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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】数値制御装置及び数値制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
G05B19/18 W
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019072036
(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公開番号】P2020170392
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友也
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-082645(JP,A)
【文献】特開平06-206143(JP,A)
【文献】特開2019-018338(JP,A)
【文献】特表2004-525467(JP,A)
【文献】特開2018-073327(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118241(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0275630(US,A1)
【文献】特開平04-235605(JP,A)
【文献】特開2007-128231(JP,A)
【文献】特開2001-347440(JP,A)
【文献】特開2017-177298(JP,A)
【文献】特開平06-182651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械のメンテナンスを制御する数値制御装置であって、
前記工作機械のメンテナンス開始のトリガ入力に基づいて、前記工作機械の動作モードを通常動作モードから動作の制限内容の異なるメンテナンスモードへと移行させるモード移行部と、
所定のメンテナンス内容に従って前記工作機械にメンテナンス動作を実行させ、該メンテナンス動作の結果が正常値の範囲外の場合、正常値の範囲内になるよう前記通常動作モードにおける動作制限内容の変更を伴う調整を経る動作実行部と、
前記工作機械のメンテナンス動作の正常値の範囲内の結果をメンテナンス結果として出力する制御を行う出力制御部と、
を備え、
前記モード移行部は、前記出力制御部による前記メンテナンス結果の出力後、所定の時間の経過後に、前記工作機械の動作モードをメンテナンスモードからメンテナンス動作実行終了後の動作の制限内容を有する通常動作モードへと自動復帰させる数値制御装置。
【請求項2】
前記モード移行部は、メンテナンスモードにおけるメンテナンス動作の制限内容を予め取得するとともに、前記トリガ入力に基づいて、取得した動作の制限内容を前記工作機械に設定する請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記出力制御部は、前記メンテナンス内容の手順を作業者に案内する表示を出力する請求項1又は2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記メンテナンス内容は、前記工作機械を実際に動作させる動作指示情報を含み、
前記動作実行部は、前記動作指示情報に基づいて前記工作機械のメンテナンス動作を実行させる請求項1から3のいずれかに記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記モード移行部及び前記動作実行部は、作業者によって予め選択された複数の種別のメンテナンスを順に実行する請求項1からのいずれかに記載の数値制御装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載の数値制御装置と、
前記数値制御装置によって制御される工作機械と、
前記数値制御装置及び前記工作機械に接続され、前記数値制御装置及び前記工作機械のメンテナンス動作を制御する制御端末と、
を備える数値制御システム。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の複数の前記数値制御装置及び複数の前記工作機械と、
複数の前記数値制御装置及び複数の前記工作機械に接続され、前記数値制御装置及び前記工作機械のそれぞれのメンテナンス動作を制御する制御端末と、
を備える数値制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置及び数値制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加工処理を実施するための数値制御装置(CNC、computerized numerical control)が組み込まれた工作機械が知られている。工作機械は、数値制御装置によって動作を制御される。
【0003】
工作機械を長期にわたり安定動作させるには、定期点検、各機構部の保守、及び電装部の保守を含むメンテナンスを行う必要がある。メンテナンスには、比較的容易に行える、機械の清掃、目視確認による点検、及び機械の動作を必要としない機構部へのグリース塗布等が含まれる。さらに、メンテナンスには、機械動作を伴う確認作業(例えば、各軸における異音の発生有無の確認、主軸の振れの測定等)や、トルク制御方式を変更する必要のある(パラメータの変更を伴う)作業や、通常時の移動が禁止されている座標領域における部品交換及び調整等の非定常作業も含まれる。非定常作業の一例として、パラメータの変更を伴う、回転テーブルのクランプトルクを測定する手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5887299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、上記のように、メンテナンスは、非定常作業として行われる。そのため、メンテナンスは、例えば、工作機械の動作モードの変更後に実施される。例えば、非定常作業が行われる場合、数値制御装置は、工作機械を通常モードからメンテナンスモードに変更するとともに、パラメータの変更を行う。特許文献1では、工作機械は、通常動作とは異なる状態に変更されるとともに、パラメータの変更として、回転テーブルの軸を回転させるトルクが徐々に大きくなるようなトルク制御方式へ切り換わる。
【0006】
ところで、メンテナンスが完了した後、工作機械のパラメータの変更が元に戻される。そして、メンテナンスモードが通常モードに切り換えられる。これにより、工作機械は、メンテナンス前と同様の動作をすることが可能になる。一方で、パラメータの変更の戻し忘れを抑制することができればより好適である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一態様は、工作機械のメンテナンスを制御する数値制御装置であって、
前記工作機械のメンテナンス開始のトリガ入力に基づいて、前記工作機械の動作モードをメンテナンスモードへと移行させるモード移行部と、所定のメンテナンス内容に従って前記工作機械にメンテナンス動作を実行させる動作実行部と、前記工作機械のメンテナンス動作の結果をメンテナンス結果として出力する制御を行う出力制御部と、を備え、前記モード移行部は、前記出力制御部による前記メンテナンス結果の出力後に、前記工作機械の動作モードをメンテナンスモードから通常動作モードへと復帰させる数値制御装置に関する。
【0008】
(2)また、本開示の一態様は、(1)に記載の数値制御装置と、前記数値制御装置によって制御される工作機械と、前記数値制御装置及び前記工作機械に接続され、前記数値制御装置及び前記工作機械のメンテナンス動作を制御する制御端末と、を備える数値制御システムに関する。
【0009】
(3)また、本開示の一態様は、(1)に記載の複数の前記数値制御装置及び複数の前記工作機械と、複数の前記数値制御装置及び複数の前記工作機械に接続され、前記数値制御装置及び前記工作機械のそれぞれのメンテナンス動作を制御する制御端末と、を備える数値制御システムに関する。
【発明の効果】
【0010】
一態様によれば、パラメータの変更の戻し忘れを抑制することができる数値制御装置及び数値制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る数値制御装置と、工作機械とを示す概念図である。
図2】第1実施形態の数値制御装置を示すブロック図である。
図3】第1実施形態の数値制御装置の動作を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態の数値制御装置に表示されるメンテナンス内容を示す画面図である。
図5】第2実施形態の数値制御システムの構成を示す概略図である。
図6】第3実施形態の数値制御システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の各実施形態に係る数値制御装置1及び数値制御システム2について、図1から図6を参照して説明する。
各実施形態に係る数値制御装置1は、工作機械100と組み合わされる。数値制御装置1は、組み合わされた工作機械100の動作を制御する。数値制御装置1は、例えば、不図示の駆動軸(主軸、直動軸、付加軸など)を有する工作機械100の動作を制御する。ここで、数値制御装置1は、例えば、通常動作時における工作機械100の駆動軸の動作範囲等を動作の制限内容(以下、パラメータともいう)として保持している。すなわち、数値制御装置1は、動作の制限内容に従って、工作機械100の動作範囲等を制限する。また、工作機械100は、駆動軸を実際に動作させる駆動軸動作部101を有する。数値制御装置1は、駆動軸動作部101に実際の動作を指示するとともに、動作結果を駆動軸動作部101から取得する。
【0013】
本実施形態において、工作機械100をメンテナンスする場合、数値制御装置1には、メンテナンス動作の制限内容が設定される。すなわち、数値制御装置1では、通常動作時の動作モード(通常動作モード)における動作の制限内容から、メンテナンス時の動作モード(メンテナンスモード)における動作の制限内容に設定が変更される。一例として、数値制御装置1には、通常動作モードにおいて工作機械100の駆動軸のトルクを瞬時に発生させる制御が動作の制限内容として設定される。また、数値制御装置1には、メンテナンスモードにおいて工作機械100の駆動軸のトルクを徐々に大きくする制御が動作の制限内容として設定される。各実施形態に係る数値制御装置1及び数値制御システム2は、変更された動作の制限内容について、メンテナンス終了後に通常時の動作モードの動作の制限内容に自動復帰させることが可能となっている。すなわち、数値制御装置1及び数値制御システム2は、工作機械100に設定される動作の制限内容について、メンテナンス終了後に、メンテナンスモードの動作制限内容から、通常動作モードの動作の制限内容に自動復帰させることが可能になっている。なお、メンテナンスは、定期点検、保守、調整等、工作機械100を維持管理する作業の総称である。
【0014】
[第1実施形態]
次に、本開示の第1実施形態に係る数値制御装置1について、図1から図4を参照して説明する。
本実施形態に係る数値制御装置1は、図1に示すように、工作機械100に組み込まれる。数値制御装置1は、作業員(図示せず)からの入力を受け付け可能に構成されるとともに、工作機械100の状況を表示可能に構成される。数値制御装置1は、図2に示すように、メンテナンス内容格納部11と、出力部12と、出力制御部13と、入力部14と、計時部15と、モード移行部16と、動作実行部17と、を備える。
【0015】
メンテナンス内容格納部11は、例えば、ハードディスク等の二次記憶媒体である。メンテナンス内容格納部11は、工作機械100のメンテナンス種別とともに、種別ごとにその手順を案内するメンテナンス内容を格納する。また、メンテナンス内容格納部11は、メンテナンス内容として、種別ごとに、工作機械100の動作の制限内容と、工作機械100を実際に動作させる動作指示情報とを格納する。メンテナンス内容格納部11は、例えば、動作指示情報として、1軸以上の動作指令に従って工作機械100を動作させる内容を格納する。
【0016】
出力部12は、例えば、モニタ等の表示装置である。出力部12は、工作機械100のメンテナンス種別と、種別ごとの手順とを表示する。また、出力部12は、工作機械100のメンテナンス結果を表示する。
【0017】
出力制御部13は、例えば、CPUが動作することで実現される。出力制御部13は、出力部12に出力される内容を制御する。出力制御部13は、例えば、メンテナンスにおける工作機械100のメンテナンス動作の結果をメンテナンス結果として出力する制御を行う。具体的には、出力制御部13は、出力部12にメンテナンス結果を出力させる制御を行う。また、出力制御部13は、例えば、メンテナンス種別の出力及び種別ごとのメンテナンス内容の手順の出力を制御する。具体的には、出力制御部13は、メンテナンス内容格納部11から、メンテナンス種別及びメンテナンス内容の手順を読み出す。出力制御部13は、出力部12に、読み出したメンテナンス種別及びメンテナンス内容の手順を出力させる。
【0018】
入力部14は、例えば、キーボードやマウス等の入力装置である。入力部14は、作業員(図示せず)からの入力を受け付ける。入力部14は、例えば、メンテナンス開始のトリガ入力を受け付ける。また、入力部14は、例えば、工作機械100の駆動軸の動作を制御する入力を受け付ける。
【0019】
計時部15は、例えば、CPUが動作することで実現される。計時部15は、いわゆるタイマーである。計時部15は、時刻に関する時刻情報を出力制御部13に出力する。
【0020】
モード移行部16は、例えば、CPUが動作することで実現される。モード移行部16は、工作機械100のメンテナンス開始のトリガ入力に基づいて、工作機械100の動作モードをメンテナンスモードへと移行させる。また、モード移行部16は、出力制御部13によるメンテナンス結果の出力後に、工作機械100の動作モードをメンテナンスモードから通常動作モードへと復帰させる。モード移行部16は、例えば、メンテナンスモードにおける工作機械100の動作の制限内容(メンテナンス動作の制限内容)を予め取得するとともに、トリガ入力に基づいて、工作機械100に取得した動作の制限内容を設定する。具体的には、モード移行部16は、メンテナンス内容格納部11から読み出したメンテナンス内容に含まれる動作の制限内容に基づいて、工作機械100の動作モードをメンテナンスモードへと移行させる。
【0021】
動作実行部17は、例えば、CPUが動作することで実現される。動作実行部17は、所定のメンテナンス内容に従って工作機械100にメンテナンス動作を実行させる。具体的には、動作実行部17は、モード移行部16による工作機械100の動作制限内容の変更の後に、所定のメンテナンス内容に従って工作機械100を動作させる。動作実行部17は、例えば、メンテナンス内容格納部11に格納されている動作指示情報に従って工作機械100を動作させる。また、動作実行部17は、工作機械100から動作結果をメンテナンス結果として取得する。動作実行部17は、取得したメンテナンス結果を出力制御部13に送る。
【0022】
次に、数値制御装置1の動作について、図3を参照して説明する。
まず、入力部14は、メンテナンス種別を読み出す指示を受け付ける。出力制御部13は、メンテナンス種別を読み出す指示に基づいて、メンテナンス内容格納部11からメンテナンス種別を読み出す。出力制御部13は、出力部12に、読み出したメンテナンス種別を表示する(ステップS1)。
【0023】
次いで、入力部14は、作業員から、実施するメンテナンス種別の選択入力を受け付ける(ステップS2)。出力制御部13は、選択されたメンテナンス種別の手順を案内する情報(メンテナンス内容)をメンテナンス内容格納部11から取得する。出力制御部13は、出力部12に、メンテナンス内容を表示させる。また、モード移行部16は、選択されたメンテナンス種別による工作機械100のメンテナンス動作の制限内容をメンテナンス内容格納部11から取得する。そして、動作実行部17は、選択されたメンテナンス種別による工作機械100への動作指示情報をメンテナンス内容格納部11から取得する。このとき、出力制御部13は、図4に示すような、メンテナンス内容の手順を示す案内を出力部12に表示させる。
【0024】
次いで、入力部14は、工作機械100のメンテナンス開始のトリガ入力を受け付ける(ステップS3)。入力部14は、例えば、工作機械100の動作モードをメンテナンスモードへ移行するトリガの入力を受け付ける。入力部14は、受け付けたトリガ入力をモード移行部16へ送る。
【0025】
モード移行部16は、トリガ入力に基づいて、工作機械100の動作モードをメンテナンスモードに移行する(ステップS4)。モード移行部16は、例えば、取得したメンテナンス動作の制限内容に基づいて、工作機械100の実際の動作に動作制限を設定する。一例として、モード移行部16は、モータ(図示せず)のトルクを瞬時に発生させる又は徐々に大きくする制御をメンテナンス動作の制限内容として設定する。また、他の例として、モード移行部16は、モータ回転数を制限する又は制限を解除することをメンテナンス動作の制限内容として設定する。本実施形態では、モード移行部16は、回転テーブルのクランプ動作を実行する動作制限(クランプ時のトルクを徐々に大きくする制御)を工作機械100に設定する(例えば、図4の1.から3.参照)。
【0026】
次いで、動作実行部17は、読み出したメンテナンス内容(動作指示情報)に従って工作機械100を動作させる(ステップS5)。動作実行部17は、動作の後、工作機械100の動作結果を駆動軸動作部101からメンテナンス結果として取得する。本実施形態において、動作実行部17は、クランプ動作及び軸を微小角度動かす動作を動作指示情報として工作機械100に動作させる。そして、動作実行部17は、軸を動かす動作の際のトルクを取得して、クランプ動作の良否を判定する(例えば、図4の4.参照)。
【0027】
メンテナンス結果がメンテナンス内容と比較して正常値の範囲内である場合(ステップS6:YES)、出力制御部13は、メンテナンス結果を出力部12に出力させて、処理はステップS9に進む(ステップS7)。一方、メンテナンス結果がメンテナンス内容と比較して正常値の範囲外である場合、処理は、ステップS8へ進む。
【0028】
ステップS8において、工作機械100の状態を調整する動作が実行される。この動作は、例えば、工作機械100の部品の交換や、動作実行部17による、通常動作モードにおける動作制限内容の変更等である。工作機械100の調整の後、処理は、ステップS6に戻る。
【0029】
ステップS9において、モード移行部16は、メンテナンス結果の出力の後、計時部15による計時による所定時間経過後に、工作機械100の動作をメンテナンスモードから通常動作モードに復帰させる(ステップS8)。本実施形態において、モード移行部16は、例えば、クランプ時のトルクを瞬時に発生させる制御方式へ変更することで、工作機械100を通常動作モードに復帰させる。
【0030】
以上の本実施形態に係る数値制御装置1によれば、以下の効果を奏する。
(1)工作機械100のメンテナンスを制御する数値制御装置1であって、工作機械100のメンテナンス開始のトリガ入力に基づいて、工作機械100の動作モードをメンテナンスモードへと移行させるモード移行部16と、所定のメンテナンス内容に従って工作機械100にメンテナンス動作を実行させる動作実行部17と、工作機械100のメンテナンス動作の結果をメンテナンス結果として出力する制御する出力制御部13と、を備え、モード移行部16は、出力制御部13によるメンテナンス結果の出力後に、工作機械100の動作モードをメンテナンスモードから通常動作モードへと復帰させる。これにより、メンテナンス終了後、メンテナンスモードのまま工作機械100を通常動作させることを抑制できる。すなわち、メンテナンス用に設定された設定値のまま、工作機械100に加工処理を実行させることを抑制できる。したがって、加工処理の不具合の発生を抑制することができる。
【0031】
(2)モード移行部16は、メンテナンスモードにおける工作機械100のメンテナンス動作の制限内容を予め取得するとともに、トリガ入力に基づいて、取得した動作制限内容を工作機械100に設定する。これにより、トリガ入力によって、工作機械100にメンテナンスモード用の動作の制限内容が自動的に設定される。したがって、熟練の作業者でなくても適切にメンテナンスを開始することができる。
【0032】
(3)出力制御部13は、作業者に対して、トリガ動作の内容及びメンテナンス内容の手順を作業者に案内する表示を出力する。これにより、メンテナンス内容の詳細を容易に確認することができる。
【0033】
(4)メンテナンス内容は、工作機械100を実際に動作させる動作指示情報を含み、動作実行部17は、動作指示情報に基づいて工作機械100のメンテナンス動作を実行させる。これにより、作業員の熟練度によらず、メンテナンス作業を容易に実行することができる。
【0034】
(5)モード移行部16は、メンテナンス結果の出力後、所定の時間の経過後に工作機械100の動作モードを通常動作モードへと復帰させる。これにより、工作機械100がメンテナンスモードのまま加工を実行することを抑制できる。
【0035】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態に係る数値制御システム2について、図5を参照して説明する。第2実施形態の説明にあたって、前述の実施形態と同一の構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第2実施形態に係る数値制御システム2は、図5に示すように、数値制御装置1及び工作機械100とは別に、制御端末200を備える点で、第1実施形態と異なる。また、第2実施形態に係る数値制御システム2は、第1実施形態における数値制御装置1のメンテナンス内容格納部11、出力部12、出力制御部13、入力部14、計時部15、及び動作実行部17の機能が、制御端末200で実行される点で、第1実施形態と異なる。
【0036】
以上の本実施形態に係る数値制御システム2によれば、以下の効果を奏する。
(6)数値制御システム2は、第1実施形態の数値制御装置1と、数値制御装置1によって制御される工作機械100と、数値制御装置1及び工作機械100に接続され、数値制御装置1及び工作機械100のメンテナンス動作を制御する制御端末200と、を備える。これにより、リモートで数値制御装置1及び工作機械100をメンテナンスすることができる。したがって、より容易にメンテナンスを実行することができる。
【0037】
[第3実施形態]
次に、本開示の第3実施形態に係る数値制御システム2について、図6を参照して説明する。第3実施形態の説明にあたって、前述の実施形態と同一の構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第3実施形態に係る数値制御システム2は、図6に示すように、第2実施形態の制御端末200が複数の数値制御装置1及び複数の工作機械100に接続される点で、第2実施形態と異なる。
【0038】
(7)数値制御システム2は、第1実施形態に記載の複数の数値制御装置1及び複数の工作機械100と、複数の制御装置及び複数の工作機械100に接続され、数値制御装置1及び工作機械100のそれぞれのメンテナンス動作を制御する制御端末200と、を備える。これにより、リモートで複数の数値制御装置1及び複数の工作機械100をメンテナンスすることができる。したがって、さらに容易にメンテナンスを実行することができる。
【0039】
以上、本開示の数値制御装置及び数値制御システムの好ましい各実施形態につき説明したが、本開示は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態において、入力部14は、複数のメンテナンス種別の選択入力を受け付けてもよい。モード移行部16及び動作実行部17は、作業者によって予め選択された複数の種別のメンテナンスを順に実行してもよい。これにより、1つのメンテナンスの終了ごとに、作業員からメンテナンス種別の入力を受け付ける必要がない。したがって、メンテナンス入力の利便性を向上することができる。
【0040】
また、上記実施形態において、モード移行部16は、工作機械100の動作制限内容を戻すことで、工作機械100の動作モードを通常モードに復帰する例を説明したが、これに制限されない。例えば、動作実行部17が、さらに、駆動軸を通常モードにおける位置に移動させるようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態において、モード移行部16は、通常モードにおいて変更権限が無い動作制限内容、メンテナンスモードにおいては、読み出された動作制限内容に変更てもよい。これにより、ユーザ側でもメンテナンスを実行することができるので、工作機械100のメンテナンス機会を増やすことができる。例えば、工作機械100のドアが開放されたままの状態でメンテナンスを可能にするようにすることができる。
【0042】
また、上記実施形態において、モード移行部16は、通常動作モードでは移動禁止となっている座標領域への駆動軸の移動を可能とする動作制限内容を設定してもよい。これにより、駆動軸を作業領域から退避させた状態でメンテナンスをすることができる。したがって、メンテナンスの作業性を改善することができる。
【0043】
また、上記実施形態において、モード移行部16は、工作機械100以外の外部機器の動作を制限する動作制限内容を設定してもよい。モード移行部16は、例えば、エアパージによるクーラントの侵入防止や、エアブローによる切粉の除去、回転テーブルにおけるクランプ動作用のエアなど、工作機械100に用いられているエアの供給を遮断するようにしてもよい。これにより、メンテナンス作業の安全性を向上することができる。
【0044】
また、上記実施形態において、出力制御部13及び出力部12は、それぞれ表示制御部及び表示部を一例として説明したが、これに制限されない。出力制御部13及び出力部12は、印刷や、音等、他の手法で出力を行うものであってもよい。
【0045】
また、上記実施形態において、モード移行部16は、所定時間経過後に、工作機械の動作モードを通常動作モードに復帰するとしたが、これに制限されない。モード移行部16は、例えば、入力部14へのモード復帰の入力に基づいて、工作機械の動作モードを通常動作モードに復帰させてもよい。
【0046】
また、上記実施形態において、出力制御部13は、メンテナンス時期が近付いた際に、その旨の通知を出力部12に出力してもよい。メンテナンス内容格納部11は、メンテナンス種別ごとに、過去のメンテナンス実施日時と、メンテナンス間隔の情報とをさらに格納していてもよい。出力制御部13は、過去のメンテナンス実施日時とメンテナンス間隔の情報とから次のメンテナンス実施日時を算出してもよい。そして、出力制御部13は、算出された次のメンテナンス実施日時と、計時部15によって求められる日時とを比較して、出力部12への通知の要否を判断してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 数値制御装置
2 数値制御システム
13 出力制御部
16 モード移行部
17 動作実行部
100 工作機械
200 制御端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6