(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】気密端子
(51)【国際特許分類】
H01R 9/16 20060101AFI20220830BHJP
H02K 5/22 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
H01R9/16 102
H01R9/16 101
H02K5/22
(21)【出願番号】P 2019162842
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】300078431
【氏名又は名称】ショット日本株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】本田 浩喜
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-029055(JP,A)
【文献】実開昭62-124777(JP,U)
【文献】特開2005-207328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/00
H01R 9/15-9/28
H01R 43/00-43/28
H02K 5/00-5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)封着孔を有した金属外環と、この金属外環の封着孔に挿通したリードと、前記金属外環と前記リードとを気密に封着する絶縁材とを備え、該金属外環は、外部の電気装置との接触面に圧入封止のためのスパイク部を設けた気密端子と、これを取付ける前記電気装置を用意する準備工程、(2)前記気密端子の前記リードと前記電気装置の配線コードとを電気接続する電気接続工程、(3)前記気密端子を前記電気装置の気密容器に設けた通孔に載せてセットする載置工程、(4)前記気密端子を
ガスケットまたはゴム製シール部材を介さずに前記外部の電気装置の気密容器に直接接触して締め付けて加圧するのみで、前記気密容器に螺旋止めすることによって、前記気密容器に前記気密端子のスパイク部を圧入して前記気密容器の取付け部分にくい込ませることで、前記気密容器に内蔵する電気装置と気密端子とを気密封止する端子取付工程とからなる気密端子の取付け方法。
【請求項2】
電気装置を収めた容器体と、この容器体を貫通する挿着孔に気密に固着され、前記容器体の外側に配置された外部装置と電気接続するために前記電気装置に配線接続された気密端子とを備え、前記気密端子は、
前記容器体に有するボルトを挿通して前記容器体をナットにより螺旋止するため設けた通孔および封着孔を有する金属外環と、前記金属外環の前記封着孔に挿通されて前記電気装置の配線コードに電気接続されたリードと、前記金属外環と前記リードとを封着した絶縁材とを有し、前記金属外環は、
ガスケットまたはゴム製シール部材を介さずに前記電気装置
を収めた前記容器体に直接接触して締め付けて加圧するのみで、前記容器体との接触面に圧入封止
したスパイク部を有し、このスパイク部は、少なくとも先端部が前記
容器体の中に埋め込まれた
ことを特徴とする気密端子付き気密容器。
【請求項3】
前記スパイク部は、
前記容器体を構成した金属材より硬質の材料よりなる請求項2に記載の
気密端子付き気密容器。
【請求項4】
前記スパイク部は、前記金属外環の一部を平面より突出させて設けた請求項2または請求項3に記載の
気密端子付き気密容器。
【請求項5】
前記スパイク部は、前記金属外環に、この金属外環とは別のスパイクチップを取付けてて設けられた請求項2ないし請求項4の何れか1つに記載の
気密端子付き気密容器。
【請求項6】
前記スパイクチップは、タングステン
からなる硬質金属
またはセラミック材よりなる請求項5に記載の
気密端子付き気密容器。
【請求項7】
前記スパイク部は、少なくともその突出先端部を鋭角状に形成した請求項2ないし請求項6の何れか1つに記載の
気密端子付き気密容器。
【請求項8】
前記スパイク部の表面に前記スパイク部よりも軟質の金属材料からなる被帽を被せて
おり、前記被帽は、一部を除いて前記スパイク部が前記容器体の器壁へ圧入してゆくにつれて前記容器体の器壁にしごかれて圧入部周辺に排出されていることを特徴とした請求項2ないし請求項7の何れか1つに記載の
気密端子付き気密容器。
【請求項9】
前記スパイク部は、前記金属外環の前記リードを封着した前記絶縁材の外周を囲むように設けられた請求項2ないし請求項8の何れか1つに記載の
気密端子付き気密容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気密端子に関し、より詳細には、車載用電動圧縮機に用いる気密端子に関する。
【背景技術】
【0002】
気密端子は、アイレットまたは金属外環の挿通孔にガラス絶縁材を介してリードを気密に封着したもので、気密容器内に収容された電気機器や素子に電流を供給したり、電気機器や素子から信号を外部に導出したりする場合に用いられる。例えば、冷蔵庫やエアコン等の圧縮機に用いられる気密端子は、WO2010/117000号公報(特許文献1)に示されるように、天板部、この天板部の外周端から下方に向かって延びる筒状部、この筒状部の下端から斜め外方に広がったフランジ部、及び天板部から内方側に向かって延びるリード封着孔を形成する3個の小筒部を備えた金属外環が用いられている。そして、この金属外環のリード封着孔にそれぞれ封着用のガラス絶縁材を介して封着されたリードが気密封着される。
【0003】
ところで、ハイブリッド自動車では、エンジンによる環境への影響を軽減するという本来の目的から、自動車が信号などで一時停止する場合にはエンジンが停止する構成となっているものがある。このような場合、エンジンで駆動する圧縮機を用いていると、車が停止する度に空調が止まることになり、夏季や冬季、極寒や極暑の地では特に問題になる。そこで、電動機を鉄製容器に内蔵した電動圧縮機を採用している。電動圧縮機は屋内空調用のものと同様な圧縮機構を有する。しかし、ハイブリッド自動車や電気自動車のエンジンルームの機械配置は、車重軽減等の要求からエンジンルーム内の器機配置を工夫し、極限まで省スペース化を図っており、電動圧縮機を設置する充分なスペースがエンジンルームに確保し難い状況にある。このため、例えば特許文献2などに記載される車載用の電動圧縮機の気密端子は、屋内空調用の気密端子のように同一円周上に∠120°間隔で三端子を配置する形態ではなく、三端子が直線状に配置された、ソケット回りなどの嵩が少なくなる形態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2010/117000号公報
【文献】特開2012-186969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイブリッド自動車や電気自動車では、エンジンで駆動する圧縮機ではなく電動機で駆動する圧縮機、すなわち屋内用エアコンと同様に圧縮機構を電動機とともに気密容器に内蔵した電動機内蔵の圧縮機が採用されている。これらの車載用電動圧縮機は、狭隘なエンジンルームへの設置を考慮して、出来るだけ省スペースかつ小型軽量のものが好ましい。電動機は気密容器の取付孔に取付けた気密端子を通じて駆動されるので、用いられる気密端子も、
図1の様に省スペースに有利なように直列一線状にピン配置されたものが多い。車載電動圧縮機用の気密端子は、電動機を収容した気密容器の取付孔に螺旋締結されており、従来は、気密容器に気密端子を取付ける際に、気密端子と気密容器との間に別途メタルガスケットを挟んで取付ける必要があった。
【0006】
本発明の目的は、車載電動圧縮機用の気密端子において、ガスケットを使用する必要がない気密端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、封着孔を有した金属外環と、この金属外環の封着孔に挿通したリードと、金属外環とリードとを気密に封着する絶縁材とを備え、該金属外環は、外部の電気装置との接触面にスパイク部を設けたことを特徴とする気密端子が提供される。ここでいう接触面とは、当該気密端子を取付ける電気装置の気密容器と接触する金属外環の当接面のことをいい、スパイク部は、金属外環の当接面に設けられた硬質材の突出部からなる。電気装置の気密容器との接触面にスパイク部を設けたことで、気密端子をアルミダイキャストなどの比較的軟質材からなる気密容器に締結するだけで、このスパイク部が気密容器の端子取付面に圧入されて固定することができる。その結果、電動圧縮機が収納された気密容器に本発明の気密端子を直に取り付ければ、気密端子のスパイク部が気密容器に圧入されて気密性が確保できるようになる。本発明により、従来、気密端子の取り付けの際、必須であったメタルガスケットを装着する必要が無くなる。しかも、本発明の一形態においては、気密端子の金属外環にスパイク部を設けるだけでよいので、気密端子の部材の増加無しでも達成できる。従って、本発明は、電動圧縮機の組立工程の簡素化に寄与するとともに、部品数も削減できるので経済的な効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る気密端子10を示し、(a)は平面図を、(b)は正面断面図を、(c)は下面図を示す。
【
図2】本発明に係る気密端子20を示し、(a)は平面図を、(b)は正面断面図を、(c)は下面図を示す。
【
図3】本発明に係る気密端子の取付け方法30の工程フローチャートを示す。
【
図4】本発明に係る気密容器40の挿着孔周辺の部分断面図を示す。
【
図5】本発明に係る気密容器50の挿着孔周辺の部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る気密端子は、
図1ないし
図2に示すように、少なくとも1個の封着孔を有した金属外環と、この金属外環の封着孔に挿通したリードと、金属外環とリードとを封着する絶縁材とを備え、該金属外環は、気密端子を他の電気装置に取付ける際の接触面に圧入封止のためのスパイク部を設けたことを特徴とする。このスパイク部は、気密端子を電気装置に螺旋止めなどで取付けた際に、これより軟質材からなる電気装置の取付け部分にくい込むことができ、O-リングなどのゴム製シール部材を介さずに気密端子と電気装置との取付け部位を隙間なく塞いで気密封止できる。
【0010】
本発明に係る気密端子の一形態は、上記スパイク部が金属外環の一部を平面より突出させて設けられており、気密端子を取付ける電気装置の取付け部の所定壁面に螺旋締結などの手段で押圧し圧入固定したときに、気体および液体をリークさせることなく隙間無く封止できれば何れの材料および構成を用いてもよい。例えば、スパイク部は、金属外環に気密に固着された前記金属外環とは別のより硬質の材料からなるスパイクチップで構成してもよい、金属外環に取付けるスパイクチップは、例えばタングステンなどの硬質金属やセラミック材で形成してもよい。スパイク部の形状は、少なくともその突出先端部を鋭角状に形成した構成が好ましい。スパイク部は、少なくとも圧入部分に、より軟質の金属材料からなる被帽を被せてもよい。この被帽は、例えば軟金属めっき膜やはんだ膜からなり、その展延性によりスパイク部が、隙間を塞ぎながら容器体への進入するのを補助でき、気密端子の容器体への載置時ないし圧入時の位置ずれ防いで円滑な圧入に寄与し、スパイク部を電気装置の圧入部分から抜け難いように固定する。
【0011】
本発明の気密端子10は、
図1に示すように、螺旋止めのため設けた通孔11および封着孔12を有する金属外環13と、金属外環13の封着孔12に挿通したリード14と、金属外環13とリード14とを封着した絶縁材15とを備え、金属外環13は、これを取付ける電気装置の金属材より硬質の材料で構成され、少なくとも当該気密端子を電気装置に取付ける際の接触面となる金属外環13の所定表面にスパイク部16を有し、スパイク部26は、金属外環23の表面より突出して設けられたことを特徴とする。
【0012】
スパイク部16は、金属外環13のリード14を封着した絶縁材15の外周を囲むように設けられており、さらに金属外環13の一部を突出させて設けられる。気密端子10は、電気装置などに取付けられる際、スパイク部16が電気装置の外壁面に圧入されながら締結される。電気装置の外壁面に設けられた端子取付孔とリード14を封着した絶縁材15は、スパイク部16に囲まれた内側に配置されるので、スパイク部16に囲まれた内側と外側とを気密に隔てることができる。気密端子10は、リードを電気装置に接続させた後、電気装置の取付け孔に挿着し、螺旋等で締結するだけで、簡便かつ迅速に気密端子の取付けを完了できる。スパイク部16は、金属外環13の一部を突出させて設け、さらに金属外環13のリード14を封着した絶縁材15の外周を囲むように設けられ、かつ少なくともその突出先端部を鋭角状に形成して設けるのが好ましい。なお、通孔11は、本発明の気密端子を電気装置の気密容器などに螺旋止め等の手段で締め付けて加圧して固定するため設けられるものであり、気密端子の金属外環が当接される気密容器等の器壁に圧入により圧着固着できれば、この通孔に替えて他の形態、例えば気密端子の金属外環が挿着孔から抜け落ちないように、少なくとも金属外環の外周縁辺および挿着孔の外周縁辺を額縁状に覆って、気密端子と気密容器とを固定する蓋体などを採用してもよい。
【0013】
本発明の気密端子20は、
図2に示すように、螺旋止めのため設けた通孔21および封着孔22を有する金属外環23と、金属外環23の封着孔22に挿通したリード24と、金属外環23とリード24とを封着した絶縁材25とを備え、金属外環23は、少なくとも当該気密端子を他の電気装置に取付ける際にその接触面となる金属外環23の所定表面に、金属外環23とは別の材料から構成され、かつ前記電気装置の金属材より硬質の材料で構成されたスパイク部26を有し、スパイク部26は、金属外環23の表面より突出して設けられたことを特徴とする。
【0014】
気密端子20は、電動圧縮機の気密容器などの電気装置に取付けられる際、スパイク部26がこの電気装置の外壁面に圧入されながら螺旋締結される。電気装置の外壁面に設けられた端子取付孔とリード24を封着した絶縁材25は、スパイク部26に囲まれた内側に配置されるので、スパイク部26に囲まれた内側と外側とを気密に隔てることができる。気密端子20は、リードを電気装置に接続させた後、電気装置の取付け孔に挿着し、螺旋で締結するだけで、簡便かつ迅速に気密端子の取付けを完了できる。スパイク部26は、金属外環23の一部を突出させて設け、さらに金属外環23のリード24を封着した絶縁材25の外周を囲むように設けられ、かつ少なくともその突出先端部を鋭角状に形成して設けるのが好ましい。通孔21は、本発明の気密端子を電気装置の気密容器などに螺旋止め等の手段で締め付けて加圧して固定するため設けられるものであり、気密端子の金属外環が当接される気密容器等の器壁に圧入により圧着固着できれば、この通孔に替えて他の形態、例えば気密端子の金属外環が挿着孔から抜け落ちないように、少なくとも金属外環の外周縁辺および挿着孔の外周縁辺を額縁状に覆って、気密端子と気密容器とを固定する螺旋孔付き蓋体などを採用してもよい。
【0015】
本発明の気密端子の取付け方法30は、
図3に示すとおり、上述の気密端子10または気密端子20の取付け方法であって、(1)本発明に係る気密端子と、これを取付ける電気装置を内蔵した気密容器を用意する準備工程31。準備工程31は、螺旋止めのため設けた通孔および封着孔を有する金属外環と、金属外環の封着孔に挿通したリードと、金属外環とリードとを封着した絶縁材とを備え、前記金属外環は、これを取付ける電気装置の金属材より硬質の材料で構成され、少なくとも当該気密端子を前記電気装置に取付ける際の接触面となる金属外環の所定表面にスパイク部16を有し、スパイク部26は、金属外環23の表面より突出して設けられた気密端子と、これを取付ける電気装置を用意する工程である。(2)気密端子のリードと電気装置の配線コードとを電気接続する電気接続工程32、(3)気密端子を電気装置の気密容器に設けた通孔に載せてセットする載置工程33、(4)気密端子を気密容器に螺旋止めすることによって、気密容器に気密端子のスパイク部を圧入して気密容器の取付け部分にくい込ませることで、気密容器に内蔵する電気装置と気密端子とを気密封止する端子取付工程34よりなる。
【0016】
本発明の気密容器40は、
図4に示すように、上述の気密端子10を有する気密容器であって、電動機などの電気装置を収めた容器体401と、容器体401を貫通する挿着孔402に気密に固着され、容器体401の外側に配置された外部装置と電気接続するために前記電気装置に配線接続された気密端子403とを備え、気密端子403は、容器体401を螺旋止するため設けた通孔41および封着孔42を有する金属外環43と、金属外環43の封着孔42に挿通されて前記電気装置の配線コード404に電気接続されたリード44と、金属外環43とリード44とを封着した絶縁材45とを有し、金属外環43は、少なくとも気密端子403と容器体401との固着面に容器体401を構成する金属材より硬質の材料で構成されたスパイク部46を有し、スパイク部46は、少なくとも先端部が金属外環43の表面より容器体401側に突出して埋め込まれている。スパイク部46の圧入部分にスパイク部46が容器体401から外れ難くするため、抜け落ち防止のための突起または返しを設けても良い。通孔41は、本発明の気密端子を電気装置の気密容器などに螺旋止め等の手段で締め付けて加圧して固定するため設けられるものであり、気密端子の金属外環が当接される気密容器等の器壁に圧入により圧着固着できれば、この通孔に替えて他の形態、例えば気密端子の金属外環が挿着孔から抜け落ちないように、少なくとも金属外環の外周縁辺および挿着孔の外周縁辺を額縁状に覆って、気密端子と気密容器とを固定する蓋体などを採用してもよい。
【0017】
本発明の気密容器50は、
図5に示すように、上述の気密端子20を有する気密容器であって、電動機などの電気装置を収めた容器体501と、容器体501を貫通する挿着孔502に気密に固着され電気装置を容器体501の外側に配置された外部装置と電気接続するために前記電気装置に配線接続された気密端子503とを備え、気密端子503は、容器体501を螺旋止するため設けた通孔51および封着孔52を有する金属外環53と、金属外環53の封着孔52に挿通されて前記電気装置の配線コード504に電気接続されたリード54と、金属外環53とリード54とを封着した絶縁材55とを有し、金属外環53は、少なくとも気密端子503を前記電気装置に取付ける際の接触面となる金属外環53の所定表面に、金属外環53とは別の材料からなり、かつ容器体501を構成する金属材より硬質のスパイクチップ561で構成されたスパイク部56を有し、スパイク部56は、少なくとも先端部が金属外環53の表面より容器体501側に突出して埋め込まれている。スパイク部56の圧入部分にスパイク部56が容器体501から外れ難くするため、抜け落ち防止のための突起または返しを設けても良い。通孔51は、本発明の気密端子を電気装置の気密容器などに螺旋止め等の手段で締め付けて加圧して固定するため設けられるものであり、気密端子の金属外環が当接される気密容器等の器壁に圧入により圧着固着できれば、この通孔に替えて他の形態、例えば気密端子の金属外環が挿着孔から抜け落ちないように、少なくとも金属外環の外周縁辺および挿着孔の外周縁辺を額縁状に覆って、気密端子と気密容器とを固定する螺旋孔付き蓋体などを採用してもよい。
【0018】
本発明に係るスパイク部は、さらにその表面にスパイク部より軟質の金属材料、例えば軟金属の金、銀、錫、パラジウムのめっき膜またははんだ合金の被覆膜からなる被帽を被せてもよい。スパイク部は、圧入される外部装置の容器体との気密性が確保できれば金属外環の一部を突出させて設けても、金属外環とは異なる別の材料を金属外環の所定箇所にスパイクチップとして取付けて設けても差し支えない。この被帽は、本発明の気密端子のスパイク部が気密容器の器壁中に圧入される際に、圧入位置を安定化させスムーズな圧入を補助して、圧入後はスパイク部と容器体との隙間をシールして気密性を高める。被帽は、一部を除いてスパイク部が上記器壁へ圧入してゆくにつれて容器体の器壁にしごかれて圧入部周辺に排出される。
【0019】
なお、本明細書において三端子の気密端子を例示するが、リードを外環にガラス封止した気密端子であれば何れの形態を用いてもよく、例示した気密端子に限定されない。
【実施例】
【0020】
本発明に係る実施例1の気密端子10は、
図1に示すように、螺旋止めのため設けた通孔11および直線状に配置した複数の封着孔12を有する合金鋼の金属外環13と、金属外環13の封着孔12に挿通した複数のFe-Cr鉄基合金製リード14と、金属外環13とリード14とを封着したソーダバリウムガラスの絶縁材15とを備え、金属外環13は、当該気密端子を取付けるアルミダイキャスト製の気密容器より硬質の材料で構成され、前記気密容器と金属外環13との接触面に、この接触面から突出させたスパイク部16を有し、スパイク部16は、金属外環13のリード14を封着した絶縁材15の外周を囲むように設けられており、さらにその先端部を鋭角状に形成して設けられ、かつスパイク部16に錫めっき製の被帽17を被せている。
【0021】
本発明に係る実施例2の気密端子20は、
図2に示すように、螺旋止めのため設けた通孔21および直線状に配置した複数の封着孔22を有する炭素鋼の金属外環23と、金属外環23の封着孔22に挿通した複数のFe-Cr鉄基合金製リード24と、金属外環23とリード24とを封着したソーダバリウムガラスの絶縁材25とを備え、金属外環23は、当該気密端子を取付けるアルミダイキャスト製の気密容器との接触面に、前記気密容器より硬質のタングステン製スパイクチップ261で構成されたスパイク部26を有し、スパイク部26は、金属外環23の表面より突出して設けられ、さらに金属外環23のリード24を封着した絶縁材25の外周を囲むように設けられており、かつその突出先端部を鋭角状に形成して設けられ、かつスパイク部26に金めっき製の被帽27を被せている。
【0022】
本発明に係る実施例3の気密端子の取付け方法30は、
図3に示すとおり、実施例1の気密端子10または実施例1の気密端子20の取付け方法であって、(1)本発明に係る気密端子と、これを取付ける電気装置を内蔵した気密容器を用意する準備工程31。準備工程31は、螺旋止めのため設けた通孔および直線状に配置した複数の封着孔を有する金属外環と、金属外環の封着孔に挿通した複数のリードと、金属外環とリードとを封着した絶縁材とを備え、金属外環は、金属外環の所定表面にスパイク部を有し、スパイク部は、金属外環のリードを封着した絶縁材の外周を囲むように設けられており、さらに金属外環の一部を突出させてその突出先端部を鋭角状に形成して設けられた気密端子と、これを取付ける冷媒および潤滑油を含む電動機圧縮機を収めたアルミダイキャスト製の気密容器を用意する工程である。(2)気密端子のリードと気密容器に収容された電気装置の配線コードとを電気接続する電気接続工程32、(3)気密端子を電気装置の気密容器に設けた通孔に載せてセットする載置工程33、(4)気密端子と前記気密容器とを螺旋止めすることによって、前記気密容器に気密端子のスパイク部を圧入して電気装置の取付け部分にくい込ませることで、前記気密容器に内蔵する電気装置と気密端子とを気密封止する端子取付工程34よりなる。
【0023】
本発明に係る実施例4の気密容器40は、
図4に示すように、実施例1の気密端子10を本発明の気密端子の取付け方法30によって組み立てられた気密容器ある。冷媒および潤滑油を含む電動機圧縮機を収めたアルミダイキャスト製の容器体401と、これを貫通する挿着孔402に気密に固着され、容器体401の外側に配置された外部装置と電気接続するため前記電動機圧縮機に配線接続された気密端子403とを備え、気密端子403は、容器体401をナット406により螺旋止するため設けた通孔41および直線状に配置した複数の封着孔42を有する合金鋼の金属外環43と、金属外環43の封着孔42に挿通し、容器体401に内蔵された前記電動機圧縮機のコネクタブロック405に取付けられているコネクタブロック405の配線コード404に電気接続された複数のFe-Cr鉄基合金製リード44と、金属外環43とリード44とを封着したソーダバリウムガラスの絶縁材45とを有し、金属外環43は、気密端子403と気密容器401との固着面にアルミダイキャストより硬質の合金鋼で構成されたスパイク部46を有し、スパイク部46は、金属外環43より突出した先端部が気密容器401の器壁中に突刺されて気密に固定されている。スパイク部46は、金属外環43の一部を突出して設けられ、さらに金属外環43のリード44を封着した絶縁材45の外周を囲むように設けられており、かつスパイク部46が電気装置を収めた気密容器401の外壁面に圧入されて気密に螺旋締結されている。電気装置の外壁面に設けられた端子取付孔とリード44を封着した絶縁材45は、スパイク部46に囲まれた内側に配置されるので、スパイク部46に囲まれた内側と外側とを気密に隔てることができる。
【0024】
本発明に係る実施例5の気密容器50は、
図5に示すように、実施例2の気密端子20を本発明の気密端子の取付け方法30によって組み立てられた気密容器あって、冷媒および潤滑油を含む電動機圧縮機を収めたアルミダイキャスト製の容器体501と、容器体501を貫通する挿着孔502に気密に固着され、容器体501の外側に配置された外部装置と配線接続される気密端子503とを備え、気密端子503は、容器体501をナット506により螺旋止するため設けた通孔51および直線状に配置した複数の封着孔52を有する炭素鋼の金属外環53と、金属外環53の封着孔52に挿通し、容器体501に内蔵された前記電動機圧縮機のコネクタブロック505に取付けられている配線コード504に電気接続された複数のFe-Cr鉄基合金製リード54と、金属外環53とリード54とを封着したソーダバリウムガラスの絶縁材55とを有し、金属外環53は、気密端子503と気密容器501との固着面にアルミダイキャストより硬質のセラミクス製スパイクチップ561で構成されたスパイク部56を有し、スパイク部56は、金属外環53より突出した先端部が容器体501の器壁中に突刺されて気密に固定されている。スパイク部56は、金属外環53の表面より突出して設けられ、さらに金属外環53のリード54を封着した絶縁材55の外周を囲むように設けられており、かつスパイク部56が容器体502の外壁面に圧入されて気密に螺旋締結されている。容器体502の外壁面に設けられた端子取付孔とリード54を封着した絶縁材55は、スパイク部56に囲まれた内側に配置されるので、スパイク部56に囲まれた内側と外側とを気密に隔てることができる。
【0025】
上記実施例1ないし4のスパイク部は、電気装置の容器体に押し当てられ前記容器体表面にくい込みながら螺旋で締結される。これにより、気密端子の金属外環と外部装置の端子取付孔との隙間を塞いで気密封止し、外部装置の容器体と金属外環との取付け部位周辺の気密性を確保する。本発明に係る気密端子は、リードを外部装置に電気接続させた後、外部装置の端子取付け孔に挿着され、螺旋で締結するだけで、簡便かつ迅速に気密端子の取付けを完了できる。
【0026】
本発明に係る気密端子は、リードを金属外環にガラス封着させた後、さらに金属表面に所望のめっき被覆を施すことができる。また、上記実施例に記載のリードは、導電性の金属材であれば何れの材料を用いてもよい、例えばFe-Cr合金に限らず、適宜、Fe-Ni合金、炭素鋼、銅合金、アルミニウム合金等に変更してもよい。同様に実施例に記載の絶縁材は、リードと金属外環とを電気絶縁および気密封着できればよく、ソーダバリウムガラスに限らず任意のガラス材を用いることができる。本発明の絶縁材は、必要ならば絶縁材の一部を互いに異なるガラス材で形成してもよく、また、さらに必要ならばガラス材の一部または全部をエポキシ樹脂等の樹脂材に替えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、気密端子に利用でき、特に車載用の気密端子に利用できる。
【符号の説明】
【0028】
気密端子10、通孔11、封着孔12、金属外環13、リード14、絶縁材15、スパイク部16、被帽17、気密端子20、通孔21、封着孔22、金属外環23、リード24、絶縁材25、スパイク部26、被帽27、スパイクチップ261、気密端子の取付け方法30、準備工程31、電気接続工程32、載置工程33、端子取付工程34、気密容器40、通孔41、封着孔42、金属外環43、リード44、絶縁材45、スパイク部46、容器体401、挿着孔402、気密端子403、配線コード404、コネクタブロック405、ナット406、気密容器50、通孔51、封着孔52、金属外環53、リード54、絶縁材55、スパイク部56、容器体501、挿着孔502、気密端子503、配線コード504、コネクタブロック505、ナット506、スパイクチップ561。