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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】二次電池及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20220830BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20220830BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20220830BHJP
   H01M 50/469 20210101ALI20220830BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20220830BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20220830BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01M50/463 B
H01M50/469
H01M50/403 C
H01M50/46
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019074137
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020173923
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】茅原 静佳
(72)【発明者】
【氏名】常深 剛
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/004927(WO,A1)
【文献】特開2009-123582(JP,A)
【文献】特開2012-054194(JP,A)
【文献】特開2014-232591(JP,A)
【文献】特開2017-152284(JP,A)
【文献】特開2013-196894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/04
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の極板をセパレータを介して積層させた極板群と、
前記極板の第1側辺から延出される極板タブと、
電池ケースに固定されていて、前記極板タブが電気的に接続される電極とを備え、
前記セパレータは、前記極板の両面に配置されているとともに、前記第1側辺よりも延出されている第1延出部が相互に接着された第1接着部と、前記極板の前記第1側辺の反対側の第2側辺よりも延出されている第2延出部が相互に接着された第2接着部とを有し、
前記第1接着部は、前記第1側辺に沿う長手方向の一部に前記セパレータの面の延在する方向において前記極板に向かうように凹んでいる凹状の第1凹部を有し、
前記第2接着部は、前記第2側辺に沿う長手方向の一部に前記セパレータの面の延在する方向において前記極板に向かうように凹んでいる凹状の第2凹部を有している
二次電池。
【請求項2】
前記極板の側辺のうち前記第1側辺及び前記第2側辺との間にある側辺では前記極板の側辺と前記セパレータの側辺とが積層方向に揃っている
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記セパレータは前記極板に接着されている
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記極板は矩形であり、前記第1側辺及び前記第2側辺に交差する第3側辺及び第4側辺を有し、
前記第3側辺及び前記第4側辺は、前記極板の基材に電極合材の塗布されていない未塗工部を有し、
前記セパレータは、前記第3側辺及び前記第4側辺の未塗工部に接着されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記極板群は、前記セパレータを介して、正極板と前記正極板よりも大きい負極板とが交互に積層されており、
前記セパレータは、前記負極板に接着されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
複数の極板をセパレータを介して積層させた極板群と、
前記極板の第1側辺から延出される極板タブと、
電池ケースに固定されていて、前記極板タブが電気的に接続される電極とを備え、
前記極板の両面に配置されている各前記セパレータは、前記第1側辺よりも延出されている第1延出部が相互に接着された第1接着部と、前記極板の前記第1側辺の反対側の第2側辺よりも延出されている第2延出部が相互に接着された第2接着部とを有し、
前記極板は矩形であり、前記第1側辺及び前記第2側辺に交差する第3側辺及び第4側辺を有し、
前記第3側辺及び前記第4側辺は、前記極板の基材に電極合材の塗布されていない未塗工部を有し、
前記セパレータは、前記第3側辺及び前記第4側辺の未塗工部に接着されており、
前記第1接着部は、前記第1側辺に沿う長手方向の一部に前記セパレータの面の延在する方向において前記極板に向かうように凹んでいる凹状の第1凹部を有し、
前記第2接着部は、前記第2側辺に沿う長手方向の一部に前記セパレータの面の延在する方向において前記極板に向かうように凹んでいる凹状の第2凹部を有している
二次電池。
【請求項7】
長尺方向に所定の間隔で極板タブを有する長尺の極板シートの両面に、前記極板シートの長尺に直交する幅方向両側にはみ出した延出部を有するようにセパレータシートを配置して、前記極板シートの両面からはみ出した両面の各前記セパレータシートの延出部をロールで押圧して接着させる接着ステップと、
前記延出部に、前記セパレータシートの面の延在する方向において前記極板シートに向かう幅方向に凹んでいる凹部を形成する凹部形成ステップと、
前記セパレータシートが前記両面に接着された前記極板シートを、前記極板シートの前記長尺方向に対して所定の位置で切断して極板を作成する切断ステップとを有する
二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記極板シートは、前記極板シートの前記長尺方向に直交する幅方向に電極合材の塗布されていない未塗工部が延設されており、
前記接着ステップでは、前記セパレータシートが前記未塗工部にも接着され、
前記切断ステップでは、前記セパレータシートの接着された未塗工部が切断される前記所定の位置である
請求項7に記載の二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記作成した前記極板を積層させるとともに、前記極板の一の対辺である切断辺と、前記極板の他の対辺に設けられた前記凹部との4箇所を調整装置で押圧することで、積層された前記極板の位置合わせを行う積層ステップを有する
請求項8に記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極板と負極板とをセパレータを介して積層させた極板群を有している二次電池及び二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、携帯用の電子機器の電源として、また、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として、リチウムイオン二次電池等の二次電池が用いられている。例えば、リチウムイオン二次電池は、正極板と負極板とがセパレータを介して複数枚積層された極板群を、リチウム含有電解質を含む非水系電解液とともに電池ケースに収納して構成される。
【0003】
極板群は、正極板と負極板との間の短絡がセパレータで防止されており、こうした極板群の一例が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載の二次電池は、正極板、負極板及びセパレータをそれぞれ複数含み、正極板及び負極板がセパレータを介して交互に積層された極板群を備える。セパレータの表面には、正極板よりも外側で負極板と重なる位置に、正極板を取り囲むように樹脂製の突起が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-130301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
極板群は、正極板と負極板とがセパレータを介して所定の位置関係となるように積層される。このとき、正極板と、正極板よりも大きな負極板との外形の大きさの相違する2つの極板を交互に、かつ、偏りが小さくなるように重ねる必要のある二次電池がある。
【0006】
近年、電池の使用環境が拡大に伴い、極板群の信頼性を向上させるため、正極板や負極板をより正確に重ね合わせる必要がある。しかし、極板よりも広いセパレータを挟んで正極板と負極板とを積層することは容易ではないため、リチウム析出や機械的負荷の増大により極板群の信頼性が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、極板がセパレータを介して積層される極板群の信頼性を高めることのできる二次電池及び二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する二次電池は、複数の極板をセパレータを介して積層させた極板群と、前記極板の第1側辺から延出される極板タブと、電池ケースに固定されていて、前記極板タブが電気的に接続される電極とを備え、前記セパレータは、前記極板の両面に配置されているとともに、前記第1側辺よりも延出されている第1延出部が相互に接着された第1接着部と、前記極板の前記第1側辺の反対側の第2側辺よりも延出されている第2延出部が相互に接着された第2接着部とを有し、前記第1接着部は、前記第1側辺に沿う長手方向の一部に凹状の第1凹部を有し、前記第2接着部は、前記第2側辺に沿う長手方向の一部に凹状の第2凹部を有している。
【0009】
このような構成によれば、極板の極板タブが設けられる第1側辺と、第1側辺とは反対側の第2側辺とが接着されたセパレータにより封止されるため、第1側辺にある極板タブが他極と短絡することが抑制されるとともに、第1側辺及び第2側辺に生じるおそれのある電極合材の脱落や異物侵入が抑制される。よって、極板がセパレータを介して積層される極板群の信頼性を高めることができる。
【0010】
また、極板よりも突出しているセパレータに形成された第1凹部や第2凹部が極板の積層を容易かつ精度を高めることができる。これによっても、極板がセパレータを介して積層される極板群の信頼性を高めることができる。
【0011】
好ましい構成として、前記第1凹部及び前記第2凹部は、前記極板に近い位置まで凹んでいる。
このような構成によれば、凹部の部分では極板の位置が正確に分かるので積層時の位置決め精度が高められるようになる。
【0012】
好ましい構成として、前記極板の側辺のうち前記第1側辺及び前記第2側辺との間にある側辺では前記極板の側辺と前記セパレータの側辺とが積層方向に揃っている。
このような構成によれば、第1側辺及び第2側辺を凹部を利用して位置合わせし、第1側辺と第2側辺との間にある側辺をセパレータと揃っている極板で位置合わせすることにより、極板の四方の位置合わせが好適に行える。
【0013】
好ましい構成として、前記セパレータは前記極板に接着されている。
このような構成によれば、セパレータが極板に接着されていることから極板の位置合わせが行いやすく、また、極板の位置ずれが生じづらくなる。
【0014】
好ましい構成として、前記極板は矩形であり、前記第1側辺及び前記第2側辺に交差する第3側辺及び第4側辺を有し、前記第3側辺及び前記第4側辺は、前記極板の基材に電極合材の塗布されていない未塗工部を有し、前記セパレータは、前記第3側辺及び前記第4側辺の未塗工部に接着されている。
【0015】
このような構成によれば、極板の一対の側辺がセパレータ同士の接着により封止され、極板の他対の側辺がセパレータと極板の未塗工部の接着により封止される。これにより、極板群における短絡等の発生が抑制されるようになる。
【0016】
また、極板の他対の辺(左右)は、セパレータが未塗工部に接着されるため、セパレータが収縮して電極合材から離脱するおそれが低下する。これによっても、極板群における短絡等の発生が抑制されるようになる。
【0017】
好ましい構成として、前記極板群は、前記セパレータを介して、正極板と前記正極板よりも大きい負極板とが交互に積層されており、前記セパレータは、前記負極板に接着されている。
【0018】
このような構成によれば、セパレータが正極板よりも大きい負極板に接着されるため、セパレータの接着部の延出長が抑えられる。また、正極板よりも外に出る負極板を押圧することで位置合わせを適切に行える。
【0019】
上記課題を解決する二次電池は、複数の極板をセパレータを介して積層させた極板群と、前記極板の第1側辺から延出される極板タブと、電池ケースに固定されていて、前記極板タブが電気的に接続される電極とを備え、前記極板の両面に配置されている各前記セパレータは、前記第1側辺よりも延出されている第1延出部が相互に接着された第1接着部と、前記極板の前記第1側辺の反対側の第2側辺よりも延出されている第2延出部が相互に接着された第2接着部とを有し、前記極板は矩形であり、前記第1側辺及び前記第2側辺に交差する第3側辺及び第4側辺を有し、前記第3側辺及び前記第4側辺は、前記極板の基材に電極合材の塗布されていない未塗工部を有し、前記セパレータは、前記第3側辺及び前記第4側辺の未塗工部に接着されている。
【0020】
このような構成によれば、極板の極板タブが設けられる第1側辺と、第1側辺とは反対側の第2側辺とが接着されたセパレータにより封止されるとともに、第3側辺及び第4側辺がセパレータと極板の未塗工部との接着により封止される。第1側辺にある極板タブが他極と短絡することが抑制されるとともに、第1~第4側辺からの電極合材の脱落や異物侵入が抑制される。よって、極板がセパレータを介して積層される極板群の信頼性を高めることができる。
【0021】
上記課題を解決する二次電池の製造方法は、長尺方向に所定の間隔で極板タブを有する長尺の極板シートの両面に、前記極板シートの長尺に直交する幅方向両側にはみ出した延出部を有するようにセパレータシートを配置して、前記極板シートの両面からはみ出した両面の各前記セパレータシートの延出部をロールで押圧して接着させる接着ステップと、前記延出部に、前記極板シートに向かう凹部を形成する凹部形成ステップと、前記セパレータシートが前記両面に接着された前記極板シートを、前記極板シートの前記長尺方向に対して所定の位置で切断して極板を作成する切断ステップとを有する。
【0022】
このような方法によれば、極板タブを有する極板シートの両側辺を封止するようにセパレータ同士を接着させることが素早く行えるようになる。
また、凹部形成ステップで位置合わせ用の凹部を作成することができる。
【0023】
好ましい方法として、前記極板シートは、前記極板シートの前記長尺方向に直交する幅方向に電極合材の塗布されていない未塗工部が延設されており、前記接着ステップでは、前記セパレータが前記未塗工部にも接着され、前記切断ステップでは、前記セパレータの接着された未塗工部が切断される前記所定の位置である。
【0024】
このような方法によれば、極板シートの未塗工部にセパレータを接着させるとともに、その未塗工部で切断するため、切断時の押圧で電極合材が離脱したり、セパレータが収縮して電極合材から離脱したりするおそれが抑制される。
【0025】
好ましい方法として、前記作成した前記極板を積層させるとともに、前記極板の一の対辺である切断辺と、前記極板の他の対辺に設けられた前記凹部との4箇所を調整装置で押圧することで、積層された前記極板の位置合わせを行う積層ステップを有する。
【0026】
このような方法によれば、極板を積層させ、極板の凹部を調整装置で押圧することで位置合わせを行うことができる。
また、極板の凹部と、未塗工部との4箇所を押圧することでより好適に位置合わせを行うことができる。なお、未塗工部に接着されたセパレータは剥がれるおそれが低いことから短絡等を生ずるおそれが抑制される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、極板がセパレータを介して積層される極板群の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】二次電池及び二次電池の製造方法の第1の実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態における極板群の層構造を示す平面図。
図3】同実施形態における極板の製造工程を示す模式図。
図4】同実施形態における極板の製造工程を示す模式図。
図5】同実施形態における極板の断面図であって、(a)は図4の5a-5a切断線における端面図、(b)は図4の5b-5b切断線における端面図。
図6】同実施形態における極板の製造工程を示す模式図。
図7】同実施形態における極板の製造工程の一例を示す模式図であって、(a)は接着ステップの図、(b)は凹部形成ステップの図。
図8】同実施形態における極板の製造工程の一例を示す模式図であって、(a)は接着ステップの図、(b)は凹部形成ステップの図。
図9】二次電池及び二次電池の製造方法の第2の実施形態の説明図。
図10】従来、極板の切断を示す模式図。
図11】二次電池及び二次電池の製造方法の他の実施形態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1の実施形態)
図1図8を参照して、二次電池及び二次電池の製造方法の第1の実施形態について説明する。以下では、二次電池はリチウムイオン二次電池である例を説明する。
【0030】
図1に示すように、二次電池10は、ケース11と、ケース11の開口を封止する蓋体12とを備える。蓋体12は、電極としての正極端子13と、電極としての負極端子14とを備える。ケース11は、二次電池用の極板群20(図2参照)と極板群20に含浸される非水系電解質を含む非水系電解液とを収容する。非水系電解質は、例えば、リチウム含有電解質を含む非水系電解質、ポリマー電解質、ポリマーゲル電解質などの公知の非水系電解質である。ケース11は、蓋体12に封止される側が上側である。
【0031】
図2は、極板群20が備える各層の一部を切り欠いた層構成を示す平面図である。極板群20は、図2において上側がケース11の上側に対応する。
図2に示すように、極板群20は、正極板21と負極板22とがセパレータ23に挟まれた状態で、複数の正極板21と複数の負極板22とが積層された積層体である。
【0032】
正極板21は、正極基材21Aと、正極基材21Aの両面に位置する正極合材層21Bとを備える。正極板21は、正極基材21Aの上側に正極タブ21Cが延設されている。正極基材21Aは、金属箔の一例であり、正極合材層21Bは、活物質合材層の一例であり、正極タブ21Cは、リードの一例である。正極端子13(図1参照)は、集電板を介して、正極板21の正極タブ21Cに電気的に接続されている。
【0033】
負極板22は、負極基材22Aと、負極基材22Aの両面に位置する負極合材層22Bとを備える。負極板22は、負極基材22Aの上側に極板タブとしての負極タブ22Cが延設されている。負極基材22Aは、金属箔の一例であり、負極合材層22Bは、活物質合材層の一例であり、負極タブ22Cは、リードの一例である。負極端子14(図1参照)は、集電板を介して負極板22の負極タブ22Cに電気的に接続されている。
【0034】
極板群20は、例えば、複数の正極板21と複数の負極板22とが積層された積層体としてケース11に収容される。なお、本実施形態の二次電池10は、正極板21の面積が負極板22の面積よりも小さい。換言すると、負極板22の面積は、正極板21の面積よりも大きく、正極板21と負極板22との間の短絡を防止するセパレータ23の面積よりも小さい。
【0035】
正極基材21Aを構成する材料は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金を含む。正極合材層21Bを構成する材料は、正極活物質であるリチウム含有複合酸化物や、結着剤や、導電剤を含む。
【0036】
リチウム含有複合酸化物は、リチウムを吸蔵、及び、放出可能な材料である。リチウム含有複合酸化物は、リチウムと、リチウム以外の他の金属元素とを含む酸化物である。リチウム以外の他の金属元素は、例えば、ニッケル、コバルトからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0037】
導電剤は、正極活物質を含む粒子の間における電子の伝導路を拡張させて、正極合材層21Bにおける反応抵抗を低下させるカーボン材料などである。
結着剤は、正極活物質を含む複数の粒子を相互に結着する。
【0038】
負極基材22Aを構成する材料は、例えば、銅やニッケルを含む。負極合材層22Bを構成する材料は、負極活物質を含む粒子や、結着剤や、導電剤を含む。負極活物質は、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、例えば、黒鉛などの炭素、金属リチウム、リチウム合金である。結着剤は、例えば、SBRや変性SBRである。
【0039】
図2を参照して、極板群20の構造について説明する。
極板群20は、略直方体形状をしており、正極板21、負極板22、及びセパレータ23の平面に垂直な方向が積層方向である。また、極板群20は、上側に正極タブ21Cや負極タブ22Cを延出させており、上側の反対側が下側であり、積層方向及び上下方向に直交する方向が左右方向である。極板群20は、積層方向からみた外周において、上側に上側端20a、下側に下側端20b、右側に右側端20c、左側に左側端20dを有している。
【0040】
正極板21は、矩形の4側辺として、上側に第1側辺1a、下側に第2側辺1b、右側に第3側辺1c、及び左側に第4側辺1dをそれぞれ備える。正極板21の面積は、負極板22の面積よりもひと回り小さく、負極板22に積層されると、4側辺が負極板22の4側辺よりも内側に配置される。例えば、正極板21の長さL2は、負極板22の長さL1よりも短く(L2<L1)、正極板21の幅W1は、負極板22の幅W3よりも短い(W1<W3)。
【0041】
極板群20において、正極板21の第1側辺1aは、上側端20aに沿って延びており、正極タブ21Cが上方に延出されている。極板群20において、正極板21の第2側辺1bは下側端20bに、正極板21の第3側辺1cは右側端20cに、正極板21の第4側辺1dは左側端20dにそれぞれ沿って延びる側辺である。
【0042】
負極板22は、矩形の4側辺として、上側に第1側辺2a、下側に第2側辺2b、右側に第3側辺2c(図6参照)、及び左側に第4側辺2dをそれぞれ備える。
極板群20において、負極板22の第1側辺2aは上側端20aに沿って延びており、負極タブ22Cが上方に延出されている。極板群20において、負極板22の第2側辺2bは下側端20bに沿って延びる側辺である。極板群20において、負極板22の第3側辺2c(図6参照)は右側端20cに、負極板22の第4側辺2dは左側端20dにそれぞれ並び揃う側辺である。
【0043】
極板群20は、右側端20c及び左側端20dに、負極板22の第3及び第4側辺2c,2dがそれぞれ並び揃うことで、外形が小さくなってケース11における負極板22及び正極板21の充填率が高められる。
【0044】
セパレータ23は、矩形の4側辺として、上側に第1側辺3a、下側に第2側辺3b、右側に第3側辺3c、及び左側に第4側辺3dを備える。極板群20において、セパレータ23の第1側辺3aは、負極板22の第1側辺2aよりも上方に延出され、セパレータ23の第2側辺3bは、負極板22の第2側辺2bよりも下方に延出される。また、セパレータ23の第3側辺3cは、負極板22の第3側辺2c(図6参照)と積層方向に揃っている。セパレータ23の第4側辺3dは、負極板22の第4側辺2dと積層方向に揃っている。例えば、セパレータ23と負極板22とは同じ長さL1である一方で、セパレータ23の幅W2は、負極板22の幅W3よりも長い(W2>W3)。
【0045】
つまり、セパレータ23の第1側辺3aは、正極タブ21C及び負極タブ22Cに対応しているとともに、正極板21の第1側辺1a及び負極板22の第1側辺2aよりも延出されている。また、セパレータ23は、負極板22よりも延出されている第1側辺3aを含む第1延出部31aが、負極板22を挟んで対向するセパレータ23同士で接着されている第1接着部32aを有している。
【0046】
極板群20の上側端20aは、先端が集められる正極タブ21Cの基端で負極板22を挟む構造になり、先端が集められる負極タブ22Cの基端で正極板21を挟む構造になるため、正極板21と負極板22との間の離間距離が短くなって正負極の短絡リスクが高まるおそれがある。この点、セパレータ23は、負極板22及び正極板21よりも大きく、かつ、負極板22の第1側辺2aよりも延設されていることで正負極の短絡リスクを低減させる。
【0047】
また、セパレータ23の第2側辺3bは、正極板21の第2側辺1b及び負極板22の第2側辺2bよりも延出されている。また、セパレータ23は、負極板22よりも延出されている第2側辺3bを含む第2延出部31bが、負極板22を挟んで対向するセパレータ23同士で接着されている第2接着部32bを有している。
【0048】
極板群20の右側端20cは、負極板22の第3側辺2c(図6参照)及びセパレータ23の第3側辺3cが揃っている。また、極板群20の左側端20dは、負極板22の第4側辺2d、及びセパレータ23の第4側辺3dが揃っている。
【0049】
セパレータ23は、接着剤で負極板22に固定される。接着剤は、特に限定されないが、非水系電解質に必要とはされない物質であり、かつ、電気化学的に安定である物質であることが好ましい。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。セパレータ23は、上記接着剤が加圧及び加熱によって生じた接着機能によって接着固定された負極板22に対して相対的な位置ずれを生じない。接着剤によればセパレータ23の負極板22への固定が容易に行える。
【0050】
図3を併せて参照して、二次電池の製造工程について説明する。
二次電池の製造工程では、負極板22が切り出される負極シート220が巻き出される負極板ロール10Rが準備される。また、負極板22の両面に配置される各セパレータ23を切り出すセパレータシート230を巻き出すセパレータロール12Rがそれぞれ準備される。
【0051】
負極シート220は、長尺方向に沿う両側の一方に負極タブ22Cを有している。負極シート220は、両側のうちの負極タブ22Cのある一方側辺が負極板22の第1側辺2aに対応し、負極タブ22Cのない他方側辺が負極板22の第2側辺2bに対応する。
【0052】
セパレータシート230は、負極シート220の両面に配置され、接着される。セパレータシート230の長尺方向に直交する幅方向の幅は、負極シート220の幅よりも広い。セパレータシート230は、負極シート220の一方側辺から延出した第1延出部31aと、負極シート220の他方側辺から延出された第2延出部31bとが設けられるように負極シート220に重ね合わされる。
【0053】
負極シート220と、その両面に配置されたセパレータシート230とからなる3層の積層体は、貼り合わせロール40によって押圧及び加熱されることによって、セパレータシート230の接着剤によって接着される。
【0054】
貼り合わせロール40は、第1ロール41と第2ロール42との間に3層の積層体を挟み込むことで、セパレータシート230を対向する負極シート220に接着するとともに、第1延出部31a及び第2延出部31bを対向するセパレータシート230に接着させる。
【0055】
図4に示すように、貼り合わせロール40は、中央部40aと、中央部40aの両端に設けられた端部40bとを有している。中央部40aは、3層の積層体を押圧する。端部40bは、第1延出部31a又は第2延出部31bを押圧する。
【0056】
図4及び図5を参照して、貼り合わせロール40は、中央部40aに挟み込んだ3層の積層体に接着可能な圧力と熱とを加え、端部40bに挟み込んだ対向する第1延出部31a又は第2延出部31bに接着可能な圧力と熱とを加える。一例として、貼り合わせロール40は、中央部40aが3層の積層体に加える圧力や熱と、端部40bが第1延出部31a又は第2延出部31bに加える圧力や熱とが略同等になるように、中央部40aが端部40bに対して負極シート220の厚さに対応する深さだけ凹んでいる。この場合、貼り合わせロール40は、ロール表面が、金属、硬質のゴムや樹脂等、軟質のシリコーン、ゴムや樹脂等とすることができる。または一例として、貼り合わせロール40は、弾性を有する表面を有し、3層の積層体の厚さと、第1延出部31aや第2延出部31bとの厚さとの相違を変形によって吸収して加える圧力や熱が略均等化されるようにしてもよい。この場合、貼り合わせロール40は、ロール表面が、軟質のシリコーン、ゴムや樹脂等であることが好ましい。
【0057】
図5(a)に示すように、貼り合わせロール40は、中央部40aで、セパレータシート230と負極シート220とをセパレータシート230に含まれるPVDF等の接着剤により接着させる。
【0058】
図5(a)に示すように、貼り合わせロール40は、端部40bで、対向する2つのセパレータシート230を各セパレータシート230に含まれるPVDF等の接着剤により接着させる(接着ステップ)。つまり、セパレータシート230は、負極シート220の一方側辺を各第1延出部31aが接着された第1接着部32aで封止するとともに、負極シート220の他方側辺を各第2延出部31bが接着された第2接着部32bで封止する。
【0059】
また、図4を参照して、貼り合わせロール40は、各端部40bにそれぞれ図示しないカッター部を有している。第1延出部31aに対応するカッター部は、2つのセパレータシート230の第1延出部31aが相互に接着された第1接着部32aの長手方向の一部に幅方向に対する凹状の第1凹部33aを形成する(凹部形成ステップ)。第1凹部33aは、第1接着部32aの端部から負極シート220の方向に向かう凹部であって、長手方向に所定の開口幅を有している。
【0060】
そして、図5(b)に示すように、第1凹部33aは、負極シート220に近い位置、ここでは、負極シート220の負極合材層22Bに近い位置まで凹んでいる。
同様に、第2延出部31bに対応するカッター部は、2つのセパレータシート230の第2延出部31bが相互に接着された第2接着部32bの長手方向の一部に幅方向に対する凹状の第2凹部33bを形成する(凹部形成ステップ)。第2凹部33bは、第2接着部32bの端部から負極シート220の方向に向かう凹部であって、長手方向に所定の開口幅を有している。
【0061】
そして、図5(b)に示すように、第2凹部33bは、負極シート220に近い位置、ここでは、負極シート220の負極合材層22Bに近い位置まで凹んでいる。
第1凹部33a及び第2凹部33bは、負極シート220に近い位置まで凹むことで、位置合わせのとき、負極板22との間に挟まれるセパレータ23の量を少なくする。
【0062】
第1凹部33a及び第2凹部33bは、負極板22において長手方向の中央付近に配置されているとともに、幅方向において対向する位置に設けられている。よって、極板群20の位置合わせにおいて、第1凹部33a及び第2凹部33bを押圧しても、負極板22を旋回させる力の発生が抑制されるため、位置合わせを好適に行うことができる。
【0063】
そして、両面にセパレータシート230の接着された負極シート220は、長手方向に所定の間隔の長さL1で幅方向にセパレータシート230とともに切断されて、両面にセパレータ23の接着された負極板22(負極単板24)が切り出される(切断ステップ)。
【0064】
つまり、負極板22は、第1側辺2aに負極タブ22Cが設けられるとともに、第1側辺2aと第2側辺2bとがセパレータ23で封止される。負極板22は、セパレータ23による封止によって、第1側辺2aにある負極タブ22Cと正極板21との短絡が抑制される。また、負極板22は、セパレータ23による封止によって、第1側辺2a及び第2側辺2bに生じるおそれのある電極合材の脱落や異物侵入が抑制される。これにより、負極板22がセパレータ23を介して積層される極板群20の信頼性を高めることができる。
【0065】
これにより、セパレータ23の接着された負極板22が形成される。
その後、セパレータ23の接着された負極板22と、別に作成された正極板21とが交互に積層される。このとき、正極板21と負極板22とは、極板群20の上側において左右の一方に正極タブ21Cが積層され、他方に負極タブ22Cが積層されるように、積層される。
【0066】
図6に示すように、セパレータ23の接着された負極板22と正極板21とが積層されて極板群20が製造される(積層ステップ)。このとき、セパレータ23と負極板22との間には相対位置のずれは生じない。一方、負極板22と正極板21とは接着されていないため、相対位置がずれているおそれがあるため、位置合わせを行う。位置合わせでは、負極板22の第1凹部33a及び第2凹部33bがそれぞれ調整装置50の第1部材50A及び第2部材50Bで押圧されるとともに、負極板22の第3側辺2c及び第4側辺2dが調整装置50の第3部材50C及び第4部材50Dで押圧される。この位置合わせによって、負極板22の周囲から正極板21がはみ出さないように位置調整が行われる。
【0067】
なお、極板群20においてセパレータ23が一番大きいため、負極板22と正極板21との位置合わせで、調整装置50の第1部材50Aや第2部材50Bと負極板22との間にセパレータ23が挟まると、位置合わせの精度が低下するおそれがある。そこで、負極板22よりも突出しているセパレータ23に形成した第1凹部33aや第2凹部33bを利用して位置合わせを行うことで、セパレータ23の挟み込みによる精度低下が軽減されて、負極板22及び正極板21の積層を容易、かつ高い精度で行うことができるようになる。よって、負極板22及び正極板21がセパレータ23を介して積層される極板群20の信頼性が高められる。
【0068】
なお、セパレータ23の接着された負極板22は、上述の手順とは相違する製造方法でも製造することができる。
例えば、図7に示すように、貼り合わせロール40の端部にカッター部を設けない一方で、独立したカッターロール45を設けるようにしてもよい。
【0069】
図7(a)に示すように、接着ステップでは、貼り合わせロール40は、端部にはカッター部を備えず、セパレータシート230に第1接着部32a及び第2接着部32bを形成する。
【0070】
続いて、図7(b)に示すように、凹部形成ステップでは、カッターロール45の端部に設けたカッター部で第1凹部33a及び第2凹部33bを形成するようにしてもよい。
また例えば、図8に示すように、貼り合わせロール40の端部40bにはカッター部を設けず、セパレータシート230の貼り付けられた負極シート220から負極板22を打ち抜いてもよい。
【0071】
図8(a)に示すように、接着ステップでは、貼り合わせロール40は、セパレータシート230に第1接着部32a及び第2接着部32bを形成する。
続いて、図8(b)に示すように、凹部形成ステップ及び切断ステップでは、3層の積層体に規定された打ち抜き線48に沿って、セパレータシート230の貼り付けられた負極シート220を図示しないプレス装置で打ち抜くことにより、両面にセパレータ23の接着された負極板22を製造するようにしてもよい。
【0072】
なお、リチウムイオン二次電池は、負極板22の負極合材層22Bの厚さが比較的薄い。このため、貼り合わせロール40は、中央部40aと端部40bとが同様の圧力を調整することができるようにするための調整の手間が少なくて済む。よって、二次電池の製造方法は、二次電池がリチウムイオン二次電池であると、より好ましい。
【0073】
本実施形態の効果について説明する。
(1)負極板22の負極タブ22Cが設けられる第1側辺2aと、第1側辺2aとは反対側の第2側辺2bとが接着されたセパレータ23により封止される。このため、第1側辺2aにある負極タブ22Cが正極板21と短絡することが抑制されるとともに、第1側辺2a及び第2側辺2bに生じるおそれのある電極合材の脱落や異物侵入が抑制される。よって、正極板21及び負極板22がセパレータ23を介して積層される極板群20の信頼性を高めることができる。
【0074】
また、正極板21及び負極板22よりも突出しているセパレータ23に形成された第1凹部33aや第2凹部33bが極板の積層を容易かつ精度を高めることができる。これによっても、正極板21及び負極板22がセパレータ23を介して積層される極板群20の信頼性を高めることができる。
【0075】
(2)第1凹部33a及び第2凹部33bは、負極板22に近い位置まで凹んでいることから、第1凹部33a及び第2凹部33bの部分では負極板22の位置が正確に分かるので積層時の位置決め精度が高められるようになる。
【0076】
(3)第1側辺2a及び第2側辺2bを第1凹部33aや第2凹部33bを利用して位置合わせし、第1側辺2aと第2側辺と2bとの間にある側辺をセパレータ23と揃っている負極板22で位置合わせすることにより、負極板22の四方の位置合わせが好適に行える。
【0077】
(4)セパレータ23が負極板22に接着されていることから負極板22の位置合わせが行いやすく、また、負極板22の位置ずれが生じづらくなる。
(5)セパレータ23が正極板21よりも大きい負極板22に接着されるため、セパレータ23の第1及び第2接着部32a,32bの延出長が抑えられる。また、正極板21よりも外に出る負極板22を押圧することで位置合わせを適切に行える。
【0078】
(6)負極タブ22Cを有する負極シート220の第1側辺2a及び第2側辺2bを封止するようにセパレータ23同士を接着させることが素早く行えるようになる。
また、凹部形成ステップで位置合わせ用の第1凹部33a及び第2凹部33bを作成することができる。
【0079】
(7)正極板21及び負極板22を積層させ、負極板22の第1凹部33a及び第2凹部33bを調整装置50で押圧することで位置合わせを行うことができる。
(第2の実施形態)
図9を参照して、二次電池及び二次電池の製造方法の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、負極シート220の切断位置CLに未塗工部22Dを設けた点が、第1の実施形態の構成と相違する。本実施形態では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、同様な構成についてはその説明を割愛する。
【0080】
負極シート220は、長尺方向に対して所定の間隔(長さL1)毎に負極タブ22Cを有している。また、負極シート220は、所定の間隔(長さL1)毎に負極合材層22Bと未塗工部22Dとが繰り返されている。未塗工部22Dは、負極合材が塗布されておらず、負極基材22Aが露出されている部分であり、負極シート220が切断されたとき、負極板22の第3側辺2cと第4側辺2dとに対応する位置に設けられている。未塗工部22Dは、長手方向に長さL11を有しており、長さL11の略中央に切断される所定の位置としての切断位置CLを有している。
【0081】
なお、未塗工部22Dは、負極合材を塗工しない間欠塗工や、未塗工部22Dの位置に塗工された負極合材を除去可能なマスキングやレーザ照射などの1又は複数の方法により、負極合材の間に負極基材22Aの露出した部分として設けられる。
【0082】
貼り付けロールは、セパレータシート230に第1接着部32a及び第2接着部32bを形成する。第1接着部32a及び第2接着部32bは、表側に配置されたセパレータシート230の第1延出部31a及び第2延出部31bと、裏側に配置されたセパレータシート230の第1延出部31a及び第2延出部31bとが相互に接着されて形成された部分である。よって、負極合材層22Bは、セパレータシート230に封止される。
【0083】
また、貼り付けロールは、セパレータシート230を負極合材層22Bに接着するとともに、未塗工部22Dに接着する。未塗工部22Dでは、表側に配置されたセパレータシート230は負極基材22Aの表側、裏側に配置されたセパレータシート230は負極基材22Aの裏側に接着される。よって、表側に配置されたセパレータシート230は、負極基材22Aの表側との間に表側の負極合材層22Bを封止する。また、裏側に配置されたセパレータシート230は、負極基材22Aの裏側との間に裏側の負極合材層22Bを封止する。
【0084】
このとき、貼り合わせロールは、第1接着部32a及び第2接着部32bを形成するとともに、切断位置CLに対応する部分でセパレータシート230を負極基材22Aに溶着させられる構造を有している。例えば、貼り合わせロールは、負極合材層22Bの厚さによる影響を緩和する弾性表面を有していてもよい。また、貼り合わせロールは、負極合材層22Bに対応する部分が凹状である、換言すると、切断位置CLに対応する部分が凸状であるとしてもよい。
【0085】
そして、このセパレータシート230が両面に配置された負極シート220が、未塗工部22Dの切断位置CLで切断されて、セパレータ23が両面に接着された負極板22が得られる。
【0086】
これにより、負極板22は、接着された表裏面のセパレータ23同士による封止によって、極板の一対の辺を構成する第1側辺2a及び第2側辺2bに生じるおそれのある電極合材の脱落や異物侵入が抑制される。また、負極板22は、表裏各面におけるセパレータ23と未塗工部22Dとの接着による封止によって、極板の他対の辺を構成する第3側辺2c及び第4側辺2dに生じるおそれのある電極合材の脱落や異物侵入が抑制される。これにより、負極板22は、負極合材層22Bの四方が封止されて、極板群20における短絡等の発生が抑制されるようになる。
【0087】
これにより、負極板22がセパレータ23を介して積層される極板群20の信頼性を高めることができる。
また、未塗工部22Dに切断位置CLが設けられるため、負極板22を切り出すとき、セパレータ23から負極合材層22Bに押圧等の負荷がかからないため、変形や離脱が生じない。
【0088】
従来、図10に示すように、負極合材層22Bのある部分を切断刃CTで切断すると、セパレータ23は弾性があるため、切断刃CTの接触位置ですぐに切断されるのではなく、負極基材22Aに到達する程度に押し込まれて負極合材層22Bを押圧変形させる。このとき、押圧変形された負極合材層22Bの端部は強度が低下するおそれがある。また、貼り付け時や切断時に多少引き伸ばされたセパレータ23は、切断後、弾性が戻る方向TBや熱収縮により、負極合材層22Bの端部から剥がれたり、貼り付け強度が低下したりするおそれがある。つまり、負極合材層22Bの端部は、セパレータが収縮して電極合材から離脱するおそれがある。
【0089】
この点、本実施形態では、貼り付け時や切断時に引き伸ばされたセパレータ23は、切断後に自由端となって弾性の戻りや熱収縮するが、負極合材よりも表面が滑らかで強く接着することのできる負極基材22Aに接着されている。セパレータ23が負極基材22Aに接着されていることで、セパレータ23が収縮して負極合材層22Bから剥がれる等の脱離の生じるおそれが低い。
【0090】
本実施形態は、第1の実施形態の効果(1)~(7)に加えて、以下の効果を奏する。
(8)負極板22の一対の側辺(第1側辺2aと第2側辺2b)がセパレータ23同士の接着により封止され、負極板22の他対の側辺(第3側辺2cと第4側辺2d)がセパレータ23と負極板22の未塗工部22Dの接着により封止される。これにより、極板群20における短絡等の発生が抑制されるようになる。
【0091】
また、負極板22の他対の側辺(第3側辺2cと第4側辺2d)は、セパレータ23が未塗工部22Dに接着されるため、セパレータ23が伸縮して電極合材から離脱を生じるおそれが低下する。これによっても、極板群20における短絡等の発生が抑制されるようになる。
【0092】
(9)負極板22の負極タブ22Cが設けられる第1側辺2aと、第1側辺2aとは反対側の第2側辺2bとが接着されたセパレータ23により封止されるとともに、第3側辺2c及び第4側辺2dがセパレータ23と負極板22の未塗工部22Dとの接着により封止される。第1側辺2aにある負極タブ22Cが正極板21と短絡することが抑制されるとともに、第1~第4側辺2a~2dからの電極合材の脱落や異物侵入が抑制される。よって、正極板21及び負極板22がセパレータ23を介して積層される極板群20の信頼性を高めることができる。
【0093】
(10)負極シート220の未塗工部22Dにセパレータ23を接着させるとともに、その未塗工部22Dの切断位置CLで切断することができるため、切断時の押圧で電極合材が離脱したり、セパレータ23が伸縮して電極合材から離脱したりするおそれが抑制される。
【0094】
(11)負極板22の第1凹部33a及び第2凹部33bと、未塗工部22Dとの4箇所を押圧することでより好適に位置合わせを行うことができる。なお、未塗工部22Dに接着されたセパレータの剥がれの発生が低いことから短絡等の発生が抑制される。
【0095】
(変形例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0096】
・上記第2の実施形態では、負極シート220が幅方向に切断される場合について例示した。しかしこれに限らず、幅広の負極シートを長尺方向及び幅方向に切断してもよい。
図11に示すように、セパレータシート231が貼り付けられ、長尺方向に交差する幅方向両端に負極タブ22Cの設けられた負極シート221を幅方向の切断位置CL1で切断するとともに幅方向中央にある長尺方向の切断位置CL2で切断するようにしてもよい。このとき、幅方向の切断位置CL1に未塗工部22Dを設けるとともに、長尺方向の切断位置CL2に未塗工部22Eを設けてもよい。これにより、大板を幅方向及び長尺方向の2方向に切断してセパレータ23の貼り合わされた負極板22を得ることができる。このとき、セパレータ23が未塗工部22D,22Eに接着されるため、セパレータ23が伸縮して電極合材から離脱するおそれが低下する。よって、極板群20における短絡等の発生が抑制されるようになる。
【0097】
・上記各実施形態では、正極板21、負極板22、及びセパレータ23が矩形状である場合について例示した。しかしこれに限らず、正極板、負極板、及びセパレータは、二次電池の極板を構成することができる形状であれば、5角形以上の多角形であったり、曲線部分を有する形状であったりしてもよい。
【0098】
・上記各実施形態では、負極タブ22Cが極板群20の上側にある場合について例示した。しかしこれに限らず、負極タブが極板群の下側、右側、又は左側になってもよい。
・上記各実施形態では、負極タブ22Cと正極タブ21Cとが極板群20の同じ方向に延出される場合について例示した。しかしこれに限らず、負極タブと正極タブとが極板群の相違する方向に延出されてもよい。
【0099】
・上記各実施形態では、極板タブが負極タブ22Cである場合について例示したが、これに限らず、極板タブが正極タブであってもよい。
・上記各実施形態では、負極板22が正極板21よりも大きい場合について例示したが、これに限らず、正極板が負極板よりも大きくてもよい。この場合、正極板に凹部を形成することで積層した極板を適切に位置合わせすることができるようになる。
【0100】
・極板合材層は、正極基材21Aや負極基材22Aの少なくとも一つの面に位置すればよく、金属箔状を有した基材の片面のみに位置することも可能である。
・負極タブ22Cや正極タブ21Cの形状は、非水系電池の形状などに応じて適宜設定されるものであり、他の形状に変更可能である。
【0101】
・二次電池10は、電気自動車やハイブリッド自動車、又は、ガソリン自動車やディーゼル自動車等の車両やその他の移動体に用いられてもよいし、固定設置されてもよい。
・上記各実施形態では、二次電池10がリチウムイオン二次電池である場合について例示した。しかし、これに限らず、二次電池は、その他の非水系電解質の二次電池であってもよいし、ニッケル水素二次電池等の水系電解質の二次電池であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
10…二次電池、10R…負極板ロール、11…ケース、12…蓋体、12R…セパレータロール、13…正極端子、14…負極端子、20…極板群、20a…上側端、20b…下側端、20c…右側端、20d…左側端、21…正極板、21A…正極基材、21B…正極合材層、21C…正極タブ、22…負極板、22A…負極基材、22B…負極合材層、22C…負極タブ、22D,22E…未塗工部、23…セパレータ、31a…第1延出部、31b…第2延出部、32a…第1接着部、32b…第2接着部、33a…第1凹部、33b…第2凹部、40…貼り合わせロール、40a…中央部、40b…端部、41…第1ロール、42…第2ロール、45…カッターロール、50…調整装置、50A…第1部材、50B…第2部材、50C…第3部材、50D…第4部材、220,221…負極シート、230,231…セパレータシート、CT…切断刃。
図1
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図11