(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】車両用シートの駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/16 20060101AFI20220830BHJP
F16F 9/06 20060101ALI20220830BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20220830BHJP
F16F 9/34 20060101ALI20220830BHJP
F16F 9/44 20060101ALI20220830BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B60N2/16
F16F9/06
F16F9/32 H
F16F9/32 P
F16F9/32 T
F16F9/34
F16F9/44
B60N2/22
(21)【出願番号】P 2019085073
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000204240
【氏名又は名称】株式会社TAIYO
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】菅原 隆
(72)【発明者】
【氏名】中古 弘
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-024826(JP,A)
【文献】特開平03-079827(JP,A)
【文献】実開平03-089237(JP,U)
【文献】特開昭61-098634(JP,A)
【文献】特開昭57-094149(JP,A)
【文献】特開2012-023974(JP,A)
【文献】特公昭49-047372(JP,B2)
【文献】米国特許第04592590(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/16
F16F 9/06
F16F 9/32
F16F 9/34
F16F 9/44
B60N 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに接続されたピストンロッドおよびこのピストンロッドに設けられたピストンが嵌合するシリンダ本体を有し、前記シリンダ本体内が前記ピストンによってヘッドカバー側の油室とロッドカバー側の大気圧室とに分けられた油圧シリンダと、
前記油室に油量制御装置を介して接続されて作動油が溜められる油貯留部を有しかつ前記油貯留部内の作動油を押圧する空気が溜められる空気貯留部を有する空油圧変換器と、
前記空気貯留部と空気圧源との間に設けられ、空気圧源から圧力空気が前記空気貯留部に供給される供給形態または前記空気貯留部の空気を排気可能な排気形態が採られる切替弁とを備え、
前記油量制御装置は、前記油室と前記油貯留部との間の油通路を開閉する開閉弁
と、前記開閉弁から前記油貯留部に向けて流れる作動油の流量を変える可変絞り弁とを有し、
前記開閉弁は、
前記油貯留部側から前記油室側にのみ作動油を通す逆止弁部と、
前記逆止弁部を作動油が通過するように操作する操作部とを備え
、
前記可変絞り弁は、前記開閉弁側の油圧によって押されることにより前記流量が減少する方向にばね部材のばね力に抗して移動する弁本体を備えていることを特徴とする車両用シートの駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用シートの駆動装置において、
前記油圧シリンダは、前記シリンダ本体が上下方向に延びるとともに前記ピストンロッドが前記シリンダ本体から上方に突出する姿勢で前記車両用シートに接続され、
前記油貯留部と前記空気貯留部は、前記シリンダ本体を囲む環状に形成されているとともに、前記油貯留部が前記空気貯留部の下に位置するように形成され、
前記油圧シリンダの下端部には、上下方向に延びて上端が前記油室に連通されたシリンダ孔と、このシリンダ孔内に移動自在に嵌合したフリーピストンとを有する副シリンダが設けられ、
前記フリーピストンは、前記シリンダ孔内の上部に形成されて作動油で満たされた下部油室と、シリンダ孔内の下部に形成されて加圧空気が充填された空気圧室とを仕切っていることを特徴とする車両用シートの駆動装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両用シートの駆動装置において、
前記可変絞り弁は、
前記弁本体によって作動油の前記流量が変えられる絞り部と、
前記油貯留部側から前記開閉弁側にのみ作動油を通す逆止弁部とを並列に備えていることを特徴とする車両用シートの駆動装置。
【請求項4】
請求項1ないし
請求項3のうちいずれか一つに記載の車両用シートの駆動装置において、
前記空油圧変換器は、
前記油圧シリンダの前記シリンダ本体を囲む筒状の筒壁部と、
前記油圧シリンダのロッドカバーと一体に形成されて前記筒壁部の一端を閉塞する第1の蓋部と、
前記油圧シリンダのヘッドカバーと一体に形成されて前記筒壁部の他端を閉塞する第2の蓋部とを含む筐体の中に形成され、
前記油貯留部と前記空気貯留部は、前記シリンダ本体と前記筒壁部との間に形成され、
前記油量制御装置に含まれる弁部品と、前記切替弁とは、それぞれ前記筐体に取付けられ、
前記弁部品どうしの間、前記弁部品と前記油室との間、前記弁部品と前記油貯留部との間で作動油が流れる油通路と、
前記切替弁と前記空気貯留部との間で空気が流れる空気通路とは、それぞれ前記筐体に形成されていることを特徴とする車両用シートの駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの背もたれを傾斜させたり起立させるために用いる車両用シートの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両に装備される従来の車両用シートとしては、背もたれが後方に傾斜するリクライニング形態と、背もたれが起立する起立形態とを採ることができるものがある。また、この車両用シートは、リクライニング形態から起立形態に戻すダンパーと、背もたれの角度を任意の位置に保持するロック機構とを有する駆動装置を備えている。ダンパーは、エアシリンダあるいはガススプリングによって構成されている。ロック機構は、シリンダを用いて構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の車両用シートの駆動装置では、駆動源がエアシリンダあるいはガススプリングであるから、微小な角度調整を行うことが難しい。このため、操作時の制御性が低いという問題があった。また、背もたれを正確な位置に停止させるためには、ロック機構として油圧回路を用いたものを使用しなければならない。この構成を採ると、製造費用が著しく高くなってしまう。
【0004】
本発明の目的は、制御性が高く、しかも安価な車両用シートの駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために本発明に係る車両用シートの駆動装置は、車両用シートに接続されたピストンロッドおよびこのピストンロッドに設けられたピストンが嵌合するシリンダ本体を有し、前記シリンダ本体内が前記ピストンによってヘッドカバー側の油室とロッドカバー側の大気圧室とに分けられた油圧シリンダと、前記油室に油量制御装置を介して接続されて作動油が溜められる油貯留部を有しかつ前記油貯留部内の作動油を押圧する空気が溜められる空気貯留部を有する空油圧変換器と、前記空気貯留部と空気圧源との間に設けられ、空気圧源から圧力空気が前記空気貯留部に供給される供給形態または前記空気貯留部の空気を排気可能な排気形態が採られる切替弁とを備え、前記油量制御装置は、前記油室と前記油貯留部との間の油通路を開閉する開閉弁を有し、前記開閉弁は、前記油貯留部側から前記油室側にのみ作動油を通す逆止弁部と、前記逆止弁部を作動油が通過するように操作する操作部とを備えているものである。
【0006】
本発明は、前記車両用シートの駆動装置において、前記油圧シリンダは、前記シリンダ本体が上下方向に延びるとともに前記ピストンロッドが前記シリンダ本体から上方に突出する姿勢で前記車両用シートに接続され、前記油貯留部と前記空気貯留部は、前記シリンダ本体を囲む環状に形成されているとともに、前記油貯留部が前記空気貯留部の下に位置するように形成され、前記油圧シリンダの下端部には、上下方向に延びて上端が前記油室に連通されたシリンダ孔と、このシリンダ孔内に移動自在に嵌合したフリーピストンとを有する副シリンダが設けられ、前記フリーピストンは、前記シリンダ孔内の上部に形成されて作動油で満たされた下部油室と、シリンダ孔内の下部に形成されて加圧空気が充填された空気圧室とを仕切っていてもよい。
【0007】
本発明は、前記車両用シートの駆動装置において、前記油量制御装置は、前記開閉弁から前記油貯留部に向けて流れる作動油の流量を変える可変絞り弁をさらに有し、前記可変絞り弁は、前記開閉弁側の油圧によって押されることにより前記流量が減少する方向にばね部材のばね力に抗して移動する弁本体を備えていてもよい。
【0008】
本発明は、前記車両用シートの駆動装置において、前記可変絞り弁は、前記弁本体によって作動油の前記流量が変えられる絞り部と、前記油貯留部側から前記開閉弁側にのみ作動油を通す逆止弁部とを並列に備えていてもよい。
【0009】
本発明は、前記車両用シートの駆動装置において、前記空油圧変換器は、前記油圧シリンダの前記シリンダ本体を囲む筒状の筒壁部と、前記油圧シリンダのロッドカバーと一体に形成されて前記筒壁部の一端を閉塞する第1の蓋部と、前記油圧シリンダのヘッドカバーと一体に形成されて前記筒壁部の他端を閉塞する第2の蓋部とを含む筐体の中に形成され、前記油貯留部と前記空気貯留部は、前記シリンダ本体と前記筒壁部との間に形成され、前記油量制御装置に含まれる弁部品と、前記切替弁とは、それぞれ前記筐体に取付けられ、前記弁部品どうしの間、前記弁部品と前記油室との間、前記弁部品と前記油貯留部との間で作動油が流れる油通路と、前記切替弁と前記空気貯留部との間で空気が流れる空気通路とは、それぞれ前記筐体に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、切替弁を供給形態とすることにより油貯留部の油圧が上昇し、作動油が油貯留部から開閉弁の逆止弁部を経て油圧シリンダの油室に向かうように流れる。油室の作動油の量が増えることによりピストンロッドがシリンダ本体から突出し、シートに駆動力が伝達される。このようにシートに駆動力が伝達されることにより、例えばシートの背もたれが起立した起立形態とすることができる。切替弁が供給形態から排気形態に切替えられると、油貯留部の油圧が低下し、開閉弁の逆止弁部が閉じ、これと同期してピストンロッドが停止する。
【0011】
一方、切替弁が排気形態であるときに乗員がシートを介して油圧シリンダのピストンロッドを押すことにより、油圧シリンダの油室の油圧が上昇する。このとき、開閉弁の操作部で逆止弁部を作動油が通過するように操作することによって、作動油が開閉弁の逆止弁部を通過し、油室から油貯留部に向かうように流れる。油室内の作動油が減少することにより、例えばシートの背もたれが傾斜したリクライニング形態とすることができる。開閉弁の操作部による逆止弁部への操作を止めることにより、逆止弁部が閉じ、これと同期してピストンロッドが停止する。
【0012】
このため、シートの形態を起立形態とリクライニング形態との間で変える動作を一つのシリンダを使用して油圧によって制御することができるから、シートの形態変更に伴う移動、停止が応答性よく行われる。したがって、本発明によれば、制御性が高くかつ安価な車両用シートの駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る車両用シートの駆動装置の構成を示す回路図である。
【
図2】シリンダユニットの構成を示す斜視図である。
【
図3】シリンダユニットの構成を示す斜視図である。
【
図7】排気形態にあるメカニカルバルブの断面図である。
【
図8】供給形態にあるメカニカルバルブの断面図である。
【
図9】メカニカルバルブのハウジングの断面図である。
【
図11】可変スロットルバルブの開いた状態にある逆止弁部の断面図である。
【
図12】可変スロットルバルブのハウジングの断面図である。
【
図13】可変スロットルバルブの絞り部の断面図である。
【
図14】可変スロットルバルブの絞り部の一部を拡大して示す断面図である。
【
図15】閉状態にあるチェックメカニカルバルブの断面図である。
【
図16】開状態にあるチェックメカニカルバルブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る車両用シートの駆動装置の一実施の形態を
図1~
図16を参照して詳細に説明する。
図1に示す車両用シートの駆動装置1は、車両用シート2(以下、単にシート2という)の高さや背もたれ2aの傾斜角などを変えるためのもので、シート2の下方に位置するシリンダユニット3に複数の機能部品を取付けて構成されている。複数の機能部品とは、詳細は後述するが、シリンダユニット3の前面3a(
図1においては右側の側面)に取付けられたメカニカルバルブ4と、可変スロットルバルブ5と、シリンダユニット3の後面3bに取付けられたチェックメカニカルバルブ6である。
【0015】
(シリンダユニット3の説明)
シリンダユニット3は、シート2に接続されたピストンロッド11を有する油圧シリンダ12と、この油圧シリンダ12の油室13に連通された下部油室14を有する副シリンダ15と、油圧シリンダ12と水平方向に並ぶように位置する空油圧変換器16などによって構成されている。
【0016】
シート2は、リクライニング機構7を介して車両の床(図示せず)に設置されている。リクライニング機構7は、座面17が前側に移動しつつ高くなるとともに背もたれ2aが起立し、座面17が後側に移動しつつ背もたれ2aが傾斜する構成のものが用いられている。ピストンロッド11の上端は、シート2を駆動できるようにリクライニング機構7に連結されている。シリンダユニット3は、車両の床に揺動可能に支持されており、シート2の挙動に追従して揺動する。
【0017】
この実施の形態によるピストンロッド11は、乗員(図示せず)の体重や乗員が背もたれ2aを押す力などによって上方から押されて下がり、空油圧変換器16により空気圧から変換された油圧によって上昇する。
この実施の形態によるシリンダユニット3は、角柱状の筐体21(
図2および
図3参照)の中に全ての部品を収容して構成されている。筐体21の一端部にはピストンロッド11が突出している。このシリンダユニット3は、ピストンロッド11が上下方向に延びて筐体21の上面から突出する姿勢で使用される。
【0018】
以下において、このシリンダユニット3の構成を説明するうえで方向を示すにあたっては、便宜上、
図2において斜め左下方を指向する面をシリンダユニット3の前面3a(筐体21の前面21a)とし、この前面3a,21aと向き合うようにシリンダユニット3を見た状態で上側をシリンダユニット3の上側、右側をシリンダユニット3の右側として説明する。
筐体21の前面21aには、
図2に示すように、後述するメカニカルバルブ4と可変スロットルバルブ5とが取付けられている。筐体21の後面21bには、
図3に示すように、後述するチェックメカニカルバルブ6が取付けられている。
【0019】
筐体21は、
図6に示すように、筐体21内の中心部に位置する油圧シリンダ12を囲む角筒状の筒壁22を有している。この筒壁22の上端の開口は、油圧シリンダ12のロッドカバー23によって閉塞されている。筒壁22の下端の開口は、油圧シリンダ12のヘッドカバー24によって閉塞されている。筐体21は、これらの筒壁22と、ロッドカバー23と、ヘッドカバー24とによって構成されている。後述する可変スロットルバルブ5はヘッドカバー24の前面24a(
図6おいては右側面)に取付けられ、後述するチェックメカニカルバルブ6はヘッドカバー24の後面24bに取付けられている。
【0020】
油圧シリンダ12は、シート2に上端部が接続されたピストンロッド11と、このピストンロッド11の下端部に設けられたピストン25と、このピストン25が上下方向に移動自在に嵌合した円筒からなるシリンダ本体26と、ピストンロッド11が貫通する状態でシリンダ本体26の上端を閉塞するロッドカバー23と、シリンダ本体26の下端を閉塞するヘッドカバー24とを備えている。
【0021】
図6に示すピストンロッド11とピストン25は、
図6においてピストンロッド11の軸線C1より左側と右側とで上下方向の位置を変えて描いてある。軸線C1より左側は、最も下に移動した(突出量が最小になるように移動した)ピストンロッド11とピストン25とを示し、軸線C1より右側は、最も上に移動した(突出量が最大になるように移動した)ピストンロッド11とピストン25とを示している。
ピストン25は、円板状に形成されており、軸心部を貫通する固定用ボルト27によってピストンロッド11の下端部に固定されている。ピストン25の外周部にはシリンダ本体26との間をシールするためにシール部材28,29が設けられている。
【0022】
ピストン25は、シリンダ本体26内をヘッドカバー24側の油室13と、ロッドカバー23側の大気圧室30とに仕切っている。油室13は作動油31で満たされている。大気圧室30は、ロッドカバー23の中に形成された空気通路32によって筒壁22の第1の空気穴33に連通され、大気中に開放されている。第1の空気穴33は筐体21の後面21bに開口している。この第1の空気穴33にはサイレンサ34が取付けられている。
【0023】
シリンダ本体26は、ロッドカバー23の中心部が上端部に嵌入するとともにヘッドカバー24の中心部が下端部に嵌入する状態でロッドカバー23とヘッドカバー24とに接続されている。シリンダ本体26の上端部とロッドカバー23との間と、シリンダ本体26の下端部とヘッドカバー24との間は、それぞれシール部材35,36でシールされている。
【0024】
ロッドカバー23は、円板状に形成されており、筒壁22の上端部内に嵌合し、筒壁22に係合した止め輪37によって上側へ移動できないように筒壁22に固定されている。ロッドカバー23と筒壁22との嵌合部はシール部材38によってシールされ、ロッドカバー23のピストンロッド11が貫通する部分はシール部材39によってシールされている。
ロッドカバー23の中心部であってシリンダ本体26内に臨む部分には円環状のクッションパッド40が設けられている。
【0025】
ヘッドカバー24は、角柱状に形成されており、筒壁22の下端部内に一部が嵌入する状態で筒壁22に固定されている。この固定は、ヘッドカバー24を上下方向に貫通する複数の固定用ボルト41(
図5参照)によって行われている。ヘッドカバー24と筒壁22との間はシール部材42(
図6参照)によってシールされている。
ヘッドカバー24の中心部であってシリンダ本体26内に臨む部分には円環状のクッションパッド43が設けられている。
【0026】
ヘッドカバー24は、請求項2記載の発明でいう「油圧シリンダの下端部」を構成するものである。このヘッドカバー24には、シリンダ本体26と同一軸線上に位置するシリンダ孔44と、このシリンダ孔44内に移動自在に嵌合したフリーピストン45とを有する副シリンダ15が設けられている。シリンダ孔44は、ヘッドカバー24の下端に開口する非貫通孔である。シリンダ孔44の上側の壁となるヘッドカバー24の中心部には、ガイドロッド46が設けられているとともに、円環状のクッションパッド47が設けられている。ガイドロッド46は、円柱状に形成され、シリンダ孔44の軸心部でピストンロッド11の軸線C1に沿って上下方向に延びている。
【0027】
ガイドロッド46の下端は、シリンダ孔44の下端部に嵌入した円板状の蓋体48に嵌合状態で固定されている。蓋体48は、シリンダ孔44の開口部に嵌合し、ヘッドカバー24に係合した止め輪48aによって下方へ移動できないようにヘッドカバー24に固定されている。蓋体48とシリンダ孔44との間はシール部材49によってシールされている。蓋体48の中心部であってシリンダ孔44に臨む部分には円環状のクッションパッド50が設けられている。
【0028】
フリーピストン45は、円環状に形成されており、ガイドロッド46が軸心部を貫通する状態でシリンダ孔44内に嵌合している。このフリーピストン45は、シリンダ孔44内を上下方向に仕切っている。フリーピストン45とシリンダ孔44との間はシール部材51によってシールされ、フリーピストン45とガイドロッド46との間はシール部材52によってシールされている。
【0029】
シリンダ孔44内のフリーピストン45より上側は、ヘッドカバー24内で上下方向に延びる複数の第1の油孔53によって油圧シリンダ12の油室13に連通されており、作動油31で満たされた下部油室14である。第1の油孔53は、シリンダ孔44の上端と油室13の下端とを接続している。下部油室14は、下部油室14の上端部からヘッドカバー24の後面24bに向けて延びる第2の油孔54に接続されている。この第2の油孔54は、詳細は後述するが、ヘッドカバー24の後面24bに取付けられたチェックメカニカルバルブ6と、ヘッドカバー24の前面24aに取付けられた可変スロットルバルブ5とを含む油量制御装置61(
図1参照)を介してヘッドカバー24の前側の第3の油孔62(
図6参照)に接続されている。
【0030】
第3の油孔62は、ヘッドカバー24の前面24aに開口し、この開口から油圧シリンダ12と筒壁22との間の筒状の空間63まで延びている。
シリンダ孔44内のフリーピストン45より下側は、ヘッドカバー24の後側に穿設された副シリンダ用通気孔64から加圧空気が供給されて加圧空気が充填された空気圧室65である。副シリンダ用通気孔64は、ヘッドカバー24の後面24bに開口しており、空気圧室65に加圧空気を充填するときに空気パイプ66(
図1参照)が接続される。空気パイプ66は、空気圧源67(
図1参照)から加圧空気が送られる。この空気パイプ66は、空気圧室65に所定の圧力で加圧空気が充填された後に副シリンダ用通気孔64から取外される。この際、副シリンダ用通気孔64は、図示していない栓部材によって気密状態が保持されるように閉塞される。
【0031】
空油圧変換器16は、シリンダユニット3の筐体21の中に油圧シリンダ12を囲むように形成されている。詳述すると、空油圧変換器16は、
図6に示すように、油圧シリンダ12のシリンダ本体26を囲む筒壁22の一部である角筒状の筒壁部71と、油圧シリンダ12のロッドカバー23の外周部によって構成されて筒壁部71の上端を閉塞する第1の蓋部72と、油圧シリンダ12のヘッドカバー24の外側部によって構成されて筒壁部71の下端を閉塞する第2の蓋部73とを用いて構成されている。
【0032】
油圧シリンダ12のシリンダ本体26と筒壁部71との間に形成された筒状の空間63には所定量の作動油31が溜められている。筒状の空間63における作動油31の油面より下は油貯留部74になり、油面より上は空気貯留部75になる。作動油31の液面に円環状のフロート76が浮かべられている。フロート76の内周部はシリンダ本体26に遊嵌状態で嵌合し、フロート76の外周部は筒壁部71に遊嵌状態で嵌合している。
【0033】
油貯留部74は、上述した第3の油孔62と、後述する油量制御装置61と、ヘッドカバー24の第2の油孔54および下部油室14、第1の油孔53などを介して油圧シリンダ12の油室13に連通されている。油貯留部74から油室13に至る油通路内は作動油31で満たされている。
筒壁部71の上端部には、第1の通気孔77が前後方向に貫通するように穿設されている。この第1の通気孔77は、筐体21の前面21aの上部に取付けられたメカニカルバルブ4(
図1参照)を介して空気圧源67に接続されている。
この実施の形態による空気貯留部75の上端部には、第1の通気孔77から吹き込まれた加圧空気を空気貯留部75の周方向に分散させるためにバッフルプレート78が設けられている。
【0034】
(メカニカルバルブ4の説明)
メカニカルバルブ4は、本発明でいう「切替弁」に相当するもので、
図1に示すように、空気貯留部75と空気圧源67との間に設けられている。このメカニカルバルブ4は、乗員がシート2を上昇させたり、背もたれ2aを起立させる際に操作するバルブである。この実施の形態によるメカニカルバルブ4は、
図7に示すように、ハウジング81の中の左側端部(
図7においても左側端部)に設けられた逆止弁部82と、ハウジング81の右側の端部に設けられた操作レバー83を含む操作部84とを備えている。
【0035】
ハウジング81は、複数の固定用ボルト85(
図4参照)によって筐体21の前面21aの上部に固定されている。固定用ボルト85は、ハウジング81の貫通孔86に通されてハウジング81を前後方向に貫通し、筒壁22に螺着されている。
ハウジング81には、
図9に示すように、左右方向に貫通する穴87が形成されており、この穴87を使用してメカニカルバルブ4の構成部品が組付けられている。
【0036】
この穴87は、ハウジング81の左側端面に開口する第1の穴87aと、ハウジング81の右側端面に開口する第2の穴87bと、これらの第1の穴87aと第2の穴87bとを接続する第3の穴87cとによって形成されている。第3の穴87cの穴径は、第1および第2の穴87a,87bより小さい。第3の穴87cには、横穴88が接続されている。この横穴88には、第2の通気孔89が開口している。横穴88は栓部材81aによって閉塞されている。
【0037】
第2の通気孔89は、ハウジング81の後面に開口し、この開口から横穴88まで延びている。また、この第2の通気孔89は、メカニカルバルブ4がシリンダユニット3の筒壁22に取付けられた状態においては、
図4に示すように、この第2の通気孔89が筒壁22の第1の通気孔77に接続される。このため、第3の穴87cの内部は、横穴88と、第2の通気孔89と、第1の通気孔77とを介して空気貯留部75に連通されている。
第1の穴87aには第3の通気孔91が開口し、第2の穴87bには第4の通気孔92が開口している。
【0038】
これらの第3の通気孔91は、ハウジング81の後面に開口してこの開口から第1の穴87aに延びている。第4の通気孔92は、ハウジング81の後面に開口してこの開口から第2の穴87bに延びている。
メカニカルバルブ4がシリンダユニット3の筒壁22に取付けられた状態においては、
図4に示すように、第3の通気孔91が筒壁22の第5の通気孔93に接続され、第4の通気孔92が筒壁22の第6の通気孔94に接続される。
【0039】
第5の通気孔93は、筒壁22の左側の壁面22bに開口し、この開口に接続された空気パイプ95(
図1参照)を介して空気圧源67に接続されている。このため、第1の穴87a内には圧力空気が供給される。
第6の通気孔94は、筒壁22の右側の壁面22cに開口し、この開口に接続されたサイレンサ96(
図1参照)を通して大気中に開放されている。
【0040】
メカニカルバルブ4の逆止弁部82は、
図7に示すように、ハウジング81の左側端面に開口する第1の穴87aと、この第1の穴87aに嵌合した有底円筒状のホルダ101、このホルダ101の円筒部101aの中に左右方向へ移動自在に嵌合した弁体102などを備えている。ホルダ101の円筒部101aと第1の穴87aの穴壁面との間には環状の空間103が形成されている。
弁体102は円柱状に形成されている。弁体102の軸心部には貫通孔104が穿設されている。この弁体102の右端には、円筒状の弁座105に当接するシート部材102aが設けられている。弁座105は、第1の穴87aと第3の穴87cとの境界部分に第1の穴87a内に突出するように形成されている。
【0041】
弁体102は、ホルダ101との間に設けられた圧縮コイルばね106によって右方に、すなわちシート部材102aが弁座105に当接する方向に付勢されている。ホルダ101は、第1の穴87aの開口側端部に係合した止め輪107に圧縮コイルばね106のばね力によって押し付けられて保持されている。ホルダ101と第1の穴87aとの間はシール部材108によってシールされている。また、ホルダ101と弁体102との間はシール部材109によってシールされている。
【0042】
操作部84の操作レバー83は、ハウジング81にレバー用支持部材111を介して揺動自在に支持されている。操作レバー83の揺動端部には、
図2に示すように操作用ワイヤー112の一端部が接続されている。この操作用ワイヤー112の他端部は、シート2に着座した乗員が手で操作できるように、シート2の近傍の操作子(図示せず)に接続されている。
操作部84は、
図7に示すように、操作レバー83と、操作レバー83の中間部に右端が接触する円柱状のピン113と、このピン113の左端に接触するスプール114などを備えている。
【0043】
ピン113は、ハウジング81にピン用ガイド部材115を介して左右方向へ移動自在に支持されている。ピン用ガイド部材115は、円柱状に形成され、ハウジング81内の第2の穴87bの右側端部に嵌合し、レバー用支持部材111によってハウジング81から出ることができないように保持されている。ピン用ガイド部材115の外周部とハウジング81との間はシール部材116によってシールされている。ピン用ガイド部材115とピン113との間はシール部材117によってシールされている。
【0044】
スプール114は、有底円筒状に形成され、筒状部114aが左側に向けて開口する状態でハウジング81にスプール用ガイド部材118を介して左右方向へ移動自在に支持されている。このスプール114の左側端部は、逆止弁部82の弁体102の近傍で弁体102と対向している。
スプール114の右側端部には、筒状部114aの内外を連通する連通孔119が穿設されているとともに、筒状部114aより外径が大きいフランジ120が設けられている。
スプール用ガイド部材118は、第2の穴87bの左側端部に嵌合する円筒状に形成されている。このスプール用ガイド部材118の外周部とハウジング81との間はシール部材121によってシールされている。
【0045】
スプール用ガイド部材118の内周部は、スプール114の筒状部114aが移動自在に嵌合する小径孔122と、スプール114のフランジ120が移動自在に嵌合する大径孔123とによって形成されている。スプール114と小径孔122の穴壁面との間はシール部材124によってシールされている。
小径孔122と大径孔123との境界部分となる段部125と、スプール114のフランジ120との間には、スプール114を弁体102から離間する方向に付勢する圧縮コイルばね126が設けられている。スプール114は、この圧縮コイルばね126のばね力によってピン113に押し付けられている。
【0046】
スプール用ガイド部材118の外周部には環状溝127と、この環状溝127と大径孔123内とを連通する複数の連通孔128とが形成されている。環状溝127とハウジング81の第2の穴87bの穴壁面とによって形成された環状の空間129にはハウジング81の第4の通気孔92が開口している。
【0047】
(メカニカルバルブ4の動作の説明)
このように構成されたメカニカルバルブ4は、
図7に示すように操作レバー83が操作されていない状態においては、逆止弁部82の弁体102が圧縮コイルばね106のばね力によって押されて弁座105に着座するために、空気圧源67側から供給された加圧空気が逆止弁部82で止められる。また、この状態においては、ハウジング81の第2の通気孔89と第4の通気孔92とが横穴88と、第3の穴87cと、スプール114内と、連通孔119と、大径孔123内と、連通孔128、環状の空間129とからなる空気通路を介して互いに連通される。このため、空気貯留部75が大気中に開放される。
【0048】
操作レバー83が操作されると、
図8に示すように、ピン113が操作レバー83によって左側に押されてピン113およびスプール114がハウジング81に対して左側に移動する。そして、スプール114が弁体102を圧縮コイルばね106のばね力に抗して押し、弁体102が弁座105から離れる。
この状態においては、スプール114の左端の開口部が弁体102によって閉塞され(大気開放の経路が絶たれ)、第1の穴87a内と第3の穴87c内とが互いに連通される。このため、第1の穴87a内に供給された圧力空気が第3の穴87cから横穴88と第2の通気孔89および第1の通気孔77とを通って空気貯留部75に供給される。
【0049】
すなわち、メカニカルバルブ4は、空気圧源67から圧力空気が空気貯留部75に供給される供給形態と、空気貯留部75の空気を排気可能な排気形態とのいずれか一方の形態が採られるものである。
メカニカルバルブ4が供給形態になって加圧空気が空気貯留部75内に供給されることにより、空油圧変換器16内の作動油31が上方から空気によって押され、油貯留部74内の作動油31が第3の油孔62を通って可変スロットルバルブ5に流入する。
【0050】
(可変スロットルバルブ5の説明)
可変スロットルバルブ5は、本発明でいう「可変絞り弁」に相当するもので、
図1に示す回路図においてシリンダユニット3の油貯留部74と後述するチェックメカニカルバルブ6との間に設けられている。この可変スロットルバルブ5は、油貯留部74とチェックメカニカルバルブ6との間を通過する作動油31の流量を変えるものである。
この実施の形態による可変スロットルバルブ5は、
図10に示すように、ハウジング131の中の下部に設けられた逆止弁部132と、ハウジング131の中の上部に設けられた絞り部133とを備えている。
【0051】
ハウジング131は、複数の固定用ボルト134(
図5参照)によってヘッドカバー24の前面24aの下部に固定されている。固定用ボルト134は、ハウジング131の貫通孔135(
図10および
図12参照)に通されてハウジング131を前後方向に貫通し、筒壁22に螺着されている。
ハウジング131には、
図12に示すように、左右方向に貫通する第4の穴136と第5の穴137とが形成されており、これらの穴136,137を使用して可変スロットルバルブ5の構成部品が組付けられている。これらの穴136,137のうち、下側に位置する第4の穴136は、ハウジング131の左側の端面に開口する小径穴138と、ハウジング131の右側の端面に開口する大径穴139とによって形成されている。
【0052】
小径穴138の左側の開口端は栓部材131aによって閉塞されている。また、小径穴138は、第5の穴137に第1の連通孔141によって接続されている。
この小径穴138には、第4の油孔142が開口している。この第4の油孔142は、ハウジング131の後面に開口し、この開口から小径穴138まで延びている。可変スロットルバルブ5がヘッドカバー24に取付けられた状態においては、この第4の油孔142がヘッドカバー24の第3の油孔62に接続される。すなわち、小径穴138内は、油貯留部74に連通されている。
【0053】
大径穴139は、大径穴137に第2の連通孔143によって接続されている。第2の連通孔143の構成は後述する。
また、大径穴139には第5の油孔144が開口している。この第5の油孔144は、ハウジング131の後面に開口し、この開口から大径穴139まで延びている。可変スロットルバルブ5がヘッドカバー24に取付けられた状態においては、ヘッドカバー24内を前後方向に横切る第6の油孔145(
図6参照)の前端に第5の油孔144が接続される。第6の油孔145は、ヘッドカバー24内のシリンダ孔44より上側を前後方向に貫通している。第6の油孔145の後端は、後述するチェックメカニカルバルブ6に接続される。
【0054】
大径穴139の右側の開口部には、
図10に示すように、円筒状のばね受け部材146が螺着されている。このばね受け部材146と大径穴139との間はシール部材147によってシールされている。また、ばね受け部材146の中空部は、栓部材148が螺着され、この栓部材148によって閉塞されている。
ばね受け部材146の左側部には、圧縮コイルばね149を介して弁体150が取付けられている。弁体150は、小径穴138と大径穴139との境界部分に設けられた円筒状の弁座151に圧縮コイルばね149のばね力で押し付けられている。弁体150は、油貯留部74から小径穴138に伝播された作動油31の圧力が圧縮コイルばね149のばね力を上回ることにより弁座151から離れて開き、それ以外のときは弁座151に当接して小径穴138と大径穴139との間を閉じている。このため、逆止弁部132は、油貯留部74側からチェックメカニカルバルブ6側にのみ作動油31を通す。
【0055】
ハウジング131の第5の穴137は、
図12に示すように、ハウジング131の左側の端面に開口する弁孔153と、ハウジング131の右側の端面に開口するねじ孔154とによって形成されている。弁孔153は、第1および第2の連通孔141,143を介して第4の穴136の小径穴138と大径穴139とに接続されている。ねじ孔154には第1のアジャストねじ155が螺合している。
弁孔153の開口部は、キャップ156が螺着され、このキャップ156で閉塞されている。キャップ156には、第2のアジャストねじ157が螺合しているとともに、ばね受け部材158が移動自在に挿入されている。
【0056】
弁孔153内には、有底円筒状の弁本体161が開口部をキャップ156に向けた状態で左右方向へ移動自在に嵌合している。
図13に示す弁本体161は、軸線C2より上側と下側とで左右方向に位置を変えて描いてある。上側に描かれている弁本体161は、左側の端部となる開口端部161aがキャップ156に当接した絞り位置に位置し、下側に描かれている弁本体161は、右側の端部となる先端部161bが第1のアジャストねじ155に当接した開放位置に位置している。
弁本体161の先端部161bは、弁孔153の孔壁面との間に隙間が形成されるように、弁本体161の他の部分より小径に形成されている。
弁本体161の開口端部161aと弁孔153との間はシール部材162によってシールされている。
【0057】
この弁本体161は、ばね受け部材158との間に設けられた圧縮コイルばね163によってばね受け部材158から離れる方向(右方向)に付勢されている。ばね受け部材158は、圧縮コイルばね163のばね力で第2のアジャストねじ157に押し付けられている。この実施の形態においては、この圧縮コイルばね163が請求項3記載の発明でいう「ばね部材」に相当する。
弁本体161の内部の空間は、ばね受け部材158に形成された連通路164と、キャップ156に形成された連通路165と、ハウジング131に形成された連通路166とによって大気中に開放されている。ハウジング131の連通路166には異物の侵入を防ぐフィルター167(
図10参照)が設けられている。
【0058】
弁本体161の外周部には、
図13に示すように、先端部161b側で弁孔153に嵌合する大径部171と、開口端部161a側に位置する小径部172と、これらの大径部171と小径部172との間に位置するテーパー部173とが形成されている。大径部171は、弁孔153内を左右方向に仕切っており、弁孔153の右側端部に主油室174を形成している。
テーパー部173は、大径部171から小径部172に向かうにしたがって弁本体161の外径が漸次小さくなるように形成されている。
この弁本体161の小径部172およびテーパー部173と弁孔153との間には、環状の油室175が形成されている。
弁孔153における弁本体161の大径部171およびテーパー部173と対向する部分には環状溝176が形成されている。
【0059】
この環状溝176は、絞り位置に位置している弁本体161の大径部171と、テーパー部173の右側の端部とに対向する位置に形成されている。このように環状溝176が形成されていることにより、弁本体161が絞り位置に移動した状態において、
図14に示すように環状溝176内と環状の油室175とが微小な隙間Sを通して連通される。この隙間Sは、弁孔153の周方向に延びて環状に形成されている。
【0060】
弁孔153と第4の穴136とを接続する第1および第2の連通孔141,143のうち、左側に位置する第1の連通孔141は、弁孔153の左右方向の中央部であって、弁本体161が開放位置と絞り位置との間を移動する過程で常に環状の油室175と対向する位置に開口している。
第2の連通孔143は、弁孔153の右側の2箇所に開口している。これらの2箇所の開口のうち、右側の開口143aは、弁孔153の主油室174となる部分に形成されている。この実施の形態による右側の開口143aは、開放位置にある弁本体161の先端部161bと対向する位置に形成されている。第2の連通孔143の左側の開口143bは、弁孔153の環状溝176に形成されている。
【0061】
第2の連通孔143の右側の開口143aから弁孔153内の主油室174に作動油31が流入することにより、弁本体161が圧縮コイルばね163のばね力に抗してキャップ156側に移動する。この弁本体161の移動量は、第2の連通孔143内の油圧と対応して増減する。右側の開口143aから主油室174に作動油31が流入するときには、左側の開口143bからも作動油31が弁孔153内(環状の油室175)に流入する。この作動油31は、後述するように、テーパー部173に位置に基づいて増減する通路断面積に相当する流量だけ環状の油室175を通過して第1の連通孔141に流れ込む。すなわち、作動油31の流量が絞られて絞り部133を通過する。
【0062】
左側の開口143bから環状の油室175に流入する作動油31の量は、弁本体161の位置に依存している。詳述すると、左側の開口143bから弁孔153内に流入する作動油31の量は、弁本体161が
図13の軸線C2より下側に描かれているように開放位置に位置しているときに最も多くなる。弁本体161が開放位置から絞り位置に向けて移動すると、テーパー部173によって作動油31の流路が狭められるために、弁孔153内に流入する作動油31の量は徐々に減少する。そして、弁本体161が軸線C2より上側に描かれているように絞り位置に移動することによって、作動油31が微小な隙間Sを通るようになり、弁孔153内に流入する作動油31の量が最小になる。
すなわち、弁本体161は、第2の連通孔143側(チェックメカニカルバルブ6側)の油圧によって押されることにより、絞り部133を通過する作動油31の流量が減少する方向に圧縮コイルばね163のばね力に抗して移動する。
【0063】
このように第2の連通孔143から弁孔153内を通って第1の連通孔141に流出した作動油31は、第4の穴136の小径穴138を経て第4の油孔142に流入する。すなわち、この可変スロットルバルブ5は、弁本体161によって作動油31の流量が変えられる絞り部133と、油貯留部74側からチェックメカニカルバルブ6側にのみ作動油31を通す逆止弁部132とを並列に備えている。
【0064】
(チェックメカニカルバルブ6の説明)
チェックメカニカルバルブ6は、本発明でいう「開閉弁」に相当するもので、乗員がシート2に体重をかけたり背もたれ2aを押したりして背もたれ2aを傾斜させる際に操作するバルブである。本発明に係る油量制御装置61は、このチェックメカニカルバルブ6と上述した可変スロットルバルブ5とによって構成されている。
【0065】
チェックメカニカルバルブ6は、
図1に示すように油圧シリンダ12の油室13と空油圧変換器16の油貯留部74との間の油通路181に設けられており、この油通路181を開閉する。上述した可変スロットルバルブ5はチェックメカニカルバルブ6と油貯留部74との間に設けられている。
チェックメカニカルバルブ6は、油室13側から可変スロットルバルブ5側へ作動油31が流れるときは乗員の操作によってのみ開き、可変スロットルバルブ5側から油室13側へ作動油31が流れるときは油圧によって押されて開く。
【0066】
この実施の形態によるチェックメカニカルバルブ6は、
図15に示すように、ハウジング182の中の左側(
図15においては右側)に設けられた逆止弁部183と、ハウジング182の右側端部(
図15においては左側の端部)に設けられた操作レバー184を含む操作部185とを備えている。
ハウジング182は、複数の固定用ボルト186(
図4および
図5参照)によってヘッドカバー24の後面24bの下部に固定されている。固定用ボルト186は、ハウジング182の貫通孔187(
図15参照)に通されてハウジング182を前後方向に貫通し、ヘッドカバー24に螺着されている。
【0067】
ハウジング182には、
図15に示すように、左右方向に貫通する穴191が形成されており、この穴191を使用してチェックメカニカルバルブ6の構成部品が組付けられている。この穴191は、ハウジング182の左側の端面に開口する第6の穴192と、ハウジング182の右側の端面に開口する第7の穴193とによって形成されている。
第6の穴192には第7の油孔194が開口している。第7の油孔194は、ハウジング182の前面に開口し、この開口から第6の穴192まで延びている。この第7の油孔194は、チェックメカニカルバルブ6がヘッドカバー24の後面24bに取付けられた状態でシリンダユニット3の第2の油孔54の後端に接続される。このため、第6の穴192は、第7の油孔194と、第2の油孔54と、第1の油孔53とを介して油圧シリンダ12の油室13に接続されている。
【0068】
第7の穴193にはハウジング182の上面に開口する横穴195が接続されている。この横穴195には第8の油孔196が開口している。横穴195の上端の開口は栓部材182aによって閉塞されている。第8の油孔196は、ハウジング182の前面(
図15においては紙面の裏側の面)に開口し、この開口から横穴195まで延びている。第8の油孔196は、チェックメカニカルバルブ6がヘッドカバー24の後面24bに取付けられた状態でシリンダユニット3の第6の油孔145に接続される。
このため、第8の油孔196は、第6の油孔145と、可変スロットルバルブ5と、第3の油孔62とを介して油貯留部74に接続されている。
【0069】
第6の穴192の左側(
図13においては右側)の開口部には、円筒状のばね受け部材197が螺着されている。このばね受け部材197と第6の穴192との間はシール部材198によってシールされている。また、ばね受け部材197の中空部は、栓部材199が螺着され、この栓部材199によって閉塞されている。
ばね受け部材197の右側部には、圧縮コイルばね200を介して弁体201が取付けられている。弁体201は、第6の穴192と第7の穴193との境界部分に設けられた円筒状の弁座202に圧縮コイルばね200のばね力で押し付けられている。弁体201は、第7の穴193内の作動油31の圧力が圧縮コイルばね200のばね力を上回るときと、後述する操作部185によって押されたときとに弁座202から離れて開き、それ以外のときは弁座202に当接して第6の穴192と第7の穴193との間を閉じている。
【0070】
操作部185の操作レバー184は、ハウジング182にレバー用支持部材203を介して揺動自在に支持されている。操作レバー184の揺動端部には、
図3に示すように操作用ワイヤー204の一端部が接続されている。この操作用ワイヤー204の他端部は、シート2に着座した乗員が手で操作できるように、シート2の近傍の操作子(図示せず)に接続されている。
操作部185は、操作レバー184と、操作レバー184の中間部に先端が接触する円柱状のピン205と、このピン205を操作レバー184に向けて付勢する圧縮コイルばね206などを備えている。
【0071】
ピン205は、ハウジング182にピン用ガイド部材207を介して左右方向へ移動自在に支持されている。ピン用ガイド部材207は、円柱状に形成され、ハウジング182内の第7の穴193の右側端部に嵌合し、レバー用支持部材203によってハウジング182から出ることができないように保持されている。ピン用ガイド部材207の外周部とハウジング182との間はシール部材208によってシールされている。ピン用ガイド部材207とピン205との間はシール部材209によってシールされている。
【0072】
このチェックメカニカルバルブ6は、操作レバー184が操作されていないときは、
図15に示すように、ピン205が圧縮コイルばね206のばね力で押されて逆止弁部183の弁体201から離間している。
操作レバー184が乗員によって操作されると、
図16に示すように、ピン205が圧縮コイルばね200のばね力に抗して弁体201を押し、弁体201が弁座202から離れて開く。すなわち、操作部185は、逆止弁部183を作動油31が通過するように操作する。乗員の体重や乗員が背もたれ2aを押す力が油圧シリンダ12の油室13に加えられている状態で逆止弁部183が開くことにより、作動油31が油室13から第1の油孔53、第2の油孔54、第7の油孔194を通して第6の穴192に導かれ、第6の穴192から逆止弁部183を通過して第7の穴193に流入する。この作動油31は、第7の穴193から横穴195と、第8の油孔196と、ヘッドカバー24内の第6の油孔とを通って可変スロットルバルブ5の第5の油孔144に流入する。
【0073】
このように構成されたシート2の駆動装置1においては、メカニカルバルブ4が乗員によって操作されて
図8に示すように供給形態になることにより、圧力空気がメカニカルバルブ4から空気貯留部75に供給される。そして、空気貯留部75の圧力上昇に伴って油貯留部74の油圧が上昇し、作動油31が油貯留部74から第3の油孔62を通って可変スロットルバルブ5の第4の油孔142に流入し、逆止弁部132が開く。この逆止弁部132を通過した作動油31は、第5の油孔144からヘッドカバー24の第6の油孔145を通ってチェックメカニカルバルブ6の第8の油孔196に流入する。
【0074】
このように第8の油孔196に作動油31が流入することによりチェックメカニカルバルブ6の逆止弁部183が開き、作動油31が第7の油孔194とヘッドカバー24の第1、第2の油孔53,54を通って油圧シリンダ12の油室13に流入する。
油室13の作動油31の量が増えることによりピストンロッド11が上方に移動してシリンダ本体26から突出し、シート2に駆動力が伝達される。このようにシート2に駆動力が伝達されることにより、例えばシート2の背もたれ2aが起立した起立形態とすることができる。
【0075】
メカニカルバルブ4が供給形態から排気形態に切替えられると、空気貯留部75内が大気圧になり、油貯留部74の油圧が低下し、可変スロットルバルブ5およびチェックメカニカルバルブ6の逆止弁部183が閉じ、これと同期してピストンロッド11が停止する。ピストンロッド11の停止は、シート2の上昇動作や背もたれ2aの起立動作が停止することを意味する。
【0076】
一方、メカニカルバルブ4が排気形態であるときに乗員がシート2を介して油圧シリンダ12のピストンロッド11を押すことにより、油圧シリンダ12の油室13の油圧が上昇する。このとき、チェックメカニカルバルブ6の操作部185で逆止弁部183を作動油31が通過するように操作する(以下、この操作を単に「開操作」という)ことによって、作動油31がチェックメカニカルバルブ6の逆止弁部183を通過し、第8の油孔196からヘッドカバー24の第6の油孔145を通って可変スロットルバルブ5の第5の油孔144に流入する。第5の油孔144に流入した作動油31は、大径穴139から第2の連通孔143と、絞り部133と、第1の連通孔141とを通って小径穴138に入る。
【0077】
このとき、絞り部133の弁本体161を押す油圧が大きければ大きいほど絞り部133の通路断面積が小さくなるために、乗員がシート2を押す力の大きさ(例えば体重)に応じて流量が少なくなるように作動油31が絞り部133を通過する。小径穴138に流入した作動油31は、第4の油孔142からヘッドカバー24の第3の油孔62を通って油貯留部74に流入する。このため、このときには、乗員から加えられる力に応じて流量が少なくなるように油室13から油貯留部74に向けて作動油31が流れる。油室13内の作動油31が流出してピストン25およびピストンロッド11が下がることにより、例えばシート2の背もたれ2aが傾斜したリクライニング形態とすることができる。そして、チェックメカニカルバルブ6の操作レバー184を戻して操作部185の「開操作」を止めることにより、逆止弁部183が閉じ、これと同期してピストンロッド11が停止する。
【0078】
このため、シート2の形態を起立形態とリクライニング形態との間で変える動作を油圧によって制御することができるから、形態変更に伴う移動、停止が応答性よく行われる。したがって、この実施の形態によれば、制御性が高い車両用シートの駆動装置を提供することができる。
【0079】
油圧シリンダ12の下端部には、上下方向に延びて上端が油室13に連通されたシリンダ孔44と、このシリンダ孔44内に移動自在に嵌合したフリーピストン45とからなる副シリンダ15が設けられている。フリーピストン45は、シリンダ孔44内の上部に形成されて作動油31で満たされた下部油室14と、シリンダ孔44内の下部に形成されて加圧空気が充填された空気圧室65とを仕切っている。
このため、ピストンロッド11が乗員によって押されて下降しているときにチェックメカニカルバルブ6の開操作を止めると、油圧シリンダ12の油室13の圧力が急上昇し、空気圧室65内の加圧空気が圧縮されてフリーピストン45が下がる。この際、副シリンダ15が実質的に空気ばねとして機能し、ピストンロッド11が停止したときの衝撃を緩和する。この結果、乗員に違和感を与えることなくシート2の動作が停止することになる。
【0080】
この実施の形態による油貯留部74と空気貯留部75は、シリンダ本体26を囲む環状に形成されているとともに、油貯留部74が空気貯留部75の下に位置するように形成されている。
したがって、空油圧変換器16が油圧シリンダ12の周囲に配置されて副シリンダ15と干渉することがないから、実質的に空気ばねとなる副シリンダ15を備えているにもかかわらず、コンパクトな車両用シートの駆動装置を提供することができる。
【0081】
この実施の形態による油量制御装置61は、チェックメカニカルバルブ6から油貯留部74に向けて流れる作動油31の流量を変える可変スロットルバルブ5を有している。可変スロットルバルブ5は、チェックメカニカルバルブ6側の油圧によって押されることにより流量が減少する方向に圧縮コイルばね163のばね力に抗して移動する弁本体161を備えている。
このため、乗員からピストンロッド11に加えられる力が大きいほど油室13から油貯留部74に流れる作動油31の流量が少なくなる。したがって、例えば体重が相対的に重い乗員が着座したときには、体重に抗して緩やかにシート2が下がるようになる。また、体重が相対的に軽い乗員がシート2に着座した場合には、体重に応じた速度でシート2が下がるようになる。
【0082】
この実施の形態による可変スロットルバルブ5は、ばね力に抗して移動する弁本体161によって作動油31の流量が変えられる絞り部133と、油貯留部74側からチェックメカニカルバルブ6側にのみ作動油31を通す逆止弁部183とを並列に備えている。
このため、油貯留部74側からチェックメカニカルバルブ6側に作動油31が流れるときには作動油31が逆止弁部183を通過し、絞り部133をバイパスするようになる。したがって、例えば背もたれ2aを起立させるときに作動油31が絞り部133を通過しなくてよいから、このときにシート2が速やかに動作する。
【0083】
この実施の形態による空油圧変換器16は、油圧シリンダ12を囲む筒状の筒壁部71と、油圧シリンダ12のロッドカバー23と一体に形成された第1の蓋部72と、油圧シリンダ12のヘッドカバー24と一体に形成された第2の蓋部73とを含む筐体21の中に形成されている。
油貯留部74と空気貯留部75は、油圧シリンダ12と筒壁部71との間に形成され、油量制御装置61に含まれる弁部品(可変スロットルバルブ5およびチェックメカニカルバルブ6)と、メカニカルバルブ4とは、それぞれ筐体21に取付けられている。
【0084】
油量制御装置61の弁部品どうしの間で作動油31が流れる油通路(第6の油孔145)と、この弁部品と油室13との間で作動油31が流れる油通路(第1の油孔53、第2の油孔54)と、弁部品と油貯留部74との間で作動油31が流れる油通路(第3の油孔)と、メカニカルバルブ4と空気貯留部75との間で空気が流れる空気通路(第1の通気孔77)とは、それぞれ筐体21に形成されている。
【0085】
このため、配管を使うことなく車両用シートの駆動装置を実現することができる。したがって、コンパクトでしかも設置が容易な車両用のシートの駆動装置を提供することができる。しかも、作動油31が流れる油通路を短く形成することができ、この油通路内に空気が溜まり難いから、動作の信頼性が高くなる。
【符号の説明】
【0086】
1…車両用シートの駆動装置、2…車両用シート、4…メカニカルバルブ(切替弁)、5…可変スロットルバルブ(可変絞り弁)、6…チェックメカニカルバルブ(開閉弁)、11…ピストンロッド、12…油圧シリンダ、13…油室、14…下部油室、15…副シリンダ、16…空油圧変換器、21…筐体、23…ロッドカバー、24…ヘッドカバー、25…ピストン、26…シリンダ本体、30…大気圧室、44…シリンダ孔、45…フリーピストン、53…第1の油孔(油通路)、54…第2の油孔(油通路)、61…油量制御装置、62…第3の油孔(油通路)、65…空気圧室、67…空気圧源、71…筒壁部、72…第1の蓋部、73…第2の蓋部、74…油貯留部、75…空気貯留部、77…第1の通気孔(空気通路)、132,183…逆止弁部、133…絞り部、145…第6の油孔(油通路)、161…弁本体、163…圧縮コイルばね(ばね部材)、181…油通路、185…操作部。