(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】電動式ガス弁装置
(51)【国際特許分類】
F23K 5/00 20060101AFI20220830BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20220830BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
F23K5/00 301D
F16K31/06 385F
F16K31/04 K
(21)【出願番号】P 2019019545
(22)【出願日】2019-02-06
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】柘植 真吾
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-7671(JP,A)
【文献】特開2003-130332(JP,A)
【文献】特開2002-323218(JP,A)
【文献】特開2013-217539(JP,A)
【文献】実開平6-59638(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00 - 5/22
F16K 31/00 - 31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナへのガス供給路に介設される電動式ガス弁装置であって、バルブケーシング内に、電磁安全弁と、流量調節弁と、電動モータにより連動機構を介して軸方向に駆動される可動体と、バルブケーシング内の空間を軸方向一方の一次側ガス室と軸方向他方の二次側ガス室とに仕切る軸方向に移動自在な弁座部材とが設けられ、軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、電磁安全弁は、弁座部材の往動方向側の端面で構成される安全弁用弁座と、安全弁用弁座に対向する安全弁用弁体と、安全弁用弁体を復動方向に付勢して安全弁用弁座に着座させる弁バネと、安全弁用弁体に往動方向にのびる弁軸を介して連結した吸着片と、吸着片に対向する電磁石とを備え、弁座部材は、バルブケーシング内に設けた弁座バネで復動方向に付勢され、電動モータを正転させて可動体を往動方向に移動させることにより弁座部材を弁座バネの付勢力に抗して往動方向に押動させ、安全弁用弁座を安全弁用弁体に当接させた状態で、安全弁用弁体を電磁石に吸着片が当接する開弁位置まで弁バネの付勢力に抗して押動させ、この状態で電磁石に通電することにより安全弁用弁体を開弁位置に吸着保持し、その後、電動モータを逆転させて可動体を復動方向に移動させることにより、弁座部材を弁座バネの付勢力で可動体に追従して復動方向に移動させ、安全弁用弁座を開弁位置に吸着保持される安全弁用弁体から離隔させて、電磁安全弁を開弁させるものにおいて、
流量調節弁は、弁座部材の復動方向側の端面で構成される調節弁用弁座と、調節弁用弁座に着座する回転自在な調節弁用弁体とを備え、調節弁用弁座に開設した弁座開口と調節弁用弁体に開設した弁体開口との重なり度合いを調節弁用弁体の回転で変化させることによりバーナへの供給ガス流量を調節するように構成され、
連動機構は、電動モータの正逆転に連動して調節弁用弁体を正逆転させる回転機構と、調節弁用弁体を往動方向と復動方向に移動させる運動変換機構とを備え、調節弁用弁体で可動体が構成され、調節弁用弁体の回転範囲のうち所定の回転位置を境にして正転方向側の範囲を第1回転範囲、逆転方向側の範囲を第2回転範囲として、運動変換機構は、調節弁用弁体が第1回転範囲内で正転及び逆転するときに、調節弁用弁体を安全弁用弁体が開弁位置まで押動される所定の往動端位置と所定の回転位置に対応する所定の復動端位置との間の軸方向範囲内で往動方向及び復動方向に移動させ、調節弁用弁体が第2回転範囲内で正転及び逆転するときは、調節弁用弁体を復動端位置から軸方向に移動させないように構成され、復動端位置は、調節弁用弁体に追従する弁座部材の変位で安全弁用弁座が開弁位置に吸着保持される安全弁用弁体から所定距離だけ離れる位置に設定され、調節弁用弁体の第2回転範囲内での回転によりバーナへの供給ガス流量が調節されるようにしたことを特徴とする電動式ガス弁装置。
【請求項2】
運動変換機構は、バルブケーシング内に設けられた、往動方向側の端面に調節弁用弁体と同心の螺旋状に傾斜したカム面を有する固定カムと、調節弁用弁体に設けられた、復動方向側の端面に調節弁用弁体と同心の螺旋状に傾斜したカム面を有する可動カムとを有するカム機構で構成され、調節弁用弁体が第1回転範囲内で回転するときに、固定カムのカム面に可動カムのカム面が当接し、調節弁用弁体が第2回転範囲内で回転するときは、固定カムのカム面から可動カムのカム面が離れることを特徴とする請求項1記載の電動式ガス弁装置。
【請求項3】
回転機構は、電動モータに連結される回転体と調節弁用弁体に連結される回転体との間に介設した回転力を伝達するトーションバネを有することを特徴とする請求項1又は2記載の電動式ガス弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナへのガス供給路に介設される電動式ガス弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動式ガス弁装置として、バルブケーシング内に、電磁安全弁と、流量調節弁と、電動モータにより連動機構を介して軸方向に駆動される可動体と、バルブケーシング内の空間を軸方向一方の一次側ガス室と軸方向他方の二次側ガス室とに仕切る軸方向に移動自在な弁座部材とを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、電磁安全弁は、弁座部材の往動方向側端面で構成される安全弁用弁座と、安全弁用弁座に対向する安全弁用弁体と、安全弁用弁体を復動方向に付勢して安全弁用弁座に着座させる弁バネと、安全弁用弁体に往動方向にのびる弁軸を介して連結した吸着片と、吸着片に対向する電磁石とを備え、流量調節弁は、弁座部材の復動方向側端面で構成される調節弁用弁座と、可動体と一体に軸方向に移動する、調節弁用弁座に着座可能な調節弁用弁体とを備えている。また、バルブケーシング内に、弁座部材の復動方向への移動を所定の復動端位置で制止する弁座ストッパと、弁座部材を復動方向に付勢する弁座バネとが設けられている。
【0003】
上記従来例では、電動モータを正転させて可動体を往動方向に移動させることにより、調節弁用弁体を調節弁用弁座に着座させて、弁座部材を復動端位置から往動方向に押動させ、安全弁用弁座を安全弁用弁体に当接させて、安全弁用弁体を電磁石に吸着片が当接する開弁位置まで弁バネの付勢力に抗して押動させ、この状態で電磁石に通電することにより安全弁用弁体を開弁位置に吸着保持する。その後、電動モータを逆転させて可動体を復動方向に移動させることにより、弁座部材を弁座バネの付勢力で可動体に追従して復動方向に移動させ、安全弁用弁座を開弁位置に吸着保持される安全弁用弁体から離隔させて、電磁安全弁を開弁させると共に、弁座部材が復動端位置に到達した後の更なる可動体の復動方向への移動により調節弁用弁体が調節弁用弁座から離れて、バーナへの供給ガス流量が次第に増加するようにしている。
【0004】
また、流量調節弁は、調節弁用弁座に調節弁用弁体が着座した状態でも一次側ガス室から二次側ガス室にガスを流すバイパス路を有している。ここで、バーナ燃焼中にバーナへの供給ガス流量をバイパス路で規定される最小量に絞るときに、電動モータを、復動端位置に存する弁座部材の調節弁用弁座に調節弁用弁体が着座する回転位置で停止させるようにしたのでは、弁座部材の寸法公差や弁座ストッパの位置公差等により、調節弁用弁座に調節弁用弁体が着座する前に電動モータが停止して、バーナへの供給ガス流量をバイパス路で規定される最小量まで絞れなくなることがある。そこで、従来、バーナ燃焼中にバーナへの供給ガス流量をバイパス路で規定される最小量に絞るときは、電動モータを、復動端位置に存する弁座部材の調節弁用弁座に調節弁用弁体が着座する回転位置である第1の回転位置よりも正転方向に所定角度ずれた第2の回転位置まで正転させるようにしている。
【0005】
然し、これでは、以下の不具合を生ずる。即ち、電動モータを第2の回転位置まで正転させると、調節弁用弁体が復動端位置に存する弁座部材の調節弁用弁座に着座してから更に往動方向に移動し、弁座部材が調節弁用弁体に押されて往動方向に移動してしまう。そして、この移動により二次側ガス室の容積が拡大して、二次側ガス室内のガス圧が一時的に低下し、バーナへの供給ガス流量が一時的に最小量を下回る量までアンダーシュートし、失火してしまうことがある。
【0006】
また、上記従来例のものでは、ガス流量を調節するために、復動端位置に存する弁座部材の調節弁用弁座に対し調節弁用弁体を復動方向に所定ストローク移動させる必要がある。即ち、調節弁用弁体のガス流量調節のための軸方向移動ストロークを確保することが必要になり、ガス弁装置の軸方向寸法の小型化が困難になる不具合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、バーナ燃焼中にバーナへの供給ガス流量を最小量まで絞る際の失火を防止できるようにし、且つ、軸方向寸法の小型化も可能な電動式ガス弁装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナへのガス供給路に介設される電動式ガス弁装置であって、バルブケーシング内に、電磁安全弁と、流量調節弁と、電動モータにより連動機構を介して軸方向に駆動される可動体と、バルブケーシング内の空間を軸方向一方の一次側ガス室と軸方向他方の二次側ガス室とに仕切る軸方向に移動自在な弁座部材とが設けられ、軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、電磁安全弁は、弁座部材の往動方向側の端面で構成される安全弁用弁座と、安全弁用弁座に対向する安全弁用弁体と、安全弁用弁体を復動方向に付勢して安全弁用弁座に着座させる弁バネと、安全弁用弁体に往動方向にのびる弁軸を介して連結した吸着片と、吸着片に対向する電磁石とを備え、弁座部材は、バルブケーシング内に設けた弁座バネで復動方向に付勢され、電動モータを正転させて可動体を往動方向に移動させることにより弁座部材を弁座バネの付勢力に抗して往動方向に押動させ、安全弁用弁座を安全弁用弁体に当接させた状態で、安全弁用弁体を電磁石に吸着片が当接する開弁位置まで弁バネの付勢力に抗して押動させ、この状態で電磁石に通電することにより安全弁用弁体を開弁位置に吸着保持し、その後、電動モータを逆転させて可動体を復動方向に移動させることにより、弁座部材を弁座バネの付勢力で可動体に追従して復動方向に移動させ、安全弁用弁座を開弁位置に吸着保持される安全弁用弁体から離隔させて、電磁安全弁を開弁させるものにおいて、流量調節弁は、弁座部材の復動方向側の端面で構成される調節弁用弁座と、調節弁用弁座に着座する回転自在な調節弁用弁体とを備え、調節弁用弁座に開設した弁座開口と調節弁用弁体に開設した弁体開口との重なり度合いを調節弁用弁体の回転で変化させることによりバーナへの供給ガス流量を調節するように構成され、連動機構は、電動モータの正逆転に連動して調節弁用弁体を正逆転させる回転機構と、調節弁用弁体を往動方向と復動方向に移動させる運動変換機構とを備え、調節弁用弁体で可動体が構成され、調節弁用弁体の回転範囲のうち所定の回転位置を境にして正転方向側の範囲を第1回転範囲、逆転方向側の範囲を第2回転範囲として、運動変換機構は、調節弁用弁体が第1回転範囲内で正転及び逆転するときに、調節弁用弁体を安全弁用弁体が開弁位置まで押動される所定の往動端位置と所定の回転位置に対応する所定の復動端位置との間の軸方向範囲内で往動方向及び復動方向に移動させ、調節弁用弁体が第2回転範囲内で正転及び逆転するときは、調節弁用弁体を復動端位置から軸方向に移動させないように構成され、復動端位置は、調節弁用弁体に追従する弁座部材の変位で安全弁用弁座が開弁位置に吸着保持される安全弁用弁体から所定距離だけ離れる位置に設定され、調節弁用弁体の第2回転範囲内での回転によりバーナへの供給ガス流量が調節されるようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、調節弁用弁体が復動端位置に存する状態でバーナへの供給ガス流量が調節されることになる。そのため、バーナ燃焼中にバーナへの供給ガス流量を最小量まで絞る際に、弁座部材が調節弁用弁体に押されて往動方向に移動して、二次側ガス室の容積が拡大するようなことはなく、この容積拡大に起因する二次側ガス室内のガス圧低下で失火することを防止できる。また、調節弁用弁体のガス流量調節のための軸方向移動ストロークを確保する必要がなく、ガス弁装置の軸方向寸法の小型化が可能になる。
【0011】
尚、本発明において、運動変換機構は、バルブケーシング内に設けられた、往動方向側の端面に調節弁用弁体と同心の螺旋状に傾斜したカム面を有する固定カムと、調節弁用弁体に設けられた、復動方向側の端面に調節弁用弁体と同心の螺旋状に傾斜したカム面を有する可動カムとを有するカム機構で構成され、調節弁用弁体が第1回転範囲内で回転するときに、固定カムのカム面に可動カムのカム面が当接し、調節弁用弁体が第2回転範囲内で回転するときは、固定カムのカム面から可動カムのカム面が離れるようにすることが望ましい。これによれば、運動変換機構の組立が容易になり、有利である。
【0012】
また、回転機構は、電動モータに連結される回転体と調節弁用弁体に連結される回転体との間に介設した回転力を伝達するトーションバネを有することが望ましい。ここで、安全弁用弁体が開弁位置に到達した瞬間、即ち、吸着片が電磁石に当接した瞬間に電動モータを停止することは制御上困難である。そのため、安全弁用弁体が開弁位置に到達した後も電動モータは若干正転して、吸着片と電磁石との当接部に過大な力が加わり、吸着片に傷が付いて吸着不良を生ずることがある。これに対し、回転機構に上記の如くトーションバネを介設すれば、安全弁用弁体が開弁位置に到達した後に電動モータが更に正転しても、吸着片と電磁石との当接部に過大な力が加わることを阻止するクッション作用をトーションバネで得ることができ、吸着片に傷が付いて吸着不良を生ずることを防止できる。更に、回転機構が持つ回転方向のガタをトーションバネの付勢力で除去できる。そのため、電動モータを正転させるときと逆転させるときとで同じ回転位置でもガス流量に差を生ずること、即ち、ヒステリシスの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態の電動式ガス弁装置の切断側面図。
【
図3】(a)
図1のIII-III線で切断した断面図、(b)トーションバネのクッション作用が発揮された状態での
図3(a)に対応する断面図。
【
図4】実施形態の電動式ガス弁装置に設けられる連動機構の分解状態の斜視図。
【
図5】(a)(b)実施形態の電動式ガス弁装置の作動を示す要部の切断側面図。
【
図6】実施形態の電動式ガス弁装置における調節弁用弁体の回転位置とガス流量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して、Aは、コンロに設けられるバーナBへのガス供給路Gに介設した本発明の実施形態の電動式ガス弁装置である。このガス弁装置Aは、ガス流入口1aとバーナBに連なるガス流出口1bとを有するバルブケーシング1を備えている。このバルブケーシング1内には、電磁安全弁2と、流量調節弁3と、ステッピングモータから成る電動モータ4により後述する連動機構を介して軸方向に駆動される後記詳述する調節弁用弁体32から成る可動体と、バルブケーシング1内の空間をガス流入口1aに連通する軸方向一方の一次側ガス室11とガス流出口1bに連通する軸方向他方の二次側ガス室12とに仕切る軸方向に移動自在な弁座部材5とが設けられている。尚、電動モータ4は、バルブケーシング1の軸方向他方の端部に連動機構を囲うようにして取付けられるボックス13の外端に搭載されている。
【0015】
軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、電磁安全弁2は、弁座部材5の往動方向側の端面で構成される安全弁用弁座21と、安全弁用弁座21に対向する安全弁用弁体22と、安全弁用弁体22を復動方向に付勢して安全弁用弁座21に着座させる弁バネ23と、安全弁用弁体22に往動方向にのびる弁軸22aを介して連結した吸着片24と、吸着片24に対向する電磁石25とを備えている。そして、安全弁用弁体22を吸着片24が電磁石25に当接する開弁位置まで弁バネ23の付勢力に抗して押動させた状態で電磁石25に通電することにより、安全弁用弁体22が開弁位置に吸着保持されるようにしている。また、バーナBに付設する図示省略した火炎検知素子により失火が検知されたときや、消火操作を行ったときは、電磁石25への通電を停止し、安全弁用弁体22を弁バネ23により安全弁用弁座21に着座する閉弁位置に復帰させて、電磁安全弁2を閉弁する。
【0016】
弁座部材5は、バルブケーシング1内に設けた弁座バネ51で復動方向に付勢されている。また、弁座部材5の外側で一次側ガス室11と二次側ガス室12との間にガスが流れることを防止するためにベロフラム52を設けている。
【0017】
流量調節弁3は、弁座部材5の復動方向側の端面で構成される調節弁用弁座31と、調節弁用弁座31に着座する回転自在な調節弁用弁体32とを備えている。
図2を参照して、調節弁用弁座31には、扇形の弁座開口31aが開設され、調節弁用弁体32には、周方向の間隔を存して複数の弁体開口32aが開設されている。そして、弁座開口31aと弁体開口32aとの重なり度合い、即ち、弁座開口31aに重なる弁体開口32aの数を調節弁用弁体32の回転で変化させることによりバーナBへの供給ガス流量を調節する。具体的には、調節弁用弁体32を正転(
図2で時計方向回転)させると、弁座開口31aに重なる弁体開口32aの数が減って供給ガス流量が減少し、調節弁用弁体32を逆転(
図2で反時計方向回転)させると、弁座開口31aに重なる弁体開口32aの数が増して供給ガス流量が増加する。
【0018】
また、調節弁用弁体32には、その外周面に周方向の間隔を存して突設した複数の突条321を介して復動方向にのびる円筒部322が設けられている。この円筒部322は、バルブケーシング1内の復動方向側の端部に装着したガイド14に設けられる円筒部141に軸方向に摺動自在に、且つ、回転自在に外挿されている。従って、調節弁用弁体32は、ガイド14により軸方向に移動自在に、且つ、回転自在に支持される。尚、ガイド14は、復動方向側の端部に円筒部141が立設された平板部142を有している。そして、調節弁用弁体32は、円筒部322の復動方向側の端面が平板部142に当接する復動端位置からそれ以上復動方向には移動しない。
【0019】
連動機構は、電動モータ4の正逆転に連動して調節弁用弁体32を正逆転させる回転機構6と、調節弁用弁体32を往動方向と復動方向に移動させる運動変換機構7とを備えている。バーナBに点火する際は、電動モータ4を正転させて、調節弁用弁体32を運動変換機構7を介して往動方向に移動させることにより、調節弁用弁体32を介して弁座部材5を弁座バネ51の付勢力に抗して往動方向に押動させ、安全弁用弁座21を安全弁用弁体22に当接させた状態で、安全弁用弁体22を電磁石25に吸着片24が当接する開弁位置まで弁バネ23の付勢力に抗して往動方向に移動させる(
図5(a)に示す状態)。次に、電磁石25に通電することにより安全弁用弁体22を開弁位置に吸着保持し、その後、バーナBに付設した点火電極でのスパークを行いつつ、電動モータ4を逆転させて調節弁用弁体32を運動変換機構7を介して復動方向に移動させ、弁座部材5を弁座バネ51の付勢力で調節弁用弁体32に追従して復動方向に移動させて、安全弁用弁座21を開弁位置に吸着保持される安全弁用弁体22から離隔させ、電磁安全弁2を開弁させる(
図5(b)に示す状態)。
【0020】
図3、
図4を参照して、回転機構6は、電動モータ4の出力軸41に連結される第1回転体61と、調節弁用弁体32に連結軸64を介して連結される第2回転体62と、第1回転体61と第2回転体62との間に介設した回転力を伝達するトーションバネ63とを有している。より具体的に説明すれば、第1回転体61に第1ピン61aを突設して、この第1ピン61aにトーションバネ63の一端のフック部63aを係合させている。また、第2回転体62に、第1回転体61に形成した周方向の長孔61bに貫通する第2ピン62aを突設して、この第2ピン62aにトーションバネ63の他端のフック部63bを係合させている。そして、常時は、
図3(a)に示す如く、第2ピン62aがトーションバネ63の付勢力で長孔61bの正転方向側の端縁に押し付けられ、第1回転体61と一緒に第2回転体62が正転及び逆転する。
【0021】
ここで、安全弁用弁体22が開弁位置に到達した瞬間、即ち、吸着片24が電磁石25に当接した瞬間に電動モータ4を停止することは制御上困難である。そのため、安全弁用弁体22が開弁位置に到達した後も電動モータ4は若干正転する。本実施形態の如く、回転機構6にトーションバネ63を介設すれば、安全弁用弁体22が開弁位置に到達した後に電動モータ4が更に正転しても、
図3(b)に示す如く、トーションバネ63のクッション作用で第2ピン62a、即ち、第2回転体62はそれ以上正転しない(
図3(b)には、第1回転体61のみが正転して、長孔61bの正転方向側の端縁が第2ピン62aから正転方向に距離L離れた状態が図示されている)。そのため、吸着片24と電磁石25との当接部に過大な力が加わることを阻止することができ、吸着片24に傷が付いて吸着不良を生ずることを防止できる。更に、回転機構6が持つ回転方向のガタをトーションバネ63の付勢力で除去できる。そのため、電動モータ4を正転させるときと逆転させるときとで同じ回転位置でもガス流量に差を生ずること、即ち、ヒステリシスの発生を抑制することができる。
【0022】
運動変換機構7は、バルブケーシング1内に設けられた、往動方向側の端面に調節弁用弁体32と同心の螺旋状に傾斜したカム面71aを有する固定カム71と、調節弁用弁体32に設けられた、復動方向側の端面に調節弁用弁体32と同心の螺旋状に傾斜したカム面72aを有する可動カム72とを有するカム機構で構成されている。尚、固定カム71は、ガイド14の円筒部141の往動方向側端面から往動方向に突出するように形成され、可動カム72は、調節弁用弁体32の復動方向側端面から円筒部322の内周面に沿って復動方向に突出するように形成されている。
【0023】
可動カム72のカム面72aは、調節弁用弁体32が所定の回転位置aを超えて正転したときに固定カム71のカム面71aに当接する。可動カム72のカム面72aが固定カム71のカム面71aに当接するまでは、調節弁用弁体32は復動端位置に存する。そのため、調節弁用弁体32の回転範囲のうち所定の回転位置aを境にして正転方向側の範囲を第1回転範囲θ1、逆転方向側の範囲を第2回転範囲θ2として(
図6参照)、調節弁用弁体32が第1回転範囲θ1内で正転及び逆転するときに、固定カム71のカム面71aに可動カム72のカム面72aが当接して、調節弁用弁体32は、安全弁用弁体22が開弁位置まで押動される所定の往動端位置と所定の回転位置aに対応する上記復動端位置との間の軸方向範囲内で往動方向及び復動方向に移動し、調節弁用弁体32が第2回転範囲θ2内で正転及び逆転するときは、固定カム71のカム面71aから可動カム72のカム面72aが離れて、調節弁用弁体32は、復動端位置から軸方向に移動しない。尚、復動端位置は、調節弁用弁体32に追従する弁座部材5の変位で安全弁用弁座21が開弁位置に吸着保持される安全弁用弁体22から所定距離(具体的には、ガス流量を律速せず、且つ、安全弁用弁体22が弁バネ23の付勢力により移動可能な距離)だけ離れる位置に設定されている。
【0024】
バーナBへの供給ガス流量は、
図6に示す如く、調節弁用弁体32の第2回転範囲θ2内での回転により、最小の第1流量Q1から最大の第5流量Q5まで5段階に変化する。そこで、第2回転範囲θ2内での調節弁用弁体32の回転によりバーナBへの供給ガス流量を調節するようにしている。これによれば、調節弁用弁体32が復動端位置に存する状態でバーナBへの供給ガス流量を調節することができる。そのため、バーナ燃焼中にバーナBへのガス供給量を第1流量Q1まで絞る際に、従来例の如く弁座部材5が調節弁用弁体32に押されて往動方向に移動して、二次側ガス室12の容積が拡大するようなことはなく、この容積拡大に起因する二次側ガス室12内のガス圧低下で失火することを防止できる。また、調節弁用弁体32のガス流量調節のための軸方向移動ストロークを確保する必要がなく、ガス弁装置Aの軸方向寸法の小型化が可能になる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、調節弁用弁体32に複数の弁体開口32aを形成して、ガス流量を段階的に調節できるようにしているが、弁体開口を周方向に長手の長孔状に形成し、ガス流量を無段階に調節できるようにしてもよい。また、上記実施形態では、バルブケーシング1内に、これとは別体のガイド14を設けているが、ガイド14をバルブケーシング1と一体に形成することも可能である。
【0026】
更に、運動変換機構7を、ガイド14と調節弁用弁体32との一方に設けた螺旋状のカム溝と、他方に設けた、カム溝に係合するピンとで構成することも可能である。但し、これでは、カム溝にピンを係合させる必要があって、組立が面倒になる。これに対し、上記実施形態のものでは、固定カム71と可動カム72とを対向配置するだけで済むため、組立が容易になり、有利である。また、上記実施形態では、回転機構6の第2回転体62をこれとは別体の連結軸64を介して調節弁用弁体32に連結しているが、連結軸64を第2回転体62と一体化することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
1…バルブケーシング、2…電磁安全弁、21…安全弁用弁座、22…安全弁用弁体、22a…弁軸、23…弁バネ、24…吸着片、25…電磁石、3…流量調節弁、31…調節弁用弁座、31a…弁座開口、32…調節弁用弁体、32a…弁体開口、4…電動モータ、5…弁座部材、51…弁座バネ、6…回転機構、61…第1回転体(電動モータに連結される回転体)、62…第2回転体(調節弁用弁体に連結される回転体)、63…トーションバネ、7…運動変換機構、71…固定カム、71a…カム面、72…可動カム、72a…カム面、a…所定の回転位置、θ1…第1回転範囲、θ2…第2回転範囲。