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特許7132219失活ヒドロホルミル化触媒溶液を再生する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】失活ヒドロホルミル化触媒溶液を再生する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/40 20060101AFI20220830BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20220830BHJP
   C07C 45/50 20060101ALI20220830BHJP
   C07C 47/02 20060101ALI20220830BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
B01J31/40 Z
B01J31/24 Z
C07C45/50
C07C47/02
C07B61/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019523799
(86)(22)【出願日】2017-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 US2017060092
(87)【国際公開番号】W WO2018089284
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】62/419,168
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508168701
【氏名又は名称】ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エイ・ブラマー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・エヌ・フェルステッド・セカンド
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・シー・アイゼンシュミット
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-072995(JP,A)
【文献】米国特許第03547964(US,A)
【文献】特表2009-519941(JP,A)
【文献】特表2003-521434(JP,A)
【文献】特開2009-029712(JP,A)
【文献】米国特許第05290743(US,A)
【文献】特開昭53-007608(JP,A)
【文献】特開昭51-023212(JP,A)
【文献】BREIT, B.,Accounts of Chemical Research,2003年,Vol.36,pp.264-275,<DOI:10.1021/ar0200596>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07B 61/00
C07C 45/50
C07C 47/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジウム、多座ホスフィン配位子、および多座ホスフィン配位子分解生成物を含む失活ヒドロホルミル化触媒溶液を再生する方法であって、前記方法が、前記失活ヒドロホルミル化触媒溶液に過酸化物を添加することを含み、かつ、前記失活ヒドロホルミル化触媒溶液が、少なくとも1つの生成物アルデヒドをさらに含み、前記過酸化物を添加する前に、前記生成物アルデヒドの大部分を除去することをさらに含む、方法。
【請求項2】
過酸化物の前記添加後に、追加の多座ホスフィン配位子を、前記触媒溶液に添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記過酸化物を添加するときの前記失活ヒドロホルミル化触媒溶液の温度が、0℃~40℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生成物アルデヒドの大部分が、気化によって除去される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記過酸化物を添加するときの前記失活ヒドロホルミル化触媒溶液の温度が、70℃以上である、請求項または請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記過酸化物を添加するときの前記失活ヒドロホルミル化触媒溶液の温度が、100℃以上である、請求項または請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記過酸化物が、過酸化水素、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシケタール、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、失活ヒドロホルミル化触媒溶液を再生する方法に関し、具体的には、多座ホスフィン配位子を含むヒドロホルミル化触媒溶液を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルデヒドは、ヒドロホルミル化を使用して、いくつかの方法でオレフィンから調製することができる。例えば、オレフィンを多座ホスフィン修飾ロジウム触媒の存在下で一酸化炭素および水素と反応させて、3~21個の炭素原子を含有するアルデヒドを生成することができる。
【0003】
根本的な原因は様々であるが、経時的な触媒活性の定常的な喪失が、ヒドロホルミル化プロセスで問題である。例えば、トリフェニルホスフィン(TPP)によって促進されるロジウムプロセスは、ロジウムクラスタ化および抑制性リン化合物の形成に起因する固有の失活を被ることが知られている(例えば、米国特許第4,277,627号および米国特許第4,605,780号参照)。同様に、ロジウム-ビスホスファイト触媒は、米国特許第5,874,640号に詳述されているように、リン含有分解生成物によって抑制される。したがって、触媒失活を軽減するための有効な戦略を発見して、用いることは、ヒドロホルミル化プロセス開発の重要な態様である。
【0004】
ロジウム-多座ホスフィンは、失活が問題となる別の種類のヒドロホルミル化触媒である。失活したロジウム-多座ホスフィンヒドロホルミル化触媒に、活性を回復させるための容易な手段が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
失活ヒドロホルミル化触媒溶液を再生する方法が本明細書の実施形態に開示されている。
【0006】
一実施形態では、本発明は、ロジウム、多座ホスフィン配位子、および多座ホスフィン配位子分解生成物を含む失活ヒドロホルミル化触媒溶液を再生する方法に関し、方法は、過酸化物を失活ヒドロホルミル化触媒溶液に添加することを含む。いくつかの実施形態では、過酸化物の添加後に、追加の多座ホスフィン配位子配位子を、触媒溶液に添加することができる。
【0007】
これらおよび他の実施形態は、発明を実施するための形態でより詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示された方法は、触媒の一部として多座ホスフィン配位子を利用するヒドロホルミル化プロセスでの使用に特に好適である。そのようなヒドロホルミル化プロセスは、成分として遷移金属および多座ホスフィン配位子を含む触媒の存在下で少なくとも1つのアルデヒド生成物を形成するのに十分なヒドロホルミル化条件下で、CO、Hおよび少なくとも1つのオレフィンを接触させることを含む。
【0009】
元素周期律表およびその中の様々な族への言及は全て、CRC Handbook of Chemistry and Physics、第72版(1991-1992)CRC Press、I-11頁に掲載されているバージョンに対するものである。
【0010】
反対のことが記述されていない限り、または文脈から黙示的でない限り、全ての割合およびパーセンテージは、重量に基づくものであり、全ての試験方法は、本出願の出願日現在のものである。米国特許実務を目的として、参照される特許、特許出願、または刊行物の内容は必ず、それらの全体が、特に定義の開示、および当該技術分野における一般的な知識に関して(本開示において具体的に提供される定義に決して矛盾しない程度に)、参照により本明細書に組み込まれる(または、刊行物の相当する米国特許出願が同じように参照により組み込まれる)。
【0011】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」、および「1つ以上」は互換的に使用される。用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、およびそれらの変形は、これらの用語が明細書および特許請求の範囲に現れる場合に限定的な意味を有さない。したがって、例えば、「a」疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物は、組成物が「1つ以上の」疎水性ポリマーの粒子を含むことを意味すると解釈することができる。
【0012】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。本発明の目的のために、数値範囲は、その範囲に含まれる可能性のある全ての部分範囲を含み、サポートすることを意図すると当業者が理解することと一致して理解されるべきである。例えば、1~100の範囲は、1.01~100、1~99.99まで、1.01~99.99まで、40~60まで、1~55までなどを伝達することを意図している。また、本明細書において、特許請求の範囲におけるそのような列挙を含む、数値範囲および/または数値の列挙は、用語「約」を含むと読むことができる。そのような場合、「約」という用語は、本明細書に列挙されたものと実質的に同じである数値範囲および/または数値を指す。
【0013】
本明細書中で使用される場合、用語「ppmw」は、重量百万分率を意味する。
【0014】
本発明の目的のために、用語「炭化水素」は、少なくとも1個の水素原子および1個の炭素原子を有する全ての許容される化合物を含むことが意図される。そのような許容される化合物はまた、1つ以上のヘテロ原子を有し得る。広義の態様において、許容される炭化水素は、非環式(ヘテロ原子を含むまたは含まない)および環式、分岐および非分岐、炭素環および複素環、置換または非置換であり得る芳香族および非芳香族有機化合物を含む。
【0015】
本明細書中で使用されるとき、「置換された」という用語は、別段の指示がない限り、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが意図される。広範な態様では、許容される置換基には、非環式および環式、分岐状および非分岐状、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の有機化合物の置換基が含まれる。例示的な置換基には、例えば、アルキル、アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル(炭素の数が1~20以上、好ましくは1~12の範囲であり得る)、ならびにヒドロキシ、ハロ、およびアミノが含まれる。許容される置換基は、適切な有機化合物について、1つ以上であり得、同じまたは異なり得る。本発明は、有機化合物の許容される置換基によっていかなる手法でも限定されることは意図されていない。
【0016】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドロホルミル化」は、限定されるものではないが、1つ以上の置換もしくは非置換オレフィン系化合物または1つ以上の置換もしくは非置換オレフィン系化合物を含む反応混合物を1つ以上の置換もしくは非置換アルデヒドを含む反応混合物を含む1つ以上の置換または非置換アルデヒドの転化を含む全ての許容される非対称および非非対称ヒドロホルミル化プロセスを含むことが意図される。
【0017】
用語「反応流体」、「反応媒体」、「プロセス流体」および「触媒溶液」は、本明細書では互換的に使用され、これらに限定されないが、(a)金属-有機リン配位子錯体触媒(b)遊離有機リン配位子、(c)反応中に形成されたアルデヒド生成物、(d)未反応反応体、(e)該金属-有機リン配位子錯体触媒および該遊離有機リン配位子のための溶媒、任意選択で、(f)対応する酸化物などの有機リン配位子分解生成物、を含む混合物を含み得る。反応流体は、限定されないが、(a)反応ゾーン内の流体、(b)分離ゾーンへ向かう途中の流体流、(c)分離ゾーン内の流体、(d)リサイクル流、(e)反応ゾーンまたは分離ゾーンから抜き出された流体、(f)緩衝水溶液で処理された取り出された流体、(g)反応ゾーンまたは分離ゾーンに戻された処理された流体、(h)外部冷却器内の流体、および(i)配位子分解生成物およびそれらの塩、を含むことができる。
【0018】
用語「配位子分解生成物」および「配位子分解生成物」は、本明細書では互換的に使用され、親配位子のロジウム触媒副反応によって生成される小さなリン化合物、ならびに部分酸化多座ホスフィンを含むがこれに限定されない。
【0019】
溶液が、ロジウム、多座ホスフィン配位子、および多座ホスフィン配位子分解生成物を含む、失活ヒドロホルミル化触媒溶液を、再生する方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、そのような方法は、失活ヒドロホルミル化触媒溶液に、過酸化物を添加することを含む。いくつかの実施形態では、過酸化物の添加後に、追加の多座ホスフィン配位子配位子を、触媒溶液に添加する。
【0020】
用語「アルデヒド生成物」、「所望のアルデヒド生成物」、「生成物アルデヒド」および「生成物アルデヒド(複数可)」は互換的に用いられ、ヒドロホルミル化反応から意図的に生成されたアルデヒド(複数可)を含むと考えられる。そのような生成物アルデヒドの例には、プロピオンアルデヒド(エチレンから生成される)、ブチルアルデヒド(プロピレンから生成される)およびバレルアルデヒド(1-ブテンまたは混合ブテンから生成される)が含まれる。いくつかの実施形態では、失活ヒドロホルミル化触媒溶液は、少なくとも1つの生成物アルデヒドをさらに含む。いくつかのそのような実施形態では、過酸化物を添加する前に、生成物アルデヒドの大部分を除去することができる。生成物アルデヒドは、いくつかの実施形態では、気化によって除去することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、過酸化物を添加するとき、失活ヒドロホルミル化触媒溶液は、周囲温度にある。いくつかの実施形態では、過酸化物を添加したときの失活ヒドロホルミル化触媒溶液の温度は、0℃~40℃である。いくつかの実施形態では、過酸化物と接触したときの失活ヒドロホルミル化触媒溶液は、70℃以上の温度である。失活ヒドロホルミル化触媒溶液は、いくつかの実施形態では、過酸化物と接触したときに、100℃以上の温度である。いくつかの実施形態では、過酸化物と接触したときの失活ヒドロホルミル化触媒溶液は、110℃以上の温度である。失活ヒドロホルミル化触媒溶液は、いくつかの実施形態では、過酸化物と接触したときに、115℃以上の温度である。
【0022】
過酸化物は、いくつかの実施形態では、過酸化水素、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシケタール、またはこれらの組み合わせを含む。
【0023】
水素および一酸化炭素は、石油分解および精製操作を含む任意の好適な供給源から取得し得る。合成ガス混合物は、水素およびCOの好ましい供給源である。
【0024】
合成ガス、「合成ガス(syngas)」は、様々な量のCOおよびHを含有するガス混合物に与えられる名称である。生成方法は、よく知られている。水素およびCOは、典型的には、合成ガスの主成分であるが、合成ガスは、COならびにNおよびArなどの不活性ガスを含有し得る。HのCOに対するモル比は大きく変動し得るが、一般に1:100~100:1、好ましくは1:10~10:1の範囲である。合成ガスは、商業的に入手可能であり、しばしば、燃料源として、または他の化学物質の生成のための中間体として使用される。化学生成のための最も好ましいH:COモル比は、3:1~1:3であり、通常、ほとんどのヒドロホルミル化用途のためには約1:2~2:1が目標とされる。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「有機過酸化物」は、少なくとも1つの過酸化物基(ROOR’)を含み、RおよびR’のうちの少なくとも1つが炭素原子を含み、RおよびR’が同じであってもなくてもよい有機化合物を指す。例示的な一群および化合物には、ペルオキシエステル(例えばt-ブチルペルベンゾエート)、ペルオキシジカーボネート(例えばジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート)、ジアルキルペルオキシド(例えばジ-t-ブチルペルオキシド)、ヒドロペルオキシド(例えばt-ブチルヒドロペルオキシド)およびペルオキシケタール(例えば、1,1’-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン)が含まれる。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「過酸化物」は、過酸化水素、有機過酸化物、およびこれらの混合物を含む。
【0027】
ヒドロホルミル化法に用いられ得る置換または非置換オレフィン系不飽和反応物は、2~40個、好ましくは3~20個の炭素原子を含有する光学活性(プロキラルおよびキラル)および非光学活性(アキラル)オレフィン性不飽和化合物の両方を含む。これらの化合物は、米国特許第7,863,487号に詳細に記載されている。そのようなオレフィン性不飽和化合物は、末端または内部不飽和であり、直鎖、分岐鎖または環状構造、ならびにプロペン、ブテン、イソブテンなどのオリゴマー化から得られるものなどのオレフィン混合物(いわゆるダイマーなど)であり得る。(例えば、米国特許第4,518,809号および同第4,528,403号に開示されているように、いわゆる二量体、三量体または四量体プロピレンなどのようなものである。
【0028】
エナンチオマーアルデヒド混合物を生成するために用いることができる不斉ヒドロホルミル化に有用なプロキラルおよびキラルオレフィンには、次式で表されるものが含まれる。
【0029】
【化1】
【0030】
式中、R、R、RおよびRは、同一または異なり(ただし、RはRとは異なるか、またはRはRとは異なると仮定する)、水素、アルキル、置換アルキルであって、該置換は、ベンジルアミノおよびジベンジルアミノなどのジアルキルアミノ、メトキシおよびエトキシなどのアルコキシ、アセトキシなどのアシルオキシ、ハロ、ニトロ、ニトリル、チオ、カルボニル、カルボキサミド、カルボキシアルデヒド、カルボキシル、およびカルボン酸エステルから選択される、置換アルキル、フェニルを含むアリール、フェニルを含む置換アリールであって、該置換は、アルキル、アルキルアミノおよびジアルキルアミノを含むアミノ、例えばベンジルアミノおよびジベンジルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシおよび例えばメトキシおよびエトキシ、アシルオキシ、例えばハロ、ニトリル、ニトロ、カルボキシル、カルボキシアルデヒド、カルボン酸エステル、カルボニル、およびチオから選択される、置換アリール、アセトキシなどのアシルオキシ、ベンジルアミノおよびジベンジルアミノのようなメトキシ、エトキシなどのアルコキシ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノを含むアミノ、アセチルアミノ、ジアセチルアミノなどのアシルアミノおよびジアシルアミノ、ニトロ、カルボニルニトリル、カルボキシル、カルボキサミド、カルボキシアルデヒド、カルボン酸エステル、およびメチルメルカプトなどのアルキルメルカプト、から選択される。この定義のプロキラルおよびキラルオレフィンはまた、R基が結合して環化合物、例えば3-メチル-1-シクロヘキセンなどを形成する上記一般式の分子を含むことが理解される。
【0031】
不斉ヒドロホルミル化に有用な例示的な光学活性またはプロキラルオレフィン化合物は、例えば米国特許第4,329,507号、同第5,360,938号および同第5,491,266号に記載されている。
【0032】
溶媒は、有利には、ヒドロホルミル化プロセスに採用される。ヒドロホルミル化プロセスを過度に妨害しない任意の好適な溶媒が使用され得る。実例として、ロジウム触媒ヒドロホルミル化方法に好適な溶媒には、例えば、米国特許第3,527,809号、同第4,148,830号、同第5,312,996号および同第5,929,289号に開示されているものが含まれる。好適な溶媒の非限定的な例には、飽和炭化水素(アルカン)、芳香族炭化水素、水、エーテル、アルデヒド、ケトン、ニトリル、アルコール、エステル、およびアルデヒド縮合生成物が含まれる。溶媒の具体的な例には、テトラグライム、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、キシレン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ブチルアルデヒド、およびベンゾニトリルが含まれる。有機溶媒はまた、飽和限界までの溶解水を含有し得る。例示的な好ましい溶媒には、ケトン(例えば、アセトンおよびメチルエチルケトン)、エステル(酢酸エチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)、炭化水素(例えば、トルエン)、ニトロ炭化水素(例えば、ニトロベンゼン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF))およびスルホランが含まれる。ロジウム触媒ヒドロホルミル化プロセスにおいて、一次溶媒として、生成したいアルデヒド生成物に対応するアルデヒド化合物および/または例えば、US4,148,830およびUS4,247,486に記載されているように、例えばヒドロホルミル化プロセスの間にその場で生成することができるような高沸点アルデヒド液体縮合副生成物を使用することが好ましい。一次溶媒は通常、連続プロセスの性質上、アルデヒド生成物と高沸点アルデヒド液体縮合副生成物(「重質物」)の両方を含むであろう。溶媒の量は特に決定的ではなく、反応媒体に所望の量の遷移金属濃度を提供するのに十分なだけ必要とされる。典型的には、溶媒の量は、反応流体の総重量を基準として、約5重量パーセント~約95重量パーセントの範囲である。溶媒の混合物を、用いることができる。
【0033】
本発明の方法は、いくつかの実施形態では、失活ヒドロホルミル化触媒が、金属-多座ホスフィン触媒である失活ヒドロホルミル化触媒溶液の再生に特に有用である。一般に、金属-多座ホスフィン触媒は、その場で予備形成または形成することができ、多座ホスフィン配位子、一酸化炭素および任意選択で水素と組み合わせて金属前駆体を含む。触媒錯体は、単核、二核および/またはそれ以上の核形態で存在してもよい。しかしながら、触媒の正確な構造は、知られていない。
【0034】
金属-多座ホスフィン配位子錯体触媒は、光学活性または非光学活性であり得る。金属は、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)から選択される8、9および10族金属を含み得、好ましい金属は、ロジウム、コバルト、イリジウムおよびルテニウム、より好ましくはロジウム、コバルトおよびルテニウム、特にロジウムである。これらの金属の混合物を、使用してもよい。金属-多座ホスフィン配位子錯体および遊離多座ホスフィン配位子を構成する許容される多座ホスフィン配位子には、トリ-、テトラ-、および高級ポリ有機リン化合物が含まれる。配位子の混合物を、金属-多座ホスフィン配位子錯体触媒および/または遊離配位子に用いることができ、そのような混合物は同じでも異なっていてもよい。
【0035】
金属-多座ホスフィン配位子錯体触媒および/または遊離配位子の配位子として働くことができる多座ホスフィン化合物は、アキラル(光学的に不活性)またはキラル(光学的に活性)型のものでよく、当該技術分野で周知である。アキラル多座ホスフィン配位子が、好ましい。
【0036】
本発明の方法が特に好適である多座ホスフィン配位子は、キレート化様式で遷移金属を錯化することができる少なくとも2つの3価のリン原子を含有する化合物である。
【0037】
本開示の方法において持ちることができる多座ホスフィン配位子は、3つのアリール、アルキル、もしくはアリールアルキル基、またはそれらの組み合わせに共有結合した少なくとも2つのリン原子を含む任意の有機化合物を含む。多座ホスフィン配位子の混合物も、用いることができる。
【0038】
代表的な好適な多座ホスフィン配位子は、式I、IIまたはIIIの式を有するものを含む。
【0039】
【化2】
【0040】
式中、Pは、リン原子であり、R~R24の各々は、独立して、水素、ヒドロカルビル基、芳香族環、ヘテロ芳香族環もしくはハロゲン原子、またはNR、ORおよびSRからなる群から選択されるヘテロカルビル基であり、式中、Rは、C~C20のヒドロカルビル基、または1~20個の原子を有するヘテロヒドロカルビル基であり、各々独立して、Cまたはヘテロ原子から選択され、式中、各ヘテロ原子は、独立して、O、S、Si、Ge、P、またはNであり、ヘテロ原子の原子価によって必要とされる場合、それら自体が置換または非置換であり得る。R~R24は、ビアリール部分に縮合したシクロアルキルまたはアリール基、例えば以下のものを含んでいてもよい。
【0041】
【化3】
【0042】
式I、II、またはIIIについて、各アリール、ヘテロアリール、ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、ヒドロカルビレン、およびヘテロヒドロカルビレン基は、独立して非置換であるか、または1つ以上の置換基Rで置換される。各Rは、独立して、ハロゲン原子、ポリフルオロアルキル置換、非置換C~C18アルキル、FC-、FCHO-、FHCO-、FCO-、RSi、RGe、RO、RS、RS(O)、RS(O)、RP、RN、RC=N、NC、RC(O)O、ROC(O)、RC(O)N(R)、またはRNC(O)であり、2つのRが一緒になって、非置換のC~C18アルキレンを形成し、式中、各Rは独立して、非置換C~C18アルキルである。任意選択で、2つのRが一緒になって環を形成し、ここで環は環式または多環式であり得る。
【0043】
式Iについて、ZおよびZは、CH基であり、そのような構造、ならびに本明細書に記載の方法で使用することができる他の構造は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,904,808号に見出すことができる。
【0044】
式IIIについて、Xは、CHまたはOであり、一方Xは、OまたはC(R25であり、そして各R25は同じでも異なっていてもよく、水素、脂環式基、芳香環、複素芳香環またはハロゲン原子、もしくは、NR、ORおよびSRからなる群から選択されるヘテロカルブル基であり、式中、Rは、C~C20のヒドロカルビル基、または各々独立してCまたはヘテロ原子から選択される1~20個の原子を有するヘテロヒドロカルビル基であり、式中、各ヘテロ原子は、独立して、O、S、Si、Ge、P、またはNであり、ヘテロ原子の原子価によって必要とされる場合、それら自体が置換または非置換であり得る。2つのR25基が1つの縮合環を形成していてもよい。Yは、芳香環または複素芳香環であり、置換されていても無置換でもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、XおよびXの両方を含む代わりに、式IIIは、XおよびXのうちの1つのみを含むことができ、両方を含むことはできない。そのような実施形態では、XまたはXの一方のみが存在する場合、炭素原子価は、水素によって満たされる。
【0046】
さらなる代表的な好適な多座ホスフィン配位子としては、式IVを有するものが挙げられる。
【0047】
【化4】
【0048】
式中、Zは、CH基であり、そのような構造、ならびに本明細書に記載の方法で使用できるその他の構造は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるOrg.Chem.Frontiers.,2014,1,947-951に見ることができる。
【0049】
さらなる代表的な好適な多座ホスフィン配位子としては、式Vを有するものが挙げられる。
【0050】
【化5】
【0051】
式中、Zは、CH基であり、そのような構造、ならびに本明細書に記載の方法で使用することができる他の構造は、例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,531,698号に見出すことができる。
【0052】
本発明の方法は、触媒が上記で言及した1つ以上の多座ホスフィン配位子と錯化されたロジウムを含む触媒溶液を再生するために特に採用される。ロジウム錯体は、オレフィン、水素、および一酸化炭素のいずれかまたは全てをさらに含有してもよい。例えば、触媒の静止状態は、ロジウム-配位子ジカルボニルヒドリド錯体を含み得る。
【0053】
絶対的には、液体本体中のロジウム濃度は、遊離金属として計算して約25ppm~約1200ppmのロジウムの範囲であり得る。ロジウム濃度を測定するための分析技術は、当業者によく知られており、そして原子吸光(AA)、誘導結合プラズマ(ICP)および蛍光X線(XRF)を含み、AAが、典型的には好ましい。
【0054】
一般に、最適触媒濃度は、用いられるオレフィン基質に依存するであろう。例えば、内部および分岐内部オレフィンのヒドロホルミル化速度は、直鎖状アルファオレフィンのそれより遅いことはよく知られているので、その結果、これらの場合において所望の転化率を達成するためにより多くの触媒が必要とされるであろう。工業的プロセスでは、経済的考察は、オレフィン転化率が実用的な限り高いことを必要とし、したがって、工学的設計および触媒濃度を含むプロセスパラメータはそれに従って調整されなければならない。
【0055】
金属-多座ホスフィン配位子錯体触媒は、均一または不均一形態であり得る。例えば、予め形成されたロジウムヒドリド-カルボニル-多座ホスフィン配位子触媒を、調製して、ヒドロホルミル化反応混合物に、導入することができる。より好ましくは、ロジウム-多座ホスフィン配位子錯体触媒は、その場で活性触媒を形成するために反応媒体に導入することができるロジウム触媒前駆体から誘導することができる。例えば、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、Rh、Rh(CO)12、Rh(CO)16、Rh(NOなどのロジウム触媒前駆体を、その場での活性触媒の形成のために他座ホスフィン配位子と共に反応混合物に導入することができる。好ましい実施形態では、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートを、ロジウム前駆体として使用し、溶媒の存在下で多座ホスフィン配位子と反応させて触媒ロジウム-多座ホスフィン配位子錯体前駆体を形成し、それをその場の活性触媒の形成のため過剰の(遊離)多座ホスフィン配位子と一緒に導入する。いずれの場合でも、一酸化炭素、水素および多座ホスフィン配位子は、全て金属と錯体を形成することができる配位子であり、ヒドロホルミル化反応に使用される条件下で活性金属-多座ホスフィン配位子触媒が、反応混合物中に存在すれば十分である。カルボニル、ヒドリド、および多座ホスフィン配位子は、ヒドロホルミル化プロセスの前またはその間にその場でのいずれかで、ロジウムに錯化することができる。
【0056】
触媒前駆体組成物は、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、有機溶媒および多座ホスフィン配位子配位子の溶液を、形成することによって調製することができる。多座ホスフィン配位子は、一酸化炭素ガスの発生によって見られるように、ロジウムアセチルアセトネート錯体前駆体の少なくとも1つのカルボニル配位子を、容易に置き換える。
【0057】
したがって、金属-有機リン配位子錯体触媒は、有利には、一酸化炭素と錯化した金属および多座ホスフィン配位子を含み、該配位子はキレート化および/または非キレート化様式で金属に結合(錯化)する。
【0058】
金属-多座ホスフィン配位子錯体触媒に加えて、遊離多座ホスフィン配位子(すなわち、金属と錯体を形成していない配位子)も、反応媒体中に存在し得る。遊離配位子の意義は、US3,527,809、GB1,338,225、およびBrownらの、「Homogeneous Hydroformylation of Alkenes with Hydridocarbonyltris(triphyenylphosphine)rhodium(I)as Catalyst」、Journal of the Chemical Society,1970,2759~2761ページに教示されている。遊離多座ホスフィン配位子は、上記で論じた上記で定義済みの多座ホスフィン配位子のいずれにも対応し得る。遊離多座ホスフィン配位子は、用いられる金属-多座ホスフィン配位子錯体触媒の多座ホスフィン配位子と同じであることが好ましい。しかしながら、そのような配位子は、いかなる所与のプロセスにおいても同じである必要はない。本発明のヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中の金属1モル当たり0.1モル以下~10モル以上の遊離多座ホスフィン配位子を含み得る。好ましくは、ヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中に存在する金属1モル当たり1~5モルの多座ホスフィン配位子の存在下で行われる。さらに好ましくは、多座ホスフィン配位子については、金属1モル当たり1~3モルの多座ホスフィン配位子が用いられる。多座ホスフィン配位子の該量は、存在する金属に結合(錯化)している多座ホスフィン配位子の量と存在する遊離多座ホスフィン配位子の量の両方の合計である。必要に応じて、追加のポ多座ホスフィント配位子を、ヒドロホルミル化プロセスの反応媒体にいつでも任意の好適な方式で、例えば反応媒体中に遊離配位子の所定レベルを維持するために供給することができる。
【0059】
ヒドロホルミル化プロセスおよびその操作条件は、よく知られている。ヒドロホルミル化プロセスは、非対称的でも非対称的でなくてもよく、好ましいプロセスは、非対称的でなく、任意のバッチ式、連続式または半連続式で実施でき、所望の任意の触媒液体および/またはガスリサイクル操作を含むことができる。したがって、オレフィン性不飽和化合物からそのようなアルデヒドを生成するための特定のヒドロホルミル化プロセス、ならびにヒドロホルミル化プロセスの反応条件および成分は、そのプロセスで用いられる多座有機ホスフィン以外に、本発明の重要な特徴ではない。
【0060】
液体リサイクル手順は、一般に、触媒およびアルデヒド生成物を含有する液体反応媒体の一部をヒドロホルミル化反応器、すなわち反応ゾーンから連続的または断続的のいずれかで抜き出すこと、およびUS5,430,194およびUS5,681,473に開示されているような、複合膜の使用、またはそれを蒸留するより慣用的かつ好ましい方法、すなわち別個の蒸留ゾーンにおいて、常圧、減圧または高圧下で1段階以上の気化分離の使用によって、そこからアルデヒド生成物を回収することを含み、例えば、残留物を含有する非揮発性金属触媒は、例えばUS5,288,918に開示されるように反応ゾーンにリサイクルされる。揮発性物質の凝縮、ならびに例えばさらなる蒸留によるその分離およびさらなる回収は、任意の従来の方式で行うことができ、粗アルデヒド生成物は、必要に応じてさらなる精製および異性体分離のために、受け渡すことができ、任意の回収反応物、例えば、オレフィン系出発材料および合成ガスは、ヒドロホルミル化ゾーン(反応器)に任意の所望の方式でリサイクルすることができる。そのような膜分離の抽残液を含有する回収された金属触媒またはそのような気化分離の残渣を含有する回収された非揮発化金属触媒は、所望の任意の従来の方式で、ヒドロホルミル化ゾーン(反応器)にリサイクルすることができる。
【0061】
好ましい実施形態では、ヒドロホルミル化反応流体は、少なくともいくらかの量の4つの異なる主成分または成分、すなわちアルデヒド生成物、金属-多座ホスフィン配位子錯体触媒、遊離多座ホスフィン配位子、および該触媒および該遊離配位子用の溶媒を含有する任意の対応するヒドロホルミル化プロセスから誘導された任意に流体を含む。ヒドロホルミル化反応混合物組成物は、ヒドロホルミル化プロセスにおいて故意に用いられているかまたは該プロセスの間にその場で形成されたかのいずれかのものなどの追加の成分を含むことができ、通常は含むであろう。そのような追加の成分の例には未反応オレフィン原料、一酸化炭素と水素ガス、飽和炭化水素などのその場で形成された副生成物、オレフィン出発材料に対応する未反応の異性化オレフィン、配位子分解化合物、および高沸点液体アルデヒド縮合副生物、ならびに他の不活性共溶媒タイプの材料もしくは用いられる場合、炭化水素添加剤が含まれる。
【0062】
ヒドロホルミル化プロセスの反応条件は、光学活性および/または非光学活性アルデヒドを生成するためにこれまで用いられてきた任意の好適な種類のヒドロホルミル化条件を含むことができる。用いられるヒドロホルミル化反応条件は、所望のアルデヒド生成物の種類によって左右される。例えば、ヒドロホルミル化プロセスの水素、一酸化炭素およびオレフィン出発化合物の全ガス圧は、1~69,000kPaの範囲であり得る。しかしながら、一般に、本プロセスは、水素、一酸化炭素およびオレフィン出発化合物の全ガス圧14,000kPa未満、より好ましくは3,400kPa未満で動作されることが好ましい。最小全圧は、所望の反応速度を得るのに必要な反応物の量によって主に制限される。より具体的には、ヒドロホルミル化プロセスの一酸化炭素分圧は、1~6,900kPaが好ましく、21~5,500kPaがより好ましく、水素分圧は34~3,400kPaがより好ましく、69~2,100kPaがさらに好ましい。一般に、ガス状H:COのモル比は、1:10~100:1以上の範囲であり得、より好ましいモル比は、1:10~10:1である。
【0063】
一般に、ヒドロホルミル化プロセスは、任意の動作可能な反応温度で行うことができる。有利には、ヒドロホルミル化プロセスは、-25℃~200℃、好ましくは50℃~120℃の反応温度で行われる。
【0064】
ヒドロホルミル化プロセスは、当業者に知られている機器およびシステムを使用して実施することができる。そのような機器およびシステムの例は、米国特許第4,247,486号、同第5,105,018号、同第5,367,106号、同第6,642,420号、同第7,446,231号、同第8,389,774号、同第8,404,903号および同第9,067,876号、ならびにPCT出願第WO2015/047723号、同第WO2015/094781号に見出すことができ、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
一実施形態において、本発明において有用なヒドロホルミル化プロセスは、例えばUS5,728,893に記載されているような、多段反応器中で実施することができる。多段階反応器は、容器1つ当たり1つを超える反応ゾーンまたは理論的反応段階を作り出す内部の物理的障壁を用いて設計され得る。
【0066】
ヒドロホルミル化プロセスを、連続式手法で行うことが一般に好ましい。連続式ヒドロホルミル化プロセスは、当該技術分野においてよく知られている。連続プロセスは、単一パスモードで実施することができ、すなわち、蒸気混合物は、未反応オレフィン系出発物質を含み、気化したアルデヒド生成物を、液体反応混合物から除去し、そこからアルデヒド生成物を回収しそしてオレフィン系出発物質(複数可)を補給し、未反応オレフィン系出発物質(複数可)をリサイクルさせることなく、次の単一パススルーのために一酸化炭素および水素を、液体反応媒体に供給する。そのような種類のリサイクル手順は、当該技術分野において周知であり、例えばUS4,148,830に開示されているように、所望のアルデヒド反応生成物(複数可)から分離された金属-多座ホスフィン錯体触媒流体の液体リサイクルもしくは例えばUS4,247,486に開示されているようなガスリサイクル手順、ならびに所望ならば液体およびガスリサイクル手順の両方の組み合わせを含み得る。最も好ましいヒドロホルミル化プロセスは、連続液体触媒リサイクルプロセスを含む。好適な液体触媒リサイクル手順の例は、米国特許第4,668,651号、同第4,774,361号、同第5,102,505号、および同第5,110,990号に開示される。
【0067】
一実施形態では、アルデヒド生成物混合物は、アルデヒド混合物が、例えば溶媒抽出、結晶化、蒸留、気化、ワイプフィルム気化、流下膜気化、相分離、濾過、またはこれらの任意の組み合わせなどの任意の好適な方法によって生成される粗反応混合物の他の成分から分離することができる。WO88/08835に記載されているように、それらが捕捉剤の使用を通して形成されるので、粗反応混合物からアルデヒド生成物を除去することが望ましい場合がある。粗反応混合物の他の成分からアルデヒド混合物を分離するための1つの方法は、膜分離によるものであり、それは例えば米国特許第5,430,194号および同第5,681,473号に記載されている。
【0068】
上記のように、所望のアルデヒドは、反応混合物から回収することができる。例えば、米国特許第4,148,830号および同第4,247,486号に開示されている回収技術を使用できる。例えば、連続液体触媒リサイクルプロセスでは、反応ゾーンから除去された液体反応混合物(アルデヒド生成物、触媒などを含有する)の一部、すなわち反応流体を分離ゾーン、例えば気化器/分離器に送ることができ、ここで、所望のアルデヒド生成物は、1つ以上の段階で、常圧、減圧または高圧下で液体反応流体から蒸留により分離され、凝縮されそして生成物受容器に集められ、そして所望ならばさらに精製され得る。残りの液体反応混合物含有非揮発性触媒は、次いで、所望により任意の他の揮発性物質、例えば未反応オレフィンを、例えば従来の方式での蒸留により凝縮アルデヒド生成物から分離した後に液体反応に溶解した水素および一酸化炭素と共に反応器に戻してもよい。一般に、多座ホスフィン配位子および反応生成物の起こり得る劣化を回避するために、減圧下および低温で触媒含有反応混合物から生成物アルデヒド(複数可)を分離することが好ましい。
【0069】
より具体的には、反応流体を含有する金属-多座ホスフィン錯体触媒からの所望のアルデヒド生成物の蒸留および分離は、所望の任意の好適な温度で起こり得る。一般に、そのような蒸留は、比較的低い温度、例えば、150℃未満、より好ましくは50℃~140℃の範囲の温度で行われることが好ましい。そのようなアルデヒド蒸留は、例えば、低沸点アルデヒド(例えば、C~C)が含まれている場合、ヒドロホルミル化中に使用される全ガス圧力よりも実質的に低い全ガス圧力の減圧下、もしくは高沸点アルデヒド(例:C以上)が含まれる場合は、真空下で行われることも一般に好ましい。例えば、一般的なやり方は、蒸留ゾーン、例えば気化器/分離器に対して反応媒体中に存在するよりもはるかに低い合成ガス濃度を含有する液体媒体中に溶解した未反応ガスの実質的な部分を気化させるため、ヒドロホルミル化反応器から取り出された液体反応生成物媒体を、減圧に供することであり、ここで、所望のアルデヒド生成物が、蒸留される。一般に、真空圧から最大で340kPaの全ガス圧の範囲の蒸留圧が、ほとんどの目的に十分である。
【0070】
触媒活性が望ましいレベル未満に低下したら、本発明の実施形態を使用して触媒溶液を再生することができる。例えば、ヒドロホルミル化反応器が生成目標に到達しないようにヒドロホルミル化反応速度が低下した場合、触媒活性は望ましくないかもしれない。一般に、触媒溶液は、(1)過酸化物溶液、続いて任意選択で、(2)新鮮な多座ホスフィン配位子を添加することによって再生することができる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態では、部分的に失活した触媒溶液のヒドロホルミル化速度は、プロセスが運転中にある間に改善され得る。そのような実施形態は、触媒を交換または処理するためにプラントを停止することが経済的に悪影響を及ぼすであろう商業操業にとって魅力的であり得る。本発明の他の実施形態は、運転の停止を必要とするが、ヒドロホルミル化速度を新鮮な完全に活性な触媒のそれに近い速度に回復するであろう。ほとんどの産業プラントは、メンテナンスのために時々停止され、計画的な停止中にそのような実施形態を実行することは、したがって、費用対効果の高い選択肢となる。本発明の方法が実施される方法は、部分的には、処置時の施設の状態(すなわち、運転中またはアイドル中)によって決定される。
【0072】
いくつかの実施形態では、ヒドロホルミル化反応条件下で、1つ以上の部分の希過酸化物溶液を、ヒドロホルミル化プロセス流体に直接添加することができる。再生の進行は、ホスフィン化合物の濃度の低下および/または結果として生じるヒドロホルミル化速度の増加によって測定され得る。多座ホスフィン配位子およびそれらの関連副生成物を定量化するための分析技術は、当業者に周知であり、これにはリン核の核磁気共鳴分光法(31P NMR)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が含まれる。そのような実施形態では、複数部分の希過酸化物を添加することができ、必要に応じて、新鮮な多座ホスフィン配位子をプロセスに添加してもよい。
【0073】
他の実施形態では、触媒溶液は、本発明の処理の前に濃縮される。これは、プロセス温度を維持し続けながら、オレフィン、一酸化炭素および水素供給を止めることによって達成される。生成物アルデヒドが実質的に除去されるまで、触媒溶液を気化器に通過させ、この決定は、生成速度を監視することによって行うことができる(例えば、生成物アルデヒド中に集まる生成物アルデヒドの速度が通常運転の約5~10%であるとき)。生成物アルデヒドが実質的に除去されたら、過酸化物溶液を、高温で濃縮触媒溶液に添加する。過酸化物は、いくつかの実施形態では70℃以上、いくつかの実施形態では100℃以上、いくつかの実施形態では110℃以上、いくつかの実施形態では115℃以上、いくつかの実施形態では70~120℃、いくつかの実施形態では80~110℃、そして他の実施形態では90~100℃の温度で添加することができる。
【0074】
別の実施形態では、本発明のプロセスは、ヒドロホルミル化プロセス流体を予備濃縮することなく、運転停止中にヒドロホルミル化プロセス機器内で行うことができる。例えば、オレフィン、一酸化炭素および水素の供給を停止し、プロセス温度を下げ、そして過酸化物溶液を、周囲温度付近でヒドロホルミル化プロセス流体に加える。いくつかのそのような実施形態では、過酸化物が添加されるとき、失活ヒドロホルミル化触媒溶液の温度は、0℃~40℃である。得られた触媒溶液-過酸化物混合物を1~7日間またはいくつかの実施形態では2~6日間循環または撹拌する。次いで、ヒドロホルミル化を再開するためにプロセス温度およびガス供給を再確立する。
【0075】
本発明の一態様は、ロジウムおよび多座ホスフィン配位子を含む触媒溶液への適量の過酸化物溶液の添加であることが理解される。添加する過酸化物の量は、本発明のどの実施態様を用いるかによって大きく左右され、つまり、プラントの運転停止中に、処理が、運転中のヒドロホルミル化プロセスで行われるのか、触媒溶液で行われるのかということである。
【0076】
連続ヒドロホルミル化プロセスにおける実施形態では、添加される過酸化物のモル当量は、いくつかの実施形態ではホスフィンのモル当たり約0.10~0.80モル過酸化物当量、いくつかの実施形態では約0.20~0.60モルおよびいくつかの実施形態では、約0.25~0.50モル当量など、計算/推定モル当量未満であるべきである。
【0077】
アイドル状態のヒドロホルミル化プロセスを用いて行われる実施形態では、過酸化物のモル当量は、ホスフィンの計算/推定モル当量に近づくかまたはそれをわずかに超えるべきである。いくつかの実施形態では、過酸化物のモル当量は、ホスフィン1モルあたり約0.25~1.5モル過酸化物当量、いくつかの実施形態では約0.50~1.3モル当量、いくつかの実施形態では約0.7~1.1モル当量である。
【0078】
いくつかの実施形態では、触媒溶液のモルホスフィン濃度は、溶液の総リン含有量に基づいて推定することができる。リン含有量を決定するための分析手段は、当業者に周知であり、そして窒素-リン検出器を備えたガスクロマトグラフィー、(GC-NPD)、原子吸光(AA)および蛍光X線(XRF)を含む。操作の容易さおよびサンプル調製の必要性の欠如のために、XRFが好ましい。XRF分析は、希釈や追加の調製なしにサンプルに対して直接行うことができ、半定量的測定(精度±20%)は、較正なしで容易に得ることができ、本発明の手順にとって十分である。
【0079】
全リン濃度は、ホスフィン化合物の濃度を示すが、熟成触媒溶液はホスフィンオキシドを含む複数の分解生成物を含有し、これは、分析的測定をやや難しくするであろうことが予想されるべきである。添加される過酸化物の量が重要な態様であるが、本発明は、わずかな変動を許容するものであり、そのようなものとして、ポリホスホルアミダイト配位子のモル当量に基づいて添加される過酸化物の量が本発明を実施するのに好適な手段である。
【0080】
いくつかの実施形態において、添加される過酸化物の量は、多座ホスフィン配位子濃度に基づいてホスフィン化合物のモル濃度を推定することによって計算される。市販のヒドロホルミル化プロセスでは、用いられる配位子およびそれに関連する分解生成物の多くの濃度は、31P NMRおよび高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含むがこれらに限定されない少なくとも1つの分析方法を通して日常的に決定される。操作が簡単なので、HPLCが典型的には好ましい。そのような実施形態では、配位子および副生成物の濃度が分かると、ホスフィン化合物のモル濃度の合理的な推定がなされ、適量の過酸化物が添加される。次いで、後処理溶液を分析して、ホスフィン化合物濃度の所望の低下を確認することができる。後処理触媒の性能に基づいて、所望ならば、追加の過酸化物を、添加することができる。
【0081】
過酸化物は高温で分解することが知られているが、いくつかの実施形態では、分析によって過酸化物の酸化後濃度を決定することが望ましい場合がある。有機溶液中の過酸化物含有量を分析するための方法は既知であり、市販の過酸化物試験片、GC分析、および滴定を含むがこれらに限定されない。
【0082】
目的が触媒溶液中のホスフィン部分の支配物を酸化することであるプラントの運転停止中に行われる実施態様の場合、過酸化物の添加後に、新鮮な多座ホスフィン配位子を添加することが必要であろう。いくつかの実施形態では、ロジウム1モル当たり1~10モル、追加の実施形態ではロジウム当たり1~5モル、他の実施形態ではロジウム当たり1.2~3モルの配位子の多座ホスフィン配位子濃度を達成するように、新鮮な多座ホスフィン配位子を添加する。連続ヒドロホルミル化プロセス内で行われる実施形態については、多座ホスフィン配位子濃度は、HPLCによって決定されるべきであり、ロジウム含有量は原子吸光(AA)によって決定されるべきであり、そして所望の濃度を維持するために必要に応じて追加の配位子を加えることができる。
【0083】
例示的な非光学活性アルデヒド生成物としては、例えば、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-メチル1-ブチルアルデヒド、ヘキサナール、ヒドロキシヘキサナール、2-メチル1-ヘプタナール、ノナナール、2-メチル-1-オクタナール、デカナール、アジパアルデヒド、2-メチルグルタルアルデヒド、2-メチルジアルデヒド、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド、6-ヒドロキシヘキサナール、アルケナール、例えば2-、3-および4-ペンテナール、アルキル5-ホルミルバレレート、2-メチル-1-ノナナール、2-メチル1-デカナール、3-プロピル-1-ウンデカナール、ペンタデカナール、3-プロピル-1-ヘキサデカナール、エイコサナル、2-メチル-1-トリコサナール、ペンタコサナール、2-メチル-1-テトラコサナール、ノナコサナール、2-メチル-1-オクタコサナール、ヘントリアコンタナール、および、2-メチル-1-トリアコンタナールが挙げられる。
【0084】
例示的な光学活性アルデヒド製品としては、本発明の不斉ヒドロホルミル化プロセスにより生成される(エナンチオマー)アルデヒド化合物、例えばS-2-(p-イソブチルフェニル)-プロピオンアルデヒド、S-2-(6-メトキシ-2-ナフチル)プロピオンアルデヒド、S-2-(3)-ベンゾイルフェニル)-プロピオンアルデヒド、S-2-(3-フルオロ-4-フェニル)フェニルプロピオンアルデヒド、S-2-(2-メチルアセトアルデヒド)-5-ベンゾイルチオフェンなどが挙げられる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を、これより以下の実施例において詳細に説明する。
【実施例
【0086】
以下の実施例における全ての部および百分率は、他に示されていない限り重量による。他に指示がない限り、圧力はポンド/平方インチゲージ(psig)として示される。ロジウム濃度は、原子吸光(AA)によって決定される。多座ホスフィン配位子濃度は、逆相HPLCによって決定される。
【0087】
テトラヒドロフランヒドロペルオキシド(THFヒドロペルオキシド)の溶液は、THFを空気にさらすことによって調製される。THFヒドロペルオキシド濃度は、滴定により決定され(検量線に対するメタノール中のフェロチオシアネートおよびFeClを用いる分光光度定量)、THF中の1.9重量%のTHFヒドロペルオキシドが、示されている。水(70重量%)中およびノナン(5~6M)中のt-ブチルヒドロペルオキシドの溶液をAldrichから購入し、受け入れたままの状態で使用する。過酸化ベンゾイル(固体;残りの水を含む75重量%)および過酸化水素(水中30重量%)をAldrichから購入し、受け入れたままの状態で使用する。米国特許第7,531,698号に開示されているものの中の多座ホスフィン配位子である配位子Aを、これらの実施例で使用する。
【0088】
【化6】
【0089】
一般的な手順
ヒドロホルミル化試験ユニットの説明-液体リサイクル反応器システムは、直列に接続された3個の1リットルステンレス鋼撹拌タンク反応器からなる。各反応器は、垂直に取り付けられた撹拌機と反応器の底部近くに位置する円形の管状スパージャーとを備えている。各スパージャーは、反応器内の液体本体に、所望のガス流を提供するのに十分な大きさの複数の穴を含む。スパージャーは、オレフィンおよび/または合成ガスを、反応器に供給するために使用され、各反応器への未反応ガスをリサイクルするためにも使用することができる。各反応器は、反応器温度を制御する手段としてシリコーン油シェルを有する。反応器1~2および反応器2~3は、未反応ガスおよびラインを移送してアルデヒド生成物および触媒を含有する液体溶液の一部を反応器1から反応器2へ、および反応器2から反応器3へポンプ輸送することを可能にするためにさらにラインを介して接続される。。それ故、反応器1の未反応オレフィンは、反応器2において、続いて反応器3においてさらにヒドロホルミル化される。各反応器はまた、所望の液体レベルを維持するための空気圧液面コントローラを含有する。反応器3は、未反応ガスを除去するための吹き出し口を有する。液体反応溶液の一部を、反応器3から減圧下の加熱容器からなる気化器に連続的に送り込む。気化器からの流出流は、気化器の底部に位置する気液分離器に送られ、そこで気化したアルデヒドは、液体反応溶液の不揮発性成分から分離される。気化したアルデヒド生成物は、凝縮されて、生成物受容器に収集される。空気圧液体レベルコントローラは、分離器の底部において、リサイクルされるべき触媒を含む所望の不揮発性成分レベルを制御する。
【0090】
ガラス反応器の説明-ヒドロホルミル化の実施例および比較実験は、温度およびガス流を正確に制御するための手段を備えた90mL流通Fisher Porter反応器中で行われる。流通反応器内での混合は、反応器の底部にあるスパージャーを介した連続的なガス流によって行われる。この反応器設計は、US5,731,472に詳細に記載されており、その教示は、参照により本明細書に組み込まれる。特に断らない限り、ヒドロホルミル化条件は、100℃で約100psig1:1の合成ガス、5~10psigのプロピレン、150psigの全圧(残余窒素)である。反応器オフガスは、分圧および生成物選択性を決定するため、およびダルトンの法則を使用して反応速度を計算することを可能にするためにオンラインGCによって分析される。反応速度は、単位時間当たりの触媒溶液の体積当たりに生成されるアルデヒドのモル数(モル/L-時間)として表され、この値は、プロピレン供給速度(速度/オレフィン)における小さくて避けられない変動の影響を緩和するのを助けるためにプロピレン分圧でさらに除算される。生成物選択性は、直鎖状(normal)アルデヒド対分岐状(iso)アルデヒド(N:I)の比、ならびに直鎖状アルデヒドのパーセンテージとして表される。一般に、線状生成物が最も望ましいので、本発明にとってN:Iの実証された増加は触媒性能の改善であると考えられる。
【0091】
以下の失活触媒溶液のアリコートを、いくつかの実施例におよび比較実験に使用する。
触媒溶液A-ロジウムおよび配位子Aを含む触媒溶液を、ヒドロホルミル化試験ユニットに装入し、様々な条件下で一定期間、プロピレンのヒドロホルミル化に使用する。実験の過程で、触媒によって示されるヒドロホルミル化速度は、同等の濃度および反応条件下で、新鮮なロジウム-配位子A触媒の約40%まで低下する。総リン含有量は、XRFによって0.025Mであることが決定される。
【0092】
触媒溶液B-ロジウムおよび配位子Aを含む触媒溶液を、ヒドロホルミル化試験ユニットに装入し、様々な条件下で一定期間、プロピレンのヒドロホルミル化に使用する。実験の過程で、触媒によって示されるヒドロホルミル化速度は、同等の濃度および反応条件下で、新鮮なロジウム-配位子A触媒の約50%まで低下する。総リン含有量は、XRFによって0.039Mであることが決定される。
【0093】
触媒溶液C-より希薄であることを除いて触媒溶液Bと同様であり、触媒溶液Cのロジウムおよび全リン濃度は、触媒溶液Bに対して約40%である。
【0094】
実施例1
触媒溶液A(30mL)をガラス反応器に添加し、過剰のブチルアルデヒドを、流動合成ガス下100℃でストリッピングする。次いでテトラグリム(10mL)を添加して、20mLの最終容量を得る(最終ロジウム濃度は、約500ppmである)。THFヒドロペルオキシド(3mLのTHF中0.49ミリモル、0.016Mの最終過酸化物濃度)を添加すると、溶液は、ほぼ直ちに透明黄色から透明淡褐色に変わる。おおよそ5分後、配位子Aのトルエン溶液(ロジウム当たり1.3当量の配位子A)を添加すると、顕著な色の明色化がもたらされる。一酸化炭素、水素およびプロピレンの流れが確立され、触媒性能が決定される。
【0095】
実施例2
触媒溶液Bの使用および添加したTHFヒドロペルオキシドの量(0.32ミリモル、0.010Mの最終ペルオキシド濃度)を除いて、実施例1の手順を繰り返す。
【0096】
実施例3
t-ブチルヒドロペルオキシド(水溶液、0.49ミリモル、0.016Mの最終ペルオキシド濃度)を使用し、かつ新鮮な配位子Aを添加する前にさらに長く(3時間)使用することを除いて、実施例1の手順を繰り返す。
【0097】
実施例4
ノナン溶液としてt-ブチルヒドロペルオキシドを添加すること(0.49ミリモル、0.016Mの最終ペルオキシド濃度)を除いて、実施例3の手順を繰り返す。
【0098】
実施例5
t-ブチルペルオキシドの添加量(0.97ミリモル、0.032Mの最終ペルオキシド濃度)および新鮮な配位子Aの添加前の時間(30分)を除いて、実施例3の手順を繰り返す。
【0099】
実施例6
ノナン溶液としてt-ブチルヒドロペルオキシドを使用することを除いて、実施例5の手順を繰り返す。
【0100】
比較実験A
触媒溶液A(30mL)をガラス反応器に添加し、過剰のブチルアルデヒドを、流動合成ガス下100℃でストリッピングする。次いでテトラグリム(10mL)を添加して、20mLの最終容量を得る(最終ロジウム濃度は、約500ppmである)。トルエン中の配位子Aの溶液を添加する(ロジウム当たり1.5当量の配位子A)。一酸化炭素、水素およびプロピレンの流れが確立され、触媒性能が決定される。
【0101】
比較実験B
触媒溶液B(30mL)をガラス反応器に添加し、過剰のブチルアルデヒドを、流動合成ガス下100℃でストリッピングする。次いでテトラグリム(10mL)を添加して、20mLの最終容量を得る(最終ロジウム濃度は、約500ppmである)。トルエン中の配位子Aの溶液を添加する(ロジウム当たり1.5当量の配位子A)。一酸化炭素、水素およびプロピレンの流れが確立され、触媒性能が決定される。
【0102】
実施例1~6の結果を比較実験AおよびBと共に表1に要約する。
【0103】
【表1】
【0104】
表1の結果は、実施例1~6の本発明の方法の実施形態の利点を明確に示している。実施例1~6のそれぞれについての反応速度およびN:Iの両方は、比較例と比較して有意に改善されている。さらに、この処理は、添加される過酸化物の絶対量および種類、ならびに配位子Aを添加する前の滞留時間における変動に耐性がある。
【0105】
実施例7
触媒溶液A(30mL)を、室温でTHFヒドロペルオキシド(1.20ミリモル、0.040M最終濃度)と合わせる。得られた混合物を、室温で5日間撹拌し、その後、黄色から明褐色への変色が観察される。新鮮な配位子A(2モル/モルロジウム)およびテトラグリム(10mL)を添加し、この溶液をガラス製反応器に入れる。合成ガスを流しながら、100℃で約14時間濃縮した後、ヒドロホルミル化を開始する。
【0106】
実施例8a~8c
t-ブチルヒドロペルオキシドを使用し、より大量の触媒溶液A(105mL)を使用することを除いて実施例7の手順を繰り返す。ここれにより、1日間(8a)、3日間(8b)、および5日間(8c)にヒドロホルミル化試験のために30mLアリコートを除去することが可能になる。
【0107】
実施例7および8a~cの結果を、表2に要約する。
【0108】
【表2】
【0109】
表2の結果は、本発明の実施形態による処理が、室温で、最初に触媒溶液を濃縮することなく行うことができることを示している。
【0110】
実施例9
ロジウム、配位子Aおよび配位子A分解生成物を含む3リットルの部分的に失活した触媒溶液を、ヒドロホルミル化試験ユニット内で約80℃で流動合成ガス下で濃縮して残留アルデヒドを除去する。ヒドロホルミル化試験ユニットで長時間期間運転した後、触媒溶液は部分的に失活した。濃縮溶液(1271g、193ppmロジウム)を1ガロンガラスジャグに移し、室温で撹拌し、その後、t-ブチルヒドロペルオキシド(水中70%、8mL、0.04M最終ペルオキシド濃度)をシリンジでゆっくり添加する。過酸化物添加中に、反応の兆候は生じない。得られた混合物を、室温で約112時間撹拌する。
【0111】
処理前後の触媒溶液の31P NMRスペクトルは、処理前の触媒溶液中の配位子Aおよび配位子Aの分解生成物を含む各種ホスフィン部分と、処理溶液中のこれらの同じホスフィン部分の不足を示す。
【0112】
次いで、新鮮な配位子A(2モル/モルロジウム)を添加し、そして触媒溶液を、ヒドロホルミル化試験ユニットに戻す。90℃の合成ガス下で約60分間撹拌した後、ヒドロホルミル化を再開し、ヒドロホルミル化速度の70%の増加およびN:I(処置後の19.5と比較して16.5のN:1)の改善が示された。
【0113】
比較実験C、D
触媒溶液A(30mL)を、2つのガラス反応器の各々に100℃で添加する。合成ガス流を開始し、残留アルデヒドを除去することによって触媒を濃縮することなく、THFヒドロペルオキシド(0.013Mの最終ペルオキシド濃度)を一方の反応器に添加する。新鮮な配位子A(1.3モル/モルロジウム)を、テトラグリム(10mL)と共に5分以内に各反応器に添加する。溶液を、約3時間流動合成ガス下に維持し、その後ヒドロホルミル化を開始する。処理触媒溶液と対照触媒溶液の両方の性能を、表3に要約する。
【0114】
【表3】
【0115】
興味深いことに、表3の結果は、触媒を予備濃縮せずに高温で過酸化物を添加することは、効果がないだけでなく、触媒にとって有害であることを示している。
【0116】
実施例10a、10bおよび比較実験E
触媒溶液C(25mL)を、テトラグリム(10mL)と共に3つのガラス反応器の各々に100℃で添加する。合成ガス流を開始し、触媒を残留アルデヒドを除去することにより一晩濃縮し、得られた容量は、約15mLで、ロジウム濃度は約166ppmである。次いでヒドロホルミル化を開始し、過酸化水素およびt-ブチルヒドロペルオキシドの希薄溶液を、それぞれ実施例10aおよび10bに添加し(各々の場合の最終ペルオキシド濃度は0.006Mである)、比較実験Eには過酸化物を添加しない。24時間の連続ヒドロホルミル化の後、それぞれの希過酸化物溶液の追加のおよび同程度の注入を、10aおよび10bに対して行う。追加の配位子Aは、いずれの反応器にも添加されない。得られたヒドロホルミル化速度および生成物位置選択性を、表4に要約する。
【0117】
【表4】
【0118】
表4の結果は、本発明のプロセスを使用して、触媒溶液の反応速度および選択性を改善する能力を示し、さらにその利点は、連続運転を中断することなく実現される。
【0119】
まとめると、本明細書に提示された結果は、ロジウム、多座ホスフィンおよび多座ホスフィン分解生成物を含む枯化および失活ヒドロホルミル化触媒の性能が、本発明のプロセスによって大幅に改善され得ることを実証する。