(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】板材搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65H 3/54 20060101AFI20220830BHJP
B21D 43/24 20060101ALI20220830BHJP
B65H 3/60 20060101ALI20220830BHJP
B65H 3/08 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B65H3/54 330
B21D43/24 B
B65H3/60 310
B65H3/08 310A
(21)【出願番号】P 2019180615
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】本多 慶次
(72)【発明者】
【氏名】三宅 和巳
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-155136(JP,A)
【文献】特開2019-156585(JP,A)
【文献】特開平04-217532(JP,A)
【文献】特開平10-035929(JP,A)
【文献】米国特許第05433426(US,A)
【文献】特開2018-024508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00- 3/68
B21D 43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に積層された複数の板材のうち最上部に位置する板材である上板材を移動させる板材搬送システムであって、
前記上板材を上方向に持ち上げ、所定の位置へ移動させる板材保持具と、
少なくとも2つの板材分離装置と、を備え、
前記少なくとも2つの板材分離装置は、
第1位置と、該第1位置とは異なる第2位置と、の間を移動可能に構成され、前記第1位置から前記第2位置への移動方向と交差する方向であり、かつ、水平方向に並べて配置される2つ以上の可動部と、
前記2つ以上の可動部を前記第1位置に向けて付勢する、前記2つ以上の可動部それぞれに設けられる少なくとも1つの付勢部と、を備え、
前記2つ以上の可動部は、1つのハウジングに配置されており、
前記2つ以上の可動部は、当接部を備え、該当接部は、前記可動部における鉛直方向下側に位置し、前記板材保持具が前記上板材を上方向に持ち上げたときに該上板材に当接するように構成されており、
また前記2つ以上の可動部は、前記上板材が前記当接部に当接した状態からさらに上方向に移動したときには、前記上板材に押圧されて前記第2位置に向かって移動し、それにより、前記上板材の上方向への移動が可能となるように構成されており、
前記少なくとも2つの板材分離装置は、前記上板材を中心とした両側に配置される第1板材分離装置と第2板材分離装置とを含み、
前記第1板材分離装置の前記2つ以上の可動部と、前記第2板材分離装置の前記2つ以上の可動部と、は向かい合って配置され、
前記第1板材分離装置の有する2つ以上の前記可動部と、前記第2板材分離装置の有する2つ以上の前記可動部と、の間隔は、前記上板材の幅よりも小さい、板材搬送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の
板材搬送システムであって、
前記当接部は、外側に向かって凸状である部分を含む、
板材搬送システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の
板材搬送システムであって、
さらに、前記複数の板材を磁化する磁化部を備える、
板材搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、板材分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば金属の板材にプレス加工等を行う場合に、積層された複数の板材における最上部に位置する板材をバキュームカップ等により持ち上げ、搬送する場合がある。下記特許文献1では、持ち上げた板材に突き棒又は引掛け爪を接触させて板材を湾曲させることで、最上部の板材と他の板材とを分離させる分離方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
板材の組成、厚さ、表面状態によっては、上述した特許文献1の技術では、最上部の板材と他の板材との分離が実現できない場合があった。
本開示の一局面は、複数の板材から1つの板材を分離する新規な装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、上下方向に積層された複数の板材のうち最上部に位置する板材である上板材を板材保持具を用いて上方向に持ち上げるときに、上記複数の板材における上板材以外の板材である下板材と上板材とを分離させる板材分離装置である。この板材分離装置は、少なくとも1つの可動部と、少なくとも1つの付勢部と、を備える。可動部は、第1位置と、第1位置とは異なる第2位置と、の間を移動可能に構成される。少なくとも1つの付勢部は、少なくとも1つの可動部を第1位置に向けて付勢する。上述した少なくとも1つの可動部は、板材保持具が上板材を上方向に持ち上げたときに上板材に当接する当接部を有している。この当接部は、可動部における鉛直方向下側に位置する。また少なくとも1つの可動部は、上板材が当接部に当接した状態からさらに上方向に移動したときには、上板材に押圧されて第2位置に向かって移動し、それにより、上板材の上方向への移動が可能となるように構成されている。
【0006】
このような構成であれば、板材保持具によって上板材を持ち上げると、上板材の端部が当接部に当接し、可動部を第2位置へ押し込む。可動部が第2位置へ移動すると、上板材は上方向に移動可能となる。そして、上板材が可動部を通過する過程で、上板材に重なることで板材保持具に保持されていた下板材が可動部に当接するため、そのような下板材が上板材から分離されることを促進できる。つまり、上述した板状分離装置は、新規な技術思想により上記分離を促進することができる。
【0007】
上述した板材分離装置において、少なくとも1つの可動部は、2つ以上の可動部を含んでもよい。2つ以上の可動部は、第1位置から第2位置への移動方向と交差する方向に並べて配置されていてもよい。このような構成であれば、上板材と下板材との分離を促進する可動部が複数備えられていることから上板材と下板材との分離を高度に実現することができる。
【0008】
上述した板材分離装置において、当接部は、外側に向かって凸状である部分を含んでもよい。このような構成であれば、当接部における外側に向かって凸状である部分が下板材と当接しやすくなるため、上板材と下板材との分離を高度に促進することができる。
【0009】
上述した板材分離装置において、さらに、複数の板材を磁化する磁化部を備えてもよい。このような構成であれば、磁化部と、可動部と、の両方を用いて、上板材と下板材との分離を高度に実現することができる。
【0010】
本開示の別の一態様は、上下方向に積層された複数の板材のうち最上部に位置する板材である上板材を移動させる板材搬送システムである。板材搬送システムは、板材保持具と、上述した本開示の一態様に係る少なくとも2つの板材分離装置と、を備える。板材保持具は、上板材を上方向に持ち上げ、所定の位置へ移動させる。少なくとも2つの板材分離装置は、上板材を中心とした両側に配置される第1板材分離装置と第2板材分離装置とを含む。第1板材分離装置の有する少なくとも1つの可動部と、第2板材分離装置の有する少なくとも1つの可動部と、の間隔は、上板材の幅よりも小さい。
【0011】
このような構成では、上述した一態様の板材分離装置の効果を奏することができる。また、板材保持具により上板材を上昇させると、少なくともいずれか一方の可動部に上板材及び下板材が当接することとなり、良好にそれらの分離を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aは、実施形態の板材搬送システムの模式的な正面図であり、
図1Bは、板材保持具が2Aを保持した状態の板材搬送システムの模式的な正面図である。
【
図2】
図2Aは、実施形態の板材分離装置の左側面図であり、
図2Bは、実施形態の板材分離装置の正面図であり、
図2Cは、実施形態の板材分離装置の平面図である。
【
図3】
図3A-3Cは、可動ユニットの動作を説明する模式的な側面図である。
【
図4】
図4A-4Bは、可動部による上板材と下板材の分離作用を説明する模式的な側面図である。
【
図5】
図5は、板材搬送システムによる効果の1つを説明する正面図である。
【
図6】
図6は、変形例の板材分離装置の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.実施形態]
[1-1.板材搬送システムの構成]
図1A,1Bに示す板材搬送システム1は、上下方向に積層された複数の板材2のうち最上部に位置する板材である上板材2Aを持ち上げ、所定の位置に搬送するシステムである。
【0014】
板材搬送システム1は、1つ以上の板材保持具3と、1つ以上の板材分離装置10と、を備える。本実施形態では2つの板材保持具3及び2つの板材分離装置10を用いた構成を例示するが、板材2の大きさ、形状等に応じて、板材保持具3及び板材分離装置10の数や配置は任意に設定してもよい。
【0015】
板材保持具3は、上下方向、及び、水平方向に関して所定の範囲を移動可能に構成されている。
図1Bに示すように、板材保持具3は、下方へ移動して上板材2Aの上面に当接して該上板材2Aを保持し、上板材2Aを上方向に持ち上げることができる。板材保持具3として、例えば、真空吸着により上板材2Aの上面を保持するバキュームカップを用いてもよい。もちろん、バキュームカップ以外の、板材を保持可能な装置を用いてもよい。
【0016】
板材分離装置10は、
図2A~2Cに示されるように、ハウジング11と、可動ユニット21と、レシーブプレート31と、磁化部41と、を備える。この板材分離装置10は、板材保持具3を用いて上板材2Aを上方向に持ち上げるときに、上板材2Aを下板材2Bから分離させる装置である。
【0017】
ハウジング11は、可動ユニット21、レシーブプレート31、及び磁化部41を支持する。ハウジング11は、ベースプレート11Aと、ガイドプレート11B~11Dと、を含む。ベースプレート11Aは板状の部材である。ガイドプレート11B~11Dは、互いに間隔を空けて重なるように配置され、ベースプレート11Aに対して直交するようにベースプレート11Aに固定されている。
【0018】
可動ユニット21は、2つのラッチプレート22と、4つのスプリング23と、2つのボルト24と、を含む。なお、ラッチプレート22が可動部の一例であり、スプリング23が付勢部の一例である。
【0019】
ラッチプレート22は、ガイドプレート11Bと11Cの間、及び、ガイドプレート11Cと11Dの間に配置される板状の部材である。ラッチプレート22は、第1位置と、該第1位置とは異なる第2位置と、の間を移動可能に構成されている。第1位置とは、
図3Aに示されるように、ラッチプレート22とベースプレート11Aとの間隔が比較的大きく、ラッチプレート22のうちガイドプレート11Bから突出した部分が大きくなる位置である。一方、第2位置とは、
図3Cに示されるように、ラッチプレート22とベースプレート11Aとの間隔が比較的小さく、ラッチプレート22のうちガイドプレート11Bから突出した部分が小さくなる位置である。2つのラッチプレート22は、第1位置から第2位置への移動方向と交差する方向に並べて配置されている。ここでいう移動方向とは、第1位置と第2位置とを結ぶ直線の延びる方向ともいえる。また2つのラッチプレート22は、別の言い方をすると、板厚方向に並べられている。
【0020】
2つのラッチプレート22は同一の形状である。ラッチプレート22それぞれは、ガイドプレート11Bから突出する方向の先端に位置する先端部22Aと、先端部22Aの下側の下側傾斜面22Bと、先端部22Aの上側の上側傾斜面22Cと、2つの長穴22Dと、を有する。上述した突出する方向とは、後述するスプリング23がラッチプレート22を付勢する方向と同じ方向である。以下では、この方向を付勢方向と記載する。
【0021】
下側傾斜面22Bは、板材保持具3が上板材2Aを上昇させたときに該上板材2Aに当接する面である。
下側傾斜面22Bは、ラッチプレート22における鉛直方向下側に位置している。下側傾斜面22Bは、板材2の内側に向かうほど、下方から上方に傾斜している。別の言い方をすると、下側傾斜面22Bは、ラッチプレート22が第1位置にある場合においてラッチプレート22の下側に面する部分に備えられており、上板材2A側の先端側ほど上方に位置するように構成されている。ここでいう上板材2A側の先端とは、上記付勢方向の先端ともいえる。この先端について別の言い方をすると、板材分離装置10から板材2に向かう方向の先端ともいえる。下側傾斜面22Bは、また別の言い方をすると、ラッチプレート22が第1位置にある場合において、ラッチプレート22における下側を向く面のうち、ラッチプレート22の水平方向の先端側から反対方向に向かうほど下側に位置するように構成される面である。下側傾斜面22Bが、当接部に相当する。また下側傾斜面22Bは上述した構成であるから、傾斜部とも説明できる。なお下側傾斜面22Bにおける先端部22A近傍は、
図4Dに示されるように、側面視で曲面状であり、外側に向かって凸状である凸状部22Eを含む。
【0022】
上側傾斜面22Cは、ラッチプレート22が第1位置にあるときに上側を向く面のうち、ラッチプレート22の水平方向の先端側から反対方向に向かうほど上側に位置するように構成される面である。
【0023】
2つの長穴22Dは、付勢方向に沿って長さを有する貫通穴である。2つの長穴22Dは、長さ方向と交差する方向に並べて配置される。
図3A~3Cに示されるように、2つのボルト24の軸24Aが、それぞれ別の長穴22Dの内部を通過する。このような構造により、ラッチプレート22の移動範囲と、ラッチプレート22の向きと、が定められる。
【0024】
スプリング23は、コイルバネである。スプリング23は、一端がベースプレート11Aに当接し、他端がラッチプレート22に当接する。そのためスプリング23は、ラッチプレート22を、ベースプレート11Aから離れる方向に付勢する。即ち、スプリング23はラッチプレート22を第1位置に向けて付勢する。
【0025】
ボルト24は、ガイドプレート11Bからガイドプレート11Dまでを貫通するようにハウジング11に固定される。なお、ボルト24のねじには、ナット24Bが締め込まれている。ボルト24の軸24Aは、上述したように、長穴22Dを通過する。
【0026】
レシーブプレート31は、
図1A-1Bに示されるように、複数の板材2を下方から支持するように構成されている。レシーブプレート31は、ハウジング11に固定され、少なくとも一部がハウジング11から突出する。突出した部分の上面は、複数の板材2のうち、最も下方に位置する板材2の端部を載せることができる平面形状である。
【0027】
磁化部41は、いわゆるマグネットフロータであり、ハウジング11に固定される。磁化部41は、例えば、永久磁石や電磁石を有する。磁化部41の側方に配置された複数の板材2は、磁化部41により磁化される。磁化された複数の板材2は、互いに反発し、互いに分離しやすくなる。なお磁化部41の具体的な構成、配置などは特に限定されず、複数の板材2を磁化できる様々な態様に変更できる。
【0028】
[1-2.可動ユニットの動作]
以下では、板材保持具3が上板材2Aを保持するときに、上板材2Aに張り付いて重なった下板材2Bも同時に持ち上げている場合を説明する。上板材2Aと下板材2Bとは、板材表面に付着した防錆のための油や、バキューム時に発生する板間の真空状態に起因して、互いに張り付こうとする力が生じる。その結果、上板材2Aの下方に下板材2Bが張り付いた状態が生じうる。なお板材保持具3が上板材2Aのみを持ち上げている場合でも、可動ユニット21の動作に大きな変化はない。
【0029】
本実施形態の板材搬送システム1では、
図1A-1Bに示されるように、2つの板材分離装置10が上板材2Aを中心とした両側に配置されている。そして、一対のラッチプレート22の先端部22A同士の間隔は、上板材2Aの幅よりも小さい。なお、ここでいう幅とは、上板材2Aにおける、2つの板材分離装置10の間に位置する部分の幅である。
【0030】
図3A~3Cを用いて、板材分離装置10の可動ユニット21の動作を説明する。ラッチプレート22がスプリング23以外から荷重を受けていないときには、ラッチプレート22は、
図3Aに示す位置、即ち、上述した第1位置に位置する。
【0031】
板材保持具3が上板材2Aを上昇させると、上板材2Aの端部が第1位置にあるラッチプレート22の下側傾斜面22Bに当接する。さらに上板材2Aが上昇すると、上板材2Aはラッチプレート22の表面を摺動しつつ上方向に移動する。そのとき、ラッチプレート22は、上板材2Aに押圧される。スプリング23による付勢力は、上板材2Aが上昇し下側傾斜面22Bを摺動するときにラッチプレート22に加えられる、付勢力と反対方向の力よりも小さい。そのため、
図3Bに示されるように、ラッチプレート22は上述した第2位置に向かって移動する。
【0032】
さらに上板材2Aが上昇して、上板材2Aが先端部22Aに当接しているときに、ラッチプレート22は最も奥まで押し込まれて、第2位置まで移動する。ラッチプレート22がこのような動作を行うため、上板材2Aはラッチプレート22よりも上方向への移動が可能となる。なお
図3Cに示されるように、上板材2Aの下方に下板材2Bが存在する場合には、ラッチプレート22が下板材2Bに作用して、上板材2Aと下板材2Bとの分離を促進する。
【0033】
図4Aは、上板材2Aと下板材2Bとが水平方向にズレを生じずに重なっている場合を示す。上板材2Aが上側に移動して先端部22Aを通過すると、先端部22Aと下板材2Bとが当接する。そして、スプリング23による付勢力が下板材2Bに加わり、先端部22Aと下板材2Bとの間で摩擦力が発生することで、下板材2Bに鉛直下方向に力がかかる。これにより、下板材2Bにかかる鉛直下方向の力が、下板材2Bと上板材2Aとが張り付こうとする力より大きくなるため、上板材2Aと下板材2Bとの分離が促進される。
【0034】
図4Bは、上板材2Aと下板材2Bとが水平方向にズレを生じている場合を示す。
図4Bのように、下板材2Bが上板材2Aよりもラッチプレート22側に位置している場合、下板材2Bは、下側傾斜面22Bに当接する。そのため、下板材2Bはラッチプレート22から下向きの荷重を受けることになる。これにより、下板材2Bにかかる鉛直下方向の力が、下板材2Bと上板材2Aとが張り付こうとする力より大きくなるため、上板材2Aと下板材2Bとの分離が促進される。なお凸状部22Eによって、ラッチプレート22と下板材2Bとは当接しやすくなっている。
【0035】
一方、
図4Bに示すラッチプレート22とは上板材2Aを挟んで反対側に配置される、図示しないラッチプレート22を基準とすると、上板材2Aが下板材2Bよりもラッチプレート22側に位置している。そのため、そのラッチプレート22により下板材2Bを下方に押圧することはできないが、
図4Aに示すように下板材2Bを水平方向に押圧して、上板材2Aと下板材2Bとの分離を促進できる場合がある。
【0036】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)板材分離装置10では、板材保持具3によって上板材2Aを持ち上げると、上板材2Aの端部が下側傾斜面22Bに当接し、ラッチプレート22を第2位置へ押し込む。そして、上板材2Aがラッチプレート22を通過する過程で、下板材2Bが先端部22Aや下側傾斜面22Bによって押圧されるため、上板材2Aと下板材2Bとの分離を促進することができる。また、ラッチプレート22が第2位置へ移動すると、上板材2Aは上方向に移動可能となる。そのため、板材保持具3から上板材2Aが脱落してしまう危険を低減でき、より確実に板材保持具3により上板材2Aを所望の位置へ搬送することができる。
【0037】
(1b)板材分離装置10は、2つのラッチプレート22を備えている。そして、それぞれが上板材2Aと下板材2Bとを分離する機能を奏する。そのため、1つの板材分離装置10によって上板材2Aと下板材2Bとの分離を高度に実現することができる。
【0038】
(1c)ラッチプレート22の下側傾斜面22Bにおける先端部22A近傍の凸状部22Eは、外側に向かって凸状である曲面形状である。そのため、
図4Bに示されるように、上板材2Aと下板材2Bとの間にズレが生じている場合に、下板材2Bに下側傾斜面22Bが当接しやすくなる。これにより、上板材2Aと下板材2Bとの分離を好適に実現できる。
【0039】
(1d)板材分離装置10は、磁化部41を備えている。これにより、可動ユニット21による上板材2Aと下板材2Bの分離をより確実に実現することができる。
(1e)板材搬送システム1では、向かい合う2つのラッチプレート22における先端部22A同士の間隔は、上板材2Aの幅よりも小さい。そのため、板材保持具3により上板材2Aを上昇させると、少なくともいずれか一方のラッチプレート22には上板材2A及び下板材2Bが当接する。その結果、上板材2Aと下板材2Bとの分離を好適に実現できる。
【0040】
(1f)板材分離装置10が磁化部41を備えることから、板材2は磁力によっても互いに分離し、その結果、磁力により上板材2Aは上方向に移動する。
図5に示されるように、ラッチプレート22は、磁力によって上昇した板材2Cと当接することで、破線で示す板材2Dのように、磁力によって想定外の位置へ板材が飛び出してしまうことを抑制できる。
【0041】
なお、本実施形態のように板材分離装置10が磁化部41を備える場合は、ラッチプレート22を、上板材2Aが磁化により浮く位置よりも上側に位置するように配置してもよい。このような構成であれば、磁力によって上板材2A及び下板材2Bがラッチプレート22よりも上方に移動してしまうことが抑制され、可動ユニット21による分離機能を充分に発揮させることができる。
【0042】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0043】
(2a)上記実施形態では、当接部を備える可動部の一例としてラッチプレート22を例示した。しかしながら、可動部はラッチプレート22の形状に限定されない。ラッチプレートは、少なくとも、ラッチプレートにおける鉛直方向下側に位置し、板材保持具3が上板材2Aを上方向に持ち上げたときに該上板材2Aに当接する当接部を有するように構成されていればよい。なお、このような当接部は、ラッチプレートが第1位置にある場合において、ラッチプレートの下側部分に備えられ、上板材側の先端側ほど上方に位置する傾斜部とも説明できる。またラッチプレートは、例えば、上側傾斜面22Cや凸状部22Eを有していない構成であってもよいし、下側傾斜面22Bの下端部分、即ち上板材2Aに当接する部分の先端が尖った形状であってもよい。
【0044】
(2b)上記実施形態では、付勢部の一例としてコイルバネであるスプリング23を例示したが、付勢部はスプリング23以外の部材を用いてもよい。例えば、板バネやトーションバー、エラストマーなどの弾性部材を用いてもよい。また、付勢部として用いるバネ等の数や配置は特に限定されない。
【0045】
(2c)上記実施形態では、ラッチプレート22は、軸24Aと長穴22Dとによって、水平方向に所定の範囲でスライド移動を行う構成を例示した。しかしながら、ラッチプレート22の移動を実現するための構造は、上述した構造に限定されない。例えばラッチプレート22はレールを用いたスライド構造によって所定範囲での移動が実現され構成であってもよい。
【0046】
(2d)上記実施形態では、ラッチプレート22は、水平方向に直線状に移動する構成を例示した。しかしながらラッチプレートの移動方向は特に限定されない。例えば、移動方向は斜め方向であってもよい。例えば
図6に示す板材分離装置100のように、ラッチプレート101は軸102を中心として回転移動するように構成されていてもよい。ラッチプレート101は当接部101Aを有しており、板材分離装置10と同様の機能を奏することができる。またラッチプレート101を付勢する付勢部として、例えば、渦巻きばね103を用いてもよい。
【0047】
(2e)上記実施形態では、1つの板材分離装置10に2つのラッチプレート22が設けられる構成を例示したが、1つの板材分離装置10に1つのラッチプレート22が設けられていてもよいし、3つ以上のラッチプレート22が設けられていてもよい。
【0048】
(2f)上記実施形態では、複数の板材2を中心として両側に2つの可動ユニット21を配置する構成を例示した。しかしながら、板材2の大きさや形状等に応じて、可動ユニット21の配置や数は任意に調整できる。例えば、可動ユニット21は1つのみ備えられていてもよいし、可動ユニット21同士が対向しない位置に配置されていてもよい。
【0049】
(2g)上記実施形態では、板材分離装置10は磁化部41を備える構成を例示した。しかしながら、板材分離装置10は磁化部41を備えていなくともよい。
(2h)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0050】
1…板材搬送システム、2,2C,2D…板材、2A…上板材、2B…下板材、3…板材保持具、10,100…板材分離装置、11…ハウジング、11A…ベースプレート、11B~11D,11C,11D…ガイドプレート、21…可動ユニット、22,101…ラッチプレート、22A…先端部、22B…下側傾斜面、22C…上側傾斜面、22D…長穴、22E…凸状部、23…スプリング、24…ボルト、24A…軸、24B…ナット、31…レシーブプレート、41…磁化部、101A…当接部、102…軸、103…渦巻きばね