を示す断面図であり、樹脂材の注入時に磁石の端部が金型面に衝突することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1から図5を参照し、第1実施形態に係るロータコアの製造装置及びロータコアの製造方法について説明する。
【0015】
ここで、本実施形態のロータコア1、5は、図1図2に示すように、軸線O1中心に貫通形成された中心孔(シャフト孔)2dにシャフトを挿通し、シャフトに同軸上で一体に取り付けることによって、例えば、自動車や電化製品のモータなどの電動回転機のロータを構成するものである。
【0016】
本実施形態では、ロータコア1がIPM型ロータコア(埋込磁石型のロータコア)であるものとして説明を行う。
【0017】
本実施形態のロータコア1は、例えば、図1に示すように、電磁鋼板を打ち抜き加工して形成した複数のコア部材(薄板状部材)を積層してなる積層鉄心(コア)2と、積層鉄心2の軸線O1方向一端部2aから他端部2bに貫通形成された複数の磁石挿入孔2cにそれぞれ挿入して配設される永久磁石(磁石)3と、磁石挿入孔2cに注入して永久磁石3を積層鉄心2に固定しつつ埋設する樹脂材4とを備えて構成されている。
【0018】
上記構成からなる本実施形態のロータコア1を製造するための装置(ロータコアの製造装置)Aは、図3図4図5に示すように、磁石挿入孔2cに永久磁石3を挿入した積層鉄心2を嵌合させて保持する嵌合凹部7a、及び積層鉄心2の軸線O1方向に貫通形成された中心孔2dに嵌合する円柱状の芯棒10を有する第1金型7と、第1金型7に係合し、第1金型7とともに積層鉄心2を型締めして封止する第2金型8と、第2金型8に設けられ、射出成形機を用いて磁石挿入孔2cに樹脂材4を注入する樹脂注入部9と、磁石挿入孔2cの内部に挿入した永久磁石3を位置決め保持するための磁石位置決め保持機構11とを備えている。
【0019】
第2金型8に設けられる樹脂注入部9は、射出成形機から樹脂材4が送られ、第1金型7と第2金型8で型締めした積層鉄心2の磁石挿入孔2cに樹脂材4を給送して注入するための樹脂流路を備えて構成されている。
【0020】
本実施形態の磁石位置決め保持機構11は、図4に示すように、電磁石11a、永久磁石、エア吸引機構の少なくとも一つを備えた製造用治具11bが主な構成要素であり、積層鉄心2を第1金型7の嵌合凹部7aに嵌合させた状態で、製造用治具11の電磁石11a又は永久磁石の磁力、エア吸引機構のエア吸引力を磁石挿入孔2cに挿入された永久磁石3に作用させ、この永久磁石3を積層鉄心2の他端部2b側に引き寄せて位置決め保持するように構成されている。なお、図4では、磁石位置決め保持機構11が電磁石11aを備えた場合を示している。
【0021】
あるいは、本実施形態の磁石位置決め保持機構11は、図5に示すように、第1金型7の外側から嵌合凹部7aに貫通するように設けられ、積層鉄心2を第1金型7の嵌合凹部7aに嵌合させた状態で、磁石挿入孔2cに挿入された永久磁石3の積層鉄心2の一端部2a側の端部3aに押圧力を作用させ、永久磁石3を磁石挿入孔2cの内部で積層鉄心2の他端部2b側に配されるように構成してもよい。このような第1金型7に具備される磁石位置決め保持機構11は、押しピンなどの機械的磁石押圧機構11cなどが挙げられ、例えば、押しピン(11c)を磁石挿入孔2cに挿入して永久磁石3を積層鉄心2の他端部2b側に押し込んで保持するようにすれば、永久磁石3を位置決め保持することができる。なお、機械的磁石押圧機構11cは押しピンに限定する必要はない。
【0022】
次に、上記構成からなる本実施形態のロータコア1の製造装置Aを用いてロータコア1を製造する方法(樹脂材4を注入して永久磁石3を積層鉄心2に一体に埋設固定する方法)について説明する。
【0023】
まず、積層鉄心2の複数の磁石挿入孔2cにそれぞれ永久磁石3を挿入する(磁石挿入工程)。
【0024】
次に、第1金型7の嵌合凹部7aに、積層鉄心2を嵌合して配設する(第1金型取付工程)。
【0025】
次に、図4に示すように、積層鉄心2の他端部2b側に製造用治具11bを配置し、電磁石11aの磁力、永久磁石の磁力、又はエア吸引機構の吸引力を永久磁石3に作用させ、磁石挿入孔2c内の永久磁石3を積層鉄心2の他端部2b側に引き寄せるとともに、磁力や吸引力で位置決め保持する(磁石位置決め保持工程)。
【0026】
ここで、電磁石11aの磁力、永久磁石の磁力、又はエア吸引機構の吸引力を永久磁石3に作用させる製造用治具11bを備えて磁石位置決め保持機構11を構成した場合には、複数の磁石挿入孔2cにそれぞれ永久磁石3を挿入した段階で、積層鉄心2に製造用治具11bを配置し、永久磁石3を位置決め保持し、この状態で第1金型7の嵌合凹部7aに積層鉄心2を嵌合して配設するようにしてもよい。すなわち、磁石位置決め保持工程は、第1金型取付工程の前段で行われてもよい。
【0027】
さらに、この場合には、例えば、永久磁石3を挿入した後の積層鉄心2をロボットで第1金型7の嵌合凹部7aに搬送して嵌合設置する際に、磁石挿入孔2c内の永久磁石3が予め製造用治具11bの磁力、エア吸引力で保持されるため、積層鉄心2の磁石挿入孔2cから永久磁石3が引き抜けてしまうことも防止できる。
【0028】
一方、図5に示すように、押しピンなどの機械的磁石押圧機構11cを備えた場合には、積層鉄心2を第1金型7の嵌合凹部7aに嵌合して設置した後、例えば、押しピン(11c)を磁石挿入孔2cに挿入して永久磁石3を積層鉄心2の他端部2b側に押し込み、位置決め保持する(磁石位置決め保持工程)。
【0029】
次に、第2金型8を第1金型7に係合させ、第1金型7とともに積層鉄心2を型締めして封止する(第2金型取付工程)。
【0030】
そして、第2金型8に設けられた樹脂注入部9を通じ、射出成形機で磁石挿入孔2cに樹脂材4を注入する(樹脂注入工程)。
【0031】
このとき、磁石位置決め保持機構11によって磁石挿入孔2c内の永久磁石3が位置決め保持されているため、樹脂材4の射出圧(注入圧)によって第1金型7の金型面7b側に動くことがなく、磁石挿入孔2cに樹脂材4を充填することができる。
【0032】
次に、適宜タイミングで金型7、8を型開きし、ロータコア1を脱型する。なお、製造用治具などは、他のロータコア1の製造に転用される。
【0033】
したがって、本実施形態のロータコア1の製造装置A及びロータコア1の製造方法においては、磁石位置決め保持機構によって、積層鉄心2の磁石挿入孔2cに挿入された永久磁石3が積層鉄心2の他端部2b側(樹脂材4の注入口側)に引き寄せられて、あるいは押し込まれて位置決め保持されているため、樹脂材4の射出圧(注入圧)によって第1金型7の金型面7b側に永久磁石3が動くことがない。
【0034】
よって、本実施形態のロータコア1の製造装置A及びロータコア1の製造方法によれば、従来のように樹脂材4の注入/射出時に、射出圧で永久磁石3が磁石挿入孔2c内で動き、永久磁石3の端部3aが金型面7bに衝突して永久磁石3に損傷が生じることを確実に防止できる。これにより、高品質で信頼性の高いロータコア1を製造することが可能になる。また、ロータコア1の製造歩掛りの向上を図ることも可能になる。
【0035】
また、本実施形態のロータコア1の製造装置Aは、積層鉄心2の磁石挿入孔2cに永久磁石3を挿入した積層鉄心2を第1金型7まで搬送して嵌合凹部7aに嵌合させるまでの間に、磁石挿入孔2cから永久磁石3が引き抜けることを防止するためにも用いることができる。
【0036】
以上、ロータコアの製造装置及びロータコアの製造方法の第1実施形態について説明したが、本発明は上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0037】
例えば、本実施形態では、ロータコアがIPM型ロータコア(埋込磁石型のロータコア)であるものとして説明を行ったが、SPM型ロータコア(表面磁石型ロータコア)であっても構わない。
【0038】
具体的に、SPM型ロータコア5は、例えば、図2に示すように、積層鉄心2と、積層鉄心2の外周面側に周方向に等間隔で配設される永久磁石3と、永久磁石3とともに積層鉄心2を囲繞して被覆する円筒状の外装部材6と、外装部材6と積層鉄心2の間に注入して永久磁石3を埋設固定する樹脂材4とに加え、磁石位置決め保持機構11を備えて構成されている。
【0039】
このSPM型ロータコア5を製造する際には、本実施形態と同様、製造用治具11cや押しピン(機械的磁石押圧機構11c)などの磁石位置決め保持機構11を用い、外装部材6と積層鉄心2の間の磁石3を引き寄せ、あるいは押し込み、位置決め保持する。これにより、樹脂注入部9から外装部材6と積層鉄心2の間に注入して永久磁石3を埋設固定する際に永久磁石3が動くことがなく、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
次に、図1図3図6図7を参照し、参考例に係るロータコアの製造装置A及びロータコアの製造方法について説明する。
【0041】
ここで、本参考例では、第1実施形態に対し、磁石位置決め保持機構11の構成、積層鉄心2の磁石挿入孔2cの内部における永久磁石3の位置決め保持の位置のみが異なる。このため、第1実施形態と同様の構成に対して同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0042】
参考例の磁石位置決め保持機構11は、第1実施形態のように積層鉄心2の磁石挿入孔2cに挿入した永久磁石3を、その一端部3aと金型面7bが離間するように積層鉄心2の他端部2b側に引き寄せ、又は押し込んで位置決め保持するのではなく、図6図7に示すように、永久磁石3の一端部3aを直接的(又は間接的)に第1金型7の金型面7bに当接するように永久磁石3を引き寄せ、又は押し込んで、位置決め保持するように構成されている。
【0043】
具体的に、本参考例の磁石位置決め保持機構11は、図6に示すように、第1金型7の所定位置に設けられた電磁石11a、永久磁石、又はエア吸引機構の少なくとも一つを主な構成要素とし、積層鉄心2を第1金型7の嵌合凹部7aに嵌合させた状態で、電磁石又は永久磁石の磁力、エア吸引機構のエア吸引力を磁石挿入孔2cに挿入された永久磁石3に作用させ、この永久磁石3を積層鉄心2の一端部2a側に引き寄せ、永久磁石3の一端部3aを直接的又は間接的に金型面7bに当接させて位置決め保持するように構成されている。
【0044】
あるいは、本参考例の磁石位置決め保持機構11は、積層鉄心2を第1金型7の嵌合凹部7aに嵌合させた状態で、積層鉄心2の他端部2b側から磁石挿入孔2cに挿入され、永久磁石3の他端部3bに力を作用させ、永久磁石3を金型面7bに一端部3aが当接するまで磁石挿入孔2cの奥に押し込んで、位置決め保持するように構成してもよい。
【0045】
このような磁石位置決め保持機構11としては、例えば、押しピン(機械的磁石押圧機構11c)を磁石挿入孔2cに挿入して永久磁石3を押し込んで保持するように構成したものが挙げられる。あるいは、電磁石、永久磁石、エア押圧機構などを備え、磁石挿入孔2cの内部に、エアを吹き込んで永久磁石3を押し込んだり、磁力の反発力を作用させて永久磁石3を押し込むように構成してもよい。
【0046】
上記構成からなる本参考例のロータコア1の製造装置Aを用いてロータコア1を製造する方法(樹脂材4を注入して永久磁石3を積層鉄心2に一体に埋設固定する方法)について説明する。
【0047】
まず、積層鉄心2の複数の磁石挿入孔2cにそれぞれ永久磁石3を挿入する(磁石挿入工程)。
【0048】
次に、第1金型7の嵌合凹部7aに、積層鉄心2を嵌合して配設する(第1金型取付工程)。
【0049】
ここで、磁石位置決め保持機構11として、電磁石11a、永久磁石、エア吸引機構を適用した場合には、電磁石11aの磁力、永久磁石の磁力、又はエア吸引機構の吸引力が永久磁石3に作用し、永久磁石3が金型面7b側に引き寄せられ、その一端部3aが金型面7bに当接した状態で位置決め保持される(磁石位置決め保持工程)。
【0050】
一方、磁石位置決め保持機構11として、押しピンなどの機械的磁石押圧機構11c、エア押圧機構を適用した場合には、磁石挿入孔2cに積層鉄心2の他端部2b側から押しピンを押し込んだり、エアを吹き入れ、永久磁石3を磁石挿入孔2cの奥に押し込む。そして、永久磁石3はその一端部3aが金型面7bに当接した状態で位置決め保持される(磁石位置決め保持工程)。
【0051】
次に、第2金型8を第1金型7に係合させ、第1金型7とともに積層鉄心2を型締めして封止する(第2金型取付工程)。
【0052】
そして、第2金型8に設けられた樹脂注入部9を通じ、射出成形機で磁石挿入孔2cに樹脂材4を注入する(樹脂注入工程)。
【0053】
このとき、磁石位置決め保持機構によって磁石挿入孔2c内の永久磁石3がその一端部3aを第1金型7の金型面7bに当接させて位置決め保持されているため、樹脂材4の射出圧(注入圧)によって第1金型7の金型面7b側に動くことがない。
【0054】
次に、適宜タイミングで金型7、8を型開きし、ロータコア1を脱型する。
【0055】
したがって、本参考例のロータコア1の製造装置A及びロータコア1の製造方法においては、磁石位置決め保持機構によって、積層鉄心2の磁石挿入孔2cに挿入された永久磁石3が積層鉄心2の一端部2a側の金型面7b側に引き寄せられて、あるいは押し込まれて位置決め保持されているため、樹脂材4の射出圧(注入圧)によって第1金型7の金型面7b側に永久磁石3が動くことがない。
【0056】
よって、本参考例のロータコア1の製造装置A及びロータコア1の製造方法によれば、従来のように樹脂材4の注入/射出時に、射出圧で永久磁石3が磁石挿入孔2c内で動き、永久磁石3の端部3aが金型面7bに衝突して永久磁石3に損傷が生じることを確実に防止できる。これにより、高品質で信頼性の高いロータコア1を製造することが可能になる。また、ロータコア1の製造歩掛りの向上を図ることも可能になる。
【0057】
以上、ロータコアの製造装置及びロータコアの製造方法の参考例について説明した
【符号の説明】
【0058】
1 IPM型ロータコア(ロータコア)
2 積層鉄心
2a 一端部
2b 他端部
2c 磁石挿入孔
2d 中心孔(シャフト孔)
3 永久磁石(磁石)
4 樹脂材
5 SPM型ロータコア(ロータコア)
6 外装部材
7 第1金型
7a 嵌合凹部
7b 金型面
8 第2金型
9 樹脂注入部
10 芯棒
11 磁石位置決め保持機構
11a 電磁石
11b 製造用治具
11c 押しピン(機械的磁石押圧機構)
A ロータコアの製造装置
O1 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12